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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101671
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】折曲刃及びレシプロ式折曲機
(51)【国際特許分類】
   B65H 45/20 20060101AFI20240723BHJP
   B01D 39/00 20060101ALI20240723BHJP
   B01D 46/52 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
B65H45/20
B01D39/00 B
B01D46/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005699
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】新郷 正浩
(72)【発明者】
【氏名】藤田 陽佑
(72)【発明者】
【氏名】丸山 雄丞
【テーマコード(参考)】
3F108
4D019
4D058
【Fターム(参考)】
3F108AA01
3F108AB04
3F108AC10
3F108BA04
3F108BA09
3F108BB02
3F108BB21
3F108CB31
3F108CD03
4D019AA01
4D019BA12
4D019BA13
4D019BB05
4D019BC06
4D019BC10
4D019CA02
4D019CB04
4D019CB06
4D019CB07
4D058JA14
4D058JB22
4D058SA01
4D058SA13
4D058SA20
(57)【要約】
【課題】レシプロ式折曲機の折曲高速化を図りつつろ材のプリーツ高さのばらつきを抑制することができる折曲刃及びレシプロ式折曲機を提供する。
【解決手段】本折曲刃(上刃3及び下刃4)は、ろ材2をプリーツ状に折り曲げるレシプロ式折曲機1に用いられるものであって、表面にろ材との摩擦力を低減させる摩擦低減構造9A~9Fが設けられている。摩擦低減構造は、レシプロ式折曲機におけるろ材の送り方向Dの下流側を向く折曲刃の下流側表面32に設けられていることが好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ材をプリーツ状に折り曲げるレシプロ式折曲機に用いられる折曲刃であって、
表面に前記ろ材との摩擦力を低減させる摩擦低減構造が設けられていることを特徴とする折曲刃。
【請求項2】
前記摩擦低減構造は、前記レシプロ式折曲機における前記ろ材の送り方向の下流側を向く前記折曲刃の下流側表面に設けられている請求項1に記載の折曲刃。
【請求項3】
前記摩擦低減構造は、前記折曲刃の下流側表面において刃先から刃元側に向かう所定間隔にわたって設けられている請求項2に記載の折曲刃。
【請求項4】
前記摩擦低減構造は、前記折曲刃の下流側表面と刃先側の先端面とに設けられている請求項2に記載の折曲刃。
【請求項5】
前記摩擦低減構造は、シボ部、スリット、リブ、低摩擦層、凹部又は貫通孔により構成されている請求項1に記載の折曲刃。
【請求項6】
ろ材をプリーツ状に折り曲げるレシプロ式折曲機であって、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の折曲刃を備えることを特徴とするレシプロ式折曲機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は折曲刃及びこれを備えるレシプロ式折曲機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレシプロ式折曲機として、ろ材をプリーツ状に折り曲げるものが一般に知られている(例えば、特許文献1等を参照)。