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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101727
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】電気加熱式触媒システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20240723BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240723BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20240723BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240723BHJP
【FI】
F01N3/20 K ZAB
F01N3/24 L ZHV
H02M3/00 H
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005820
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 忍
(72)【発明者】
【氏名】貞光 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】飯田 達雄
(72)【発明者】
【氏名】齋木 勝巳
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亮佑
【テーマコード(参考)】
3G091
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
3G091AB02
3G091AB03
3G091AB04
3G091AB05
3G091AB06
3G091BA07
3G091CA03
3G091DB06
3G091EA27
3G091EA30
3G091FA04
3G091GA10
3G091GB01Z
3G091GB19X
5H730AS04
5H730AS05
5H770BA20
5H770CA01
5H770CA02
5H770CA06
5H770DA01
5H770DA41
5H770JA17W
(57)【要約】
【課題】金属端子の電気抵抗が増加することを抑制する。
【解決手段】導電性の材質で形成された触媒担体11と、触媒担体11の外面に取り付けられている一対の金属端子20と、一対の金属端子20間に電圧を印加する昇降圧コンバータ52と、一対の金属端子20と昇降圧コンバータ52との間に設けられ、一対の金属端子20に対する通電方向を切り替えるインバータ60と、インバータ60を制御する制御装置90と、を有し、制御装置90は、一対の金属端子20に対する通電時間が規定時間に達すると、一対の金属端子20に対する通電方向を切り替える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の材質で形成された触媒担体と、
前記触媒担体の外面に取り付けられている一対の金属端子と、
前記一対の金属端子間に電圧を印加する直流電源と、
前記一対の金属端子と前記直流電源との間に設けられ、前記一対の金属端子に対する通電方向を切り替える切り替え回路と、
前記切り替え回路を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記一対の金属端子に対する通電時間が予め定められた規定時間に達すると、前記一対の金属端子に対する通電方向を切り替える
電気加熱式触媒システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記一対の金属端子に対する通電時間の積算値が予め定められた変更閾値以上の場合、前記積算値が前記変更閾値未満の場合に比べて、前記規定時間を長く設定する
請求項1に記載の電気加熱式触媒システム。
【請求項3】
前記直流電源は、入力された直流電圧を昇圧又は降圧して前記切り替え回路に出力するDC/DCコンバータであり、
前記制御装置は、前記DC/DCコンバータの出力電圧が第1値である場合、前記DC/DCコンバータの出力電圧が前記第1値よりも小さい第2値である場合に比べて、前記規定時間を短く設定する
請求項1又は2に記載の電気加熱式触媒システム。
【請求項4】
導電性の材質で形成された触媒担体と、
前記触媒担体の外面に取り付けられている一対の金属端子と、
前記一対の金属端子間に電圧を印加する直流電源と、
前記一対の金属端子と前記直流電源との間に設けられ、前記一対の金属端子に対する通電方向を切り替える切り替え回路と、
前記切り替え回路を制御する制御装置と、を有し、
前記一対の金属端子に対する通電を開始してから終了するまでを通電ステップとしたとき、
前記制御装置は、前記通電ステップの実行回数が予め定められた規定回数に達すると、前記一対の金属端子に対する通電方向を切り替える
