(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101656
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20240723BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20240723BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240723BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H02G3/16
H02G3/22
B60R16/02 610B
H05K5/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005677
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】万 云高
【テーマコード(参考)】
4E360
5G361
5G363
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB09
4E360AB33
4E360BD03
4E360BD05
4E360EA03
4E360GA29
4E360GB97
4E360GB99
4E360GC02
4E360GC08
5G361BC01
5G361BC02
5G363AA01
5G363BA02
5G363CA20
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】箱の外部に水を排出することができる電気接続箱を提供する。
【解決手段】電気接続箱1は、貫通孔を有するパネル100の第一面100aに対して固定される板状の本体固定部20と、貫通孔に挿入される筒状の保持部21と、本体固定部から突出する枠状のリブ22と、を有する箱本体2と、本体固定部と第一面との間に配置されて貫通孔を囲み、本体固定部と第一面との間をシールする環状のパッキン4と、パネルの第二面100bに固定され、保持部と嵌合するカバー3と、を備え、リブは、貫通孔の縁に沿って延在し、かつパッキンにおける内側の縁を位置決めし、リブには、切欠き22dが設けられており、箱本体は、切欠きが貫通孔の下端に位置するようにパネルに対して取り付けられ、カバーは、第二面から遠ざかるように凹んだ排水溝37を有し、排水溝は、切欠きと対向する位置から下方に向けて延在する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有するパネルの第一面に対して固定される板状の本体固定部と、前記貫通孔に挿入される筒状の保持部と、前記本体固定部から突出する枠状のリブと、を有する箱本体と、
前記本体固定部と前記第一面との間に配置されて前記貫通孔を囲み、前記本体固定部と前記第一面との間をシールする環状のパッキンと、
前記パネルの第二面に固定され、前記保持部と嵌合するカバーと、
を備え、
前記リブは、前記貫通孔の縁に沿って延在し、かつ前記パッキンにおける内側の縁を位置決めし、
前記リブには、切欠きが設けられており、
前記箱本体は、前記切欠きが前記貫通孔の下端に位置するように前記パネルに対して取り付けられ、
前記カバーは、前記第二面から遠ざかるように凹んだ排水溝を有し、前記排水溝は、前記切欠きと対向する位置から下方に向けて延在する
ことを特徴とする電気接続箱。
【請求項2】
更に、筒状のグロメットを備え、
前記カバーは、前記保持部と嵌合して前記グロメットを保持する嵌合部と、前記第二面に対して固定される板状のカバー固定部と、を有し、
前記カバー固定部は、前記グロメットを間において前記カバー固定部の両端に配置された一対の延出部を有し、
前記延出部は、前記グロメットの延在方向に沿って前記嵌合部から延出しており、かつ締結部材が挿入される貫通孔を有しており、
前記カバー固定部は、前記嵌合部を補強する補強リブを有し、前記補強リブは、一対の前記延出部の並び方向に沿って前記カバー固定部の一端から他端まで延在している
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記補強リブは、前記グロメットの延在方向に並ぶ第一リブおよび第二リブを含む
