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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101720
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
H05H1/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005800
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】平山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084BB23
2G084CC14
2G084DD20
2G084DD23
2G084DD42
2G084DD65
2G084DD66
2G084FF02
2G084FF15
2G084FF38
(57)【要約】
【課題】プラズマ処理装置の共振器における電磁波の共振を促進する技術を提供する。
【解決手段】開示されるプラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、上部電極、放出部、及び導波部を含む。基板支持部は、チャンバ内の処理空間内に設けられている。上部電極は、基板支持部の上方に処理空間を介して設けられている。放出部は、プラズマ生成空間に電磁波を放出するように設けられており、チャンバ及び処理空間の中心軸線の周りで周方向に延在する。導波部は、共振器を含み、放出部に電磁波を供給する。共振器は、共振器の導波路の一端を構成する第1の短絡部及び共振器の導波路の他端を構成する第2の短絡部を含む。共振器の導波路の他端は、放出部に電磁的に結合されている。第2の短絡部は、電磁波の周波数において導波路を短絡させる静電容量を有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部において処理空間を提供するチャンバと、
前記処理空間内に設けられた基板支持部と、
前記基板支持部の上方に前記処理空間を介して設けられた上部電極と、
プラズマ生成空間に電磁波を放出するように設けられており、前記チャンバ及び前記処理空間の中心軸線の周りで周方向に延在する、放出部と、
前記放出部に前記電磁波を供給するように構成された導波部と、
を備え、
前記導波部は、導波路を提供する共振器を含み、
前記共振器は、該共振器の前記導波路の一端を構成する第1の短絡部及び該共振器の前記導波路の他端を構成する第2の短絡部を含み、
前記共振器の前記導波路の前記他端は、前記放出部に電磁的に結合されており、
前記第2の短絡部は、前記電磁波の周波数において前記導波路を短絡させる静電容量を有する、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第1の短絡部と前記第2の短絡部との間での前記共振器の共振器長Lは、下記の式(1)を満たし、
nλg/2<L<(n+0.2)λg/2 …(1)
ここで、λgは前記共振器の前記導波路における前記電磁波の波長であり、nは整数である、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第1の短絡部及び前記第2の短絡部の各々は、前記中心軸線の周りで前記周方向に沿って設けられており、
前記共振器の前記導波路は、
前記中心軸線の周りで前記第2の短絡部に向けて前記中心軸線に対して径方向に延びる下部と、
前記下部の上方且つ前記中心軸線の周りで、前記第1の短絡部から前記径方向に対して反対方向に延びる上部と、
を含み、前記中心軸線の周りで前記第1の短絡部から前記第2の短絡部まで蛇行するように前記径方向と前記反対方向とに交互に延びている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第2の短絡部は、誘電体から形成さており、前記下部を構成する上側導体壁と下側導体壁との間に介在する環状の板を含み、
前記環状の板の厚さHは、前記中心軸線が延びる垂直方向における前記下部での前記導波路の長さHよりも小さい、
請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記共振器の前記導波路は、前記上部と前記下部との間に設けられた中間部を含み、
前記垂直方向における前記下部の前記長さHは、前記垂直方向における前記中間部の長さHよりも長い、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記厚さH及び前記長さHは、下記の式(2)を満たし、
