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特開2024-101700デジタル放送用電力増幅器及びデジタル放送送信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101700
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】デジタル放送用電力増幅器及びデジタル放送送信装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20240723BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20240723BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20240723BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H03F1/02 188
H03F3/24
H03F3/68 220
H04B1/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005767
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板垣 広務
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山本 卓史
【テーマコード(参考)】
5J500
5K060
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AA64
5J500AA65
5J500AC58
5J500AC81
5J500AC85
5J500AF10
5J500AF15
5J500AH19
5J500AH29
5J500AH33
5J500AK12
5J500AK44
5J500AK68
5J500AS14
5J500AT01
5J500AT07
5J500CK03
5J500CK06
5J500CK07
5J500LV08
5J500PF06
5J500PG02
5K060BB04
5K060CC04
5K060DD03
5K060HH06
5K060HH09
5K060HH39
5K060KK03
5K060KK04
(57)【要約】
【課題】メイン電力増幅回路が故障した場合であっても、RF出力信号のレベル低下を最小限に抑制し、放送継続を行う。
【解決手段】実施形態のデジタル放送用電力増幅器は、第1電源により駆動され、RF入力信号を増幅するメイン電力増幅回路と、それぞれ別の電源に接続され、互いに並列に接続されるとともに、メイン電力増幅回路に並列に接続されて、RF入力信号を増幅するn個(nは、2以上の整数)のピーク電力増幅回路と、第1電源の電圧に基づいて、メイン電力増幅回路が異常状態か否かを監視する電圧監視部と、電圧監視部の監視結果に基づいてメイン電力増幅回路が異常状態とされた場合に、メイン増幅回路の出力端子をショート状態とするショート制御部と、電圧監視部の監視結果に基づいて、メイン電力増幅回路が異常状態とされた場合に、ピーク電力増幅回路の電源制御を行い、何れか一つのピーク電力増幅回路をメイン電力増幅回路として代替させる制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源により駆動され、RF入力信号を増幅する第1の電力増幅回路と、
それぞれ別の電源に接続され、互いに並列に接続されるとともに、前記第1の電力増幅回路に並列に接続されて、前記RF入力信号を増幅するn個(nは、2以上の整数)の第2の電力増幅回路と、
前記第1電源の電圧に基づいて、前記第1の電力増幅回路が異常状態か否かを監視する電圧監視部と、
前記電圧監視部の監視結果に基づいて前記第1の電力増幅回路が異常状態とされた場合に、前記第1の電力増幅回路の出力端子をショート状態とするショート制御部と、
前記電圧監視部の監視結果に基づいて、前記第1の電力増幅回路が異常状態とされた場合に、前記第2の電力増幅回路の電源制御を行い、何れか一つの前記第2の電力増幅回路を前記第1の電力増幅回路として代替させる制御部と、
を備えたデジタル放送用電力増幅器。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の電力増幅回路が異常状態とされた場合に、前記第2の電力増幅回路のゲートバイアス電圧を上げ、何れか一つの前記第2の電力増幅回路を前記第1の電力増幅回路として代替させる、
