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2024-101715水底移動体、水底移動体の移動方向監視システム、及び配管の掘り起こし方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101715
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】水底移動体、水底移動体の移動方向監視システム、及び配管の掘り起こし方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 5/00 20060101AFI20240723BHJP
   E02F 7/00 20060101ALI20240723BHJP
   F16L 1/16 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
E02F5/00 A
E02F7/00 F
F16L1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005790
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】内橋 令樹
(72)【発明者】
【氏名】菅野 雅彦
(57)【要約】
【課題】簡素な構造で埋設配管を掘り起こすことができる水底移動体、水底移動体の移動方向監視システム、及び配管の掘り起こし方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の態様1に係る水底移動体100は、水底面BSに接地する接地部10と、水底Bに埋設された配管を支持する支持部20と、を備えた水底移動体100であって、支持部20は、接地部10より上方に配置され、支持部20は、配管を下方から支持する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底面に接地する接地部と、水底に埋設された配管を支持する支持部と、を備えた水底移動体であって、
前記支持部は、前記接地部より上方に配置され、
前記支持部は、前記配管を下方から支持する、
水底移動体。
【請求項2】
水面上の船舶がけん引する索条体が接続される接続部を更に備える、
請求項1に記載の水底移動体。
【請求項3】
前記接地部は、水底面を滑動する滑動面を備えている、
請求項1に記載の水底移動体。
【請求項4】
前記支持部は、平面視で移動体移動方向と直交する幅方向に軸方向が沿う固定式円柱体を備え、
前記支持部は、前記固定式円柱体の外周面で前記配管を支持する、
請求項1に記載の水底移動体。
【請求項5】
前記支持部が移動体移動方向に沿って複数設けられている、
請求項1に記載の水底移動体。
【請求項6】
前記移動体移動方向で、前記水底移動体の中央より前方側に配置される前記支持部の数は、前記中央より後方側に配置される前記支持部の数よりも多い、
請求項5に記載の水底移動体。
【請求項7】
平面視で移動体移動方向と直交する幅方向に分散して配置されて、前記幅方向における前記配管の支持位置の変化を規制する一対の規制部を更に備える、
請求項1から6のいずれか1項に記載の水底移動体。
【請求項8】
請求項7に記載の前記水底移動体に対する前記配管の前記幅方向の位置を幅方向位置情報として検出する検出部と、
前記幅方向位置情報を送信する送信部と、
前記送信部が送信する前記幅方向位置情報に基づいて前記接地部の移動方向を監視する移動方向監視部と、を備える、
水底移動体の移動方向監視システム。
【請求項9】
請求項7に記載の前記水底移動体に対する前記配管の前記幅方向の位置を幅方向位置情報として検出する検出部と、
前記幅方向位置情報を送信する送信部と、
前記送信部が送信する前記幅方向位置情報に基づいて前記接地部の移動方向を監視する移動方向監視部と、
前記水底移動体の水底における位置を測位する水底移動体位置測位部と、
を備え、
前記移動方向監視部は、前記配管の水底における位置を示す配管位置情報と、前記水底移動体位置測位部が測位した前記水底移動体の水底における位置を示す水底移動体位置情報と、に基づいて前記水底移動体の移動方向を修正する修正情報を生成する、
水底移動体の移動方向監視システム。
【請求項10】
水底面に接地する接地部と、水底に埋設された配管を支持する支持部と、を備えた水底移動体であって、
前記支持部は、前記接地部より上方に配置され、
前記支持部は、前記配管を下方から支持する、
水底移動体を用いた配管の掘り起こし方法であって、
前記配管の上に堆積した土砂を取り除く第1工程と、
前記配管の一部を前記水底から取り出し、前記支持部の上に配置する第2工程と、
