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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101693
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20240723BHJP
   F24C 15/10 20060101ALI20240723BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F24C3/12 L
F24C15/10 B
F24C3/12 E
H05B6/12 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005751
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】水野 達彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕康
(72)【発明者】
【氏名】土橋 洋樹
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151AA01
3K151BA68
3K151BA93
3K151CA34
(57)【要約】
【課題】被調理物の調理状況を監視しながら、コストの高騰化を抑えつつ、被調理物の温度も精度高く検出できる加熱調理器を提供する。
【解決手段】天板9と、天板9に対して所定位置に配置される複数のマーカ13a~13dと、天板9から離れた位置に設置された可視光画像を取得する第1撮像手段51及び赤外線画像を取得する第2撮像手段53と、可視光画像を画像処理する第1画像処理部37であって、可視光画像に含まれる全マーカに関する第1マーカ情報を抽出する第1マーカ情報抽出部39を有する第1画像処理部37と、赤外線画像を画像処理する第2画像処理部41であって、赤外線画像に含まれる全マーカに関する第2マーカ情報を抽出する第2マーカ情報抽出部43を有する第2画像処理部41と、第1マーカ情報と第2マーカ情報とに基づいて、可視光画像の第1画像情報と赤外線画像の第2画像情報とを同期させる同期処理部45とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物が載置される天板と、
前記天板に対して所定位置に配置される複数のマーカと、
前記天板から離れた位置に設置され、前記天板及び全前記マーカを撮影して前記天板及び全前記マーカを含む可視光画像を得る第1撮像手段と、
前記可視光画像を画像処理する第1画像処理部であって、前記可視光画像に含まれる全前記マーカに関する第1マーカ情報を抽出する第1マーカ情報抽出部を有する前記第1画像処理部と、
前記天板から離れた位置に設置され、前記天板及び全前記マーカを撮影して前記天板及び全前記マーカを含む赤外線画像を得る第2撮像手段と、
前記赤外線画像を画像処理する第2画像処理部であって、前記赤外線画像に含まれる全前記マーカに関する第2マーカ情報を抽出する第2マーカ情報抽出部を有する前記第2画像処理部と、
前記第1マーカ情報と前記第2マーカ情報とに基づいて、前記可視光画像の第1画像情報と前記赤外線画像の第2画像情報とを同期させる同期処理部と、を備えていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
全前記マーカは、前記第2撮像手段の撮影時に発熱するように構成されている請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
全前記マーカは、前記天板の外周縁部、又は前記天板の外側であって前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段の撮影範囲内に配置されている請求項1記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記天板は、透光部を少なくとも一部に有し、
全前記マーカは、前記透光部の下面側に配置されるとともに、前記第1撮像手段の撮影時に発光するように構成されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の加熱調理器。
【請求項5】
全前記マーカはLEDライトよりなる請求項4記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記第1マーカ情報に基づいて前記第1撮像手段の設置状態を判断する第1判断と、前記第2マーカ情報に基づいて前記第2撮像手段の設置状態を判断する第2判断と、の少なくとも一方を実行する撮像手段設置状態判断部をさらに備えている請求項1乃至3のいずれか1項記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記被調理物の調理中に、前記第1撮像手段、前記第1画像処理部、前記第2撮像手段及び前記第2画像処理部を制御して、撮影ステップと、被調理物検出ステップと、温度検出ステップとを実行する制御装置をさらに備え、
前記撮影ステップでは、前記同期処理部で前記第1画像情報と前記第2画像情報とが同期された前記第1撮像手段と前記第2撮像手段とによって前記天板を撮影し、
前記被調理物検出ステップでは、前記撮影ステップで前記第1撮像手段によって得られた可視光画像から、前記被調理物の調理状況及び位置を検出し、
前記温度検出ステップでは、前記撮影ステップで前記第2撮像手段によって得られた赤外線画像から、前記被調理物検出ステップで検出した前記被調理物の前記位置と一致する位置の温度を検出する請求項1乃至3のいずれか1項記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記被調理物を加熱する加熱部をさらに備え、
前記制御装置は、前記温度検出ステップの後に、前記温度検出ステップで検出した前記温度に応じて前記加熱部を制御する加熱制御ステップを実行する請求項7記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の加熱調理器の一例が開示されている。この加熱調理器は、天板と、マーカと、撮像手段と、画像処理部と、撮像手段設置状態判断部とを備えている。
【0003】
