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特開2024-101743インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法
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  • 特開-インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法 図1
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  • 特開-インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101743
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240723BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/175 503
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005845
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】安形 和晃
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EB21
2C056EB34
2C056EC17
2C056EC39
2C056EC64
2C056FA10
2C056KA04
2C056KB13
2C056KB35
2C056KB37
(57)【要約】
【課題】送液経路において原状のインクの圧力値からそれより高い圧力値までインクを加圧する加圧動作時に、送液経路に破損を生じたりする恐れや、インクジェットヘッドのインクジェットノズルからのインクのぼた落ちが発生したりする恐れなどを抑止する。
【解決手段】インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路に送液されるインクを加圧する処理を行うインクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路において、インクを原状の圧力値からそれより高い圧力値まで加圧する加圧動作時に、複数回に分けて段階的に細分化して加圧動作を順次行うようにした。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路に送液されるインクを加圧する処理を行うインクジェットプリンタにおいて、
インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路において、前記インクを原状の圧力値からそれより高い所定の動作を行うための圧力値まで加圧する加圧動作時に、複数回に分けて段階的に細分化して加圧動作を順次行う
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記細分化して加圧動作を順次行うときに、前記細分化した加圧動作間で予め設定された時間間隔をあけて前記細分化した加圧動作を順次行う
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路に送液されるインクを加圧する処理を行うインクジェットプリンタにおいて、
インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路に前記インクを送液する送液手段と、
前記送液手段により前記送液経路に送液された前記インクの圧力を検知する圧力検知手段と、
前記送液手段により前記送液経路に前記インクの送液を開始することによって、前記インクを原状の圧力値からそれより高い圧力値まで加圧する加圧動作時に、
前記送液手段により前記インクの送液を開始し、前記圧力検知手段が予め設定された第1の圧力値を検知したとき、前記送液手段による前記インクの送液を停止する第1の段階の加圧制御と、
前記第1の段階の加圧制御の後に前記送液手段により前記インクの送液を開始し、前記圧力検知手段が前記第1の圧力値より高い圧力値である予め設定された第2の圧力値を検知したとき、前記送液手段による前記インクの送液を停止する第2の段階の加圧制御と
を行う制御手段と
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記制御手段は、前記第1の段階の加圧制御によって前記送液手段による前記インクの送液が停止された後に、予め設定された時間間隔をあけて、前記第2の段階の加圧制御によって前記送液手段による前記インクの送液を開始する制御を行う
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項3または4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記送液手段は、前記送液経路を含む送液系に異常があることを検知するための予め設定された検出閾値に到達すると、前記送液手段による前記インクの送液を停止する
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記検出閾値は、前記第1の段階の加圧制御と前記第2の段階の加圧制御とにおけるそれぞれの加圧動作に応じて、前記第1の段階の加圧制御と前記第2の段階の加圧制御とでそれぞれ設定される
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
請求項3または4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記送液手段は、前記第1の段階の加圧制御と前記第2の段階の加圧制御とで予め設定された加圧動作速度で前記インクを加圧する
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェットプリンタにおいて、
前記加圧動作速度は、前記第1の段階の加圧制御と前記第2の段階の加圧制御とにおけるそれぞれの加圧動作に応じて、前記第1の段階の加圧制御と前記第2の段階の加圧制御とでそれぞれ設定される
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項9】
インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路に送液されるインクを加圧する処理を行うインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法において、
インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路において、前記インクを原状の圧力値からそれより高い圧力値まで加圧する加圧動作時に、複数回に分けて段階的に細分化して加圧動作を順次行うようにした
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載のインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法において、
前記細分化して加圧動作を順次行うときに、前記細分化した加圧動作間で予め設定された時間間隔をあけて前記細分化した加圧動作を順次行うようにした
ことを特徴とするインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法に関する。
【0002】
さらに詳細には、本発明は、インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路に送液されるインクを加圧する処理を行うインクジェットプリンタおよび当該送液経路に送液されるインクを加圧する処理に用いて好適なインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法に関する。
【0003】