請求項2に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水を排出する構造を有する電気接続箱がある。特許文献1には、側面周縁部に沿って防水用リブが連続的に設けられた絶縁基板とバスバーとを交互に積層組み付けした配線板をその内部に収容し、エンジンルーム内の取付部材に対して縦置き状態で取り付けられる電気接続箱が開示されている。絶縁基板の下端部に位置する防水用リブを部分的に切り欠いて、複数の水抜き通路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パネルに固定される電気接続箱では、箱とパネルとの間に環状のパッキンが挟み込まれる場合がある。このような電気接続箱において、箱の外部に水を排出できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、箱の外部に水を排出することができる電気接続箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気接続箱は、貫通孔を有するパネルの第一面に対して固定される板状の本体固定部と、前記貫通孔に挿入される筒状の保持部と、前記本体固定部から突出する枠状のリブと、を有する箱本体と、前記本体固定部と前記第一面との間に配置されて前記貫通孔を囲み、前記本体固定部と前記第一面との間をシールする環状のパッキンと、前記パネルの第二面に固定され、前記保持部と嵌合するカバーと、を備え、前記リブは、前記貫通孔の縁に沿って延在し、かつ前記パッキンにおける内側の縁を位置決めし、前記リブには、切欠きが設けられており、前記箱本体は、前記切欠きが前記貫通孔の下端に位置するように前記パネルに対して取り付けられ、前記カバーは、前記第二面から遠ざかるように凹んだ排水溝を有し、前記排水溝は、前記切欠きと対向する位置から下方に向けて延在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電気接続箱において、箱本体は、リブの切欠きがパネルの貫通孔の下端に位置するようにパネルに対して取り付けられる。カバーは、パネルの第二面から遠ざかるように凹んだ排水溝を有し、排水溝は、切欠きと対向する位置から下方に向けて延在する。本発明に係る電気接続箱によれば、箱の内部の水を切欠きおよび排水溝によって外部に排出できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の電気接続箱の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電気接続箱の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態のグロメットの斜視図である。
【
図9】
図9は、パッキンが取り付けられた箱本体の斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態のカバーの取り付けを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る電気接続箱につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から
図13を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、電気接続箱に関する。
図1は、実施形態の電気接続箱の斜視図、
図2は、実施形態の電気接続箱の分解斜視図、
図3は、実施形態の箱本体の斜視図、
図4は、実施形態の箱本体の正面図、
図5は、実施形態のグロメットの斜視図、
図6は、実施形態のカバーの平面図、
図7および
図8は、実施形態のカバーの斜視図、
図9は、パッキンが取り付けられた箱本体の斜視図、
図10は、実施形態のカバーの取り付けを説明する斜視図である。
図11から
図13は、実施形態の電気接続箱の断面図である。
【0011】
【0012】
図1および
図2に示すように、本実施形態の電気接続箱1は、箱本体2と、カバー3と、パッキン4と、グロメット5と、を有する。電気接続箱1は、パネル100に対して固定される。パネル100は、例えば、自動車等の車両に搭載された金属製のパネルである。パネル100は、例えば、エンジンルームと車室とを区画するダッシュパネルである。パネル100は、車両上下方向Vに沿って延在している。パネル100には、
図2に示すように、貫通孔110が設けられている。貫通孔110は、パネル100の厚さ方向に沿ってパネル100を貫通している。
【0013】
以下の説明では、パネル100の厚さ方向を「第一方向X」と称する。パネル100は、第一面100aおよび第二面100bを有する。第一面100aおよび第二面100bは、パネル100の主面である。本実施形態の貫通孔110の形状は、矩形である。貫通孔110は、第一縁部110a、第二縁部110b、および一対の第三縁部110cを有する。