レシプロ式折曲機では、例えば、図12に示すように、互いに協働して折曲動作を行う上刃103及び下刃104を備え、各刃103、104の折曲動作によりろ材102がプリーツ状に折り曲げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-300612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、プリーツ状のろ材製品(特にキャビンエアフィルタ)が多品種化している。カーボンニュートラルで燃費・消費電力向上のための低圧損脱臭ろ材やEV車両等の製品ラインナップが年々増加し多品種化している。より具体的に、花粉・ほこり除去用、排ガス脱臭用、PM2.5捕捉用、抗菌・抗カビ用、アレル物質除去用、食事臭除去用、肌水分アップのためのビタミンC放出用などの各種のろ材製品が開発されている。
【0005】
ここで、多品種少量生産での加工費低減のためにはレシプロ式折曲機の折曲高速化が求められる。しかしながら、従来のレシプロ式折曲機では、単純に高速化すると、下刃104がろ材102の山部102aから抜ける際に下刃104との摩擦抵抗によりろ材102が下方に引っ張られたり(図12(b)参照)、上刃103がろ材102の谷部102bから抜ける際に上刃103との摩擦抵抗によりろ材102が上方に引っ張られたりする。その結果、折り曲げられたろ材102のプリーツ高さにばらつきが生じてしまう(図13参照)。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、レシプロ式折曲機の折曲高速化を図りつつろ材のプリーツ高さのばらつきを抑制することができる折曲刃及びレシプロ式折曲機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の通りである。
1.ろ材をプリーツ状に折り曲げるレシプロ式折曲機に用いられる折曲刃であって、
表面に前記ろ材との摩擦力を低減させる摩擦低減構造が設けられていることを特徴とする折曲刃。
2.前記摩擦低減構造は、前記レシプロ式折曲機における前記ろ材の送り方向の下流側を向く前記折曲刃の下流側表面に設けられている上記1.に記載の折曲刃。
3.前記摩擦低減構造は、前記折曲刃の下流側表面において刃先から刃元側に向かう所定間隔にわたって設けられている上記2.に記載の折曲刃。
4.前記摩擦低減構造は、前記折曲刃の下流側表面と刃先側の先端面とに設けられている上記2.に記載の折曲刃。
5.前記摩擦低減構造は、シボ部、スリット、リブ、低摩擦層、凹部又は貫通孔により構成されている上記1.に記載の折曲刃。
6.ろ材をプリーツ状に折り曲げるレシプロ式折曲機であって、
上記1.乃至5.のいずれか一項に記載の折曲刃を備えることを特徴とするレシプロ式折曲機。
【発明の効果】
【0008】
本発明の折曲刃によると、表面にろ材との摩擦力を低減させる摩擦低減構造が設けられている。これにより、折曲刃とろ材の摩擦力が低減されるため、折曲刃の折曲動作に追従してろ材が引っ張られ難くなる。その結果、レシプロ式折曲機の折曲高速化を図りつつろ材のプリーツ高さのばらつきを抑制することができる。
本発明のレシプロ式折曲機によると、上記の折曲刃を備える。よって、レシプロ式折曲機の折曲高速化を図りつつろ材のプリーツ高さのばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
図1】実施形態に係るレシプロ式折曲機の説明図であり、(a)は正面図を示し、(b)はb-b線断面図を示す。
図2】実施形態に係る上刃及び下刃の説明図であり、(a)は斜視図を示し、(b)はb-b線断面拡大図を示す。
図3】レシプロ式折曲機の作用説明図であり、(a)は上刃が第2曲げ閉じで且つ下刃が逃げ閉じの状態を示し、(b)は上刃が第2曲げ閉じで且つ下刃が逃げ開きの状態を示し、(c)は上刃が第2曲げ閉じで且つ下刃が第1曲げ閉じの状態を示す。
