(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101719
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】回転子、および、回転電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 1/22 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
H02K1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005799
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梅田 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】池見 健
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601DD01
5H601DD11
5H601GA15
5H601GA40
5H601JJ05
(57)【要約】
【課題】複数の鉄心ブロックの間における位相差を組立工程において容易に生じさせることができると共に、動作中に鉄心ユニットが回転軸に対して周方向にずれるのを抑制できる回転子、および、回転電気機械を提供する。
【解決手段】回転子は、回転軸と回転軸によって支持される複数の鉄心ブロックとを備える。回転軸は、周方向に並ぶ複数の歯部を含む。複数の鉄心ブロックの各々は、複数の歯部とそれぞれ噛み合う複数の凹部を含む。複数の鉄心ブロックは、隣接する一方の鉄心ブロックの複数のS極磁石の各々が隣接する他方の鉄心ブロックのいずれかのN極磁石と周方向に重なるように互いに位相がずらされた状態で、回転軸にスプライン結合されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸によって支持される鉄心ユニットであって、前記回転軸の軸方向に積層される複数の鉄心ブロックを含む鉄心ユニットと、
を備え、
前記複数の鉄心ブロックの各々は、
鉄心と、
周方向に交互に並ぶようにして前記鉄心に配置される複数のS極磁石および複数のN極磁石と、
を含み、
前記回転軸は、前記周方向に並ぶ複数の歯部を含み、
前記複数の鉄心ブロックの各々は、前記複数の歯部とそれぞれ噛み合う複数の凹部を含み、
前記複数の鉄心ブロックは、隣接する一方の前記鉄心ブロックの前記複数のS極磁石の各々が隣接する他方の前記鉄心ブロックのいずれかの前記N極磁石と前記周方向に重なるように互いに位相がずらされた状態で、前記回転軸にスプライン結合されている
回転子。
【請求項2】
各々の前記鉄心ブロックにおける前記複数の凹部の個数は、各々の前記鉄心ブロックにおける前記複数のS極磁石および前記複数のN極磁石の合計の個数とは異なる
請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
前記鉄心ユニットは、隣接する前記S極磁石と前記N極磁石の間に形成される磁石境界の周方向位置が、隣接する2つの前記鉄心ブロックの間で異なるスキュー構造を有する
請求項1または2に記載の回転子。
【請求項4】
前記複数の鉄心ブロックの各々は、前記鉄心と前記回転軸とに連結される連結部材をさらに含み、
前記複数の凹部は、各々の前記連結部材に形成される
請求項1または2に記載の回転子。
【請求項5】
前記複数の歯部の各々は、前記軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて周方向長さが長くなるように構成され、
前記鉄心ユニットを構成する前記軸方向に並ぶ複数の前記凹部である凹部群は、前記軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて周方向長さが長くなるように構成される
請求項1または2に記載の回転子。
【請求項6】
前記複数の歯部の各々は、前記軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて径方向長さが短くなるように構成され、
前記鉄心ユニットを構成する前記軸方向に並ぶ複数の前記凹部である凹部群は、前記軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて径方向長さが短くなるように構成される
