IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宮村 卓の特許一覧

<>
  • 特開-歩行補助装置 図1
  • 特開-歩行補助装置 図2
  • 特開-歩行補助装置 図3
  • 特開-歩行補助装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101682
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】歩行補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20240723BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61H3/04
B60L15/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005729
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】523020718
【氏名又は名称】宮村 卓
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】留安 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 拓輝
(72)【発明者】
【氏名】金沢 翔太朗
(72)【発明者】
【氏名】野口 純基
(72)【発明者】
【氏名】田邊 拓海
【テーマコード(参考)】
4C046
5H125
【Fターム(参考)】
4C046AA24
4C046BB07
4C046CC01
4C046CC04
4C046DD02
4C046DD27
4C046DD33
4C046EE14
4C046EE26
4C046EE33
4C046FF02
4C046FF25
4C046FF27
5H125AA15
5H125AA17
5H125BA04
5H125CA04
5H125CA11
5H125CD03
5H125EE41
5H125EE51
5H125EE63
(57)【要約】
【課題】被補助者が施設内の既定のルートを移動する際、安全に、素早く移動可能となる歩行補助装置を提供する。
【解決手段】座面と車輪とを備えた台車と、台車に設置され、車輪を動かすためのモータと、床に描かれたラインを読み取るためのセンサと、読みとったラインに応じてモータの駆動を制御する制御部とを備えるライントレース装置と、台車に固定された、少なくとも1つの支柱と、少なくとも1つの支柱のそれぞれに設置された少なくとも1つの持ち手とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面と、車輪とを備えた台車と、
前記台車に設置され、前記車輪を動かすためのモータと、床に描かれたラインを読み取るためのセンサと、前記読みとったラインに応じて前記モータの駆動を制御する制御部とを備えるライントレース装置と、
前記台車に固定された、少なくとも1つの支柱と、
前記少なくとも1つの支柱のそれぞれに設置された少なくとも1つの持ち手と
を備えることを特徴とする歩行補助装置。
【請求項2】
緊急停止装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項3】
前記緊急停止装置に接続された警報装置をさらに備える請求項2に記載の歩行補助装置。
【請求項4】
前記警報装置は被補助者による操作または前記歩行補助装置の動作異常により作動する請求項3に記載の歩行補助装置。
【請求項5】
前記台車は前記座面を有する椅子として構成される請求項1に記載の歩行補助装置。
【請求項6】
前記ライントレース装置は、光源、光検出部、計算部、およびモータ制御部を備え、
前記光検出部は、前記光源から照射された光が床で反射した反射光の強度を検出し、
前記計算部は、検出された前記反射光の前記強度から前記ラインの形状、および前記台車の前記ラインに対する位置を判定して前記車輪の回転速度を計算し、
前記モータ制御部は、計算された前記回転速度に基づいて、前記モータの回転数を制御する請求項1に記載の歩行補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行補助装置に関し、特に、歩行に補助が必要な被補助者が既定のルートを移動する際に用いられる歩行補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院、リハビリテーション施設、高齢者施設等の施設(以下、施設と呼ぶ)において、歩行に補助が必要な被補助者(以下、被補助者と呼ぶ)が施設内を移動する際、身体の状態や歩行レベル等に応じて、介助者による歩行介助を受ける、歩行補助具を使用する、杖、手すり等によって身体を支えて移動する、等の、複数の方法から、適宜選択を行う(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【0003】
特許文献1には、持ち手を備え、歩行面上を自走可能な歩行補助装置が開示されている。特許文献2には、持ち手と、着座可能なシートとを備える、自走可能な電動歩行補助車が開示されている。特許文献3には、持ち手と、車輪とを備えるが自走はしない歩行補助車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000―024061号公報
【特許文献2】特開2022―108966号公報
【特許文献3】特開2022―080157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
施設内において、被補助者の歩行レベルが、杖、手すり等の支えを使用して歩行ができる程度のレベルであるとき、介助者側に人手や時間が足りないという問題があると、被補助者側には、トイレに行きたいがそのためだけに介助者に介助を頼むのは気兼ねする、リハビリも兼ねて歩きたい、一人で移動したいが転倒等の不安を抱えている、等の問題が生じる。一方、介助者側には、人手や時間が足りないために、一人で移動させるのは危険であるのに、常に見守ることが困難である、すぐに駆けつけることはできない、等の問題が生じる。