電気加熱式触媒システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気加熱式触媒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている内燃機関は、電気加熱式の触媒システムを有する。この触媒システムは、直流電源と、触媒担体と、一対の電極と、を有する。触媒担体は、導電性の材質で形成されている。一対の電極は、触媒担体の外面に取り付けられている。一対の電極は、直流電源に接続している。一対の電極に対して通電を行うと、触媒担体に電流が流れる。そして、触媒担体の電気抵抗によって触媒担体が発熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-193244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対の電極に対して通電を継続すると、電極を構成している金属材料の種類によっては、負極になっている電極で酸化物が形成されることがある。こうした酸化物が増加すると、電極の電気抵抗が大きくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための電気加熱式触媒システムは、導電性の材質で形成された触媒担体と、前記触媒担体の外面に取り付けられている一対の金属端子と、前記一対の金属端子間に電圧を印加する直流電源と、前記一対の金属端子と前記直流電源との間に設けられ、前記一対の金属端子に対する通電方向を切り替える切り替え回路と、前記切り替え回路を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記一対の金属端子に対する通電時間が予め定められた規定時間に達すると、前記一対の金属端子に対する通電方向を切り替える。
【0006】
上記課題を解決するための電気加熱式触媒システムは、導電性の材質で形成された触媒担体と、前記触媒担体の外面に取り付けられている一対の金属端子と、前記一対の金属端子間に電圧を印加する直流電源と、前記一対の金属端子と前記直流電源との間に設けられ、前記一対の金属端子に対する通電方向を切り替える切り替え回路と、前記切り替え回路を制御する制御装置と、を有し、前記一対の金属端子に対する通電を開始してから終了するまでを通電ステップとしたとき、前記制御装置は、前記通電ステップの実行回数が予め定められた規定回数に達すると、前記一対の金属端子に対する通電方向を切り替える。
【0007】
上記の各技術思想では、一対の金属端子に対する通電方向を切り替える。本願発明者は、一対の金属端子に対する通電方向を切り替えることで、負極での金属酸化物の生成が抑制されることを見出した。金属酸化物の生成を抑制することで、金属端子における電気抵抗の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両の概略構成図である。
図2】触媒装置の平面図である。
図3】電気加熱式触媒システムの構成図である。
図4】昇温処理の処理手順を表したフローチャートである。
図5】表面電極層の電気抵抗の推移を表した図である。
図6】切り替え回路の変更例を表した模式図である。
図7】電気加熱式触媒システムの変更例を表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、電気加熱式触媒システムの一実施形態を、図面を参照して説明する。
<車両の全体構成>
図1に示すように、ハイブリッド車両(以下、車両500と記す。)は、内燃機関212と、モータジェネレータ214と、バッテリ216と、インバータ218と、を有する。内燃機関212は、車両500の駆動源である。内燃機関212は、機関本体212Aと、排気通路212Bと、を有する。機関本体212Aの気筒内では、吸入空気と燃料との混合気が燃焼する。排気通路212Bには、気筒から排出される排気が流通する。モータジェネレータ214は、車両500の駆動源である。モータジェネレータ214は、電動機及び発電機の双方の機能を有する。モータジェネレータ214は、例えば三相交流型のモータジェネレータである。モータジェネレータ214は、内燃機関212と連結している。バッテリ216は、モータジェネレータ214に電力を供給したり、モータジェネレータ214が発電した電力を蓄えたりする二次電池である。インバータ218は、バッテリ216とモータジェネレータ214との間で直流交流の変換を行う。
【0010】
車両500は、電気加熱式触媒システム100を有する。電気加熱式触媒システム100は、触媒装置10と、電源回路50と、制御装置90と、上記バッテリ216と、を有する。以下、電気加熱式触媒システム100について詳述する。
【0011】
<触媒装置>
図2に示すように、触媒装置10は、内燃機関212の排気通路212Bに配置されている。なお、触媒装置10は、図示しないケースに挿入されている。図2及び図3に示すように、触媒装置10は、触媒担体11と、一対の金属端子20と、を有する。
【0012】
触媒担体11は、円柱状である。触媒担体11は、複数の細孔を有したハニカム構造となっている。各細孔は、触媒担体11の中心軸が延びる方向に貫通している。各細孔の壁面には、三元触媒が担持されている。触媒担体11は、導電性を有する材質で形成されている。触媒担体11は、例えばシリコン、及びシリコンカーバイトの複合物を主成分とする焼結体であって導電体となっている。触媒担体11は、通電されると電気抵抗となって発熱する。
【0013】
両金属端子20は、触媒担体11の外周面における、当該触媒担体11の中心軸を挟んで反対側となる位置にそれぞれ設けられている。金属端子20は、触媒担体11の外周面に取り付けられている。金属端子20は、表面電極層23と、櫛状電極層21と、固定層22とを有する。
【0014】