なお、本明細書ならびに本特許請求の範囲において、「インクジェットプリンタ」とは、例えば、二値偏向方式あるいは連続偏向方式などの各種の連続方式や、サーマル方式あるいは圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む、従来より公知の各種の手法によるインクジェット技術を用いた印刷方法を利用した各種のプリンタ全般を意味するものとする。
【0004】
また、本明細書ならびに本特許請求の範囲において、「インクジェットプリンタ」には、メディアに向けて印刷用のインクを吐出して当該メディア上に2次元の画像を印刷する、所謂、2次元プリンタと、粉末材料などにバインダーや水などを吐出することにより当該粉末材料を硬化させて3次元造形物を造形する、所謂、3次元プリンタ(3次元造形装置)との双方が含まれるものとする。
【0005】
さらに、本明細書ならびに本特許請求の範囲において、「メディア」には、普通紙などの紙類よりなる各種の記録媒体は勿論のこと、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)やポリエチレンテレフタラート(PET:polyethylene terephthalate)などの樹脂材料、織物、布、アルミ、鉄あるいは木材などのような各種材料などからなる種々の媒体が含まれるものとする。
【0006】
さらにまた、本明細書ならびに本特許請求の範囲において、「インク」とは、例えば、溶剤系顔料インク、水性顔料インク、水性染料インク、紫外線硬化型顔料インクなどのような各種の印刷用のインクはもとより、三次元造形の際に用いるバインダーや水などのような液体なども含むものであって、「インク」の用語によりインクジェットヘッドへ送液される各種の液体全般を意味するものとする。
【背景技術】
【0007】
一般に、インクジェットヘッドに形成されたインクジェットノズルから、メディアに向けてインクジェット技術を用いてインクを吐出することにより、当該メディア上に画像を形成する印刷動作を行うインクジェットプリンタが広く知られている。
【0008】
こうしたインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドへインクを送液する際に、例えば、インクジェットヘッドにおけるインクジェットノズルが形成された面であるインクジェットノズル面をクリーニングするクリーニング処理動作の場合などにおいては、送液経路であるインク供給経路において通常の印刷開始時の圧力よりも高い圧力でインクを送液する処理が屡々行われている。
【0009】
その一例として、特許文献1として提示する特開2011-5672号公報に開示されたインクジェットプリンタにおいては、上記したようなクリーニング処理動作の際に、インク供給経路において原状のインクの圧力値からそれよりも高い目標の圧力値まで一気にインクを加圧することにより、インクジェットノズルからインクを溢れ出させる処理を行っていた。
【0010】
こうした従来のインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御について、図1ならびに図2を参照しながら具体的に説明する。
【0011】
ここで、図1には、従来のインクジェットプリンタにおいて、長時間の放置などにより通常の印刷開始時のインクの圧力(以下、本明細書ならびに本特許請求の範囲においては、「通常の印刷開始時のインクの圧力」を「デフォルト圧力」と適宜に称する。)の圧力値よりも若干減圧されている原状のインクの圧力値から目標圧力の圧力値(目標圧力値)までインクを加圧する際におけるインク供給経路におけるインクの圧力変化を模式的に示すグラフがあらわされている。
【0012】
この図1に示されているように、従来のインクジェットプリンタによれば、デフォルト圧力の圧力値(デフォルト圧力値)よりも若干低い原状のインクの圧力値から、デフォルト圧力値を超えて目標圧力値まで連続して一気に加圧する処理が行われている。
【0013】
また、図2には、従来のインクジェットプリンタにおいて、インク供給経路へ供給するインクを貯留しているインクカートリッジ内のインクが空になった場合などのように、デフォルト圧力値よりも大きく減圧されている原状のインクの圧力値から目標圧力値までインクを加圧する際におけるインク供給経路の圧力変化を模式的に示すグラフがあらわされている。
【0014】
この図2に示す場合においても、図1に示す場合と同様に、従来のインクジェットプリンタによれば、デフォルト圧力値よりも大きく減圧されている原状のインクの圧力値から、デフォルト圧力値を超えて目標圧力値まで連続して一気に加圧する処理が行われている。
【0015】
このように、従来のインクジェットプリンタにおいては、送液経路において原状の圧力値からそれより高い目標圧力値までインクを加圧する際に、原状の圧力値のいかんに関わらずそれより高い目標圧力値まで連続して一気に加圧していた。
【0016】
ところで、上記したような従来のインクジェットプリンタにおいては、インクを送液する送液手段である送液ポンプをインク供給経路に配設しており、インク供給経路におけるインクの加圧は、送液ポンプを動作させてインクを送液することにより行っていた。
【0017】
なお、送液ポンプとしては、例えば、チューブポンプやトロコイドポンプあるいはダイヤフラムポンプなどのような、従来より公知の各種のポンプが用いられてきている。
【0018】
ここで、従来のインクジェットプリンタにおいては、送液ポンプを動作させてインクを目標圧力値まで加圧するときに、一定以上の送液ポンプの動作によっても目標圧力値までインクの圧力値が到達しない場合には、送液経路(インク供給経路)に異常があることを検知して、送液ポンプの動作を停止して送液動作を中止する処理が行われている。
【0019】
具体的には、上記における「一定以上の送液ポンプの動作」を、送液ポンプや送液経路(インク供給経路)などの送液系に異常があることを検知するための検出閾値(本明細書ならびに本特許請求の範囲において、「送液ポンプや送液経路(インク供給経路)などの送液系に異常があることを検知するための検出閾値」について、単に「検出閾値」と適宜に称する。)として設定しておき、この検出閾値に到達してもインクの圧力値が目標圧力値まで到達しない場合に、送液経路(インク供給経路)に異常があると判定し、送液ポンプの動作を停止して送液動作を中止していた。
【0020】
上記した検出閾値は、例えば、送液ポンプによる「送液動作時間」として設定してもよいし、あるいは、送液ポンプとしてチューブポンプを用いる場合には「チューブポンプのポンプモーターの回転量」として設定するなど、適宜の指標により設定してよい。
【0021】
なお、インクジェットプリンタにおいてこのような検出閾値を設定していないと、送液経路(インク供給経路)に異常があった場合に、インクカートリッジに貯留されているインクを送液し終えるまで送液動作がいつまでも実施されてしまうことになり、インクジェットプリンタの故障を誘発する原因となるものであった。
【0022】
さらに、上記した送液ポンプの動作にかかる検出閾値について説明すると、この検出閾値を設定する際に、その設定値が大きすぎても小さすぎてもインクジェットプリンタの動作に支障を来すものであった。
【0023】
なお、検出閾値が、例えば、「送液動作時間」の場合には、検出閾値の設定値が大きいとは「送液動作時間」が長くなることを意味し、一方、検出閾値の設定値が小さいとは「送液動作時間」が短くなることを意味する。
【0024】
同様に、検出閾値が、例えば、「チューブポンプのポンプモーターの回転量」の場合には、検出閾値の設定値が大きいとは「チューブポンプのポンプモーターの回転量」が大きくなることを意味し、一方、検出閾値の設定値が小さいとは「チューブポンプのポンプモーターの回転量」が小さくなることを意味する。
【0025】
ここで、検出閾値の設定値が小さすぎると、送液ポンプによる送液動作開始におけるインクの圧力が印刷時の圧力よりも低い場合(例えば、長時間の放置による減圧や、インク供給経路へ供給するインクを貯留しているインクカートリッジ内のインクが空になった場合などの大きな減圧の場合などである。)には、必要な送液量に到達する前に検出閾値に到達してしまうという誤検出が発生し、この誤検出により送液動作が停止されてしまって、送液量の不足が生じるという問題点があった。