前記水底移動体を、前記配管が埋設された方向に沿って移動させる第3工程と、
を備える、
配管の掘り起こし方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底移動体、水底移動体の移動方向監視システム、及び配管の掘り起こし方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水底に埋設された配管を撤去する際には、埋設状態の配管を水底面上に露出させる必要がある。
特許文献1には、水底移動体に設けられた浚渫装置により配管の周辺の土砂を掘削しながら、グリッパによって配管を掴むようにして、埋設した配管を水底面に露出させる掘削装置が開示されている。特許文献1の切削装置は、浚渫装置を装備した前胴部と姿勢保持装置を有する後胴部とが伸縮機構を介して連結されており、前胴部用グリッパと後胴部用グリッパとで水底埋設管を交互に掴みながら伸縮機構を伸縮させて前進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-238567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の掘削装置は、配管の周辺の土砂を掘削するための浚渫装置を備えなければならず、また、分離した前胴部と後胴部とを連結する伸縮機構や配管に対する把持と把持解除を繰り返すグリッパを備えなければならない。そのため、動作を伴う構成が多く、構成が複雑となっている。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、簡素な構造で埋設配管を水底面上に露出させることができる水底移動体、水底移動体の移動方向監視システム、及び配管の掘り起こし方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の態様1に係る水底移動体は、水底面に接地する接地部と、水底に埋設された配管を支持する支持部と、を備えた水底移動体であって、前記支持部は、前記接地部より上方に配置され、前記支持部は、前記配管を下方から支持する。
【0007】
この発明によれば、支持部は、接地部より上方に配置される。支持部は、配管を下方から支持する。これにより、例えば、配管の一部が海底から掘り起こされ、掘り起こされた配管の一部が支持部によって下方から支持された状態で、水底移動体が配管の埋設された方向に沿って移動すると、埋設された配管が支持部によって押し上げられるように力が作用する。これにより、水底移動体の移動に伴って、水底から配管が持ち上げられるようにして掘り起こされる。したがって、例えば、水底に埋設された配管の周辺の土砂を浚渫する浚渫装置や配管の把持と把持解除を繰り返すグリッパを水底移動体に備える場合と比較して、簡素な構成で水底移動体を得ることができる。また、例えば、グラブ浚渫船による掘削作業や水ジェットや水中ポンプを利用した浚渫作業を省略することか可能であるため、大規模な作業船を不要としたり、回収した土砂の運搬や処分を別途行うことを不要としたりすることができる。
このように、本発明の態様1によれば、簡素な構造で埋設配管を水底面上に露出させることができる水底移動体を提供することができる。
【0008】
<2>本発明の態様2に係る水底移動体は、態様1に係る水底移動体において、水面上の船舶がけん引する索条体が接続される接続部を更に備える。
【0009】
この発明によれば、水面上の船舶がけん引する索条体が接続される接続部を更に備える。これにより、水底移動体を水面上の船舶によってけん引することができる。よって、水底移動体が自走するための動力を備えることを不要とすることができる。よって、水底移動体をより簡素な構造とすることができる。
【0010】
<3>本発明の態様3に係る水底移動体は、態様1又は態様2に係る水底移動体において、前記接地部は、水底面を滑動する滑動面を備えている。
【0011】
この発明によれば、接地部は、水底面を滑動する滑動面を備えている。これにより、水底移動体は、水底面を滑るようにして移動することができる。よって、例えば、接地部が車輪やクローラ等である場合と比較して、水底移動体を簡素な構造とすることができる。
【0012】
<4>本発明の態様4に係る水底移動体は、態様1から態様3のいずれか1つに係る水底移動体において、前記支持部は、平面視で移動体移動方向と直交する幅方向に軸方向が沿う固定式円柱体を備え、前記支持部は、前記固定式円柱体の外周面で前記配管を支持する。
【0013】
ここで、例えば、支持部が、中心軸を回転中心として回転する円柱体を備える場合、支持部が固定式円柱体を備える場合と比較して、例えば、配管と支持部との摩擦抵抗を抑えることができる。よって、例えば、配管を円滑に掘り起こすことができる、配管の損傷を抑えることができる等の効果が見込まれる。
