(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101708
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】可変領域特定システム及び特定方法、画像検査システム及び検査方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20240723BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240723BHJP
H04N 1/10 20060101ALI20240723BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240723BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H04N1/04 106Z
H04N1/00 002A
H04N1/10
B41J29/393 105
G03G21/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005780
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】伊東 修一
【テーマコード(参考)】
2C061
2H270
5C062
5C072
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AP07
2C061AQ06
2C061HH03
2C061HK11
2C061HK15
2C061KK04
2C061KK26
2C061KK28
2H270KA55
2H270LB01
2H270LB02
2H270LB04
2H270LB05
2H270LB10
2H270PA61
2H270RB03
2H270RC03
2H270ZC03
2H270ZC04
5C062AA05
5C062AA13
5C062AA25
5C062AA35
5C062AB08
5C062AB20
5C062AB26
5C062AB38
5C062AB41
5C062AB42
5C062AB43
5C062AB44
5C062AC55
5C062AC58
5C072AA01
5C072BA20
5C072FB25
5C072LA02
5C072MA01
5C072MB01
5C072RA06
5C072XA01
5C072XA05
(57)【要約】
【課題】バリアブル印刷の可変領域の設定情報を取得できなくても印刷物の可変領域の特定が可能な可変領域特定システム及び特定方法、可変領域を含む印刷物の画像を検査する画像検査システム及び検査方法並びにプログラムを提供する。
【解決手段】複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域20と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域30~36と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取り手段120と、読み取り手段による読み取り結果を基に、印刷物における可変領域60~65を特定する可変領域特定手段100と、を備えている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段による読み取り結果を基に、印刷物における前記可変領域を特定する可変領域特定手段と、
を備えたことを特徴とする可変領域特定システム。
【請求項2】
前記可変領域特定手段は、読み取り手段により読み取られた前後の印刷物の読み取りデータを比較し、差異がある部分を可変領域と特定する請求項1に記載の可変領域特定システム。
【請求項3】
前記可変領域特定手段は、読み取り手段により読み取られた印刷物の読み取りデータを正解画像のデータと比較し、差異がある部分を可変領域と特定する請求項1に記載の可変領域特定システム。
【請求項4】
特定される可変領域は、決められた閾値以上のサイズの矩形範囲とする請求項1または2に記載の可変領域特定システム。
【請求項5】
前記閾値は予め設定されている値またはユーザーにより設定された値である請求項4に記載の可変領域特定システム。
【請求項6】
前記可変領域特定手段は、差異がある部分の範囲が一致していない場合、差異と判断された領域の画像種別が同じであれば当該領域を可変領域として特定する請求項3に記載の可変領域特定システム。
【請求項7】
前記可変領域特定手段は、特定した可変領域が正しいかどうかをユーザーに確認させる請求項1または2に記載の可変領域特定システム。
【請求項8】
複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段による読み取り結果を基に、印刷物における前記可変領域を特定する可変領域特定手段と、