天板は、上方に載置される被調理物を加熱する加熱部を有している。天板の上面には複数のマーカが設けられている。撮像手段は、天板から離れた位置に設置され、天板の可視光画像を撮像する。画像処理部は、可視光画像を画像処理し、マーカ情報抽出部を有している。マーカ情報抽出部は、可視光画像に含まれるマーカ情報を抽出する。撮像手段設置状態判断部は、マーカ情報が規定の状態で可視光画像の規定の範囲内に含まれていない場合に、撮像手段の設置状態が異常であると判断する。
【0004】
この加熱調理器は、被調理物の調理中に、撮像手段によって天板の可視光画像を撮像して、被調理物の調理状況を監視する。また、この加熱調理器は、撮像手段の設置時や被調理物の調理中に、撮像手段の設置状態が異常であるか否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-192355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、被調理物の調理状況を監視する際に、赤外線カメラによって被調理物の温度も検出できれば好都合である。
【0007】
しかし、上記従来の加熱調理器において、撮像手段として単に赤外線カメラだけを採用した場合、被調理物の温度を正しく検出することは必ずしも容易ではない。すなわち、赤外線カメラは、被写体表面から放射される赤外線を検知することにより、赤外線画像を撮像する。このため、赤外線画像は可視光画像と比べて、一般に鮮明度やコントラストが低く、被調理物を示す像の輪郭も不鮮明である。また、赤外線画像の画像データに含まれるノイズや、赤外線カメラにおける画素毎の赤外線に対する感度バラツキも大きい。このため、赤外線カメラによって被調理物の位置を正しく検出することが困難であり、ひいては被調理物の温度を正しく検出することが困難になる。
【0008】
一方、画質を高めるために高画素化したり、ノイズやバラツキを抑えるために高度な補正処理を施したりして、赤外線カメラを高性能化すれば、ただでさえ高価な赤外線カメラがより高額になってしまう。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、被調理物の調理状況を監視しながら、コストの高騰化を抑えつつ、被調理物の温度も精度高く検出できる加熱調理器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の加熱調理器は、被調理物が載置される天板と、
前記天板に対して所定位置に配置される複数のマーカと、
前記天板から離れた位置に設置され、前記天板及び全前記マーカを撮影して前記天板及び全前記マーカを含む可視光画像を得る第1撮像手段と、
前記可視光画像を画像処理する第1画像処理部であって、前記可視光画像に含まれる全前記マーカに関する第1マーカ情報を抽出する第1マーカ情報抽出部を有する前記第1画像処理部と、
前記天板から離れた位置に設置され、前記天板及び全前記マーカを撮影して前記天板及び全前記マーカを含む赤外線画像を得る第2撮像手段と、
前記赤外線画像を画像処理する第2画像処理部であって、前記赤外線画像に含まれる全前記マーカに関する第2マーカ情報を抽出する第2マーカ情報抽出部を有する前記第2画像処理部と、
前記第1マーカ情報と前記第2マーカ情報とに基づいて、前記可視光画像の第1画像情報と前記赤外線画像の第2画像情報とを同期させる同期処理部と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明の加熱調理器では、第1画像処理部が第1撮像手段によって撮像された可視光画像を画像処理し、第1画像処理部の第1マーカ情報抽出部が天板及び複数のマーカの全てを含む可視光画像に含まれる第1マーカ情報を抽出する。同様に、第2画像処理部が第2撮像手段によって撮像された赤外線画像を画像処理し、第2画像処理部の第2マーカ情報抽出部が天板及び複数のマーカの全てを含む赤外線画像に含まれる第2マーカ情報を抽出する。
【0012】
そして、同期処理部が、第1マーカ情報と第2マーカ情報とに基づいて、可視光画像の第1画像情報と赤外線画像の第2画像情報とを同期させる。これにより、可視光画像の第1画像情報における画素位置と赤外線画像の第2画像情報における画素位置との対応付けにより、両画素位置を一致させることができる。
【0013】
こうして可視光画像の画素位置と赤外線画像の画素位置とが一致した第1撮像手段と第2撮像手段とによって、被調理物の調理中に天板を撮影すれば、被調理物の調理状況を監視しながら、被調理物の温度も精度高く検出できる。すなわち、第1撮像手段によって得られた可視光画像から被調理物の調理状況や位置を検出するとともに、第2撮像手段によって得られた赤外線画像から、可視光画像から検出した被調理物の位置と一致する位置の温度を検出する。これにより、第1撮像手段によって被調理物の調理状況を監視しながら被調理物の位置を精度高く検出できるとともに、第2撮像手段によってその位置に在る被調理物の温度も精度高く検出できる。そして、第1撮像手段と第2撮像手段との併用により被調理物の温度の検出精度を高めることができるため、第2撮像手段を敢えて高性能化する必要がない。
【0014】
したがって、本発明の加熱調理器によれば、被調理物の調理状況を監視しながら、コストの高騰化を抑えつつ、被調理物の温度も精度高く検出できる。
【0015】
全マーカは、第2撮像手段の撮影時に発熱するように構成されていることが好ましい。
【0016】
この場合、発熱して周囲との温度差が大きくなったマーカが第2撮像手段によって撮影されるため、赤外線画像におけるマーカの画像がより鮮明になる。このため、第2撮像手段によるマーカの検出精度を高めるのに有利となる。
【0017】
全マーカは、天板の外周縁部、又は天板の外側であって第1撮像手段及び第2撮像手段の撮影範囲内に配置されていることが好ましい。
【0018】
この場合、マーカ同士の間隔が相対的に広くなるので、マーカ同士の位置関係を正確に特定するのに有利となる。
【0019】
天板は、透光部を少なくとも一部に有することが好ましい。そして、全マーカは、透光部の下面側に配置されるとともに、第1撮像手段の撮影時に発光するように構成されていることが好ましい。
【0020】
この場合、発光して目立つマーカを透光部を通して第1撮像手段により撮影することができるので、第1撮像手段によるマーカの検出精度を高めるのに有利となる。
【0021】
透光部の下面側に配置される全マーカはLEDライトよりなることが好ましい。
【0022】