【0014】
第一縁部110aおよび第二縁部110bは、第二方向Yに延在し、第三縁部110cは、第三方向Zに延在している。第三方向Zは、主面に沿った方向であって、かつ車両上下方向Vに対応する方向である。第二方向Yは、主面に沿った方向であって、かつ第三方向Zと直交する。第二方向Yは、例えば、車幅方向である。第三方向Zは、車両上下方向Vと一致していてもよい。第一縁部110aは、貫通孔110における上側の縁である。第二縁部110bは、貫通孔110における下側の縁である。
【0015】
パネル100には、複数の挿入孔120が設けられている。挿入孔120は、箱本体2の雄ねじ部23が挿入される孔である。挿入孔120は、パネル100を貫通している。例示されたパネル100には、四つの挿入孔120が配置されている。各挿入孔120は、貫通孔110の各角部の近傍に配置されている。
【0016】
本実施形態の電気接続箱1は、箱本体2およびカバー3によってパネル100を挟み込みながらパネル100に対して固定される。箱本体2は、パネル100の第一面100aに対して固定される。カバー3は、パネル100の第二面100bに対して固定される。
【0017】
箱本体2は、本体固定部20と、保持部21と、枠状のリブ22と、を有する。箱本体2は、例えば、絶縁性の合成樹脂で成型される。本体固定部20は、パネル100の第一面100aに対して固定される。本体固定部20は、板状であり、パネル100の貫通孔110に対応する形状を有する。例示された本体固定部20の形状は、矩形である。本体固定部20は、挿入孔120に対応する複数の雄ねじ部23を保持している。雄ねじ部23は、本体固定部20の四隅に配置されている。
【0018】
保持部21は、筒形状を有し、部品を保持する。保持部21は、コネクタ等の電気部品を保持してもよく、リレー等の電子部品を保持してもよく、その他の部品を保持してもよい。本実施形態の保持部21の形状は、角筒形状である。
図2に示すように、保持部21は、本体固定部20に対して第一方向Xの両側に向けて突出している。
【0019】
図3に示すように、保持部21は、第二方向Yに延在する一対の第一側壁部21a、および第三方向Zに延在する一対の第二側壁部21bを有する。保持部21によって囲まれた空間には、複数の仕切り壁21cおよび複数の係合部21dが配置されている。仕切り壁21cは、保持部21の内部空間を複数の収容部に仕切っている。係合部21dは、保持部21に収容される部品と係合して部品を保持する。
【0020】
保持部21には、グロメット5を保持する凹部24が設けられている。凹部24は、一対の第二側壁部21bの一方に配置されている。例示された保持部21は、第三方向Zに並ぶ二つの凹部24を有している。
図4に示すように、第二方向Yから見た場合の凹部24の形状は、略U字形状である。凹部24は、第一方向Xに沿って本体固定部20の側に向けて凹んでいる。
【0021】
保持部21に収容される部品には、電線が接続される。電線は、グロメット5に挿通されて外部空間に引き出される。保持部21に収容される部品には、相手方のコネクタ等が接続される。
【0022】
図3に示すように、リブ22は、本体固定部20の対向面20aから第一方向Xに向けて突出している。対向面20aは、パネル100の第一面100aと対向する面である。対向面20aは、更に、カバー3と対向する。リブ22は、後述するパッキン4を位置決めする位置決めリブである。リブ22は、更に、パッキン4における圧縮率の偏りを抑制する機能を有する。リブ22は、パネル100の貫通孔110の縁部110a,110b,110cに沿う枠状に形成されている。より詳しくは、リブ22は、第一延在部22aと、第二延在部22bと、第三延在部22cと、を有する。
【0023】
第一延在部22aおよび第二延在部22bは、貫通孔110の第一縁部110aおよび第二縁部110bに沿う直線状の部分である。第一延在部22aおよび第二延在部22bの端部は、保持部21の第一側壁部21aとつながっている。第一延在部22aは、貫通孔110における上側の第一縁部110aに対応し、第二延在部22bは、下側の第二縁部110bに対応する。つまり、箱本体2は、第一延在部22aが貫通孔110の上側の第一縁部110aと対向し、かつ第二延在部22bが下側の第二縁部110bと対向するようにパネル100に取り付けられる。
【0024】
