(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101736
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/636 20210101AFI20240723BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M50/636
H01M50/103
H01M50/119
H01M50/15
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005836
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 慎吾
【テーマコード(参考)】
5H011
5H023
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011AA17
5H011BB03
5H011CC06
5H023AA03
5H023AS03
5H023BB10
5H023CC11
5H023CC14
5H023CC16
5H023CC27
(57)【要約】
【課題】金属ケースに設けた円窪み部に全周に亘って均一にキャップの外周縁部を溶接した蓄電デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】金属ケース2の側壁部4に設けられ厚み方向内側HXIに向けて窪み、円環底部4PS内に注液孔4PHが穿孔されてなる円窪み部4PRと、この周囲を囲む窪み周囲部4PMと、窪み周囲部4PMに溶接され注液孔4PHを気密に封止するキャップ部4PCと、を有する蓄電デバイス1の製造方法であって、キャップ部4PCとなる未溶接キャップ14Cのうち、少なくとも円環状のキャップ外周縁部14CPを金属ケースの円窪み部4PR内に収容し、内周面4PRIにキャップ外周縁部14CPを全周に亘り当接させる当接工程S61と、キャップ外周縁部14CPが円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接した状態で、窪み周囲部4PMにキャップ外周縁部14CPを、全周に亘りエネルギービーム溶接する全周溶接工程S64と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体、電解液、及び、これらを収容する金属ケースを備え、
前記金属ケースは、
前記金属ケースをなす側壁部に設けられ、前記側壁部の厚み方向内側に向けて窪む円窪み部であって、
前記円窪み部の底面をなす円環底部内に注液孔が穿孔されてなる
前記円窪み部と、
前記円窪み部の周囲を囲む窪み周囲部と、
前記窪み周囲部に溶接され、前記注液孔を気密に封止するキャップ部と、を有する
蓄電デバイスの製造方法であって、
前記キャップ部となる未溶接キャップのうち、少なくとも円環状のキャップ外周縁部を前記金属ケースの前記円窪み部内に収容し、前記円窪み部の内周面に、前記キャップ外周縁部を全周に亘り当接させる当接工程と、
前記キャップ外周縁部が前記円窪み部の前記内周面に全周に亘り当接した状態で、前記窪み周囲部に前記キャップ外周縁部を、全周に亘りエネルギービーム溶接する全周溶接工程と、を備える
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記当接工程の後、前記全周溶接工程の前に、
前記キャップ外周縁部を前記円窪み部の前記内周面に全周に亘り当接した状態に、前記キャップ外周縁部を前記窪み周囲部に仮固定する仮固定工程を備える
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記未溶接キャップは、拡径操作により、前記キャップ外周縁部を拡径可能に構成されており、
前記当接工程は、
前記未溶接キャップのうち少なくとも前記キャップ外周縁部を前記金属ケースの前記円窪み部内に収容した形態に、前記未溶接キャップを配置する配置工程、及び、
前記拡径操作により、前記キャップ外周縁部を拡径させて、前記キャップ外周縁部を前記円窪み部の前記内周面に全周に亘り当接させる拡径当接工程、を有する
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記未溶接キャップは、
金属板体からなり、
外形がキャップ軸線周りに回転対称な二次元ベルカーブ状であり、
キャップ頂部、及び、
前記キャップ頂部よりも、キャップ径方向外側に位置する前記キャップ外周縁部を有し、
前記拡径操作は、
前記キャップ頂部を、前記キャップ軸線に沿って前記キャップ頂部から前記キャップ外周縁部に向かうキャップ軸線方向内側に押圧して、
前記キャップ外周縁部を、前記キャップ径方向外側に拡径させる操作である
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記未溶接キャップは、縮径操作により、前記キャップ外周縁部を弾性的に縮径可能に構成されており、
前記当接工程は、
前記縮径操作により、前記キャップ外周縁部を弾性的に縮径させる縮径工程、
前記未溶接キャップのうち少なくとも縮径させた前記キャップ外周縁部を前記円窪み部内に収容した形態に、前記未溶接キャップを配置する配置工程、及び、
前記縮径操作を解除し前記キャップ外周縁部を拡径させて、前記キャップ外周縁部を前記円窪み部の前記内周面に全周に亘り当接させる解除当接工程、を有する
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記未溶接キャップは、
金属板体からなり、
外形がキャップ軸線周りに回転対称な二次元ベルカーブ状であり、
前記キャップ外周縁部、及び、
前記キャップ外周縁部よりも、上記未溶接キャップの軸線方向に直交するキャップ径方向内側に位置するキャップ内側部を有し、
前記縮径操作は、
前記キャップ内側部を、前記キャップ軸線に沿って前記キャップ外周縁部側から前記キャップ内側部側に向かうキャップ軸線方向外側に吸引して、