この場合、LEDライトは発光時に発熱もするため、可視光画像におけるマーカの画像に加えて赤外線画像におけるマーカの画像もより鮮明になる。また、応答速度が速いことや寿命が長いこと等、LEDライトの良さを享受できる。
【0023】
本発明の加熱調理器は、第1マーカ情報に基づいて第1撮像手段の設置状態を判断する第1判断と、第2マーカ情報に基づいて第2撮像手段の設置状態を判断する第2判断と、の少なくとも一方を実行する撮像手段設置状態判断部をさらに備えていることが好ましい。
【0024】
この場合、第1撮像手段や第2撮像手段の設置状態を把握することができ、これらの撮像手段の位置や向きが異常である場合に、使用者などに対して設置状態の是正の注意喚起などを行うことができる。
【0025】
本発明の加熱調理器は、被調理物の調理中に、第1撮像手段、第1画像処理部、第2撮像手段及び第2画像処理部を制御して、撮影ステップと、被調理物検出ステップと、温度検出ステップとを実行する制御装置をさらに備えていることが好ましい。そして、撮影ステップでは、同期処理部で第1画像情報と第2画像情報とが同期された第1撮像手段と第2撮像手段とによって天板を撮影し得る。被調理物検出ステップでは、撮影ステップで第1撮像手段によって得られた可視光画像から、被調理物の調理状況及び位置を検出し得る。温度検出ステップでは、撮影ステップで第2撮像手段によって得られた赤外線画像から、被調理物検出ステップで検出した被調理物の位置と一致する位置の温度を検出し得る。
【0026】
この場合、被調理物の調理中に、制御装置の制御によって、被調理物の調理状況を監視しながら、被調理物の温度も精度高く検出できる。
【0027】
本発明の加熱調理器は、被調理物を加熱する加熱部をさらに備えていることが好ましい。そして、制御装置は、温度検出ステップの後に、温度検出ステップで検出した温度に応じて加熱部を制御する加熱制御ステップを実行することが好ましい。
【0028】
この場合、被調理物の調理中に、制御装置の制御によって、被調理物の調理状況を監視しながら被調理物の温度も精度高く検出するとともに、加熱部により加熱される被調理物の温度を検出温度に応じて適切に制御することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の加熱調理器によれば、被調理物の調理状況を監視しながら、コストの高騰化を抑えつつ、被調理物の温度も精度高く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、実施例1の加熱調理器の斜視図である。
図2図2は、実施例1の加熱調理器の一部を示す部分断面図である。
図3図3は、実施例1の加熱調理器の一部を示す部分平面図である。
図4図4は、実施例1の加熱調理器のブロック構成図である。
図5図5は、実施例1の加熱調理器に係り、動作処理を示すフローチャートである。
図6図6は、実施例1の加熱調理器に係り、動作処理を示すフローチャートである。
図7図7は、実施例1の加熱調理器に係り、動作処理の初期設定開始時における報知部の画面表示である
図8図8は、実施例1の加熱調理器に係り、マーカ異常設置状態の一例を示す可視光画像の模式図である。
図9図9は、実施例1の加熱調理器に係り、マーカ異常設置状態であることを報知する異常報知の一例を示す画面表示である。
図10図10は、実施例1の加熱調理器に係り、マーカ正常設置状態を示す可視光画像の模式図である。
図11図11は、実施例1の加熱調理器に係り、カメラ異常設置状態の一例を示す可視光画像の模式図である。
図12図12は、実施例1の加熱調理器に係り、カメラ異常設置状態であることを報知する異常報知の他の例を示す画面表示である。
図13図13は、実施例1の加熱調理器に係り、第2撮像手段で得た天板及び全マーカを含む赤外線画像の模式図である。
図14図14は、実施例1の加熱調理器に係り、被調理物の調理中に第1撮像手段で得た天板及び被調理物を含む可視光画像の模式図である。
図15図15は、実施例1の加熱調理器に係り、被調理物の調理中に第2撮像手段で得た天板及び被調理物を含む赤外線画像の模式図である。
図16図16は、実施例2の加熱調理器に係り、動作処理の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した実施例1及び実施例2を図面を参照しつつ説明する。
【0032】
(実施例1)
実施例1の加熱調理器1は、図1に示すように、システムキッチンの壁3に沿うカウンタートップ5に一体的に組み込まれたビルトイン型のガスコンロである。
【0033】
本実施例では、加熱調理器1に対向して立って加熱調理器1を利用しようとするユーザ側を加熱調理器1の手前側又は前側と規定し、壁3側を加熱調理器1の奥側又は後側と規定する。加熱調理器1の左右は、加熱調理器1を利用しようとするユーザが加熱調理器1に向かった場合の左を加熱調理器1の左と規定する。
【0034】
この加熱調理器1は、コンロ本体7と、天板9と、カメラモジュール11と、4個のマーカ13a、13b、13c、13dと、第1制御装置23と、第2制御装置31とを備えている。第1制御装置23及び第2制御装置31は、本発明における「制御装置」の一例である。
【0035】
この加熱調理器1は、いわゆる3口コンロである。天板9は、略矩形箱状のコンロ本体7の開口した上面を覆っている。天板9は、耐熱性および耐衝撃性の高いガラス板で形成されている。天板9の大部分は黒色半透明部90である。天板9の外周縁部における四隅には、4個の円形の無色透明部91a、91b、91c、91dが設けられている。すなわち、天板9の前端の左端位置に無色透明部91aが設けられ、天板9の前端の右端位置に無色透明部91bが設けられ、天板9の後端の左端位置に無色透明部91cが設けられ、天板9の後端の右端位置に無色透明部91dが設けられている。4つの無色透明部91a~91dは、本発明における「透光部」の一例である。
【0036】
天板9には、3個のコンロバーナ15a、15b、15cが二等辺三角形の各頂点の位置に配置されている。すなわち、天板9の前側の左位置にコンロバーナ15aが配置され、天板9の前側の右位置にコンロバーナ15bが配置され、天板9の後側の中央位置にコンロバーナ15cが配置されている。コンロバーナ15cは、天板9の左右方向の幅の中心に位置している。これらのコンロバーナ15a~15cは、燃料ガスの燃焼により、上方に載置される被調理物を加熱する。コンロバーナ15a~15cは、本発明における「加熱部」の一例である。
【0037】