前記可変領域特定手段により特定された可変領域を、異常画像の有無検知を行わない検知対象外領域として設定して印刷物における異常画像の有無を検知する欠陥検知手段と、
を備えたことを特徴とする画像検査システム。
【請求項9】
前記印刷物を印刷する印刷手段を備え、
前記可変領域特定手段は、印刷予定ページのうちの一部のページのみを前記印刷手段が印刷したときの前記読み取り手段による読み取り結果を基に可変領域を特定し、
前記欠陥検知手段は、前記可変領域特定手段により特定された可変領域を、異常画像の有無検知を行わない検知対象外領域として設定し、
その後に、前記印刷手段は残りのページの印刷を行い、前記欠陥検知手段は印刷された全ページについて異常画像の有無検知を行う請求項8に記載の画像検査システム。
【請求項10】
前記印刷手段による印刷と並行して、前記可変領域特定手段による可変領域の特定と、前記欠陥検知手段による異常画像の有無の検知が行われ、
可変領域の特定後、前記欠陥検知手段は特定された可変領域を異常画像の有無検知を行わない検知対象外領域に設定して、異常画像の有無検知を行うとともに、検知対象外領域の設定前に異常画像の有無を検知した印刷物については、異常画像の有無を再度検知し、異常画像が検知対象外領域において検知されていた場合は、異常画像無しと再判定する請求項8に記載の画像検査システム。
【請求項11】
前記欠陥検知手段は、異常画像の有無の再度の検知を、検知対象外領域を設定したタイミングで行う請求項10に記載の画像検査システム。
【請求項12】
前記欠陥検知手段は、異常画像の有無の再度の検知を、全ページの印刷の完了後に行う請求項10に記載の画像検査システム。
【請求項13】
複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取りステップと、
前記読み取りステップによる読み取り結果を基に、印刷物における前記可変領域を特定する可変領域特定ステップと、
を含む可変領域特定方法。
【請求項14】
複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取りステップと、
前記読み取りステップによる読み取り結果を基に、印刷物における前記可変領域を特定する可変領域特定ステップと、
前記可変領域特定ステップにより特定された可変領域を、異常画像の有無検知を行わない検知対象外領域として設定して印刷物における異常画像の有無を検知する欠陥検知ステップと、
を含む画像検査方法。
【請求項15】
複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取りステップと、
前記読み取りステップによる読み取り結果を基に、印刷物における前記可変領域を特定する可変領域特定ステップと、
を可変領域特定システムのコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項16】
複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取りステップと、
前記読み取りステップによる読み取り結果を基に、印刷物における前記可変領域を特定する可変領域特定ステップと、
前記可変領域特定ステップにより特定された可変領域を、異常画像の有無検知を行わない検知対象外領域として設定して印刷物における異常画像の有無を検知する欠陥検知ステップと、
を画像検査システムのコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の前記可変領域を特定するための可変領域特定システム及び特定方法、可変領域を含む印刷物の画像を検査する画像検査システム及び検査方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような固定領域と可変領域を含む印刷物の印刷(以下、バリアブル印刷ともいう)は、従来より、端末装置等による画像データの作成時に、アプリケーションやコントローラで可変領域を設定し、プリンタ等の画像形成装置が端末装置からの印刷ジョブを受け取ったときに、可変領域の設定情報を取得して画像形成装置側で可変領域を自動的に設定することにより行われている。
【0003】
しかしながら、画像形成装置に、アプリケーションやコントローラと連携できる機能がない場合、画像形成装置は可変領域の設定情報を取得できないため、可変領域の設定範囲を認識することができない。このため、印刷物における可変領域の設定情報を取得できなくても可変領域を特定可能な技術の実現が望まれている。
【0004】
また、印刷後に印刷物に対して異常画像の有無を検知して印刷物の検品を行うことができる画像形成装置が知られている。例えば、特許文献1には、予め用意された正解画像と、印刷済の画像を読み取った画像を比較することで、印刷物の異常を検品する画像検査制御部を有し、前記画像検査制御部は、バリアブル印刷における再利用オブジェクトと、可変固有オブジェクトの配置情報の組み合せに基づいて複数の正解画像を生成し、かつ、全ページに対するオブジェクトの配置情報を読み取ることで前記正解画像を作成する画像検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アプリケーションやコントローラと連携できる機能がない画像形成装置で検品処理を行う場合に、可変領域の設定範囲が認識できなければ、可変領域の画像が印刷物ごとに変わるため異常画像と判断される恐れがある。