図4】レシプロ式折曲機の作用説明図であり、(d)は上刃が逃げ閉じで且つ下刃が第2曲げ閉じの状態を示し、(e)は上刃が逃げ開きで且つ下刃が第2曲げ閉じの状態を示し、(f)は上刃が第1曲げ閉じで且つ下刃が第2曲げ閉じの状態を示す。
図5】レシプロ式折曲機の作用説明図であり、(a)は図3(c)の要部拡大図を示し、(b)は図4(f)の要部拡大図を示す。
図6】他の形態に係る上刃及び下刃の説明図であり、(a)は斜視図を示し、(b)はb-b線断面拡大図を示す。
図7】更なる他の形態に係る上刃及び下刃の説明図であり、(a)は斜視図を示し、(b)はb-b線断面拡大図を示す。
図8】更なる他の形態に係る上刃及び下刃の説明図であり、(a)は斜視図を示し、(b)はb-b線断面拡大図を示す。
図9】更なる他の形態に係る上刃及び下刃の説明図であり、(a)は斜視図を示し、(b)はb-b線断面拡大図を示す。
図10】更なる他の形態に係る上刃及び下刃の説明図であり、(a)は斜視図を示し、(b)はb-b線断面拡大図を示す。
図11】更なる他の形態に係る上刃及び下刃の説明図であり、(a)は摩擦低減構造が刃の上流側表面及び下流側表面に設けられた形態を示し、(b)は摩擦低減構造が刃の上流側表面に設けられ下流側表面に設けられていない形態を示し、(c)は摩擦低減構造が刃の刃先と刃元の中間部に設けられた形態を示す。(d)は摩擦低減構造が刃の先端面に設けられていない形態を示す。
図12】従来のレシプロ式折曲機の説明図であり、(a)は下刃が上端位置に位置する状態を示し、(b)は下刃が上端位置から下降する状態を示す。
図13】従来のレシプロ式折曲機(折曲高速化)で得られたろ材の画像処理図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
以下、図面を用いて実施形態により本発明を具体的に説明する。
【0012】
本実施形態に係るレシプロ式折曲機1(以下、単に「折曲機1」とも称する。)は、図1に示すように、送り方向Dに送られるシート状のろ材2′をプリーツ状のろ材2に折り曲げるものである。折曲機1は、互いに協働して折曲動作を行う上刃3及び下刃4(本発明に係る「折曲刃」として例示する。)を備えている。
【0013】
なお、ろ材2の材質、プリーツ形状、用途などは特に問わない。ろ材2の材料としては、合成樹脂繊維からなる不織布又は織布が好ましいが、濾過性能を有するものであれば濾紙などの他の材料を用いることもできる。また、単層のろ材2を採用してもよいし、2層以上の多層のろ材2を採用してもよい。さらに、プリーツ状のろ材製品(特にキャビンエアフィルタ)としては、例えば、花粉・ほこり除去用、排ガス脱臭用、PM2.5捕捉用、抗菌・抗カビ用、アレル物質除去用、食事臭除去用、肌水分アップのためのビタミンC放出用などが挙げられる。
【0014】
本実施形態に係る上刃3及び下刃4は、図2に示すように、矩形板状(長方形の他に正方形の板状も含む。)に形成されている。各刃3、4は金属製である。また、各刃3、4は、一辺をなす刃先3a、4aを含む刃先部6と、刃先3a、4aと反対側の一辺を含む基部7と、刃先部6と基部7を連絡する連絡部8と、を有している。刃先部6は、刃先3a、4aに向かって板厚が小さくなっている。また、基部7及び連絡部8は、各一定の板厚を有している。さらに、連絡部8の板厚tは、基部7の板厚より小さな値である。
【0015】
なお、各刃3、4の材質、形状等は特に限定されず、ろ材2をプリーツ状に折り曲げ得る限り、他の形態(例えば、合成樹脂製の刃)を採用してもよい。さらに、図1図3及び図4については上刃3及び下刃4の形状(厚み方向の表現等)は簡略化して記載されている。
【0016】
上刃3及び下刃4は、折曲機1におけるろ材2の送り方向Dの上流側を向く上流側表面31と、ろ材2の送り方向Dの下流側を向く下流側表面32と、両表面31、32を繋ぐ刃先側の先端面33と、を有している。下流側表面32は、刃先3a、4aから刃元3b、4b側に向かって延びる平面32aを有している。また、上流側表面31は、平面32aに対して傾斜して延びる刃先側のテーパ面31aと、テーパ面31aと連なり平面32aに対して略平行に延びる平面31bと、を有している。これらテーパ面31a及び平面31bによって後述する各刃3、4の折曲動作中に上流側表面31とろ材2との間に隙間Sが形成され易くなる(図5参照)。