前記キャップ外周縁部を、前記キャップ径方向内側に弾性的に縮径させる操作である
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記金属ケースの前記円窪み部の前記内周面は、
前記厚み方向内側ほど径大となる形状を有し、
前記未溶接キャップのキャップ外周端面は、
前記未溶接キャップの前記キャップ外周縁部を前記円窪み部内に収容した状態において、前記厚み方向内側ほど径大となる形状を有する
蓄電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極体及び電解液を収容した金属ケースの注液孔を気密に封止したキャップ部を有する蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極体及び電解液を収容した金属ケースを有するリチウムイオン二次電池などの蓄電デバイスにおいて、金属ケースの注液孔を金属ケースに溶接されたキャップ部で気密に封止した蓄電デバイスやその製造方法が知られている。例えば、特許文献1には、電池缶である筐体の蓋体に設けた注液口に未溶接のキャップを被せ、このキャップの周縁部を筐体に接合する技術が記載されている。具体的には、筐体(蓋体)にその外表面よりも一段低く設けた円柱状の窪み部を設けると共に、その底部の中央部に注液口を形成しておく。そしてこの窪み部内に外周円板状のキャップを挿入し、窪み部を囲む筐体の壁部にキャップの外周縁部を全周に亘りレーザ溶接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、筐体に設けた円柱状の窪み部内に、キャップの外周縁部を挿入可能とするには、窪み部の内径寸法に比して、キャップの外周縁部の外形寸法を小さくする必要があるため、溶接前の窪み部内にキャップの外周縁部を配置した状態において、筐体の窪み部の内周面と封止キャップの外周端面との間には、隙間が生じざるを得ない。しかも、その隙間の大きさは全周に亘り均一であるとは限らない。多くの場合は、筐体の窪み部をなす壁部の内周面に対し、キャップの外周端面が偏って配置される。場合によっては、窪み部の内周面の周方向一部にキャップの外周端面の周方向一部が当接する一方、逆側には大きな隙間が生じた状態に配置される場合も有る。
【0005】
このような配置の状態で、筐体の壁部にキャップの外周縁部を全周に亘りレーザ溶接すると、隙間の大小の変動により、溶接の状態が周方向に変動しやすく、封止不良が生じたり、封止の強度が変動しやすい。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、金属ケースに設けた円窪み部に全周に亘って均一にキャップの外周縁部を溶接した蓄電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、電極体、電解液、及び、これらを収容する金属ケースを備え、前記金属ケースは、前記金属ケースをなす側壁部に設けられ、前記側壁部の厚み方向内側に向けて窪む円窪み部であって、前記円窪み部の底面をなす円環底部内に注液孔が穿孔されてなる前記円窪み部と、前記円窪み部の周囲を囲む窪み周囲部と、前記窪み周囲部に溶接され、前記注液孔を気密に封止するキャップ部と、を有する蓄電デバイスの製造方法であって、前記キャップ部となる未溶接キャップのうち、少なくとも円環状のキャップ外周縁部を前記金属ケースの前記円窪み部内に収容し、前記円窪み部の内周面に、前記キャップ外周縁部を全周に亘り当接させる当接工程と、前記キャップ外周縁部が前記円窪み部の前記内周面に全周に亘り当接した状態で、前記窪み周囲部に前記キャップ外周縁部を、全周に亘りエネルギービーム溶接する全周溶接工程と、を備える蓄電デバイスの製造方法である。
【0007】
上述の蓄電デバイスの製造方法では、当接工程で、未溶接キャップのうち少なくともキャップ外周縁部を金属ケースに設けた円窪み部内に収容し、その後、この円窪み部の内周面にキャップ外周縁部を全周に亘り当接させる。即ち、全周に亘り、円窪み部の内周面と未溶接キャップの外周端面との間に隙間が生じていない状態とする。その後、全周溶接工程では、このようにキャップ外周縁部が円窪み部の内周面に全周に亘り当接した状態で、窪み周囲部にキャップ外周縁部を、全周に亘りエネルギービーム溶接する。このため、隙間の大小の変動により溶接の状態が周方向に変動することが防止され、窪み周囲部にキャップ外周縁部を全周に亘り均一に溶接でき、キャップ部における封止の強度の変動を抑制できる。
【0008】
未溶接キャップのうち少なくともキャップ外周縁部を金属ケースに設けた円窪み部内に収容した後、この円窪み部の内周面にキャップ外周縁部を全周に亘り当接させる手法としては、拡径操作可能な未溶接キャップのキャップ外周縁部を金属ケースの円窪み部内に収容した後に、拡径操作によって未溶接キャップのキャップ外周縁部を拡径させて、円窪み部の内周面にキャップ外周縁部を全周に亘り当接させる手法が挙げられる。また、予め縮径操作によって未溶接キャップのキャップ外周縁部を縮径させておき、未溶接キャップのキャップ外周縁部を金属ケースの円窪み部内に収容した後に、縮径操作を解除して未溶接キャップのキャップ外周縁部を拡径させ、円窪み部の内周面にキャップ外周縁部を全周に亘り当接させる手法も挙げられる。
【0009】
(2)(1)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記当接工程の後、前記全周溶接工程の前に、前記キャップ外周縁部を前記円窪み部の前記内周面に全周に亘り当接した状態に、前記キャップ外周縁部を前記窪み周囲部に仮固定する仮固定工程を備える蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0010】
