(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101679
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリプロピレン系フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240723BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005719
(22)【出願日】2023-01-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】596104050
【氏名又は名称】サン・トックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】河村 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】倉本 直彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 英郎
(72)【発明者】
【氏名】田島 知己
(72)【発明者】
【氏名】四本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 侑亮
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 由明
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD13
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB22
3E086BB41
3E086BB51
3E086CA02
3E086DA06
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK07
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
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4F100AK62C
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4F100GB15
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4F100JA03
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4F100JK01
4F100JK07
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】製造時にフィルム破れが発生し難く、耐熱性が良好であり、かつ環境負荷を低減できる二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】融点150℃以上170℃以下のポリプロピレン系樹脂(B1)50.0質量%以上99.0質量%未満と、密度が0.936g/cm3以上0.970g/cm3以下であり、MFRが0.01g/10分以上1.0g/10分未満の植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)1.0質量%以上50質量%未満、を含む基材層Bを少なくとも備える、二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点150℃以上170℃以下のポリプロピレン系樹脂(B1)50.0質量%以上99.0質量%未満と、
密度が0.936g/cm3以上0.970g/cm3以下であり、MFRが0.01g/10分以上1.0g/10分未満の植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)1.0質量%以上50.0質量%未満、
を含む基材層Bを少なくとも備える、二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
【請求項2】
さらに最外層であるポリプロピレン系樹脂層Aを備え、前記ポリプロピレン系樹脂層Aは、
(i)融点が150℃以上170℃以下であるポリプロピレン系樹脂を少なくとも80質量%以上含む層、
(ii)ポリプロピレン系樹脂100質量部に対してポリエチレン系樹脂を1質量部以上100質量部以下の量で含む層、及び
(iii)融点が70℃以上150℃未満であるプロピレン-αオレフィン共重合体を少なくとも含む層、からなる群から選択されるいずれかの層である、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂層Aと反対側の最外層として、ポリプロピレン系樹脂層Cをさらに備え、前記ポリプロピレン系樹脂層Cは、前記(i)~(iii)からなる群から選択されるいずれかの層である、請求項2に記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
【請求項4】
前記ポリプロピレン系樹脂層Aの厚みが0.5μm以上8.0μm以下であり、
前記基材層Bの厚みが9.0μm以上60.0μm以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂層Aおよび基材層Bが共押出法によって積層されたものである、請求項2に記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
【請求項5】
縦方向の引張弾性率が1000MPa以上2500MPa以下、
横方向の引張弾性率が1500MPa以上4000MPa以下、
縦方向の熱収縮率が-1.0%以上3.0%以下、
横方向の熱収縮率が-1.0%以上2.5%以下である、請求項1~4のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
【請求項6】
最外層にポリエチレン系樹脂を含む場合において、該ポリエチレン系樹脂は植物由来のポリエチレンを含む、請求項2~4のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムからなるおにぎり包装袋。
【請求項8】
請求項5に記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムからなるおにぎり包装袋。
【請求項9】
請求項6に記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムからなるおにぎり包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレン系フィルム(以下、OPPフィルムともいう)は、透明性、剛性、表面硬度、耐衝撃性、防湿性などに優れ、食品、日用品、及び雑貨などの包装袋として多用されている。二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの主原料はポリプロピレン系樹脂であるが、半透明あるいは低光沢性を備えるフィルムとして、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂をブレンドした原料を用いたフィルムも知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ポリプロピレン100重量部と高密度ポリエチレン1~50重量部との組成物よりなるポリオレフィン系フィルムを構成層として含む化粧シートに関する発明が開示されており、二次加工性に優れ、高級感としてマット感が付与された化粧シートを提供できることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、つや消し調表面層部として、ポリプロピレン系樹脂45~80重量%、高密度ポリエチレン樹脂を15~35重量%、低密度ポリエチレン樹脂を5~20重量%含有した層を備える、つや消し調インモールドラベルフィルムに関する発明が開示されている。そして、フィルム表面に適度なつや消し調の凹凸面を形成したインモールドラベルフィルムを提供できることが記載されている。
