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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101659
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/00 20060101AFI20240723BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B60C9/00 G
B60C9/00 C
B60C9/00 D
B60C9/22 D
B60C9/22 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005680
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 隆充
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 飛鳥
(72)【発明者】
【氏名】藤森 弘章
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA37
3D131AA48
3D131BA02
3D131BA11
3D131BA20
3D131BB01
3D131BC13
3D131BC31
3D131DA54
3D131DA56
(57)【要約】
【課題】 高速走行性能を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 トレッド1部と一対のサイドウォール部2と一対のビード部3とを備え、これら一対のビード部3,3間にカーカス層4が装架され、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側にタイヤ周方向に対して傾斜するベルトコードを含む複数層のベルト層7が配置され、ベルト層7の外周側にタイヤ周方向に配向する有機繊維コードCを含むベルトカバー層8が配置された空気入りタイヤにおいて、ベルトカバー層8に使用される有機繊維コードCは、弾性率が10000MPa以上である高弾性繊維ヤーンとナイロン56からなる低弾性繊維ヤーンとが撚り合わされた複合コードであり、高弾性繊維ヤーンの下撚り係数Hと低弾性繊維ヤーンの下撚り係数Lとの比L/Hが0.70以上1.30以下である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、これら一対のビード部間にカーカス層が装架され、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側にタイヤ周方向に対して傾斜するベルトコードを含む複数層のベルト層が配置され、該ベルト層の外周側にタイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含むベルトカバー層が配置された空気入りタイヤにおいて、
前記ベルトカバー層に使用される有機繊維コードは、弾性率が10000MPa以上である高弾性繊維ヤーンとナイロン56からなる低弾性繊維ヤーンとが撚り合わされた複合コードであり、下式(1)で表される前記高弾性繊維ヤーンの下撚り係数Hと下式(2)で表される前記低弾性繊維ヤーンの下撚り係数Lとの比L/Hが0.70以上1.30以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。
H=TH√(DH/ρH) ・・・(1)
L=TL√(DL/ρL) ・・・(2)
但し、THは高弾性繊維ヤーンの下撚り数(回/10cm)であり、DHは高弾性繊維ヤーンの繊度(dtex)であり、ρHは高弾性繊維ヤーンの密度(g/cm3)であり、TLは低弾性繊維ヤーンの下撚り数(回/10cm)であり、DLは低弾性繊維ヤーンの繊度(dtex)であり、ρLは低弾性繊維ヤーンの密度(g/cm3)である。
【請求項2】
前記高弾性繊維ヤーンの下撚り係数Hと前記低弾性繊維ヤーンの下撚り係数Lとの比L/Hが0.90以上1.15以下であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記高弾性繊維ヤーンの下撚り数が26回/10cm以上30回/10cm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機繊維コードからなるベルトカバー層を備えた空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、高速走行性能を改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいて、一対のビード部間にはカーカス層が装架され、トレッド部におけるカーカス層の外周側にはタイヤ周方向に対して傾斜するベルトコードを含む複数層のベルト層が配置され、該ベルト層の外周側にはタイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含むベルトカバー層が配置されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ベルトカバー層は、高速走行時におけるベルト層のせり上がりを抑制し、高速走行時における走行性能の改善に寄与する。