【数1】

ここで、εは前記誘電体の比誘電率である、請求項4又は5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記厚さH及び前記長さHは、下記の式(3)を満たし、
【数2】

ここで、εは前記誘電体の比誘電率である、請求項4又は5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記放出部において前記処理空間に露出している領域の径方向の長さは、前記厚さHよりも大きい、請求項4又は5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記電磁波を前記共振器の前記導波路に導入するためのコネクタを更に備え、
前記コネクタは前記上部に結合されている、
請求項3~5の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記中心軸線が延びる垂直方向における前記上部の長さは、前記共振器の前記導波路の他の部分の前記垂直方向における長さよりも長い、請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記コネクタは、前記中心軸線から径方向に離れた位置で前記上部に結合されている、請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記上部電極の下に配置されたシャワープレートを更に備え、
前記放出部は、前記シャワープレートを囲むように延在している、
請求項1~5の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記共振器の前記導波路に電気的に結合されており、その周波数が可変である高周波電力を発生して、前記電磁波を該導波路内に供給するように構成された高周波電源を更に備える、請求項1~5の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置が基板の処理において用いられている。プラズマ処理装置の一種として、VHF波又はUHF波である高周波を用いてガスを励起させるものが知られている。下記の特許文献1は、そのようなプラズマ処理装置を開示している。特許文献1のプラズマ処理装置は、処理容器、ステージ、上部電極、導入部、及び導波部を備える。ステージは、処理容器内に設けられている。上部電極は、ステージの上方に処理容器内の空間を介して設けられている。導入部は、高周波の導入部である。導入部は、空間の横方向端部に設けられており、処理容器の中心軸線の周りで周方向に延在している。導波部は、導入部に高周波を供給するように構成されている。導波部は、導波路を提供する共振器を含む。共振器の導波路は、中心軸線の周りで周方向に延び、中心軸線が延在する方向に延び、導入部に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-92031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ処理装置の共振器における電磁波の共振を促進する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、上部電極、放出部、及び導波部を含む。チャンバは、その内部において処理空間を提供している。基板支持部は、処理空間内に設けられている。上部電極は、基板支持部の上方に処理空間を介して設けられている。放出部は、プラズマ生成空間に電磁波を放出するように設けられており、チャンバ及び処理空間の中心軸線の周りで周方向に延在する。導波部は、放出部に電磁波を供給するように構成されている。導波部は、導波路を提供する共振器を含む。共振器は、該共振器の前記導波路の一端を構成する第1の短絡部及び該共振器の導波路の他端を構成する第2の短絡部を含む。共振器の導波路の他端は、放出部に電磁的に結合されている。第2の短絡部は、電磁波の周波数において導波路を短絡させる静電容量を有する。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、プラズマ処理装置の共振器における電磁波の共振が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を示す図である。
図2】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の共振器及びコネクタを示す部分拡大断面図である。