しかしながら、支持部が回転する円柱体を備える場合、海底の土砂が回転部に侵入することによって回転不可となる、回転軸がこじれるような想定外の偏荷重が生じる、等の副次的な課題が生じる。
この発明によれば、支持部は、平面視で移動体移動方向と直交する幅方向に軸方向が沿う固定式円柱体を備える。支持部は、固定式円柱体の外周面で配管を支持する。支持部が固定式円柱体を備えることで、配管の回収について大きな影響を及ぼすことなく、上述の副次的な課題が生じることを抑えることができる。また、支持部が回転する円柱体を備える場合に比べて、可動部の数を抑制できるため、水底移動体を簡素な構造とすることができる。
【0014】
<5>本発明の態様5に係る水底移動体は、態様1から態様4のいずれか1つに係る水底移動体において、前記支持部が移動体移動方向に沿って複数設けられている。
【0015】
この発明によれば、支持部が移動体移動方向に沿って複数設けられている。これにより、配管を下方から持ち上げるように掘り起こす際の荷重を複数の支持部に分散させることができるため、支持部の1つに付加される配管の荷重を小さくすることができる。したがって、例えば、配管と支持部との間に生じる摩擦抵抗を小さくすることができる。よって、配管を円滑に掘り起こすことができる。
【0016】
<6>本発明の態様6に係る水底移動体は、態様1から態様5のいずれか1つに係る水底移動体において、前記移動体移動方向で、前記水底移動体の中央より前方側に配置される前記支持部の数は、前記中央より後方側に配置される前記支持部の数よりも多い。
【0017】
ここで、水底移動体によって水底に埋設された配管を掘り起こす際、水底移動体においては、移動体移動方向で中央より前方側に配置される支持部に特に大きな荷重が付加される。本発明の態様6によれば、移動体移動方向で中央より前方側に配置される支持部の数は、中央より後方側に配置される支持部の数よりも多いので、複数の支持部の前後の配置密度を荷重の大小に応じたものとすることができ、複数の支持部のそれぞれが分担する荷重を均すことができる。
【0018】
<7>本発明の態様7に係る水底移動体は、態様1から態様6のいずれか1つに係る水底移動体において、平面視で移動体移動方向と直交する幅方向に分散して配置されて、前記幅方向における前記配管の支持位置の変化を規制する一対の規制部を更に備える。
【0019】
この発明によれば、平面視で移動体移動方向と直交する幅方向に分散して配置されて、幅方向における配管の支持位置の変化を規制する一対の規制部を更に備える。これにより、例えば、水底移動体の移動に伴って、支持部と配管との接点が幅方向にずれることを抑えることができる。よって、水底移動体の移動方向が配管の埋設経路に沿う方向からずれた場合でも、支持部により配管を適切に支持できる。
【0020】
<8>本発明の態様8に係る水底移動体の移動方向監視システムは、態様1から態様7のいずれか1つに係る水底移動体に対する前記配管の前記幅方向の位置を幅方向位置情報として検出する検出部と、前記幅方向位置情報を送信する送信部と、前記送信部が送信する前記幅方向位置情報に基づいて前記接地部の移動方向を監視する移動方向監視部と、を備える。
【0021】
この発明によれば、検出部によって、水底移動体に対する配管の幅方向の位置を幅方向位置情報として検出する。移動方向監視部によって、幅方向位置情報に基づいて接地部の移動方向を監視する。これにより、水底移動体に対する配管の幅方向の位置が適正な位置からずれた場合に、接地部の移動方向が不適切であることを把握できるため、水底移動体を、配管が埋設された方向に沿って正確に移動させるための対策を取ることができる。
【0022】
<9>本発明の態様9に係る水底移動体の移動方向監視システムは、態様1から態様7のいずれか1つに係る前記水底移動体に対する前記配管の前記幅方向の位置を幅方向位置情報として検出する検出部と、前記幅方向位置情報を送信する送信部と、前記送信部が送信する前記幅方向位置情報に基づいて前記接地部の移動方向を監視する移動方向監視部と、前記水底移動体の水底における位置を測位する水底移動体位置測位部と、を備え、前記移動方向監視部は、前記配管の水底における位置を示す配管位置情報と、前記水底移動体位置測位部が測位した前記水底移動体の水底における位置を示す水底移動体位置情報と、に基づいて前記水底移動体の移動方向を修正する修正情報を生成する。
【0023】
