(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101737
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】骨伝導マイクスピーカー用変換回路および骨伝導マイクスピーカー装置
(51)【国際特許分類】
H04R 3/02 20060101AFI20240723BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H04R3/02
H04R1/00 317
H04R1/00 327Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005837
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000149930
【氏名又は名称】株式会社谷沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】保科 祐一郎
【テーマコード(参考)】
5D017
5D220
【Fターム(参考)】
5D017AB13
5D220CC00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】骨伝導マイクスピーカーを使用し無線機を介して同時通話を可能に構成した場合に、ハウリングが発生するのを抑制することができる骨伝導マイクスピーカー用変換回路及び骨伝導マイクスピーカー装置を提供する。
【解決手段】骨伝導マイクスピーカー用変換回路10は、端子T1、T2間に接続された骨伝導マイクスピーカー11と、端子T1、T2間に一次側コイルLpが接続されたトランス12と、を備える。トランス12の二次側コイルLsの一方の端子にスピーカー信号入力端子SPが接続され、二次側コイルLsの中間タップに抵抗R0を介してグランド端子GNDが接続され、二次側コイルLsの他方の端子にマイク信号出力端子MICが接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカーに供給される信号が入力されるスピーカー信号入力端子と、
マイクからの信号を出力するためのマイク信号出力端子と、
基準となる定電位が印加されるグランド端子と、
骨伝導マイクスピーカーの端子が接続される一対の端子と、を備えた骨伝導マイクスピーカー用変換回路であって、
前記骨伝導マイクスピーカーの端子間に直列をなすように接続された第1のインダクタンス素子および第2のインダクタンス素子と、
前記第1のインダクタンス素子と第2のインダクタンス素子との接続ノードと前記グランド端子との間に接続された抵抗素子と、
を備えていることを特徴とする骨伝導マイクスピーカー用変換回路。
【請求項2】
スピーカーに供給される信号が入力されるスピーカー信号入力端子と、
マイクからの信号を出力するためのマイク信号出力端子と、
基準となる定電位が印加されるグランド端子と、
骨伝導マイクスピーカーの端子が接続される一対の端子と、を備えた骨伝導マイクスピーカー用変換回路であって、
前記骨伝導マイクスピーカーの端子間に一次側コイルが接続され、前記スピーカー信号入力端子に二次側コイルの一方の端子が接続され、前記マイク信号出力端子に二次側コイルの他方の端子が接続されたトランスと、
前記トランスの中間タップと前記グランド端子との間に接続された抵抗素子と、
を備えていることを特徴とする骨伝導マイクスピーカー用変換回路。
【請求項3】
前記抵抗素子は抵抗値が調整可能な素子で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の骨伝導マイクスピーカー用変換回路。
【請求項4】
スピーカーに供給される信号が入力されるスピーカー信号入力端子と、
マイクからの信号を出力するマイク信号出力端子と、
基準となる定電位が印加されるグランド端子と、
骨伝導マイクスピーカーの端子が接続される一対の端子と、を備えた骨伝導マイクスピーカー用変換回路であって、
前記骨伝導マイクスピーカーの一方の端子と前記スピーカー信号入力端子との間に接続された抵抗素子と、