【0006】
特許文献1乃至3に開示されている歩行補助具を用いれば、介助者がいなくても歩行ができるが、施設内には階段、柱等の危険な場所があり、介助者がいないときにこのような場所に移動する恐れがある。
【0007】
上記問題点を鑑み、本発明は、被補助者が施設内の既定のルートを移動する際、安全に、素早く移動可能となる歩行補助装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、座面と、車輪とを備えた台車と、台車に設置され、車輪を動かすためのモータと、床に描かれたラインを読み取るためのセンサと、読みとったラインに応じてモータの駆動を制御する制御部とを備えるライントレース装置と、台車に固定された、少なくとも1つの支柱と、少なくとも1つの支柱のそれぞれに設置された少なくとも1つの持ち手とを備えることを要旨とする。
【0009】
本発明の第1の態様において、緊急停止装置をさらに備えてよい。
【0010】
本発明の第1の態様において、緊急停止装置に接続された警報装置をさらに備えてよい。
【0011】
本発明の第1の態様において、警報装置は被補助者による操作または歩行補助装置の動作異常により作動してもよい。
【0012】
本発明の第1の態様において、台車は座面を有する椅子として構成されてもよい。
【0013】
本発明の第1の態様において、ライントレース装置は、光源、光検出部、計算部、およびモータ制御部を備え、光検出部は、光源から照射された光が床で反射した反射光の強度を検出し、計算部は、検出された反射光の強度からラインの形状、および台車のラインに対する位置を判定して車輪の回転速度を計算し、モータ制御部は、計算された回転速度に基づいて、モータの回転数を制御してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、座面と車輪とを備えた台車と、台車に設置され、車輪を動かすためのモータと、床に描かれたラインを読み取るためのセンサと、読みとったラインに応じてモータの駆動を制御する制御部とを備えるライントレース装置と、台車に固定された、少なくとも1つの支柱と、少なくとも1つの支柱のそれぞれに設置された少なくとも1つの持ち手とを備えることによって、被補助者が施設内の既定のルートを移動する際、安全に、素早く移動可能となる歩行補助装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る歩行補助装置を示す概略図である。
図2】第1の実施形態にかかる歩行補助装置の台車部分を後方から見た概略図である。
図3】第1の実施形態にかかる歩行補助装置のライントレース装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る歩行補助装置の支柱に設置された持ち手を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。実施形態に係る図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。又、図面相互間においても互いの関係が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0017】
又、実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、各構成要素の構成等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る歩行補助装置を図1、及び図2を参照しながら説明する。図1、及び図2に示すように、本実施形態に係る歩行補助装置10は、台車11と、台車11に設置された、ライントレース機能を有するライントレース装置12と、台車11に固定された支柱13とから構成される。台車11には進行方向に対して右側の車輪14、及び進行方向に対して左側の車輪19が取り付けられている。台車11上には、被補助者が座ることができる座面15が載置されている。支柱13には、被補助者が持つことができる持ち手16が設置されている。
【0019】
ライントレース装置12は、光源から光を床に照射し、床18に描かれたライン17を読み取ることで、車輪14、19に接続された、モータを制御して台車11をライン17に沿って移動させる。図3に、本実施例にかかるライントレース装置12の構成の一例を示す。図3に示すように、ライントレース装置12は、光源31、光検出部32、計算部33、モータ制御部34、第1モータ35、第2モータ36、電源37から構成される。
【0020】
典型的には、光源31から照射される光は赤外線であり、ライン17の色は黒、ライン17の周囲の床18の色は白であるが、ライン17の位置、及び方向を判定出来れば、光の種類、ライン17、及び床18のそれぞれの色は、いかなるものであってもかまわない。本実施形態において、光源31から照射される光は赤外線であり、ライン17の色は黒、床18の色は白であるとする。
【0021】
第1モータ35は右側の車輪14、第2モータ36は左側の車輪19に接続され、これらの車輪を回転させる。なお、車輪14、19は駆動車輪とし、前輪113は従動車輪であるとする。電源37は、光源31、光検出部32、計算部33、モータ制御部34,第1モータ35、及び第2モータ36に接続され、各要素に電力を供給する。計算部33、およびモータ制御部34は、マイクロコンピュータ等の計算機である。
【0022】
本実施形態において、光源31からは、台車11の真下の床へ光が照射されるものとする。光源31から床へ光が照射されると、光検出部32は床18、又はライン17によって反射された反射光の強度を検出する。光検出部32によって検出された反射光の強度は、計算部33に送信される。計算部33は、受信した反射光の強度から、光源31から照射された光が床18に照射されたのか、ライン17に照射されたのかを判定する。
【0023】