【0026】
一方、送液ポンプや送液経路などの送液系に異常があってインクジェットヘッドへインクが送液されない状態であれば、検出閾値の設定値が大きすぎた場合でも特段の問題は生じない。
【0027】
こうしたことから、検出閾値の設定値は大きく設定する方が好ましい。しかしながら、送液経路におけるインクの圧力を検知する圧力検知手段に異常があって送液されたインクを検知できない状態などを想定すると、インクの過剰圧力によるインク供給経路(送液経路)の破損を防止するためには、やはり検出閾値の設定値は可能な限り小さくすることが望ましいということが指摘されていた。
【0028】
従来のインクジェットプリンタにおいては、上記した送液ポンプや送液経路などの送液系の異常を検知するための検出閾値の設定にかかる問題点や指摘などに鑑みて、検出閾値の設定値はなるべく小さく設定するようにしているが、インクジェットプリンタ毎に送液手段により単位時間当たり送液する送液量を検討し、当該送液手段により単位時間当たり送液する送液量が多くなれば、インクジェットプリンタ毎に当該検出閾値の設定値を大きくするように設定していた。
【0029】
しかしながら、従来のインクジェットプリンタによれば、上記において説明したように、送液経路において原状のインクの圧力値からそれより高い目標圧力値までインクを加圧する加圧動作時に、原状の圧力値のいかんに関わらずそれより高い目標圧力値まで連続して一気に加圧していたため、上記した検出閾値の設定値が大きいと、送液ポンプや送液経路などの送液系の異常が発生している場合などにおいては、当該加圧動作時に送液経路(一般に、大型のインクジェットプリンタの送液経路には、従来より公知のダンパー装置(ダンパー装置とは、インクジェットヘッドにおけるインクの圧力変動を小さく抑えるために、インクカートリッジとインクジェットヘッドとをつなぐ送液経路において、インクジェットヘッドの前段に配置されたサブタンクである。)が含まれている。)に大きな圧力が一気にかかってしまい、送液経路(ダンパー装置が設けられたインクジェットプリンタにおいては、ダンパー装置も含む。)に破損を生じたりする恐れや、インクジェットヘッドのインクジェットノズルからのインクのぼた落ちが発生したりする恐れなどがあるという問題点などがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開2011-5672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明は、従来の技術の有する上記したような種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、送液経路において原状のインクの圧力値からそれより高い圧力値までインクを加圧する加圧動作時に、送液経路に破損を生じたりする恐れや、インクジェットヘッドのインクジェットノズルからのインクのぼた落ちが発生したりする恐れなどを抑止したインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法を提供しようとするものである。
【0032】
また、本発明の目的とするところは、送液経路において原状の圧力値からそれより高い圧力値までインクを加圧する加圧動作時に、当該高い圧力値への到達精度を向上することができるようにしたインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法を提供しようとするものである。
【0033】
さらに、本発明の目的とするところは、送液経路において原状の圧力値からそれより高い圧力値までインクを加圧する加圧動作時に、従来の技術に比べて加圧動作時間を大幅に増加させることなく、当該高い圧力値へ到達することができるようにしたインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
上記目的を達成するために、本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法は、送液経路において原状のインクの圧力値からそれより高い圧力値までインクを加圧する加圧動作時に、複数回に分けて段階的に細分化して加圧動作を順次行うようにしたものである。
【0035】
従って、上記した本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法によれば、送液経路において原状の圧力値からそれより高い圧力値までインクを加圧する加圧動作時に、原状の圧力値のいかんに関わらずそれより高い圧力値まで連続して一気に加圧されることがないので、このため送液経路(ダンパー装置を含む)に大きな圧力が一気にかかることがなくなる。これにより、送液経路(ダンパー装置を含む。)に破損を生じたりする恐れや、インクジェットヘッドのインクジェットノズルからのインクのぼた落ちが発生したりする恐れなどを抑止することができるようになる。
【0036】
さらに、上記した本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法によれば、原状のインクの圧力値からそれより高い圧力値まで各段階毎に細分化して加圧動作の制御を行うため、原状の圧力値からそれより高い圧力値まで連続して一気に加圧する従来の技術に比べて、当該高い圧力値への到達精度を向上することができるようになる。
【0037】
また、上記目的を達成するために、本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法は、送液系に異常があることを検知するための検出閾値の設定について、原状のインクの圧力値からそれより高い圧力値まで複数回に分けて各段階に細分化した加圧動作毎に設定するようにしたものである。
【0038】
従って、上記した本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法によれば、送液経路において原状のインクの圧力値からそれより高い圧力値までインクを加圧する加圧動作時における想定される状況や目的に合わせて、効果的な検出閾値を設定することができるようになる。
【0039】
さらに、上記目的を達成するために、本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法は、送液経路において原状のインクの圧力値からそれより高い圧力値までインクを加圧する加圧動作時における加圧動作速度について、原状のインクの圧力値からそれより高い圧力値まで複数回に分けて各段階に細分化した加圧動作毎に設定するようにしたものである。
【0040】
従って、上記した本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法によれば、送液経路において原状のインクの圧力値からそれより高い圧力値までインクを加圧する加圧動作時における想定される状況や目的に合わせて、効果的な加圧動作速度を設定することができるようになる。
【0041】
こうしたことから、上記した本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法によれば、送液経路において原状のインクの圧力値からそれより高い圧力値までインクを加圧する加圧動作の際に、原状のインクの圧力値からそれより高い圧力値まで複数回に分けて各段階に細分化した加圧動作を行っても、従来の技術に比べて加圧動作時間を大幅に増加させることなく、当該高い圧力値へ到達することができるようになる。
【0042】
即ち、本発明によるインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路に送液されるインクを加圧する処理を行うインクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路において、上記インクを原状の圧力値からそれより高い所定の動作を行うための圧力値まで加圧する加圧動作時に、複数回に分けて段階的に細分化して加圧動作を順次行うようにしたものである。