【0017】
上刃3及び下刃4のろ材2と接触する表面には、ろ材2との摩擦力(即ち、各刃3、4とろ材2の間に生じる摩擦抵抗)を低減させる摩擦低減構造9Aが設けられている。摩擦低減構造9Aは凹凸状のシボ部35により構成されている。シボ部35は、各刃3、4の下流側表面32と先端面33に設けられており、上流側表面31に設けられていない。また、シボ部35は、各刃3、4の下流側表面32において刃先3a、4aから刃元3b、4b側に向かう所定間隔L(例えば、40mm)にわたって設けられている。所定間隔Lはろ材2のプリーツ高さhに応じて決められる。
【0018】
なお、シボ部35を有する表面は、平滑面と比べて、ろ材2に対する接触面積が小さくろ材2の張り付きを抑制してろ材2との摩擦力を低減できる。また、シボ部35としては、例えば、皮革、梨地、木目、岩目、砂目、布地、幾何学模様等を採用できる。さらに、シボ部35の凹部の底面と凸部の頂点との最大間隔L1(即ち、摩擦低減構造9Aの厚みL1)としては、例えば、0.05~2.0mmが挙げられる。また、シボ部35としては、例えば、同じ大きさの凸部が等間隔に複数設けられている形態としてもよい。また、凸部は、刃3、4の表面に形成された一段下がった面に設けられていてもよい。これにより、刃3、4の厚みの増加を抑制できる。さらに、複数の凸部は、マトリックス状に配置されていてもよいし、千鳥状に配置されていてもよい。
【0019】
上刃3及び下刃4は、図1に示すように、公知の上下駆動機構11及び開閉駆動機構12により互いに協働して所定の折曲動作(即ち昇降開閉動作)を行う。具体的に、各刃3、4は、逃げ閉じS1、逃げ開きS2、第1曲げ閉じS3及び第2曲げ閉じS4の各状態を繰り返すことで、6つのステップ(図3(a)~(c)及び図4(d)~(f)参照)を順に繰り返して折曲動作を行う。ただし、各刃3、4の折曲動作は特に限定されず、ろ材2をプリーツ状に折り曲げ得る限り、他の折曲動作を採用してもよい。
【0020】
なお、図1中の符号21は、ろ材2を賦形するためのヒータである。さらに、図1中の符号22は、後述の各駆動機構11、12に接続されて各刃3、4を支持する支持体である。
【0021】
上刃3において、逃げ閉じS1は、刃開き0(即ち刃が略垂直姿勢)で上端位置まで到達した状態である(図4(d)参照)。また、逃げ開きS2は、刃を開きながら第1曲げ閉じS3へ動作する準備状態である(図4(e)参照)。また、第1曲げ閉じS3は、下端位置に到達後にわずかに刃が開いた状態である(図4(f)参照)。さらに、第2曲げ閉じS4は、刃開き0で下端位置まで到達した状態である(図3(a)~(c)参照)。
【0022】
下刃4において、逃げ閉じS1は、刃開き0(即ち刃が略垂直姿勢)で下端位置まで到達した状態である(図3(a)参照)。また、逃げ開きS2は、刃を開きながら第1曲げ閉じS3へ動作する準備状態である(図3(b)参照)。また、第1曲げ閉じS3は、上端位置に到達後にわずかに刃が開いた状態である(図3(c)参照)。さらに、第2曲げ閉じS4は、刃開き0で上端位置まで到達した状態である(図4(d)~(f)参照)。
【0023】
次に、上記構成のレシプロ式折曲機1の作用効果について説明する。上刃3及び下刃4が協働して折曲動作を行うことで、送り方向Dに送られるシート状のろ材2′がプリーツ状のろ材2に折り曲げられる(図3及び図4参照)。
【0024】