この発明によれば、移動方向監視部は、配管の水底における位置を示す配管位置情報と、水底移動体位置測位部が測位した水底移動体の水底における位置を示す水底移動体位置情報と、に基づいて水底移動体の移動方向を修正する修正情報を生成する。これにより、水底移動体に対する配管の幅方向の位置が適正な位置からずれた場合に、配管位置情報が示す配管の位置に移動体が適正に位置するように、修正情報に基づいて水底移動体の移動方向を修正することで配管が埋設された方向に沿って水底移動体を移動させることができる。よって、更に配管を効率的に掘り起こすことができる。
【0024】
<10>本発明の態様10に係る配管の掘り起こし方法は、水底面に接地する接地部と、水底に埋設された配管を支持する支持部と、を備えた水底移動体であって、前記支持部は、前記接地部より上方に配置され、前記支持部は、前記配管を下方から支持する、水底移動体を用いた配管の掘り起こし方法であって、前記配管の上に堆積した土砂を取り除く第1工程と、前記配管の一部を前記水底から取り出し、前記支持部の上に配置する第2工程と、前記水底移動体を、前記配管が埋設された方向に沿って移動させる第3工程と、を備える。
【0025】
この発明によれば、第2工程で配管の一部が支持部によって下方から支持された状態で、第3工程で水底移動体が配管の埋設された方向に沿って移動すると、埋設された配管が支持部によって押し上げられるように力が作用する。これにより、水底移動体の移動に伴って、水底から配管が持ち上げられるようにして掘り起こされる。したがって、例えば、水底に埋設された配管の周辺の土砂を浚渫する浚渫装置や配管の把持と把持解除を繰り返すグリッパを水底移動体に備える場合と比較して、簡素な構成で水底移動体を得ることができる。また、例えば、グラブ浚渫船による掘削作業や水ジェットや水中ポンプを利用した浚渫作業を省略することが可能であるため、大規模な作業船を不要としたり、回収した土砂の運搬や処分を別途行うことを不要としたりすることができる。このように、本発明の態様10によれば、簡素な構造で埋設配管を水底面上に露出させることができる配管の掘り起こし方法を提供することができる。
更に、第1工程において配管の上に堆積した土砂を予め取り除くことで、第3工程で配管を持ち上げて水底面上に露出させる際に配管の両脇に移動する土砂の量を抑制することができる。したがって、例えば、水底土砂の汚濁巻上げや拡散を抑えることができ、環境への負荷の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、簡素な構造で埋設配管を掘り起こすことができる水底移動体、水底移動体の移動方向監視システム、及び配管の掘り起こし方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】水底移動体の概念の平面図である。
図2】水底移動体の概念の正面図である。
図3】水底移動体の実施形態の正面図である。
図4】水底移動体の実施形態の平面図である。
図5】移動方向監視システムの第1例のブロック図である。
図6】移動方向監視システムの第2例のブロック図である。
図7】水底移動体の支持部の上に配管を配置する工程の第1例である。
図8】水底移動体の支持部の上に配管を配置する工程の第2例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る水底移動体100を説明する。まず、図1及び図2に示す概念図を用いて、水底移動体100の機能について説明する。水底移動体100は、例えば、図1及び図2に示すように、索条体Rを介して水上の船舶(不図示)等によって引っ張られることで、水底Bを移動する。これにより、水底移動体100は、海底等の水底Bに埋設された配管P(埋設配管)を掘り起こす。水底移動体100を引っ張る船舶は、例えば、作業者によって操縦されるものであってもよいし、自動操縦されるものであってもよい。
【0029】
例えば、図2に示すように、埋設された配管Pの一部を水底Bから露出させた状態で、水底移動体100の支持部20(後述する)を配管Pの下に配置する。この状態で、水底移動体100が配管Pの埋設された方向に沿って移動すると、埋設された配管Pが支持部20によって持ち上げられるように力が作用する。これにより、水底移動体100は、水底Bに埋設された配管Pを掘り起こす。
【0030】
次に、図3及び図4を用いて、以下、本実施形態に係る水底移動体100の詳細について説明する。図3及び図4に示すように、水底移動体100は、接地部10と、支持部20と、規制部30と、接続部40と、を備える。
接地部10は、水底移動体100のうち、水底面BSに接地する部位である。接地部10は、例えば、板状の部材である。接地部10は、例えば、移動体移動方向D1、つまり、水底移動体100が移動する方向に長手方向が沿うように配置される。接地部10は、水底面BSを滑動する滑動面10Sを備える。これにより、接地部10は、水底面BSの上を滑るように移動する。