【0043】
また、本発明によるインクジェットプリンタは、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおいて、上記細分化して加圧動作を順次行うときに、上記細分化した加圧動作間で予め設定された時間間隔をあけて上記細分化した加圧動作を順次行うようにしたものである。
【0044】
また、本発明によるインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路に送液されるインクを加圧する処理を行うインクジェットプリンタにおいて、インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路に上記インクを送液する送液手段と、上記送液手段により上記送液経路に送液された上記インクの圧力を検知する圧力検知手段と、上記送液手段により上記送液経路に上記インクの送液を開始することによって、上記インクを原状の圧力値からそれより高い圧力値まで加圧する加圧動作時に、上記送液手段により上記インクの送液を開始し、上記圧力検知手段が予め設定された第1の圧力値を検知したとき、上記送液手段による上記インクの送液を停止する第1の段階の加圧制御と、上記第1の段階の加圧制御の後に上記送液手段により上記インクの送液を開始し、上記圧力検知手段が上記第1の圧力値より高い圧力値である予め設定された第2の圧力値を検知したとき、上記送液手段による上記インクの送液を停止する第2の段階の加圧制御とを行う制御手段とを有するようにしたものである。
【0045】
また、本発明によるインクジェットプリンタは、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおいて、上記制御手段は、上記第1の段階の加圧制御によって上記送液手段による上記インクの送液が停止された後に、予め設定された時間間隔をあけて、上記第2の段階の加圧制御によって上記送液手段による上記インクの送液を開始する制御を行うようにしたものである。
【0046】
また、本発明によるインクジェットプリンタは、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおいて、上記送液手段は、上記送液経路を含む送液系に異常があることを検知するための予め設定された検出閾値に到達すると、上記送液手段による上記インクの送液を停止するようにしたものである。
【0047】
また、本発明によるインクジェットプリンタは、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおいて、上記検出閾値は、上記第1の段階の加圧制御と上記第2の段階の加圧制御とにおけるそれぞれの加圧動作に応じて、上記第1の段階の加圧制御と上記第2の段階の加圧制御とでそれぞれ設定されるようにしたものである。
【0048】
また、本発明によるインクジェットプリンタは、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおいて、上記送液手段は、上記第1の段階の加圧制御と上記第2の段階の加圧制御とで予め設定された加圧動作速度で上記インクを加圧するようにしたものである。
【0049】
また、本発明によるインクジェットプリンタは、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおいて、上記加圧動作速度は、上記第1の段階の加圧制御と上記第2の段階の加圧制御とにおけるそれぞれの加圧動作に応じて、上記第1の段階の加圧制御と上記第2の段階の加圧制御とでそれぞれ設定されるようにしたものである。
【0050】
また、本発明によるインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法は、インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路に送液されるインクを加圧する処理を行うインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法において、インクジェットヘッドへインクを供給する送液経路において、上記インクを原状の圧力値からそれより高い圧力値まで加圧する加圧動作時に、複数回に分けて段階的に細分化して加圧動作を順次行うようにしたものである。
【0051】
また、本発明によるインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法は、上記した本発明によるインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法において、上記細分化して加圧動作を順次行うときに、上記細分化した加圧動作間で予め設定された時間間隔をあけて上記細分化した加圧動作を順次行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0052】
本発明は、以上説明したように構成されているので、送液経路において原状のインクの圧力値からそれより高い圧力値までインクを加圧する加圧動作時に、送液経路に破損を生じたり、あるいは、インクジェットヘッドのインクジェットノズルからのインクのぼた落ちが発生したりする恐れを抑止することができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【0053】
また、本発明は、以上説明したように構成されているので、送液経路において原状の圧力値からそれより高い圧力値までインクを加圧する加圧動作時に、当該高い圧力値への到達精度を向上することができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【0054】
さらに、本発明は、以上説明したように構成されているので、送液経路において原状の圧力値からそれより高い圧力値までインクを加圧する加圧動作時に、従来の技術に比べて加圧動作時間を大幅に増加させることなく、当該高い圧力値へ到達することができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、従来のインクジェットプリンタにおいて、長時間の放置などによりデフォルト圧力値よりも若干減圧されている原状のインクの圧力値から目標圧力値までインクを加圧する際におけるインク供給経路(送液経路)の圧力変化を模式的に示すグラフである。
図2図2は、従来のインクジェットプリンタにおいて、インク供給経路へ供給するインクを貯留しているインクカートリッジ内のインクが空になった場合などのように、デフォルト圧力値よりも大きく減圧されている原状のインクの圧力値から目標圧力値までインクを加圧する際におけるインク供給経路(送液経路)の圧力変化を模式的に示すグラフである。
図3図3は、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタを示す概略構成斜視説明図である。
図4図4は、図3に示すインクジェットプリンタにおけるインクカートリッジから廃液タンクに至るインク供給経路(送液経路)を模式的に示す構成説明図である。
図5図5は、図3に示すインクジェットプリンタにおけるマイクロコンピューターの本発明の実施に関連する機能的構成をあらわすブロック構成説明図である。
図6図6は、図3に示すインクジェットプリンタが実行するインク加圧制御プログラムの処理ルーチンを示すフローチャートである。
図7図7は、図3に示すインクジェットプリンタにおいて、長時間の放置などによりデフォルト圧力値よりも若干減圧されている初期圧力値から目標圧力値までインクを加圧する際におけるインク供給経路の圧力変化を模式的に示すグラフである。
図8図8は、図3に示すインクジェットプリンタにおいて、インク供給経路へ供給するインクを貯留しているインクカートリッジ内のインクが空になった場合などのように、デフォルト圧力値よりも大きく減圧されている初期圧力値から目標圧力値までインクを加圧する際におけるインク供給経路の圧力変化を模式的に示すグラフである。