【0007】
特許文献1に記載の技術は、再利用オブジェクトと、可変固有オブジェクトの配置情報を、画像検査装置が認識できることが前提である。このため特許文献1は、可変領域の設定情報を取得できなくても印刷物における可変領域の特定を可能にする技術を提供するものではなかった。
【0008】
この発明はこのような技術的背景に鑑みてなされたものであって、バリアブル印刷の可変領域の設定情報を取得できなくても印刷物における可変領域の特定が可能な可変領域特定システム及び特定方法、可変領域を含む印刷物の画像を検査する画像検査システム及び検査方法並びにプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は以下の手段によって達成される。
(1)複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段による読み取り結果を基に、印刷物における前記可変領域を特定する可変領域特定手段と、
を備えたことを特徴とする可変領域特定システム。
(2)前記可変領域特定手段は、読み取り手段により読み取られた前後の印刷物の読み取りデータを比較し、差異がある部分を可変領域と特定する前項1に記載の可変領域特定システム。
(3)前記可変領域特定手段は、読み取り手段により読み取られた印刷物の読み取りデータを正解画像のデータと比較し、差異がある部分を可変領域と特定する前項1に記載の可変領域特定システム。
(4)特定される可変領域は、決められた閾値以上のサイズの矩形範囲とする前項1または2に記載の可変領域特定システム。
(5)前記閾値は予め設定されている値またはユーザーにより設定された値である前項4に記載の可変領域特定システム。
(6)前記可変領域特定手段は、差異がある部分の範囲が一致していない場合、差異と判断された領域の画像種別が同じであれば当該領域を可変領域として特定する前項3または4に記載の可変領域特定システム。
(7)前記可変領域特定手段は、特定した可変領域が正しいかどうかをユーザーに確認させる前項1または2に記載の可変領域特定システム。
(8)複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取り手段と、
前記読み取り手段による読み取り結果を基に、印刷物における前記可変領域を特定する可変領域特定手段と、
前記可変領域特定手段により特定された可変領域を、異常画像の有無検知を行わない検知対象外領域として設定して印刷物における異常画像の有無を検知する欠陥検知手段と、
を備えたことを特徴とする画像検査システム。
(9)前記可変領域特定手段は、印刷予定ページのうちの一部のページのみを前記印刷手段が印刷したときの前記読み取り手段による読み取り結果を基に可変領域を特定し、
前記欠陥検知手段は、前記可変領域特定手段により特定された可変領域を、異常画像の有無検知を行わない検知対象外領域として設定し、
その後に、前記印刷手段は残りのページの印刷を行い、前記欠陥検知手段は印刷された全ページについて異常画像の有無検知を行う前項8に記載の画像検査システム。
(10)前記印刷手段による印刷と並行して、前記可変領域特定手段による可変領域の特定と、前記欠陥検知手段による異常画像の有無の検知が行われ、
可変領域の特定後、前記欠陥検知手段は特定された可変領域を異常画像の有無検知を行わない検知対象外領域に設定して、異常画像の有無検知を行うとともに、検知対象外領域の設定前に異常画像の有無を検知した印刷物については、異常画像の有無を再度検知し、異常画像が検知対象外領域において検知されていた場合は、異常画像無しと再判定する前項8に記載の画像検査システム。
(11)前記欠陥検知手段は、異常画像の有無の再度の検知を、検知対象外領域を設定したタイミングで行う前項10に記載の画像検査システム。
(12)前記欠陥検知手段は、異常画像の有無の再度の検知を、全ページの印刷の完了後に行う前項10に記載の画像検査システム。
(13)複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取りステップと、
前記読み取りステップによる読み取り結果を基に、印刷物における前記可変領域を特定する可変領域特定ステップと、
を含む可変領域特定方法。
(14)複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取りステップと、
前記読み取りステップによる読み取り結果を基に、印刷物における前記可変領域を特定する可変領域特定ステップと、
前記可変領域特定ステップにより特定された可変領域を、異常画像の有無検知を行わない検知対象外領域として設定して印刷物における異常画像の有無を検知する欠陥検知ステップと、