【0005】
ところで、近年、植物由来のポリエチレン系樹脂が開発されており、環境負荷を低減する観点から、石油由来のポリエチレン系樹脂に代えて、植物由来のポリエチレン系樹脂を配合することが検討されている。
【0006】
特許文献3では、ポリプロピレン100質量部に対して、メルトフローレートが190℃において1.5g/10分以上15g/10分以下であり且つ密度が0.910g/cm3以上0.935g/cm3以下のポリエチレンを1質量部以上23質量部以下含む基材層を有し、像鮮明度が65%以上、ヘーズ値が8%以下である、延伸ポリプロピレンフィルムに関する発明が開示されている。また上記ポリエチレンとして、植物由来のポリエチレンを使用できることが記載されている。
【0007】
特許文献4では、優れた透明性や透視感、光沢感及び溶断シール強度を備えるフィルムとして、外表面層、中間層、内表面層の少なくとも3層以上の複数層からなり、前記中間層が、プロピレン系重合体を85~95重量%とエチレン系重合体(E)を2~15重量%とを有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムが記載されている。そして、前記エチレン系重合体(E)がバイオマス由来エチレン重合体であることや、前記エチレン系重合体(E)の密度が0.904~0.945g/cm3、メルトフローレート(MFR:190℃)が1.0~8.0g/10分であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-235818号公報
【特許文献2】特開2015-139893号公報
【特許文献3】特開2018-65267号公報
【特許文献4】特開2021-133509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~2に記載のフィルムでは、ポリエチレン樹脂として一般に使用されている石油由来のポリエチレン樹脂を用いており、特に植物由来のポリエチレン樹脂を使用することを示唆する記載もない。そのため、特許文献1~2に記載のフィルムは、環境負荷低減の観点から改善の余地がある。
一方で、特許文献3~4には、植物由来のポリエチレン樹脂を使用する旨の記載があり、一定の環境負荷低減効果がある。しかしながら、特許文献3に記載のフィルムは、熱収縮率などが大きくなる傾向があり、耐熱性の点において改善の余地がある。また、特許文献4に記載のフィルムは、フィルム製造時においてフィルム破れが発生しやすい傾向がある。
【0010】
そこで本発明は、製造時にフィルム破れが発生し難く、耐熱性が良好であり、かつ環境負荷を低減できる二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の融点を有するポリプロピレン系樹脂と、特定の密度及びメルトフローレート(MFR)を有する植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体とを、それぞれ特定範囲の量で含有する基材層を備える二軸延伸ポリプロピレン系フィルムにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明の要旨は、以下の[1]~[7]である。
[1]融点150℃以上170℃以下のポリプロピレン系樹脂(B1)50.0質量%以上99.0質量%未満と、密度が0.936g/cm3以上0.970g/cm3以下であり、MFRが0.01g/10分以上1.0g/10分未満の植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)1.0質量%以上50.0質量%未満、を含む基材層Bを少なくとも備える、二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
[2]さらに最外層であるポリプロピレン系樹脂層Aを備え、前記ポリプロピレン系樹脂層Aは、
(i)融点が150℃以上170℃以下であるポリプロピレン系樹脂を少なくとも80質量%以上含む層、
(ii)ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリエチレン系樹脂を1質量部以上100質量部以下の量で含む層、及び
(iii)融点が70℃以上150℃未満であるプロピレン-αオレフィン共重合体を少なくとも含む層、からなる群から選択されるいずれかの層である、上記[1]に記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
[3]前記ポリプロピレン系樹脂層Aと反対側の最外層として、ポリプロピレン系樹脂層Cをさらに備え、前記ポリプロピレン系樹脂層Cは、前記(i)~(iii)からなる群から選択されるいずれかの層である、上記[2]に記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
[4]前記ポリプロピレン系樹脂層Aの厚みが0.5μm以上8.0μm以下であり、前記基材層Bの厚みが9.0μm以上60.0μm以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂層Aおよび基材層Bが共押出法によって積層されたものである、上記[2]に記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
[5]縦方向の引張弾性率が1000MPa以上2500MPa以下、横方向の引張弾性率が1500MPa以上4000MPa以下、縦方向の熱収縮率が-1.0%以上3.0%以下、横方向の熱収縮率が-1.0%以上2.5%以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
[6]最外層にポリエチレン系樹脂を含む場合において、該ポリエチレン系樹脂は植物由来のポリエチレンを含む、請求項[2]~[5]のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムからなるおにぎり包装袋。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、製造時にフィルム破れが発生し難く、耐熱性が良好であり、かつ環境負荷を低減できる二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの他の実施形態を模式的に示す断面図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
[二軸延伸ポリプロピレン系フィルム]
本発明の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは、融点150℃以上170℃以下のポリプロピレン系樹脂(B1)50.0質量%以上99.0質量%未満と、密度が0.936g/cm3以上0.970g/cm3以下であり、MFRが0.01g/10分以上1.0g/10分未満の植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)1.0質量%以上50.0質量%未満、を含む基材層Bを少なくとも備える。
【0016】