出力端子がマイク信号出力端子に接続されたオペアンプを備え、前記抵抗素子の両端の電圧を入力とし、前記抵抗素子の一方の端子から入力される信号と前記抵抗素子の他方の端子から入力される信号とを相殺するように機能する信号相殺回路と、
を備え、前記抵抗素子のインピーダンスが前記骨伝導マイクスピーカーのインピーダンスと等しくなるように設定されていることを特徴とする骨伝導マイクスピーカー用変換回路。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の骨伝導マイクスピーカー用変換回路と前記骨伝導マイクスピーカーとがパッケージ内に収納され、
前記パッケージの側面には、前記スピーカー信号入力端子と前記マイク信号出力端子と前記グランド端子とが接続されたコネクタが設けられていることを特徴とする骨伝導マイクスピーカー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機に接続されて音声信号を伝達する骨伝導マイクスピーカー用変換回路に関し、特にハウリングの発生を抑制する機能を有する骨伝導マイクスピーカー用変換回路に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
骨伝導マイクは、人が発する声が骨を伝わってくるのを抽出して音声信号として出力する機能を有する。従って、外部の騒音を拾わないで人の声の音声のみを送信するのに適している。また、骨伝導スピーカーは、受信信号を振動として人の骨に伝えること(骨導音)により、それが耳の蝸牛に伝わり音として認識させる機能を有しており、耳を塞がないため周囲の音を聞くことができるという利点がある。
【0003】
一方、工事などでは作業者同士が無線機(トランシーバ)を使って会話を行うことがあるが、作業中は両手が作業でふさがっていることがあるので、その場合、手を使って無線機の送信と受信を切り換えることができない。そこで、作業中における作業者同士の会話には、マイクとスピーカーを備えたヘッドセットを装備した無線機が使われている。しかしながら、トンネル内工事のように騒音が非常に大きな環境下では、一般的なマイクやスピーカーを備えたヘッドセットは会話に使えないという課題がある。
【0004】
そこで、騒音が非常に大きい環境下では、骨伝導スピーカーと骨伝導マイクを備えたヘッドセットが有効である。なお、骨伝導スピーカーを備えたヘッドセットに関する発明として、例えば特許文献1に記載されている発明がある。しかしながら、特許文献1に記載されているヘッドセットは、骨伝導でないマイクを使用しているとともに、マイクとスピーカーとが別であるため、作業者が防塵マスクを付ける必要があるような状況では使えないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-331970号公報
【特許文献2】特開2007-51395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、上記のような状況下では、骨伝導スピーカーと骨伝導マイクの機能が一体になったデバイス(ユニット)が有効である。骨伝導スピーカー・マイクを使用した通信システムに関する発明として、例えば特許文献2に記載されている発明がある。しかし、人の骨は音の伝導性が良いために、同時通話を行うと、骨伝導スピーカーから発せられた相手の音声が骨伝導マイクに伝わって相手に戻り、相手の話す音声に重畳されてマイクに入力されハウリングを起こしてしまうという課題がある。
しかるに、特許文献2には、ハウリングを防止する技術は記載されていない。
【0007】
この発明は上記のような課題に着目してなされたものでその目的とするところは、骨伝導マイクスピーカーを使用するとともに、無線機を介して同時通話を可能に構成した場合に、ハウリングが発生するのを抑制することができる骨伝導マイクスピーカー用変換回路および骨伝導マイクスピーカー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願に係る第1の発明は、
スピーカーに供給される信号が入力されるスピーカー信号入力端子と、