この製造方法では、前述の当接工程の後で全周溶接工程の前に、仮固定工程を備えている。このため、仮固定を行った後は、前述の拡径操作などを継続しなくとも、キャップ外周縁部が円窪み部の内周面に全周に亘り当接した状態を維持して、全周溶接工程を行うことができる。また、全周溶接工程前に、未溶接キャップが円窪み部から脱落する不具合の発生も防止できる。
【0011】
この仮固定の手法としては、キャップ外周縁部が円窪み部の内周面に全周に亘り当接した状態で、周方向に数カ所だけ、キャップ外周縁部を窪み周囲部にエネルギービーム溶接する手法が挙げられる。また、キャップ外周縁部に粘着材を適用しておき、キャップ外周縁部が円窪み部の内周面に全周に亘り当接した状態で、キャップ外周縁部を円窪み部の円環底部に粘着する手法も挙げられる。
【0012】
(3)(1)または(2)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記未溶接キャップは、拡径操作により、前記キャップ外周縁部を拡径可能に構成されており、前記当接工程は、前記未溶接キャップのうち少なくとも前記キャップ外周縁部を前記金属ケースの前記円窪み部内に収容した形態に、前記未溶接キャップを配置する配置工程、及び、前記拡径操作により、前記キャップ外周縁部を拡径させて、前記キャップ外周縁部を前記円窪み部の前記内周面に全周に亘り当接させる拡径当接工程、を有する蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0013】
この製造方法では、未溶接キャップとして、拡径操作によりキャップ外周縁部を拡径可能に構成された未溶接キャップを用い、当接工程のうち、配置工程では拡径前の未溶接キャップを配置した後、拡径当接工程で、拡径操作によりキャップ外周縁部を拡径させて円窪み部の内周面に全周に亘り当接させる。このため、拡径操作前の未溶接キャップのキャップ外周縁部を円窪み部内に容易に配置することができる。
【0014】
なお、拡径操作によりキャップ外周縁部を拡径可能に構成した未溶接キャップとしては、外形がキャップ軸線周りに回転対称な二次元ベルカーブ状(二次元正規分布曲線状)の金属板体からなり、中央部分のキャップ頂部をキャップ軸線に沿ってキャップ軸線方向内側に向けて押圧する拡径操作で、キャップ外周縁部が拡径できる未溶接キャップが挙げられる。また、円板状のキャップ中央部と円錐台面状でその周囲を囲み板厚方向になだらかに裾を引いて拡がるキャップ外周縁部を有しており、キャップ中央部は、軸線方向のうちキャップ外周縁部から離れる側に球面状に膨らんだ状態と、軸線方向のうちキャップ外周縁部に近づく側に球面状に凹んだ状態とを、クリック状に遷移させることで選択可能とされ、キャップ中央部が膨らんだ状態と凹んだ状態のいずれかとした場合(拡径操作)にはキャップ外周縁部が拡径した状態となり、逆の状態とした場合(解除操作、縮径操作)にはキャップ外周縁部が縮径した状態となるように構成された未溶接キャップも挙げられる。
【0015】
(4)(3)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記未溶接キャップは、金属板体からなり、外形がキャップ軸線周りに回転対称な二次元ベルカーブ状であり、キャップ頂部、及び、前記キャップ頂部よりも、キャップ径方向外側に位置する前記キャップ外周縁部を有し、前記拡径操作は、前記キャップ頂部を、前記キャップ軸線に沿って前記キャップ頂部から前記キャップ外周縁部に向かうキャップ軸線方向内側に押圧して、前記キャップ外周縁部を、前記キャップ径方向外側に拡径させる操作である蓄電デバイスの製造方法とするとよい。
【0016】
この製造方法では、外形がキャップ軸線周りに回転対称な二次元ベルカーブ状でキャップ頂部及びキャップ外周縁部を有する未溶接キャップを用いる。また、拡径操作は、キャップ頂部をキャップ軸線方向内側に押圧して、キャップ外周縁部をキャップ径方向外側に拡径させる操作である。このため、配置工程で、未溶接キャップのキャップ外周縁部を金属ケースの円窪み部内に収容した形態に未溶接キャップを配置した上で、拡径当接工程において、未溶接キャップのキャップ頂部をキャップ軸線方向内側に押圧することで、容易にキャップ外周縁部を拡径させ、キャップ外周縁部を円窪み部の内周面に全周に亘り当接させることができる。
【0017】
(5)(1)または(2)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記未溶接キャップは、縮径操作により、前記キャップ外周縁部を弾性的に縮径可能に構成されており、前記当接工程は、前記縮径操作により、前記キャップ外周縁部を弾性的に縮径させる縮径工程、前記未溶接キャップのうち少なくとも縮径させた前記キャップ外周縁部を前記円窪み部内に収容した形態に、前記未溶接キャップを配置する配置工程、及び、前記縮径操作を解除し前記キャップ外周縁部を拡径させて、前記キャップ外周縁部を前記円窪み部の前記内周面に全周に亘り当接させる解除当接工程、を有する蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0018】
この製造方法では、未溶接キャップとして、縮径操作によりキャップ外周縁部を弾性的に縮径可能に構成された未溶接キャップを用い、当接工程のうち、配置工程では弾性的に縮径させた未溶接キャップを配置した後、解除当接工程で、縮径操作を解除してキャップ外周縁部を拡径させて円窪み部の内周面に全周に亘り当接させる。このため、縮径操作を解除した後の全周溶接工程或いは仮溶接工程において、縮径操作のための治具などが障害になることがなく、容易に溶接を行うことができる。
【0019】
なお、縮径操作によりキャップ外周縁部を弾性的に縮径可能に構成した未溶接キャップとしては、外形がキャップ軸線周りに回転対称な二次元ベルカーブ状の金属板体からなり、裾部分をなすキャップ外周縁部よりもキャップ径方向内側のキャップ内側部をキャップ軸線に沿ってキャップ外周縁部から離れる側に吸引する縮径操作で、キャップ外周縁部が弾性的に縮径する未溶接キャップが挙げられる。また、前述の、キャップ中央部が膨らんだ状態と凹んだ状態のいずれかとした場合にはキャップ外周縁部が拡径した状態となり、逆の状態とした場合にはキャップ外周縁部が縮径した状態となるように構成された未溶接キャップも挙げられる。