図9図9は、図3に示すインクジェットプリンタにおいて、長時間の放置などによりデフォルト圧力値よりも若干減圧されている初期圧力値から目標圧力値までインクを加圧する際において、各段階毎の加圧動作を予め設定された時間間隔を開けて実行する場合におけるインク供給経路の圧力変化を模式的に示すグラフである。
図10図10は、図3に示すインクジェットプリンタにおいて、インク供給経路へ供給するインクを貯留しているインクカートリッジ内のインクが空になった場合などのように、デフォルト圧力値よりも大きく減圧されている初期圧力値から目標圧力値までインクを加圧する際において、各段階毎の加圧動作を予め設定された時間間隔を開けて実行する場合におけるインク供給経路の圧力変化を模式的に示すグラフである。
図11図11は、図3に示すインクジェットプリンタにおいて、初期圧力値から目標圧力値まで3回に分けて段階的に細分化した加圧動作として、第1段階加圧処理、第2段階加圧処理および第3段階加圧処理を行う場合におけるインク供給経路の圧力変化を模式的に示すグラフである。
図12図12は、図3に示すインクジェットプリンタにおいて、初期圧力値から目標圧力値まで3回に分けて段階的に細分化した加圧動作として、第1段階加圧処理、第2段階加圧処理および第3段階加圧処理を行う場合におけるインク供給経路の圧力変化を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0057】
(I) 本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタの構成の説明
図3には、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタを示す概略構成斜視説明図があらわされている。
【0058】
また、図4には、図3に示すインクジェットプリンタにおけるインクカートリッジから廃液タンクに至るインク供給経路(送液経路)を模式的に示す構成説明図があらわされている。
【0059】
なお、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタを説明するに際しては、説明を簡略化して本発明の理解を容易にするために、単一のインク供給経路(送液経路)を備えたインクジェットプリンタについて説明する。
【0060】
本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタ10は、基台部材12に支持され主走査方向に延長して配設された固定系のベース部材14を備えている。
【0061】
ベース部材14の左右両端には側方部材16L、16Rが配設され、側方部材16R側には側方ユニット18が配設されている。
【0062】
インクジェットプリンタ10は、左右2つの側方部材16L、16Rを連結する中央壁20を備え、中央壁20の壁面には主走査方向に延長してガイドレール22が配設されている。
【0063】
符号24は、中央壁20の壁面に平行して主走査方向に移動自在に配設されたタイミングベルトである。キャリッジ26は、タイミングベルト24に固定的に配設されるとともにガイドレール22に摺動自在に装着されている。キャリッジ26には、ベース部材14上に位置するメディアたる記録紙28と対向するようにしてインクジェットヘッド30が搭載されるとともに、インクジェットヘッド30と接続されたダンパー装置32が搭載されている。
【0064】
ここで、インクジェットヘッド30は、インクジェットノズル面30aに複数のインクジェットノズル(図示せず。)を備えている。インクジェットプリンタ10においては、インクカートリッジ36(図4を参照する。)に貯留されているインクが、ダンパー装置32を介してインクジェットヘッド30の複数のインクジェットノズルにそれぞれ供給され、当該供給されたインクをインクジェットノズルから吐出する。
【0065】
なお、こうしたインクジェットプリンタ10の全体の動作は、マイクロコンピューター34によって制御されている。マイクロコンピューター34の本発明の実施に関連する機能的構成については、図5に示すブロック構成説明図を参照しながら後に詳述する。
【0066】
また、インクジェットプリンタ10においては、上記したようにメディアとして記録紙28を用いるものとする。この記録紙28は、幅方向たる主走査方向において所定の長さを有するとともにロール状に巻回されたメディアであって、給紙装置(図示せず。)によって引き出されてベース部材14上に供給され、主走査方向と直交する方向、即ち、記録紙28の長手方向に搬送される。なお、主走査方向と直交する方向、即ち、記録紙28の搬送方向、かつ、記録紙28の長手方向を「副走査方向」と称する。
【0067】
そして、このインクジェットプリンタ10においては、マイクロコンピューター34の制御に従って記録紙28上に印刷が行われる。
【0068】
即ち、マイクロコンピューター34の制御に従って、タイミングベルト24の巻き取りによりタイミングベルト24が移動すると、このタイミングベルト24の移動に伴って、キャリッジ26が主走査方向における行き方向(往路)および帰り方向(復路)に往復移動する。これにより、キャリッジ26に搭載されたダンパー装置32およびインクジェットヘッド30が、給紙装置によってベース部材14上に供給された記録紙28上を主走査方向における行き方向(往路)および帰り方向(復路)に一体的に往復移動し、記録紙28上に印刷が行われる。
【0069】
インクジェットプリンタ10においては、ベース部材14に廃液タンク42が配設されており、側方ユニット18に着脱可能に配設されるインクカートリッジ36から廃液タンク42へ至るインク供給経路(送液経路)100が形成されている(図4を参照する。)。
【0070】
インクジェットプリンタ10には、インクジェットヘッド30のインクジェットノズル面30aをクリーニングするクリーニング処理動作において、インクジェットヘッド30に形成されたインクジェットノズルの開口部が位置するインクジェットノズル面30aをキャッピングするキャップユニット38が設けられている。
【0071】
なお、符号40は、作業者がインクジェットプリンタ10の動作を制御するための操作子40aを備えた操作パネルである。操作パネル40には、インクジェットプリンタ10の動作状態を表示するための表示装置40bが設けられている。
【0072】
次に、インク供給経路(送液経路)100について説明するが、このインク供給経路100は、一方の端部102aにインクカートリッジ36が連通するように接続されるとともに他方の端部102bにダンパー装置32が連通するように接続された可撓性のインク供給チューブ102を備えている。
【0073】
インクカートリッジ36はインクジェットヘッド30へ供給するためのインクを貯留しており、インクカートリッジ36内に貯留されたインクの容量を検知するセンサー(図示せず。)が設けられている。
【0074】
インク供給チューブ102における一方の端部102aと他方の端部102bとの間には、インクカートリッジ36内のインクをダンパー装置32へ送液するための送液手段として送液ポンプ101が配設されている。この送液ポンプ101としては、例えば、従来より公知の回転ポンプとして知られているチューブポンプやトロコイドポンプ、あるいは、ダイヤフラムポンプなどのような、従来より公知の種々の送液ポンプを用いることができるのでその詳細な説明は省略する。
【0075】
ここで、チューブポンプやトロコイドポンプなどの回転ポンプは、ポンプ内のコロや歯車を回転することによりインクを送液する。チューブポンプやトロコイドポンプにおいては、設計上の理論値として、コロや歯車の単位回転量(単位作動量)当たりの送液容量が単位送液容量として設定されている。
【0076】
ダンパー装置32はインクジェットヘッド30とともにキャリッジ26に搭載されており、インク供給チューブ102を通過したインクを一時的に貯留するインク貯留室を備えている。このダンパー装置32により、キャリッジ26が記録紙28に対して往復動する際におけるインク供給経路100内のインクの圧力変動を吸収している。
