(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101732
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
H01R13/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005831
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】重本 賢史朗
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087FF08
5E087GG15
5E087MM06
5E087RR06
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】ランスの係止部分におけるせん断面積の増大とコネクタ端子の端子挿入力の低減とを両立させることができるコネクタを提供する。
【解決手段】ハウジング11におけるランス122が、カンチレバー状のランス本体122aの中途位置に突出形成された第1係止凸部122bと、第1係止凸部122bよりも自由端側で当該第1係止凸部122bよりも低く突出形成された第2係止凸部122cと、を備え、コネクタ端子11が、キャビティ121への収容時に第1係止凸部122bが嵌入係止するランス係止孔111dが設けられた端子本体111と、ランス係止孔111dの前方位置に突出形成され、第1係止凸部122bのランス係止孔111dへの嵌入係止に先立ってランス本体122aを撓めつつ第1係止凸部122bを乗り越えて第2係止凸部122cと係止するランス係止凸部112と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ端子と、
筒状に形成されて一端開口から前記コネクタ端子が他端開口へと向かう挿入方向に挿入されて前記コネクタ端子を収容するキャビティ、及び、前記キャビティの内部で前記コネクタ端子に係止して前記挿入方向と逆向きの抜け止めを行うランス、が設けられたハウジングと、を備え、
前記ランスが、
前記キャビティの前記内部において、前記一端開口側を固定端とし、前記他端開口側を自由端として前記挿入方向に延在するカンチレバー状のランス本体と、
前記ランス本体の長手方向の中途位置に突出形成され、前記キャビティに前記コネクタ端子が収容されると当該コネクタ端子に係止する第1係止凸部と、
前記ランス本体における前記第1係止凸部よりも前記自由端側で当該第1係止凸部よりも低く突出形成され、前記キャビティに前記コネクタ端子が収容されると前記第1係止凸部とともに前記コネクタ端子に係止する第2係止凸部と、を備え、
前記コネクタ端子が、
前記キャビティの前記内部で前記挿入方向に延在する長尺形状を有し、前記キャビティへの収容時に前記ランスの前記第1係止凸部が前記ランス本体を撓めつつ前記挿入方向に内周縁を乗り越えて嵌入係止するランス係止孔が外周面に設けられた端子本体と、
前記端子本体の前記外周面における前記ランス係止孔の前記挿入方向の前方位置に突出形成され、前記キャビティへの収容時に、前記第1係止凸部の前記ランス係止孔への嵌入係止に先立って前記ランス本体を撓めつつ前記第1係止凸部を前記挿入方向に乗り越えて前記第2係止凸部と係止するランス係止凸部と、を備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ランス本体では、前記第1係止凸部よりも前記固定端側となるランス背面が、前記長手方向に沿って延在する平面となっており、
前記第1係止凸部における前記自由端側で前記ランス係止孔の前記内周縁に当接する第1端面、及び、前記第2係止凸部における前記自由端側で前記ランス係止凸部に当接する第2端面、のそれぞれが、前記ランス背面に対し、前記自由端側へと90度以上の角度をなす面であることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ランスが、前記ランス本体における前記第2係止凸部よりも更なる前記自由端側に、前記第2係止凸部よりも更に一段下がって前記挿入方向へと舌片状に延出し、前記キャビティから前記コネクタ端子を前記挿入方向と逆向きに抜出すときに、前記他端開口から解除治具がアクセスすることで前記第1係止凸部の前記ランス係止孔への嵌入係止及び前記第2係止凸部の前記ランス係止凸部に対する係止を解除する解除部を更に備えており、
前記第1係止凸部の前記ランス係止孔への嵌入係止時における当該ランス係止孔の周囲面と前記第2係止凸部の頂部とのクリアランスより、前記第2係止凸部の前記ランス係止凸部に対する係止時における当該ランス係止凸部の頂部と前記解除部とのクリアランスが大きいことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ランス本体では、前記第1係止凸部よりも前記固定端側となるランス背面が、前記長手方向に沿って延在する平面となっており、