各刃3、4の折曲動作中において、図5に示すように、プリーツ状に折り曲げられたろ材2には、図示しないシリンダ等の駆動源の作用により各ひだが密着又は近接するように送り方向Dと反対側に向かって押圧力Pがかけられる。そのため、上刃3がろ材2の谷部2bから抜ける際(図5(a)参照)に、上刃3の下流側表面32(具体的に下流側表面32の刃先3aから刃元3b側に向かう所定間隔の領域)とろ材2が密着する一方、上刃3の上流側表面31とろ材2との間に隙間Sが形成される。このとき、摩擦低減構造9Aにより互いに密着する上刃3の下流側表面32とろ材2の摩擦力が低減されるため、上刃3の折曲動作(上昇)に追従してろ材2が上方に引っ張られることが抑制される。さらに、下刃4がろ材2の山部2aから抜ける際(図5(b)参照)に、下刃4の下流側表面32(具体的に下流側表面32の刃先4aから刃元4b側に向かう所定間隔の領域)とろ材2が密着する一方、下刃4の上流側表面31とろ材2との間に隙間Sが形成される。このとき、摩擦低減構造9Aにより互いに密着する下刃4の下流側表面32とろ材2の摩擦力が低減されるため、下刃4の折曲動作(下降)に追従してろ材2が下方に引っ張られることが抑制される。
【0025】
さらに、各刃3、4の折曲動作中において、上刃3の先端面33がろ材2に接触する際(図3(a)参照)に、摩擦低減構造9Aにより上刃3の先端面33とろ材2の摩擦力が低減されるため、ろ材2の破損が抑制される。さらに、下刃4の先端面33がろ材2に接触する際(図3(b)(c)参照)に、摩擦低減構造9Aにより下刃4の先端面33とろ材2の摩擦力が低減されるため、ろ材2の破損が抑制される。
【0026】
以上より、本実施形態の上刃3及び下刃4によると、表面にろ材2との摩擦力を低減させる摩擦低減構造9Aが設けられている。これにより、各刃3、4とろ材2との摩擦力が低減されて、各刃3、4の折曲動作に追従してろ材2が引っ張られ難くなる。その結果、レシプロ式折曲機1の折曲高速化を図りつつろ材2のプリーツ高さhのばらつきを抑制することができる。
【0027】
また、本実施形態では、摩擦低減構造9Aは各刃3、4の下流側表面32に設けられている。これにより、各刃3、4とろ材2の摩擦力を効果的に低減できる。さらに、摩擦低減構造9Aは各刃3、4の上流側表面31に設けられていない。これにより、摩擦低減構造9Aの加工コストを抑制できる。
【0028】
また、本実施形態では、摩擦低減構造9Aは、各刃3、4の下流側表面32において刃先3a、4aから刃元3b、4b側に向かう所定間隔Lにわたって設けられている。これにより、各刃3、4とろ材2の摩擦力を効果的に低減できる。
【0029】
また、本実施形態では、摩擦低減構造9Aは、各刃3、4の下流側表面32と刃先側の先端面33とに設けられている。これにより、各刃3、4の先端面33がろ材2と接触する際にろ材2の破損を抑制できる。
【0030】
さらに、本実施形態では、摩擦低減構造9Aはシボ部35により構成されている。これにより、各刃3、4とろ材2の摩擦力を効果的に低減できる。
【0031】
次に、他の形態に係る上刃及び下刃について説明するが、上記の上刃3及び下刃4と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、両者の主な相違点である摩擦低減構造について詳説する。
【0032】
上刃3及び下刃4の表面には、図6に示すように、ろ材2との摩擦力(即ち、各刃3、4とろ材2の間に生じる摩擦抵抗)を低減させる摩擦低減構造9Bが設けられている。摩擦低減構造9Bは、各刃3、4の表面から凹む複数本(図中9本)のスリット36により構成されている。スリット36は、各刃3、4の刃先3a、4aから刃元3b、4b側に向かって直線状に延びている。また、スリット36は、各刃3、4の刃幅方向Aに沿って複数本が並設されている。また、スリット36は、各刃3、4の下流側表面32と先端面33に設けられており、上流側表面31に設けられていない。また、スリット36は、各刃3、4の下流側表面32において刃先3a、4aから刃元3b、4b側に向かう所定間隔L(例えば、40mm)にわたって設けられている。所定間隔Lはろ材2のプリーツ高さhに応じて決められる。
【0033】