本発明において、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムとは、MD(machine direction)及びTD(transverse direction)の両方に延伸したポリプロピレン系フィルムのことを意味する。また本明細書において、上記MDのことを縦方向、上記TDのことを横方向と記載することもある。
以下、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムのことを「OPPフィルム」と記載することもある。
【0017】
本発明のOPPフィルムの構成を図面により説明する。なお、本発明は図面の内容に限定されない。本発明の一実施形態に係るOPPフィルム10は、
図1に示すように基材層Bからなる単層のOPPフィルムである。
基材層Bは、融点150℃以上170℃以下のポリプロピレン系樹脂(B1)、密度が0.936g/cm
3以上0.970g/cm
3以下であり、MFRが0.01g/10分以上1.0g/10分未満の植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)をそれぞれ特定範囲の量で含むことにより、OPPフィルムの耐熱性が高く、かつフィルム製造時のフィルム破れが抑制され、環境負荷も低減される。この理由は定かではないが、以下のように推定される。
【0018】
上記基材層Bは、ポリプロピレン系樹脂(B1)の融点が一定程度高く、エチレン-αオレフィン共重合体も高い密度を有する。そのため、本発明のOPPフィルムは耐熱性が高い。エチレン-αオレフィン共重合体(B2)は、密度が0.936g/cm3以上0.970g/cm3以下であり比較的密度が高く、またMFRが0.01g/10分以上1.0g/10分未満であり、比較的低いMFRを有している。エチレン-αオレフィン共重合体(B2)は、マトリクスであるポリプロピレン系樹脂(B1)に分散して存在すると考えられるが、上記したように、エチレン-αオレフィン共重合体(B2)が比較的低いMFRを有するため、フィルム破れが生じ難い適切な相分離構造を形成して、フィルム破れを抑制していると推定される。具体的には、マトリクスであるポリプロピレン系樹脂(B1)中にエチレン-αオレフィン共重合体(B2)が分散する海島構造を形成していると考えられる。そして、ポリプロピレン系樹脂(B1)及びエチレン-αオレフィン共重合体(B2)の融点・密度が上記範囲であることより海[(B1)成分]と島[(B2)成分]の界面強度が高く、かつ(B2)成分のMFRが特定範囲であることより、島同士の距離も近すぎないため、フィルム破れが抑制されると考えられる。そして、エチレン-αオレフィン共重合体(B2)は、植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体であるため、環境負荷を低減できる。
【0019】
本発明のOPPフィルムは、
図2に示すように、基材層Bと該基材層Bの一方の面に設けられたポリプロピレン系樹脂層Aとを備えるOPPフィルム10であってもよい。
さらに、本発明のOPPフィルムは、
図3に示すように、ポリプロピレン系樹脂層Aの反対側の最外層として、ポリプロピレン系樹脂層Cをさらに備えていてもよい。すなわち、本発明のOPPフィルムは、ポリプロピレン系樹脂層A、基材層B、及びポリプロピレン系樹脂層Cがこの順で積層されたOPPフィルム10であってもよい。
このように最外層であるポリプロピレン系樹脂層A及び/又はポリプロピレン系樹脂層Cを備えることで、耐熱性が高く、かつフィルム製造時のフィルム破れが抑制され、環境負荷も低減されるという効果に加えて、最外層の組成に応じた機能をOPPフィルムに付与することができる。
【0020】
[基材層B]
本発明のOPPフィルムは、特定のポリプロピレン系樹脂(B1)、及び特定の植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)をそれぞれ特定範囲の量で含む基材層Bを少なくとも備える。
【0021】
<ポリプロピレン系樹脂(B1)>
基材層Bは、ポリプロピレン系樹脂(B1)を含有する。ポリプロピレン系樹脂(B1)は、プロピレンモノマーを主モノマーとする重合体であり、好ましくはプロピレンモノマーを80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む重合体である。
【0022】
ポリプロピレン系樹脂(B1)の種類は、特に限定されないが、プロピレン単独共重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、及びプロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。例えば、プロピレン-エチレン共重合体は、プロピレン-エチレンランダム共重合体(ランダムPP)であっても、プロピレン-エチレンブロック共重合体(ブロックPP)であってもよい。
ポリプロピレン系樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ポリプロピレン系樹脂(B1)は、基材層Bの耐熱性や機械強度を良好にする観点から、プロピレン単独重合体及びプロピレン-エチレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がさらに好ましい。
該プロピレン-エチレン共重合体は、エチレン含有量が0.05質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。このように、エチレン含有量の少ないプロピレン-エチレン共重合体を用いることで、基材層Bの耐熱性を維持しつつ、比較的伸びやすくなる物性を基材層に付与することができる。その結果、製造時のフィルム破れを抑制しやすくなる。
【0023】
ポリプロピレン系樹脂(B1)は、環境負荷低減の観点から、ISCC PLUS認証などにより認証されたマスバランス方式を採用したポリプロピレン系樹脂を含んでいてもよいし、植物由来のポリプロピレン系樹脂を含んでいてもよい。
植物由来ポリプロピレン系樹脂は、植物由来のプロピレン(モノマー)を原料として使用し製造したポリプロピレンであれば特に制限されず、植物由来のプロピレンの単独重合体、植物由来のプロピレンと他のモノマーとを共重合した植物由来のプロピレン共重合体などが挙げられる。ここで、他のモノマーとしては、炭素数2~20のプロピレン以外のα-オレフィンが挙げられ、好適に使用される他のモノマーとしては、エチレン、ブテン-1などが挙げられる。他のモノマーは、石油由来のモノマーであっても、植物由来のモノマーであってもよい。また、他のモノマーは1種であっても、2種以上を併用してもよい。
植物由来のプロピレン共重合体として好適に使用されるものは、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体などが挙げられる。なお、共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。例えば、プロピレン-エチレン共重合体は、プロピレン-エチレンランダム共重合体(ランダムPP)であっても、プロピレン-エチレンブロック共重合体(ブロックPP)であってもよい。
【0024】
植物由来ポリプロピレン系樹脂の原料である植物由来のプロピレンは、公知の方法で製造することができ、例えば、植物油などを熱的クラッキングする方法(特表2018-522087号公報参照)、とうもろこしやサトウキビなどのバイオマス由来のエタノールから得られるエチレンと、n-ブテンをメタセシス反応させる方法(WO2007/055361号公報参照)、バイオマスを発酵させることで得られる1,3-プロピレングリコールを脱水反応する方法(特開2013-76192号公報)などが挙げられる。