請求項1記載のデジタル放送用電力増幅器。
【請求項3】
前記第1の電力増幅回路と、m個(mは、n以下の整数)の前記第2の電力増幅回路と、は、(m+1)段のドハティ増幅回路として機能する、
請求項1記載のデジタル放送用電力増幅器。
【請求項4】
前記第1の電力増幅回路が異常状態とされた場合には、m個の前記第2の電力増幅回路は、全体としてm段のドハティ増幅回路として機能する、
請求項3記載のデジタル放送用電力増幅器。
【請求項5】
前記第1の電力増幅回路は、B級電力増幅回路であり、
前記第2の電力増幅回路は、C級電力増幅回路である、
請求項1記載のデジタル放送用電力増幅器。
【請求項6】
放送用信号の伝送路符号化及び変調を行い出力する変調器と、
前記変調器の出力の周波数変換を行い、RF信号として出力する励振器と、
前記RF信号を分配する分配器と、
請求項1乃至請求項5の何れかに記載のデジタル放送用電力増幅器と、
前記デジタル放送用電力増幅器の複数の出力を合成する合成器と、
を備えたデジタル放送送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、デジタル放送用電力増幅器及びデジタル放送送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデジタル放送送信装置としての、地上デジタルテレビ放送用送信機は、変調励振部からのRF信号を送信出力レベルまで増幅する電力増幅器を有している。
例えば、国内の親局送信機に用いる電力増幅器では入力信号レベル1mWを400Wに増幅している。
【0003】
また、近年は、電力増幅器の電力効率向上を目的として、終段電力増幅回路にドハティ増幅回路を用いることが主流となっている。
例えば、一般的な3段ドハティ電力増幅回路においては、RF入力から入力されたRF信号は分配回路により、メイン電力増幅回路及びメイン電力増幅回路と並列に接続された第1ピーク電力増幅回路、第2ピーク電力増幅回路に分配する。
メイン電力増幅回路、第1ピーク電力増幅回路及び第2ピーク電力増幅回路は、RF信号の振幅の大きさによって動作が変わり、小振幅領域ではメイン電力増幅回路のみ動作し、中振幅領域ではメイン電力増幅回路と第1ピーク電力増幅回路が動作し、大振幅領域では全電力増幅回路が動作する。各電力増幅回路で増幅されたRF信号は合成回路により合成し、RF出力に増幅されたRF信号が出力するようにされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4-85912号公報
【特許文献2】特開2012-049879号公報
【特許文献3】特開2006-060301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、メイン電力増幅回路が故障した場合には、メイン電力増幅回路の出力端が開放状態となるため、合成器(合成点)においては、ショート状態となり、RF出力信号が出力されない状態となり、放送が中断してしまう虞があった。
これを回避するため、複数の送信系統を有する冗長構成が採られていたが、冗長系に切り替えるための時間を要し、放送中断時間が長くなってしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、メイン電力増幅回路が故障した場合であっても、RF出力信号のレベル低下を最小限に抑制し、放送継続を行うことが可能なデジタル放送用電力増幅器及びデジタル放送送信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のデジタル放送用電力増幅器は、第1電源により駆動され、RF入力信号を増幅する第1の電力増幅回路と、それぞれ別の電源に接続され、互いに並列に接続されるとともに、前記第1の電力増幅回路に並列に接続されて、前記RF入力信号を増幅するn個(nは、2以上の整数)の第2の電力増幅回路と、前記第1電源の電圧に基づいて、前記第1の電力増幅回路が異常状態か否かを監視する電圧監視部と、前記電圧監視部の監視結果に基づいて前記第1の電力増幅回路が異常状態とされた場合に、前記第1の電力増幅回路の出力端子をショート状態とするショート制御部と、前記電圧監視部の監視結果に基づいて、前記第1の電力増幅回路が異常状態とされた場合に、前記第2の電力増幅回路の電源制御を行い、何れか一つの前記第2の電力増幅回路を前記第1の電力増幅回路として代替させる制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態のデジタル放送送信装置の概要構成ブロック図である。