なお、スリット36を有する表面は、平滑面と比べて、ろ材2に対する接触面積が小さくろ材2の張り付きを抑制してろ材2との摩擦力を低減できる。また、スリット36の形状、本数、大きさ等は特に限定されず、摩擦低減機能を発揮し得る限り、他の形態を採用してもよい。例えば、直線状、曲線状、蛇腹状、渦巻状、格子状等のスリット36を採用できる。さらに、スリット36の深さL1(即ち、摩擦低減構造9Bの厚みL1)としては、例えば、0.05~2.0mmが挙げられる。
【0034】
本摩擦低減構造9Bを有する上刃3及び下刃4によると、上記の摩擦低減構造9Aを有する上刃3及び下刃4と略同様の作用効果を奏する。
【0035】
次に、他の形態に係る上刃及び下刃について説明するが、上記の上刃3及び下刃4と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、両者の主な相違点である摩擦低減構造について詳説する。
【0036】
上刃3及び下刃4の表面には、図7に示すように、ろ材2との摩擦力(即ち、各刃3、4とろ材2の間に生じる摩擦抵抗)を低減させる摩擦低減構造9Cが設けられている。摩擦低減構造9Cは、各刃3、4の表面から突出する複数本(図中9本)のリブ37により構成されている。リブ37は、各刃3、4の刃先3a、4aから刃元3b、4b側に向かって直線状に延びている。また、リブ37は、各刃3、4の刃幅方向Aに沿って複数本が並設されている。また、リブ37は、各刃3、4の下流側表面32と先端面33に設けられており、上流側表面31に設けられていない。また、リブ37は、各刃3、4の下流側表面32において刃先3a、4aから刃元3b、4b側に向かう所定間隔L(例えば、40mm)にわたって設けられている。所定間隔Lはろ材2のプリーツ高さhに応じて決められる。
【0037】
なお、リブ37を有する表面は、平滑面と比べて、ろ材2に対する接触面積が小さくろ材2の張り付きを抑制してろ材2との摩擦力を低減できる。また、リブ37の形状、本数、大きさ等は特に限定されず、摩擦低減機能を発揮し得る限り、他の形態を採用してもよい。例えば、直線状、曲線状、蛇腹状、渦巻状、格子状等のリブ37を採用できる。さらに、リブ37の高さL1(即ち、摩擦低減構造9Cの厚みL1)としては、例えば、0.05~2.0mmが挙げられる。さらに、リブ37は、刃3、4の表面に形成された一段下がった面に設けられていてもよい。即ち、上記のスリット36(図6参照)の幅広パターンと略同様の構造としてもよい。これにより、刃3、4の厚みの増加を抑制できる。
【0038】
本摩擦低減構造9Cを有する上刃3及び下刃4によると、上記の摩擦低減構造9Aを有する上刃3及び下刃4と略同様の作用効果を奏する。
【0039】
次に、他の形態に係る上刃及び下刃について説明するが、上記の上刃3及び下刃4と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、両者の主な相違点である摩擦低減構造について詳説する。
【0040】
上刃3及び下刃4の表面には、図8に示すように、ろ材2との摩擦力(即ち、各刃3、4とろ材2の間に生じる摩擦抵抗)を低減させる摩擦低減構造9Dが設けられている。摩擦低減構造9Dは低摩擦層(潤滑材層)38により構成されている。低摩擦層38は、各刃3、4の下流側表面32と先端面33に設けられており、上流側表面31に設けられていない。また、低摩擦層38は、各刃3、4の下流側表面32において刃先3a、4aから刃元3b、4b側に向かう所定間隔L(例えば、40mm)にわたって設けられている。所定間隔Lはろ材2のプリーツ高さhに応じて決められる。
【0041】
なお、低摩擦層38は、例えば、フッ素樹脂などのシート又はコーティングにより形成されていることができる。さらに、低摩擦層38の厚みL1(即ち、摩擦低減構造9Dの厚みL1)としては、例えば、0.05~2.0mmが挙げられる。ただし、低摩擦層38の厚みは、摩擦低減として有効に働くわけではないため、必ずしもL1の厚みとする必要はなく、L1の厚みと異なるL2の厚みとしてもよい。さらに、低摩擦層38は、刃3、4の表面に形成された一段下がった面に設けられていてもよい。これにより、刃3、4の厚みの増加を抑制できる。