【0020】
(6)(5)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記未溶接キャップは、金属板体からなり、外形がキャップ軸線周りに回転対称な二次元ベルカーブ状であり、前記キャップ外周縁部、及び、前記キャップ外周縁部よりも、上記未溶接キャップの軸線方向に直交するキャップ径方向内側に位置するキャップ内側部を有し、前記縮径操作は、前記キャップ内側部を、前記キャップ軸線に沿って前記キャップ外周縁部側から前記キャップ内側部側に向かうキャップ軸線方向外側に吸引して、前記キャップ外周縁部を、前記キャップ径方向内側に弾性的に縮径させる操作である蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0021】
この製造方法では、外形がキャップ軸線周りに回転対称な二次元ベルカーブ状でキャップ外周縁部及びキャップ内側部を有する未溶接キャップを用いる。また、縮径操作は、キャップ内側部をキャップ軸線方向外側に吸引して、キャップ外周縁部をキャップ径方向内側に弾性的に縮径させる操作である。このため、縮径配置工程で、縮径させた未溶接キャップのキャップ外周縁部を金属ケースの円窪み部内に収容した形態に未溶接キャップを配置した上で、解除当接工程において、縮径操作を解除、即ち、吸引を停止することで、容易にキャップ外周縁部を拡径させ、キャップ外周縁部を円窪み部の内周面に全周に亘り当接させ、これをすることができる。
【0022】
(7)(1)~(6)のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記金属ケースの前記円窪み部の前記内周面は、前記厚み方向内側ほど径大となる形状を有し、前記未溶接キャップのキャップ外周端面は、前記未溶接キャップのうち前記キャップ外周縁部を前記円窪み部内に収容した状態において、前記厚み方向内側ほど径大となる形状を有する蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0023】
この製造方法では、金属ケースの円窪み部の内周面、及び、未溶接キャップのキャップ外周端面が、厚み方向内側ほど径大となる形状とされているので、当接工程において、未溶接キャップのキャップ外周縁部を拡径させて、キャップ外周縁部を円窪み部の内周面に全周に亘り当接させると、未溶接キャップが円窪み部に係合して抜け難くなる。このため、当接工程の後、全周溶接工程或いは仮固定工程までに、未溶接キャップが円窪み部から脱落する不具合を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施形態1,2及び変形形態に係る電池の部分破断縦断面図である。
【
図2】実施形態1及び変形形態に係る電池の製造の各ステップを示すフローチャートである。
【
図3】実施形態1,2及び変形形態に係り、電池の蓋体の円窪み部に未溶接キャップを配置し溶接した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図4】実施形態1に係り、電池の蓋体の円窪み部内に未溶接キャップを配置した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図5】実施形態1に係り、電池の蓋体の円窪み部に配置した未溶接キャップを押圧し拡径させて、円窪み部の内周面に外周縁部を全周に亘り当接させた状態を示す部分拡大断面図である。
【
図6】実施形態1に係り、未溶接キャップの外周縁部が円窪み部の内周面に全周に亘り当接した状態で、窪み周囲部に外周縁部をレーザ溶接で仮固定する様子を示す説明図である。
【
図7】変形形態に係り、未溶接キャップの外周縁部、及び、蓋体の円窪み部の内周面の形状を示す説明図である。
【
図8】実施形態2に係る電池の製造の各ステップを示すフローチャートである。
【
図9】実施形態2に係り、電池の蓋体の円窪み部と未溶接キャップとの径寸法の関係を示す説明図である。
【
図10】実施形態2に係り、未溶接キャップを吸引し縮径させた状態を示す部分拡大断面図である。
【
図11】実施形態2に係り、電池の蓋体の円窪み部内に縮径させた未溶接キャップを配置した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図12】実施形態2に係り、未溶接キャップの吸引を解放して拡径させて、円窪み部の内周面に外周縁部を全周に亘り当接させた状態を示す部分拡大断面図である。
【
図13】実施形態2に係り、未溶接キャップの外周縁部が円窪み部の内周面に全周に亘り当接した状態で、窪み周囲部に外周縁部をレーザ溶接で仮固定する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1のリチウムイオン二次電池(以下、単に電池ともいう)1の製造方法を、
図1~
図6の図面を参照しつつ説明する。
図1に示す、本実施形態1で製造される角型の電池1は、扁平捲回電極体(以下、単に電極体ともいう)7と、この電極体7を内部に収容する金属製(本実施形態ではアルミニウム製)で直方体箱状のケース2と、このケース2に支持された正極端子5及び負極端子6等から構成されている。またケース2内には、電解液8が収容されており、その一部は電極体7内に含浸され、一部はケース2の底部に溜まっている。
【0026】
直方体箱状のケース2は、開口3Cを有する有底角筒状のケース本体3と、ケース本体3の開口3Cを閉塞する形態で溶接された矩形板状の蓋体4とから構成されている。この蓋体4には、図示しない絶縁材を介して正極端子5及び負極端子6が固設されている。また、蓋体4の中央部分には、蓋体4の他の部位よりも薄肉化され、ケース2の内圧が開弁圧を超えたときに破断して開弁し、ケース2内で発生したガスをケース2外に放出する非復帰型の安全弁4Sが設けられている。加えて、蓋体4には、具体的には、安全弁4Sと正極端子5との間には、蓋体4をその厚み方向に貫通する注液孔4PHと、この注液孔4PHを気密に封止した注液部4Pとを有している。なお、注液孔4PHの孔軸線X1は蓋体4の厚み方向に一致している。