天板9の前側中央位置には、液晶表示装置よりなる報知部21が設けられている。報知部21は、天板9に設けられた無色透明の表示窓の下面に図示しない液晶表示装置が配設されてなる。報知部21は、第1制御装置23の後述する第1通信制御部27からの信号を受信して、第2制御装置31の後述するカメラ設置状態判断部33の判断結果等の情報を表示する。
【0038】
コンロ本体7の内部にはグリル17が設けられ、コンロ本体7の前面には、各コンロバーナ15a~15c及びグリル17の火力等を操作するための操作部19が設けられている。
【0039】
4個のマーカ13a~13dは、天板9の外周縁部における四隅に設けられている。すなわち、マーカ13aは天板9の前端の左端位置に設けられ、マーカ13bは天板9の前端の右端位置に設けられ、マーカ13cは天板9の後端の左端位置に設けられ、マーカ13dは天板9の後端の右端位置に設けられている。各マーカ13a~13dは、それぞれ無色透明部91a~91dの中心位置に配置されている。各マーカ13a~13dは円形をなし、その直径は無色透明部91a~91dの直径よりも小さい。
【0040】
図2及び図3に示すように、4個のマーカ13a~13dは、小型のLEDライトよりなる。なお、図2及び図3には、4個のマーカ13a~13dのうち天板9の前端の右端位置のマーカ13bを示す。マーカ13a~13dは、操作部19の操作により点灯して、発光するとともに発熱する。また、マーカ13a~13dは、第1制御装置23の制御によっても点灯して、発光するとともに発熱する。
【0041】
コンロ本体7の上端縁から外方に向かって環状の外周フランジ7aが水平に張り出している。外周フランジ7aは、カウンタートップ5に形成された矩形状の取付開口5aの開口周縁部5bに支持されている。天板9の四隅のうちの前端の右端に対応する位置において、外周フランジ7aに円板状の支持基板14が固定されている。支持基板14には、マーカ13b及び仕切壁16が取り付けられている。支持基板14及び仕切壁16は、有色の樹脂製部材である。本実施例では、支持基板14及び仕切壁16の色は天板9の色に合わせて黒色とされている。仕切壁16は、マーカ13bの輪郭に対応する円形の環状をなしている。仕切壁16の内径は、無色透明部91bの直径よりも若干大きい。マーカ13bは、仕切壁16で囲われた空間内であって仕切壁16の中心位置に配置されている。
【0042】
図示は省略するが、天板9の四隅のうちの他の三隅に対応する位置においても、天板9の前端の右端位置に設けられた支持基板14及び仕切壁16と同様の支持基板及び仕切壁が外周フランジ7aに設けられている。そして、マーカ13b以外の他のマーカ13a、13c、13dも、マーカ13bと同様、支持基板上に取り付けられるとともに、仕切壁で囲われた空間内に配置されている。
【0043】
図4に示すように、コンロ本体7の内部には第1制御装置23が設けられている。第1制御装置23は、コンロ制御部25及び第1通信制御部27を有している。第1通信制御部27は、第2制御装置31の後述する第2通信制御部35とBluetooth(登録商標)等の無線通信により接続されており、第2通信制御部35からの信号を受信してその信号を報知部21等に送信する。
【0044】
コンロ制御部25は、操作部19や第1通信制御部27からの信号等に基づいて、コンロバーナ15a~15cの火力を調整する。なお、第1制御装置23は、マーカ13a~13dが消灯している場合に、第2制御装置31の後述する第2通信制御部35から第2カメラ53が撮影を開始することの信号を第1通信制御部27で受けると、マーカ13a~13dを点灯させる。また、第1制御装置23は、コンロバーナ15a~15cが点火されたことの信号を第1通信制御部27から第2通信制御部35に送る。
【0045】
図1に示すように、カメラモジュール11は、天板9から上方かつ後方に離れた位置の壁3に設置されている。カメラモジュール11は、天板9の左右方向の幅内に位置している。壁3には、カメラモジュール11より上方に、図示しないレンジフードが設置されている。カメラモジュール11は、このレンジフード内や天井に設けてもよい。
【0046】
カメラモジュール11は、図示しない取り付け部材により壁3に対する取付位置が微調整可能とされている。また、カメラモジュール11は、後述する第1カメラ51、第2カメラ53の撮影方向も微調整可能とされている。
【0047】
カメラモジュール11は、第1カメラ51、第2カメラ53及び第2制御装置31を有している。第1カメラ51及び第2カメラ53は第2制御装置31に接続されている。第1カメラ51及び第2カメラ53は、天板9の左右方向の幅の略中心に位置している。第1カメラ51及び第2カメラ53は、天板9の後方かつ斜め上方から天板9の全体を撮影可能である。また、第1カメラ51及び第2カメラ53は、天板9の周囲であって、天板9の外周端縁から外側に少なくとも約10cm離れた領域まで撮影可能である。
【0048】
第1カメラ51は、可視光画像を撮像可能なデジタル式のCCDカメラである。第1カメラ51は、天板9及び4個のマーカ13a~13dを撮影して、天板9及び4個のマーカ13a~13dの全てを含む可視光画像を撮像する。第1カメラ51は、動画撮影可能なビデオカメラ等であってもよい。第1カメラ51は、本発明における「第1撮像手段」の一例である。
【0049】
第2カメラ53は、赤外線画像を撮像可能な赤外線カメラであり、撮影対象である被写体の温度を計測可能なサーモグラフィカメラである。第2カメラ53は、天板9及び4個のマーカ13a~13dを撮影して、天板9及び4個のマーカ13a~13dの全てを含む赤外線画像を撮像する。第2カメラ53は、本発明における「第2撮像手段」の一例である。
【0050】
第2制御装置31は、第1カメラ51及び第2カメラ53の作動を制御する。第2制御装置31は、カメラ設置状態判断部33と、第1画像処理部37と、第2画像処理部41と、同期処理部45と、第2通信制御部35とを有している。カメラ設置状態判断部33は、本発明における「撮像手段設置状態判断部」の一例である。
【0051】
第1画像処理部37は、第1カメラ51が撮影した可視光画像を取得し、この可視光画像に対して所定の画像処理を施す。具体的には、第1画像処理部37は、グレースケール化、エッジ抽出及び二値化等により、可視光画像をエッジ処理する。第1カメラ51による撮影時にマーカ13a~13dのLEDライトを点灯させることで、マーカ13a~13dを発光させれば、そのLEDライトからの光がそれぞれ無色透明部91a~91dを透過して第1カメラ51に到達する。これにより、可視光画像におけるマーカ13a~13dをより目立たせることができる。