第三延在部22cは、貫通孔110の第三縁部110cに沿う直線状の部分である。第三延在部22cは、保持部21の第二側壁部21bと平行に延在している。第一延在部22aおよび第二延在部22bと、第三延在部22cとの接続部には、円弧状の湾曲部22eが設けられている。
【0025】
第二延在部22bには、切欠き22dが設けられている。切欠き22dは、第二延在部22bを二つの部分に分断している。切欠き22dは、リブ22および保持部21によって囲まれる領域の下端に位置している。後述するように、切欠き22dは、電気接続箱1の内部から水を排出する排出経路を構成する。
【0026】
雄ねじ部23は、保持部21およびリブ22よりも外側に配置されている。すなわち、リブ22の第三延在部22cおよび保持部21は、第二方向Yにおいて雄ねじ部23よりも中心側に位置している。また、保持部21、第一延在部22a、および第二延在部22bは、第三方向Zにおいて雄ねじ部23よりも中心側に位置している。パッキン4は、雄ねじ部23と保持部21との間の領域、および雄ねじ部23とリブ22との間の領域に配置される。
【0027】
本体固定部20は、パネル100を係止する複数の係止部25を有する。係止部25は、本体固定部20の対向面20aから第一方向Xに突出している。複数の係止部25は、保持部21の第二側壁部21bに沿って配置された二つの係止部25、および第三延在部22cに沿って配置された二つの係止部25を有する。係止部25は、可撓性の爪部25aを有する。係止部25は、パネル100の貫通孔110に挿入され、爪部25aによってパネル100の第一面100aを係止する。
【0028】
図2に示すように、パッキン4は、パネル100の第一面100aと本体固定部20の対向面20aとの間に挟み込まれる面シールである。パッキン4は、貫通孔110を囲み、電気接続箱1への水の浸入を規制する。パッキン4は、例えば、ゴム等の合成樹脂で成型される。平面視におけるパッキン4の形状は、矩形の枠状である。パッキン4の四隅には、雄ねじ部23が挿入される挿入孔4aが設けられている。
【0029】
図5に示すように、グロメット5は、管部51、およびフランジ部52を有する。グロメット5は、例えば、ゴム等の合成樹脂で成型される。管部51は、電線W等の導電体が挿通される筒状の部分である。例示された管部51の形状は、円筒形状である。フランジ部52は、管部51の端部に配置されており、管部51に対して半径方向の外側に向けて突出している。
【0030】
例示されたフランジ部52は、略D字形状を有する。より詳しくは、フランジ部52は、U字形状に湾曲した湾曲部52aと、直線状の直線部52bと、を有する。湾曲部52aは、保持部21の凹部24に挿入される部分である。直線部52bは、カバー3によって押圧される部分である。つまり、フランジ部52は、保持部21とカバー3との間に挟み込まれ、保持部21およびカバー3によって保持される。
【0031】
図1および
図2に示すように、カバー3は、カバー固定部31と、嵌合部32と、を有する。カバー3は、例えば、絶縁性の合成樹脂で成型される。嵌合部32は、箱本体2の保持部21と嵌合し、保持部21の開口部を閉塞する。嵌合部32の形状は、有底の筒形状である。平面視における嵌合部32の形状は、矩形である。
【0032】
カバー固定部31は、パネル100の第二面100bに固定される。
図6に示すように、カバー固定部31は、主部33および一対の延出部34を有する。主部33は、嵌合部32を囲んでおり、第二方向Yおよび第三方向Zに向けて嵌合部32から突出している。平面視における主部33の形状は、矩形の枠形状である。
【0033】
延出部34は、主部33における第三方向Zの端部から第二方向Yに延出している。例示された延出部34の形状は、矩形である。第二方向Yに沿った延出部34の長さL1は、パネル100の挿入孔120の位置に応じて定められる。つまり、延出部34の長さL1は、パネル100の貫通孔110の幅に応じて定められる。本実施形態の電気接続箱1は、大きな開口幅を有する貫通孔110に取り付け可能であって、かつ保持部21および嵌合部32を貫通孔110の端部に位置付けることができる。
【0034】
図7に示すように、嵌合部32は、係止面32bおよび凹部32cを有する。係止面32bは、グロメット5のフランジ部52を係止する。凹部32cは、グロメット5の管部51を保持する。係止面32bおよび凹部32cは、延出部34の側に位置する側壁部32aに設けられている。側壁部32aは、保持部21の第二側壁部21bと対向する壁部であって、第三方向Zに延在している。
【0035】