表面電極層23は、触媒担体11の表面に形成されている。表面電極層23は、溶射によって形成される。表面電極層23は、金属マトリクスとその金属マトリクス内に分散された酸化鉱物粒子からなる層である。金属マトリクスは、Cr(クロム)を含む。本実施形態の金属マトリクスとしては、NiCr合金が用いられている。酸化鉱物粒子としては、例えばシリカやアルミナなどの酸化物を主成分とし、ベントナイトやマイカを含む粒子が用いられている。
【0015】
櫛状電極層21は、FeCr合金などの導電性を有した金属からなる櫛状の板である。櫛状電極層21は、固定層22によって表面電極層23の表面に固定されている。固定層22の材料は、表面電極層23と同じである。
【0016】
<電源回路>
図3に示すように、電源回路50は、DC/DCコンバータ(以下、昇降圧コンバータ52と記す。)と、インバータ60と、リレー54と、を有する。
【0017】
昇降圧コンバータ52は、直流電源である。昇降圧コンバータ52は、トランジスタやダイオードを含んでいる。昇降圧コンバータ52は、第1正極ライン71Aを介してバッテリ216の正極端子に接続している。昇降圧コンバータ52は、第1負極ライン71Bを介してバッテリ216の負極端子に接続している。昇降圧コンバータ52は、バッテリ216から入力された直流電圧を昇圧又は降圧して第2正極ライン72A及び第2負極ライン72Bに出力する。
【0018】
リレー54は、第1正極ライン71A及び第1負極ライン71Bの途中に位置している。リレー54は、バッテリ216と昇降圧コンバータ52との電気的接続をオンオフする。
【0019】
インバータ60は、第2正極ライン72A及び第2負極ライン72Bを介して昇降圧コンバータ52に接続している。また、インバータ60は、第3電力ライン73及び第4電力ライン74を介して一対の金属端子20に接続している。すなわち、インバータ60は、昇降圧コンバータ52と一対の金属端子20との間に位置している。インバータ60は、昇降圧コンバータ52からの直流電流を交流に変換して一対の金属端子20に出力する。すなわち、インバータ60は、一対の金属端子20に対する通電方向を切り替える切り替え回路である。
【0020】
インバータ60は、例えば次のように構成されている。インバータ60は、並列に接続された第1アーム回路61と第2アーム回路62とを有する。第1アーム回路61は、直列に接続された第1トランジスタ66Aと第2トランジスタ66Bとを有する。第1トランジスタ66Aと第2トランジスタ66Bとは、いずれもnpn型のトランジスタである。第1アーム回路61は、還流用の第1ダイオード67Aと第2ダイオード67Bとを有する。第1ダイオード67Aは、第1トランジスタ66Aに並列に接続している。第2ダイオード67Bは、第2トランジスタ66Bに並列に接続している。第1トランジスタ66Aのコレクタ端子は、第2正極ライン72Aに接続している。第2トランジスタ66Bのエミッタ端子は、第2負極ライン72Bに接続している。一対の金属端子20の一方を第1金属端子、他方を第2金属端子と呼称する。第1トランジスタ66Aのエミッタ端子と、第2トランジスタ66Bのコレクタ端子との接続点は、第3電力ライン73を介して、第1金属端子の櫛状電極層21に接続している。なお、第1トランジスタ66Aのベース端子、及び第2トランジスタ66Bのベース端子には、これらのトランジスタのオンオフを切り替えるための制御電圧が後述の制御装置90から入力される。
【0021】
第2アーム回路62は、第1アーム回路61と同様、二つのトランジスタ66A,66Bと、二つのダイオード67A,67Bと、を有する。第2アーム回路62は、以下の点を除いて、第1アーム回路61と同様に構成されている。すなわち、第2アーム回路62における第1トランジスタ66Aのエミッタ端子と、第2トランジスタ66Bのコレクタ端子との接続点は、第4電力ライン74を介して、第2金属端子の櫛状電極層21に接続している。
【0022】
以上の電源回路50において、リレー54がオンである場合、昇降圧コンバータ52は、一対の金属端子20間に電圧を印加する。それに伴って触媒担体11は通電される。この通電に応じた発熱で触媒担体11は加熱される。こうした触媒担体11の電気加熱により、触媒活性の促進を図ることができる。
【0023】
<制御装置>
制御装置90は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサとして構成し得る。なお、制御装置90は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)などの一つ以上の専用のハードウェア回路、またはそれらの組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU92及び、RAM並びにROMなどのメモリ94を含む。メモリ94は、処理をCPU92に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ94すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。メモリ94は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリを含む。制御装置90は、時間の計測機能を有する。
【0024】