請求項1または2に記載の回転子。
【請求項7】
前記複数の鉄心ブロックは互いに同じ形状を呈する
請求項1または2に記載の回転子。
【請求項8】
請求項1または2に記載の回転子と、
前記回転子よりも径方向の外側に設けられる固定子と
を備える回転電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転子、および、回転電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電気機械に組込まれる回転子が知られている。例えば、特許文献1では、車両用モータとして使用される回転電気機械に搭載された回転子が開示される。回転子は、回転軸が篏合される回転子コアと、回転子コアに設けられる複数の磁石とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の知見によれば、回転子コアが軸方向に並ぶ複数のコアブロックによって形成され、かつ、隣接するコアブロックの間で磁石の配置を変えれば、回転子全体の周囲における磁束の分布は、磁石の配置を変えない場合に比べて、周方向においてより均等になる。その結果、複数のコアブロックにより形成される回転子コアにおけるトルクは、周方向においてより均等になり、トルクリップルが抑制される。こういった回転子の組立は容易に行われることが好ましい。また、回転子の動作時に回転子コアが回転軸に対して周方向にずれるのを抑制することが好ましい。
【0005】
本開示の目的は、複数の鉄心ブロックの間における位相差を組立工程において容易に生じさせることができると共に、動作中に鉄心ユニットが回転軸に対して周方向にずれるのを抑制できる回転子、および、回転電気機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る回転子は、
回転軸と、
前記回転軸によって支持される鉄心ユニットであって、前記回転軸の軸方向に積層される複数の鉄心ブロックを含む鉄心ユニットと、
を備え、
前記複数の鉄心ブロックの各々は、
鉄心と、
周方向に交互に並ぶようにして前記鉄心に配置される複数のS極磁石および複数のN極磁石と、
を含み、
前記回転軸は、前記周方向に並ぶ複数の歯部を含み、
前記複数の鉄心ブロックの各々は、前記複数の歯部とそれぞれ噛み合う複数の凹部を含み、
前記複数の鉄心ブロックは、隣接する一方の前記鉄心ブロックの前記複数のS極磁石の各々が隣接する他方の前記鉄心ブロックのいずれかの前記N極磁石と前記周方向に重なるように互いに位相がずらされた状態で、前記回転軸にスプライン結合されている。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る回転電気機械は、
上記回転子と、
前記回転子よりも径方向の外側に設けられる固定子と
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の鉄心ブロックの間における位相差を組立工程において容易に生じさせることができると共に、動作中に鉄心ユニットが回転軸に対して周方向にずれるのを抑制できる回転子、および、回転電気機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る回転電気機械の概略図である。
【
図3】一実施形態に係る鉄心ユニットの複数の磁石の概略図である。
【
図5】一実施形態に係る鉄心ユニットの概略図である。
【
図6】一実施形態に係る回転子の組立工程を示す概略図である。
【
図7】
図6に続く、回転子の組立工程を示す概略図である。
【
図8】他の実施形態に係る鉄心ユニットを示す概略図である。
【
図9】他の実施形態に係る回転子を示す概略図である。
【
図10】他の実施形態に係る別の回転子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0011】
<1.回転電気機械1の概要>
図1は、本開示の一実施形態に係る回転子30を備えた回転電気機械1の概略図である。回転子30は回転軸5を備えており、回転軸5は外部機器7に連結される。外部機器7は回転軸5と継手を介して連結されてもよいし、歯車を介して連結されてもよい。本実施形態では、外部機器7は車両であり、回転電気機械1は車両用モータである。そして、回転軸5が外部機器7のドライブシャフトに継手を介して連結されている。
【0012】