【0077】
ダンパー装置32は、例えば、インク貯留室内におけるインクの貯留容量の変化に伴い変動するダンパー内のインクの圧力を検知する圧力センサーを備えている。なお、ダンパー装置32が、インク貯留室内における圧力の変化を検知する検知レバーを備えていてもよい。こうした検知レバーを備えたダンパー装置32は、例えば、特許第5951091号公報に開示されているように従来より公知の技術であるので、その詳細な説明は省略する。
【0078】
インクジェットプリンタ10には、例えば、上記したインク貯留室内のインクの圧力値を常時監視していてインク貯留室内におけるインクの圧力値を常時検知したりする、所謂、インク供給経路(送液経路)100におけるインクの圧力を検知する圧力検知手段としての圧力センサー118が設けられたり、あるいは、検知レバーの変位を常時監視していてインク貯留室内におけるインクの圧力値を常時検知したりしている。この圧力センサー118は、インク貯留室内のインクの圧力値を常時検知して、検知結果をマイクロコンピューター34に常時出力する。
【0079】
なお、圧力センサー118としては、例えば、光により検知レバーの変位を検出して圧力値を検知する光センサーや、検知レバーの接触状態から検知レバーの変位を検出して圧力値を検知する接触センサーや、インクの圧力値を直接的に検知する液体圧力センサーなど、各種のセンサーを適宜に用いることができる。
【0080】
圧力センサー118により検知された圧力値はマイクロコンピューター34に出力され、マイクロコンピューター34は圧力センサー118により検知された圧力値に応じて、送液ポンプ101ならびに吸引ポンプ114(後述する。)を作動または停止する。
【0081】
ダンパー装置32には、ダンパー装置32のインク貯留室と連通するインクジェットノズル(図示せず。)を備えたインクジェットヘッド30が接続されており、インクカートリッジ36に貯留されたインクは、ダンパー装置32を介してインクジェットヘッド30へ供給される。インクジェットヘッド30に供給されたインクは、インクジェットノズル面30aに配置されたインクジェットヘッドノズルの開口部から吐出される。
【0082】
ここで、ダンパー装置32において、インク供給経路(送液経路)100を構成するインク貯留室内のインクの圧力値は、当該インク貯留室内のインク貯留量に応じて変位するので、圧力検知手段としての圧力センサー118が検知した圧力値に基づいて、インク貯留室内のインク貯留量を判定することができる。例えば、インク貯留室内のインク貯留量が所定の下限値(所定量)に到達したか否かや、インク貯留量が所定の上限値(満タン)に到達したか否かなどを判定することができる。
【0083】
後述するように、本発明の実施に関連しては、圧力検知手段としての圧力センサー118が検知した圧力値に基づいて、インク供給経路(送液経路)100を構成するインク貯留室内のインクの現在の圧力値について、デフォルト圧力値より低い圧力値であるか否かと、デフォルト圧力値と一致するか否かと、インクを加圧する際の目標圧力値と一致するか否かとを判定する。
【0084】
上記構成を備えたインクジェットプリンタ10によれば、ダンパー装置32内のインク貯留量に応じて送液ポンプ101ならびに吸引ポンプ114(後述する。)を作動させることができる。これにより、インクジェットプリンタ10によるメディア28への印刷時においても、インク貯留室内に所定量のインクを維持することができ、インクジェットヘッド30に安定的にインクを供給することができる。
【0085】
また、上記において説明したように、インクジェットプリンタ10においては、インクジェットヘッド30のインクジェットノズル面30aをクリーニングするクリーニング処理動作において、インクジェットヘッド30のインクジェットノズル面30aに形成されたインクジェットノズル周りをキャッピングするキャップユニット38が設けられている。
【0086】
このキャップユニット38は、インクジェットヘッド30のインクジェットノズル面30aに装着して封止するキャップ部材112と、キャップ部材112内を減圧してインクジェットヘッド30を含むインク供給経路100内のインクを吸引可能な吸引ポンプ114とを有して構成されている。吸引ポンプ114は、インクジェットヘッド30のインクジェットノズル面30aをクリーニングするクリーニング処理動作の際に、インクジェットヘッド30のインクジェットノズル面30aに形成されたインクジェットノズルの開口部を封止したキャップ部材112に負圧を供給し、インク供給経路100内のインクを吸引する。
【0087】
符号116はキャップチューブであり、一方の端部116aをキャップ部材112に接続するとともに、他方の端部116bを吸引ポンプ114に接続している。インクジェットプリンタ10においては、キャップ部材112とキャップチューブ116と吸引ポンプ114とにより、キャップ部材下流側インク供給経路を形成するインク吸引経路140が構成される。
【0088】
また、符号117は、廃液チューブであり、一方の端部117aを吸引ポンプ114に接続するとともに、他方の端部117bを廃液タンク42に接続している。インクジェットプリンタ10においては、吸引ポンプ114と廃液チューブ117とにより、キャップ部材下流側インク供給経路を形成する廃液経路150が構成される。
【0089】
ここで、吸引ポンプ114としては、例えば、従来より公知のチューブポンプやトロコイドポンプなどの回転ポンプあるいは真空ポンプなどの種々の構成のものを用いることが可能である。
【0090】
ここで、チューブポンプやトロコイドポンプなどの回転ポンプは、ポンプ内のコロを移動したり歯車を回転させたりして吸引力を発生させている状態と、所定の位置でポンプ内のコロの移動を停止したり歯車の回転を停止して吸引力が解除されて外気に開放された状態と、所定の位置でポンプ内のコロの移動を停止したり歯車の回転を停止して吸引力が解除されて外気に対して閉鎖された状態とを選択的に制御可能なポンプである。
【0091】
具体的には、吸引ポンプ114としては、特許第4857798号などに開示されたチューブポンプと同様な構成のチューブポンプを用いることができる。
【0092】
吸引ポンプ114を動作させることにより、インクジェットヘッド30から廃液タンク42側へインクが吸引される。吸引ポンプ114は、インクの吸引速度や廃液の送液速度を変化させることができる。
【0093】
インクジェットプリンタ10は、キャップ部材112とインクジェットヘッド30との位置関係が、予め設定されている基準位置(吸引処理ならびに空吸引処理を行わない位置であり、キャップ部材112とインクジェットヘッド30との位置関係を測定する際の原点位置となる位置であって、キャップ部材112とインクジェットヘッド30のインクジェットノズル面30aとが離隔している位置である。)から吸引処理を行う際の吸引位置と空吸引処理を行う際の空吸引位置とに相対的に移動自在に変化することができるように、ステッピングモーター111によりキャップ部材112を移動する。
【0094】
キャップ部材112とインクジェットヘッド30との位置関係を移動自在に相対的に変化させるために、キャップ部材112をステッピングモーター111の作動により移動させる機構については、例えば、特許第6437687号公報などに開示された従来より公知の技術を適用することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0095】
ステッピングモーター111の回転によるキャップ部材112の位置制御は、マイクロコンピューター34により制御される。
【0096】
(II) 本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタにおけるマイクロコンピューターの本発明の実施に関連する機能的構成の説明
図5には、図3に示すインクジェットプリンタにおけるマイクロコンピューターの本発明の実施に関連する機能的構成をあらわすブロック構成説明図があらわされている。