図2図2は、電力増幅器の概要構成ブロック図である。
図3図3は、実施形態の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態のデジタル放送送信装置の概要構成ブロック図である。
デジタル放送送信装置10は、OFDM変調器11と、励振器・DPD(Digital Pre-Distortion)12と、分配器13と、電力増幅器ユニット14と、合成回路15と、バンドパスフィルタ(BPF)16と、送信機制御部17と、を備えている。
【0010】
OFDM変調器11は、地上デジタル放送システム設備のうち、スタジオ側又は送信所側に設置して使用される。例えば、ISDB-Tの放送TS信号を入力とし,伝送路符号化及びOFDM変調を行い、IF帯の変調波を出力する。
【0011】
励振器・DPD12は、IF帯の変調波の周波数をUHF帯の送信周波数に変換してRF信号を出力する。励振器12は、電力増幅器におけるIM(相互変調歪み)の発生を抑える非線形ひずみ補償機能及びシステムで発生する線形ひずみを補償する線形ひずみ補償機能を備えている。
【0012】
分配器13は、UHF帯に周波数変換されたRF信号を分配して出力する。
電力増幅器ユニット14は、動作開始入力振幅レベルが異なる複数の電力増幅器を有し、UHF帯に周波数変換され、分配されたそれぞれのRF信号の振幅がが動作開始入力振幅レベルを超えている場合に対応する電力増幅回路が電力増幅を行い、出力する。
【0013】
合成回路15は、電力増幅器14-1が出力したRF信号を合成して後段のBPF16に出力する。
BPF16は、送信周波数帯域に合わせた放送チャンネル帯域の成分のみを通過させて送信用アンテナANTに出力する。
【0014】
図2は、電力増幅器の概要構成ブロック図である。
この場合において、第1電力増幅器14-1~第n電力増幅器14-nは、同一の構成であるので、電力増幅器として第1電力増幅器14-1を例として説明する
また、理解の容易のため、第1電力増幅器14-1が、初期状態においてメイン電力増幅回路(=第1の電力増幅回路)として機能する第1電力増幅回路21及びピーク電力増幅回路(=第2の電力増幅回路)として機能する二つ(n=2に相当)第2電力増幅回路22-1、第3電力増幅回路22-2を備えている場合(すなわち、三段(=n+1段)構成のドハティ増幅回路)を例として説明する。
しかしながら、四つ以上の電力増幅回路を備える(四段構成以上のドハティ増幅回路)構成とすることも可能である。
【0015】
電力増幅器14-1は、第1電力増幅回路21と、第2電力増幅回路22-1、第3電力増幅回路22-2、第1電源回路23と、電源異常検出回路24と、出力ショート回路25と、第2電源回路26と、第3電源回路27と、バイアス制御回路28と、第1伝送線路29-1~第6伝送線路29-6を備えている。
【0016】
第1電力増幅回路21は、三段構成のドハティ増幅回路においていわゆるメイン電力増幅回路として機能し、RF入力信号を所定の第1増幅率で増幅を行い、第1増幅RF信号として出力する。
第2電力増幅回路22-1は、三段構成のドハティ増幅回路においていわゆる第1ピーク電力増幅回路として機能し、RF入力信号の振幅レベルが所定の第1閾値レベルを超えている場合に、第2増幅率で増幅を行い、第2増幅RF信号として出力する。
【0017】
第3電力増幅回路22-2は、三段構成のドハティ増幅回路においていわゆる第2ピーク電力増幅回路として機能し、RF入力信号の振幅レベルが所定の第2閾値レベル(>第1閾値レベル)を超えている場合に、第3増幅率で増幅を行い、第3増幅RF信号として出力する。
【0018】
すなわち、RF入力信号の振幅レベルが所定の第1閾値レベル未満の場合には、第1電力増幅回路21のみが動作する。また、RF入力信号の振幅レベルが所定の第1閾値レベル以上であり、所定の第2閾値レベル未満の場合には、第1電力増幅回路21及び第2電力増幅回路22-1が動作する。さらに、RF入力信号の振幅レベルが所定の第2閾値レベル以上である場合には、第1電力増幅回路21、第2電力増幅回路22-1及び第3電力増幅回路22-2が全て動作する。
【0019】
第1電源回路23は、第1電力増幅回路21に対し、第1ドレイン電源VDD1及び第1ゲート電源VGG1を生成して供給する。
【0020】
電源異常検出回路24は、電圧監視部として機能し、第1電源回路23の異常、ひいては、第1電力増幅回路21の異常を検出した場合には、制御部としてのバイアス制御回路28に異常検出信号PEを出力して通知する。