前記コネクタ端子が、前記端子本体の前記外周面における前記ランス係止孔の前記挿入方向の後方位置に頂部が平面となるように突出形成され、前記第1係止凸部の前記ランス係止孔への嵌入係止時及び前記第2係止凸部の前記ランス係止凸部に対する係止時には、前記ランス背面に頂部平面で接触することで前記キャビティに対する前記コネクタ端子の中心軸の傾きを抑制するランス背面接触凸部を更に備えていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記コネクタ端子が、前記ランス係止凸部が突出する方向である端子側突出方向と、前記挿入方向と、の両方と直交する端子幅方向について、前記端子本体の両側部から前記端子側突出方向に舌片状に突出した一対のスタビライザを更に備え、
前記キャビティの内周面に、前記第1係止凸部及び前記第2係止凸部が突出する方向であるランス側突出方向と、前記挿入方向と、の両方と直交するキャビティ幅方向について前記ランスを挟んで前記一端開口側から前記挿入方向に溝レール状に延在し、前記コネクタ端子の前記キャビティへの挿入時には前記一対のスタビライザに内側を通過させることで前記挿入時の前記コネクタ端子の中心軸回りの姿勢を安定させる一対の側方ガイド溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記キャビティの内周面において、前記第1係止凸部及び前記第2係止凸部が突出する方向であるランス側突出方向と、前記挿入方向と、の両方と直交するキャビティ幅方向について前記ランスを挟んで前記挿入方向に延在する一対の面部分における前記ランスよりも前記他端開口側に、前記キャビティの内側に棚状に張り出して、前記コネクタ端子の挿入時には、前記コネクタ端子の前記挿入方向の先端側を支持することで前記キャビティに対する前記コネクタ端子の中心軸の傾きを抑制する一対の端子受け部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記キャビティの内周面において、前記ランスに対する対面部分には、前記キャビティの内側に向かって各々が突出して前記挿入方向に延在するとともに、前記第1係止凸部及び前記第2係止凸部が突出する方向であるランス側突出方向と、前記挿入方向と、の両方と直交するキャビティ幅方向に複数列並べられたリブであって、前記コネクタ端子の挿入時に当該コネクタ端子を前記ランスに向かって押圧することで当該コネクタ端子のガタを抑制する複数列のガタ抑えリブが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ端子がハウジングのキャビティに収容されたコネクタに関するものとなっている。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタ端子がハウジングのキャビティに収容されたコネクタの多くでは、意図しない引張り力が掛かったときにコネクタ端子が抜け出さないように、キャビティ内に抜け止め用のランスが設けられている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1のランスは、コネクタ端子の挿入方向にカンチレバー状に延在したランス本体の先端側に、コネクタ端子に係止して抜け止めする係止凸部が設けられた構造を有している。コネクタ端子のキャビティへの挿入時には、コネクタ端子が、ランスの係止凸部と干渉してランス本体を撓ませつつ所定の収容位置までキャビティ内を挿入方向に進む。コネクタ端子が収容位置に達すると、ランス本体の撓みが解消するとともに係止凸部がコネクタ端子における被係止部に係止することで、挿入方向と逆向きの抜け止めを行う。
【0003】
ここで、上記のコネクタでは、引張り力に対するランスの係止部分におけるせん断面積を大きくして係止強度を向上させるために、この係止部分をなす係止凸部が幅広に形成されている。そして、このランスは、幅広の係止凸部における係止端面とキャビティの内周面が可撓片によって繋げられた両持ち梁構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のコネクタは、幅広の係止凸部によってコネクタ端子への引張り力に対するランスの係止部分におけるせん断面積が大きくなっている反面、両持ち梁構造によってランスが撓み難くなっており、コネクタ端子の端子挿入力が高くなりがちとなっている。