【0052】
第1画像処理部37は、第1マーカ情報抽出部39を有している。第1マーカ情報抽出部39は、第1カメラ51によって撮像されるとともに、所定の画像処理が施された可視光画像に含まれる各マーカ13a~13dに関する第1マーカ情報を抽出する。第1マーカ情報抽出部39は、可視光画像に含まれるマーカの位置、形状、大きさや数などの第1マーカ情報を抽出する。具体的には、第1マーカ情報抽出部39は、エッジ処理画像に対してハフ変換を行ってマーカ候補を抽出し、マーカ抽出値が所定値以上であれば、円の一致度が高いと判断して、マーカとして確定する。そして、可視光画像において確定された各マーカの中心位置における画素の座標を第1マーカ中心座標として取得して、各マーカ13a~13dにそれぞれ対応する第1マーカ座標を抽出する。仮に天板9の四隅に設定された全マーカ13a~13dが確定されれば、各マーカ13a~13dにそれぞれ対応する第1マーカ座標(x_A, y_A)、(x_B, y_B)、(x_C, y_C)、(x_D, y_D)が抽出される。第1マーカ座標(x_A, y_A)、(x_B, y_B)、(x_C, y_C)、(x_D, y_D)は、本発明における「第1マーカ情報」の一例である。なお、可視光画像において確定された各マーカの位置さえ特定できれば、マーカの中心位置以外の特定位置における画素の座標を第1マーカ座標として抽出してもよい。
【0053】
カメラ設置状態判断部33は、第1マーカ情報抽出部39で得られた第1マーカ情報に基づいて、所定の設定数のマーカがそれぞれ所定の設定位置に配置されているか否かを判断する。すなわち、カメラ設置状態判断部33は、第1マーカ座標(x_A, y_A)、(x_B, y_B)、(x_C, y_C)、(x_D, y_D)に基づいて、4つのマーカ13a~13dがそれぞれ所定の設定位置に配置されているか否かを判断する。これにより、カメラ設置状態判断部33は、各マーカ13a~13dの設置状態が異常であるか否かを判断するとともに、第1カメラ51の設置状態が異常であるか否かを判断する。
【0054】
すなわち、カメラ設置状態判断部33は、第1マーカ情報におけるマーカ数が所定の設定数に一致し、かつ、第1マーカ情報における各マーカ位置がそれぞれ所定の設定位置に一致すれば、天板9に所定の設定数のマーカがそれぞれ所定の設定位置に配置されていると判断する。この場合、カメラ設置状態判断部33は、全マーカ13a~13d及び第1カメラ51の設置状態が正常であると判断する。
【0055】
一方、カメラ設置状態判断部33は、所定の設定数のマーカが所定の設定位置に配置されていないと判断した場合は、マーカ異常設置状態であるか、あるいはカメラ異常設置状態であると判断する。例えば、天板9内のマーカ数が足りない場合は、マーカ異常設置状態と判断される。また例えば、天板9内に所定の設定数のマーカがあり、かつ、各マーカ相互の位置関係が所定の設定位置関係であるが、各マーカがそれぞれ所定の設定位置に配置されてはいない場合、すなわち所定の設定数の各マーカが正常な位置関係にあり、その正常位置関係を保ちつつ全体的に傾いたり、上下又は左右方向等にずれたりしている場合は、第1カメラ51の撮影方向等がずれたカメラ異常設置状態と判断される。
【0056】
第2画像処理部41は、第2カメラ53が撮影した赤外線画像を取得し、この赤外線画像に対して所定の画像処理を施す。具体的には、第2画像処理部41は、エッジ抽出及び二値化等により、赤外線画像をエッジ処理する。
【0057】
第2画像処理部41は、第2マーカ情報抽出部43を有している。第2マーカ情報抽出部43は、第2カメラ53によって撮像されるとともに、所定の画像処理が施された赤外線画像に含まれる全マーカ13a~13dに関する第2マーカ情報を抽出する。第2マーカ情報抽出部43は、赤外線画像に含まれるマーカの位置、形状、大きさや数などの第2マーカ情報を抽出する。赤外線画像においては、マーカ13a~13dの温度がその周囲の天板9の温度と異なっていれば、マーカ13a~13dがその周囲にある天板9とは異なる色で示される。第2カメラ53による撮影時にマーカ13a~13dのLEDライトを点灯させることで、マーカ13a~13dを発光させるとともに発熱させれば、マーカ13a~13dとその周囲の天板9との温度差が大きくなるため、赤外線画像におけるマーカ13a~13dをより際立たせることができる。
【0058】
そして、第2マーカ情報抽出部43は、赤外線画像における各マーカ13a~13dの中心位置における画素の座標を第2マーカ中心座標として取得して、各マーカ13a~13dにそれぞれ対応する第2マーカ座標(x_a, y_a)、(x_b, y_b)、(x_c, y_c)、(x_d, y_d)を抽出する。第2マーカ座標(x_a, y_a)、(x_b, y_b)、(x_c, y_c)、(x_d, y_d)は、本発明における「第2マーカ情報」の一例である。なお、赤外線画像において各マーカの位置さえ特定できれば、マーカの中心位置以外の特定位置における画素の座標を第2マーカ座標として抽出してもよい。
【0059】
カメラ設置状態判断部33は、第1マーカ情報抽出部39で得られた第1マーカ情報の代わりに、第2マーカ情報抽出部43で得られた第2マーカ情報を用いて、各マーカ13a~13dの設置状態が異常であるか否かを判断してもよい。
【0060】
同期処理部45は、第1マーカ座標(x_A, y_A)、(x_B, y_B)、(x_C, y_C)、(x_D, y_D)と、第2マーカ座標(x_a, y_a)、(x_b, y_b)、(x_c, y_c)、(x_d, y_d)とに基づいて、可視光画像の第1画像情報と赤外線画像の第2画像情報とを同期させる。具体的には、第1マーカ座標(x_A, y_A)、(x_B, y_B)、(x_C, y_C)、(x_D, y_D)に合せて、第2マーカ座標(x_a, y_a)、(x_b, y_b)、(x_c, y_c)、(x_d, y_d)を投影変換する。これにより、可視光画像における各画素の画素位置と、赤外線画像における各画素の画素位置とを一致させる。
【0061】
第2制御装置31は、さらに被調理物検出部47と、被調理物温度検出部49とを有している。
【0062】
