(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101710
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】エアゾール組成物及びエアゾール製品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240723BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240723BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20240723BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/04
A61K8/34
A61K8/81
A61K8/19
A61K8/31
A61K8/33
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005782
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 恵理華
(72)【発明者】
【氏名】上條 北斗
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB131
4C083AB132
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB441
4C083AB442
4C083AB471
4C083AB472
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC352
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD532
4C083BB23
4C083BB25
4C083BB26
4C083BB49
4C083CC02
4C083DD08
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】吸水性及び吸油性を両立しながら良好な冷感及び適用箇所へのサラサラとした使用感を与えることができ、さらに高い分散性を有するエアゾール組成物。
【解決手段】エアゾール組成物であって、該エアゾール組成物は、炭素数2~4の低級アルコールを含有する原液、皮脂吸着成分、(メタ)アクリル酸系高分子、及び噴射剤を含有し、該皮脂吸着成分が、疎水化デンプン及び多孔質無機粉体からなる群から選択される少なくとも一であり、該噴射剤が、液化ガスを含有し、該エアゾール組成物における水の含有割合が、0.50質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール組成物であって、
該エアゾール組成物は、
炭素数2~4の低級アルコールを含有する原液、
皮脂吸着成分、
(メタ)アクリル酸系高分子、及び
噴射剤を含有し、
該皮脂吸着成分が、疎水化デンプン及び多孔質無機粉体からなる群から選択される少なくとも一であり、
該噴射剤が、液化ガスを含有し、
該エアゾール組成物における水の含有割合が、0.50質量%以下である、エアゾール組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸系高分子が、架橋ポリアクリル酸のナトリウム塩及び架橋ポリアクリル酸のカリウム塩からなる群から選択される少なくとも一である、請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
前記低級アルコールが、エタノールを含む請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項4】
前記皮脂吸着成分が、疎水化トウモロコシデンプンである請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項5】
前記液化ガスが、炭化水素、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンからなる群から選択される少なくとも一を含む請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項6】
前記エアゾール組成物における前記液化ガスの含有割合が、64.0~94.0質量%である請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項7】
前記皮脂吸着成分の吸油量が、0.10~2.00ml/gである請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル酸系高分子の吸水量が、10~500g/gである請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項9】
エアゾール組成物が充填された容器、及び
該容器に備えられ、該エアゾール組成物を吐出させる吐出機構
を有するエアゾール製品であって、