出力ショート回路25は、バイアス制御回路28の制御下で第1電力増幅回路21の出力端子をショート状態とする。
【0021】
出力ショート回路25は、図2に示すように、一端が第1電力増幅回路21の出力端子に接続されたコンデンサC1と、コンデンサC1の他端にアノード端子が接続され、グランドにカソード端子が接続されたPINダイオードD1と、コンデンサC1とPINダイオードD1の接続点に一端が接続されたインダクタL1が接続されている。
【0022】
そして、インダクタL1の他端にバイアス制御回路28からショート制御信号SCが入力されると、PINダイオードD1にバイアスが印加されてPINダイオードD1がオン状態となるようにされており、ショート制御信号SCが入力されることにより、第1電力増幅回路21の出力端子は、ショート状態となり、第1電力増幅回路21は、合成回路15から遮断された状態となる。すなわち、第1電力増幅回路21は、回路的には、存在しない状態とされる。
【0023】
第2電源回路26は、第2電力増幅回路22-1に対し、第2ドレイン電源VDD2及び第2ゲート電源VGG2を生成して供給する。
第3電源回路27は、第2電力増幅回路22-2に対し、第3ドレイン電源VDD3及び第3ゲート電源VGG3を生成して供給する。
【0024】
バイアス制御回路28は、電源異常検出回路24により第1電力増幅回路21の異常が検出された場合、すなわち、異常検出信号PEが入力された場合に、出力ショート回路25にショート制御信号SCを出力して、出力ショート回路25により第1電力増幅回路21の出力端子をショート状態とする。
【0025】
また、バイアス制御回路28は、第2電源回路26及び第3電源回路27を制御して、第2電源回路26により第2電力増幅回路22-1に供給される第2ゲートバイアス電圧及び第3電源回路27により第3電力増幅回路22-2に供給される第3ゲートバイアス電圧が、後述するように、初期の状態より高い方向に制御を行う。
【0026】
第1伝送線路29-1~第3伝送線路29-3は、それぞれ第1電力増幅回路21、第2電力増幅回路22-1、第2電力増幅回路22-2のそれぞれに対し、分配回路13により分配されたRF入力信号を伝送する。
【0027】
第4伝送線路29-4~第6伝送線路29-6は、それぞれ第1電力増幅回路21、第2電力増幅回路22-1、第3電力増幅回路22-2が出力した第1増幅RF信号、第2増幅RF信号及び第3増幅RF信号を合成回路15に伝送する。
【0028】
この場合において、第1伝送線路29-1及び第1電力増幅回路、第4信号伝送路29-4の線路長の和、第2伝送線路29-2及び第2電力増幅回路、第5信号伝送路29-5の線路長の和、第3伝送線路29-3及び第3電力増幅回路、第6信号伝送路29-6の線路長の和は、等しくなるように設計されており、合成回路15に入力時点における第4信号伝送路29-4の出力した第1増幅RF信号、第5信号伝送路29-5の出力した第2増幅RF信号及び第6信号伝送路29-6の出力した第3増幅RF信号の位相が互いに一致するようにされている。
そして、RF入力信号の振幅レベルによって各電力増幅回路の動作が変化することで各電力増幅回路の負荷インピーダンスが変化し、各振幅レベル領域にて常に飽和動作に近い状態を維持して高電力効率動作をしている。
【0029】
次に実施形態の動作を説明する。
図3は、実施形態の動作フローチャートである。
初期状態において、第1電源回路23は、第1電力増幅回路21に対し、第1ドレイン電源VDD1及び第1ゲート電源VGG1を生成して供給し、第2電源回路26は、第2電力増幅回路22-1に対し、第2ドレイン電源VDD2及び第2ゲート電源VGG2を生成して供給し、第3電源回路27は、第2電力増幅回路22-2に対し、第3ドレイン電源VDD3及び第3ゲート電源VGG3を生成して供給しているものとする。
【0030】
そして、例えば、第1電力増幅回路21は、B級動作をしているものとし、第2電力増幅回路22-1は、C級動作をしており、第3電力増幅回路22-2は、第2電力増幅回路22-1のゲートバイアス電圧より低いC級動作をしているものとする。
【0031】
したがって、上述したように、RF入力信号の振幅レベルが所定の第1閾値レベル未満の場合には、第1電力増幅回路21のみが動作し、第2電力増幅回路22-1及び第3電力増幅回路22-2は、ドレイン電流が流れないので、消費電力は、第1電力増幅回路21のみの消費電力となる。また、第2電力増幅回路22-1及び第3電力増幅回路22-2が停止していることで第1電力増幅回路21の負荷インピーダンスが高くなり、RF信号が小振幅領域でも飽和動作に近い動作で消費電力を抑さえている。