マイクからの信号を出力するためのマイク信号出力端子と、
基準となる定電位が印加されるグランド端子と、
骨伝導マイクスピーカーの端子が接続される一対の端子と、を備えた骨伝導マイクスピーカー用変換回路において、
前記骨伝導マイクスピーカーの端子間に直列をなすように接続された第1のインダクタンス素子および第2のインダクタンス素子と、
前記第1のインダクタンス素子と第2のインダクタンス素子との接続ノードと前記グランド端子との間に接続された抵抗素子と、
を備えるように構成したものである。
【0009】
本出願に係る第2の発明は、
スピーカーに供給される信号が入力されるスピーカー信号入力端子と、
マイクからの信号を出力するためのマイク信号出力端子と、
基準となる定電位が印加されるグランド端子と、
骨伝導マイクスピーカーの端子が接続される一対の端子と、を備えた骨伝導マイクスピーカー用変換回路において、
前記骨伝導マイクスピーカーの端子間に一次側コイルが接続され、前記スピーカー信号入力端子に二次側コイルの一方の端子が接続され、前記マイク信号出力端子に二次側コイルの他方の端子が接続されたトランスと、
前記トランスの中間タップと前記グランド端子との間に接続された抵抗素子と、
を備えるように構成したものである。
ここで、前記抵抗素子は抵抗値が調整可能な素子で構成しても良い。
【0010】
本出願に係る第3の発明は、
スピーカーに供給される信号が入力されるスピーカー信号入力端子と、
マイクからの信号を出力するためのマイク信号出力端子と、
基準となる定電位が印加されるグランド端子と、
骨伝導マイクスピーカーの端子が接続される一対の端子と、を備えた骨伝導マイクスピーカー用変換回路において、
前記骨伝導マイクスピーカーの一方の端子と前記スピーカー信号入力端子との間に接続された抵抗素子と、
出力端子がマイク信号出力端子に接続されたオペアンプを備え、前記抵抗素子の両端の電圧を入力とし、前記抵抗素子の一方の端子から入力される信号と前記抵抗素子の他方の端子から入力される信号とを相殺するように機能する信号相殺回路と、
を備え、前記抵抗素子のインピーダンスが前記骨伝導マイクスピーカーのインピーダンスと等しくなるように設定したものである。
【0011】
本出願のさらに他の発明に係る骨伝導マイクスピーカー装置は、上記のように構成されたマイクスピーカー用変換回路と、骨伝導マイクスピーカーとがパッケージ内に収納され、
前記パッケージの側面には、前記スピーカー信号入力端子と前記マイク信号出力端子と前記グランド端子とが接続されたコネクタが設けられているように構成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る骨伝導マイクスピーカー用変換回路および骨伝導マイクスピーカー装置によれば、骨伝導マイクスピーカーを使用するとともに、無線機を介して同時通話を可能に構成した場合に、ハウリングが発生するのを抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る骨伝導マイクスピーカー用変換回路の第1の実施形態を示す回路構成図である。
【
図2】本発明者が試作した骨伝導マイクスピーカー用変換回路を示す回路構成図である。
【
図3】
図1の実施形態の骨伝導マイクスピーカー用変換回路に電源を供給する無線機側のマイク信号入力部の構成例を示す回路図である。
【
図4】
図1の実施形態の骨伝導マイクスピーカー用変換回路の等価回路を示す回路図である。
【
図5】本発明に係る骨伝導マイクスピーカー用変換回路の第2の実施形態を示す回路構成図である。
【
図6】実施形態の骨伝導マイクスピーカー用変換回路を使用したシステムの構成例を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る骨伝導マイクスピーカー用変換回路の第1の実施形態の回路図を示す。
図1において、符号T1,T2が付されているのは、骨伝導マイクスピーカー11の端子が接続される骨伝導マイクスピーカー用変換回路10側の端子である。
【0015】
第1実施形態の骨伝導マイクスピーカー用変換回路10は、