【0042】
本摩擦低減構造9Dを有する上刃3及び下刃4によると、上記の摩擦低減構造9Aを有する上刃3及び下刃4と略同様の作用効果を奏する。
【0043】
次に、他の形態に係る上刃及び下刃について説明するが、上記の上刃3及び下刃4と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、両者の主な相違点である摩擦低減構造について詳説する。
【0044】
上刃3及び下刃4の表面には、図9に示すように、ろ材2との摩擦力(即ち、各刃3、4とろ材2の間に生じる摩擦抵抗)を低減させる摩擦低減構造9Eが設けられている。摩擦低減構造9Eは、各刃3、4の表面から凹む複数の凹部41(即ち、刃3、4の厚み方向に貫通していない凹部41)により構成されている。凹部41の平面形状は円形とされている。また、凹部41は同じ大きさのものが等間隔に複数設けられている。また、複数の凹部41はマトリックス状に配置されている。また、凹部41は、各刃3、4の下流側表面32に設けられており、上流側表面31に設けられていない。また、凹部41は、各刃3、4の下流側表面32において刃先3a、4aから刃元3b、4b側に向かう所定間隔L(例えば、40mm)にわたって設けられている。所定間隔Lはろ材2のプリーツ高さhに応じて決められる。なお、凹部41は刃3、4の先端面33に設けられていてもよい。
【0045】
なお、凹部41を有する表面は、平滑面と比べて、ろ材2に対する接触面積が小さくろ材2の張り付きを抑制してろ材2との摩擦力を低減できる。また、凹部41の形状、個数、大きさ等は特に限定されず、摩擦低減機能を発揮し得る限り、他の形態を採用してもよい。例えば、隣り合う凹部41を連続するように設けてもよい。この場合、丸い凹部41を連続して設けることで上記のスリット36(図6参照)を模擬した構造とすることができる。さらに、凹部41の深さL1(即ち、摩擦低減構造9Eの厚みL1)としては、例えば、0.05~2.0mmが挙げられる。さらに、千鳥状に配置された凹部41を採用してもよい。
【0046】
本摩擦低減構造9Eを有する上刃3及び下刃4によると、上記の摩擦低減構造9Aを有する上刃3及び下刃4と略同様の作用効果を奏する。
【0047】
次に、他の形態に係る上刃及び下刃について説明するが、上記の上刃3及び下刃4と略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、両者の主な相違点である摩擦低減構造について詳説する。
【0048】
上刃3及び下刃4の表面には、図10に示すように、ろ材2との摩擦力(即ち、各刃3、4とろ材2の間に生じる摩擦抵抗)を低減させる摩擦低減構造9Fが設けられている。摩擦低減構造9Fは、各刃3、4の厚み方向に貫通した貫通孔42により構成されている。貫通孔42の平面形状は円形とされている。また、貫通孔42は同じ大きさのものが等間隔に複数設けられている。また、複数の貫通孔42はマトリックス状に配置されている。また、貫通孔42は、各刃3、4の刃先3a、4aから刃元3b、4b側に向かう所定間隔L(例えば、40mm)にわたって設けられている。所定間隔Lはろ材2のプリーツ高さhに応じて決められる。
【0049】
なお、貫通孔42を有する表面は、平滑面と比べて、ろ材2に対する接触面積が小さくろ材2の張り付きを抑制してろ材2との摩擦力を低減できる。また、貫通孔42の形状、個数、大きさ等は特に限定されず、摩擦低減機能を発揮し得る限り、他の形態を採用してもよい。例えば、千鳥状に配置された貫通孔42を採用してもよい。
【0050】
本摩擦低減構造9Fを有する上刃3及び下刃4によると、上記の摩擦低減構造9Aを有する上刃3及び下刃4と略同様の作用効果を奏する。
【0051】
なお、摩擦低減構造9A~9Fのうちの2種以上を組み合わせて各刃3、4の表面に備えるようにしてもよい。さらに、上刃3及び下刃4で異なる摩擦低減構造9A~9Fを採用してもよい。
【0052】