上記のとおり得られた植物由来のプロピレンを公知の方法で単独重合又は他のモノマーと共に共重合することにより、植物由来ポリプロピレン系樹脂が得られる。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂(B1)の融点は、150℃以上170℃以下である。ポリプロピレン系樹脂(B1)の融点がこのような範囲であると、耐熱性が良好となり、フィルムの機械強度も向上する。ポリプロピレン系樹脂(B1)の融点は、好ましくは153℃以上168℃以下であり、より好ましくは155℃以上165℃以下である。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂(B1)の230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、好ましくは1g/10分以上5g/10分以下であり、より好ましくは1.5g/10分以上4.5g/10分以下であり、さらに好ましくは2.0g/10分以上4.0g/10分以下である。
ポリプロピレン系樹脂(B1)のMFRを上記範囲としつつ、植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)のMFRを後述する特定範囲とすることで、フィルム破れを効果的に抑制できる。
【0027】
基材層Bにおけるポリプロピレン系樹脂(B1)の含有量は、50.0質量%以上99.0質量%未満である。ポリプロピレン系樹脂(B1)の含有量を50.0質量%以上とすることにより、基材層Bに一定の耐熱性及び機械強度を付与することができる。ポリプロピレン系樹脂(B1)の含有量を99.0質量%未満とすることにより、後述する植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)を一定量以上配合することができるため、環境負荷を低減することができる。
基材層Bにおけるポリプロピレン系樹脂(B1)の含有量は、好ましくは55.0質量%以上98.0質量%以下であり、より好ましくは60.0質量%以上97.0質量%以下である。
【0028】
<植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)>
基材層Bは、植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)を含む。
該植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)は、エチレンとαオレフィンとの共重合体であり、エチレンを主モノマーとする共重合体である。より詳細には、植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)は、好ましくはエチレンを80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む共重合体である。そして、原料であるエチレンモノマー及びαオレフィンモノマーの少なくとも一方には、植物由来のモノマーが含まれる。
【0029】
上記エチレン-αオレフィン共重合体(B2)において、αオレフィンは、好ましくは炭素数3~12、より好ましくは炭素数4~8のα-オレフィンである。αオレフィンとしては、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチル-1-ペンテン等のαオレフィンであることが好ましい。
上記したエチレン-αオレフィン共重合体(B2)の中でも、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-ヘキセン-1共重合体、エチレン-オクテン-1共重合体などが好ましく、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-ヘキセン-1共重合体がより好ましく、エチレン-ブテン-1共重合体がさらに好ましい。なお、エチレン-αオレフィン共重合体(B2)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
エチレン-αオレフィン共重合体(B2)におけるαオレフィン量は、好ましくは0.01質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。エチレン-αオレフィン共重合体(B2)におけるαオレフィン量が、上記範囲内であると、後述する密度を所望の範囲に調整しやすくなり、フィルムの耐熱性を向上させやすくなる。
【0031】
植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)の密度は、0.936g/cm3以上0.970g/cm3以下である。密度をこのような範囲に調整することにより、フィルムの耐熱性を向上させることができる。植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)の密度は、好ましくは0.940g/cm3以上0.965g/cm3以下であり、より好ましくは0.950g/cm3以上0.960g/cm3以下である。
【0032】
植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)のメルトフローレート(MFR)は、0.01g/10分以上1.0g/10分未満である。該MFRをこのような範囲とすることで、製膜中のフィルム破れを抑制しやすくなる。このような観点から、植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)のMFRは、好ましくは0.05g/10分以上0.5g/10分以下であり、より好ましくは0.1g/10分以上0.3g/10分以下である。なお、植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)のMFRは、190℃におけるMFRである。
【0033】
本発明における植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体は、共重合体を製造するために用いるモノマーの少なくとも一部として植物由来のモノマー用いて重合した共重合体である。植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体は、石油由来のエチレン-αオレフィン共重合体と物性等は同等であるが、石油消費量、CO2排出量を低減するため、環境負荷を抑制できる。
植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)のバイオマス度は、環境負荷低減の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上であり、そして100%以下である。
バイオマス度は、試料中のC14の濃度を加速器質量分析により測定することにより、求めることができる。上記した植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体などの樹脂には、大気中にC14が一定の濃度で含まれているため、一定濃度のC14が含まれている。一方で、地中に閉じ込められた石油中にはC14がほとんど存在しない。したがって、C14の濃度を加速器質量分析により測定することにより、試料中の植物由来の原料の含有割合(バイオマス度)を求めることができる。
【0034】