【0006】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、ランスの係止部分におけるせん断面積の増大とコネクタ端子の端子挿入力の低減とを両立させることができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、コネクタは、コネクタ端子と、筒状に形成されて一端開口から前記コネクタ端子が他端開口へと向かう挿入方向に挿入されて前記コネクタ端子を収容するキャビティ、及び、前記キャビティの内部で前記コネクタ端子に係止して前記挿入方向と逆向きの抜け止めを行うランス、が設けられたハウジングと、を備え、前記ランスが、前記キャビティの前記内部において、前記一端開口側を固定端とし、前記他端開口側を自由端として前記挿入方向に延在するカンチレバー状のランス本体と、前記ランス本体の長手方向の中途位置に突出形成され、前記キャビティに前記コネクタ端子が収容されると当該コネクタ端子に係止する第1係止凸部と、前記ランス本体における前記第1係止凸部よりも前記自由端側で当該第1係止凸部よりも低く突出形成され、前記キャビティに前記コネクタ端子が収容されると前記第1係止凸部とともに前記コネクタ端子に係止する第2係止凸部と、を備え、前記コネクタ端子が、前記キャビティの前記内部で前記挿入方向に延在する長尺形状を有し、前記キャビティへの収容時に前記ランスの前記第1係止凸部が前記ランス本体を撓めつつ前記挿入方向に内周縁を乗り越えて嵌入係止するランス係止孔が外周面に設けられた端子本体と、前記端子本体の前記外周面における前記ランス係止孔の前記挿入方向の前方位置に突出形成され、前記キャビティへの収容時に、前記第1係止凸部の前記ランス係止孔への嵌入係止に先立って前記ランス本体を撓めつつ前記第1係止凸部を前記挿入方向に乗り越えて前記第2係止凸部と係止するランス係止凸部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上述のコネクタによれば、ランスの係止部分におけるせん断面積の増大とコネクタ端子の端子挿入力の低減とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るコネクタが備えるコネクタ端子を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されているコネクタ端子が挿入されるハウジングを示す斜視図である。
【
図3】
図2に示されているハウジングを図中の矢印V11方向から見た、相手方コネクタとの嵌合側である前面側端面を示す平面図である。
【
図4】
図2に示されているハウジングを図中の矢印V12方向から見た、電線の延出側である背面側端面を示す平面図である。
【
図5】
図2~
図4に示されているハウジングの、
図3中のV13-V13線に沿った断面を示す断面図である。
【
図7】
図2~
図4に示されているハウジングの、
図5中のV14-V14線に沿った断面を示す断面図である。
【
図8】
図2~
図7に示されているハウジングと、そのキャビティへの挿入対象として、
図1に示されているコネクタ端子とが用意され、挿入のための位置合わせが行われる様子を、コネクタ端子の中心軸を通る断面で示した図である。
【
図9】
図2~
図7に示されているハウジングのキャビティに、
図1に示されているコネクタ端子が、ランスによる係止前の状態まで挿入される様子を、
図8と同様の断面で示した図である。
【
図10】
図2~
図7に示されているハウジングのキャビティに、
図1に示されているコネクタ端子が、ランスの係止が完了するまで挿入される様子を、
図8と同様の断面で示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、コネクタの一実施形態について説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係るコネクタが備えるコネクタ端子を示す斜視図であり、
図2は、
図1に示されているコネクタ端子が挿入されるハウジングを示す斜視図である。
図3は、
図2に示されているハウジングを図中の矢印V11方向から見た、相手方コネクタとの嵌合側である前面側端面を示す平面図である。また、
図4は、
図2に示されているハウジングを図中の矢印V12方向から見た、電線の延出側である背面側端面を示す平面図である。
図5は、
図2~
図4に示されているハウジングの、
図3中のV13-V13線に沿った断面を示す断面図であり、
図6は、
図5中の領域A11の拡大図である。また、
図7は、
図2~
図4に示されているハウジングの、
図5中のV14-V14線に沿った断面を示す断面図である。
【0012】
本実施形態におけるコネクタ1は、
図1に示されているコネクタ端子11が
図2~
図7に示されているハウジング12のキャビティ121に収容されたものである。このコネクタ1は、一例として、車両に搭載されるワイヤーハーネスの端部コネクタ等として利用される。
【0013】