を含む画像検査方法。
(15)複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取りステップと、
前記読み取りステップによる読み取り結果を基に、印刷物における前記可変領域を特定する可変領域特定ステップと、
を可変領域特定システムのコンピュータに実行させるためのプログラム。
(16)複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取りステップと、
前記読み取りステップによる読み取り結果を基に、印刷物における前記可変領域を特定する可変領域特定ステップと、
前記可変領域特定ステップにより特定された可変領域を、異常画像の有無検知を行わない検知対象外領域として設定して印刷物における異常画像の有無を検知する欠陥検知ステップと、
を画像検査システムのコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る可変領域特定システム及び特定方法によれば、複数枚の用紙に対して同一の画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像が読み取られ、読み取り結果を基に印刷物における可変領域が特定される。
【0011】
このため、端末装置等からの可変領域の設定情報がなくても印刷物における可変領域を特定することができ、その後の処理、例えば検品処理等を行うことが可能となる。
【0012】
また、この発明に係る画像検査システム及び検査方法によれば、特定された可変領域を、異常画像の有無検知を行わない検知対象外領域として設定して印刷物における異常画像の有無が検知されるから、可変領域の画像が異常画像として検知される不都合をなくすことができる。
【0013】
また、この発明に係るプログラムによれば、複数枚の用紙に対して同じ画像が形成される固定領域と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物の画像を読み取る読み取りステップと、前記読み取りステップによる読み取り結果を基に、印刷物における前記可変領域を特定する可変領域特定ステップと、を可変領域特定システムのコンピュータに実行させることができる。
【0014】
さらには特定された可変領域を、異常画像の有無検知を行わない検知対象外領域として設定して印刷物における異常画像の有無を検知する欠陥検知ステップを画像検査システムのコンピュータに実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の一実施形態に係る可変領域特定システム及び画像検査システムが組み込まれた画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】(A)(B)は可変領域の特定方法の一例を説明するための図である。
【
図3】(A)(B)は可変領域の特定方法の他の例を説明するための図である。
【
図4】(A)(B)は可変領域の特定方法の更に他の例を説明するための図である。
【
図5】(A)(B)は可変領域の特定方法の更に他の例を説明するための図である。
【
図6】(A)は、画像形成装置の印刷及び検品処理の動作の一例を説明するためのフローチャート、(B)は
図6(A)のステップS06の検品処理の内容を示すフローチャートである。
【
図7】(A)は、画像形成装置の印刷及び検品処理の動作の他の例を説明するためのフローチャート、(B)は
図7(A)のステップS13の検品処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、この発明の一実施形態に係る可変領域特定システム及び画像検査システムの一例である画像形成装置1の構成を示すブロック図である。
【0018】
画像形成装置1としては、限定はされないが、複写機、プリンタ、あるいは多機能デジタル複合機であるMFP等が用いられる。
【0019】
図1に示すように、画像形成装置1は、制御部100、記憶装置110、画像読取装置120、操作パネル部50、画像形成部10、給紙部60、プリンタコントローラー150及びネットワークインターフェイス(ネットワークI/F)160等を備え、互いにシステムバス175を介して接続されている。
【0020】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、S-RAM(Static Random Access Memory)103、NV-RAM(Non Volatile RAM)104及び時計IC105等を備えている。
【0021】