該エアゾール組成物が、請求項1~8のいずれか1項に記載のエアゾール組成物であるエアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアゾール組成物及びエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗髪に使用する十分な水が確保できない環境などで、水を用いることなく頭髪や頭皮に付着した汚れ等を洗浄するドライシャンプーが開発されている。
例えば特許文献1では、デンプン及び多孔質シリカを特定の質量比で含有するドライシャンプー用組成物が開示されている。
また、特許文献2では、吸油性粉体、ポリオール、低級アルコール、及び特定の炭化水素を含有し、界面活性剤を含有しない頭髪用エアゾール組成物が開示されている。
特許文献3では、多孔性粉体を含む原液と、液化ガスとからなる、頭髪速乾用エアゾール組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-150271号公報
【特許文献2】国際公開第2018/216242号
【特許文献3】特開2019-026596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によると、特許文献1及び2のドライシャンプーでは皮脂を吸着することはできるが、使用時に汗をかいていた場合、水分が皮膚上に残り、べたべた感が残ってしまことがわかってきた。
また、特許文献3では、水分を吸着する多孔性粉体としてシリカやゼオライトが開示されているが、本発明者らの検討によると、通常、シリカやゼオライトの吸水量は自重の1倍以下であり、吸水を十分にするためには多量の多孔性粉体を添加する必要がある。そのため、軋みが生じるなど使用感が低下しやすい。また、ゼオライトを用いると吸着熱により発熱する場合があり、十分な冷感が得られない。
本開示は、吸水性及び吸油性を両立しながら良好な冷感及び適用箇所へのサラサラとした使用感を与えることができ、さらに高い分散性を有するエアゾール組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、エアゾール組成物であって、
該エアゾール組成物は、
炭素数2~4の低級アルコールを含有する原液、
皮脂吸着成分、
(メタ)アクリル酸系高分子、及び
噴射剤を含有し、
該皮脂吸着成分が、疎水化デンプン及び多孔質無機粉体からなる群から選択される少なくとも一であり、
該噴射剤が、液化ガスを含有し、
該エアゾール組成物における水の含有割合が、0.50質量%以下である、エアゾール組成物に関する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、吸水性及び吸油性を両立しながら良好な冷感及び適用箇所へのサラサ
ラとした使用感を与えることができ、さらに高い分散性を有するエアゾール組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0008】
<原液>
エアゾール組成物は、炭素数2~4の低級アルコールを含有する原液を含有する。低級アルコールにより良好な冷感及びサラサラ感(使用感)を付与することができる。また、低級アルコールは、皮脂吸着成分などの分散媒としても作用しうる。
【0009】
低級アルコールは、炭素数2~4(好ましくは2~3)のアルコールが挙げられる。低級アルコールは、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールからなる群から選択される少なくとも一が好ましい。低級アルコールは、より好ましくはエタノール及びイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも一を含み、さらに好ましくはエタノールを含む。
【0010】
エアゾール組成物中の低級アルコールの含有割合は、好ましくは5.0~30.0質量%であり、より好ましくは10.0~20.0質量%であり、さらに好ましくは12.0~18.0質量%である。
また、原液中の低級アルコールの含有割合は、好ましくは50.0~100.0質量%であり、より好ましくは70.0~99.5質量%であり、さらに好ましくは80.0~99.2質量%である。上記範囲であることでより良好な冷感及びサラサラ感(使用感)を発揮することができる。
【0011】
原液は、本開示の効果を損なわない程度に、水やその他の任意成分を含有してもよい。
例えば、原液は、シリコーンオイル及び変性シリコーンオイルなどのシリコーンオイル類からなる群から選択される少なくとも一を含有することが好ましい。
【0012】
シリコーンオイル類は、例えば、ジメチルシリコーンオイル(ジメチコン)、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどのストレートシリコーンオイル;ジメチルシリコーンオイルの側鎖や末端がカルビノール基、カルボキシ基、シラノール基、ポリエチレングリコールなどで変性された変性シリコーンオイル;などが挙げられる。シリコーンオイル類としては、ジメチルシリコーンオイル、ポリエチレングリコール変性シリコーンオイルからなる群から選択される少なくとも一が好ましい。
原液におけるシリコーンオイル類の含有割合は、好ましくは1.0~30.0質量%であり、より好ましくは10.0~20.0質量%である。
【0013】
