(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101729
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240723BHJP
F16K 1/06 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M8/04 J
F16K1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005823
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森 英文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤也
【テーマコード(参考)】
3H052
5H127
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA03
3H052EA16
5H127AB04
5H127AC15
5H127AC20
5H127BA02
5H127BB02
5H127BB07
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB40
5H127EE19
(57)【要約】
【課題】モータを駆動させるための消費電力を無駄に消費してしまうことを回避しつつも、モータを空気によって冷却すること。
【解決手段】ノズル部81は、燃料電池スタックから排出された空気の圧力を速度に変換する。そして、ノズル部81によって空気の圧力が速度に変換されることにより吸引部82で負圧が発生する。これにより、吸入通路における流量センサよりも上流側の空気が、冷却通路70を介して吸引部82に引き込まれる。冷却通路70を流れる空気は圧縮部を経由せずに、モータ室を経由するため、モータが空気によって冷却される。制御部61は、流量センサにより検出される空気の流量が燃料電池スタックに供給される空気の目標流量となるようにモータの駆動を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックから排出される空気が流れる排出通路と、
前記排出通路に設けられるとともに前記排出通路の通路断面積を調整して前記燃料電池スタック内の圧力を調整する圧力調整弁と、
回転軸、前記回転軸の回転に伴い前記燃料電池スタックに供給される空気を圧縮する圧縮部、前記回転軸を回転させるモータ、及び前記モータを収容するモータ室を有するハウジングを備えている電動圧縮機と、
前記圧縮部に空気を吸入する吸入通路と、
前記吸入通路を流れる空気の流量を検出する流量センサと、
前記流量センサにより検出される空気の流量が前記燃料電池スタックに供給される空気の目標流量となるように前記モータの駆動を制御する制御部と、を備えている燃料電池システムであって、
前記燃料電池スタックから排出された空気の圧力を速度に変換するノズル部と、前記ノズル部によって空気の圧力が速度に変換されることにより負圧が発生する吸引部と、前記吸引部を通過した空気を昇圧させて大気へ排出するディフューザ部と、を有するエジェクタと、
前記吸入通路における前記流量センサよりも上流側の空気を、前記モータ室を経由して前記吸引部に流す冷却通路と、を備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記圧力調整弁は、
前記圧力調整弁の弁体を収容する弁室と、
前記弁室に連通する弁孔と、
前記弁室における前記弁孔の周囲に設けられるとともに前記弁体が着座する弁座と、を有し、
前記冷却通路は、前記弁孔に連通しており、
前記ノズル部は、前記弁体と前記弁座との間の隙間により構成され、
前記吸引部は、前記弁孔により構成され、
前記ディフューザ部は、前記弁孔における前記弁室とは反対側の端部に連通することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記吸入通路に流れる空気を清浄化するエアクリーナを備え、
前記エアクリーナは、第1接続口と、第2接続口と、を有し、
前記吸入通路の上流端は、前記第1接続口に接続されており、