CPU101は、ROM102等に保存されている動作プログラムを実行することにより、画像形成装置1の全体を統括的に制御する。例えばコピー機能、プリンタ機能、スキャン機能等を実行可能に制御するほか、特にこの実施形態では以下のような制御を行う。即ち、同一の画像形成用画像データを用いて複数枚の用紙に対して同じの画像が形成される固定領域と、異なる画像形成用画像データを用いて複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域と、を含む印刷物、つまりバリアブル印刷された印刷物の画像を読み取らせると共に、読み取り結果を基に、印刷物の可変領域を特定するための処理や、印刷物の検品処理などを実行するが、これらの点については後述する。
【0022】
ROM102は、CPU101が実行する動作プログラムやその他のデータを格納する。
【0023】
S-RAM103は、CPU101がプログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に保存する。
【0024】
NV-RAM104は、バッテリでバックアップされた不揮発メモリであり、画像形成に係わる各種の設定や、表示部54の画素数や、表示部54に表示される各種画面のデータ等を記憶するものである。
【0025】
時計IC105は、時刻を計時すると共に、内部タイマーとして機能し処理時間の計測等を行う。
【0026】
記憶装置110は、ハードディスク等からなり、プログラムや各種データ等を保存する。
【0027】
画像読取装置120は、スキャナ等を備え、プラテンガラス上にセットされた原稿を走査することによって読み取り、読み取った原稿を画像データに変換する。さらにこの実施形態では、可変領域の特定のために、画像形成部10によって印刷された用紙の画像を読み取って画像データに変換する機能も有している。
【0028】
操作パネル部50は、ユーザーが画像形成装置1へジョブ等の指示や各種設定を行う際に用いられるものであり、リセットキー51、スタートキー52、ストップキー53、表示部54及びタッチパネル55等を備えている。
【0029】
リセットキー51は、設定をリセットする際に使用されるものであり、スタートキー52はスキャン等の開始操作に使用されるものであり、ストップキー53は動作を中断する場合等に押下されるものである。
【0030】
表示部54は、例えば液晶表示装置からなりメッセージや各種の操作画面等を出力表示するものであり、タッチパネル55は表示部54の画面上に形成され、ユーザーのタッチ操作を検出する。
【0031】
画像形成部10は、画像読取装置120で読み取られた原稿の画像データや、外部の端末装置3等から送信されたプリントデータから生成された複写画像を用紙上に印字するものであり、感光体ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、転写ベルト、転写ローラー等の画像形成用のハードウェア部品からなる印刷エンジン18と、画像が形成されたシートを加熱加圧して画像を定着させる定着部19等を備えている。
【0032】
ネットワークI/F160は、ネットワーク4を介して外部装置、例えば外部のサーバー、クラウドシステム、ユーザーの情報端末装置、他の画像形成装置等との間でデータの送受信を行う通信手段として機能する。
【0033】
この実施形態では、画像形成装置1によって用紙に施される印刷は、上述したようにバリアブル印刷と称される印刷であり、
図2(A)に示すように、複数枚の用紙に対して同一の画像が形成される固定領域20と、複数枚の用紙に対して異なる画像が形成される可変領域30が、印刷物(印刷された用紙)に存在する。
【0034】
このようなバリアブル印刷された印刷物を例えば検品処理しようとすると次のような問題が生じる。即ち、検品処理は印刷物に筋状、点状等の異常画像があれば不良品と判断されるが、異常画像の有無は複数枚の印刷物の画像データ同士あるいは正解画像との比較により行われ、差異がある部分が異常画像と判定される。
【0035】
しかし、用紙ごとに異なる画像データが可変領域に印刷された印刷物を検品すると、可変領域の画像について差異が検出されるため、異常画像と判定されてしまう。
【0036】
従って、可変領域30については異常画像の判定対象から除外しておく必要があり、このためには可変領域30を特定する必要がある。
【0037】
この実施形態における可変領域の特定方法の一例を
図2を参照して説明する。
【0038】
同図(A)に印刷物のページ1~ページ3の3枚の印刷画像を示す。各ページの下部領域に固定領域20が、上部領域に1つの可変領域30が設定されている。固定領域20、可変領域30の位置及びサイズは、各ページで同じである。固定領域20の画像は各ページにおいて同一であり、可変領域30の画像はページ毎に異なっている。なお、ページ2には筋状の異常画像41が、ページ3には点状の異常画像42が、それぞれ形成されている。
【0039】
まず、印刷物の画像を画像読取装置120により読み取る。そして、読み取ったページ1の印刷物の読み取りデータである画像データとページ2の印刷物の読み取りデータである画像データを比較して差異を抽出し、同図(B)に示すように、この差異の部分を基に可変領域60を特定する。前後の印刷物の画像データの比較ではなく、例えばページ1の画像データを正解画像データとして、この正解画像データを他のページの画像データと比較することで、差異を抽出し可変領域60を特定しても良い。また、正解画像データを別途用意しておいても良い。