以下の説明では、回転軸5の軸方向を単に「軸方向」という場合がある。また、軸方向を基準とした周方向および径方向を、それぞれ単に「周方向」および「径方向」という場合がある。
【0013】
回転電気機械1は、ハウジング9と、ハウジング9によって回転可能に支持される回転子30とを備える。回転子30は、一対のベアリングB1を介してハウジング9に連結される回転軸5と、回転軸5によって支持される鉄心ユニット40とを備える。本実施形態の鉄心ユニット40は、軸方向に積層される複数の鉄心ブロック45を含み、各鉄心ブロック45に、周方向に並ぶ複数の磁石37が配置されている。各鉄心ブロック45は回転軸5にスプライン結合されている(詳細は後述する)。従って、鉄心ユニット40は回転軸5と共に回転するようになっている。
【0014】
回転電気機械1は、ハウジング9に固定される固定子20をさらに備える。回転子30よりも径方向の外側に配置される固定子20は、ステータコア25と、ステータコア25に設けられる複数のステータ磁石29と、ステータコア25に巻かれたステータコイル27とを含む。ステータコイル27は、電力系統6に電気的に接続されている。
【0015】
モータとしての回転電気機械1は、電力系統6からの電力の供給によって、外部機器7を駆動する。より具体的には、ステータコイル27において電流が流れることで発生する回転磁界によって、回転子30が回転軸5と共に回転する。これにより、回転軸5から外部機器7にトルクが伝達されて、外部機器7は駆動される。
【0016】
<2.回転子30の構成の詳細>
図2は、本開示の一実施形態に係る回転子30の概略図である。
図3は、本開示の一実施形態に係る鉄心ユニット40の概略図である。
【0017】
回転子30の構成要素である上述の鉄心ユニット40は、軸方向に積層された複数の鉄心ブロック45を含み、各鉄心ブロック45は回転軸5によって支持される。各鉄心ブロック45は、鉄心32と、周方向に並ぶようにして鉄心32に配置される複数の磁石37とを含む。各々の鉄心32は、軸方向に積層された電磁鋼板によって構成されてもよいし、軸方向に延在する圧粉磁心によって構成されてもよいし、または、これらの組み合わせによって構成されてもよい。複数の磁石37は、周方向に交互に並ぶようにして配置される複数のS極磁石37SおよびN極磁石37Nである。なお、鉄心ユニット40を構成する複数の磁石37はいずれも、互いに同じ周方向長さを有する。
【0018】
鉄心ユニット40を構成する磁石37の総数は、1つ当たりの鉄心ブロック45に配置されるS極磁石37SおよびN極磁石37Nの合計数に、鉄心ブロック45の個数を乗じた値である。
図2で一例として図示される実施形態では、鉄心ブロック45の個数は3個であり、各鉄心ブロック45における磁石37の個数は4個である。従って、磁石37の総数は12個である。
【0019】
本実施形態では、複数の鉄心ブロック45のうちで少なくとも軸方向に隣接する2つの鉄心ブロック45の間では、磁石37の配置が異なる。より詳細には、隣接する一方の鉄心ブロック45を構成する複数のS極磁石37Sは各々、隣接する他方の鉄心ブロック45を構成する複数のN極磁石37Nとのいずれかと周方向に重なる。ここで、特定のS極磁石37Sと特定のN極磁石37Nが周方向に重なるとは、S極磁石37Sが配置される周方向範囲の少なくとも一部が、N極磁石37Nが配置される周方向範囲と重なることである。以下、隣接する2つの鉄心ブロック45が有する上述のような磁石配置の関係を、「磁石の配置ずれの関係」と表記する場合がある。
【0020】
中央の鉄心ブロック45は、両側にある各々の鉄心ブロック45と、磁石の配置ずれの関係を有する。また、3個の鉄心ブロック45のうち隣接する任意の2つの鉄心ブロック45において、S極磁石37SとN極磁石37Nとの周方向における重なり量(
図3の寸法P)はいずれも等しい。本例の寸法Pは、各磁石37の周方向長さの半分である。
【0021】
本実施形態では、両側にある2つの鉄心ブロック45も、互いに磁石の配置ずれの関係にある。より詳細には、一方の鉄心ブロック45が有する各々のS極磁石37Sが配置される周方向範囲は、他方の鉄心ブロック45が有する各々のN極磁石37Nが配置される周方向範囲と一致する。
【0022】
図2で例示されるように、回転軸5は、複数の鉄心ブロック45の各々の中央部に形成された差込孔50に差し込まれている。
図2では一例として、差込孔50が各々の鉄心32の中央部に形成されている。本実施形態では、回転軸5と複数の鉄心ブロック45はスプライン結合する。スプライン結合を実現するための構成は、