図3】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の共振器及びコネクタを示す部分拡大平面図である。
図4】別の例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0009】
図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を示す図である。図1に示すプラズマ処理装置1は、チャンバ10、基板支持部12、上部電極14、放出部16、及び導波部18を備えている。
【0010】
チャンバ10は、その内部において処理空間10sを提供している。処理空間10sはプラズマ生成空間を含んでいる。プラズマ処理装置1では、基板Wは、処理空間10sの中で処理される。チャンバ10は、アルミニウムのような金属から形成されており、接地されている。チャンバ10は、側壁10aを有しており、その上端において開口されている。チャンバ10及び側壁10aは、略円筒形状を有し得る。処理空間10sは、側壁10aの内側に提供されている。チャンバ10、側壁10a、及び処理空間10sの各々の中心軸線は、軸線AXである。チャンバ10は、その表面に耐腐食性を有する膜を有していてもよい。耐腐食性を有する膜は、酸化イットリウム膜、酸化フッ化イットリウム膜、フッ化イットリウム膜、酸化イットリウム、又はフッ化イットリウム等を含むセラミック膜であり得る。
【0011】
チャンバ10の底部は、排気口10eを提供している。排気口10eには、排気装置が接続される。排気装置は、ドライポンプ及び/又はターボ分子ポンプのような真空ポンプと自動圧力制御弁を含み得る。
【0012】
基板支持部12は、処理空間10sの中に設けられている。基板支持部12は、その上面の上に載置された基板Wを略水平に支持するように構成されている。基板支持部12は、略円盤形状を有している。基板支持部12の中心軸線は、軸線AXである。
【0013】
上部電極14は、基板支持部12の上方に処理空間10sを介して設けられている。上部電極14は、金属(例えばアルミニウム)のような導体から形成されており、略円盤形状を有している。上部電極14の中心軸線は、軸線AXである。
【0014】
放出部16は、そこから処理空間10sに電磁波を放出するために設けられている。プラズマ処理装置1では、放出部16から処理空間10sに放出される電磁波により、処理空間10s内のガスが励起されて、プラズマが生成される。放出部16から処理空間10sに放出される電磁波は、VHF波又はUHF波のような高周波であり得る。放出部16は、石英、窒化アルミニウム、又は酸化アルミニウムのような誘電体から形成されている。放出部16は、処理空間10sの横方向端部に設けられており、軸線AXの周りで周方向に延在している。放出部16は、環形状を有していてもよい。
【0015】
導波部18は、放出部16に電磁波を供給するように構成されている。電磁波は、後述する高周波電源24によって発生される。電磁波は、導波部18を介して放出部16に伝搬し、放出部16から処理空間10s内に導入される。導波部18は、共振器20を含んでいる。共振器20の詳細については、後述する。
【0016】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、シャワープレート22を更に含んでいてもよい。シャワープレート22は、アルミニウムのような金属から形成されていてもよい。放出部16は、シャワープレート22を囲むように延在している。放出部16及びシャワープレート22は、チャンバ10の上端の開口を閉じるように配置されている。シャワープレート22は、複数のガス孔22hを提供している。複数のガス孔22hは、シャワープレート22の厚さ方向(鉛直方向)に延びており、シャワープレート22を貫通している。
【0017】
シャワープレート22は、上部電極14の下に設けられている。シャワープレート22と上部電極14は、それらの間にガス拡散空間14dを画成している。ガス拡散空間14dの中心軸線は、軸線AXであり得る。ガス拡散空間14dには、シャワープレート22の複数のガス孔22hが接続している。また、上部電極14は、入口14hを提供している。入口14hは、軸線AX上で延在していてもよい。入口14hは、ガス拡散空間14dに接続している。ガス拡散空間14dには、ガス供給部26が接続されている。ガス供給部26から出力されるガスは、入口14h、ガス拡散空間14d、及び複数のガス孔22hを介して処理空間10sに供給される。
【0018】