【0040】
特定される可変領域60は決められた閾値以上のサイズの矩形範囲とするのが、特定処理が簡素になる点から望ましい。この場合の閾値は、予め設定されている値で良いしユーザーにより設定された値でも良い。
【0041】
ページ1の画像データとページ2の画像データの比較のみで、特定された可変領域60をその印刷ジョブについての可変領域として特定しても良い。あるいは、
図2に示すように、2ページ目と3ページ目についての比較も同様に行い、それぞれ特定した複数の可変領域の位置、サイズが同じであれば、可変領域60をその印刷ジョブについての可変領域として特定しても良い。前後のページの画像データの比較を3回以上繰り返しても良い。
【0042】
図3は可変領域の特定方法の他の例を説明するための図である。
【0043】
同図(A)に印刷物のページ1~ページ3の3枚の印刷画像を示す。各ページの下部領域に固定領域20が、上部領域の左右に2つの可変領域31、32がそれぞれ設定されている。固定領域20及び2つの可変領域31、32の位置及びサイズは各ページで同じである。固定領域20の画像は各印刷物において同一であり、可変領域31、32の画像についてはページ1とページ2とは左側の可変領域31の画像は異なり、右側の可変領域32の画像は同一である。また、ページ2とページ3とは左側の可変領域31の画像は同一であり、右側の可変領域32の画像は異なっている。
【0044】
まず、各ページの画像を画像読取装置120により読み取る。そして、読み取ったページ1の画像データとページ2の画像データを比較して差異を抽出する。2つの可変領域31、32のうち、ページ1とページ2とは左側の可変領域31の画像は異なり、右側の可変領域32の画像は同一であるから、左側の可変領域31の画像データの差異のみが抽出され、同図(B)の「ページ2」に示すように、左側の差異部分に対応する可変領域61が特定される。
【0045】
次に、2ページ目と3ページ目についての読み取りデータの比較を同様に行い差異を抽出する。2つの可変領域31、32のうち、ページ2とページ3とは左側の可変領域31の画像は同じであり、右側の可変領域32の画像は異なるから、右側の可変領域32の画像データの差異のみが抽出される。しかし、ページ1とページ2との比較から、左側の可変領域31が既に特定されているから、同図(B)の「ページ3」に示すように、左右の差異部分に対応する可変領域61、62が特定される。
【0046】
こうして特定した可変領域61、62をその印刷ジョブについての可変領域として特定する。この特定方法の場合も、前後のページの画像データの比較を3回以上繰り返しても良い。
【0047】
図4は可変領域の特定方法のさらに他の例を説明するための図である。
【0048】
同図(A)に印刷物のページ1~ページ3の3枚の印刷画像を示す。各ページの下部領域に固定領域20が、上部領域に可変領域33~35がそれぞれ設定されている。固定領域20の位置及びサイズは各ページで同じであるが、可変領域33~35の位置及びサイズが各ページで異なっている。即ち、ページ1では小さい矩形の可変領域33が、ページ2では横長の長方形の可変領域34が設定されているが、ページ2の可変領域34の一部とページ1の可変領域33の全部が重なった位置関係及びサイズとなっている。ページ3ではより正方形に近い矩形の可変領域35が設定されているが、その可変領域35の一部がページ2の可変領域34と重なった位置関係及びサイズとなっている。固定領域20の画像は各ページにおいて同一であり、可変領域33~35の画像はそれぞれ異なっている。
【0049】
まず、各ページの画像を画像読取装置120により読み取る。そして、読み取ったページ1の画像データとページ2の画像データを比較して差異を抽出する。2つの可変領域33、34のうち、ページ1とページ2とは可変領域33、34の画像は異なっているが、ページ2の可変領域34にはページ1の可変領域33が含まれているから、同図(B)の「ページ2」に示すように、ページ2の差異部分に対応する可変領域34が特定される。
【0050】
次に、2ページ目と3ページ目についての読み取りデータの比較を同様に行い差異を抽出する。ページ3の可変領域35はページ2の可変領域34に較べて横方向には短いが縦方向には長いから、縦方向の長さの分だけ新たな差異が抽出され、同図(B)の「ページ3」に示すように、ページ2の可変領域63とページ3の可変領域64を合成したような可変領域が特定される。
【0051】
こうして特定した可変領域63及び64をその印刷ジョブについての可変領域として特定する。この特定方法の場合も、前後のページの画像データの比較を3回以上繰り返して、それぞれの結果を合成して可変領域を特定しても良い。
【0052】
図5は可変領域の特定方法のさらに他の例を説明するための図である。