前記冷却通路の上流端は、前記第2接続口に接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、燃料電池システムは、燃料電池スタックと、排出通路と、圧力調整弁と、電動圧縮機と、吸入通路と、を備えている。排出通路は、燃料電池スタックから排出される空気が流れる。圧力調整弁は、排出通路に設けられている。圧力調整弁は、排出通路の通路断面積を調整して燃料電池スタック内の圧力を調整する。電動圧縮機は、回転軸、圧縮部、モータ、及びハウジングを備えている。圧縮部は、回転軸の回転に伴い燃料電池スタックに供給される空気を圧縮する。モータは、回転軸を回転させる。ハウジングは、モータ室を有している。モータ室は、モータを収容する。吸入通路は、圧縮部に空気を吸入する。
【0003】
また、燃料電池システムは、流量センサと、制御部と、を備えている。流量センサは、吸入通路を流れる空気の流量を検出する。制御部は、流量センサにより検出される空気の流量が燃料電池スタックに供給される空気の目標流量となるように、流量センサにより検出される流量に基づいてモータの駆動を制御する。圧縮部により圧縮される空気の流量は、回転軸の回転数が高くなるほど多くなる。したがって、例えば、燃料電池スタックに供給される空気の流量を多くしたい場合には、制御部は、回転軸の回転数が高くなるようにモータの駆動を制御する。
【0004】
ところで、このような燃料電池システムにおいては、電動圧縮機の耐久性の向上を図るために、モータを冷却することが望まれている。そこで、例えば特許文献2のように、圧縮部によって圧縮された空気の一部をモータ室内へ導入することが考えられている。このように、圧縮部によって圧縮された空気の一部がモータ室内へ導入されることにより、モータが空気によって冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-80027号公報
【特許文献2】特開2011-202588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、圧縮部によって圧縮された空気の一部をモータ室内へ導入すると、流量センサにより検出される空気の流量と、燃料電池スタックに供給される空気の流量とにずれが生じる。具体的には、圧縮部によって圧縮された空気の一部をモータ室内へ導入すると、燃料電池スタックに供給される空気の流量は、流量センサにより検出される空気の流量よりも少なくなる。したがって、制御部が、流量センサにより検出される空気の流量が目標流量となるようにモータの駆動を制御しても、燃料電池スタックに供給される空気の流量が目標流量よりも少なくなってしまう。
【0007】
そこで、制御部は、流量センサにより検出される空気の流量が目標流量よりも多くなるようにモータの駆動を制御する。これによれば、圧縮部によって圧縮された空気の一部をモータ室内へ導入したとしても、燃料電池スタックに供給される空気の流量が目標流量よりも少なくなってしまうことが回避される。
【0008】
しかし、流量センサにより検出される空気の流量と燃料電池スタックに供給される空気の流量とのずれは、電動圧縮機の個体毎にばらつきがある。このため、電動圧縮機によっては、例えば、流量センサにより検出される空気の流量を目標流量に対して多くし過ぎてしまう場合がある。この場合、回転軸の回転数を無駄に高くしていることになるため、モータを駆動させるための消費電力が無駄に消費されてしまうことになる。よって、モータを駆動させるための消費電力を無駄に消費してしまうことを回避しつつも、モータを空気によって冷却することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する燃料電池システムは、前記燃料電池スタックから排出される空気が流れる排出通路と、前記排出通路に設けられるとともに前記排出通路の通路断面積を調整して前記燃料電池スタック内の圧力を調整する圧力調整弁と、回転軸、前記回転軸の回転に伴い前記燃料電池スタックに供給される空気を圧縮する圧縮部、前記回転軸を回転させるモータ、及び前記モータを収容するモータ室を有するハウジングを備えている電動圧縮機と、前記圧縮部に空気を吸入する吸入通路と、前記吸入通路を流れる空気の流量を検出する流量センサと、前記流量センサにより検出される空気の流量が前記燃料電池スタックに供給される空気の目標流量となるように前記モータの駆動を制御する制御部と、を備えている燃料電池システムであって、前記燃料電池スタックから排出された空気の圧力を速度に変換するノズル部と、前記ノズル部によって空気の圧力が速度に変換されることにより負圧が発生する吸引部と、前記吸引部を通過した空気を昇圧させて大気へ排出するディフューザ部と、を有するエジェクタと、前記吸入通路における前記流量センサよりも上流側の空気を、前記モータ室を経由して前記吸引部に流す冷却通路と、を備えた。