図1に示すように、端子T1,T2間に接続された骨伝導マイクスピーカー11と、該骨伝導マイクスピーカー11の端子間に一次側コイルLpが接続されたトランス12と、を備える。そして、トランス12の二次側コイルLsの一方の端子にスピーカー信号入力端子(以下、スピーカー端子)SPが接続され、二次側コイルLsの中間タップに抵抗R0を介して、接地電位のような基準となる定電位が印加されるグランド端子GNDに接続されている。また、二次側コイルLsの他方の端子は、マイク信号出力端子(以下、マイク端子)MICに接続されている。
【0016】
なお、上記マイク端子MICとスピーカー端子SPとグランド端子GNDは、図示しないコネクタ端子に接続され、該コネクタ端子を介して無線機とコードにより接続される。
上記トランス12には、一次側コイルLpのインピーダンスが該骨伝導マイクスピーカー11のインピーダンス(例えば8Ω)と等しく、二次側コイルLsのインピーダンスが、当該骨伝導マイクスピーカー用変換回路10のMIC端子とSP端子に接続される無線機のインピーダンス(例えば1200Ω)と等しいものを選択して使用する。抵抗R0の抵抗値は数kΩとすると良い。
【0017】
また、上記実施形態の骨伝導マイクスピーカー用変換回路においては、トランス12の二次側コイルLsの中間タップに接続される抵抗R0として、抵抗値を調整可能な素子を用い、使用する骨伝導マイクスピーカーやトランスのバラツキに応じて、抵抗R0の抵抗値を調整することによって、スピーカー端子SP側からマイク端子MIC側への信号の洩れを減少させることができるように構成しても良い。
【0018】
図3には、
図1に示す実施形態の骨伝導マイクスピーカー用変換回路のマイク端子MICとスピーカー端子SPに接続される無線機側の電源供給回路の構成例が示されている。
図3に示すように、電源供給回路は、直列形態の抵抗R3、R4と、電源安定化用のコンデンサC1と、を備え、抵抗R3、R4を介して無線機側の電源電圧(例えば3V)が骨伝導マイクスピーカー用変換回路10のマイク端子MICへ供給されるように構成されている。また、骨伝導マイクスピーカー用変換回路10のマイク端子MICからの信号は、直流成分を遮断するコンデンサC2を介して、図示しない無線機内部の無線通信回路へ伝達される。抵抗R3、R4の抵抗値は数kΩとすると良い。
【0019】
次に、第1実施形態の骨伝導マイクスピーカー用変換回路10の機能について説明する。
図4には、
図1に示す骨伝導マイクスピーカー用変換回路10の等価回路図が示されている。
図4において、L1、L2はトランス12と等価なインダクタ、Z1、Z2はそのインピーダンスを表わしている。端子A-G間にSP信号が入力され、端子B-G間よりMIC信号が出力される。なお、端子Gは接地電位が印加されるグランド端子である。
【0020】
図4の回路において、端子AにプラスのSP信号が入力され、端子Gにマイナスの信号が加わったとする。端子Gは、トランス12の二次側コイルのセンタタップに接続されているため、Z1=Z2である。ここで、Z1=R0とすると、電流はL1→R0→GNDへ流れ、その際にV1=V2の電位が発生する。一方、L1とL2の間の電磁誘導でL2にも、
図4に矢印で示す方向でV1=V3の電位が発生する。従って、ノードN2の電位Vn2は、Vn2=V2+V3=V2+(-V1)=0となるので、端子B-G関には電圧が現れない。
従って、端子Aから入力されたSP信号は有効に骨伝導マイクスピーカー11へ伝達されるが、端子B側(MIC信号出力側)へは漏れないことになる。
【0021】
本発明者は、
図1に示す回路のMIC端子に信号を増幅する回路を追加した
図2に示すような構成の回路を試作し、可変抵抗R0を調整しながら試験を実施した。その結果、端子B(MIC端子)側への戻りを完全にゼロにすることは出来ないが、1kHzの近傍でハウリングを発生させない-41dB(8.9/1000)~-50dB程度に抑え込めることを確認することができた。
【0022】
また、本実施形態の骨伝導マイクスピーカーに接続されて使用される無線機に関しては、本出願人が製造販売している製品のスピーカーの最大出力は30mWであり、8Ω負荷で考えると、出力電圧Voutは、次式