ベルトカバー層の有機繊維コードとして、高弾性繊維ヤーン(例えば、アラミド繊維ヤーン)と低弾性繊維ヤーン(例えば、ナイロン66繊維ヤーン)とが撚り合わされた複合コードを用いることが提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0004】
上述のような複合コードは、高弾性繊維ヤーンに基づく良好なタガ効果を発揮すると共に、タイヤ成形時のリフト変形にも追従可能であるため、ベルトカバー層の構成材料として好適である。しかしながら、近年の高速走行性能の要求に対して、ベルトカバー層に基づく高速走行性能の改善効果を更に高めることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6456784号公報
【特許文献2】特開2013-1236号公報
【特許文献3】特開2013-147214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高速走行性能を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、これら一対のビード部間にカーカス層が装架され、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側にタイヤ周方向に対して傾斜するベルトコードを含む複数層のベルト層が配置され、該ベルト層の外周側にタイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含むベルトカバー層が配置された空気入りタイヤにおいて、
前記ベルトカバー層に使用される有機繊維コードは、弾性率が10000MPa以上である高弾性繊維ヤーンとナイロン56からなる低弾性繊維ヤーンとが撚り合わされた複合コードであり、下式(1)で表される前記高弾性繊維ヤーンの下撚り係数Hと下式(2)で表される前記低弾性繊維ヤーンの下撚り係数Lとの比L/Hが0.70以上1.30以下であることを特徴とするものである。
H=TH√(DH/ρH) ・・・(1)
L=TL√(DL/ρL) ・・・(2)
但し、THは高弾性繊維ヤーンの下撚り数(回/10cm)であり、DHは高弾性繊維ヤーンの繊度(dtex)であり、ρHは高弾性繊維ヤーンの密度(g/cm3)であり、TLは低弾性繊維ヤーンの下撚り数(回/10cm)であり、DLは低弾性繊維ヤーンの繊度(dtex)であり、ρLは低弾性繊維ヤーンの密度(g/cm3)である。
【発明の効果】
【0008】
本発明者は、空気入りタイヤのベルトカバー層について鋭意研究した結果、熱収縮性が高いナイロン56からなる低弾性繊維ヤーンを高弾性繊維ヤーンに対して組み合わせた複合コードをベルトカバー層に使用し、各ヤーンの下撚り係数を規定することにより、高速走行性能の改善効果が顕在化することを知見し、本発明に至ったのである。
【0009】
即ち、本発明では、ベルトカバー層に使用される有機繊維コードは、弾性率が10000MPa以上である高弾性繊維ヤーンとナイロン56からなる低弾性繊維ヤーンとが撚り合わされた複合コードであり、高弾性繊維ヤーンの下撚り係数Hと低弾性繊維ヤーンの下撚り係数Lとの比L/Hが0.70以上1.30以下であることにより、高速操縦安定性や高速耐久性に代表される高速走行性能を従来よりも大幅に改善することができる。
【0010】
本発明において、高弾性繊維ヤーンの下撚り係数Hと低弾性繊維ヤーンの下撚り係数Lとの比L/Hは0.90以上1.15以下であることが好ましい。これにより、高速走行性能を効果的に改善することができる。
【0011】
高弾性繊維ヤーンの下撚り数は26回/10cm以上30回/10cm以下であることが好ましい。これにより、高速走行性能を効果的に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線断面図である。
図2図1の空気入りタイヤのベルト層及びベルトカバー層を抽出して示す展開図である。