【0010】
このように、ノズル部が、燃料電池スタックから排出された空気の圧力を速度に変換する。そして、ノズル部によって空気の圧力が速度に変換されることにより吸引部で負圧が発生する。これにより、吸入通路における流量センサよりも上流側の空気が、冷却通路を介して吸引部に引き込まれる。冷却通路を流れる空気は圧縮部を経由せずに、モータ室を経由するため、モータを空気によって冷却することができる。そして、吸引部を通過した空気は、ディフューザ部によって昇圧されて大気へ排出される。したがって、圧縮部によって圧縮された空気の一部をモータ室内へ導入する必要が無い。その結果、燃料電池スタックに供給される空気の流量が、流量センサにより検出される空気の流量よりも少なくなってしまうことが回避される。そして、制御部は、流量センサにより検出される空気の流量が燃料電池スタックに供給される空気の目標流量となるようにモータの駆動を制御する。したがって、例えば、制御部が、流量センサにより検出される空気の流量が目標流量よりも多くなるようにモータの駆動を制御する必要が無い。よって、流量センサにより検出される空気の流量を目標流量に対して多くし過ぎてしまうといったことが無く、回転軸の回転数を無駄に高くしてしまうことが無い。したがって、モータを駆動させるための消費電力が無駄に消費してしまうことを回避することができる。以上により、モータを駆動させるための消費電力を無駄に消費してしまうことを回避しつつも、モータを空気によって冷却することができる。
【0011】
上記燃料電池システムにおいて、前記圧力調整弁は、前記圧力調整弁の弁体を収容する弁室と、前記弁室に連通する弁孔と、前記弁室における前記弁孔の周囲に設けられるとともに前記弁体が着座する弁座と、を有し、前記冷却通路は、前記弁孔に連通しており、前記ノズル部は、前記弁体と前記弁座との間の隙間により構成され、前記吸引部は、前記弁孔により構成され、前記ディフューザ部は、前記弁孔における前記弁室とは反対側の端部に連通するとよい。
【0012】
これによれば、弁体が弁座から離間した状態において、弁室から弁孔に流れ込む空気は、弁体と弁座との間の隙間により構成されるノズル部を通過する際に圧力が速度に変換される。ノズル部によって空気の圧力が速度に変換されることにより、弁孔により構成される吸引部において負圧が発生するとともに冷却通路からの空気が吸引部に吸引される。そして、吸引部からの空気は、ディフューザ部において昇圧されながら大気へ排出される。このように、圧力調整弁の構成の一部をエジェクタとして機能させることにより、圧力調整弁とは別にエジェクタを排出通路に別途設ける必要が無いため、燃料電池システム全体をコンパクトにすることができる。
【0013】
上記燃料電池システムにおいて、前記吸入通路に流れる空気を清浄化するエアクリーナを備え、前記エアクリーナは、第1接続口と、第2接続口と、を有し、前記吸入通路の上流端は、前記第1接続口に接続されており、前記冷却通路の上流端は、前記第2接続口に接続されているとよい。
【0014】
これによれば、吸入通路及び冷却通路をエアクリーナからそれぞれ独立して設けることができる。したがって、例えば、冷却通路の上流端が、吸入通路におけるエアクリーナと流量センサとの間の部分に接続されている場合に比べると、吸入通路における流量センサの上流側の部分を流れる空気の流れを安定させることができる。したがって、吸入通路を流れる空気の流量を流量センサにより精度良く検出することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、モータを駆動させるための消費電力を無駄に消費してしまうことを回避しつつも、モータを空気によって冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態における燃料電池システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、燃料電池システムを具体化した一実施形態を
図1及び
図2にしたがって説明する。本実施形態の燃料電池システムは、燃料電池車に搭載されている。