Vout=√(WR)=√(0.03×8)=0.49
より、0.49Vである。一方、骨伝導マイクスピーカーのマイクの入力電圧Vinは7mV~15mVが妥当であり、その場合、スピーカー出力電圧との差は、70倍(at 7mV)すなわち37dBとなる。
【0023】
無線機のスピーカーからの骨伝導マイクへの戻りは、マージンを見て-41dBを基準に計算すると、-41dB=0.0089、0.49×0.0089=4.4mVとなり、マイク入力電圧の低い方の7mVの-4dBに相当する。また、-50dBなら、戻りは1.5mV(-13dB)となる。一方、アナログ電話機では電話機通話品質標準規格CES-0050-3により、送話音の戻り(側音)は-7dB以下とされているので、品質にそん色はない。
しかも、上記の計算結果は、スピーカーの最大出力に対しての算出値であるのに対し、工事中における作業者間の通常の会話ではスピーカーを最大音量にした状態で無線機を使用することはあまりない。従って、本実施形態を適用した骨伝導マイクスピーカーと無線機を併用すれば、無線機のスピーカーから骨伝導マイクへの戻りは十分に小さな値にすることができ、ハウリングを起こすことなく、良好に会話を行えることが分かる。
【0024】
なお、
図2に示す増幅回路13は、マイク端子MICと接地点との間に、NPNバイポーラトランジスタTRと抵抗R2が直列に接続されている。また、マイク端子MICとNPNバイポーラトランジスタTRのベース端子との間に抵抗R1が接続されており、二次側コイルLsと抵抗R1との接続ノードN0に上記トランジスタTRのベース端子が接続された構成を有している。抵抗R2はゲイン調整用の素子であり、その抵抗値は50Ω~1kΩ、抵抗R1の抵抗値は100kΩ~220kΩとすると良い。
【0025】
図5には、本発明に係る骨伝導マイクスピーカー用変換回路の第2の実施形態の回路図が示されている。
第2実施形態の骨伝導マイクスピーカー用変換回路10は、
図5に示すように、スピーカー端子SPとグランド端子GNDとの間に骨伝導マイクスピーカー11が設けられており、この骨伝導マイクスピーカー11と直列に接続された抵抗R5と、該抵抗R5と骨伝導マイクスピーカー11との接続ノードN2に非反転入力端子(+)が接続されたオペアンプ(演算増幅器)AMPと、オペアンプAMPの出力端子と反転入力端子(-)との間に接続された帰還抵抗R7と、を備える。
【0026】
そして、スピーカー端子SPとオペアンプAMPの反転入力端子(-)との間に入力抵抗R6が接続され、オペアンプAMPの出力端子がマイク端子MICに接続されている。
また、上記抵抗R5の抵抗値は骨伝導マイクスピーカー11のインピーダンスZ0と同程度の低い値(例えば8Ω)に設定され、抵抗R6と抵抗R7の抵抗値は抵抗R5の抵抗値に比べて充分に高い値(例えば1kΩ)に設定されている。抵抗R7の抵抗値は抵抗R6の抵抗値と同一に設定されている。
【0027】
次に、第2実施形態の骨伝導マイクスピーカー用変換回路におけるオペアンプAMPの機能について説明する。
スピーカー端子SPに無線機側から音声信号が入力されるとその信号は骨伝導マイクスピーカー11へ伝達されて、音声に変換されて出力される。このとき、抵抗R5の抵抗値が骨伝導マイクスピーカー11のインピーダンスと同じであるため、ノードN2には、スピーカー端子SPの電圧の1/2の電圧が発生し、これがオペアンプAMPの非反転入力端子(+)に入力される。
【0028】
上記信号は、オペアンプAMPの非反転増幅機能によって、(R6+R7)/R6に増幅される。具体的には、抵抗R6と抵抗R7の抵抗値は等しいため、(R6+R7)/R6=2となり、ノードN2の信号(SP電圧の1/2)はオペアンプAMPによって2倍に増幅される。結果として、オペアンプAMPの出力端子には非反転入力端子(+)を通してスピーカー端子SPの信号と同一レベルの信号が伝達される。
【0029】