このコネクタ1におけるコネクタ端子11は、導電性の金属で板金加工されたメス型の金属端子であって、電線W1の端部に圧着接続された端子本体111を備えている。この端子本体111は、ハウジング12のキャビティ121の内部で、当該キャビティ121への挿入方向D11に延在する長尺形状を有している。そして、この端子本体111が、メス型嵌合部111aと、導体圧着部111bと、被覆圧着部111cと、を備えている。メス型嵌合部111aは、四角筒状に形成され、相手方であるオス型のピン端子を受け入れて嵌合する部位である。また、導体圧着部111bは電線W1の端部における露出導体W11に圧着される部位であり、被覆圧着部111cは、露出導体W11に隣接する被覆部分W12に圧着される部位である。
【0014】
このコネクタ端子11をキャビティ121に収容するハウジング12は、絶縁樹脂で形成された部材で、上記のキャビティ121と、コネクタ端子11の抜止め用のランス122と、が設けられている。キャビティ121は、四角筒状に形成されて一端開口121aからコネクタ端子11が他端開口121bへと向かう挿入方向D11に挿入されてコネクタ端子11を収容する部位である。ランス122は、キャビティ121の内部でコネクタ端子11に係止して挿入方向D11と逆向きの抜け止めを行う。本実施形態では、キャビティ121が2箇所設けられ、各キャビティ121にランス122が1つずつ設けられている。コネクタ1は、このようなハウジング12の2箇所のキャビティ121に2つのコネクタ端子11が収容されたメス型コネクタとなっている。
【0015】
ここで、上記のランス122は、ランス本体122aと、第1係止凸部122bと、第2係止凸部122cと、を備えて構成されている。ランス本体122aは、キャビティ121の内部において、一端開口121a側を固定端とし、他端開口121b側を自由端として挿入方向D11に延在するカンチレバー状の部位である。第1係止凸部122bは、ランス本体122aの長手方向D12の中途位置に突出形成され、キャビティ121にコネクタ端子11が収容されると当該コネクタ端子11に係止する部位である。また、第2係止凸部122cは、ランス本体122aにおける第1係止凸部122bよりも自由端側で当該第1係止凸部122bよりも低く突出形成された部位である。第2係止凸部122cは、キャビティ121にコネクタ端子11が収容されると第1係止凸部122bとともにコネクタ端子11に係止する。
【0016】
キャビティ121の内部においてこのようなランス122に係止されるコネクタ端子11では、
図1に示されているように、まず、端子本体111における四角筒状のメス型嵌合部111aの外周面111a-1にランス係止孔111dが設けられている。ランス係止孔111dは、キャビティ121へのコネクタ端子11の収容時にランス122の第1係止凸部122bがランス本体122aを撓めつつ挿入方向D11に内周縁111d-1を乗り越えて嵌入係止する四角形状の貫通孔である。また、コネクタ端子11は、ランス122における第2係止凸部122cの係止用に次のようなランス係止凸部112を備えている。このランス係止凸部112は、端子本体111におけるメス型嵌合部111aの外周面111a-1におけるランス係止孔111dの挿入方向D11の前方位置に突出形成された部位となっている。ランス係止凸部112は、キャビティ121へのコネクタ端子11の収容時に、ランス122における第1係止凸部122bのランス係止孔111dへの嵌入係止に先立ってランス本体122aを撓めつつ第1係止凸部122bを挿入方向D11に乗り越える。ランス係止凸部112は、その乗越えた先で、第1係止凸部122bよりも低位の第2係止凸部122cと係止する。
【0017】
また、ランス本体122aでは、第1係止凸部122bよりも固定端側となるランス背面122dが、長手方向D12に沿って延在する平面となっている。そして、第1係止凸部122bにおいて自由端側でコネクタ端子11のランス係止孔111dの内周縁111d-1に当接する第1端面122b-1が次のような面となっている。即ち、この第1端面122b-1は、
図6に示されているように、ランス背面122dに対し、自由端側へと90度以上(本実施形態では、略90度)の角度θ11をなす面となっている。また、第2係止凸部122cにおいて自由端側でランス係止凸部112に当接する第2端面122c-1も、ランス背面122dに対し、自由端側へと90度以上(本実施形態では、略90度)の角度θ12をなす面となっている。
【0018】
また、ランス122は、ランス本体122aにおける第2係止凸部122cよりも更なる自由端側に、次のような解除部122eを更に備えている。この解除部122eは、第2係止凸部122cよりも更に一段下がって挿入方向D11へと舌片状に延出した部位である。この解除部122eは、キャビティ121からコネクタ端子11を挿入方向D11と逆向きに抜出すときに、キャビティ121の他端開口121bから解除治具がアクセスすることで押下げられ、ランス122の各所への係止を解除する部位となっている。即ち、解除治具のアクセスによる解除部122eの押下げによって、第1係止凸部122bのランス係止孔111dへの嵌入係止及び第2係止凸部122cのランス係止凸部112に対する係止が解除される。