【0027】
電極体7は、帯状の正極板7Pと帯状の負極板7Nとを、多孔質樹脂膜からなる帯状の2枚のセパレータ7Sを介して交互に積層し捲回し、扁平状に押し潰した扁平捲回型の電極体である。この電極体7は、捲回軸線7Xを横倒しにした状態で、図示しない有底角筒状の樹脂フィルムを介してケース2に収容されている。電極体7のうち、捲回軸線方向一方側(
図1において右側)7X1には、正極板7Pのうち正極集電箔7Paが露出して捲回された正極集電部7PSが設けられており、この正極集電部7PSには正極端子5が溶接されている。また、電極体7のうち、捲回軸線方向他方側(
図1において左側)7X2には、負極板7Nのうち負極集電箔7Naが露出して捲回された負極集電部7NSが設けられており、この負極集電部7NSには負極端子6が溶接されている。
【0028】
次いで、電池1の製造手順について、
図2のフローチャートを参照して説明する。別途、公知の手法で前述の扁平捲回型の電極体7を形成しておく。また別途、蓋体4に正極端子5及び負極端子6を固設しておく。その上で、電極体接続工程S1では、電極体7の正極集電部7PSに正極端子5を溶接し、負極集電部7NSに負極端子6を溶接して、蓋体4、正極端子5、負極端子6及び電極体7を一体とする。次いで挿入工程S2では、電極体7の周囲に有底角筒状に折り畳んだ樹脂フィルム(図示しない)を被せ、この樹脂フィルム及び電極体7を開口3Cを通じてケース本体3内に挿入し、さらに、開口3Cを蓋体4で閉塞する。次いで封口溶接工程S3では、ケース本体3の開口3C部分と蓋体4の周縁部分とを全周に亘りレーザ溶接して、開口3Cを封止すると共にケース本体3と蓋体4とを一体化してケース2とする。
【0029】
続く注液仮封止工程S4では、蓋体4の注液孔4PHを通じて電解液8をケース2内に注入し、ゴム栓(図示しない)で注液孔4PHを仮封止する。注入された電解液8は、電極体7内に含浸されるほか、ケース2の底部に溜まる。その後、初充電エージング工程S5では、正極端子5と負極端子6の間に電圧を印加して電池1を初充電し、さらに、所定時間に亘り高温環境下で保持する。
【0030】
その後、封止工程S6では、仮封止を解除し、次述する未溶接キャップ14Cを注液孔4PHの周囲に全周に亘って溶接して、注液孔4PHを気密に封止する。これにより、電池1が完成する。
【0031】
次いで、封止工程S6における、未溶接キャップ14Cを用いた注液孔4PHの封止について、詳細に説明する。封止工程S6の説明に先立って、未溶接キャップ14C、及び、ケース2の蓋体4のうち、未溶接キャップ14Cを溶接する前の注液孔4PH付近の形態、及び、封止後の注液部4Pの形態について説明する。
【0032】
図4に示すように、直方体状のケース2の6つの側壁部の1つをなす蓋体4は、外部(
図1,
図4において上方)を向く蓋外表面4OSを有する。さらに蓋体4は、円窪み部4PRを有している。具体的には、この蓋外表面4OSから、孔軸線方向内側HXIに向けて円柱状に窪む円窪み部4PRを有している。この円窪み部4PRの底面4PRBをなす円環底部4PS内の中央には、前述の注液孔4PHが穿孔されている。即ち、本実施形態では、円窪み部4PRは注液孔4PHと同心とされており、円窪み部4PRの中心軸は、注液孔4PHの孔軸線X1に一致している。蓋体4のうち、円窪み部4PRの周囲を囲む部位を窪み周囲部4PMとする。また、円窪み部4PRの内径を窪み内径D4とする。
【0033】
一方、未溶接キャップ14Cは、
図4に示すように、金属板体(本実施形態ではアルミニウム板)からなり、外形がキャップ軸線X2周りに回転対称な二次元ベルカーブ状(正規分布曲線状、釣鐘曲線状)である。即ち、未溶接キャップ14Cは、概ね、ベルカーブ(正規分布曲線、釣鐘曲線)を中心線であるキャップ軸線X2を中心として、その周りに1/2周回転させたときに得られる三次元形状を有している。この未溶接キャップ14Cは、中央部分に位置しかつキャップ軸線方向外側CXO(
図1,
図4において上方)に向けて凸形状をなす頂部(キャップ頂部の一例)14CT、及び、この頂部14CTよりも、キャップ径方向外側CROに位置し、キャップ径方向外側CROに向けて拡がる円環状の外周縁部(キャップ外周縁部の一例)14CPを有している。この未溶接キャップ14Cの外径をキャップ外径14Dとする。なお
図4に示すように、自由状態の未溶接キャップ14Cのキャップ外径14Dは、円窪み部4PRの窪み内径D4よりも小さい(14D<4D)。
【0034】
本実施形態1の未溶接キャップ14Cは、「拡径操作」により、外周縁部14CPを拡径可能に構成されている。なお、この未溶接キャップ14Cにおいて、「拡径操作」は、頂部14CTを、キャップ軸線X2に沿って頂部14CTから外周縁部14CPに向かうキャップ軸線方向内側CXI(
図5において下方)に押圧することにより、外周縁部14CPをキャップ径方向外側CROに拡径させる操作である。
【0035】
そこで、蓋体4の円窪み部4PRに未溶接キャップ14Cの外周縁部14CPを収容し、さらに外周縁部14CPを拡径させて、未溶接キャップ14Cの外周端面14CPeを円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接させた状態とした上で、窪み周囲部4PMに外周縁部14CPを、全周に亘りレーザビームLB(エネルギービームの一例)により溶接し、円環状の溶融固化部4PWを形成する。これにより、注液孔4PHを気密に封止する注液部4Pを形成する(
図1,
図3参照)。この注液部4Pは、未溶接キャップ14Cを起源とし、窪み周囲部4PMに溶接されたキャップ軸線X2周りに回転対称な二次元ベルカーブ状のキャップ部4PCを有している。
【0036】