図3】(a)~(c)はそれぞれベルトカバー層を構成する有機繊維コードを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0015】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本のカーカスコードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。カーカス層4のカーカスコードとしては、レーヨン繊維コードやポリエステル繊維コードのような有機繊維コードが好ましく使用される。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0016】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本のベルトコードを含み、かつ層間でベルトコードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、ベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。ベルト層7のベルトコードとしては、スチールコードが好ましく使用される。
【0017】
ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、有機繊維コードCをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなるベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8としては、ベルト層7の幅方向の全域を覆うフルカバー層や、ベルト層7のタイヤ幅方向の両端部を局所的に覆う一対のエッジカバー層をそれぞれ単独で、またはこれらを組み合わせて設けることができる。ベルトカバー層8は、例えば、図2に示すように、少なくとも1本の有機繊維コードCを引き揃えてコートゴムで被覆したストリップ材10をタイヤ周方向に螺旋状に巻回して構成することができる。
【0018】
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
【0019】
上述した空気入りタイヤにおいて、ベルトカバー層8を構成する有機繊維コードCとして、図3(a)~(c)に示すように、弾性率が10000MPa以上である高弾性繊維ヤーンYHとナイロン56からなる低弾性繊維ヤーンYLとが撚り合わされた複合コードが使用されている。複合コードを構成するにあたって、高弾性繊維ヤーンYH及び低弾性繊維ヤーンYLの本数は特に限定されるものではない。例えば、図3(a)のように1本の高弾性繊維ヤーンYHと1本の低弾性繊維ヤーンYLとを撚り合わせたり、図3(b)のように2本の高弾性繊維ヤーンYHと1本の低弾性繊維ヤーンYLとを撚り合わせたり、図3(c)のように1本の高弾性繊維ヤーンYHと2本の低弾性繊維ヤーンYLとを撚り合わせたりすることができる。
【0020】
高弾性繊維ヤーンYHの「弾性率」は、JIS L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、つかみ間隔250mm、引張速度300±20mm/分の条件にて引張試験を実施したときの荷重-歪み曲線から求められる弾性率である。このような高弾性繊維ヤーンYHとして、例えば、アラミド繊維ヤーンが例示される。高弾性繊維ヤーンYHの弾性率が10000MPa未満であると、高速耐久性を十分に確保することができない。
【0021】
一方、低弾性繊維ヤーンYLを構成するナイロン56は、下記化学反応式のように、1,5ペンタンジアミン(C5142)とアジピン酸(C6104)との重合(nは整数)により生成される。1,5ペンタンジアミンは、例えば、トウモロコシから得られるブドウ糖を発酵させることで生成可能である。ナイロン56の原料として、トウモロコシ由来の原料(1,5ペンタンジアミン)を使用した場合、石油由来の原料の使用量を削減することができるという利点がある。
【0022】
【化1】
【0023】
有機繊維コードCにおいて、下式(1)で表される高弾性繊維ヤーンYHの下撚り係数Hと下式(2)で表される低弾性繊維ヤーンYLの下撚り係数Lとの比L/Hが0.70以上1.30以下に設定されている。
H=TH√(DH/ρH) ・・・(1)
L=TL√(DL/ρL) ・・・(2)
但し、THは高弾性繊維ヤーンYHの下撚り数(回/10cm)であり、DHは高弾性繊維ヤーンYHの繊度(dtex)であり、ρHは高弾性繊維ヤーンYHの密度(g/cm3)であり、TLは低弾性繊維ヤーンYLの下撚り数(回/10cm)であり、DLは低弾性繊維ヤーンYLの繊度(dtex)であり、ρLは低弾性繊維ヤーンYLの密度(g/cm3)である。
【0024】
上述した空気入りタイヤでは、ベルトカバー層8に使用される有機繊維コードCは、弾性率が10000MPa以上である高弾性繊維ヤーンYHとナイロン56からなる低弾性繊維ヤーンYLとが撚り合わされた複合コードであり、高弾性繊維ヤーンYHの下撚り係数Hと低弾性繊維ヤーンYLの下撚り係数Lとの比L/Hが0.70以上1.30以下であることにより、高速操縦安定性や高速耐久性に代表される高速走行性能を従来よりも大幅に改善することができる。
【0025】