【0019】
また、コネクタ端子11は、
図1に示されているランス背面接触凸部113を更に備えている。ランス背面接触凸部113は、端子本体111のメス型嵌合部111aの外周面111a-1におけるランス係止孔111dの挿入方向D11の後方位置に頂部が平面となるように突出形成された部位である。このランス背面接触凸部113は、第1係止凸部122bのランス係止孔111dへの嵌入係止時及び第2係止凸部122cのランス係止凸部112に対する係止時には、ランス背面122dに頂部平面113aで接触する。この平面どうしの接触により、ランス背面接触凸部113は、キャビティ121に対するコネクタ端子11の中心軸11aの傾きを抑制する。
【0020】
また、コネクタ端子11は、
図1に示されている一対のスタビライザ114を更に備えている。一対のスタビライザ114は、端子幅方向D14について、端子本体111におけるメス型嵌合部111aの両側部から端子側突出方向D13に舌片状に突出した一対の部位である。端子側突出方向D13は、ランス係止凸部112が突出する方向であり、端子幅方向D14は、この端子側突出方向D13と挿入方向D11との両方と直交する方向である。一対のスタビライザ114のうちの一方は、ランス係止孔111dの内周縁111d-1における一方の側部側から突出し、他方は、ランス背面接触凸部113に対する他方の側部側の隣接位置から突出している。
【0021】
キャビティ121の内周面には、コネクタ端子11における一対のスタビライザ114に対応する構造として、
図5及び
図7に示されているように、一対の側方ガイド溝121cが設けられている。一対の側方ガイド溝121cは、キャビティ121の内周面に、キャビティ幅方向D16についてランス122を挟んで一端開口121a側から挿入方向D11に一対の溝レール状に延在した部位である。キャビティ幅方向D16は、第1係止凸部122b及び第2係止凸部122cが突出する方向であるランス側突出方向D15と、挿入方向D11と、の両方と直交する方向である。これら一対の側方ガイド溝121cは、コネクタ端子11のキャビティ121への挿入時には一対のスタビライザ114に内側を通過させることで挿入時のコネクタ端子11における中心軸11a回りの姿勢を安定させる。
【0022】
また、キャビティ121の内周面において上記のキャビティ幅方向D16についてランス122を挟んで挿入方向D11に延在する一対の面部分における、ランス122よりも他端開口121b側に次のような一対の端子受け部121dが設けられている。一対の端子受け部121dは、
図5及び
図7に示されているように、各々、キャビティ121の内側に棚状に張り出して、コネクタ端子11の挿入時には、コネクタ端子11の挿入方向D11の先端側を支持する部位である。一対の端子受け部121dは、このようにコネクタ端子11の先端側を支持することでキャビティ121に対するコネクタ端子11の中心軸11aの傾きを抑制する。
【0023】
また、キャビティ121の内周面において、ランス122に対する対面部分には、
図4及び
図5に示されているように、次のような複数列(本実施形態では2列)のガタ抑えリブ121eが設けられている。ガタ抑えリブ121eは、キャビティ121の内側に向かって各々が突出して挿入方向D11に延在するとともに、上記のキャビティ幅方向D16に複数列並べられたリブである。そして、これら複数列のガタ抑えリブ121eは、コネクタ端子11の挿入時に当該コネクタ端子11における四角筒状のメス型嵌合部111aをランス122に向かって押圧することで当該コネクタ端子11のガタを抑制する。
【0024】
次に、以上に説明したハウジング12のキャビティ121に対するコネクタ端子11の挿入について説明する。
【0025】
図8は、
図2~
図7に示されているハウジングと、そのキャビティへの挿入対象として、
図1に示されているコネクタ端子とが用意され、挿入のための位置合わせが行われる様子を、コネクタ端子の中心軸を通る断面で示した図である。
図9は、
図2~
図7に示されているハウジングのキャビティに、
図1に示されているコネクタ端子が、ランスによる係止前の状態まで挿入される様子を、
図8と同様の断面で示した図である。
図10は、
図2~
図7に示されているハウジングのキャビティに、
図1に示されているコネクタ端子が、ランスの係止が完了するまで挿入される様子を、
図8と同様の断面で示した図である。そして、
図11は、
図10中の領域A12の拡大図である。
【0026】
図8に示されている状態では、ハウジング12のキャビティ121の一端開口121aに対し、電線W1の端部に圧着されたコネクタ端子11が、その先端を向けて配置される。また、このときのコネクタ端子11は、ランス係止孔111d、ランス係止凸部112、ランス背面接触凸部113、及びスタビライザ114が、キャビティ121に挿入されたときにランス122側を向く姿勢となる。また、コネクタ端子11は、その中心軸11aが、キャビティ121への挿入方向D11と略平行となるように位置付けられる。