任意成分としては、有効成分、香料、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、キレート剤、油脂類、シリコーン類、増粘剤、保湿剤、殺菌剤、皮膚保護剤、ビタミン類、各種抽出液、消臭・防臭剤、清涼剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、害虫忌避成分、殺虫成分などが挙げられる。任意成分の割合は、組成物の使用用途などに基づいて適宜に定められる。
【0014】
より具体的には、例えば以下のものが挙げられる。
清涼剤(メントール、カンフルなど);殺菌成分(イソプロピルメチルフェノール(IPMP)など);油性成分(例えば炭化水素化合物、油脂など);pH調整剤(例えばクエン酸、クエン酸Na、乳酸、トリエタノールアミン、KOH、NaOHなど);防錆剤(例えばアンモニア水、安息香酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウムなど);防腐剤(例え
ばパラベン類、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸メチル);尿素;カルシウム、鉄、ナトリウムなどのミネラル;顔料;色素;EDTA-2Naなどのキレート剤など。
【0015】
<皮脂吸着成分>
エアゾール組成物は、皮脂吸着成分を含有する。皮脂吸着成分は、疎水化デンプン及び多孔質無機粉体からなる群から選択される少なくとも一である。皮脂吸着成分として疎水化デンプンを用いることで、吸油性が高く、サラサラ感(使用感)もよく、さらにエアゾール組成物の分散性も良好になる。また、皮脂吸着成分として、多孔質無機粉体を用いることで、吸油性が高く、サラサラ感(使用感)もよく、さらにエアゾール組成物の分散性も良好になる。
【0016】
皮脂吸着成分の吸油量は、0.10~2.00ml/gであることが好ましく、0.45~1.20ml/gであることがより好ましく、0.50~1.20ml/gであることがさらに好ましい。
ここで「吸油量」とは、皮脂吸着成分が担持できる油量を示したものであり、具体的には皮脂吸着成分に吸収されるスクワランの量によって特定される値を示し、下記の式(1)によって算出される。式(1)において、O〔ml/g〕は「吸油量」であり、V〔ml〕は「軟化現象発生までに用いたスクワラン量〔ml〕」であり、P〔g〕は「皮脂吸着成分の質量」である。
【0017】
「軟化現象発生までに用いたスクワラン量」とは、皮脂吸着成分が凝集化し、その凝集体(塊)が軟化現象を生じるまでに要したスクワランの量である。具体的には、ガラスプレート上のPgの皮脂吸着成分上に、スクワランをビュレットから1滴ずつ滴下し、その都度当該皮脂吸着成分全体を鉄製のヘラで練り合わせる練り合わせ操作を繰り返す過程において、皮脂吸着成分が凝集化して固化した後にスクワランの滴下によって急激に軟化する軟化現象が生じるまでの間に皮脂吸着成分に滴下したスクワランの総量である。
O〔ml/g〕=V〔ml〕/P〔g〕 ・・・(1)
【0018】
疎水化デンプンは、特に制限されず、アルキルコハク酸処理、炭化水素基処理、オルガノシラン化合物処理など公知の方法で疎水化処理を行ったデンプンを用いることができる。疎水化デンプンは、例えば、オクテニルコハク酸処理デンプンが挙げられる。
【0019】
また、疎水化デンプンは、疎水化コメデンプン、疎水化バレイショデンプン、疎水化トウモロコシデンプンなど公知のデンプンの疎水化処理物からなる群から選択される少なくとも一が好ましい。より好ましくは疎水化トウモロコシデンプンである。疎水化トウモロコシデンプンは、例えば、オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAlが挙げられる。
【0020】
また、多孔質無機粉体は、シリカ及びゼオライトからなる群から選択される少なくとも一が好ましく、シリカであることがより好ましい。シリカ及びゼオライトは疎水性であることが好ましい。多孔質無機粉体は、シランカップリング剤、シリコーンオイル、シラザンなど公知の手段で疎水化処理がなされていてもよい。
皮脂吸着成分は、疎水化トウモロコシデンプンであることが特に好ましい。疎水化トウモロコシデンプンにより、吸油性、サラサラ感(使用感)及びエアゾール組成物の分散性が非常に良好になりやすい。
【0021】
エアゾール組成物における皮脂吸着成分の含有量は、吸油量に応じて適宜変更すればよく特に制限されないが、好ましくは0.5~5.0質量%であり、より好ましくは1.0~3.0質量%であり、さらに好ましくは1.2~2.0質量%である。
皮脂吸着成分は、皮脂を吸着できればよく、吸水性を有していてもよい。
【0022】
多孔質無機粉体の一次粒子の個数平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは1~300μmであり、より好ましくは5~200μmである。多孔質無機粉体の一次粒子の個数平均粒径は、顕微鏡観察により測定することができる。一例としては、顕微鏡画像からランダムに20個の粒子を選択し、その粒子径の個数平均値を個数平均粒子径とできる。なお、アスペクト比を有する粒子の場合には、長径を粒子径として採用する。
【0023】