特に、低弾性繊維ヤーンYLとして熱収縮性が高いナイロン56を用いることにより、高速走行時のタイヤの外径成長が抑制されるので、高速走行性能を改善することができる。ここで、高弾性繊維ヤーンYHの下撚り係数Hと低弾性繊維ヤーンYLの下撚り係数Lとの比L/Hが0.70よりも小さい(即ち、ナイロン56からなる低弾性繊維ヤーンYLの撚り数が少な過ぎる)と、低弾性繊維ヤーンYLの耐疲労性が悪化するため、高速耐久性が低下する。一方、比L/Hが1.30よりも大きい(即ち、ナイロン56からなる低弾性繊維ヤーンYLの撚り数が多過ぎる)と、高弾性繊維ヤーンYHがコード中で突っ張ることで耐疲労性が悪化し、更にはナイロン56の熱収縮による効果が発揮され難くなるため、高速耐久性が低下する。特に、高弾性繊維ヤーンYHの下撚り係数Hと低弾性繊維ヤーンYLの下撚り係数Lとの比L/Hが0.90以上1.15以下である場合、高速走行性能の改善効果が高くなる。
【0026】
高弾性繊維ヤーンYHの下撚り係数Hは750~1150の範囲にあり、低弾性繊維ヤーンYLの下撚り係数Lは650~1250の範囲にあると良い。高弾性繊維ヤーンYHの下撚り係数H及び低弾性繊維ヤーンYLの下撚り係数Lをそれぞれ上記範囲に設定することにより、良好な高速走行性能を発揮することができる。高弾性繊維ヤーンYHの下撚り係数Hが高過ぎると高速走行性能の改善効果が低下し、逆に低過ぎると耐疲労性が悪化する。低弾性繊維ヤーンYLの下撚り係数Lが高過ぎると高速走行性能の改善効果が低下し、逆に低過ぎると耐疲労性が悪化する。
【0027】
また、高弾性繊維ヤーンYHの下撚り数THは26回/10cm以上30回/10cm以下であると良い。高弾性繊維ヤーンYHの下撚り数THを上記範囲に設定することにより、良好な高速走行性能を発揮することができる。高弾性繊維ヤーンYHの下撚り数THが多過ぎると高速走行性能の改善効果が低下し、逆に少な過ぎると耐疲労性が悪化する。なお、低弾性繊維ヤーンYLの下撚り数TLは18回/10cm以上37回/10cm以下であると良い。そして、高弾性繊維ヤーンYHと低弾性繊維ヤーンYLとを撚り合わせて複合コードを構成するにあたって、その上撚り数は26回/10cm以上30回/10cm以下であると良い。
【0028】
更に、高弾性繊維ヤーンYHの繊度DHは1000dtex~1700dtexの範囲にあり、低弾性繊維ヤーンYLの繊度DLは900dtex~1500dtexの範囲にあると良い。高弾性繊維ヤーンYHの繊度DH及び低弾性繊維ヤーンYLの繊度DLをそれぞれ上記範囲に設定することにより、良好な高速走行性能を発揮することができる。
【実施例0029】
タイヤサイズが245/40R18であり、トレッド部と一対のサイドウォール部と一対のビード部とを備え、これら一対のビード部間にカーカス層が装架され、トレッド部におけるカーカス層の外周側にタイヤ周方向に対して傾斜するベルトコードを含む複数層のベルト層が配置され、該ベルト層の外周側にタイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含むベルトカバー層が配置された空気入りタイヤにおいて、ベルトカバー層の有機繊維コードとして、高弾性繊維ヤーンと低弾性繊維ヤーンとが撚り合わされた複合コードを使用し、その仕様を種々異ならせた従来例、比較例1~2及び実施例1~9のタイヤを製作した。
【0030】
複合コードの仕様として、高弾性繊維ヤーンの材質及び弾性率、低弾性繊維ヤーンの材質及び熱収縮率、高弾性繊維ヤーンの下撚り数TH、高弾性繊維ヤーンの下撚り係数H、低弾性繊維ヤーンの下撚り数TL、低弾性繊維ヤーンの下撚り係数L、比L/Hを表1のように設定した。高弾性繊維ヤーンについて、アラミド繊維ヤーンを用いた場合を「アラミド」と表示した。低弾性繊維ヤーンについて、ナイロン66繊維ヤーンを用いた場合を「N66」と表示し、ナイロン56繊維ヤーンを用いた場合を「N56」と表示した。「熱収縮率」は、JIS L1017の「化学繊維タイヤコード試験方法」に準拠し、試料長さ500mm、加熱条件150℃×30分の条件にて加熱したときに測定される試料コードの乾熱収縮率(%)である。
【0031】
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、高速操縦安定性、高速耐久性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0032】
高速操縦安定性:
各試験タイヤをリムサイズ18×7.0Jのホイールに組み付けて、空気圧を200kPaとして排気量2000ccのFR乗用車に装着し、訓練された5名のテストドライバーにてテストコースを120km/h以上の速度で走行し、操縦安定性について官能評価を行った。評価結果は、従来例に対する相対評価とし、以下の判定基準に基づく5点法で採点し、最高点と最低点を除いた3名の平均点で示した。この評価点が大きいほど高速操縦安定性が優れていることを意味する。
[判定基準]
5:素晴らしい、4:優れる、3.5:やや優れる、3:基準同等、2.5:やや劣る(実用下限)、2:劣る、1:大きく劣る
【0033】