図1~
図3では省略されており、
図4、
図5などを用いて後述する。
【0023】
なお、
図2で示される回転子30は、鉄心32の外周面に複数の磁石37が設けられる表面磁石型(SPM;Surface Permanent Magnet)の構成を有するが、本開示はこれに限定されない。他の例に係る回転子30は、複数の磁石37が鉄心32に埋め込まれる埋込磁石型(IPM;Interior Permanent Magnet)の構成を有してもよい。本稿では詳細な図示を省略する。
【0024】
<3.回転軸5と鉄心ブロック45のスプライン結合>
図4は、本開示の一実施形態に係る回転軸5の概略図である。
図5は、本開示の一実施形態に係る鉄心ユニット40の概略図である。回転軸5と各鉄心ブロック45とのスプライン結合は、回転軸5に設けられる複数の歯部70(
図4参照)と、各鉄心ブロック45に設けられる複数の凹部80(
図5参照)とが噛み合うことで実現される。詳細は以下の通りである。
【0025】
図4で例示されるように、回転軸5は、外周面15と、外周面15において周方向に等間隔に並ぶ複数の歯部70を含む。各歯部70は、回転軸5の軸方向長さの全長に亘って形成される(
図7参照)。
図5で例示されるように、複数の凹部80は、各々の鉄心ブロック45に設けられる。より具体的な一例として、差込孔50を規定する内周面51が各鉄心32に形成されており、この内周面51に複数の凹部80が形成されている。凹部80の個数は歯部70の個数と同じであり、凹部80のピッチと歯部70のピッチも同じである。複数の歯部70は、各鉄心ブロック45における複数の凹部80とそれぞれ噛み合っている。これにより、回転軸5と各鉄心ブロック45とのスプライン結合は実現される。
【0026】
鉄心ユニット40には上述した磁石の配置ずれの関係がある。従って、複数の鉄心ブロック45は、少なくとも軸方向に隣接する2つの鉄心ブロック45が磁石の配置ずれの関係を有するように互いに位相がずらされた状態で、回転軸5にスプライン結合されている。
【0027】
本実施形態では、複数の鉄心ブロック45は互いに同じ形状を呈する。即ち、複数の凹部80と複数の磁石37との周方向における位置関係は、どの鉄心ブロック45においても同じである。従って、鉄心ユニット40の組立前に磁石37の配置が周方向に揃うようにして鉄心ブロック45を軸方向に並べた場合(
図6の上段参照)、複数の凹部80が配置される周方向範囲は、どの鉄心ブロック45においても同じである。
【0028】
<4.回転子30の組立方法>
図6は、本開示の一実施形態に係る回転子30の組立工程を示す概略図である。
図7は、
図6に続く、回転子30の組立工程を示す概略図である。本開示の一実施形態に係る回転子30の組立方法は、以下の通りである。
【0029】
はじめに、
図6の上段で示すように、複数の鉄心ブロック45を軸方向に並べる。このとき、複数の鉄心ブロック45の位相は互いに揃えられていてもよい。つまり、磁石37の配置が周方向に揃うよう複数の鉄心ブロック45は軸方向に並べられてもよい。
【0030】
その後、いずれかの鉄心ブロック45の位相を複数の凹部80の1ピッチ分ずらすことで、軸方向に隣接する2つの鉄心ブロック45の間で磁石の配置ずれの関係を作る(
図6の下段参照)。凹部80の1ピッチ分のずらし量は、
図5、および、
図6下段の寸法Pに該当する。磁石の配置ずれの関係が作られたときも、複数の凹部80が配置される周方向範囲は、どの鉄心ブロック45においても同じである。
【0031】
さらにその後、回転軸5が各鉄心ブロック45の差込孔50に差し込まれる(
図7参照)。これにより、回転軸5は各鉄心ブロック45とスプライン結合され、回転子30が組み上がる。上記組立は、作業者によって行われてもよいし、作業者が操作するロボットアームによって行われてもよいし、または、これらの組み合わせによって行われてもよい。また、複数の鉄心ブロック45の間でつける位相差は、凹部80の2ピッチ分または3ピッチ分などであってもよい。
【0032】
以上説明した回転子30の構成によれば、回転軸5と鉄心ユニット40とがスプライン結合するので、回転子30の動作中に鉄心ユニット40が回転軸5に対して周方向にずれるのを抑制できる。また、回転子30の組立工程では、隣接する2つの鉄心ブロックの間で位相差が生じる状態で回転軸5を複数の鉄心ブロック45に差し込みさえすれば、回転子30と鉄心ユニット40とをスプライン結合させることができる。以上より、複数の鉄心ブロック45の間における位相差を組立工程において容易に生じさせることができると共に、動作中に鉄心ユニット40が回転軸5に対して周方向にずれるのを抑制できる回転子30(回転電気機械1)が実現される。