【0053】
同図(A)に印刷物のページ1~ページ3の3枚の印刷画像を示す。各ページの下部領域に固定領域20が、上部領域の左右方向中央位置に可変領域36がそれぞれ設定されている。固定領域20、可変領域36の位置及びサイズは各ページで同じである。固定領域20の画像は各ページにおいて同一であり、可変領域36の画像についてはページ1とページ2とは同一であるが、ページ2とページ3とは異なっている。また、ページ2の可変領域の右側及びページ3の可変領域の左側には、黒丸で示す異常画像43、44が形成されているものとする。
【0054】
まず、印刷物の各用紙の画像を画像読取装置120により読み取る。そして、読み取ったページ1の印刷物の画像データとページ2の印刷物の画像データを比較して差異を抽出する。ページ1とページ2とでは可変領域36の画像は同じであるから可変領域とは判断されない。また異常画像43の領域で差異が抽出されるが、ページ1とページ2とで画像が同じである領域における画像の種類は文字画像であるのに対し、異常画像43は文字画像ではないから画像種類が異なる。このため、ページ2の異常画像43の領域は可変領域ではないと判断する。異常画像43の領域の画像が文字画像であれば可変領域として特定される。
【0055】
次に、2ページ目と3ページ目についての読み取りデータの比較を同様に行い差異を抽出する。ページ2とページ3では上部領域の左右方向中央位置の同じ可変領域36に異なる画像データが抽出されるから、同図(B)に示すように、この領域が可変領域65として特定される。また、ページ3の異常画像44の領域で差異が抽出されるが、ページ2とページ3とで画像が同じである領域における画像の種類は文字画像であるのに対し、異常画像43は文字画像ではないから画像種類が異なる。このため、ページ3の異常画像43の領域は可変領域ではないと判断する。異常画像43の領域の画像が文字画像であれば可変領域として特定される。このように、画像データに差異がある領域において、画像の種類の同異を判断することで、可変領域かどうかを精度よく判断することができる。
【0056】
こうして特定した可変領域をその印刷ジョブについての可変領域として特定する。この特定方法の場合も、前後の印刷物の画像データの比較を3回以上繰り返して、それぞれの結果を合成して可変領域を特定しても良い。
【0057】
以上のようにして、制御部100は可変領域60~65を特定するが、特定した可変領域を操作パネル部50の表示部54にOKボタンとNGボタンと共に表示して、特定した可変領域が正しいかどうかをユーザーに確認させ、OKボタンが押された場合に特定した可変領域が正しいと判断しても良い。
【0058】
この実施形態では、画像形成装置1は、印刷物に
図2及び
図5に示したような筋状、黒丸状その他の異常画像(欠陥データ)41~44が印刷されていないかどうかを検査する検品処理を行う。
【0059】
この検品処理は、印刷後に画像読取装置120で読み取られた前後のページの読み取りデータ(画像データ)を比較し、相違があれば異常画像があり欠陥品と判定し、相違がなければ異常画像がなく良品であると判定する。前後のページの比較ではなく、1ページ目を正解データとして、この正解データと他のページを比較して、異常画像の有無を判定しても良い。
【0060】
この検品処理に際して、可変領域については複数のページで内容の異なる画像が印刷されていることから、異常画像有りと判定されてしまう恐れがある。このため、検品処理に際して、上述した方法で可変領域を特定し、この可変領域を検品対象から除外しておく必要がある。
【0061】
図6(A)は、画像形成装置1の印刷及び検品処理の動作の一例を説明するためのフローチャートである。この動作は、画像形成装置1の制御部100におけるCPU101がROM102等の記録媒体に格納された動作プログラムに従って動作することにより実行される。
【0062】
ステップS01で印刷ジョブを受信した後、ステップS02で数ページを印刷する。ステップS03では、印刷された数ページ分の画像を読み取った後、ステップS04で可変領域を特定し、ステップS05では残りの印刷を行う。
【0063】
次いでステップS06で検品処理を実施する。検品処理については後述する。
【0064】
ステップS07では印刷が全て終了したかどうかを判断する。印刷が終了していなければ(ステップS07でNO)、ステップS05に戻って印刷を継続する。印刷が終了していれば(ステップS07でYES)、ステップS08に進み、検品が全て終了したかどうかを判断する。検品が終了していなければ(ステップS08でNO)、ステップS06に戻り、検品処理を繰り返す。検品が全て終了すると(ステップS08でYES)、処理を終了する。
【0065】
図6(B)は、
図6(A)のステップS06の検品処理の内容を示すフローチャートである。
【0066】
ステップS061で、特定された可変領域を異常画像の検知対象外として設定した後、ステップS062で検知対象のページの画像を読み取り、ステップS063で、前後ページの画像比較あるいは正解画像との比較等により異常画像を検知する。