例えば、試料中のC14の濃度の測定は、次のように行うことができる。すなわち、測定対象試料を燃焼させて二酸化炭素を発生させ、真空ラインで精製した二酸化炭素を、鉄を触媒として水素で還元し、グラファイトを精製させる。そして、このグラファイトを、タンデム加速器をベースとしたC14-AMS専用装置(NEC社製)に装着して、C14の計数、C13の濃度(C13/C12)、C14の濃度(C14/C12)の測定を行い、この測定値から標準現代炭素に対する試料炭素のC14濃度の割合を算出する。標準試料としては、米国国立標準局(NIST)から提供されるシュウ酸(HOXII)を使用する。
【0035】
基材層Bにおける植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B)の含有量は、1.0質量%以上50.0質量%未満である。植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B)の含有量を1.0質量%以上とすることにより、環境負荷をより低減しやすくなる。植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B)の含有量を50.0質量%未満とすることにより、フィルム破れを抑制しやすくなる。
基材層Bにおける、植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B)の含有量は、好ましくは3.0質量%以上45.0質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以上35.0質量%以下である。
【0036】
基材層Bは、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、上記したポリプロピレン系樹脂(B1)、植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)以外の他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、上記した植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体以外のポリエチレン系樹脂(例えば、石油由来のエチレン-αオレフィン共重合体、エチレンの単独重合体など)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリカプロラクトン系樹脂などの脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、石油樹脂などが挙げられる。上記したポリエステル及びポリアミドは、環境負荷低減の観点から、バイオマス由来のものであってもよい。他の樹脂は一定量以下とすることが好ましく、他の樹脂は使用しなくてもよい。すなわち、基材層Bにおけるポリプロピレン系樹脂(B1)、及び植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)の合計量は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
【0037】
基材層の厚さは、特に限定されないが、フィルムの機械的強度を一定以上に確保する観点から、好ましくは9.0μm以上60μm以下であり、機械的強度を良好にし、フィルム破れを抑制する観点から、より好ましくは15μm以上50μm以下である。
【0038】
[ポリプロピレン系樹脂層A]
本発明のOPPフィルムは、上記した基材層Bと、ポリプロピレン系樹脂層Aとを備えていてもよい。該ポリプロピレン系樹脂層Aは、OPPフィルムの最外層であり、言い換えるとOPPフィルムの表面層(スキン層)である。
OPPフィルムは、ポリプロピレン系樹脂層Aを備えることにより、ポリプロピレン系樹脂層Aを構成する樹脂の種類に応じて、種々の機能を付与することができる。
【0039】
ポリプロピレン系樹脂層Aは、以下の(i)~(iii)からなる群から選択されるいずれかの層であることが好ましい。
(i)融点が150℃以上170℃以下であるポリプロピレン系樹脂を少なくとも80質量%以上含む層。
(ii)ポリプロピレン系樹脂100質量部に対してポリエチレン系樹脂を1質量部以上100質量部以下の量で含む層。
(iii)融点が70℃以上150℃未満であるプロピレン-αオレフィン共重合体を少なくとも含む層。
【0040】
<(i)層>
融点が150℃以上170℃以下であるポリプロピレン系樹脂を少なくとも80質量%以上含む層(以下(i)層ともいう)について説明する。
(i)層は、比較的融点が高いポリプロピレン系樹脂を主成分として含むため、耐熱性及び透明性に優れる層となる。
(i)層に使用するポリプロピレン系樹脂としては、上記したポリプロピレン系樹脂(B1)で説明した種類の樹脂を特に制限なく使用することができる。中でも、(i)層に使用するポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体及びプロピレン-エチレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。(i)層に使用するポリプロピレン系樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
該プロピレン-エチレン共重合体は、上記したとおり、エチレン含有量が0.05~2質量%であることが好ましく、0.1~1質量%であることがより好ましい。
(i)層に使用するポリプロピレン系樹脂の、好適な融点、好適なMFRは、ポリプロピレン系樹脂(B1)で説明したものと同様である。
【0041】
(i)層には、融点が150℃以上170℃以下のポリプロピレン系樹脂以外の他の樹脂を含んでもよいが、他の樹脂は一定量以下とすることが好ましく、他の樹脂は使用しなくてもよい。すなわち、(i)層において、融点が150℃以上170℃以下のポリプロピレン系樹脂の含有量は、80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
【0042】
<(ii)層>
ポリプロピレン系樹脂100質量部に対してポリエチレン系樹脂1質量部以上100質量部以下含む層(以下(ii)層ともいう)について説明する。
(ii)層は、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の両方を含む層であり、マット層を構成する。マット層とは、該マット層を形成することで、OPPフィルムのマット層側の光沢を低下させることが可能な層である。マット層を形成すると、マット層側の光沢度は、例えば30%以下、より好ましくは20%以下となる。なお、光沢度は、JIS K 7105に準拠して測定することができる。
【0043】
(ii)層に用いられるポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。例えば、プロピレン-エチレン共重合体は、プロピレン-エチレンランダム共重合体(ランダムPP)であっても、プロピレン-エチレンブロック共重合体(ブロックPP)であってもよい。
(ii)層にヒートシール性を付与する観点から、(ii)層に使用するポリプロピレン系樹脂は、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、及びプロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体から選択される少なくとも1種であることが好ましい。(ii)層に使用するポリプロピレン系樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(ii)層に用いられるポリプロピレン系樹脂の融点は、好ましくは70℃以上140℃以下であり、より好ましくは100℃以上135℃以下である。