【0031】
支持部20は、水底移動体100のうち、水底Bに埋設された配管Pを支持する部位である。本実施形態において、支持部20は、図3に示すように、接地部10より上方に配置される。支持部20は、配管Pを掘り起こす際、配管Pを下方から支持する。
支持部20は、固定式円柱体Cを備える。支持部20は、固定式円柱体Cの外周面で配管Pを支持する。つまり、支持部20は、水底移動体100において固定された円柱状の部材である。固定式円柱体Cは、水底移動体100において、図4に示すように、平面視で移動体移動方向D1と直交する方向である幅方向D2に軸方向が沿うように配置される。固定式円柱体Cの外径は、例えば、水底移動体100によって掘り起こす配管Pの外径よりも大きいことが好ましい。ここで、配管Pにおいて、犠牲陽極等が設けられることによって、配管Pの外周面に段差が生じることがある。固定式円柱体Cの外周面の曲率は、例えば、配管Pにおける前記段差を乗り越えることが可能な程度であることが好ましい。
【0032】
支持部20は、水底移動体100において、移動体移動方向D1に沿って複数設けられている。例えば、本実施形態において、支持部20は、図3及び図4に示すように、水底移動体100において3つ設けられる。このとき、複数の支持部20は、次のように配置される。すなわち、移動体移動方向D1で、水底移動体100の中央より前方側に配置される支持部20の数は、中央より後方側に配置される支持部20の数よりも多くなるように配置される。
例えば、本実施形態において、図3及び図4に示すように、支持部20は、水底移動体100の中央より前方側に2つ配置され、中央より後方側に1つ配置される。これにより、1つの支持部20に付加される配管Pの荷重を均す。
【0033】
規制部30は、幅方向D2における配管Pの支持位置の変化を規制する。規制部30は、例えば、幅方向D2に分散して配置される。具体的には、規制部30は、幅方向D2に沿って一対に設けられる。本実施形態において、規制部30は、図4に示すように、上述のように3つ設けられた支持部20のうち、移動体移動方向D1の両端側に設けられた支持部20の上に延びるように配置される。
配管Pが支持部20の上に位置する時、配管Pは、図4に示すように、一対に設けられた規制部30同士の間に位置する。これにより、配管Pが、幅方向D2において規制部30よりも外側に移動することを抑える。
【0034】
接続部40は、索条体Rが接続される部位である。索条体Rは、水面上の船舶(不図示)が、海底面に位置する水底移動体100をけん引するために用いられる。索条体Rは、例えば、ワイヤーやロープである。水底移動体100は、索条体Rを介して船舶によって引っ張られることで水底Bを移動する。本実施形態において、接続部40は、例えば、支持部20に設けられる。
【0035】
(水底移動体100の移動方向監視システム200)
次に、上述の水底移動体100の移動方向を監視する移動方向監視システム200について、図5及び図6を用いて説明する。図5及び図6は、本実施形態における移動方向監視システム200のハードウェア構成の一例を示す図である。移動方向監視システム200は、例えば、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとメモリとを備え、プログラムを実行する。移動方向監視システム200は、プログラムの実行によって、水底移動体100の移動方向を監視する装置として機能する。
以下、図5に示す移動方向監視システム200の第1例と、図6に示す移動方向監視システム200の第2例と、についてそれぞれ説明する。
【0036】
(移動方向監視システム200の第1例)
図5を用いて、移動方向監視システム200の第1例について説明する。図5に示すように、移動方向監視システム200の第1例は、検出部210と、送信部220と、移動方向監視部230と、を備える。第1例において、図5に示す構成Xは、水底移動体100に設けられる。構成Xは、図5に示すように、検出部210と、送信部220と、を含む。つまり、検出部210と送信部220とは、水底移動体100に設けられる(詳細は後述する)。
検出部210は、水底移動体100に対する配管Pの幅方向D2の位置を幅方向位置情報として検出する。検出部210は、例えば、感圧センサである。検出部210は、水底移動体100のうち、例えば、支持部20又は規制部30に設けられる。
【0037】
検出部210が支持部20に設けられる場合、検出部210におけるどの部位で圧力を検知したかを把握することで、配管Pが支持部20のうちどの部位に接しているかを検出する。検出部210が、支持部20と配管Pとが接している位置が幅方向D2にずれたことを検知することで、水底移動体100の移動方向を修正すべきか否かを判断可能とする。