【0033】
<5.回転子30の追加的な構成>
図5で示す通り、各鉄心ブロック45における複数の凹部80の個数は、各々の鉄心ブロック45における複数の磁石37の個数とは異なってもよい。上記構成によれば、回転子30の組立工程において、複数の凹部80と複数の歯部70とを噛み合わせることで、互いに隣接する2つの鉄心ブロック45の間で位相差をつけることができる。
同図の例では、各鉄心ブロック45における複数の凹部80の個数は、各々の鉄心ブロック45における複数の磁石37の個数よりも多い。一例として凹部80の個数は8個であり、各鉄心ブロック45における複数のS極磁石37Sおよび複数のN極磁石37Nの合計の個数は4個である。回転子30の組立工程において、互いに隣接する2つの鉄心ブロック45の間でつけることができる位相差は、複数の凹部80のピッチに自然数を乗じた値である。上記構成によれば、凹部80の個数が増えるので、凹部80のピッチを小さくできる。従って、回転子30の組立工程において、隣接する鉄心ブロック45の間における位相差(
図6の下段で示す寸法P)をより微細に調整できる。
【0034】
図3で示す通り、鉄心ユニット40は、隣接するS極磁石37SとN極磁石37Nの間に形成される磁石境界37Bの周方向位置が、軸方向に隣接する2つの鉄心ブロック45の間で異なるスキュー構造を有してもよい。上記構成によれば、回転子30全体の周囲における磁束の分布を周方向においてより均等化することができる。従って、モータとしての回転電気機械1は出力トルクの脈動を抑制できる。
【0035】
また、複数の鉄心ブロック45は互いに同じ形状を呈してもよい。上記構成によれば、鉄心ブロック45の量産性を向上させることができる。なお、このような実施形態では、複数の凹部80と複数の磁石37との周方向における位置関係は、どの鉄心ブロック45においても同じである。
【0036】
<6.本開示の他の実施形態>
図8は、本開示の他の実施形態に係る鉄心ユニット40Aの概略図である。鉄心ユニット40Aの各鉄心ブロック45Aは、鉄心32と回転軸5とに連結される連結部材60を備える。連結部材60は軸方向に延在する円筒状であり、鉄心32に形成される篏合孔33に圧入されている。連結部材60は一例として磁性を有する金属材料によって形成され、より具体的には鉄を成分として含む金属材料によって形成される。
図8の例では、差込孔50は連結部材60に形成されている。即ち、連結部材60に設けられた内周面51に、上述の複数の凹部80が形成されている。上記構成によれば、凹部80を形成するための加工を鉄心32に施す必要がないので、鉄心32の損傷を回避できる。これにより、鉄心32の損傷に起因した鉄心32の廃棄を抑制でき、回転子30のコスト増大を抑制できる。
【0037】
図9は、本開示の他の実施形態に係る回転子30Aを示す概略図である。回転子30Aは、回転軸5Aと、複数の鉄心ブロック45Bとを備える。回転軸5Aを構成する複数の歯部70Aの各々は、軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて周方向長さが徐々に長くなるテーパ形状を呈する。
【0038】
また、各々の鉄心ブロック45Bを構成する複数の凹部80Aは、軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて周方向長さが徐々に長くなるテーパ形状を呈する。さらに、凹部80Aの形状は複数の鉄心ブロック45Bの間で異なる。より具体的には、鉄心ユニット40Aを構成する軸方向に並んだ凹部80Aである凹部群88は、軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて周方向長さが徐々に長くなるテーパ形状を呈する。
【0039】
図9の例では、回転子30Aの組立工程において、回転軸5Aを軸方向の他方側から一方側へ移動させながら差込孔50に差し込むことで、複数の歯部70Aを、各鉄心ブロック45Bの複数の凹部80Aに嵌める。このとき、軸方向の他方側において凹部80Aの周方向長さは比較的長いので、歯部70Aを凹部80Aに差し込む作業が容易である。従って、複数の歯部70Aと複数の凹部80Aとの接触を回避でき、回転子30Aの組立性は向上する。