尚、本発明においては、上記実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施形態とすることができる。すなわち、上記実施形態では、摩擦低減構造9A~9Fを各刃3、4の上流側及び下流側表面31、32のうちの下流側表面32に設ける形態を例示したが、これに限定されず、例えば、折曲機1による各刃3、4の折曲動作の形態などによっては、摩擦低減構造9A~9Fは、各刃3、4の上流側表面31及び下流側表面32のうちの少なくとも一方の表面に設けられていればよい。さらに、摩擦低減構造9A~9Fは、少なくとも一方の表面31、32において、全面に設けられていてもよいし、一部に設けられていてもよい。
【0053】
具体的には、摩擦低減構造9A~9Fを各刃3、4の上流側表面31及び下流側表面32に設けてもよい(図11(a)参照)。また、摩擦低減構造9A~9Fを各刃3、4の下流側表面32に設けずに上流側表面31に設けてもよい(図11(b)参照)。また、摩擦低減構造9A~9Fを各刃3、4の少なくとも一方の表面31、32において、刃先3a、4aと刃元3b、4bの中間部に設けてもよい(図11(c)参照)。さらに、摩擦低減構造9A~9Fを各刃3、4の先端面33に設けなくてもよい(図11(d)参照)。
【0054】
また、上記実施形態では、上刃3及び下刃4の両方に摩擦低減構造9A~9Fを備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、上刃3及び下刃4のうちの一方に強摩擦低減構造9A~9Fを備え、他方に弱摩擦低減構造9A~9Fを備える形態としてもよい。さらに、上刃3及び下刃4のうちの一方のみに摩擦低減構造9A~9Fを備える形態としてもよい。
【0055】
ここで、多層のろ材2では、表面層及び裏面層の材質、密度などの相違により、ろ材2に対する上刃3及び下刃4の摩擦抵抗が異なることが考えられる。この場合、摩擦抵抗が比較的高くなる側に強摩擦低減構造9A~9Fを備える刃を用い、摩擦抵抗が比較的低くなる側に弱摩擦低減構造9A~9Fを備える又は摩擦低減構造9A~9Fを備えない刃を用いることができる。さらに、ろ材2の自重の影響を考慮すると、強摩擦低減構造9A~9Fを備える下刃4と、弱摩擦低減構造9A~9Fを備える又は摩擦低減構造9A~9Fを備えない上刃3と、を用いることができる。なお、摩擦低減構造9A~9Fの強弱は、例えば、シボ部35、スリット36、リブ37、低摩擦層38、凹部41、貫通孔42の量などを変えたりすることで実現できる。
【0056】
さらに、上記実施形態では、ろ材2の横幅よりも小さな刃幅を有する上刃3及び下刃4(図1参照)を例示したが、これに限定されず、例えば、ろ材2の横幅と略同じ刃幅を有する上刃3及び下刃4としたり、ろ材2の横幅よりも大きな刃幅を有する上刃3及び下刃4としたりしてもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態において、折曲機1にプリーツ状に折り曲げられたろ材2の高さ方向への移動を規制するガイドを設け、ガイドが挿通可能な切欠部を設けた刃3、4に摩擦低減構造9A~9Fを採用してもよい。
【0058】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明はろ材をプリーツ状に折り曲げる技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0060】
1;レシプロ式折曲機、2;ろ材、3;上刃(折曲刃)、3a;刃先、3b;刃元、4;下刃(折曲刃)、4a;刃先、4b;刃元、9A~9F;摩擦低減構造、32;下流側表面、33;先端面、35;シボ部(摩擦低減構造)、36;スリット(摩擦低減構造)、37;リブ(摩擦低減構造)、38;低摩擦層(摩擦低減構造)、41;凹部(摩擦低減構造)、42;貫通孔(摩擦低減構造)、D;ろ材の送り方向。
図1
図2
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図13