<燃料電池システムの全体構成>
図1に示すように、燃料電池システム10は、燃料電池スタック11と、排出通路20と、圧力調整弁30と、電動圧縮機12と、吸入通路50と、を備えている。燃料電池スタック11は、例えば、複数のセルを有している。各セルは、酸素極と、水素極と、両極の間に配置された電解質膜とが積層されて構成されている。そして、燃料電池スタック11は、燃料ガスである水素と空気中の酸素とを化学反応させて発電を行う。
【0018】
燃料電池スタック11の発電に寄与する酸素は、空気中に2割程度しか存在しない。したがって、燃料電池スタック11に供給された空気の8割程度は、燃料電池スタック11の発電に寄与されることなく燃料電池スタック11から排出ガスとして排出される。
【0019】
燃料電池スタック11は、図示しない走行用モータに電気的に接続されている。走行用モータは、燃料電池スタック11により発電された電力を電力源として駆動する。走行用モータの動力は、図示しない動力伝達機構を介して車軸に伝達される。燃料電池車は、アクセルペダルのアクセル開度に応じた車速で走行する。
【0020】
排出通路20には、燃料電池スタック11から排出される空気が流れる。圧力調整弁30は、排出通路20に設けられている。排出通路20は、第1排出配管21と、第2排出配管22と、を有している。第1排出配管21の第1端は、燃料電池スタック11の排出口11bに接続されている。第1排出配管21の第2端は、圧力調整弁30の入口30aに接続されている。第2排出配管22の第1端は、圧力調整弁30の出口30bに接続されている。第2排出配管22の第2端は、大気に開放されている。
【0021】
電動圧縮機12は、回転軸13、圧縮部14、モータ15、及びハウジング16を備えている。ハウジング16は、モータ室17と、インペラ室18と、を有している。モータ室17は、モータ15を収容する。インペラ室18は、圧縮部14を収容する。圧縮部14は、インペラ室18に収容されるインペラである。したがって、電動圧縮機12は、遠心圧縮機である。回転軸13は、ハウジング16内に収容されている。回転軸13の第1端には、モータ15が連結されている。回転軸13の第2端には、圧縮部14が連結されている。モータ15は、回転軸13を回転させる。圧縮部14は、回転軸13の回転に伴い燃料電池スタック11に供給される空気を圧縮する。
【0022】
電動圧縮機12は、吸入口12aと、吐出口12bと、を有している。吸入口12a及び吐出口12bは、ハウジング16に形成されている。吸入口12aは、インペラ室18に空気を吸入する。そして、圧縮部14は、吸入口12aからインペラ室18に吸入された空気を圧縮する。吐出口12bには、圧縮部14によって圧縮された空気が吐出される。
【0023】
電動圧縮機12は、導入口12cと、排出口12dと、を有している。導入口12c及び排出口12dは、ハウジング16に形成されている。導入口12cは、モータ室17内に空気を導入する。排出口12dには、モータ室17内の空気が排出される。
【0024】
燃料電池システム10は、エアクリーナ52を備えている。エアクリーナ52は、ケース53と、エレメント54と、を有している。エレメント54は、ケース53内に収容されている。エレメント54は、外部からケース53内に吸入される空気がエレメント54を通過することにより、空気に含まれる異物を捕捉する。したがって、ケース53内においてエレメント54を通過した後の空気は異物が除去されている。
【0025】
エアクリーナ52は、第1接続口55と、第2接続口56と、を有している。第1接続口55及び第2接続口56は、ケース53におけるエレメント54よりも下流側に位置する部分に設けられている。
【0026】
吸入通路50は、例えば、配管である。吸入通路50の第1端は、エアクリーナ52の第1接続口55に接続されている。吸入通路50の第2端は、電動圧縮機12の吸入口12aに接続されている。吸入通路50を流れる空気は、エアクリーナ52によって清浄化されている。したがって、エアクリーナ52は、吸入通路50に流れる空気を清浄化する。そして、吸入通路50を流れる空気は、吸入口12aを介してインペラ室18に吸入される。したがって、吸入通路50は、圧縮部14に空気を吸入する。吸入通路50の上流端は、第1接続口55に接続されている。吸入通路50の下流端は、電動圧縮機12の吸入口12aに接続されている。