なお、(ii)層にポリプロピレン系樹脂を2種以上含む場合は、該ポリプロピレン樹脂は、融点が70℃以上90℃以下のポリプロピレン系樹脂と、融点が110℃以上140℃以下のポリプロピレン系樹脂とを少なくとも含むことが好ましい。(ii)層にこのようなポリプロピレン系樹脂を併用することで、低温でヒートシール可能なマット層とすることができる。そして、この場合、融点が110℃以上140℃以下のポリプロピレン樹脂100質量部に対して、融点が70℃以上90℃以下のポリプロピレン樹脂の含有量を好ましくは5~100質量部、より好ましくは20~40質量部とするとよい。
【0044】
(ii)層におけるポリプロピレン系樹脂の含有量は、好ましくは50~95質量%であり、より好ましくは60~90質量%であり、さらに好ましくは70~85質量%である。
【0045】
(ii)層におけるポリエチレン系樹脂は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、及びポリエチレン系エラストマーのいずれであってもよい。これらの中でも、直鎖状低密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
上記直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレン-αオレフィン共重合体であり、該αオレフィンは、好ましくは炭素数3~12、より好ましくは炭素数4~8のαオレフィンである。αオレフィンとしては、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチル-1-ペンテン等が好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は特に限定されないが、例えば、0.910g/cm3以上0.960g/cm3以下であり、好ましくは0.940g/cm3以上0.960g/cm3以下である。
上記ポリエチレン系エラストマーは、エチレン-αオレフィン共重合体であり、該αオレフィンは、好ましくは炭素数3~12、より好ましくは炭素数4~8のαオレフィンである。αオレフィンとしては、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチル-1-ペンテン等が好ましい。ポリエチレン系エラストマーの密度は特に限定されないが、例えば、0.880g/cm3以上0.910g/cm3未満である。
(ii)層に用いるポリエチレン系樹脂は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい
【0046】
(ii)層におけるポリエチレン系樹脂の含有量は、好ましくは3~50質量%であり、より好ましくは5~30質量%であり、さらに好ましくは15~25質量%である。
【0047】
(ii)層におけるポリエチレン系樹脂の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、1~100質量部であり、好ましくは5~50質量部であり、より好ましくは10~30質量部であり、さらに好ましくは15~25質量部である。(ii)層のポリエチレン系樹脂の含有量をこのような範囲とすることで、(ii)層をマット層とすることができ、かつ基材層Bとの密着性も良好となる。
【0048】
(ii)層には、上記したポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂以外の他の樹脂を含んでもよいが、他の樹脂は一定量以下とすることが好ましく、他の樹脂は使用しなくてもよい。すなわち、(ii)層におけるポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂の合計量は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
【0049】
<(iii)層>
融点が70℃以上150℃未満であるプロピレン-αオレフィン共重合体を少なくとも含む層(以下(iii)層ともいう)について説明する。
(iii)層は、融点が上記のとおり低いプロピレン-αオレフィン共重合体を含むため、ヒートシール層とすることができる。
ヒートシール層とは、OPPフィルムを包装袋として使用する場合などに、ヒートシールを可能にする層であり、熱により溶融又は軟化する層である。より具体的には、OPPフィルムを包装袋として使用する際に、内容物を収納した後、熱圧着することにより密閉することを可能とする層である。したがって、ヒートシール層には、比較的融点の低いプロピレン-αオレフィン共重合体を含むことが好ましい。
プロピレン-αオレフィン共重合体の融点は70℃以上150℃未満であり、好ましくは70℃以上140℃以下であり、より好ましくは100℃以上135℃以下である。
【0050】
(iii)層に含まれるプロピレン-αオレフィン共重合体としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、プロピレン-αオレフィン共重合体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、プロピレン-αオレフィン共重合体のコモノマー量(αオレフィン量)は、上記した融点に調整し、所望のヒートシール性を付与する観点から、好ましくは1~15質量%であり、より好ましくは2~8質量%である。
【0051】
(iii)層は、プロピレン-αオレフィン共重合体以外の他の樹脂を含んでもよいが、他の樹脂は少量とすることが好ましく、他の樹脂は使用しなくてもよい。すなわち、(iii)層におけるプロピレン-αオレフィン共重合体の含有量は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
【0052】
ポリプロピレン系樹脂層Aの厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.5μm以上8.0μm以下であり、より好ましくは0.8μm以上6.0μm以下であり、さらに好ましくは1.0μm以上5.0μm以下である。ポリプロピレン系樹脂層Aの厚みを上記の通り調整することにより、フィルム破れを抑制しやすく、製膜安定性が向上する。
【0053】
[ポリプロピレン系樹脂層C]
本発明のOPPフィルムは、上記ポリプロピレン系樹脂層Aと反対側の最外層として、ポリプロピレン系樹脂層Cをさらに備えてもよい。この場合、OPPフィルムは、ポリプロピレン系樹脂層A、基材層B、ポリプロピレン系樹脂層Cがこの順に積層された多層フィルムとなる。
【0054】
ポリプロピレン系樹脂層Cは、上記した(i)~(iii)からなる群から選択されるいずれかの層であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂層Cの層の種類は、ポリプロピレン系樹脂層Aの種類と同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。例えば、ポリプロピレン系樹脂層Aが、上記(iii)層(ヒートシール層)からなる場合は、ポリプロピレン系樹脂層Cは、上記(iii)層(ヒートシール層)からなることが好ましい。なお、当然ながら、ポリプロピレン系樹脂層Aが、上記(iii)層(ヒートシール層)からなる場合であっても、ポリプロピレン系樹脂層Cを、(i)層や(ii)層としてもよい。
(i)層、(ii)層、(iii)層の詳細は上記したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0055】