封止工程S6について説明する。封止工程S6のうち、当接工程S61では、キャップ部4PCとなる未溶接キャップ14Cの外周縁部14CPをケース2の円窪み部4PR内に収容し、この円窪み部4PRの内周面4PRIに、外周縁部14CPを全周に亘り当接させる。
【0037】
詳細には、当接工程S61のうち配置工程61Aで、まず、
図4に示すように、未溶接キャップ14Cの外周縁部14CPを円窪み部4PR内に収容した形態、即ち、外周縁部14CPが全周に亘り円環底部4PSに当接した形態に、未溶接キャップ14Cを配置する。なお前述したように、自由状態の未溶接キャップ14Cのキャップ外径14Dは、円窪み部4PRの窪み内径D4よりも小さい(14D<4D)ので、外周縁部14CPを容易に円窪み部4PR内に収容することができる。また、未溶接キャップ14Cの外周端面14CPeと円窪み部4PRの内周面4PRIとの間には、隙間GPが生じる。
【0038】
次いで、拡径当接工程S61Bでは、未溶接キャップ14Cに「拡径操作」を施し、外周縁部14CPを拡径させて、即ち、外周縁部14CPの外径を自由状態のキャップ外径14Dよりも増加させて、この外周縁部14CPを円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接させる。即ち、未溶接キャップ14Cの外周端面14CPeを、円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接させる。この際、キャップ軸線X2が円窪み部4PR及び注液孔4PHの孔軸線X1と一致するように、未溶接キャップ14Cが移動し、その位置が調整される。即ち、自動的に調心される。
【0039】
なお前述したように、未溶接キャップ14Cは、頂部14CTを、キャップ軸線方向内側CXI(
図5において下方)に押圧する「拡径操作」により、外周縁部14CPを、キャップ径方向外側CROに拡径させることができる。
【0040】
そこで、拡径当接工程S61Bでは、
図5において黒矢印で示すように、未溶接キャップ14Cの頂部14CTをキャップ軸線方向内側CXI(
図5において下方)に向かう押圧力PFで押圧し、外周縁部14CPを白矢印で示すようにキャップ径方向外側CROに拡径させ、外周縁部14CPを円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接させる。具体的には、棒状押圧具PJを用いて、頂部14CTをキャップ軸線方向内側CXIに押圧する。
【0041】
次いで、全周溶接工程S64に先立つ仮固定工程S62では、
図6において黒矢印で示すように押圧力PFを維持した状態で、未溶接キャップ14Cの外周縁部14CPと窪み周囲部4PMとを散点状に適数箇所溶接する。本実施形態1では、仮固定用レーザビームLBHを用いて、外周縁部14CPと窪み周囲部4PMとを周方向に概ね120度の角度を開けて点状に3箇所レーザ溶接する。これにより、外周縁部14CPを円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接した状態を維持しつつ、外周縁部14CPを窪み周囲部4PMに仮固定する。これにより、拡径操作などを継続しなくとも、即ち、押圧力PFを解除しても、外周縁部14CPが円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接した状態を維持して、後述する全周溶接工程S64を行うことができる。また、未溶接キャップ14Cが蓋体4の円窪み部4PRから脱落する不具合の発生も防止できる。
【0042】
そこで押圧解除工程S63では、
図6において黒矢印で示した押圧力PFを解除する。具体的には、棒状押圧具PJを除去する。
【0043】
さらに、全周溶接工程S64では、外周縁部14CPが円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接した状態で、外周縁部14CPを窪み周囲部4PMに全周に亘りレーザビームLBによって溶接する。かくして、注液孔4PHをキャップ部4PCで気密に封止できる(
図3参照)。しかも、本実施形態1のキャップ部4PCでは、隙間GPの大小の変動により溶接の状態が周方向に変動することが防止され、窪み周囲部4PMに外周縁部14CPを全周に亘り均一に溶接でき、キャップ部4PCによる封止の強度の変動を抑制できる。
【0044】
(変形形態)
次いで実施形態1の変形形態に係る電池101の製造方法について、
図7を参照して説明する。本変形形態の電池101の製造方法は、封止工程S6で使用する蓋体4の円窪み部104PRの内周面104PRIの形状及び未溶接キャップ114Cの外周端面114CPeの形状が、実施形態とは異なるが、他は同様である。そこで、異なる部分を中心に説明を行い、同様な部位には同じ符号を付し、同様な部分の説明は省略或いは簡略化する。
【0045】
本変形形態に用いる蓋体4に設けた円窪み部104PRは、
図7から容易に理解できるように、その内周面104PRIが孔軸線方向内側HXI(
図7において下方)ほど、即ち、円環底部104PSの底面104PRBに近づくほど、径大となる円錐台面形状を有している。
【0046】
一方、未溶接キャップ114Cの外周端面114CPeは、キャップ軸線方向内側CXI(
図7において下方)ほど径大となる形状を有している。従って、外周端面114CPeは、この未溶接キャップ114Cの外周縁部114CPを円窪み部104PR内に収容した状態において、孔軸線方向内側HXIほど径大となる円錐台面形状を有している。
【0047】
このため、前述の当接工程S61において、具体的には、そのうちの拡径当接工程S61Bにおいて、未溶接キャップ114Cの頂部114CTをキャップ軸線方向内側CXI押圧して、外周縁部114CPを拡径させ、この外周縁部114CPを円窪み部104PRの内周面104PRIに全周に亘り当接させると、未溶接キャップ114Cが円窪み部104PRに係合して抜け難くなる。このため、当接工程S61の後、仮固定工程S62までに、未溶接キャップ114Cが円窪み部104PRから脱落してしまう不具合を確実に防止することができる。