検出部210が規制部30に設けられる場合、一対に設けられた規制部30のいずれかに配管Pが接触したことを検知することで、水底移動体100の移動方向を修正すべきか否かを判断可能とする。
【0038】
送信部220は、例えば、検出部210が検出した幅方向位置情報を移動方向監視部230に送信する。送信部220には、例えば、公知の送信器が用いられる。送信部220は、水底移動体100のうち任意の箇所に設けられる。送信部220は、例えば、水底移動体100のうち、水底Bと接しない部位や、配管Pと接しない部位に設けられることが好ましい。
【0039】
移動方向監視部230は、例えば、送信部220から送信された幅方向位置情報に基づいて接地部10の移動方向を監視する。移動方向監視部230は、例えば、送信部220から送信された幅方向位置情報に基づいて、水底移動体100の移動方向を修正する修正情報を生成する。
【0040】
修正情報は、例えば、水底移動体100を引っ張る船舶を操縦する作業者に対して、水底移動体100の移動方向を修正すべき旨を伝える音声や文字による表示である。修正情報は、例えば、水底移動体100を引っ張る船舶が自動操縦である場合、船舶の制御装置に対して移動方向を修正すべき旨を伝えるための情報であってもよい。
【0041】
(移動方向監視システム200の第2例)
図6を用いて、移動方向監視システム200の第2例について説明する。なお、第2例については、第1例における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0042】
図6に示すように、移動方向監視システム200の第2例は、第1例に係る各構成に加えて、水底移動体位置測位部240を備える点で、第1例と相違する。なお、水底移動体位置測位部240は、図6に示すように、構成Xに含まれる。つまり、水底移動体位置測位部240は、水底移動体100に設けられる。水底移動体位置測位部240は、水底移動体100のうち任意の箇所に設けられる。水底移動体位置測位部240は、例えば、水底移動体100のうち、水底Bと接しない部位や、配管Pと接しない部位に設けられることが好ましい。
【0043】
水底移動体位置測位部240は、水底移動体100の水底Bにおける位置を測位する。水底移動体位置測位部240は、例えば、公知のUSBL水中測位システム(Ultra Short Base Line)のトランスポンダーである。水底移動体位置測位部240は、例えば、水底移動体100の水底Bにおける位置を示す水底移動体位置情報を、移動方向監視部230に送信する。このとき、移動方向監視部230は、例えば、USBL水中測位システムのトランシーバーの機能を含むことが好ましい。
【0044】
移動方向監視システム200の第2例において、移動方向監視部230は、配管Pの水底Bにおける位置を示す配管位置情報と、水底移動体位置測位部240が測位した水底移動体位置情報と、に基づいて水底移動体100の移動方向を修正する修正情報を生成する。
ここで、配管位置情報は、例えば、事前の測量によって得られた、水底Bに埋設された配管Pの平面位置データである。移動方向監視部230は、例えば、予め測量によって得られた配管位置情報に、水底移動体位置測位部240によって測位された水底移動体位置情報を加算することで、水底Bにおける正確な配管Pの位置を算出する。
【0045】
水底移動体100が配管Pの下に位置する時、上述のように、配管Pは、一対に設けられた規制部30同士の間に位置する。これにより、水底移動体100は、水底Bにおいて、実際に配管Pが位置する場所に位置する。したがって、このような位置にある水底移動体100が測位する水底移動体位置情報を、配管位置情報に加算することで、水底Bにおける正確な配管Pの位置を算出可能であることが明らかである。
【0046】
移動方向監視システム200の第2例において、移動方向監視部230は、例えば、送信部220から送信された幅方向位置情報に加えて、上述のようにして算出された水底Bにおける正確な配管Pの位置の情報に基づいて、水底移動体100の移動方向を修正する修正情報を生成する。
【0047】
(配管Pの掘り起こし方法)
次に、上述の水底移動体100を用いた配管Pの掘り起こし方法について、図7及び図8を用いて説明する。本実施形態に係る配管Pの掘り起こし方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、を備える。
第1工程は、配管Pの上に堆積した土砂を取り除く工程である。第1工程には、例えば、公知の掘削機(不図示)によって行われる。第1工程では、例えば、掘り起こす配管P全体の上に堆積した土砂を取り除く。第1工程では、後述する第2工程において水底Bから取り出される配管Pの一部の上に堆積した土砂のみ取り除いてもよい。