係止面32bは、側壁部32aにおける内側の壁面であって、第二方向Yを向いている。例示された係止面32bは、第二方向Yと直交する平面である。例示された側壁部32aは、第三方向Zに並ぶ二つの凹部32cを有している。凹部32cは、保持部21の凹部24と組み合わされて、管部51を通すための円形の通路を形成する。第二方向Yから見た場合の凹部32cの形状は、略U字形状である。凹部32cは、第一方向Xに沿って嵌合部32の底壁に向けて凹んでいる。
【0036】
嵌合部32の内部には、パッキン6が配置されている。パッキン6は、環状のシール部61、および押圧部62を有する。シール部61は、嵌合部32の内壁面に沿って配置されている。シール部61は、保持部21の先端面に密着して保持部21と嵌合部32との間をシールする。
【0037】
押圧部62は、側壁部32aに沿って配置されており、第三方向Zに延在している。押圧部62は、グロメット5を押圧する押圧面62aを有する。押圧面62aは、グロメット5のフランジ部52における第一方向Xを向く側面に密着する。押圧部62は、フランジ部52を保持部21に向けて押圧してフランジ部52を保持する。
【0038】
カバー3は、雄ねじ部23に対応する四つの貫通孔35を有する。四つの貫通孔35は、矩形の頂点に配置されている。四つの貫通孔35のうち、二つの貫通孔35は、主部33に配置され、他の二つの貫通孔35は、延出部34に配置されている。主部33の貫通孔35は、延出部34の側とは反対側の角部に配置されている。延出部34の貫通孔35は、主部33の側とは反対側の角部、言い換えると延出方向の先端部に配置されている。二つの凹部32cは、二つの延出部34の間に配置されている。つまり、グロメット5は、二つの延出部34の間に配置される。
【0039】
カバー3は、貫通孔35に挿通された雄ねじ部23にナットが螺合されることにより、パネル100および箱本体2に対して固定される。従って、ナットによる第一方向Xの締結力F1は、貫通孔35の部分に作用する。一方、嵌合部32には、グロメット5から受ける第一方向Xの反力F2が作用する。
【0040】
以下に説明するように、本実施形態のカバー3は、反力F2による嵌合部32の浮き上がりや変形を抑制する補強リブ36を有する。
図6および
図8に示すように、補強リブ36は、第一リブ36Aおよび第二リブ36Bを有する。補強リブ36は、パッキン6の押圧部62を支持する位置に設けられている。言い換えると、補強リブ36は、押圧部62に対して裏側に配置されている。また、補強リブ36は、カバー固定部31における第三方向Zの一端から他端まで延在している。補強リブ36の両端部には、それぞれ隆起部38が設けられている。隆起部38は、貫通孔35に隣接しており、第一方向Xに向けて隆起している。隆起部38は、締結力F1を補強リブ36に伝え、グロメット5に対する押圧力を確保すると共に、嵌合部32を補強して嵌合部32の変形を抑えることができる。
【0041】
第一リブ36Aおよび第二リブ36Bは、第二方向Yに並んで配置されている。第一リブ36Aは、第二リブ36Bよりも嵌合部32の側に配置されている。第二方向Yから見た場合の第一リブ36Aおよび第二リブ36Bの形状は、グロメット5を跨ぐアーチ形状である。第一リブ36Aの両端部には、第二リブ36Bに対して第三方向Zに突出した拡幅部36xが設けられている。
【0042】
図7に示すように、カバー3は、排水溝37を有する。排水溝37は、主部33と延出部34との境界部に配置されている。排水溝37は、カバー3の対向面3aに設けられている。対向面3aは、第一方向Xにおいて箱本体2の対向面20aと対向し、かつパネル100の第二面100bと対向する面である。排水溝37は、対向面3aの下端3bから上方に向けて第三方向Zに延在している。なお、下端3bは、電気接続箱1がパネル100に取り付けられた状態における下側の端である。排水溝37は、カバー3の下方の空間に向けて開口した排出口37aを有する。
【0043】
対向面3aは、対向領域3cを有する。対向領域3cは、箱本体2のリブ22に設けられた切欠き22dと対向する領域である。排水溝37は、対向領域3cから下方に向けて延在している。つまり、排水溝37の上部は、切欠き22dと対向する。
【0044】
図9には、箱本体2に装着されたパッキン4が示されている。パッキン4は、保持部21および四つの係止部25を囲むように箱本体2に取り付けられる。箱本体2の雄ねじ部23は、それぞれパッキン4の挿入孔4aに挿入される。箱本体2の保持部21およびリブ22は、パッキン4を位置決めする。
【0045】