プラズマ処理装置1は、高周波電源24を更に備えていてもよい。高周波電源24は、共振器20の導波路に電気的に結合されており、その周波数が可変である高周波電力を発生するように構成されている。チャンバ10内に導入される電磁波は、高周波電源24によって発生される高周波電力に基づいて発生する。高周波電源24は、同軸線路28を用いて共振器20の導波路に直結されていてもよい。即ち、高周波電源24は、インピーダンス整合用の整合器を介さずに、共振器20の導波路20wに結合されていてもよい。
【0019】
共振器20は、導波路20wを提供している。導波路20wは、金属のような導体から形成された壁(以下、「導体壁」という)によって囲まれた空洞を提供していてもよい。導波路20wの導体壁は、アルミ合金、銅、ニッケル、又はステンレス等から形成されていてもよく、銀、金、又はロジウム等の低抵抗材料で被覆されていてもよい。
【0020】
共振器20は、第1の短絡部201及び第2の短絡部202を含んでいる。第1の短絡部201は、共振器20の導波路20wの一端を構成している。一実施形態において、第1の短絡部201は、軸線AXの周りで周方向に沿って延在していてもよい。
【0021】
第2の短絡部202は、共振器20の導波路20wの他端を構成している。共振器20の導波路20wの他端は、放出部16に電磁的に結合されている。図1に示す例では、共振器20の導波路20wの他端は、導波部18の導波路18wを介して放出部16に接続されている。導波路18wは、上部電極14とチャンバ10の側壁10aとの間に提供されていてもよく、軸線AXの周りで延在してもよい。導波路18wは、誘電体で埋められていてもよい。
【0022】
第2の短絡部202は、第1の短絡部201と第2の短絡部202との間で電磁波を共振させるために、電磁波の周波数において導波路20wを短絡させる静電容量を有する。一実施形態において、第2の短絡部202は、軸線AXの周りで周方向に沿って設けられていてもよい。
【0023】
第1の短絡部201と第2の短絡部202との間での共振器20の共振器長L(第1の短絡部201と第2の短絡部202とを導波路20wに沿って結んだ距離)は、下記の式(1)を満たしていてもよい。
nλg/2<L<(n+0.2)λg/2 …(1)
式(1)において、λgは、導波路20wにおける電磁波の波長である。また、nは、整数である。第2の短絡部202のリアクタンスは容量性であるので、共振器長Lは、式(1)で表されるように、nλg/2よりも僅かに大きい値に設定され得る。
【0024】
一実施形態において、共振器20の導波路20wは、上部20a及び下部20bを含む層構造を有していてもよい。下部20bは、軸線AXの周りで共振器20の他端の第2の短絡部202に向けて軸線AXに対して径方向に延びている。上部20aは、下部20bの上方且つ軸線AXの周りで、第1の短絡部201から径方向に対して反対方向に延びている。即ち、上部20aは、第1の短絡部201から軸線AXに近付く方向に延びている。導波路20wは、軸線AXの周りで第1の短絡部201から第2の短絡部202まで蛇行するように径方向とその反対方向とに交互に延びている。
【0025】
一実施形態において、導波路20wは、中間部20cを更に含んでいてもよい。中間部20cは、上部20aと下部20bとの間に設けられている。即ち、中間部20cは、上部20aの下、且つ、下部20bの上に設けられている。中間部20cの一端は、上部20aにおける内側の端部、即ち、第1の短絡部201に対して内側の上部20aの端部に接続している。中間部20cの他端は、下部20bにおける内側の端部、即ち、第2の短絡部202に対して内側の下部20bの端部に接続している。中間部20cは、軸線AXの周りで蛇行するように径方向とその反対方向とに交互に延びていてもよい。
【0026】
一実施形態において、第2の短絡部202は、誘電体から形成さており、下部20bを構成する上側導体壁と下側導体壁(図1の例では上部電極14)との間に介在する環状の板であってもよい。電磁波を第1の短絡部201と第2の短絡部202との間で共振させるために、第2の短絡部202は、電磁波に対して下部20bにおける導波路20wの特性インピーダンスよりも低いインピーダンスを有しており、したがって、大きな静電容量を有する。このため、第2の短絡部202を構成する環状の板の厚さHは、軸線AXが延びる垂直方向における下部20bの長さH(又は下部20bの高さ)よりも小さい。なお、長さHは、下部20bにおける導波路20wの垂直方向における長さであり、下部20bを構成する一対の導体壁(上側導体壁と下側導体壁)の間の鉛直方向における距離である。
【0027】
一実施形態において、厚さH及び長さHは、下記の式(2)又は式(3)を満たしてもよい。