高速耐久性:
各試験タイヤをリムサイズ18×7.0Jのホイールに組み付けて、空気圧を220kPaとして、ドラム表面が平滑な鋼製でかつ直径が1707mmであるドラム試験機に装着し、周辺温度を38±3℃に制御しながら走行試験を実施した。走行試験では、初期速度を120km/hとし、荷重をJATMA最大荷重の88%とする条件下で20分間走行させ、完走したら引き続き速度を10km/hだけ上昇させて20分間走行させた。このようにして速度上昇と20分間走行を中断することなく繰り返し、タイヤが破壊するまで試験を続け、破壊までの総走行距離を計測した。評価結果は、従来例を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど高速耐久性が優れていることを意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から判るように、実施例1~9のタイヤは、ナイロン66からなる低弾性繊維ヤーンを用いた従来例との対比において、高速操縦安定性及び高速耐久性が改善されていた。一方、比較例1のタイヤでは、高弾性繊維ヤーンの下撚り係数Hと低弾性繊維ヤーンの下撚り係数Lとの比L/Hが低過ぎるため、高速耐久性が悪化していた。また、比較例2のタイヤでは、高弾性繊維ヤーンの下撚り係数Hと低弾性繊維ヤーンの下撚り係数Lとの比L/Hが高過ぎるため高速耐久性が悪化していた。
【符号の説明】
【0036】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 ベルトカバー層
10 ストリップ材
C 有機繊維コード
H 高弾性繊維ヤーン
L 低弾性繊維ヤーン
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、これら一対のビード部間にカーカス層が装架され、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側にタイヤ周方向に対して傾斜するベルトコードを含む複数層のベルト層が配置され、該ベルト層の外周側にタイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含むベルトカバー層が配置された空気入りタイヤにおいて、
前記ベルトカバー層に使用される有機繊維コードは、弾性率が10000MPa以上である高弾性繊維ヤーンとナイロン56からなる低弾性繊維ヤーンとが撚り合わされた複合コードであり、下式(1)で表される前記高弾性繊維ヤーンの下撚り係数Hと下式(2)で表される前記低弾性繊維ヤーンの下撚り係数Lとの比L/Hが0.70以上1.30以下であり、前記高弾性繊維ヤーンの下撚り係数Hが750~1150の範囲にあり、前記低弾性繊維ヤーンの下撚り係数Lが650~1250の範囲にあることを特徴とする空気入りタイヤ。
H=TH√(DH/ρH) ・・・(1)
L=TL√(DL/ρL) ・・・(2)
但し、THは高弾性繊維ヤーンの下撚り数(回/10cm)であり、DHは高弾性繊維ヤーンの繊度(dtex)であり、ρHは高弾性繊維ヤーンの密度(g/cm3)であり、TLは低弾性繊維ヤーンの下撚り数(回/10cm)であり、DLは低弾性繊維ヤーンの繊度(dtex)であり、ρLは低弾性繊維ヤーンの密度(g/cm3)である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、これら一対のビード部間にカーカス層が装架され、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側にタイヤ周方向に対して傾斜するベルトコードを含む複数層のベルト層が配置され、該ベルト層の外周側にタイヤ周方向に配向する有機繊維コードを含むベルトカバー層が配置された空気入りタイヤにおいて、
前記ベルトカバー層に使用される有機繊維コードは、弾性率が10000MPa以上である高弾性繊維ヤーンとナイロン56からなる低弾性繊維ヤーンとが撚り合わされた複合コードであり、下式(1)で表される前記高弾性繊維ヤーンの下撚り係数Hと下式(2)で表される前記低弾性繊維ヤーンの下撚り係数Lとの比L/Hが0.70以上1.30以下であり、前記高弾性繊維ヤーンの下撚り係数Hが750~1150の範囲にあり、前記低弾性繊維ヤーンの下撚り係数Lが650~1250の範囲にあることを特徴とするものである。
H=TH√(DH/ρH) ・・・(1)
L=TL√(DL/ρL) ・・・(2)
但し、THは高弾性繊維ヤーンの下撚り数(回/10cm)であり、DHは高弾性繊維ヤーンの繊度(dtex)であり、ρHは高弾性繊維ヤーンの密度(g/cm3)であり、TLは低弾性繊維ヤーンの下撚り数(回/10cm)であり、DLは低弾性繊維ヤーンの繊度(dtex)であり、ρLは低弾性繊維ヤーンの密度(g/cm3)である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3