より詳しくは、リブ22の第一延在部22aおよび第二延在部22bは、パッキン4の内側の縁41,42を位置決めする。内側の縁41,42は、第二方向Yに延在する直線状の縁部である。リブ22の第三延在部22cは、パッキン4の内側の縁43を位置決めする。内側の縁43は、第三方向Zに延在する直線状の縁部である。従って、リブ22は、第二方向Yおよび第三方向Zのそれぞれにおいてパッキン4を位置決めする。リブ22は、パッキン4の一部分が圧縮され過ぎることを規制し、パッキン4における圧縮率の偏りを抑制することができる。
【0046】
パッキン4が装着された箱本体2は、
図10に示すように、パネル100に対して取り付けられる。保持部21は、パネル100の貫通孔110に挿入されて第二面100bから突出する。雄ねじ部23は、パネル100の挿入孔120に挿入されて第二面100bから突出する。保持部21には、コネクタ等の部品が取り付けられる。部品に接続された電線は、グロメット5に挿通されており、グロメット5を介して外部に引き出される。
【0047】
カバー3の嵌合部32は、箱本体2の保持部21に嵌合される。雄ねじ部23は、カバー固定部31の貫通孔35に挿入されて貫通孔35から突出する。各雄ねじ部23に螺合されるナットにより、カバー3がパネル100および箱本体2に対して固定される。
【0048】
図11には、パネル100および箱本体2に対して固定されたカバー3が示されている。電気接続箱1は、箱本体2の本体固定部20およびカバー3のカバー固定部31によってパネル100を挟み込みながらパネル100に対して固定される。本実施形態の電気接続箱1では、箱本体2の対向面20aの一部が外部空間に向けて露出している。このため、矢印AR1で示すように、箱本体2とカバー3との隙間に水が入り込む可能性がある。対向面20aにおいて、露出している部分は、リブ22によって囲まれた領域である。
【0049】
本実施形態の電気接続箱1は、
図12に示すように、入り込んだ水を下方に排出することができる。箱本体2のリブ22は、隙間に入り込んだ水を受け止めることができる。リブ22によって受け止められた水は、リブ22に沿って流れて切欠き22dに入り込む。カバー3の排水溝37は、切欠き22dと対向して配置されている。よって、切欠き22dの水は、矢印AR2で示すように、排水溝37を介して排出される。排水溝37は、第二面100bから遠ざかるように凹んでいる。排水溝37および第二面100bによって、水の排出路が形成される。排水溝37の排出口37aは、下方の空間に向けて開放しており、下方に向けて水を排出することができる。このように、本実施形態の電気接続箱1は、電気接続箱1の内部に水を滞留させることなく水を外部に排出することができる。
【0050】
図11に示すように、カバー固定部31における第三方向Zの両端部には、ナットによる締結力F1が作用する。カバー3は、締結力F1によってグロメット5を押圧し、グロメット5を保持する。このときに、嵌合部32は、グロメット5からの反力F2を受ける。カバー3の補強リブ36は、反力F2による嵌合部32の変形を抑制し、パッキン6のシール性能の低下を抑制する。
【0051】
図13に示すように、第一リブ36Aは、パッキン6の押圧部62を支持するように配置されている。より詳しくは、第一リブ36Aは、押圧部62における管部51の側の端部を支持している。第二リブ36Bは、第一リブ36Aに対して第二方向Yに並べて配置されている。第二リブ36Bは、第一リブ36Aに対して嵌合部32の側とは反対側に配置されている。つまり、第一リブ36Aは、嵌合部32と第二リブ36Bとの間に配置されている。二つのリブ36A,36Bは、反力F2によるカバー3の変形を適切に抑制することができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の電気接続箱1は、箱本体2と、環状のパッキン4と、カバー3と、を有する。箱本体2は、板状の本体固定部20と、筒状の保持部21と、枠状のリブ22と、を有する。本体固定部20は、貫通孔110を有するパネル100の第一面100aに対して固定される。保持部21は、貫通孔110に挿入される。リブ22は、本体固定部20から突出している。パッキン4は、本体固定部20と第一面100aとの間に配置されて貫通孔110を囲み、本体固定部20と第一面100aとの間をシールする。カバー3は、パネル100の第二面100bに固定され、保持部21と嵌合する。
【0053】