【0027】
図9に示されている状態では、ハウジング12のキャビティ121へとコネクタ端子11が、ランス係止凸部112が第1係止凸部122bと干渉してランス本体122aを押し下げるように撓めつつ挿入方向D11に進んでいる。このときには、ランス背面接触凸部113が頂部平面113aでランス背面122dを摺擦し、スタビライザ114がキャビティ121の内周面における側方ガイド溝121c(
図5)の内側を通過しつつコネクタ端子11が挿入方向D11に進む。また、
図9に示されているようにある程度進んだ状態では、コネクタ端子11の先端側が、キャビティ121の内部の端子受け部121dによって支持されるとともに、複数列のガタ抑えリブ121eによってランス122へと押圧される。この
図9の状態からコネクタ端子11が挿入方向D11に更に進むと、ランス係止凸部112が第1係止凸部122bを乗り越えることで、ランス本体122aの撓みが解消されて
図10及び
図11に示されている挿入完了状態へと至る。
【0028】
挿入完了状態では、ハウジング12のキャビティ121の内部において、ランス122の第1係止凸部122bがコネクタ端子11のランス係止孔111dに嵌入係止するとともに、第2係止凸部122cがランス係止凸部112に係止する。また、このときには、ランス背面接触凸部113が頂部平面113aでランス背面122dに当接する。更に、コネクタ端子11の先端側が端子受け部121dによって支持されるとともに、複数列のガタ抑えリブ121eがその突出量に応じた若干量だけコネクタ端子11をランス122へと押圧する。
【0029】
更に、この挿入完了状態では、
図11に示されているように、ランス係止孔111dの周囲面111d-2と第2係止凸部122cの頂部122c-2とのクリアランスより、ランス係止凸部112の頂部112aと解除部122eとのクリアランスが大きい。より具体的には、本実施形態では、ランス係止孔111dの周囲面と第2係止凸部122cの頂部とが、ガタ抑えリブ121eによる押圧等により密着しており、ここでのクリアランスが略ゼロとなっている。他方で、ランス係止凸部112の頂部と解除部122eとの間には若干のクリアランスd11が開いた状態となっている。
【0030】
本実施形態のコネクタ1は、ハウジング12における2箇所のキャビティ121に対して2つのコネクタ端子11が
図10及び
図11の挿入完了状態で収容されたものとなっている。
【0031】
以上に説明した実施形態のコネクタ1によれば、コネクタ端子11に挿入方向D11と逆向きの引張り力が掛かるときのランス122の係止部分におけるせん断面積は次のようなものとなる。即ち、このせん断面積は、第1係止凸部122bにおけるランス係止孔111dとの係止箇所と、第2係止凸部122cにおけるランス係止凸部112との係止箇所とに生じる。このようにせん断面積が2箇所に生じることで、本実施形態のコネクタ1によれば、挿入方向D11と逆向きの引張り力に対するランス122の係止部分におけるせん断面積が増やされている。更に、このコネクタ1によれば、ランス122は、カンチレバー状のランス本体122aの中途位置と自由端側に第1係止凸部122bと第2係止凸部122cが設けられた片持ち梁構造となっている。この片持ち梁構造により、上記のランス122は、両持ち梁構造のランスに比べると撓み易く、その分、コネクタ端子11の端子挿入力が低減されている。このように、本実施形態のコネクタ1によれば、ランス122の係止部分におけるせん断面積の増大とコネクタ端子11の端子挿入力の低減とを両立させることができる。
【0032】
ここで、本実施形態では、第1係止凸部122bにおいてランス係止孔111dの内周縁111d-1に当接する第1端面122b-1は平面状のランス背面122dに対し、自由端側へと90度以上の角度θ11をなす。また、第2係止凸部122cにおいてランス係止凸部112に当接する第2端面122c-1も、ランス背面に対して自由端側へと90度以上の角度θ12をなす。この構成によれば、第1係止凸部122bの第1端面122b-1及び第2係止凸部122cの第2端面122c-1の、ランス係止孔111dの内周縁111d-1及びランス係止凸部112に対する掛かり方が深くなる。このような掛かり方により、コネクタ端子11に対するランス122の係止強度を更に向上させることができる。
【0033】
また、本実施形態では、ランス係止時におけるランス係止孔111dの周囲面111d-2と第2係止凸部122cの頂部122c-2とのクリアランス(略ゼロ)より、ランス係止凸部112の頂部112aと解除部122eとのクリアランスd11が大きい。
【0034】