【0027】
燃料電池システム10は、供給通路51を備えている。供給通路51は、例えば、配管である。供給通路51の第1端は、電動圧縮機12の吐出口12bに接続されている。供給通路51の第2端は、燃料電池スタック11の供給口11aに接続されている。そして、圧縮部14によって圧縮された空気は、吐出口12b、供給通路51、及び供給口11aを介して燃料電池スタック11に供給される。
【0028】
燃料電池システム10は、流量センサ60を備えている。流量センサ60は、吸入通路50に設けられている。流量センサ60は、吸入通路50を流れる空気の流量を検出可能に構成されている。したがって、流量センサ60は、吸入通路50を流れる空気の流量を検出する。
【0029】
燃料電池システム10は、制御部61を備えている。制御部61は、例えば、1つ以上の専用のハードウェア回路、及び/又は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(制御回路)によって実現することができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、例えば、各種処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ即ちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0030】
制御部61は、流量センサ60に電気的に接続されている。制御部61には、流量センサ60により検出された空気の流量に関する情報が送信される。制御部61は、モータ15に電気的に接続されている。制御部61は、モータ15の駆動を制御する。制御部61には、流量センサ60により検出される流量に基づいてモータ15の駆動を制御する制御プログラムが予め記憶されている。したがって、制御部61は、流量センサ60により検出される流量に基づいてモータ15の駆動を制御する。
【0031】
制御部61には、アクセルペダルの操作態様等に基づいて燃料電池スタック11に要求される要求発電量を算出する算出プログラムが予め記憶されている。そして、制御部61は、算出プログラムによって算出した要求発電量に基づいて、燃料電池スタック11に供給される空気の目標流量を導出する。よって、制御部61には、燃料電池スタック11に要求される要求発電量と、燃料電池スタック11に供給される空気の目標流量と、が関係付けられたマップが予め記憶されている。
【0032】
制御部61には、流量センサ60により検出される空気の流量が燃料電池スタック11に供給される空気の目標流量となるようにモータ15の駆動を制御する制御プログラムが予め記憶されている。したがって、制御部61は、流量センサ60により検出される空気の流量が燃料電池スタック11に供給される空気の目標流量となるようにモータ15の駆動を制御する。
【0033】
燃料電池システム10は、冷却通路70を備えている。冷却通路70は、第1冷却配管71と、第2冷却配管72と、を有している。第1冷却配管71の第1端は、エアクリーナ52の第2接続口56に接続されている。第1冷却配管71の第2端は、電動圧縮機12の導入口12cに接続されている。第2冷却配管72の第1端は、電動圧縮機12の排出口12dに接続されている。第2冷却配管72の第2端は、圧力調整弁30に接続されている。エアクリーナ52からの空気は、第2接続口56、第1冷却配管71、導入口12c、モータ室17、排出口12d、及び第2冷却配管72を介して圧力調整弁30に流れる。したがって、冷却通路70の上流端は、第2接続口56に接続されている。
【0034】
<圧力調整弁>
図2に示すように、圧力調整弁30は、弁ハウジング31と、ソレノイドコイル32と、固定鉄心33と、付勢ばね34と、弁部材35と、を備えている。弁ハウジング31は、筒状である。弁ハウジング31は、ソレノイドコイル32、固定鉄心33、付勢ばね34、及び弁部材35を収容する。
【0035】
弁ハウジング31は、ソレノイド室36と、弁室37と、弁孔38と、弁座39と、拡径孔40と、を有している。ソレノイド室36、弁室37、弁孔38、弁座39、及び拡径孔40は、弁ハウジング31に形成されている。
【0036】