リブ22は、貫通孔110の縁部110a,110b,110cに沿って延在し、かつパッキン4における内側の縁41,42,43を位置決めする。リブ22には、切欠き22dが設けられている。箱本体2は、切欠き22dが貫通孔110の下端に位置するようにパネル100に対して取り付けられる。カバー3は、第二面100bから遠ざかるように凹んだ排水溝37を有する。排水溝37は、切欠き22dと対向する位置から下方に向けて延在する。本実施形態の電気接続箱1は、リブ22によって囲まれる領域に水が浸入した場合に、切欠き22dおよび排水溝37を介して水を排出することができる。
【0054】
本実施形態の電気接続箱1は、貫通孔110のサイズ変更等に柔軟に対応可能である。例えば、異なる車種でパネル100が共通化される場合に、貫通孔110における第二方向Yの幅が拡大されることがある。本実施形態の電気接続箱1では、保持部21のサイズおよび位置を維持したままで、パッキン4および本体固定部20を拡張することで貫通孔110の拡幅に対応できる。また、嵌合部32のサイズおよび位置を維持したままで、延出部34によって貫通孔110の拡幅に対応できる。保持部21および嵌合部32の位置が維持されることで、部品に接続されるワイヤハーネスの長さも維持され、ワイヤハーネスの設計変更が不要となる。
【0055】
この場合に、一対の延出部34の間において箱本体2の対向面20aが露出してしまうことがある。例えば、本実施形態のように保持部21および嵌合部32によってグロメット5を挟み込む場合、止水性能を確保しつつカバー3によって対向面20aの全体を覆うことは難しい。本実施形態の電気接続箱1では、対向面20aの一部が露出したとしても、リブ22の切欠き22dおよび排水溝37によって水を外部に排出することができる。
【0056】
本実施形態の電気接続箱1は、筒状のグロメット5を有する。カバー3は、嵌合部32と、板状のカバー固定部31と、を有する。嵌合部32は、保持部21と嵌合してグロメット5を保持する。カバー固定部31は、第二面100bに対して固定される。カバー固定部31は、グロメット5を間においてカバー固定部31の両端に配置された一対の延出部34を有する。延出部34は、グロメット5の延在方向である第二方向Yに沿って嵌合部32から延出しており、貫通孔35を有する。本実施形態では、貫通孔35に対して締結部材の一例である雄ねじ部23が挿入される。
【0057】
カバー固定部31は、嵌合部32を補強する補強リブ36を有する。補強リブ36は、一対の延出部34の並び方向である第三方向Zに沿ってカバー固定部31の一端から他端まで延在している。補強リブ36は、締結部材による締結力を嵌合部32に伝え、かつ嵌合部32の変形を抑制することができる。
【0058】
本実施形態の補強リブ36は、第三方向Zに並ぶ第一リブ36Aおよび第二リブ36Bを含む。補強リブ36は、三つ以上のリブを有していてもよい。第一リブ36Aおよび第二リブ36Bが並べて配置されることで、嵌合部32が適切に補強される。
【0059】
[実施形態の変形例]
箱本体2およびカバー3の形状は、例示された形状には限定されない。例えば、延出部34の形状および配置は、実施形態で例示された形状および配置には限定されない。電気接続箱1が保持するグロメット5の本数は、2本には限定されない。
【0060】
電気接続箱1は、グロメット5を有していなくてもよい。この場合に、カバー3は、上記実施形態と同様に箱本体2の対向面20aを露出させるように形成されてもよい。これにより、カバー3の小型化および軽量化が可能である。
【0061】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:電気接続箱、 2:箱本体、 3:カバー、 4:パッキン、 5:グロメット
6:パッキン
20:本体固定部、 20a:対向面
21:保持部、21a:第一側壁部、 21b:第二側壁部
22:リブ、 22a:第一延在部、 22b:第二延在部、 22c:第三延在部
23:雄ねじ部、 24:凹部、 25:係止部
31:カバー固定部
32:嵌合部、 32a:側壁部、 32b:係止面、 32c:凹部
33:主部、 34:延出部、 35:貫通孔
36:補強リブ、 36A:第一リブ、 36B:第二リブ
37:排水溝、 37a:排出口、 38:隆起部
41,42,43:内側の縁
51:管部、 52:フランジ部
61:シール部、 62:押圧部
100:パネル、 100a第一面、 100b:第二面
110:貫通孔、 110a:第一縁部、 110b:第二縁部
110c:第三縁部
120:挿入孔
F1:締結力、 F2:反力
X:第一方向、 Y:第二方向、 Z:第三方向