【0040】
図10は、本開示の他の実施形態に係る回転子30Bを示す概略図である。回転子30Bは、回転軸5Bと、複数の鉄心ブロック45Cを含む鉄心ユニット40Cとを備える。回転軸5Bを構成する複数の歯部70Bの各々は、軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて径方向長さ(高さ)が徐々に短くなるテーパ形状を呈する。
【0041】
また、各々の鉄心ブロック45Cを構成する複数の凹部80Bは、軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて径方向長さ(深さ)が徐々に短くなるテーパ形状を呈する。さらに、凹部80Bの形状は複数の鉄心ブロック45Cの間で異なる。より具体的には、鉄心ユニット40を構成する軸方向に並んだ凹部80Bである凹部群188は、軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて径方向長さが徐々に短くなるテーパ形状を呈する。
【0042】
図10の例では、回転子30Bの組立工程において、回転軸5Bを軸方向の他方側から一方側へ移動させながら差込孔50に差し込むことで、複数の歯部70Bを、各鉄心ブロック45Cの複数の凹部80Bに嵌める。このとき、軸方向の他方側において凹部80Bの径方向長さは比較的短いので、歯部70Bを凹部80Bに差し込む作業が容易である。従って、複数の歯部70Bと複数の凹部80Bとの接触を回避でき、回転子30Bの組立性は向上する。
【0043】
<7.その他>
回転電気機械1は、磁気ギア電気機械であってもよい。この場合、回転電気機械1は、回転子30に対して相対的に回転するように構成される磁極片回転子をさらに備える。磁極片回転子は、複数の磁石37と複数のステータ磁石29との間において周方向に並ぶ複数の磁極片と、各磁極片の軸方向における両端を支持する一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートが固定される磁極片回転軸とを含む。一対のエンドプレートは回転子30の軸方向の両側に配置される。また、磁極片回転軸は、回転軸5と同軸になるように配置され、かつ、回転軸5に代えて外部機器7に連結される。上記構成を有する磁気ギア電気機械は、電力系統6からの電力の供給によって外部機器7を駆動する磁気ギアモータであってもよいし、外部機器7から入力されるトルクによってステータコイル27から電力系統6へ電力を供給する磁気ギア発電機であってもよい。
【0044】
<8.まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0045】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転子(30,30A,30B)は、
回転軸(5,5A,5B)と、
前記回転軸によって支持される鉄心ユニットであって、前記回転軸の軸方向に積層される複数の鉄心ブロック(45,45A,45B,45C)を含む鉄心ユニット(40,40A,40C)と、
を備え、
前記複数の鉄心ブロックの各々は、
鉄心(32)と、
周方向に交互に並ぶようにして前記鉄心に配置される複数のS極磁石(37S)および複数のN極磁石(37N)と、
を含み、
前記回転軸は、前記周方向に並ぶ複数の歯部(70,70A,70B)を含み、
前記複数の鉄心ブロックの各々は、前記複数の歯部とそれぞれ噛み合う複数の凹部(80,80A,80B)を含み、
前記複数の鉄心ブロックは、隣接する一方の前記鉄心ブロックの前記複数のS極磁石の各々が隣接する他方の前記鉄心ブロックのいずれかの前記N極磁石と前記周方向に重なるように互いに位相がずらされた状態で、前記回転軸にスプライン結合されている。
【0046】
上記1)の構成によれば、回転軸と鉄心ユニットとがスプライン結合するので、回転子の動作中に鉄心ユニットが回転軸に対して周方向にずれるのを抑制できる。また、回転子の組立工程では、隣接する2つの鉄心ブロックの間で位相差が生じる状態で回転軸を複数の鉄心ブロックに差し込みさえすれば、回転子と鉄心ユニットとをスプライン結合させることができる。以上より、複数の鉄心ブロックの間における位相差を組立工程において容易に生じさせることができると共に、動作中に鉄心ユニットが回転軸に対して周方向にずれるのを抑制できる回転子が実現される。