上述の係止構造において、第1係止凸部122bとランス係止孔111dとの係止を確実なものとするには、次のような係止状態が好ましい。即ち、ランス係止孔111dの周囲面111d-2に第2係止凸部122cの頂部122c-2が当接するまで第1係止凸部122bがランス係止孔111dへと深く嵌入係止することが好ましい。本実施形態によれば、第1係止凸部122bがランス係止孔111dにこのような状態で嵌入係止したとしても、上述のクリアランスの大小関係から次のような状態となる。即ち、第2係止凸部122cがランス係止凸部112に十分に係止した上で尚、ランス係止凸部112の頂部112aと解除部122eとの間に余裕が存在する。従って、本実施形態によれば、第1係止凸部122bとランス係止孔111dとの係止、及び第2係止凸部122cとランス係止凸部112との係止を十分なものとして、せん断面積を一層大きくして係止強度を更に向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態では、コネクタ端子11が、ランス背面122dに頂部平面113aで接触することでキャビティ121に対するコネクタ端子11の中心軸11aの傾きを抑制するランス背面接触凸部113を備えている。この構成によれば、ランス背面接触凸部113の頂部平面113aとランス背面122dとの接触により、コネクタ端子11の姿勢について、ランス背面122dに対して中心軸11aが略平行となった水平な姿勢になるように端子位置補正を行うことができる。
【0036】
また、本実施形態では、コネクタ端子11が一対のスタビライザ114を備えている。そして、キャビティ121の内周面には、一対のスタビライザ114に内側を通過させることで端子挿入時のコネクタ端子11の中心軸11a回りの姿勢を安定させる一対の側方ガイド溝121cが設けられている。この構成によれば、一対の側方ガイド溝121cを一対のスタビライザ114が通過させることで、端子挿入時にコネクタ端子11がキャビティ121内で中心軸11a回りにローリングする等といった事態の発生を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態では、キャビティ121の内周面に、端子挿入時にはコネクタ端子11の先端側を支持することでキャビティ121に対するコネクタ端子11の中心軸11aの傾きを抑制する一対の端子受け部121dが設けられている。この構成によれば、一対の端子受け部121dでのコネクタ端子11の先端側の支持によってコネクタ端子11の中心軸11aの傾きが抑制された作業性の良好な状態で、キャビティ121へのコネクタ端子11の挿入を行うことができる。
【0038】
また、本実施形態では、キャビティ121の内周面に、端子挿入時にコネクタ端子11をランス122に向かって押圧することで当該コネクタ端子11のガタを抑制する複数列のガタ抑えリブ121eが設けられている。この構成によれば、ガタ抑えリブ121eがコネクタ端子11をランス122に向かって押圧することでガタが抑制された状態で、キャビティ121へのコネクタ端子11の挿入を行うことができる。更に、コネクタ端子11がランス122に向かって押圧されることで、コネクタ端子11がランス122から離れる方向に逃げ、コネクタ端子11に対するランス122の係止量が減る等といった事態の発生を抑えることができる。
【0039】
尚、以上に説明した実施形態はコネクタの代表的な形態を示したに過ぎない。コネクタは、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、コネクタの一例として、車両に搭載されるワイヤーハーネスの端部コネクタ等として利用されるコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、その具体的な適用対象を問うものではない。
【0041】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、ハウジング12に2箇所のキャビティ121が設けられ、これら2箇所のキャビティ121に2つのメス型のコネクタ端子11が収容されたメス型のコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、具体的なキャビティの形成数、端子数、及びコネクタ端子のオス/メス等についてはこれを問うものではなく、任意に設定することができる。
【0042】
また、上述した実施形態では、ランスの一例として、次のようなランス122が例示されている。即ち、このランス122では、第1係止凸部122bの第1端面122b-1及び第2係止凸部122cの第2端面122c-1がランス背面122dに対して自由端側へと90度以上の角度θ11、θ12をなしている。しかしながら、ランスは、これに限るものではなく、第1係止凸部の第1端面及び第2係止凸部の第2端面の、ランス背面に対する角度は任意の角度に設定することができる。ただし、上記の各端面を、ランス背面122dに対して自由端側へと90度以上の角度θ11、θ12をなすように形成することで、コネクタ端子11に対するランス122の係止強度を更に向上させることができる点は上述した通りである。