制御装置90は、車両500の各部に設けられた複数のセンサ99の検出信号を受信する。なお、図3では、複数のセンサ99のうちの一つを代表で示している。上記の検出信号は、車両500の走行速度、車両500におけるアクセルペダルの操作量、バッテリ216の残容量に応じた充電状態を含む。また、上記の検出信号は、内燃機関212の出力軸の回転位置、内燃機関212の吸入空気量、機関本体212Aを流れる冷却水の温度を含む。また、上記の検出信号は、触媒装置10に供給している電流、及び触媒装置10に印加している電圧を含む。また、制御装置90は、車両500に設けられたスタートスイッチ98からの信号を受信する。スタートスイッチ98は、乗員が車両500の起動を指示するためのスイッチであり、乗員の操作に応じてオン又はオフになる。
【0025】
制御装置90は、電源回路50を制御対象とする。すなわち、制御装置90は、昇降圧コンバータ52を制御したりインバータ60を制御したりする。制御装置90は、電源回路50を制御することを通じて触媒装置10に通電を行う。制御装置90は、インバータ60の各トランジスタのオンオフを通じて、一対の金属端子20に流れる交流電流の周波数を調整する。
【0026】
制御装置90、一対の金属端子20に対する通電時間の積算値である通電積算値KAを不揮発性メモリに記憶している。通電積算値KAは、車両500の工場出荷時点ではゼロになっている。本実施形態では、車両500の工場出荷時点を触媒装置10の新品時点として取り扱う。制御装置90は、新品時点以降に一対の金属端子20に対する通電を行うことに伴って、通電積算値KAを随時更新していく。
【0027】
制御装置90は、電源回路50に加え、内燃機関212及びモータジェネレータ214といった他の車両搭載品も制御対象とする。例えば、制御装置90は、内燃機関212の機関本体212Aに取り付けられている点火プラグ及び燃料噴噴射弁を制御することで、機関本体212Aで混合気を燃焼させる。制御装置90は、スタートスイッチ98がオンになっている間、車両500の走行速度やアクセルペダルの操作量などから把握される内燃機関212の要求トルクに基づいて、内燃機関212を始動させたり内燃機関212の負荷状態を変更したりする。また、制御装置90は、内燃機関212の駆動力などを利用して、必要に応じてモータジェネレータ214に発電させる。ここで、内燃機関212では、触媒担体11に担持されている触媒により、排気中の有害成分を浄化している。内燃機関212の始動直後には、触媒担体11の温度が低い。そして、触媒が不活性な状態にある。また、内燃機関212の無負荷・低負荷運転時には、排気通路212Bを流れる排気の温度が低くなる。その状態が続くと、触媒担体11の温度が低下して触媒が不活性な状態となることがある。そこで、制御装置90は、内燃機関212の始動直後、及び無負荷・低負荷運転時には、触媒担体11を加熱するための処理として、昇温処理を行う。制御装置90は、この昇温処理を通じて、予め定められた所定時間Lに亘って触媒装置10に通電を行う。所定時間Lは、例えば1分である。制御装置90は、所定時間Lを予め記憶している。なお、制御装置90は、通電中は、一対の金属端子20に対する通電時間が規定時間Kに達すると、当該一対の金属端子20に対する通電方向を切り替える。制御装置90は、通電時間が規定時間Kに達した時点で通電方向を切り替えてもよいし、通電時間が規定時間Kに達した後に速やかに通電方向を切り替えてもよい。制御装置90は、これらのいずれかを標準規則として、通電中に規定時間Kを基準にして通電方向の切り替えを繰り返していく。制御装置90は、通電方向の切り替えに係る上記の規定時間Kを、通電積算値KAに応じて変更する。具体的には、制御装置90は、通電積算値KAが変更閾値N以上へと増加すると、通電積算値KAが変更閾値N未満である場合に比べて、規定時間Kを長く設定する。すなわち、制御装置90は、通電積算値KAが変更閾値N以上である場合、通電積算値KAが変更閾値N未満である場合に比べて、規定時間Kを長く設定する。
【0028】
図4に示すように、制御装置90は、昇温処理を開始すると、先ずステップS10の処理を実行する。ステップS10において、制御装置90は、当該ステップS10の実行時点で不揮発性メモリに記憶している通電積算値KAが、変更閾値N未満であるか否かを判定する。制御装置90は、変更閾値Nを予め記憶している。変更閾値Nは、所定時間Lよりも長い。例えば、変更閾値Nは、所定時間Lを整数倍した値になっている。変更閾値Nの詳細は後述する。制御装置90は、通電積算値KAが変更閾値N未満である場合(ステップS10:YES)、処理をステップS20に進める。この場合、ステップS20において、制御装置90は、インバータ60を制御するための規定時間Kとして、第1時間K1をセットする。制御装置90は、第1時間K1を予め記憶している。第1時間K1は、所定時間Lよりも短い。第1時間K1は、例えば0.01秒である。第1時間K1の詳細は後述する。制御装置90は、ステップS20の処理を実行すると、処理をステップS40に進める。
【0029】
一方、制御装置90は、通電積算値KAが変更閾値N以上である場合(ステップS10:NO)、処理をステップS30に進める。この場合、ステップS30において、制御装置90は、インバータ60を制御するための規定時間Kとして、第2時間K2をセットする。制御装置90は、第2時間K2を予め記憶している。第2時間K2は、第1時間K1よりも長く、且つ所定時間Lよりも短い。第2時間K2の詳細は後述する。