<(メタ)アクリル酸系高分子>
エアゾール組成物は、(メタ)アクリル酸系高分子を含有する。(メタ)アクリル酸系高分子は、水分吸着成分として作用しうる。上述したとおり、皮膚上の水分によるべたべた感を抑制するために、吸水成分としてシリカなどを用いた場合は軋みが生じるなど使用感が低下しやすい。このように吸水性と使用感はトレードオフの関係になりやすいものであった。
本発明者らは、吸水性と使用感とを両立するため、吸水性ポリマーの使用を検討したところ、驚くべきことに(メタ)アクリル酸系高分子を用いることで、吸水性とサラサラ感(使用感)を高いレベルで達成できた。
【0024】
(メタ)アクリル酸系高分子としては、分子内にポリ(メタ)アクリル酸(好ましくはポリアクリル酸)及び/又はポリ(メタ)アクリル酸塩の構造を有する高分子が挙げられる。(メタ)アクリル酸系高分子は吸油性を有していてもよい。
(メタ)アクリル酸系高分子は架橋構造を有することが好ましい。架橋構造としては、ペンタエリスチルアリルエーテル、スクロースアリルエーテル、プロピレンアリルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどエーテル構造を有する架橋成分による架橋構造が好ましい。(メタ)アクリル酸系高分子は、架橋ポリアクリル酸のナトリウム塩及び架橋ポリアクリル酸のカリウム塩からなる群から選択される少なくとも一であることがより好ましく、架橋ポリアクリル酸のナトリウム塩であることがさらに好ましい。このような架橋ポリアクリル酸のナトリウム塩としては、カルボキシビニルポリマーNa、アクリレーツクロスポリマー-2-Naなどが挙げられる。
【0025】
(メタ)アクリル酸系高分子は、カルボキシビニルポリマー、カルボキシビニルポリマーNa及びアクリレーツクロスポリマー-2-Naからなる群から選択される少なくとも一が好ましい。(メタ)アクリル酸系高分子は、より好ましくは、カルボキシビニルポリマーNa及びアクリレーツクロスポリマー-2-Naからなる群から選択される少なくとも一である。
【0026】
(メタ)アクリル酸系高分子の含有割合は、吸水性などに応じて適宜変更すればよく、特に制限されない。エアゾール組成物における(メタ)アクリル酸系高分子の含有割合は、好ましくは0.1~5.0質量%であり、より好ましくは0.2~3.0質量%であり、さらに好ましくは0.2~2.0質量%であり、さらにより好ましくは0.2~1.7質量%である。
【0027】
(メタ)アクリル酸系高分子の吸水量は、10~500g/gであることが好ましく、20~450g/gであることがより好ましい。ここで「吸水量」とは、吸水性ポリマーが担持できる水量を示したものであり、具体的には吸水性ポリマーに吸収される水の量によって特定される値を示し、下記の式(2)によって算出される。式(2)において、Z〔g/g〕は「吸水量」であり、X〔g〕は「吸水性ポリマーが吸収した水量〔g〕」であり、Y〔g〕は「吸水性ポリマーの質量」である。
【0028】
「吸水性ポリマーが吸収した水量X」とは、具体的には、以下の通り算出する。ガラスプレート上のYgの吸水性ポリマー上に、水をビュレットから1滴ずつ滴下し、その都度
当該吸水性ポリマー全体を鉄製のヘラで練り合わせる練り合わせ操作を繰り返す。この過程において、水を吸収しきれず、ガラスプレートを45°傾けた際に水のにじみが発生した時を終点とした水の総量を、「吸水性ポリマーが吸収した水量X」とする。
Z〔g/g〕=X〔g〕/Y〔g〕 ・・・(2)
【0029】
<噴射剤>
エアゾール組成物は噴射剤を含有する。噴射剤は、液化ガスを含有する。液化ガスを用いることで、良好な冷感が得られると共に、エアゾール組成物を適用した時のサラサラ感(使用感)が非常に良好になる。これは、液化ガスが気化する際の吸熱反応や、気化速度が早いことが、冷感や速効性に寄与しているためと考えられる。
【0030】
液化ガスは特に制限されず、エアゾール製品に使用しうる公知のものを用いることができる。例えば、プロパン、ブタン又はこれらを含む液化石油ガス(LPG)やLNGやイソペンタンなどの炭化水素、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィンなどの有機フッ素化合物、ジメチルエーテル(DME)が挙げられる。液化ガスは、炭化水素、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィンからなる群から選択される少なくとも一を含むことが好ましい。
【0031】
ハイドロフルオロオレフィンは、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、モノクロロトリフルオロプロペンからなる群から選択される少なくとも一が挙げられる。
1,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))及びシス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z))からなる群から選択される少なくとも一である。1,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンであることが好ましい。