【0097】
マイクロコンピューター34は、本発明の実施に関連する機能的構成として、記憶部34aと、判定部34bと、制御部34cとを有して構築される。
【0098】
ここで、記憶部34aは、インクジェットヘッド30のインクジェットノズル面30aをクリーニングするクリーニング処理動作の際にインクを加圧するためのインク加圧制御プログラムを記憶している。
【0099】
このインク加圧制御プログラムは、インク加圧制御プログラムにより加圧される前のインクの圧力値(以下、「インク加圧制御プログラムにより加圧される前のインクの圧力値」を「初期圧力値」と適宜に称する。)からインクを加圧する際の目標圧力の値(目標圧力値)まで加圧する際に、例えば、インクジェットプリンタ10の長時間の放置やインクカートリッジ36が空になった場合などのように、初期圧力値がデフォルト圧力の値(デフォルト圧力値)より減圧されている場合に、初期圧力値からデフォルト圧力値まで加圧する第1段階加圧処理と、デフォルト圧力値から目標圧力値まで加圧する第2段階加圧処理とを実行するためのプログラムである。
【0100】
上記した第1段階加圧処理においては、インクジェットノズル面30aの圧力の値が初期圧力値からデフォルト圧力値である「-1.23kPa」になるまで、加圧動作速度たる送液ポンプ101によりインクを送液する送液速度を「0.4ml/sec(秒)」とし、かつ、検出閾値として送液ポンプ101の「送液動作時間」を「2.5sec(秒)」として設定し、送液ポンプ101によりインクを送液して加圧動作させる。
【0101】
また、上記した第2段階加圧処理においては、インクジェットノズル面30aの圧力の値がデフォルト圧力値から目標圧力値である「0.00kPa」になるまで、加圧動作速度たる送液ポンプ101によりインクを送液する送液速度を「0.5ml/sec(秒)」とし、かつ、検出閾値として送液ポンプ101の「送液動作時間」を「5.0sec(秒)」として設定し、送液ポンプ101によりインクを送液して加圧動作させる。
【0102】
判定部34bは、圧力センサー118から出力された圧力値に基づいて、圧力センサー118から出力された現在の圧力値がデフォルト圧力値より減圧された圧力値であるか、あるいは、デフォルト値であるか、あるいは、目標圧力値であるかを判定する。
【0103】
制御部34cは、記憶部34aに記憶されたインク加圧制御プログラムに従って、送液ポンプ101の動作を制御する。
【0104】
(III) 本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法における動作の説明
図6には、図3に示すインクジェットプリンタが実行するインク加圧制御プログラムの処理ルーチンを示すフローチャートがあらわされている。
【0105】
また、図7には、図3に示すインクジェットプリンタにおいて、長時間の放置などによりデフォルト圧力値よりも若干減圧されている初期圧力値から目標圧力値までインクを加圧する際におけるインク供給経路の圧力変化を模式的に示すグラフがあらわされている。
【0106】
さらに、図8には、図3に示すインクジェットプリンタにおいて、インク供給経路へ供給するインクを貯留しているインクカートリッジ内のインクが空になった場合などのように、デフォルト圧力値よりも大きく減圧されている初期圧力値から目標圧力値までインクを加圧する際におけるインク供給経路の圧力変化を模式的に示すグラフがあらわされている。
【0107】
以上の構成において、インクジェットプリンタ10においては、マイクロコンピューター34の制御により、インクカートリッジ36からインク供給チューブ102へインクを供給しながら、インクジェットヘッド30のインクジェットノズルから記録紙28に対してインクを吐出して、記録紙28への印刷処理を行う。
【0108】
また、インクジェットプリンタ10においては、本発明の実施に関連する処理として、図6に示すインク加圧制御プログラムの処理ルーチンが実行される。
【0109】
以下に、図6に示すフローチャートを参照しながら、インク加圧制御プログラムの処理ルーチンについて説明する。
【0110】
このインクジェットプリンタ10においては、例えば、作業者により操作パネル40に設けられた操作子40aが操作されて、インクジェットヘッド30におけるインクジェットヘッドノズル面30aをクリーニングするクリーニング処理動作の開始が指示されたとき、圧力センサー118により検知された原状の圧力値がデフォルト圧力値より減圧されている場合に、当該原状の圧力値を初期圧力値として、図6に示すフローチャートのインク加圧制御プログラムの処理ルーチンが起動して実行される。
【0111】
はじめに、インクジェットプリンタ10の長時間の放置により、初期圧力値がデフォルト圧力値より若干減圧されている場合について説明する。
【0112】
マイクロコンピューター34が記憶部34aに記憶されたインク加圧制御プログラムを読み出して、図6に示すフローチャートのインク加圧制御プログラムの処理ルーチンを起動すると、まず、制御部34の制御によって、送液ポンプ101の送液速度を「0.4ml/sec(秒)」とし、かつ、検出閾値として送液ポンプ101の「送液動作時間」を「2.5sec(秒)」として、送液ポンプ101の動作を開始し、送液ポンプ101によりインクを送液してインクの加圧動作を開始する(ステップS602)。
【0113】
判定部34bは、ステップS602の処理によるインクの加圧動作による初期圧力値からのインクの圧力値の変化を監視するとともに、インクの現在の圧力値(現在圧力値)がデフォルト圧力値である「-1.23kPa」になるか否かの判定を行う(ステップS604)。
【0114】
そして、現在圧力値がデフォルト圧力値になるまで送液ポンプ101の作動によるインクの加圧を継続し、現在圧力値がデフォルト圧力値になると送液ポンプ101の動作を一旦停止する(ステップS606)。
【0115】
上記したステップS602乃至ステップS606の処理が、図7に示すように第1段階加圧処理に相当する。
【0116】
なお、従来の技術と同様に、送液ポンプ101の「送液動作時間」が検出閾値の「2.5sec(秒)」に到達してもインクの現在圧力値がデフォルト圧力値まで到達しない場合には、インク供給経路100に異常があると判定し、送液ポンプ101の動作を停止して送液動作を中止する。
【0117】
次に、制御部34の制御によって、送液ポンプ101の送液速度を「0.5ml/sec(秒)」とし、かつ、検出閾値として送液ポンプ101の「送液動作時間」を「5.0sec(秒)」として、送液ポンプ101の動作を開始し、送液ポンプ101によりインクを送液してインクの加圧動作を開始する(ステップS608)。
【0118】
判定部34bは、ステップS608の処理によるインクの加圧動作によるデフォルト圧力値からのインクの圧力値の変化を監視するとともに、インクの現在の圧力値(現在圧力値)が目標圧力値である「0.00kPa」になるか否かの判定を行う(ステップS610)。
【0119】
そして、現在圧力値が目標圧力値になるまで送液ポンプ101の作動によるインクの加圧を継続し、現在圧力値が目標圧力値になると送液ポンプ101の動作を停止し(ステップS612)、このインク加圧制御プログラムの処理ルーチンを終了する。
【0120】
上記したステップS608乃至ステップS612の処理が、図7に示すように第2段階加圧処理に相当する。
【0121】
なお、従来の技術と同様に、送液ポンプ101の「送液動作時間」が検出閾値の「5.0sec(秒)」に到達してもインクの現在圧力値が目標圧力値まで到達しない場合には、インク供給経路100に異常があると判定し、送液ポンプ101の動作を停止して送液動作を中止する。
【0122】
なお、インクジェットプリンタ10においては、 図7に示すように、上記第1段階加圧処理と第2段階加圧処理とは時間を空けることなく連続的に実行される。
【0123】