【0030】
ステップS40において、制御装置90は、所定時間Lに亘って触媒装置10に通電を行う。制御装置90は、通電中は、昇降圧コンバータ52から予め定められた一定の設定電圧を出力させる。また、制御装置90は、一対の金属端子20に対する通電方向が規定時間Kで切り替わるようにインバータ60を制御する。つまり、制御装置90は、規定時間Kの2倍が交流電流の1周期となるように各トランジスタのスイッチングを制御する。なお、制御装置90は、通電を開始する際には、リレー54をオフからオンに切り替える。また、制御装置90は、通電を終了する際は、リレー54をオンからオフに切り替える。制御装置90は、所定時間Lの通電を終えると、昇温処理の一連の処理を終了する。制御装置90は、昇温処理を終了すると、不揮発性メモリに記憶している通電積算値KAを更新する。すなわち、制御装置90は、昇温処理の終了時点で記憶している通電積算値KAに所定時間Lを加算した値を最新値として算出する。そして、この最新値を新たな通電積算値KAとして記憶する。制御装置90は、以上の昇温処理を、上記した内燃機関212の運転状態に応じて逐次実行する。すなわち、制御装置90は、内燃機関212の始動時、無負荷運転時、及び低負荷運転時という各実行機会が訪れる度に昇温処理を実行する。それに伴い、通電積算値KAは、1トリップの中で逐次増え、さらに、トリップの数が増えるのとともに逐次増えていく。なお、1トリップは、スタートスイッチ98がオンになってからオフになるまでの期間である。
【0031】
<表面電極層の電気抵抗の増加について>
以下では、本実施形態の作用として、一対の金属端子20に対する通電方向の切り替えを行う理由を説明する。先ずその前提として、表面電極層23の電気抵抗の増加について説明する。
【0032】
表面電極層23には、新品時点で無数の小さな空隙が存在している。さて、一対の金属端子20に対して通電を行うと、負極となっている表面電極層23では電子の移動が生じる。通電の継続時間が長くなると、負極の表面電極層23では、電子の移動が活発化する。そして、負極の表面電極層23では、Cr原子に対する電子の衝突が連続的に繰り返される。こうした電子の衝突は、Cr原子を移動させる。このCr原子の移動に伴い、負極の表面電極層23に存在している空隙が拡大したり合併したりする。そして空隙が大きくなる。空隙が大きくなると、より多くの酸素が空隙に入り込むようになる。すると、空隙の内部においてCr原子の酸化が促進される。そして、空隙の内部で柱状のCr酸化物(以下、柱状酸化物と記す。)が形成される。柱状酸化物が形成されると、表面電極層23における導通領域が減少して負極の表面電極層23の電気抵抗が高くなる。ここで、柱状酸化物が一旦形成され始めると次のことが生じる。すなわち、空隙の拡大とともに無数の柱状酸化物が加速度的に成長する。したがって、一対の金属端子20に対する通電方向を切り替えることなく通電を継続していると、図5の二点鎖線で示すように、負極の表面電極層23では電気抵抗が急増する。そして、負極の表面電極層23では電気抵抗が過度に高くなる。この場合、負極の表面電極層23と、当該表面電極層23に接している櫛状電極層21と、の間の電位差が非常に大きくなる。この結果として、負極の表面電極層23では、表面電極層23と櫛状電極層21とが過度に発熱してこれら表面電極層23と櫛状電極層21とが溶断する。
【0033】
<通電方向の切り替えと電気抵抗の増加の抑制について>
表面電極層23と櫛状電極層21との溶断を防ぐため、上記構成では、一対の金属端子20に対する通電方向の切り替えを繰り返す。この切り替えは、表面電極層23の電気抵抗の増加を抑制する効果があることが実験的にわかっている。以下、表面電極層23の電気抵抗の増加を抑制するメカニズムについて、推測されるものを(A)(B)として二つを記す。
【0034】
(A)上記のとおり、負極の表面電極層23でのCr原子の移動は、通電が長く継続される状況下で電子の衝突が連続することで生じるものと考えられる。裏を返すと、通電を継続する時間が短い状況下では、Cr原子に対する電子の衝突回数が少ないことから、Cr原子の移動が生じ難い。そこで、上記構成では、一対の金属端子20に対する通電方向を短い時間間隔で切り替える。この場合、負極の表面電極層23でCr原子の移動ひいては空隙の拡大が生じる前に、一対の金属端子20の正極と負極とを入れ替える格好になる。空隙が拡大する前に一対の金属端子20の正極と負極とを入れ替えることを繰り返すことで、一対の金属端子20の双方の表面電極層23において空隙が小さい状態を維持できる。このことで、一対の金属端子20の双方の表面電極層23において電気抵抗の増加を抑制できる。
【0035】
(B)前提として、表面電極層23に形成されるCrの酸化膜である不動態膜について説明する。一対の金属端子20に通電を行うと、正極となっている金属端子20でも負極となっている金属端子20でも次のことが生じる。すなわち、柱状酸化物とは別に、表面電極層23では上記不動態膜が形成される。この不動態膜は、表面電極層23の外周面や亀裂部分に形成される。ここで、柱状酸化物は、空隙が大きくならないと成長しない。これは、空隙が大きくならないと、酸化に十分な酸素を空隙に取り込めないからである。そして、空隙が大きくなるためには相応に長時間の通電が必要である。こうした理由から、柱状酸化物は、表面電極層23に対する通電継続時間がある程度長くなるまでは形成され難い。その一方で、表面電極層23の外周面などに形成される上記の不動態膜は、表面電極層23の外周面が豊富な外気と接触することに伴って形成される。そのため、不動態膜は、表面電極層23に対する通電の初期から形成される。なお、表面電極層23のうち不動態膜が形成されるのは、外周面や亀裂部分などの限られた部分である。そのため、不動態膜が形成される量はさほど多くない。したがって、不動態膜の形成に起因して表面電極層23の電気抵抗が過度に高くなることはない。