【0032】
また、RF入力信号の振幅レベルが所定の第1閾値レベル以上であり、所定の第2閾値レベル未満の場合には、第1電力増幅回路21及び第2電力増幅回路22-1が動作するが、第3電力増幅回路22-2は、ドレイン電流が流れないので、消費電力は、第1電力増幅回路21及び第2電力増幅回路22-1の消費電力となる。また、振幅レベルが所定の第1閾値レベル以下の状態に比べて第1電力増幅回路21の負荷インピーダンスが低くなり、必要な飽和出力レベルを確保しつつ飽和動作に近い動作で、より消費電力が抑えられる。
【0033】
まず、電源異常検出回路24は、三段構成のドハティ増幅回路においていわゆるメイン電力増幅回路として機能する第1電力増幅回路21のゲートバイアス電圧を監視して、第1電力増幅回路21の状態(正常あるいは異常)を検出する(ステップS11)。
【0034】
この場合において、電源異常検出回路24は、第1電力増幅回路21のゲートバイアス電圧を監視して、第1電力増幅回路21が異常である場合には、バイアス制御回路28に異常検出信号PEを出力して通知することとなる。
【0035】
つづいて、バイアス制御回路28は、制御部として機能し、異常検出信号PEに基づいて、ステップS11の第1電力増幅回路21の状態の検出において、ゲートバイアス電圧の異常が検出されたか否かを判断する(ステップS12)。
【0036】
ステップS12の判断において、第1電力増幅回路21のゲートバイアス電圧が正常であり、未だゲートバイアス電圧の異常が検出されていない場合には(ステップS12;No)、バイアス制御回路28は、処理を再びステップS11に移行させ、メイン電力増幅回路として機能する第1電力増幅回路21の状態を監視続ける。
【0037】
ステップS12の判断において、ゲートバイアス電圧の異常が検出された場合には(ステップS12;Yes)、そのままでは、メイン電力増幅回路として機能する第1電力増幅回路21の出力端子は、オープン状態(開放状態)となり、合成回路15における合成点ではショート状態となり、RF出力信号が完全に断状態となり、停波状態となって、放送中断状態となってしまう。
【0038】
そこで、本実施形態においては、放送中断状態となるのを回避するため、バイアス制御回路28は、電源異常検出回路24により異常検出信号PEが入力され、第1電力増幅回路21の異常が検出された場合には、出力ショート回路25にショート制御信号SCを出力する。
【0039】
これにより出力ショート回路25は、ショート制御信号SCが入力されると、PINダイオードD1のバイアスがオン状態となるようにされており、ショート制御信号SCが入力されることにより、第1電力増幅回路21の出力端子は、グランドに接続されてショート状態となる(ステップS13)。したがって、合成回路15における合成点がショート状態とされることはなく、停波状態となることはなく、放送中断状態ともならない。
【0040】
しかしながら、このままの状態では、メイン電力増幅回路が不在の状態となるので、正常な放送を継続することはできないこととなる。
【0041】
そこで、本実施形態においては、バイアス制御回路28が第2電源回路26及び第3電源回路27を制御して、それぞれピーク電力増幅回路として機能している第2電力増幅回路22-1及び第3電力増幅回路22-2のゲートバイアス電圧を上げる(ステップS14)。
【0042】
より詳細には、本実施形態の場合、第2電力増幅回路22-1は初期状態において、第2電力増幅回路22-1及び第3電力増幅回路22-2は、ゲートバイアス電圧が異なるC級動作をしているので、バイアス制御回路28は、第2電力増幅回路22-1をB級動作するようにし、第3電力増幅回路22-2をC級動作するように制御する。
また、第3電力増幅回路22-2は、初期状態において、ゲートバイアス電圧が比較的低いC級動作をしているので、バイアス制御回路28は、第3電力増幅回路22-2をゲートバイアス電圧が比較的高いC級動作するように制御する。
【0043】
そして、バイアス制御回路28は、第2電力増幅回路22-1を、実効的にメイン電力増幅回路として機能するように制御する(ステップS15)。
また、バイアス制御回路28は、第3電力増幅回路22-2を、メイン電力増幅回路として機能する第2電力増幅回路22-1と協働するピーク電力増幅回路として機能するように制御を行う(ステップS16)。
【0044】
これらの結果、第2電力増幅回路22-1及び第3電力増幅回路22-2は、二段のドハティ増幅回路として動作することとなる。