【0067】
ステップS064では、異常画像が有るかどうかを判断し、異常画像が有れば(ステップS064でYES)、ステップS065で異常と判定し、ステップS06に戻る。正常画像との差し替え等のために、必要に応じて異常と判定されたページ等に関する情報を記憶装置110等に記憶しておく。異常画像が無ければ(ステップS064でNO)、ステップS066で正常と判定し、
図6(A)のステップS07に進む。
【0068】
こうして、印刷された各ページについて異常画像の有無が判定され、印刷物について検品が行われる。
【0069】
図7(A)は、画像形成装置1の印刷及び検品処理の動作の他の例を説明するためのフローチャートである。この動作も、画像形成装置1の制御部100におけるCPU101がROM102等の記録媒体に格納された動作プログラムに従って動作することにより実行される。
【0070】
ステップS11で印刷ジョブを受信した後、ステップS12で印刷を行いながら、ステップS13で検品処理を実施する。検品処理と並行して、ステップS17で、印刷された数ページ分の画像を読み取り、ステップS18で可変領域を特定する。特定された可変領域は後述するようにステップS13の検品処理に反映される。
【0071】
ステップS14では印刷が全て終了したかどうかを判断する。印刷が終了していなければ(ステップS14でNO)、ステップS15で印刷を継続したのち、ステップS16に進む。印刷が終了していれば(ステップS14でYES)、そのままステップS16に進む。
【0072】
ステップS16では、検品が全て終了したかどうかを判断する。検品が終了していなければ(ステップS16でNO)、ステップS13に戻り、検品処理を繰り返す。検品が全て終了すると(ステップS16でYES)、処理を終了する。
【0073】
図7(B)は、
図7(A)のステップS13の検品処理の内容を示すフローチャートである。
【0074】
ステップS131で、可変領域が特定されているかどうかを判断する。特定されていなければ(ステップS131でNO)、ステップS132で検知対象のページの画像を読み取り、ステップS133で、前後ページの画像比較あるいは正解画像との比較等により異常画像を検知する。
【0075】
ステップS134では、異常画像が有るかどうかを判断し、異常画像が有れば(ステップS134でYES)、ステップS135で異常と判定し、ステップS13に戻る。正常画像との差し替え等のために、必要に応じて異常と判定されたページ等に関する情報を記憶装置110等に記憶しておく。異常画像が無ければ(ステップS134でNO)、ステップS136で正常と判定し、
図7(A)のステップS13に進む。
【0076】
ステップS131で、可変領域が特定されていれば(ステップS131でYES)、ステップS137で可変領域を検知対象外として設定する。次いでステップS138で、検知対象外として設定する前に既に異常検知を行っているページが有るかどうかを調べる。既に異常検知を行っているページが有れば(ステップS138でYES)、ステップS139で、そのページについては可変領域を検知対象外として設定した状態で異常検知の再判定を行い、異常画像の有無を調べて異常、正常の判定を行う。既に異常検知を行っているページが無ければ(ステップS138でNO)、ステップS132に進み、検知対象のページの画像を読み取る。再判定が行われたページについては、設定前検知済みのページとしては扱われない。
【0077】
このように、可変領域の特定と並行して検品処理を行うから、検品処理を早期に開始でき、検品処理の終了までの時間を短縮できる。
【0078】
なお、
図7(B)の例では、ステップS138で、検知対象外の設定前に既に異常検知を行っているページが有るかどうかを調べ、既に異常検知を行っているページが有れば、ステップS135で、そのページについては、可変領域を検知対象外として設定したタイミングで、つまり全ページの印刷が完了する前に異常検知の再判定を行う構成とした。しかし、検知対象外の設定前に既に異常検知を行っているページの再判定を、全ページの印刷の完了後に行っても良い。
【0079】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることはない。
【0080】
例えば、印刷、印刷物の画像読み取り、可変領域の特定、検品を1台の画像形成装置1が実施する例を示したが、印刷物の画像読み取り、可変領域の特定、検品が画像形成装置1とは異なる1台又は複数台の装置で行われても良い。
【符号の説明】
【0081】
1 画像形成装置
10 画像形成部(印刷手段)
20 固定領域
30~36 可変領域
41~44 異常画像
50 操作パネル部
60~65 特定された可変領域
100 制御部(可変領域特定手段、欠陥検知手段)
101 CPU
102 RAM
110 記憶装置
120 画像読取装置(読み取り手段)