【数1】

【数2】

なお、εは、第2の短絡部202を構成する誘電体の比誘電率である。
【0028】
共振器20では、共振器20の他端から電磁波を放出部16に供給し、且つ、第1の短絡部201と第2の短絡部202で電磁波を共振させる。このため、第2の短絡部202の反射係数Γの絶対値は、1よりも小さく、且つ、1に近い大きい値を有する。反射係数Γは、第1の短絡部201より下側からの反射がないと仮定すると、近似的に下記の式(4)で表される。反射係数Γの絶対値が、1よりも小さく、0.8よりも大きい場合には、式(4)から式(2)が導かれる。反射係数Γの絶対値が、1よりも小さく、0.9よりも大きい場合には、式(4)から式(3)が導かれる。
【数3】
【0029】
一実施形態において、長さHは、垂直方向における中間部20cの長さH(又は中間部20cの高さ)よりも長くてもよい。長さHは、中間部20cにおける導波路20wの垂直方向における長さであり、中間部20cにおいて導波路20wを構成する一対の導体壁(上側導体壁と下側導体壁)の間の鉛直方向における距離である。この実施形態においては、厚さHが大きくても、長さHに対して厚さHを相対的に小さくすることができる。したがって、第2の短絡部202のインピーダンスを下部20bにおける導波路20wのインピーダンスよりも低いインピーダンスに設定しつつ、第2の短絡部202を構成する環状の板の厚さを確保することができる。
【0030】
一実施形態において、放出部16において処理空間10sに露出している領域の径方向の長さL16は、厚さHよりも大きくてもよい。この場合には、プラズマ着火前後における電磁波の共振周波数の変化を小さくすることが可能である。
【0031】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、電磁波を導波路20wに導入するためにコネクタ40を更に備えていてもよい。コネクタ40は、同軸線路28の一部である。高周波電源24は、同軸線路28及びコネクタ40を介して、上部20aに結合されている。コネクタ40は、軸線AXから径方向に離れた位置で上部20aに結合されていてもよい。コネクタ40の詳細については後述する。
【0032】
軸線AXが延びる方向、即ち垂直方向における上部20aの長さH(又は上部20aの高さ)は、導波路20wの他の部分の垂直方向における長さより長くてもよい。図1に示す例では、長さHは、長さH及び長さHよりも長い。なお、長さHは、上部20aの一対の導体壁(上側導体壁と下側導体壁)の間の鉛直方向における距離である。上部20aのリアクタンスは、上部20aの長さHにより変化する。したがって、上部20aの長さHに応じて、共振器長Lを調整することが可能である。
【0033】
以下、図1と共に図2及び図3を参照して、コネクタ40の構造の例について説明する。図2は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の共振器及びコネクタを示す部分拡大断面図である。図3は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の共振器及びコネクタを示す部分拡大平面図である。図3においては、一対の押さえ部材のうち一方が部分的に破断された状態が示されている。
【0034】
コネクタ40は、上述したように上部20aにおいて導波路20wと結合されている。コネクタ40は、軸線AXに対して径方向に沿って移動可能に構成されていてもよい。この場合には、コネクタ40が共振器20に結合する位置を、電磁波の反射を抑制することが可能な位置(例えば、無反射の位置)に調整することが可能である。
【0035】
一実施形態において、コネクタ40は、同軸コネクタであってもよい。この場合において、コネクタ40は、中心導体41、外側導体42、スペーサ43、結合ロッド44、及び一つ以上のコンタクト部材45を含んでいてもよい。
【0036】
中心導体41は、棒状をなしている。中心導体41は、高周波電源24に電気的に接続される。外側導体42は、円筒形状を有している。中心導体41は、外側導体42と同軸状に設けられている。スペーサ43は、ポリテトラフルオロエチレンのような絶縁体材料から形成されている。スペーサ43は、中心導体41と外側導体42との間に介在している。
【0037】
上部20aの上側導体壁203aには、上部20aの空洞に接続する貫通孔203hが形成されている。貫通孔203hは、軸線AXに対して径方向に長く延びている。上側導体壁203aは、貫通孔203hの両側に支持面203sを提供している。支持面203sは、上方を向いている。