したがって、実施形態によれば、放送送信信号の出力低下は避けられないが、停波状態となることはなく、放送中断状態ともならずに放送を継続することが可能となる。
【0045】
この場合において、新たなメイン電力増幅回路及びピーク電力増幅回路として機能する第2電力増幅回路22-1及びこのメイン電力増幅回路と協働するピーク電力増幅回路として機能する第3電力増幅回路22-2への切り替えは、バイアスの変更だけであるので、新たな構成への移行は冗長回路への切り替えが必要であった従来例と比較して、短時間で移行することが可能であり、放送への影響を最小限とすることが可能となる。
【0046】
以上の説明においては、3段ドハティ増幅回路のメイン電力増幅回路が異常となった場合に、2段ドハティ増幅回路として再構成する場合について述べたが、4段以上の多段ドハティ増幅回路であれば、メイン電力増幅回路の異常が複数回生じた場合でも、ドハティ増幅回路の段数を減少させて同様に対応することが可能である。
【0047】
以上の説明においては、電源異常検出回路24と、バイアス制御回路28とを別に設けていたが、バイアス制御回路28に電源異常検出回路24の機能を持たせるようにすることも可能である。
【0048】
以上の説明においては、電力増幅器14が、第1電力増幅回路21と第2電力増幅回路22-1及び第3電力増幅回路22-2を備えている場合について説明したが、電力増幅回路を4個以上備え、メイン電力増幅回路として機能している第1電力増幅回路21に異常が検出された場合には、第1電力増幅回路21の出力端子をショート状態とし、電圧監視部として機能する電源異常検出回路24の監視結果に基づいて、他の電力増幅回路の電源制御を行い、ピーク電力増幅回路からメイン電力増幅回路に代替させるように構成することが可能である。
【0049】
以上の説明においては、第2電力増幅回路が扱える電力容量については、詳細に述べていなかったが、第1電力増幅回路として代替させる第2電力増幅回路については、代替前の第1電力増幅回路が扱える電力容量と同等程度の容量を有するものとするのが好ましい。
【0050】
以上の説明においては、第1電力増幅回路21をB級電力増幅回路とし、第2電力増幅回路22-1、第3電力増幅回路22-2は、C級電力増幅回路としていたが、n(nは、2以上の整数)個の第2電力増幅回路をB級電力増幅回路としたり、n(nは、2以上の整数)個の第2電力増幅回路のうち、一部をB級電力増幅回路とし、残りをC級電力増幅回路とするように構成することも可能である。
【0051】
本実施形態の制御部として機能するバイアス制御回路は、CPUなどの制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶装置等を備えた通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0052】
本実施形態のバイアス制御回路で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでUSBメモリ、SSD(Solid State Drive)等の半導体記憶装置あるいはDVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0053】
また、本実施形態のバイアス制御回路で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のバイアス制御回路で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0054】
また、本実施形態のバイアス制御回路のプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10 デジタル放送送信装置
11 OFDM変調器
12 励振器
13 分配器
14 電力増幅器ユニット
15 合成器
16 BPF
17 送信機制御部
21 第1電力増幅回路
22 第2電力増幅回路
23 第1電源回路
24 電源異常検出回路
25 出力ショート回路
26 第2電源回路
27 第3電源回路
28 バイアス制御回路
29-1~29-6 第1伝送線路~第6伝送線路
C1 コンデンサ
D1 PINダイオード
PE 異常検出信号
R1 抵抗
VDD1 第1ドレイン電源
VDD2 第2ドレイン電源
VDD3 第3ドレイン電源
VGG1 第1ゲート電源
VGG2 第2ゲート電源
VGG3 第3ゲート電源
RFin RF入力信号
RFout RF出力信号
SC ショート制御信号
図1
図2
図3