台車11を、台車11の進行方向がライン17の方向と一致する向きに、ライン17上に配置し、電源37をオンにし、第1モータ25、及び第2モータ36によって車輪14、19を回転させ、台車11を走らせる。所定時間ごとに、光源21から光が照射され、光検出部32は反射光を検出し、計算部33は光源31からの光が床18とライン17のどちらに照射されたのかを判定する。
【0024】
計算部33は、この判定結果の経時変化から、ライン17の形状、すなわち、ライン17はまっすぐ伸びているのか、左右にどの程度カーブしているのか、さらに、台車11はライン17に対して右寄りであるか、左寄りであるか等の台車11のラインに対する位置を判定する。計算部33は、この判定結果から、右の車輪14と、左の車輪19の回転速度を計算する。すなわち、計算部33は、例えば、台車11がライン17に対して右寄りであると判定すれば、台車11が左へ寄るように右の車輪14の回転数を、左の車輪19の回転数と比較して大きくするといったように、台車11がライン17からはみ出さず、ライン17の向きに合わせて向きを変え、ライン17上を移動するように、車輪14と車輪19のそれぞれの回転速度を計算する。計算部33は、これらの計算結果をモータ制御部34に送信する。
【0025】
モータ制御部34は、計算部33から受信した計算結果に基づいて、第1モータ35、及び第2モータ36のそれぞれの回転数を制御する。従って、歩行補助装置10はライン17に沿って移動することができる。
【0026】
本実施形態においては、ライントレース装置12は、床の色を光センサによって判別することによって歩行補助装置10の移動方向を制御するが、他の形態として、例えば、ライントレース装置10が光センサの替わりに磁力センサを備え、床には、床と同色の塗料に磁石の粉末、鉄粉等を混ぜた磁性塗料によってラインを描き、このラインを磁力センサによって検知することによって歩行補助装置10の移動方向を制御してもよい。磁性塗料と床面を同一色とすることでラインを目立たなくさせることができ、施設の美観面からの選択となり得る。
【0027】
支柱13は、図1には1本のみ示されているが、これに限定されず、複数本であってもよい。図4に、持ち手16を示す。図4に示す持ち手は、支柱13に取り付けられた輪形状の持ち手16であるが、例えば、支柱13に取り付けられたグリップ様の形状等であってもよい。図4に示す持ち手16は、支柱13の任意の位置において固定可能となっており、被補助者の身長等に合わせて持ち手16の床からの高さを調節することができる。
【0028】
図1、及び図2に示すように、歩行補助装置10は、緊急停止装置として、スイッチ110を備えてもよい。スイッチ110を押すことによって、電源37からのライントレース装置12の各要素への電力の供給が停止される。図1、及び図2には、スイッチ110は台車11の足部111に設置されているが、設置位置はこれに限定されず、例えば持ち手16の付近等であってもよい。
【0029】
歩行補助装置10は、緊急停止装置として、さらに、図示しないが、歩行補助装置10自体に異常が生じた場合に歩行補助装置10の動作を停止させる自動緊急停止装置を備えてもよい。自動緊急停止装置としては、例えば、歩行補助装置10に衝撃が加わった場合に加速度センサ等でこの異常を検知する、歩行補助装置10自体の転倒や障害物等によって歩行補助装置10の速度が車輪14と車輪19のそれぞれの回転速度に応じた速度と一致しない場合に速度計で検知する、等が挙げられる。自動緊急停止装置はこれらの動作異常を検知すると、スイッチ110を押す場合と同様、電源37からのライントレース装置12の各要素への電力の供給を停止させる。
【0030】
さらに、自動緊急停止装置として持ち手16に圧力センサ等を設置し、被補助者の転倒等により一定時間持ち手16が把持されなかった場合や、座面15に圧力センサを設置し、非補助者が座面15に座って休憩する場合等に、電源37からの第1モータ35、及び第2モータ36への電力の供給を停止させる等により歩行補助装置10を停止させてもよい。
【0031】
図1、及び図2に示すように、歩行補助装置10は、警報装置として警報ランプ112を備えてもよい。警報ランプ112はスイッチ110に接続され、スイッチ110が押されると、警報ランプ112が点灯する。図1、及び図2には、警報装置として警報ランプ112が示されているが、これに限定されず、例えば、アラームであったり、無線通信等によってスイッチ110が押されたことを伝えるための信号を介助者等に送信する送信機が接続されていてもよい。
【0032】
歩行補助装置10は、さらに、図示しないが、電源37からのライントレース装置12の各要素への電力の供給を開始するための電源スイッチ、台車11の平均移動速度を調節するための速度調節機能、台車11が移動を開始するための移動開始スイッチ、台車11が一時停止するための一時停止スイッチ等を備えてもよい。
【0033】
ライン17は、例えば、施設内の居室からトイレまでの床等、既定のルートに設置される。被補助者は、歩行補助装置10を使用することにより、施設内の目的地まで安全に移動することができる。歩行補助装置10は座面15が載置されており、被補助者は、移動中、疲労を感じた時等に、座面15上に座ることができる。被補助者がふらつきや転倒したときや、何かにぶつかりそうなとき等に、緊急停止装置によって歩行補助装置10の動作を停止させることができる。歩行補助装置10は既定のルート上を移動するため、階段等の危険な場所を避けることができる。
【0034】
以上、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0035】
10 歩行補助装置
11 台車
12 ライントレース装置
13 支柱
14 右側の前後の車輪
19 左側の前後の車輪
15 座面
16 持ち手
17 ライン
18 床
110 スイッチ
111 足部
112 警報ランプ
31 光源
32 光検出部
33 計算部
34 モータ制御部
35 第1モータ
36 第2モータ
37 電源
図1
図2
図3
図4