【0036】
さて、不動態膜は、物質的に非常に安定している。そのため、負極の表面電極層23に不動態膜が存在していると、当該表面電極層23のうち不動態膜が形成された周辺では、電子の衝突に伴うCr原子の移動が妨げられる。そして、不動態膜周辺では空隙の拡大が進み難くなる。すなわち、負極の表面電極層23において、不動態膜は、空隙の拡大ひいては柱状酸化物の生成を抑制する機能を有する。このこととの関連で、一対の金属端子20に対する通電方向の切り替えを繰り返すと、以下のとおり、柱状酸化物の生成を抑制できる。
【0037】
いま、新品状態の一対の金属端子20に対して通電を行うとともに、短い時間間隔で一対の金属端子20に対する通電方向を切り替えていくものとする。既に説明したとおり、通電の開始後、当該通電の初期段階から一対の金属端子20の双方の表面電極層23において不動態膜が形成されていく。また、同一の通電方向での通電時間が短いことから、一対の金属端子20のうちその時点で負極となっている表面電極層23では、不動態膜が形成される一方で空隙の拡大及び柱状酸化物の形成が生じない。こうした理由から、通電時間を短くして通電方向の切り替えを行うと、一対の金属端子20の表面電極層23の双方で不動態膜のみが主として形成されていく。この結果として一対の金属端子20の双方の表面電極層23において不動態膜が広範囲に形成されれば、一対の金属端子20の双方の表面電極層23において空隙の拡大ひいては柱状酸化物の生成を抑制できる。
【0038】
以上の(A)(B)などの理由により、次のことが実現される。一対の金属端子20のうちの一方の表面電極層23を第1表面電極層と呼称し、他方の表面電極層23を第2表面電極層と呼称する。短い時間間隔で一対の金属端子20に対する通電方向を切り替えていくと、図5に示すように、第1表面電極層と第2表面電極層との双方の電気抵抗は、通電の継続時間が増えてもほとんど増加しない。なお、図5では、第1表面電極層の電気抵抗の推移を実線で表している。また、図5では、第2表面電極層の電気抵抗の推移を点線で表している。
【0039】
<第1時間、第2時間、及び変更閾値について>
規定時間Kに設定される第1時間K1と第2時間K2、及び変更閾値Nは、上記の(A)(B)を踏まえつつ互いに関連付けて値が設定されている。第1時間K1は、一対の金属端子20の新品時点において、一対の金属端子20に対して通電したときに表面電極層23の電気抵抗の増加を抑えられる値として、例えば実験又はシミュレーションで予め定められている。第1時間K1は、表面電極層23に不動態膜がさほど多く形成されていない状況下であっても表面電極層23で空隙の拡大が生じない時間ともいえる。第2時間K2は、一対の金属端子20に対してある程度通電を行った後において、一対の金属端子20に対して通電したときに表面電極層23の電気抵抗の増加を抑えられる値として、例えば実験又はシミュレーションで予め定められている。第2時間K2は、表面電極層23に不動態膜が多く形成されている状況下であれば表面電極層23で空隙の拡大が生じない時間ともいえる。変更閾値Nは、規定時間Kを第1時間K1から第2時間K2に切り替えても表面電極層23の電気抵抗が増加しない値として、例えば実験又はシミュレーションで予め定められている。変更閾値Nは、表面電極層23で空隙が拡大し難くなる程度まで不動態膜が多く形成されるのに必要な通電時間の積算値ともいえる。
【0040】
<実施形態の効果>
(1)上記のとおり、制御装置90は、昇温処理では、インバータ60を利用することで、一対の金属端子20に対する通電方向を切り替える。このことで、一対の金属端子20の双方の表面電極層23について電気抵抗の増加を抑制できる。
【0041】
(2)上記(B)に記載したとおり、不動態膜は柱状酸化物の生成を抑制する。ここで、不動態膜が一旦広範囲に形成されれば、それ以降は負極の表面電極層23で空隙の拡大が生じ難いことから、同一の通電方向での通電時間である規定時間Kを長くすることが許容される。この点を踏まえ、上記構成では、通電積算値KAが変更閾値N未満であるうちは、規定時間Kを短くする。このことで、一対の金属端子20の双方の表面電極層23を、空隙の拡大が生じ難い状態にする。その上で、通電積算値KAが変更閾値N以上になった後は規定時間Kを長くする。このことで、通電方向の切り替えのための処理の煩雑さを抑えることができる。
【0042】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0043】