【0032】
モノクロロトリフルオロプロペンは、トランスCF3CH=CClH(HFO-1233zd(E))、シスCF3CH=CClH(HFO-1233zd(Z))からなる群から選択される少なくとも一である。CF3CH=CClHは、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンとも称される。
モノクロロトリフルオロプロペンは、トランスCF3CH=CClH(HFO-1233zdE)であることが好ましい。
【0033】
ハイドロクロロフルオロオレフィンとしては、モノクロロテトラフルオロプロペンが挙げられる。
モノクロロテトラフルオロプロペンは、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))及び(E)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(E))からなる群から選択される少なくとも一である。1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、CF3CF=CHClとも表される。モノクロロテトラフルオロプロペンは、(Z)-1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd(Z))であることが好ましい。
【0034】
噴射剤は液化ガスを含んでいればよく、本開示の効果を損なわない程度に、液化ガス以外の他の噴射剤を含有してもよい。例えば噴射剤は、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気、酸素、ヘリウム、亜酸化窒素などの圧縮ガスを含んでいてもよい。噴射剤における液化ガスの含有割合は、好ましくは90~100質量%であり、より好ましくは95~100質量%であり、さらに好ましくは98~100質量%であり、さらにより好ましくは99~100質量%である。
【0035】
エアゾール組成物における液化ガスの含有割合は特に制限されず、好ましくは64.0~94.0質量%であり、より好ましくは、70.0~90.0質量%であり、さらに好ましくは75.0~85.0質量%である。上記範囲であると、良好な冷感及び使用感がより得られやすくなる。
【0036】
エアゾール組成物における水の含有割合は、0.50質量%以下である。水の含有割合が上記範囲を超えると、使用感及び吸水性が損なわれ、エアゾール組成物の分散性も大きく低下してしまう。これは、エアゾール組成物中に粉末として存在する皮脂吸着成分及び吸水性ポリマーが凝集し易くなるためと考えられる。
【0037】
エアゾール組成物における水の含有割合は、0.50質量%以下であり、0.40質量%以下が好ましく、0.35質量%以下がより好ましく、0.20質量%以下がさらに好ましい。上記範囲であることで、使用感及び冷感がより良好になる。水の量は少ないほど好ましいため下限は特に制限されないが、例えば0.00質量%以上、0.10質量%以上が挙げられる。ここでの水の含有割合は低級アルコールに不可避的に含まれる水の量も含む。
【0038】
次に、エアゾール製品について説明する。
エアゾール製品は、
エアゾール組成物が充填された容器、及び
該容器に備えられ、該エアゾール組成物を吐出させる吐出機構を有する。
吐出機構及び容器は特段限定されず、公知のものを採用しうる。容器は、噴射剤の圧力に耐えられるものであればよく、公知の樹脂製、金属製、ガラス製などの容器を用いることができる。吐出機構も特に制限されず、公知のものを使用しうる。吐出機構は、例えば、バルブ装置及びアクチュエータを含む。また、耐圧容器の種類に応じて、バルブ装置を装着するための構造を適宜選定することができる。
吐出機構におけるアクチュエータは、特に制限されず公知のものを使用しうる。
【0039】
エアゾール製品における容器内の圧力(ゲージ圧力)は特に制限されない。液化ガス及び必要に応じて他の噴射剤を、エアゾール容器内に充填されたときの容器内の圧力(ゲージ圧力)が、25℃で、例えば1MPa以下となるように充填すればよい。
【0040】
エアゾール組成物及びエアゾール製品の製造方法は特に制限されない。例えば、以下の方法が挙げられる。エアゾール組成物における原液は、低級アルコール並びに必要に応じて清涼剤、殺菌成分、及びシリコーンオイル類などその他の成分を任意の割合で混合して得ることができる。
【0041】
また、エアゾール組成物及びエアゾール製品は、以下のようにして製造しうる。まず、上記成分を任意の割合で混合して原液を得る。得られた原液、皮脂吸着成分、(メタ)アクリル酸系高分子、及び噴射剤を耐圧容器に充填して、エアゾール組成物が充填されたエアゾール製品を得る。
【0042】
また、エアゾール組成物は、例えば人体用、家庭用、工業用などの様々な用途に用いることができる。
人体用としては、例えばボティーローション剤、スキンケア剤、育毛剤、クレンジング剤、マッサージング剤、ヘアスタイリング剤、ヘアトリートメント剤、シャンプー剤、コンディショナー剤、メークアップ化粧料、忌避剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤などが挙げられる。
家庭用としては、例えば洗浄剤、消臭剤、芳香剤、除菌剤、殺虫剤、防虫剤、防水剤、撥水剤などが挙げられる。
工業用としては、例えば潤滑剤、コーティング剤、接着剤、塗料などが挙げられる。
これらの中でも特に人体用として好適に用いることができる。より好ましくはスキンケア剤、育毛剤、クレンジング剤、マッサージング剤、ヘアスタイリング剤、ヘアトリートメント剤、シャンプー剤、コンディショナー剤である。
【実施例0043】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に制限されない。
【0044】
<実施例1~12、比較例1~14>
まず、表1~3に示す処方(質量%)にて各原料を混合し、原液を調製した。
さらに、表1~3の処方(質量%)にて、得られた原液、吸水成分、皮脂吸着成分、多孔質無機粉体、及び噴射剤を、エアゾール組成物として合計30g、それぞれ耐圧容器(エアゾール用ガラス試験瓶100mL)に充填して、エアゾール組成物が充填された各エアゾール製品を得た。エアゾール組成物における水の含有割合(質量%)を表1~3に示す。また、各エアゾール製品の評価結果を表1~3に示す。評価の方法については後述する。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
以下の実施例・比較例も含め、使用した材料は以下の通り。
[原液]
エタノール:99%合成アルコール(日本アルコール販売株式会社)
l-メントール:メントールJP(高砂香料工業株式会社)
PEG-3ジメチコン:KF-6015(信越化学工業株式会社)
ジメチコン:KF-96L-2CS(信越化学工業株式会社)
IPMP:イソプロピルメチルフェノール(大阪化成株式会社)
[吸水成分]
アクリレーツクロスポリマー-2-Na(吸水量24g/g):ARON NT-Z(東亞合成株式会社)
カルボマーNa(吸水量400g/g):AQUPEC(住友精化株式会社)
アクリル酸クラフトデンプン(吸水量40g/g):MAKIMOUSSE 7(大東化成工業株式会社)
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー(吸水量200g/g):Aristflex AVC(クラリアントジャパン株式会社)
アクリル酸Naグラフトデンプン(吸水量250g/g):サランジュール ST-100MC(三洋化成株式会社)
アルギン酸カルシウムビーズ(吸水量2g/g):フラビカファイン(日清紡ケミカル株式会社)
カルボキシメチルセルロースNa(吸水量19g/g):サンローズ SLD-FM(日本製紙株式会社)
水酸化Mg、結晶セルロース(吸水量1.7g/g):MAKIGREEN APMC(大東化成工業株式会社)
[皮脂吸着成分]
オクテニルコハク酸トウモロコシデンプンAl(吸油量0.60ml/g):Dry Flo Pure(ヌーリオン・ジャパン株式会社)
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(吸油量1.25ml/g):DOWSIL TREFIL E-506 S Silicone powder(ダウ・東レ株式会社)
シリカ(吸油量1.10ml/g、一次粒子の個数平均粒径10~20μm:コスメシリカCQ4(富士シリシア化学株式会社)
ゼオライト(吸油量0.88ml/g、一次粒子の個数平均粒径150μm:ゼオラム A-4(東ソー株式会社)
[噴射剤]
LPG:液化石油ガス(20℃時蒸気圧0.15MPa)
DME:ジメチルエーテル
炭酸ガス:炭酸ガス
窒素:窒素ガス
HFO-1234Ze:HFO-1234Ze(E)
【0049】
得られたエアゾール製品に対する評価の手順は以下の通りである。
なおエアゾール製品の温度及び室温は、特に断りのない限り25℃に設定して評価を行った。水0.5g及びスクワラン0.2gを滴下した上腕に、評価するエアゾール製品を約2.5g噴射し馴染ませた際の使用感、吸水性、吸油性及び冷感を以下の基準で評価した。なお、評価した各エアゾール製品の吐出機構には、以下のボタンを使用した。「D94W 0520D“3”-A」株式会社三谷バルブ製
【0050】
(1)使用感(サラサラ感)
5:非常にサラサラする
4:サラサラする
3:普通
2:ポロポロ落ちる
1:べたべたする
【0051】
(2)吸水性
5:ほとんど馴染ませなくてもすぐに水分がなくなる
4:軽く馴染ませると水分がなくなる
3:よく馴染ませると水分がなくなる
2:よく馴染ませると若干水分がなくなるが、ほとんど残ったまま
1:全く水分がなくならない
【0052】
(3)吸油性
5:ほとんど馴染ませなくてもすぐに油分がなくなる
4:手で馴染ませると油分がなくなる
3:よく馴染ませると油分がなくなる
2:よく馴染ませると若干油分がなくなるが、ほとんど残ったまま
1:全く油分がなくならない
【0053】
(4)冷感
5:非常に冷感がある
4:とても冷感がある
3:やや冷感がある
2:ほとんど冷感がない
1:全く冷感がない
【0054】
(5)分散性
25℃の恒温室内で3日間静置した後に、上下に振った際の粉体の再分散性を以下の基準で評価した。
5:1~3回振れば分散する
4:4~6回振れば分散する
3:7~9回振れば分散する
2:10~12回振れば分散する
1:凝集している