被調理物検出部47は、被調理物の調理中に、第1カメラ51が撮像するとともに第1画像処理部37が画像処理した可視光画像から被調理物を検出する。すなわち、被調理物検出部47は、被調理物の調理状況とともに、被調理物の位置座標を検出する。被調理物検出部47が検出する被調理物の調理状況としては、被調理物の吹きこぼれや焼き過ぎ、異物の侵入などを挙げることができる。
【0063】
被調理物温度検出部49は、第2カメラ53が撮像するとともに第2画像処理部41が画像処理した赤外線画像から、被調理物検出部47で検出した被調理物の位置座標と一致する位置座標の温度を検出する。
【0064】
第2通信制御部35は、カメラ設置状態判断部33で判断された情報、被調理物検出部47で検出された被調理物の調理状況や被調理物温度検出部49で検出された被調理物の温度の情報を含む信号を第1制御装置23の第1通信制御部27に送信する。第1制御装置23は、例えば、調理状況の内容に応じて、報知部21にその情報を表示させたり、被調理物の温度に応じて、コンロ制御部25にコンロバーナ15a~15cの火力を調整させたりする。
【0065】
また、第1制御装置23には、制御プログラムが格納されたマイクロコンピュータが組み込まれている。マイクロコンピュータは、制御プログラムに従って、コンロ制御部25に対して、コンロバーナ15a~15cの火力や調理時間などを制御する。
【0066】
上記のように構成された加熱調理器1をシステムキッチンに最初に設置する場合、作業者は、コンロ本体7及び天板9をカウンタートップ5に組み付けるとともに、カメラモジュール11を壁3に仮設置する。このとき第1カメラ51及び第2カメラ53を正常に設置するためのカメラ位置等の補正処理が行なわれる。また、故障や点検等によりカメラモジュール11を壁3に再設置する際にも、カメラ位置等の補正処理が行なわれる。
【0067】
以下、加熱調理器1をシステムキッチンに最初に設置した後に第1カメラ51のカメラ位置等の補正処理を行い、その後続けて被調理物を加熱する自動調理の一例について、図5図15を参照して説明する。
【0068】
コンロ本体7又はカメラモジュール11に設けられた図示しない設定スイッチにより動作が開始されると、動作処理の初期設定開始時における報知部21の画面表示を図7に示すように、第1制御装置23の第1通信制御部27からの信号により、報知部21に「天板の4隅のマーカを点灯させてください」と表示される。作業者は、これに従い、操作部19の操作等により、天板9の4隅のマーカ13a~13dを点灯させて、マーカ13a~13を発光させるとともに発熱させる。なお、報知部21に上記の表示をさせることなく、動作処理の初期設定開始時に自動でマーカ13a~13dが点灯するようにしてもよい。
【0069】
そして、第2制御装置31からの指令により、図5に示すように、カメラモジュール11の第1カメラ51が天板9及び天板9内の発光かつ発熱した各マーカ13a~13dを撮影する(ステップS1)。第1カメラ51によって撮像された可視光画像は、第1カメラ51から第2制御装置31の第1画像処理部37に送られる。第1画像処理部37は、可視光画像に対してエッジ処理等の所定の画像処理を施し、処理した可視光画像を第1マーカ情報抽出部39に送る。
【0070】
第1マーカ情報抽出部39は、画像処理された可視光画像に含まれるマーカ13a~13dに関する第1マーカ情報としての第1マーカ座標を抽出する(ステップS2)。すなわち、可視光画像からマーカ抽出値が大きい順にマーカ候補を抽出する。そして、マーカ抽出値が所定値以上であるか否かを判断する。マーカ抽出値が所定値以上である場合は、そのマーカ候補がマーカとして確定される。そして、可視光画像において確定された各マーカの中心位置における画素の座標を第1マーカ中心座標として取得して、例えばマーカ13a~13dにそれぞれ対応する第1マーカ座標(x_A, y_A)、(x_B, y_B)、(x_C, y_C)、(x_D, y_D)を抽出する(ステップS2)。
【0071】
こうしてマーカとして確定され、各マーカにそれぞれ対応する第1マーカ座標が抽出されると、カメラ設置状態判断部33により、第1マーカ座標が抽出されたマーカ確定個数が所定の設定数Mnに一致するか否かが判断される(ステップS3)。
【0072】
例えば、マーカ異常設置状態の一例を示す可視光画像の模式図を図8に示すように、仮に天板9の後端の左端のマーカ13cが点灯しておらず、可視光画像中に本来点灯してよく見えるはずのマーカ13cがよく見えない場合は、ステップS3でマーカ確定個数が3個と判断され、マーカ不足と判断される。また例えば、ステップS3でマーカ確定個数が5個と判断された場合は、例えばマーカとして誤認識されてしまう異物が天板9上に存在すると判断され得る。これらのマーカ異常設置状態の場合、第2通信制御部35及び第1通信制御部27を介して報知部21に異常報知Aとしての情報が送信される(ステップS4)。図9に示すように、報知部21では、異常報知Aとして「マーカを認識できませんでした。マーカ点灯を確認してください。天板にマーカ以外を置かないでください。」などと表示される。
【0073】
ステップS3で、マーカ確定個数が所定の設定数Mnに一致する場合は、カメラ設置状態判断部33により、第1マーカ情報抽出部39で得られた第1マーカ情報に基づいてマーカ位置解析が行なわれ(ステップS5)、マーカ位置が正しいか否かが判断される(ステップS6)。なお、マーカ位置は、例えば隣り合うマーカ同士を結ぶ線の傾きをそれぞれ調べることで判断することができる。
【0074】
例えば、図10にマーカ正常設置状態を示す可視光画像の模式図を示すように、ステップS3で確定された4個のマーカの全てが所定の設定位置にあれば、マーカ正常設置状態で、かつカメラ正常設置状態と判断され、この場合、カメラ設置状態判断部33は、第1カメラ51の設置状態が正常であると判断する。
【0075】
一方、例えば、天板9が傾いた可視光画像の模式図を図11に示すように、所定の設定数である4個のマーカ13a~13dであるが、各マーカ13a~13dのいずれかが所定の設定位置に配置されてはいない場合は、マーカ正常設置状態で、かつカメラ異常設置状態と判断され得る。
【0076】
この場合、第2通信制御部35及び第1通信制御部27を介して報知部21に異常報知Bとしての情報が送信される(ステップS7)。図12に示すように、報知部21では、異常報知Bとして「カメラの傾きを検出しました。カメラを設置し直してください。」と表示される。このように、カメラ設置状態判断部33により、第1カメラ51の設置状態が異常であると判断されれば、作業者は第1カメラ51を正しい状態に設置し直すことができる。