ポリプロピレン系樹脂層Cの厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.5μm以上8.0μm以下であり、より好ましくは0.8μm以上6.0μm以下であり、さらに好ましくは1.0μm以上5.0μm以下である。ポリプロピレン系樹脂層Cの厚みを上記の通り調整することにより、フィルム破れを抑制しやすく、製膜安定性が向上する。
【0056】
最外層であるポリプロピレン系樹脂層A又はポリプロピレン系樹脂層Cは、ポリエチレン系樹脂を含む場合は、該ポリエチレン系樹脂は、植物由来のポリエチレンを含むことが好ましい。植物由来のポリエチレンを含むことにより、石油消費量、CO2排出量を低減するため、環境負荷を抑制できる。
【0057】
(添加剤)
本発明のOPPフィルムは、添加剤として、防曇剤及び帯電防止剤として機能する添加剤を含有してもよい。該添加剤は、基材層及び最外層の少なくともいずれかの層に含まれていればよいが、基材層に含まれることが好ましい。
防曇剤及び帯電防止剤として機能する添加剤の含有量は、該添加剤が含まれる層(基材層又は最外層)において、好ましくは0.4~1.0質量%であり、より好ましくは0.6~0.8質量%である。
【0058】
防曇剤及び帯電防止剤として機能する添加剤の種類は、一般のポリオレフィンフィルムに用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコールとラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸とのエステル、高級脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪族アルカノールアミド、高級アルコールリン酸エステル塩、及びその混合物等が挙げられる。
【0059】
本発明のOPPフィルムは、上記した防曇剤及び帯電防止剤として機能する添加剤以外のその他添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、結晶化核剤、酸化防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、塩素捕捉剤、セルロースナノファイバー、無機微粒子、でんぷん等を挙げることができる。上記無機微粒子としては、例えば、炭酸カルシウムや、吸着剤、抗菌剤などが挙げられる。その他の添加剤は、基材層に含有させてもよいし、最外層に含有させてもよいし、基材層及び最外層の両方に含有させてもよい。
【0060】
<OPPフィルム物性:引張弾性率>
本発明のOPPフィルムの縦方向(MD)の引張弾性率は、好ましくは1000MPa以上2500MPa以下であり、より好ましくは1200MPa以上2000MPa以下である。また、本発明のOPPフィルムの横方向(TD)の引張弾性率は、好ましくは1500MPa以上4000MPa以下であり、より好ましくは2000MPa以上3500MPa以下である。引張弾性率を前記範囲とすることにより、OPPフィルムの包装機械特性が向上する。
【0061】
<OPPフィルム物性:熱収縮率>
本発明のOPPフィルムの縦方向(MD)の熱収縮率は、好ましくは-1.0%以上3.0%以下であり、より好ましくは-0.5%以上2.5%以下である。また、本発明のOPPフィルムの横方向(TD)の熱収縮率は、好ましくは-1.0%以上2.5%以下であり、より好ましくは-0.5%以上2.5%以下である。熱収縮率が上記範囲内であると、良好な耐熱性を備えるため、ヒートシールなど高温で加工する際に、フィルムの外観及び物性を良好に維持しやすくなる。
【0062】
<OPPフィルム物性:バイオマス度>
本発明のOPPフィルムのバイオマス度は、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは10%以上である。バイオマス度は理想的には100%であるが、実用的には、コストを勘案してバイオマス度は適宜決定することが出来る。バイオマス度が大きいほど、環境負荷を低減することができる。
OPPフィルムのバイオマス度は、基材層B及び/又は最外層に使用する植物由来の原料の含有量により調整することができる。
バイオマス度は、OPPフィルム中の植物由来の原料の含有割合であり、ISO16620-2:2015に基づき、C14の濃度を加速器質量分析により測定することにより求められる。
また、バイオマス度が既知の原料を用いる場合は、石油由来の原料との混合比から計算により求めることもできる。
【0063】
[二軸延伸ポリプロピレン系フィルム(OPPフィルム)の製造方法]
本発明のOPPフィルムの製造方法は特に限定されず、押出法、インラインラミ法、共押出法などを適用して製造することができる。
【0064】
押出法では、上記した基材層の原料となる樹脂組成物をTダイにより押出して、無延伸シートを成形する。ここで、基材層の原料となる樹脂組成物とは、ポリプロピレン系樹脂(B1)、植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)を含む樹脂組成物である。
次に、該無延伸シートをロールの速度差によるMDロール延伸を行い、MD延伸シートを得る。
次に、該MD延伸シートをテンターへ導き、該MD延伸シートの両端をクリップで掴み、テンターオーブン内で所定の幅にTD延伸を行い、OPPフィルムを得る。
該押出法では、単層のOPPフィルムが得られる。
【0065】
インラインラミ法においては、まず、上記した基材層の原料となる樹脂組成物をTダイにより押出して、無延伸シートを成形する。
次に、該無延伸シートをロールの速度差によるMDロール延伸を行い、MD延伸シートを得る。次いで、別途設置した押出機を用いて、最外層の原料となる樹脂組成物をTダイから押出し、該MD延伸シートの片面もしくは両面に、溶融ラミネートを行い、最外層が積層された積層MD延伸シートを得る。なお、最外層の原料となる樹脂組成物とは、上記した(i)層、(ii)層、又は(iii)層を形成するための樹脂組成物であることが好ましい。
次に、該積層MD延伸シートをテンターへ導き、該積層MD延伸シートの両端をクリップで掴み、テンターオーブン内で所定の幅にTD延伸を行い、本発明のOPPフィルムが得られる。
【0066】
共押出法においては、基材層の原料となる樹脂組成物、及び最外層の原料となる樹脂組成物を、それぞれ共押出ダイスから共押出し、積層無延伸シートを成形する。次に、該積層無延伸シートをロールの速度差によるMDロール延伸を行い、積層MD延伸シートを得る。次いで、該積層MD延伸シートをテンター導き、該積層MD延伸シートの両端をクリップで掴み、テンターオーブン内で所定の幅にTD延伸を行い、OPPフィルムが得られる。このようにして、上記したポリプロピレン系樹脂層Aおよび基材層Bが共押出法によって積層されたOPPフィルム、あるいは、ポリプロピレン系樹脂層A、基材層B、ポリプロピレン系樹脂層Cが共押出法によって積層されたOPPフィルムが得られる。
【0067】
上記した押出法、インラインラミ法、共押出法などにより製造したOPPフィルムは、そのまま使用してもよし、該OPPフィルムを二次加工して使用してもよい。二次加工としては、例えば、印刷、コーティング、蒸着などの方法により表面加工したり、あるいは他のフィルムとラミネートすることなどが挙げられる。二次加工はOPPフィルムの一方の面に行ってもよいし、両面に行ってもよい。
【0068】
[用途]
本発明の二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの用途は特に限定されないが、例えば、食品、日用品、及び雑貨などの包装体として使用することができる。中でも、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、機械強度が高く包装機械特性に優れ、かつ耐熱性にも優れることから、サンドイッチ、おにぎりなどの包装体として使用することが好ましく、特に、二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなるおにぎり包装体とすることが好ましい。