【0043】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、次のようなコネクタ1が例示されている。即ち、このコネクタ1では、ランス係止孔111dの周囲面111d-2と第2係止凸部122cの頂部122c-2とのクリアランス(略ゼロ)より、ランス係止凸部112の頂部112aと解除部122eとのクリアランスd11が大きい。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、上記の2箇所のクリアランスの相互間の大小関係は例示とは逆の関係であってもよい。ただし、本実施形態で例示したクリアランスの大小関係によれば、せん断面積を一層大きくして係止強度を更に向上させることができる点は上述した通りである。
【0044】
また、上述した実施形態では、コネクタ端子の一例として、頂部平面113aでランス背面122dに接触するランス背面接触凸部113を備えたコネクタ端子11が例示されている。しかしながら、コネクタ端子は、これに限るものではなく、ランス背面接触凸部を設けないこととしてもよい。ただし、コネクタ端子11にランス背面接触凸部113を設けることで、ランス背面122dに対してコネクタ端子11の中心軸11aが略平行となった水平な姿勢になるように端子位置補正を行うことができる点は上述した通りである。
【0045】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、コネクタ端子11が一対のスタビライザ114を備え、キャビティ121の内周面に一対の側方ガイド溝121cが設けられたコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、コネクタ端子にはスタビライザを設けず、キャビティの内周面にも側方ガイド溝を設けないこととしてもよい。ただし、コネクタ端子11にスタビライザ114を設け、キャビティ121に側方ガイド溝121cを設けることで、コネクタ端子11がキャビティ121内でローリングする等といった事態の発生を抑制することができる点は上述した通りである。
【0046】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、キャビティ121の内周面にコネクタ端子11の先端側を支持する一対の端子受け部121dが設けられたコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、キャビティの内周面に端子受け部を設けないこととしてもよい。ただし、キャビティ121の内周面に端子受け部121dを設けることで、コネクタ端子11の中心軸11aの傾きが抑制された作業性の良好な状態で、キャビティ121へのコネクタ端子11の挿入を行うことができる点は上述した通りである。
【0047】
また、上述した実施形態では、コネクタの一例として、キャビティ121の内周面に、コネクタ端子11をランス122に向かって押圧する複数列のガタ抑えリブ121eが設けられたコネクタ1が例示されている。しかしながら、コネクタは、これに限るものではなく、キャビティの内周面にガタ抑えリブを全く設けないこととしてもよい。ただし、キャビティ121の内周面に複数列のガタ抑えリブ121eを設けることで、ガタが抑制された状態で端子挿入を行うことができ、また、ランス122の係止量が減る等といった事態の発生を抑えることができる点は上述した通りである。尚、上述の実施形態では、複数列のガタ抑えリブの一例として、2列のガタ抑えリブ121eが例示されている。しかしながら、このガタ抑えリブの形成数は、これに限るものではなく、複数列であれば、任意の列数でガタ抑えリブを形成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 コネクタ
11 コネクタ端子
11a 中心軸
12 ハウジング
111 端子本体
111a メス型嵌合部
111a-1 外周面
111b 導体圧着部
111c 被覆圧着部
111d ランス係止孔
111d-1 内周縁
111d-2 周囲面
112 ランス係止凸部
112a,122c-2 頂部
113 ランス背面接触凸部
113a 頂部平面
114 スタビライザ
121 キャビティ
121a 一端開口
121b 他端開口
121c 側方ガイド溝
121d 端子受け部
121e ガタ抑えリブ
122 ランス
122a ランス本体
122b 第1係止凸部
122b-1 第1端面
122c 第2係止凸部
122c-1 第2端面
122d ランス背面
122e 解除部
d11 クリアランス
D11 挿入方向
D12 長手方向
D13 端子側突出方向
D14 端子幅方向
D15 ランス側突出方向
D16 キャビティ幅方向
W1 電線
W11 露出導体
W12 被覆部分
θ11,θ12 角度