【0038】
結合ロッド44は、中心導体41の下端に結合している。結合ロッド44は、貫通孔203hを通って下方に延びている。一つ以上のコンタクト部材45は、結合ロッド44の下端に設けられている。一つ以上のコンタクト部材45は、上部20aの下側導体壁203bに弾性的に接触し得る。一実施形態において、コネクタ40は、一つ以上のコンタクト部材45が結合ロッド44から脱落することを防止するために、マグネット46を結合ロッド44内に内蔵していてもよい。
【0039】
一実施形態において、コネクタ40は、一つ以上のコンタクト部材45として、複数のコンタクトプローブを含んでいてもよい。複数のコンタクトプローブの各々は、バレル、当該バレルの内孔の中に配置されたスプリング、当該バレルの内孔から下方に延び当該スプリングによって下方に付勢されるプランジャを含む。複数のコンタクトプローブは、結合ロッド44の中心軸線の周りで周方向に沿って配列されていてもよい。或いは、コネクタ40は、一つ以上のコンタクト部材45として、スパイラルスプリングガスケット又は斜め巻コイルスプリングを有していてもよい。
【0040】
外側導体42は、支持面203sに接触している。外側導体42は、支持面203s上で径方向に沿って移動可能である。したがって、コネクタ40は、高周波電力の反射を抑制するよう、その径方向における上部20aとの結合位置を調整することが可能である。
【0041】
コネクタ40の径方向における位置が設定された状態で、外側導体42は、支持面203sと一対の押さえ部材50の各々との間で挟持されてもよい。一対の押さえ部材50の各々は、例えば板状をなしている。一対の押さえ部材50は、複数のボルトを用いて上側導体壁203aに固定される。また、貫通孔203hからの電磁波の漏れを防止すべく一つ以上のカバー52が、貫通孔203hを覆うように配置されてもよく、支持面203sと一対の押さえ部材50の各々との間で挟持されてもよい。
【0042】
一実施形態において、外側導体42は、第1部材42a及び第2部材42bを含んでいてもよい。第1部材42aは、第2部材42b上に設けられており、第2部材42bに固定されている。第1部材42aは、筒形状を有している。スペーサ43は、第1部材42aと中心導体41との間に設けられている。第2部材42bは、板状をなしており、第1部材42aの内孔に連続する貫通孔を提供している。第2部材42bは、支持面203sと一対の押さえ部材50の各々との間で挟持される。
【0043】
以上説明したプラズマ処理装置1では、第1の短絡部201と第2の短絡部202との間で電磁波の共振が促進される。また、第1の短絡部201と複数の第2の短絡部202によれば、周方向に均一な電磁波の共振が促進される。共振した電磁波は、共振器20の他端(又は第2の短絡部202)を通って放出部16から処理空間10sに放出される。したがって、プラズマ処理装置1によれば、第1の短絡部201と第2の短絡部202との間で共振した電磁波により、プラズマが効率的に生成される。
【0044】
以下、図4を参照して、別の例示的実施形態に係るプラズマ処理装置について説明する。図4は、別の例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を示す図である。以下、図4に示すプラズマ処理装置1Bについて、プラズマ処理装置1に対する相違点の観点から説明する。
【0045】
プラズマ処理装置1Bにおいて、共振器20は、第2の短絡部202に代えて第2の短絡部202Bを含んでいる。第2の短絡部202Bは、複数のコンデンサ素子から構成されている。複数のコンデンサ素子の各々の一対の電極のうち一方は、下部20bを構成する上側導体壁に接続されている。複数のコンデンサ素子の各々の一対の電極のうち他方は、下部20bを構成する下側導体壁(図4の例では上部電極14)に接続されている。複数のコンデンサ素子は、軸線AXの周りで周方向に沿って配列されている。複数のコンデンサ素子は、周方向に沿って等間隔に配列されていてもよい。かかるプラズマ処理装置1Cは、複数のコンデンサ素子により、下部20bのインピーダンスよりも低いインピーダンスを有する第2の短絡部202Bを構成している。
【0046】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0047】
ここで、本開示に含まれる種々の例示的実施形態を、以下の[E1]~[E13]に記載する。
【0048】
[E1]
その内部において処理空間を提供するチャンバと、
前記処理空間内に設けられた基板支持部と、