【0048】
第2工程は、配管Pの一部を水底Bから取り出し、支持部20の上に配置する工程である。第2工程では、例えば、配管Pの一部を不図示の作業機等によって水底Bから持ち上げ、支持部20の上に移動させることで、配管Pを支持部20の上に配置する。
第2工程では、例えば、配管Pの下に海底移動体及び支持部20が入り込ませるようにして、配管Pを支持部20の上に配置してもよい。この場合は、第1工程において配管Pの一部の周囲の土砂を取り除く際、配管Pの下側の土砂を取り除くことによって、配管Pの下に海底移動体及び支持部20が入り込める込める領域を作ることが好ましい。
【0049】
第3工程は、水底移動体100を、配管Pが埋設された方向に沿って移動させる工程である。この時、水底移動体100は、例えば、索条体Rを介して、不図示の船舶によって引っ張られることで移動する。上述の移動方向監視システム200は、第3工程の際に用いられる。これにより、水底移動体100を配管Pが埋設された方向に沿って正確に移動させることに寄与する。
上記各工程により、配管Pは掘り起こされる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る水底移動体100によれば、支持部20は、接地部10より上方に配置される。支持部20は、配管Pを下方から支持する。これにより、例えば、配管Pの一部が海底から掘り起こされ、掘り起こされた配管Pの一部が支持部20によって下方から支持された状態で、水底移動体100が配管Pの埋設された方向に沿って移動すると、埋設された配管Pが支持部20によって押し上げられるように力が作用する。これにより、水底移動体100の移動に伴って、水底Bから配管Pが持ち上げられるようにして掘り起こされる。したがって、例えば、水底Bに埋設された配管Pの周辺の土砂を浚渫する浚渫装置や配管Pの把持と把持解除を繰り返すグリッパを水底移動体100に備える場合と比較して、簡素な構成で水底移動体100を得ることができる。また、例えば、グラブ浚渫船による掘削作業や水ジェットや水中ポンプを利用した浚渫作業を省略することか可能であるため、大規模な作業船を不要としたり、回収した土砂の運搬や処分を別途行うことを不要としたりすることができる。
このように、本発明によれば、簡素な構造で配管Pを水底面BS上に露出させることができる水底移動体100を提供することができる。
【0051】
また、水面上の船舶がけん引する索条体Rが接続される接続部40を更に備える。これにより、水底移動体100を水面上の船舶によってけん引することができる。よって、水底移動体100が自走するための動力を備えることを不要とすることができる。よって、水底移動体100をより簡素な構造とすることができる。
【0052】
また、接地部10は、水底面BSを滑動する滑動面10Sを備えている。これにより、水底移動体100は、水底面BSを滑るようにして移動することができる。よって、例えば、接地部10が車輪やクローラ等である場合と比較して、水底移動体100を簡素な構造とすることができる。
【0053】
ここで、例えば、支持部20が、中心軸を回転中心として回転する円柱体を備える場合、支持部20が固定式円柱体Cを備える場合と比較して、例えば、配管Pと支持部20との摩擦抵抗を抑えることができる。よって、例えば、配管Pを円滑に掘り起こすことができる、配管Pの損傷を抑えることができる等の効果が見込まれる。
しかしながら、支持部20が回転する円柱体を備える場合、海底の土砂が回転部に侵入することによって回転不可となる、回転軸がこじれるような想定外の偏荷重が生じる、等の副次的な課題が生じる。
この発明によれば、支持部20は、平面視で移動体移動方向D1と直交する幅方向D2に軸方向が沿う固定式円柱体Cを備える。支持部20は、固定式円柱体Cの外周面で配管Pを支持する。支持部20が固定式円柱体Cを備えることで、配管Pの回収について大きな影響を及ぼすことなく、上述の副次的な課題が生じることを抑えることができる。また、支持部20が回転する円柱体を備える場合に比べて、可動部の数を抑制できるため、水底移動体100を簡素な構造とすることができる。
【0054】
また、支持部20が移動体移動方向D1に沿って複数設けられている。これにより、配管Pを下方から持ち上げるように掘り起こす際の荷重を複数の支持部20に分散させることができるため、支持部20の1つに付加される配管Pの荷重を小さくすることができる。したがって、例えば、配管Pと支持部20との間に生じる摩擦抵抗を小さくすることができる。よって、配管Pを円滑に掘り起こすことができる。
【0055】