・切り替え回路の構成は、上記実施形態の例に限定されない。切り替え回路は、一対の金属端子20と直流電源との間に設けられ、一対の金属端子20に対する通電方向を切り替えることができればよい。例えば、インバータ60に代えて、図6に示すような4路スイッチ80を採用してもよい。4路スイッチ80は、第1状態と第2状態とに切り替わる。第1状態は、図6の実線で示すように、第2正極ライン72Aの接点72APと第4電力ライン74の接点74Pとが接続され、且つ第2負極ライン72Bの接点72BPと第3電力ライン73の接点73Pとが接続された状態である。第2状態は、図6の点線で示すように、第2正極ライン72Aの接点72APと第3電力ライン73の接点73Pとが接続され、且つ第2負極ライン72Bの接点72BPと第4電力ライン74の接点74Pとが接続された状態である。こうした4路スイッチ80を、制御装置90が指令信号によって制御するようにしてもよい。そして、制御装置90は、4路スイッチ80を第1状態又第2状態に切り替えることで、一対の金属端子20に対する通電方向を規定時間Kで切り替えてもよい。
【0044】
・一度の昇温処理で通電を行うトータルの時間である上記所定時間Lを、昇温処理を行うときの内燃機関212の状態に応じて変更してもよい。例えば、昇温処理の開始時点の触媒担体11の温度に応じて所定時間Lを変更することが考えられる。触媒担体11の温度は、例えば、機関本体212Aの冷却水の温度に基づいて推定できる。
【0045】
・一度の昇温処理における通電の終了タイミングを、所定時間Lという時間の尺度で判断するのではなく、他の尺度を利用して判断してもよい。例えば、一度の昇温処理で供給すべき目標電力量を定め、この目標電力量の投入を終えたことをもって通電の終了タイミングを判断してもよい。
【0046】
・昇降圧コンバータ52の出力電圧を、昇温処理を行うときの内燃機関212の状態に応じて昇温処理毎に変更してもよい。例えば、昇温処理の開始時点の触媒担体11の温度が低いほど出力電圧を高く設定してもよい。そして、一度の昇温処理で、その出力電圧を維持してもよい。
【0047】
ここで、昇降圧コンバータ52の出力電圧が高いほど、負極の表面電極層23では電子の移動が活発化し得る。これに伴い、負極の表面電極層23では、Cr原子の移動ひいては空隙の拡大が生じ易くなる。この点を踏まえ、昇温処理における、一対の金属端子20に対する通電方向の向きの切り替えに係る規定時間Kを次のように設定してもよい。すなわち、通電積算値KAが変更閾値N未満であるときを対象に、昇降圧コンバータ52からの出力電圧が高いほど上記規定時間Kを短く設定する。なお、このとき設定する規定時間Kの上限値は第2時間K2よりも小さい値とする。そして、通電積算値KAが変更閾値N以上へと増加すると、すなわち負極の表面電極層23で空隙の拡大が生じ難い状況になると、上記実施形態と同様、規定時間Kを第2時間K2とする。上記のような設定を採用すれば、通電積算値KAが変更閾値N未満である状況下において、昇降圧コンバータ52からの出力電圧が高い場合には、低い場合に比べて、同一の通電方向での通電時間が短くなる。このことで、昇降圧コンバータ52からの出力電圧の大小にかかわらず、負極の表面電極層23での電気抵抗の増加を抑制できる。
【0048】
・昇降圧コンバータ52の出力電圧に合わせて規定時間Kを変更する上記変更例に関して、昇降圧コンバータ52の出力電圧が高いほど規定時間Kが短い、という関係が成立していることは必須ではない。例えば、出力電圧に対して数段階の規定時間Kを設定してもよい。この場合でも、次の関係が成立していれば、出力電圧の大小に合わせて負極の表面電極層23で電気抵抗の増加を抑制するのに好適である。上記関係は、昇降圧コンバータ52の出力電圧が第1値である場合、昇降圧コンバータ52の出力電圧が第1値よりも小さい第2値である場合に比べて規定時間Kが短い、というものである。
【0049】
・一度の昇温処理の中で昇降圧コンバータ52の出力電圧を変更してもよい。それに合わせて上記変更例のように規定時間Kを変更してもよい。
・変更閾値Nは、上記実施形態に例示した、所定時間Lの整数倍に限定されない。変更閾値Nは、第1時間K1と第2時間K2とに合わせて適宜設定してよい。第1時間K1なども、上記実施形態に例示した数値に限定されない。
【0050】
・昇温処理の実行中に通電積算値KAを逐次更新していってもよい。そして、一度の昇温処理の実行途中において通電積算値KAが変更閾値Nになった時点で規定時間Kを変更してもよい。このようにして、通電積算値KAが変更閾値N以上の場合に通電積算値KAが変更閾値N未満の場合に比べて規定時間Kを長く設定してもよい。
【0051】
・変更閾値Nを挟んだ規定時間Kの変更は必須ではない。すなわち、変更閾値Nによる規定時間Kの変更を廃止し、同一の規定時間Kを利用し続けてもよい。
・新品時点の取り扱いは、上記実施形態の例に限定されない。つまり、通電積算値KAの基準となるタイミングは、上記実施形態の例に限定されない。通電積算値KAの基準となるタイミングに合わせて変更閾値Nを設定すればよい。
【0052】
・規定時間Kと上記所定時間Lの大小は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、第1時間K1は、所定時間Lより長くてもよい。換言すると、第1時間K1は、一度の昇温処理で一対の金属端子20に通電を行うトータルの時間より長くてもよい。この場合、一対の金属端子20に対する通電時間を、複数の昇温処理を跨いで計測しつつ、適宜切り替え回路を制御すればよい。例えば、第1時間K1が、所定時間Lの1.5倍だとする。こうした場合、別の機会に実行される二回の昇温処理のうち、初めの昇温処理では通電方向を切り替えず、次の昇温処理の途中で通電方向を切り替える、といった具合になる。表面電極層23の電気抵抗の増加を避けることができるのであれば、第1時間K1が一度の昇温処理の実行期間より長くてもよい。第2時間K2についても同様である。要は、表面電極層23の電気抵抗の増加を避けることができるように規定時間Kが定めてあればよい。そして、一対の金属端子20に対する通電時間がその規定時間Kに達したときに通電方向を切り替える構成になっていればよい。