前記基板支持部の上方に前記処理空間を介して設けられた上部電極と、
プラズマ生成空間に電磁波を放出するように設けられており、前記チャンバ及び前記処理空間の中心軸線の周りで周方向に延在する、放出部と、
前記放出部に前記電磁波を供給するように構成された導波部と、
を備え、
前記導波部は、導波路を提供する共振器を含み、
前記共振器は、該共振器の前記導波路の一端を構成する第1の短絡部及び該共振器の前記導波路の他端を構成する第2の短絡部を含み、
前記共振器の前記導波路の前記他端は、前記放出部に電磁的に結合されており、
前記第2の短絡部は、前記電磁波の周波数において前記導波路を短絡させる静電容量を有する、
プラズマ処理装置。
【0049】
[E2]
前記第1の短絡部と前記第2の短絡部との間での前記共振器の共振器長Lは、下記の式(1)を満たし、
nλg/2<L<(n+0.2)λg/2 …(1)
ここで、λgは前記共振器の前記導波路における前記電磁波の波長であり、nは整数である、
E1に記載のプラズマ処理装置。
【0050】
[E3]
前記第1の短絡部及び前記第2の短絡部の各々は、前記中心軸線の周りで前記周方向に沿って設けられており、
前記共振器の前記導波路は、
前記中心軸線の周りで前記第2の短絡部に向けて前記中心軸線に対して径方向に延びる下部と、
前記下部の上方且つ前記中心軸線の周りで、前記第1の短絡部から前記径方向に対して反対方向に延びる上部と、
を含み、前記中心軸線の周りで前記第1の短絡部から前記第2の短絡部まで蛇行するように前記径方向と前記反対方向とに交互に延びている、
E1又はE2に記載のプラズマ処理装置。
【0051】
[E4]
前記第2の短絡部は、誘電体から形成さており、前記下部を構成する上側導体壁と下側導体壁との間に介在する環状の板を含み、
前記環状の板の厚さHは、前記中心軸線が延びる垂直方向における前記下部での前記導波路の長さHよりも小さい、
E3に記載のプラズマ処理装置。
【0052】
[E5]
前記共振器の前記導波路は、前記上部と前記下部との間に設けられた中間部を含み、
前記垂直方向における前記下部の前記長さHは、前記垂直方向における前記中間部の長さHよりも長い、E4に記載のプラズマ処理装置。
【0053】
[E6]
前記厚さH及び前記長さHは、下記の式(2)を満たし、
【数4】

ここで、εは前記誘電体の比誘電率である、E4又はE5に記載のプラズマ処理装置。
【0054】
[E7]
前記厚さH及び前記長さHは、下記の式(3)を満たし、
【数5】

ここで、εは前記誘電体の比誘電率である、E4又はE5に記載のプラズマ処理装置。
【0055】
[E8]
前記放出部において前記処理空間に露出している領域の径方向の長さは、前記厚さHよりも大きい、E4~E7の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0056】
[E9]
前記電磁波を前記共振器の前記導波路に導入するためのコネクタを更に備え、
前記コネクタは前記上部に結合されている、
E3~E8の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0057】
[E10]
前記中心軸線が延びる垂直方向における前記上部の長さは、前記共振器の前記導波路の他の部分の前記垂直方向における長さよりも長い、E9に記載のプラズマ処理装置。
【0058】
[E11]
前記コネクタは、前記中心軸線から径方向に離れた位置で前記上部に結合されている、E9又はE10に記載のプラズマ処理装置。
【0059】
[E12]
前記上部電極の下に配置されたシャワープレートを更に備え、
前記放出部は、前記シャワープレートを囲むように延在している、
E1~E11の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0060】
[E13]
前記共振器の前記導波路に電気的に結合されており、その周波数が可変である高周波電力を発生して、前記電磁波を該導波路内に供給するように構成された高周波電源を更に備える、E1~E12の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【0061】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0062】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、12…基板支持部、14…上部電極、16…放出部、18…導波部、20…共振器、20w…導波路、201…第1の短絡部、202…第2の短絡部。
図1
図2
図3
図4