ここで、水底移動体100によって水底Bに埋設された配管Pを掘り起こす際、水底移動体100においては、移動体移動方向D1で中央より前方側に配置される支持部20に特に大きな荷重が付加される。本発明によれば、移動体移動方向D1で中央より前方側に配置される支持部20の数は、中央より後方側に配置される支持部20の数よりも多いので、複数の支持部20の前後の配置密度を荷重の大小に応じたものとすることができ、複数の支持部20のそれぞれが分担する荷重を均すことができる。
【0056】
また、平面視で移動体移動方向D1と直交する幅方向D2に分散して配置されて、幅方向D2における配管Pの支持位置の変化を規制する一対の規制部30を更に備える。これにより、例えば、水底移動体100の移動に伴って、支持部20と配管Pとの接点が幅方向D2にずれることを抑えることができる。よって、水底移動体100の移動方向が配管Pの埋設経路に沿う方向からずれた場合でも、支持部20により配管Pを適切に支持できる。
【0057】
また、検出部210によって、水底移動体100に対する配管Pの幅方向D2の位置を幅方向位置情報として検出する。移動方向監視部230によって、幅方向位置情報に基づいて接地部10の移動方向を監視する。これにより、水底移動体100に対する配管Pの幅方向D2の位置が適正な位置からずれた場合に、接地部10の移動方向が不適切であることを把握できるため、水底移動体100を、配管Pが埋設された方向に沿って正確に移動させるための対策を取ることができる。
【0058】
また、移動方向監視部230は、配管Pの水底Bにおける位置を示す配管位置情報と、水底移動体位置測位部240が測位した水底移動体100の水底Bにおける位置を示す水底移動体位置情報と、に基づいて水底移動体100の移動方向を修正する修正情報を生成する。これにより、水底移動体100に対する配管Pの幅方向D2の位置が適正な位置からずれた場合に、配管位置情報が示す配管Pの位置に移動体が適正に位置するように、修正情報に基づいて水底移動体100の移動方向を修正することで配管Pが埋設された方向に沿って水底移動体100を移動させることができる。よって、更に配管Pを効率的に掘り起こすことができる。
【0059】
また、第2工程で配管Pの一部が支持部20によって下方から支持された状態で、第3工程で水底移動体100が配管Pの埋設された方向に沿って移動すると、埋設された配管Pが支持部20によって押し上げられるように力が作用する。これにより、水底移動体100の移動に伴って、水底Bから配管Pが持ち上げられるようにして掘り起こされる。したがって、例えば、水底Bに埋設された配管Pの周辺の土砂を浚渫する浚渫装置や配管Pの把持と把持解除を繰り返すグリッパを水底移動体100に備える場合と比較して、簡素な構成で水底移動体100を得ることができる。また、例えば、グラブ浚渫船による掘削作業や水ジェットや水中ポンプを利用した浚渫作業を省略することが可能であるため、大規模な作業船を不要としたり、回収した土砂の運搬や処分を別途行うことを不要としたりすることができる。このように、本発明の態様10によれば、簡素な構造で配管Pを水底面BS上に露出させることができる配管Pの掘り起こし方法を提供することができる。
更に、第1工程において配管Pの上に堆積した土砂を予め取り除くことで、第3工程で配管Pを持ち上げて水底面BS上に露出させる際に配管Pの両脇に移動する土砂の量を抑制することができる。したがって、例えば、水底B土砂の汚濁巻上げや拡散を抑えることができ、環境への負荷の低減を図ることができる。
【0060】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態において掘り起こされる対象は、配管Pに限らない。例えば、本実施形態に係る水底移動体100は、海底ケーブルを掘り起こす為に用いられてもよい。
また、上述した移動方向監視システム200を用いずに、配管Pをガイドとして水底移動体100を移動させてもよい。具体的には、水底移動体100の移動中に、水底移動体100に設けられた一対の規制部30が配管Pに接触することで、水底移動体100の移動方向が配管Pによって案内されるようにして、水底移動体100を移動させてもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 接地部
10S 滑動面
20 支持部
30 規制部
40 接続部
100 水底移動体
200 移動方向監視システム
210 検出部
220 送信部
230 移動方向監視部
240 水底移動体位置測位部
B 水底
BS 水底面
C 固定式円柱体
D1 移動体移動方向
D2 幅方向
P 配管
R 索条体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8