弁室37は、ソレノイド室36に連通している。弁室37は、ソレノイド室36に対して、弁ハウジング31の軸方向で並んで配置されている。弁孔38は、弁室37におけるソレノイド室36とは反対側の端部に連通している。したがって、弁孔38は、弁室37に連通している。ソレノイド室36の軸線、弁室37の軸線、及び弁孔38の軸線は、弁ハウジング31の軸線に一致している。
【0037】
弁座39は、弁室37における弁孔38の周囲に設けられている。拡径孔40は、弁孔38における弁室37とは反対側の端部に連通している。拡径孔40の第1端は、弁孔38に連通している。拡径孔40の第2端は、弁ハウジング31の外面に開口している。拡径孔40の第2端には、第2排出配管22の第1端が接続されている。したがって、拡径孔40の第2端は、圧力調整弁30の出口30bである。拡径孔40は、拡径孔40の第1端から第2端に向かうにつれて孔径が徐々に拡径している。
【0038】
ソレノイドコイル32、固定鉄心33、及び付勢ばね34は、ソレノイド室36に収容されている。固定鉄心33は、柱状である。固定鉄心33は、弁ハウジング31の内部に固定されている。固定鉄心33の軸線は、弁ハウジング31の軸線に一致している。ソレノイドコイル32は、固定鉄心33の周囲に設けられている。
【0039】
弁部材35は、圧力調整弁30の弁体41と、可動鉄心42と、フランジ部43と、を有している。弁体41と可動鉄心42とは一体化されている。可動鉄心42は、柱状である。固定鉄心33と可動鉄心42とは、固定鉄心33の軸線と可動鉄心42の軸線とが一致した状態で、弁ハウジング31の内部に配置されている。可動鉄心42の第1端は、固定鉄心33に対して、可動鉄心42の軸方向で対向している。可動鉄心42の第1端面は、固定鉄心33に接離可能である。
【0040】
可動鉄心42の第2端は、ソレノイド室36から弁室37内に突出している。可動鉄心42の第2端には、弁体41が連結されている。弁体41は、弁室37内に収容されている。したがって、弁室37は、弁体41を収容する。弁体41は、例えば、ゴム製である。弁体41は、弁座39に着座可能に構成されている。したがって、弁座39には、弁体41が着座する。弁体41は、弁座39に対して接離可能である。弁体41は、弁室37内を往復動可能である。
【0041】
フランジ部43は、可動鉄心42の外周面から環状に突出している。フランジ部43は、ソレノイド室36内に配置されている。付勢ばね34は、フランジ部43と固定鉄心33との間に介在されている。付勢ばね34は、例えば、コイルばねである。付勢ばね34の第1端は、固定鉄心33に支持されている。付勢ばね34の第2端は、フランジ部43に支持されている。付勢ばね34は、弁体41が弁座39に接近する方向へ弁部材35を付勢する。
【0042】
ソレノイドコイル32は、制御部61に電気的に接続されている。制御部61は、ソレノイドコイル32に対して電力が供給可能になっている。そして、例えば、制御部61におけるソレノイドコイル32に対する電力の供給が行われると、付勢ばね34の付勢力に抗して、可動鉄心42が固定鉄心33に吸着される。これにより、弁部材35が固定鉄心33に向けて移動するとともに、弁体41が弁座39に対して離間する。その結果、圧力調整弁30が開弁状態となる。
【0043】
一方で、例えば、制御部61におけるソレノイドコイル32に対する電力の供給が停止されると、付勢ばね34の付勢力によって、弁体41が弁座39に接近する方向へ弁部材35が付勢される。これにより、弁部材35が弁座39に向けて移動するとともに、弁体41が弁座39に着座する。その結果、圧力調整弁30が閉弁状態となる。
【0044】
弁ハウジング31は、第1導入通路44と、第2導入通路45と、を有している。第1導入通路44の第1端には、第1排出配管21の第2端が接続されている。したがって、第1導入通路44の第1端は、圧力調整弁30の入口30aである。第1導入通路44の第2端は、弁室37に連通している。
【0045】
第1導入通路44、弁室37、弁孔38、及び拡径孔40は、第1排出配管21及び第2排出配管22と共に排出通路20を構成している。そして、燃料電池スタック11から排出される空気は、第1排出配管21、第1導入通路44、弁室37、弁孔38、拡径孔40、及び第2排出配管22を介して大気へ排出される。なお、弁室37に流れ込む空気の一部は、ソレノイド室36に流れ込む。ソレノイド室36に流れ込む空気の圧力は、フランジ部43の両端面にそれぞれ作用する。これにより、ソレノイド室36に流れ込んで弁部材35に作用する空気の圧力は相殺されている。