一方、スピーカー端子SPから抵抗R6を通して反転入力端子(-)へ入力された信号は、オペアンプAMPの反転増幅機能によって、-(R7/R6)に増幅される。具体的には、抵抗R6と抵抗R7の抵抗値は等しいため、R7/R6=1となり、スピーカー端子SPからの信号はオペアンプAMPによって-1倍に増幅される。つまり、オペアンプAMPの出力端子には反転入力端子(-)を通してスピーカー端子SPの信号と同一レベルで負の信号が伝達される。
その結果、非反転入力端子(+)側から出力端子へ伝達された信号と反転入力端子(-)側から出力端子へ伝達された信号とが打ち消し合って、スピーカー端子SPからマイク端子MICへの信号の洩れはなくなることになる。
【0030】
骨伝導マイクスピーカー11が音声を拾って信号を出力する場合には、その信号は、ノードN2からオペアンプAMPの非反転入力端子(+)へ入力され、オペアンプAMPにより増幅されてマイク端子MICから無線機側へ出力されることとなる。また、オペアンプAMPの電源電圧はMIC端子より供給されるように構成される。
なお、図示しないが、オペアンプAMPとマイク端子MICとの間には、
図2に示す回路と同様に、バイポーラトランジスタを用いた増幅回路13を設けて、この増幅回路によってマイク信号をさらに増幅してMIC端子より出力するように構成しても良い。また、
図2に示す増幅回路13を無線機側に設けるようにしても良い。
【0031】
さらに、オペアンプAMPによる上記信号キャンセル機能は、理想的な場合を説明したもので、実際には骨伝導マイクスピーカー11が純粋な抵抗ではなくインダクタンス成分を含んだ素子である。そのため、ノードN1の信号レベルはSP電圧の1/2とならず、1/2からずれた値となり、反転入力端子(-)側からの信号と完全に打ち消し合うことができず、スピーカー端子SPからマイク端子MIC側へ信号が洩れるおそれがある。
上記のような信号の洩れを抑制するためには、オペアンプAMPの帰還抵抗R7と並列にコンデンサを接続し、使用する骨伝導マイクスピーカー11の特性に応じて、そのコンデンサの容量値を調整したり、使用するコンデンサの種類(特性)を変えたりするなどの対策を行うのが有効である。
【0032】
図6には、本発明に係る骨伝導マイクスピーカー用変換回路を適用した通信システムの構成例が示されている。
図6の通信システムにおいては、骨伝導マイクスピーカー11と
図1または
図5に示されているような構成を有する変換回路10とが1つパッケージ内に収納されてマイクスピーカー装置20として構成されている。
【0033】
また、上記マイクスピーカー装置20のパッケージ21の側面には、骨伝導マイクスピーカー用変換回路10のマイク端子MIC、スピーカー端子SPおよびグランド端子GNDが接続されているコネクタ端子22が設けられている。そして、コネクタ端子22に一方の端部が接続されたコード23によって、マイクスピーカー装置20と無線機30とが信号伝達可能に接続されている。
【0034】
なお、
図6に示す通信システム構成するマイクスピーカー装置20は、例えば作業者が防塵マスクを被着する場合には、防塵マスクと作業者の顔面側部との間に挟み込むようにして装着すると良い。また、作業者あるいは自動二輪車のドライバー等がヘルメットを被着して通話をする場合には、ヘルメットもしくは締付け用のベルトと作業者やドライバーの顔面側部との間に挟み込むようにして装着しても良い。
【0035】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態の骨伝導マイクスピーカー用変換回路は、使用する骨伝導マイクスピーカーの仕様や特性に応じて適宜変更される。
さらに、第1の実施形態においては、トランス12を使用した変換回路について説明したが、トランスを使用せずに、例えばチョークコイル等のインダクタンス素子を使用して、
図4に示すような構成を有する回路を構築して使用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0036】
10 骨伝導マイクスピーカー用変換回路
11 骨伝導マイクスピーカー
12 トランス
13 増幅回路
20 マイクスピーカー装置
21 パッケージ
22 コネクタ端子
23 コード
30 無線機
AMP オペアンプ(演算増幅器)
R0~R7 抵抗素子
C1 コンデンサ(容量素子)
TR トランジスタ