【実施例0069】
以下、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
[原料評価]
<融点>
樹脂試料約4mgを精秤後アルミパンに封入し、これを示差走査熱量計(PerkinElmer,Inc.製、型式「DSC8500AS」)に装着し、20mL/分の窒素気流中、230℃まで昇温し、この温度において5分間保持した後、降温速度10℃/分で-10℃まで冷却し、次いで昇温速度10℃/分で230℃まで昇温する際に得られた吸熱曲線において、最大吸熱を示したピーク温度を融点とした。
【0071】
<メルトフローレート(MFR)>
JIS K 7210に準拠して、荷重2.16kgの条件で測定した。測定温度は、ポリプロピレン系樹脂については230℃、ポリエチレン系樹脂については190℃とした。
【0072】
<原料>
各実施例及び比較例で使用した各原料の詳細は、以下の表1に示すとおりである。
【0073】
【0074】
[実施例1]
表1に記載の原料を用いて、基材層B単層からなるOPPフィルムを作製した。
具体的には、PP1 65質量%、PE1 35質量%からなる基材層B用組成物を第1の押出し機により、250℃で溶融混練して押出し、単層のシートを得た。得られたシートを縦延伸機にて130℃に加熱後、縦方向(MD)に5倍延伸した。引き続き、横延伸機にて190℃に加熱後、横方向(TD)に10倍に延伸して、OPPフィルムを得た。なお、OPPフィルム製造の際の製膜速度は25m/分とした。
【0075】
<フィルム破れの評価>
上記したOPPフィルムの製造を連続的に行い、製造開始から一定時間以内にフィルム破れが発生したか否かを確認した。
(評価)
〇:製造開始から2時間以内にフィルム破れが発生しなかった
×:製造開始から2時間以内にフィルム破れが発生した
【0076】
<環境対応性の評価>
以下の基準で評価した。
〇:植物由来の樹脂を含み、環境負荷を低減する
×:植物由来の樹脂を含まず、環境負荷を低減しない
【0077】
<引張弾性率の評価>
JIS K7127に準拠して、試験片タイプ2にて、引張試験機((株)島津製作所製AG-Xplus)を用いて、引張速度50mm/分にて縦方向(MD)及び横方向(TD)の引張弾性率の測定を行った。
【0078】
<熱収縮率の評価>
幅15mm長さ600mmにフィルムを切り出した後、500mmの長さに印をつけたフィルムを荷重負荷の無い状態で、120℃のオーブン中に15分間放置した。その後室温で15分放冷し、印の長さを測定した。熱収縮率は下記の値とした。
熱収縮率(%)=(500-収縮後の印間の長さ(mm))×100/500
【0079】
[実施例2~5、比較例1~7]
表2、3のとおり基材層Bに使用する原料の種類及び量を変更した以外は、実施例1と同様にしてOPPフィルムを製造し、各評価を行った。
なお、表2、3に記載の各樹脂の数値は、各層における含有量(質量%)を意味する。
【0080】
[実施例6]
(各層を形成するための原料)
まず、表2に示す配合の以下の各組成物を準備した。
ポリプロピレン系樹脂層A用の組成物:PP1 100質量%からなる組成物。
基材層B用組成物:PP2 65質量%、PE2 35質量%からなる組成物。
(OPPフィルムの製造)
次に、各組成物を別々の押出し機(計2台の押出し機)に導入し、それぞれの押出し機内で、250℃で溶融混練を行い押し出し、Tダイ内にて積層し30℃の金属ロール上に2層共押出をして、積層シートを得た。得られた積層シートを縦延伸機にて130℃に加熱後、縦方向(MD)に5倍延伸した。引き続き、横延伸機にて190℃に加熱後、横方向(TD)に10倍に延伸して、OPPフィルムを得た。なお、OPPフィルム製造の際の製膜速度は25m/分とした。
以上のようにして、最外層(ポリプロピレン系樹脂層A)、基材層Bがこの順に積層された本発明のOPPフィルム製造し、各評価を行った。
【0081】
[実施例7~8]
各層を形成するための組成物の組成を表2のとおり変更した以外は、実施例6と同様にしてOPPフィルムを製造し、各評価を行った。
【0082】
[実施例9]
(各層を形成するための原料)
まず、表2に示す配合の以下の各組成物を準備した。
ポリプロピレン系樹脂層A用の組成物:PP1 100質量%からなる組成物。
基材層B用組成物:PP2 90質量%、PE2 10質量%からなる組成物。
ポリプロピレン系樹脂層C用の組成物:PP1 100質量%からなる組成物。
(OPPフィルムの製造)
次に、各組成物を別々の押出し機(計3台の押出し機)に導入し、それぞれの押出し機内で、250℃で溶融混練を行い押し出し、Tダイ内にて積層し30℃の金属ロール上に3層共押出をして、積層シートを得た。得られた積層シートを縦延伸機にて130℃に加熱後、縦方向(MD)に5倍延伸した。引き続き、横延伸機にて190℃に加熱後、横方向(TD)に10倍に延伸して、OPPフィルムを得た。なお、OPPフィルム製造の際の製膜速度は25m/分とした。
以上のようにして、最外層(ポリプロピレン系樹脂層A)、基材層B、最外層(ポリプロピレン系樹脂層C)がこの順に積層された本発明のOPPフィルム製造し、各評価を行った。
【0083】
[実施例10~18、比較例8]
各層を形成するための組成物の組成を表2~3のとおり変更した以外は、実施例9と同様にしてOPPフィルムを製造し、各評価を行った。
【0084】
【0085】
【0086】
本発明の要件を満足する各実施例のOPPフィルムは、環境負荷が低減されたフィルムであり、また製造時のフィルム破れが抑制され、かつ耐熱性にも優れていた。
これに対して、比較例1~2のOPPフィルムは、植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)を含んでおらず、環境負荷が低減されない。
比較例3~4のOPPフィルムは、植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)のMFRが高く、製造時のフィルム破れが生じやすい結果となった。
比較例5~6のOPPフィルムは、植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)の密度が低いため、熱収縮率が高く、耐熱性に劣る結果となった。
比較例7~8のOPPフィルムは、植物由来のエチレン-αオレフィン共重合体(B2)の含有量が多く、製造時のフィルム破れが生じやすい結果となった。
前記ポリプロピレン系樹脂層Aと反対側の最外層として、ポリプロピレン系樹脂層Cをさらに備え、前記ポリプロピレン系樹脂層Cは、前記(i)~(iii)からなる群から選択されるいずれかの層である、請求項2に記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
前記ポリプロピレン系樹脂層Aと反対側の最外層として、ポリプロピレン系樹脂層Cをさらに備え、前記ポリプロピレン系樹脂層Cは、前記(i)~(iii)からなる群から選択されるいずれかの層である、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
前記ポリプロピレン系樹脂層Aと反対側の最外層として、ポリプロピレン系樹脂層Cをさらに備え、前記ポリプロピレン系樹脂層Cは、前記(i)~(iii)からなる群から選択されるいずれかの層である、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。