【0077】
ステップS6で第1カメラ51の正常設置状態が確認されれば、第2制御装置31からの指令により、カメラモジュール11の第2カメラ53が天板9及び天板9内の発光かつ発熱した全マーカ13a~13dを撮影する(ステップS8)。第2カメラ53によって撮像された赤外線画像の模式図を図13に示す。図13においては、マーカ13a~13dの画像がこの赤外線画像は、第2カメラ53から第2制御装置31の第2画像処理部41に送られる。第2画像処理部41は、赤外線画像に対してエッジ処理等の所定の画像処理を施し、処理した赤外線画像を第2マーカ情報抽出部43に送る。
【0078】
第2マーカ情報抽出部43は、画像処理された赤外線画像に含まれる各マーカ13a~13dに関する第2マーカ情報としての第2マーカ座標を抽出する(ステップS9)。すなわち、赤外線画像において各マーカ13a~13dの中心位置における画素の座標を第2マーカ中心座標として取得して、各マーカ13a~13dにそれぞれ対応する第2マーカ座標(x_a, y_a)、(x_b, y_b)、(x_c, y_c)、(x_d, y_d)を抽出する(ステップS9)。
【0079】
ステップS9で第2マーカ座標が抽出されれば、図6に示すように、同期処理部45が、第1マーカ座標(x_A, y_A)、(x_B, y_B)、(x_C, y_C)、(x_D, y_D)に合せて、第2マーカ座標(x_a, y_a)、(x_b, y_b)、(x_c, y_c)、(x_d, y_d)を投影変換する(ステップS10)。これにより、可視光画像における各画素の画素位置と、赤外線画像における各画素の画素位置とが一致し、可視光画像の第1画像情報と赤外線画像の第2画像情報とが同期される。
【0080】
続いて、図14に示すように、天板9の前側左位置のコンロバーナ15aでフライパン61を加熱して生卵から目玉焼き63を作る例について説明する。目玉焼き63は、本発明における「被調理物」の一例である。
【0081】
操作部19により所定の点火操作がされると(ステップS11)、コンロバーナ15aが点火されて(ステップS12)、目玉焼き63を作るための加熱調理が開始される。
【0082】
この目玉焼き63の加熱調理中に、予め可視光画像の画素位置と赤外線画像の画素位置とが一致されている第1カメラ51と第2カメラ53とにより、天板9を撮影する。すなわち、コンロバーナ15aが点火されると、第1通信制御部27から第2通信制御部35にコンロバーナ15aが点火されたことの信号が送られる。これにより、第2制御装置31からの指令により、第1カメラ51及び第2カメラ53による天板9の撮影が開始される(ステップS13、撮影ステップ)。
【0083】
第1カメラ51で撮像した可視光画像は、第2制御装置31の第1画像処理部37に送られる。第1画像処理部37は、可視光画像に対して所定の画像処理を施す。そして、第2制御装置31の被調理物検出部47が画像処理後の可視光画像から被調理物としての目玉焼き63の調理状況を検出するとともに、目玉焼き63の位置座標Mを検出する(ステップS14、被調理物検出ステップ。図14参照)。
【0084】
第2カメラ53で撮像した赤外線画像は、第2制御装置31の第2画像処理部41に送られる。第2画像処理部41は、赤外線画像に対して所定の画像処理を施す。そして、第2制御装置31の被調理物温度検出部49が画像処理後の赤外線画像から被調理物としての目玉焼き63の温度を検出する。このとき、赤外線画像において、被調理物検出部47で検出した目玉焼き63の位置座標Mと一致する位置座標Mの温度を検出する(ステップS15、被調理物温度検出ステップ。図15参照)。
【0085】
そして、第1制御装置23は、制御プログラムに従って目玉焼き63の調理が完了したか否かを判断する(ステップS16)。
【0086】
第1制御装置23は、ステップS16で目玉焼き63の調理が完了していないと判断された場合、制御プログラムに従ってコンロバーナ15aの火力が適切か否かを判断する(ステップS17)。そして、コンロバーナ15aの火力が適切でないと判断した場合、第1制御装置23は、コンロ制御部25に対して、ステップS15の被調理物温度検出ステップで検出した目玉焼き63の温度に応じてコンロバーナ15aの火力を調整する火力変更の指令をする(ステップS18、加熱制御ステップ)。一方、コンロバーナ15aの火力が適切であれば、ステップS13の撮影ステップに戻る。
【0087】
ステップS16で、第1制御装置23により調理完了と判断されれば、一連の動作が終了する。
【0088】
この加熱調理器1では、目玉焼き63の加熱調理中に、同期処理部45によって可視光画像の画素位置と赤外線画像の画素位置とが一致された第1カメラ51と第2カメラ53とを用いて天板9を撮影することにより、第1カメラ51で撮像された可視光画像によって目玉焼き63の調理状況を監視しながら、第2カメラ53を高性能化することなく、第2カメラ53で撮像された赤外線画像によって目玉焼き63の温度も精度高く検出できる。
【0089】
したがって、実施例1の加熱調理器1によれば、被調理物の調理状況を監視しながら、コストの高騰化を抑えつつ、被調理物の温度も精度高く検出できる。
【0090】
特に、この加熱調理器1では、天板9の無色透明部91a~91dの下面に配置されるとともに、第1カメラ51及び第2カメラ53の撮影時に発光かつ発熱するLEDライトによって、マーカ13a~13dが構成されている。そして、マーカ13a~13dはマーカ形状に対応した仕切壁16内に配置されている。これにより、可視光画像及び赤外線画像において、マーカ13a~13dの画像がより鮮明に目立つとともに、マーカ輪郭線も際立つため、マーカ13a~13dの特定が容易かつ確実となり、マーカ13a~13dの検出精度を高めるのに有利となる。また、マーカ13a~13dは天板9の下面に備え付けられているため、マーカ13a~13dが調理の邪魔になったり、マーカ13a~13dが紛失したりすることがない。さらに、必要時以外は消灯によりマーカ13a~13dを目立たなくすることができるため、天板9の意匠性を低下させるおそれも少ない。
【0091】