【0048】
なお、円窪み部104PRの底面104PRBと内周面104PRIとが成す第1角度θ1、及び、円窪み部104PRの底面104PRBと未溶接キャップ114Cの外周端面114CPeとが成す第2角度θ2は、60~85度とするのが好ましい。また、第1角度θ1に対し第2角度θ2を大きくする(θ1<θ2)のが好ましい。拡径により、未溶接キャップ114Cの外周縁部114CPを円環底部104PSに押しつける力が発生し円窪み部104PR内での未溶接キャップ114Cの配置をより安定させ得るからである。
【0049】
(実施形態2)
次いで実施形態2係る電池201の製造方法について、
図1,
図2,
図8~
図13を参照して説明する。前述した実施形態1の電池1の製造方法では、頂部14CTを押圧する拡径操作により外周縁部14CPを拡径させうる未溶接キャップ14Cを用い、蓋体4の円窪み部4PRに溶接した例を示した。
これに対し、本実施形態2の電池201の製造方法では、頂部214CTを含む内側部214CIを吸引する縮径操作によって、外周縁部214CPを弾性的に縮径可能な未溶接キャップ214Cを用いる点で異なる。そこで、異なる部分を中心に説明を行い、同様な部位には同じ符号を付し、同様な部分の説明は省略或いは簡略化する。
【0050】
本実施形態2の電池201の形態、及び、製造方法のうち、電極体接続工程S1~初充電エージング工程S5は、実施形態1(
図3参照)と同様であるので説明を省略する。一方、封止工程S260は、実施形態1の封止工程S6と異なるので以下に説明する(
図8参照)。
【0051】
図9に示すように、未溶接キャップ214Cも、金属板体(本実施形態ではアルミニウム板)からなり、外形がキャップ軸線X2周りに回転対称な二次元ベルカーブ状(正規分布曲線状、釣鐘曲線状)である。即ち、未溶接キャップ214Cも、概ね、ベルカーブ(正規分布曲線、釣鐘曲線)を中心線であるキャップ軸線X2を中心として、その周りに1周回転させたときに得られる三次元形状を有している。この未溶接キャップ214Cも、中央部分に位置しかつキャップ軸線方向外側CXO(
図1,
図9において上方)に向けて凸形状をなす頂部(キャップ頂部の一例)214CT、及び、この頂部214CTよりも、キャップ径方向外側CROに位置し、キャップ径方向外側CROに向けて拡がる円環状の外周縁部(キャップ外周縁部の一例)214CPを有している。なお、外周縁部214CPよりもキャップ径方向内側CRIの部位を内側部(キャップ内側部の一例)214CIとする。また、この未溶接キャップ214Cの外径をキャップ外径214Dとする。なお
図9に示すように、自由状態の未溶接キャップ214Cのキャップ外径214Dは、円窪み部4PRの窪み内径D4よりも大きい(214D>4D)。
【0052】
本実施形態2の未溶接キャップ214Cは、「縮径操作」により、外周縁部214CPを弾性的に縮径可能に構成されている。なお、この未溶接キャップ214Cにおいて、「縮径操作」は、内側部214CIを、キャップ軸線X2に沿って外周縁部214CPから頂部214CT側に向かうキャップ軸線方向外側CXO(
図9において上方)に弾性的に吸引して、外周縁部214CPをキャップ径方向内側CRIに弾性的に縮径させる操作である。
【0053】
そこで、蓋体4の円窪み部4PRに予め縮径させた未溶接キャップ214Cの外周縁部214CPを収容する。さらに外周縁部14CPの縮径を解除して弾性的に拡径させ、未溶接キャップ214Cの外周端面214CPeを円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接させた状態とする。この上で、実施形態1と同じく、窪み周囲部4PMに外周縁部214CPを、全周に亘りレーザビームLBにより溶接し、円環状の溶融固化部4PWを形成する。これにより、注液孔4PHを気密に封止する注液部4Pを形成する(
図1,
図3参照)。実施形態1と同様、この実施形態2の注液部4Pも、未溶接キャップ214Cを起源とし、窪み周囲部4PMに溶接されたキャップ軸線X2周りに回転対称な二次元ベルカーブ状のキャップ部4PCを有している。
【0054】
封止工程S260について説明する。封止工程S260のうち、当接工程S261でも、キャップ部4PCとなる未溶接キャップ214Cの外周縁部214CPをケース2の円窪み部4PR内に収容し、この円窪み部4PRの内周面4PRIに、外周縁部214CPを全周に亘り当接させる。
【0055】
詳細には、当接工程S261のうち、吸引縮径工程S261Aで、まず
図10に示すように、吸引管SSの先端部SSSが未溶接キャップ214Cの内側部214CIに当接すると共に、頂部214CTが先端部SSS内に位置するように、吸引管SSを配置する。図示しない真空ポンプに吸引管SSを接続し、吸引管SSの内部の空気を排出して、黒矢印で示す吸引力SFを発生させ、吸引管SSの先端部SSSで未溶接キャップ214Cの内側部214CIを吸引する。これにより未溶接キャップ214Cの内側部214CIを窄めるように変形させて、外周縁部214CPを白矢印で示すようにキャップ径方向内側CRIに弾性的に縮径させ、縮径状態のキャップ外径214Dsを自由状態のキャップ外径214Dよりも小さく、さらには、円窪み部4PRの窪み内径D4よりも小さくする(214Ds<4D<214D)。
【0056】
続いて配置工程261Bで、
図11に示すように、吸引管SSと共に未溶接キャップ214Cを移動させ、外周縁部214CPを円窪み部4PR内に収容した形態、即ち、外周縁部214CPが全周に亘り円環底部4PSに当接した形態に、未溶接キャップ214Cを配置する。なお前述したように、縮径状態の未溶接キャップ214Cのキャップ外径214Dsは、円窪み部4PRの窪み内径D4よりも小さい(214Ds<4D)ので、外周縁部214CPを容易に円窪み部4PR内に収容することができる。また、未溶接キャップ214Cの外周端面214CPeと円窪み部4PRの内周面4PRIとの間には、隙間GPが生じる。