【0046】
弁体41と弁座39との間の隙間が小さくなって、圧力調整弁30の弁開度が小さくなるほど、燃料電池スタック11内の圧力が高くなる。一方で、弁体41と弁座39との隙間が大きくなって、圧力調整弁30の弁開度が大きくなるほど、燃料電池スタック11内の圧力が小さくなる。したがって、圧力調整弁30は、排出通路20に設けられるとともに排出通路20の通路断面積を調整して燃料電池スタック11内の圧力を調整する。
【0047】
なお、制御部61には、燃料電池スタック11内の圧力が目標圧力となるように、圧力調整弁30の弁開度を調整する弁開度調整プログラムが予め記憶されている。そして、制御部61は、弁開度調整プログラムによって、圧力調整弁30のソレノイドコイル32に供給される電力量を調整することにより、圧力調整弁30の弁開度を調整する。
【0048】
第2導入通路45の第1端には、第2冷却配管72の第2端が接続されている。第2導入通路45は、弁孔38に連通している。したがって、冷却通路70は、第2導入通路45を介して弁孔38に連通している。そして、エアクリーナ52からの空気は、第2接続口56、第1冷却配管71、導入口12c、モータ室17、排出口12d、第2冷却配管72、及び第2導入通路45を介して弁孔38に流れる。したがって、冷却通路70は、吸入通路50における流量センサ60よりも上流側の空気をモータ室17を経由して排出通路20における圧力調整弁30の弁体41よりも下流側の部分に流す。
【0049】
<エジェクタ>
燃料電池システム10は、エジェクタ80を備えている。エジェクタ80は、ノズル部81と、吸引部82と、ディフューザ部83と、を有している。ノズル部81は、弁体41と弁座39との間の隙間により構成されている。そして、ノズル部81は、弁体41と弁座39との間の隙間を通過する空気の圧力を速度に変換する。吸引部82は、弁孔38により構成されている。そして、吸引部82では、ノズル部81によって空気の圧力が速度に変換されることにより負圧が発生する。これにより、吸引部82は、冷却通路70からの空気を吸引する。ディフューザ部83は、拡径孔40により構成されている。したがって、ディフューザ部83は、弁孔38における弁室37とは反対側の端部に連通している。そして、ディフューザ部83は、弁孔38を通過した空気を昇圧させて大気へ排出する。このように、本実施形態では、圧力調整弁30の構成の一部がエジェクタ80として機能している。
【0050】
[実施形態の作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
弁体41が弁座39から離間した状態において、弁室37から弁孔38に流れ込む空気は、弁体41と弁座39との間の隙間により構成されるノズル部81を通過する際に圧力が速度に変換される。ノズル部81によって空気の圧力が速度に変換されることにより、弁孔38により構成される吸引部82において負圧が発生するとともに冷却通路70からの空気が吸引部82に吸引される。そして、吸引部82からの空気は、ディフューザ部83において昇圧されながら大気へ排出される。
【0051】
このように、ノズル部81は、燃料電池スタック11から排出された空気の圧力を速度に変換する。そして、吸引部82では、ノズル部81によって空気の圧力が速度に変換されることにより負圧が発生する。これにより、吸入通路50における流量センサ60よりも上流側の空気が、冷却通路70を介して吸引部82に引き込まれる。冷却通路70を流れる空気はモータ室17を経由するため、モータ15が空気によって冷却される。ディフューザ部83は、吸引部82を通過した空気を昇圧させて大気へ排出する。
【0052】
[実施形態の効果]