【0047】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の回転子であって、
各々の前記鉄心ブロックにおける前記複数の凹部の個数は、各々の前記鉄心ブロックにおける前記複数のS極磁石および前記複数のN極磁石の合計の個数とは異なる。
【0048】
上記2)の構成によれば、複数の凹部と複数の歯部とを噛み合わせることで、互いに隣接する2つの鉄心ブロックの間で位相差をつけることができる。
【0049】
3)幾つかの実施形態では、上記1)または2)に記載の回転子であって、
前記鉄心ユニットは、隣接する前記S極磁石と前記N極磁石の間に形成される磁石境界の周方向位置が、隣接する2つの前記鉄心ブロックの間で異なるスキュー構造を有する。
【0050】
上記3)の構成によれば、回転子の周囲における磁束の分布をより均等化することができる。従って、回転子が例えばモータに組込まれる実施形態では、出力トルクの脈動を抑制できる。
【0051】
4)幾つかの実施形態では、上記1)から3)のいずれかに記載の回転子であって、
前記複数の鉄心ブロックの各々は、前記鉄心と前記回転軸とに連結される連結部材(60)をさらに含み、
前記複数の凹部は、各々の前記連結部材に形成される。
【0052】
上記4)の構成によれば、凹部を形成するための加工を鉄心に施す必要がないので、鉄心の損傷を回避できる。これにより、鉄心の損傷に起因した鉄心の廃棄を抑制でき、回転子のコスト増大を抑制できる。
【0053】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から4)のいずれかに記載の回転子であって、
前記複数の歯部の各々は、前記軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて周方向長さが長くなるように構成され、
前記鉄心ユニットを構成する前記軸方向に並ぶ複数の前記凹部である凹部群(88)は、前記軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて周方向長さが長くなるように構成される。
【0054】
上記5)の構成によれば、軸方向の一方側から他方側に向けて回転軸を移動させながら鉄心ユニットに差し込むことで、複数の歯部と複数の凹部との接触を回避できる。回転軸の差し込みが容易になるので、回転子の組立性は向上する。
【0055】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から4)のいずれかに記載の回転子であって、
前記複数の歯部の各々は、前記軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて径方向長さが短くなるように構成され、
前記鉄心ユニットを構成する前記軸方向に並ぶ複数の前記凹部である凹部群(188)は、前記軸方向の一方側から他方側に向かうにつれて径方向長さが短くなるように構成される。
【0056】
上記6)の構成によれば、軸方向の他方側から一方側に向けて回転軸を移動させながら鉄心ユニットに差し込むことで、複数の歯部と複数の凹部との接触を回避できる。回転軸の差し込みが容易になるので、回転子の組立性は向上する。
【0057】
7)幾つかの実施形態では、上記1)から4)のいずれかに記載の回転子であって、
前記複数の鉄心ブロックは互いに同じ形状を呈する。
【0058】
上記6)の構成によれば、鉄心ブロックの量産性を向上させることができる。
【0059】
8)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転電気機械(1)は、
上記1)乃至7)の何れかに記載の回転子(30,30A)と、
前記回転子よりも径方向の外側に設けられる固定子(20)と
を備える。
【0060】
上記8)の構成によれば、上記1)と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0061】
1 :回転電気機械
5,5A :回転軸
20 :固定子
30,30A,30B :回転子
32 :鉄心
37 :磁石
37B :磁石境界
37N :N極磁石
37S :S極磁石
40,40A :鉄心ユニット
45,45A,45B,45C :鉄心ブロック
60 :連結部材
70,70A,70B :歯部
80,80A,80B :凹部
88,188 :凹部群