【0057】
その後、解除当接工程S261Cでは、「縮径操作」を解除して、具体的には、吸引管SSの吸引力SFを無くして、外周縁部214CPを弾性的に拡径させて、外周縁部214CPを円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接させる。即ち、未溶接キャップ214Cの外周端面214CPeを、円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接させる。この際にも、キャップ軸線X2が円窪み部4PR及び注液孔4PHの孔軸線X1と一致するように、未溶接キャップ214Cが移動し、その位置が調整される。即ち、自動的に調心される。なお、本実施形態2では、未溶接キャップ214Cの外周縁部214CPが円窪み部4PRの内周面4PRIを弾性的に押圧するので、実施形態1のように未溶接キャップ214Cに押圧力PFなどを掛けなくても、未溶接キャップ214Cを円窪み部4PR内に保持することができる。縮径操作の解除後、吸引管SSは移動させる。
【0058】
次いで、全周溶接工程S264に先立つ仮固定工程S262では、実施形態1と異なり、
図13に示すように押圧力PF加えることなく、未溶接キャップ214Cの外周縁部214CPと窪み周囲部4PMとを散点状に適数箇所溶接する。本実施形態2でも実施形態1と同様、仮固定用レーザビームLBHを用いて、外周縁部14CPと窪み周囲部4PMとを周方向に概ね120度の角度を開けて点状に3箇所レーザ溶接する。これにより、外周縁部214CPを円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接した状態を維持しつつ、外周縁部214CPを窪み周囲部4PMに仮固定する。これにより、外周縁部214CPが円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接した状態を維持して、次述する全周溶接工程S264を行うことができる。また、未溶接キャップ214Cが蓋体4の円窪み部4PRから脱落する不具合の発生も防止できる。
【0059】
さらに、全周溶接工程S264で、外周縁部214CPが円窪み部4PRの内周面4PRIに全周に亘り当接した状態で、外周縁部214CPを窪み周囲部4PMに全周に亘りレーザビームLBによって溶接する。かくして、注液孔4PHをキャップ部4PCで気密に封止できる(
図3参照)。しかも、本実施形態2のキャップ部4PCでも、隙間GPの大小の変動により溶接の状態が周方向に変動することが防止され、窪み周囲部4PMに外周縁部14CPを全周に亘り均一に溶接でき、キャップ部4PCによる封止の強度の変動を抑制できる。
【0060】
以上において、本発明を実施形態1,2及び変形形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態等では、配置工程61A,261Bにおいて、未溶接キャップ14C,214Cの外周縁部14CP,214CPをケース2の円窪み部4PR内に収容した(
図4,
図11参照)。このため、頂部14CT,214CTが蓋体4の蓋外表面4OSよりも外側に突出した形態となっている。
しかし、蓋体の円窪み部の深さを深くしたり、高さの低い未溶接キャップを用いて、円窪み内に未溶接キャップ全体が収容されるようにするなど、キャップ頂部が蓋体の蓋外表面から突出しないようにしても良い。
【0061】
また、実施形態等では、全周溶接工程S64,S264に先立って、仮固定工程S62,S262による仮工程を行ったが、未溶接キャップの仮固定を行わずに全周溶接工程を行うようにしても良い。但し、実施形態1と同様の、拡径操作を行う未溶接キャップを用いる場合には、押圧解除工程S63による押圧解除は行わず、キャップ頂部の押圧を継続しつつ全周溶接を行う。
【0062】
また、前述の変形形態では、蓋体4に設けた円窪み部104PRの内周面104PRIを、孔軸線方向内側HXI(
図7において下方)ほど径大となる円錐台面形状とした。これに加えて、未溶接キャップ114Cとして、拡径操作によって拡径可能な未溶接キャップ114Cを用い、その外周端面114CPeをキャップ軸線方向内側CXI(
図7において下方)ほど径大となる形状とした。しかし、実施形態2に用いたのと同様に、縮径操作によって縮径可能な未溶接キャップを用い、その外周端面をキャップ軸線方向内側CXIほど径大となる形状としても良い。
【符号の説明】
【0063】
1,101,201 電池(蓄電デバイス)
2 ケース(金属ケース)
4 蓋体(側壁部)
4OS 蓋外表面(外側壁面)
4P,104P 注液部
4PH,104PH 注液孔
4PR,104PR 円窪み部
4PRI,104PRI 内周面
D4 窪み内径
4PM,104PM 窪み周囲部
4PRB,104PRB 底面
4PS,104PS 円環底部
4PC キャップ部
4PW 溶融固化部
4PHW 仮止部
14C,114C,214C 未溶接キャップ
D14,D214,214Ds キャップ外径
14CT,114CT,214CT 頂部(キャップ頂部)
14CP,114CP,214CP 外周縁部(キャップ外周縁部)
214CI 内側部(キャップ内側部)
14CPe,114CPe,214CPe 外周端面(キャップ外周端面)
X1 孔軸線
HXI 孔軸線方向内側(厚み方向内側)
HRI 孔径方向内側
X2 キャップ軸線
CXI キャップ軸線方向内側
CXO キャップ軸線方向外側
CRI キャップ径方向内側
CRO キャップ径方向外側
PF 押圧力
SF 吸引力
S6,S260 封止工程
S61,S261 当接工程
S61A 配置工程
S261A 縮径工程
S261B 配置工程
S61B 拡径当接工程
S261C 解除当接工程
S62,S262 仮固定工程
S63 押圧解除工程
S64,S264 全周溶接工程
LB レーザビーム(エネルギービーム)