【0053】
・昇温処理の実行回数を基準として一対の金属端子20に対する通電方向を切り替えてもよい。すなわち、一対の金属端子20に対する通電を開始してから終了するまでを通電ステップと呼称する。制御装置90は、通電ステップの実行回数が予め定められた規定回数に達すると、すなわち規定回数分の通電ステップを実行し終えると、一対の金属端子20に対する通電方向を切り替える。規定回数は、表面電極層23の電気抵抗の増加を避けることができる値として定めておけばよい。このように、時間ではなく、回数を尺度として通電方向を切り替えてもよい。通電ステップは、昇温処理におけるステップS40の処理に相当する。なお、制御装置90は、規定回数を予め記憶しておけばよい。また、制御装置90は、通電ステップの実行回数を逐次カウントアップしていけばよい。そして、実行回数が規定回数に達したら、カウントをゼロにリセットすればよい。
【0054】
・昇温処理の実行回数で通電方向を切り替える上記変更例の場合、一度の昇温処理では一対の金属端子20に対する通電方向が同一のままになる。この場合、一対の金属端子20に対して直流電流を供給する格好となる。この点、規定時間Kを所定時間L以上に設定した場合も同様の状況が生じ得る。このように、一対の金属端子20に対して供給する電流は交流に限らず、直流になることもある。
【0055】
・昇温処理の実行対象とする状況は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、内燃機関212の始動前に昇温処理を行ってもよい。触媒担体11を加熱する必要がある状況で昇温処理を行えばよい。
【0056】
・触媒担体11の構成は、上記実施形態の例に限定されない。触媒担体11は、導電性を有する材質で形成されていればよい。
・触媒担体11に担持される触媒は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、触媒は、酸化触媒、吸蔵還元型NOx触媒、又は選択還元型NOx触媒であってもよい。
【0057】
・金属マトリクスは、上記実施形態の例に限定されない。例えば、金属マトリクスとして、MCrAlY合金を用いてもよい。ここでの「M」は、Fe、Co、Niのうちの一つ以上を示している。
【0058】
・一対の金属端子20に対する通電方向を切り替えることで表面電極層23の電気抵抗の増加を抑えることができるのであれば、金属端子20の構成を上記実施形態の例から変更してよい。
【0059】
・車両500の全体構成は、上記実施形態の例に限定れない。例えば、車両500は、車両500の外部の電源に接続してバッテリ216を充電することができるプラグイン機能を有していてもよい。車両500は、モータジェネレータ214を複数有していてもよい。車両は、当該車両の駆動源として内燃機関212のみを有し、モータジェネレータ214を有していなくてもよい。
【0060】
・直流電源は、上記実施形態の例に限定されない。直流電源は、一対の金属端子20間に電圧を印加できればよい。例えば、直流電源は、交流電圧を直流電圧に変換して出力するAC/DCコンバータでもよい。車両500の全体構成に関する上記変更例のように、プラグイン機能を有する車両500の場合、車両500の外部の電源からの交流電圧を、AC/DCコンバータで直流電圧に変換して切り替え回路に出力することもできる。
【0061】
・電源回路50を制御する制御装置90と、他の車両搭載品を制御する制御装置とが別々に設けられていてもよい。この場合でも、これらの制御装置が互いに情報を授受できればよい。
【0062】
・電気加熱式触媒システム101として、図7に示すような構成を採用してもよい。図7に示す電気加熱式触媒システム101では、電源回路50と触媒装置10とを接続する上記実施形態の構成に代えて、車両500に搭載されているモータジェネレータ214と触媒装置10とを接続する。そして、モータジェネレータ214が発電した交流の電流をそのまま一対の金属端子20に供給する。すなわち、電気加熱式触媒システム101は、触媒担体11と、触媒担体11の外面に取り付けられている一対の金属端子20と、交流電源としてのモータジェネレータ214と、を有する。一対の金属端子20に対する通電のオンオフは、リレーなどで適宜行えばよい。なお、図7において、上記実施形態と同一の箇所もしくは実質同一に機能する箇所には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0063】
<技術的思想>
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
導電性の材質で形成された触媒担体と、前記触媒担体の外面に取り付けられている一対の金属端子と、前記一対の金属端子間に電圧を印加する電源と、を有し、前記電源は、交流電源である電気加熱式触媒システム。
【符号の説明】
【0064】
11…触媒担体
20…金属端子
52…昇降圧コンバータ
60…インバータ
90…制御装置
100…電気加熱式触媒システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7