マーカ13a~13dは、天板9の外周縁部の四隅に配置されているので、天板9の中央領域等にマーカ13a~13dが配置される場合と比較して、各マーカ13a~13d同士の間隔が相対的に広く、マーカ13a~13d同士の位置関係を正確に特定するのに有利となる。また、天板9の外周縁部であれば、マーカ13a~13dによく似た形状の異物がマーカ13a~13dの近くに存在する可能性が低く、マーカ誤認識を防ぐのに有利となる。
【0092】
また、この加熱調理器1では、目玉焼き63の加熱調理中に、目玉焼き63の調理状況を監視しながら、目玉焼き63の温度も精度高く検出できるとともに、その検出温度に応じてコンロバーナ15aの火力を適切に制御することができる。よって、焼き過ぎ等を防ぎつつ、目玉焼き63を適切かつ容易に加熱調理することができる。
【0093】
(実施例2)
図16に示すように、実施例2では、実施例1の動作処理の一例を示す図5及び図6のフローチャートにおいて、ステップS9とステップS10との間に、ステップS20~ステップS22を追加している。すなわち、実施例2では、実施例1と同じ加熱調理器1によって、図16に示すフローチャートに従う動作処理を行う。
【0094】
実施例1と同様、第2カメラ53によって赤外線画像が撮像されるとともに(ステップS8)、第2マーカ情報抽出部43によって赤外線画像に含まれる各マーカ13a~13dに関する第2マーカ情報としての第2マーカ座標(x_a, y_a)、(x_b, y_b)、(x_c, y_c)、(x_d, y_d)が抽出される(ステップS9)。
【0095】
そして、カメラ設置状態判断部33により、第2マーカ情報抽出部43で得られた第2マーカ情報に基づいてマーカ位置解析が行なわれ(ステップS20)、マーカ位置が正しいか否かが判断される(ステップS21)。
【0096】
ステップS21では、実施例1のステップS5と同様の処理が行われ、第2カメラ53の設置状態が正常であると判断されたり、マーカ正常設置状態で、かつ第2カメラの異常設置状態と判断されたりする。そして、第2通信制御部35及び第1通信制御部27を介して報知部21に異常報知Bとしての情報が送信される(ステップS22)。
【0097】
ステップS21で第2マーカ座標が抽出されれば、実施例1と同様に、同期処理部45が可視光画像の第1画像情報と赤外線画像の第2画像情報とを同期させる(ステップS10)。
【0098】
その他の構成及び作用効果は実施例1と同様である。
【0099】
以上において、本発明を実施例1及び2に即して説明したが、本発明は上記実施例1及び2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0100】
実施例1及び2では、同期処理部45が第1マーカ座標に合わせて第2マーカ座標を投影変換することにより、可視光画像における各画素の画素位置と、赤外線画像における各画素の画素位置とが一致させているが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1撮像手段又は第2撮像手段の設置位置や向きを物理的に変えることによって、可視光画像の第1画像情報と赤外線画像の第2画像情報とを合わせてもよい。
【0101】
実施例1及び2では、4個のマーカ13a~13dを天板9の四隅に配置しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、4個のマーカ13a~13dを天板9の一方の長辺の両端でない2か所と他方の長辺の両端でない2か所とに配置したり、3個のマーカを一方の長辺の両端の2か所と他方の長辺の中央の1か所との3か所に配置したり、2個のマーカを一方の短辺の中央の1か所と他方の短辺の中央の1か所との2か所に配置したりしてもよい。また、第1カメラ51及び第2カメラ53による撮影範囲内であれば、天板の外側に複数のマーカを配置してもよい。
【0102】
実施例1及び2では、4個のマーカ13a~13dを天板9の下面に備え付けているが、本発明はこれに限定されない。例えば、天板9の上にLEDライト等よりなるマーカを載置等して、天板9に対してマーカを取り外し可能に配置してもよい。また、マーカとしては、LEDライト以外の小型ライト等であってもよく、また、天板9にマーカを印刷やラベルシール等により表示するとともに、そのマーカ表示部を天板9の下面からヒータ等により加熱するようにしてもよい。さらに、マーカは必ずしも発熱しなくてもよく、マーカ周囲の天板等との温度差により赤外線画像でマーカを特定できればよい。例えば、冷却可能なマーカでもよい。
【0103】
実施例1及び2では、マーカ13a~13dの正規形状として正円を採用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、星形や多角形が正規形状となるようにマーカ13a~13dを表示してもよい。また、形状の他に、文字、模様や色彩等によりマーカを表示してもよい。
【0104】
実施例1及び2では、報知部21として天板9の前側の中央位置に配置した液晶表示装置を採用したが、例えば、コンロ本体7の前面部に液晶表示装置等を設置してもよいし、あるいは加熱調理器が内蔵するスピーカ等を利用して音声出力により種々の情報を報知してもよい。また、無線通信を利用して、作業者が携帯するスマートフォンやタブレット型パソコン等の携帯端末機器に種々の情報を報知してもよい。
【0105】
実施例1及び2では、加熱部がコンロバーナ15a~15cであるガスコンロに本発明を適用したが、IHコンロ等の電気コンロに本発明を適用してもよい。この場合、例えば1枚のシート状マーカ表示部材の所定位置に印刷等により複数のマーカを表示したり、そのシート状マーカ表示部材の所定位置に小型のLEDライトを配置したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、例えば、住宅の台所や施設の厨房設備等に利用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1…加熱調理器
9…天板
13a~13d…マーカ
15a~15c…コンロバーナ(加熱部)
23…第1制御装置(制御装置)
31…第2制御装置(制御装置)
33…カメラ設置状態判断部(撮像手段設置状態判断部)
37…第1画像処理部
39…第1マーカ情報抽出部
41…第2画像処理部
43…第2マーカ情報抽出部
45…同期処理部
51…第1カメラ(第1撮像手段)
53…第2カメラ(第2撮像手段)
91a~91d…無色透明部(透光部)
63…目玉焼き(被調理物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16