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)ノズル部81は、燃料電池スタック11から排出された空気の圧力を速度に変換する。そして、ノズル部81によって空気の圧力が速度に変換されることにより吸引部82で負圧が発生する。これにより、吸入通路50における流量センサ60よりも上流側の空気が、冷却通路70を介して吸引部82に引き込まれる。冷却通路70を流れる空気は圧縮部14を経由せずに、モータ室17を経由するため、モータ15を空気によって冷却することができる。そして、吸引部82を通過した空気は、ディフューザ部83によって昇圧されて大気へ排出される。したがって、圧縮部14によって圧縮された空気の一部をモータ室17内へ導入する必要が無い。その結果、燃料電池スタック11に供給される空気の流量が、流量センサ60により検出される空気の流量よりも少なくなってしまうことが回避される。そして、制御部61は、流量センサ60により検出される空気の流量が燃料電池スタック11に供給される空気の目標流量となるようにモータ15の駆動を制御する。したがって、例えば、制御部61が、流量センサ60により検出される空気の流量が目標流量よりも多くなるようにモータ15の駆動を制御する必要が無い。よって、流量センサ60により検出される空気の流量を目標流量に対して多くし過ぎてしまうといったことが無く、回転軸13の回転数を無駄に高くしてしまうことが無い。したがって、モータ15を駆動させるための消費電力が無駄に消費してしまうことを回避することができる。以上により、モータ15を駆動させるための消費電力を無駄に消費してしまうことを回避しつつも、モータ15を空気によって冷却することができる。
【0053】
(2)弁体41が弁座39から離間した状態において、弁室37から弁孔38に流れ込む空気は、弁体41と弁座39との間の隙間により構成されるノズル部81を通過する際に圧力が速度に変換される。ノズル部81によって空気の圧力が速度に変換されることにより、弁孔38により構成される吸引部82において負圧が発生するとともに冷却通路70からの空気が吸引部82に吸引される。そして、吸引部82からの空気は、ディフューザ部83において昇圧されながら大気へ排出される。このように、圧力調整弁30の構成の一部をエジェクタ80として機能させることにより、圧力調整弁30とは別にエジェクタ80を排出通路20に別途設ける必要が無いため、燃料電池システム10全体をコンパクトにすることができる。
【0054】
(3)吸入通路50の上流端は、エアクリーナ52の第1接続口55に接続されている。冷却通路70の上流端は、エアクリーナ52の第2接続口56に接続されている。これによれば、吸入通路50及び冷却通路70をエアクリーナ52からそれぞれ独立して設けることができる。したがって、例えば、冷却通路70の上流端が、吸入通路50におけるエアクリーナ52と流量センサ60との間の部分に接続されている場合に比べると、吸入通路50における流量センサ60の上流側の部分を流れる空気の流れを安定させることができる。したがって、吸入通路50を流れる空気の流量を流量センサ60により精度良く検出することができる。
【0055】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0056】
○ 実施形態において、圧力調整弁30とは別にエジェクタ80を排出通路20に別途設けてもよい。この場合、エジェクタ80は、排出通路20における圧力調整弁30よりも下流側の部分に設けられている。
【0057】
○ 実施形態において、例えば、冷却通路70の上流端が、吸入通路50におけるエアクリーナ52と流量センサ60との間の部分に接続されていてもよい。要は、冷却通路70は、吸入通路50における流量センサ60よりも上流側の空気を、モータ室17を経由して吸引部82に流すことが可能な構成であればよい。
【0058】
○ 実施形態において、圧縮部14は、インペラでなくてもよく、例えば、固定スクロール及び旋回スクロールからなるスクロール式であってもよい。したがって、電動圧縮機12は、遠心圧縮機に限らず、例えば、スクロール型圧縮機であってもよい。要は、電動圧縮機12は、回転軸13を回転させるモータ15を有するものであればよい。
【0059】
○ 実施形態において、燃料電池システム10は、燃料電池車に搭載されていなくてもよい。要は、燃料電池システム10は、車両に搭載されるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0060】
10…燃料電池システム、11…燃料電池スタック、12…電動圧縮機、13…回転軸、14…圧縮部、15…モータ、16…ハウジング、17…モータ室、20…排出通路、30…圧力調整弁、37…弁室、38…弁孔、39…弁座、41…弁体、50…吸入通路、52…エアクリーナ、55…第1接続口、56…第2接続口、60…流量センサ、61…制御部、70…冷却通路、80…エジェクタ、81…ノズル部、82…吸引部、83…ディフューザ部。