また、インクカートリッジ36が空になって初期圧力値がデフォルト圧力値より大きく減圧されている場合についても、マイクロコンピューター34が記憶部34aに記憶されたインク加圧制御プログラムを読み出して、図6に示すフローチャートのインク加圧制御プログラムの処理ルーチンを起動し、上記と同様に各ステップの処理が行われ、図8に示すように第1段階加圧処理と第2段階加圧処理とが実行される。
【0124】
なお、上記したインク加圧制御プログラムの処理ルーチンを除くクリーニグ処理に関するその他の処理については、従来より公知の技術を適宜に用いればよいのでそれらの詳細な説明は省略する。
【0125】
(IV) 本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタにおけるインクの加圧制御方法における作用効果の説明
上記において説明したように、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタ10およびインクジェットプリンタ10におけるインクの加圧制御方法によれば、初期圧力値から目標圧力値までインクを加圧する際に、初期圧力値から目標圧力値まで一気に加圧する加圧動作を行うのではなく、初期圧力値から目標圧力値まで複数回(本発明の実施の形態においては2回である。)に分けて段階的に細分化した加圧動作(第1段階加圧処理および第2段階加圧処理)を順次行うようにしている。
【0126】
このため、インクジェットプリンタ10においては、インク供給経路(送液経路)100(ダンパー装置32も含む。)において初期圧力値から目標圧力値までインクを加圧する加圧動作時に、初期圧力値のいかんに関わらず目標圧力値まで連続して一気に加圧されることがないので、インク供給経路(送液経路)100(ダンパー装置32も含む。)に大きな圧力が一気にかかることがなくなる。これにより、インク供給経路(送液経路)100(ダンパー装置32も含む。)に破損を生じさせる恐れや、インクジェットヘッド30のインクジェットノズルからのインクのぼた落ちを発生させる恐れなどを効果的に抑止することができる。
【0127】
さらに、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタ10およびインクジェットプリンタ10におけるインクの加圧制御方法によれば、初期圧力値から目標圧力値まで各段階毎に細分化した第1段階加圧処理と第2段階加圧処理との加圧動作の制御をそれぞれ別途に行うため、原状の圧力値から目標圧力値まで連続して一気に加圧する従来の技術に比べて、目標圧力値への到達精度を向上することができるようになる。
【0128】
また、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタ10およびインクジェットプリンタ10におけるインクの加圧制御方法によれば、第1段階加圧処理と第2段階加圧処理との加圧動作時における想定される状況や目的に合わせて、検出閾値の設定を行っている。具体的には、第1段階加圧処理では検出閾値を「2.5sec(秒)」に設定し、一方、第1段階加圧処理では検出閾値を「5.0sec(秒)」に設定している。
【0129】
同様に、本発明の実施の形態の一例によるインクジェットプリンタ10およびインクジェットプリンタ10におけるインクの加圧制御方法によれば、第1段階加圧処理と第2段階加圧処理との加圧動作時における想定される状況や目的に合わせて、加圧動作速度たる送液ポンプ101によりインクを送液する送液速度の設定を行っている。具体的には、第1段階加圧処理では送液速度を「0.4ml/sec(秒)」に設定し、一方、第2段階加圧処理では送液速度を「0.5ml/sec(秒)」に設定している。
【0130】
このため、インクジェットプリンタ10においては、インク供給経路(送液経路)100(ダンパー装置32も含む。)において初期圧力値から目標圧力値までインクを加圧する加圧動作の際に、初期圧力値から目標圧力値まで複数回に分けて各段階に細分化した加圧動作(第1段階加圧処理および第2段階加圧処理)を行っても、従来の技術に比べて加圧動作時間を大幅に増加させることなく、目標圧力値へ到達することができるようになる。
【0131】
(V) その他の実施の形態および変形例の説明
上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができる。即ち、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。
【0132】
例えば、上記した実施の形態は、以下の(V-1)乃至(V-6)に示すように変形するようにしてもよい。
【0133】
(V-1) 上記した実施の形態においては、インクジェットプリンタ10が単一のインク供給経路(送液経路)101を備えた場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、インクジェットプリンタ10は、2経路以上の複数のインク供給経路(送液経路)を備えるようにしてもよい。インクジェットプリンタ10が2経路以上の複数のインク供給経路(送液経路)を備える場合には、各インク供給経路(送液経路)のそれぞれについて図6に示すフローチャートの処理を実行する。
【0134】
(V-2) 上記した実施の形態においては、図7に示すように、第1段階加圧処理と第2段階加圧処理とが時間間隔をあけることなく連続的に実行される場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、第1段階加圧処理と第2段階加圧処理とが、予め設定された時間間隔をあけて順次実行されるようにしてもよい。
【0135】
例えば、長時間の放置などによりデフォルト圧力値よりも若干減圧されている初期圧力値から目標圧力値までインクを加圧する際には、図9に示すように、第1段階加圧処理を実行した後に、予め設定された時間間隔Aが経過してから第2段階加圧処理を実行する。
【0136】
また、インク供給経路へ供給するインクを貯留しているインクカートリッジ内のインクが空になった場合などのように、デフォルト圧力値よりも大きく減圧されている初期圧力値から目標圧力値までインクを加圧する際に、図10に示すように、第1段階加圧処理を実行した後に、予め設定された時間間隔B(時間間隔Bは、「時間間隔B>時間間隔A」に設定している。)が経過してから第2段階加圧処理を実行する。
【0137】
なお、上記した時間間隔については、例えば、加圧されたインクの圧力が安定するまでの時間間隔などを考慮して設定することができる。
【0138】
従って、上記(V-1)において説明した場合のように、インクジェットプリンタ10が2経路以上の複数のインク供給経路(送液経路)を備える場合には、第1段階加圧処理を実行した後に予め設定された時間間隔(例えば、数秒間である)をあけて、各インク供給経路(送液経路)のそれぞれにおけるインクの圧力を安定せた後に、第2段階加圧処理を実行するようにしてもよい。
【0139】
(V-3) 上記した実施の形態においては、初期圧力値から目標圧力値まで2回に分けて段階的に細分化した加圧動作として、第1段階加圧処理と第2段階加圧処理とを順次行うようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、初期圧力値から目標圧力値まで3回以上の複数回に分けて段階的に細分化した加圧動作として、各段階における加圧処理を行うようにしてもよい。
【0140】
例えば、図11ならびに図12には、初期圧力値から目標圧力値まで3回に分けて段階的に細分化した加圧動作として、第1段階加圧処理、第2段階加圧処理および第3段階加圧処理を行う例が示されている。
【0141】
図11に示す例においては、第1段階加圧処理として、インクジェットノズル面30aの圧力の値が初期圧力値からデフォルト圧力値である「-1.23kPa」になるまで、加圧動作速度たる送液ポンプ101によりインクを送液する送液速度を「0.4ml/sec(秒)」とし、かつ、検出閾値として送液ポンプ101の「送液動作時間」を「2.5sec(秒)」として設定し、送液ポンプ101によりインクを送液して加圧動作させる。
【0142】
次に、第1段階加圧処理の後に時間間隔αをあけて、第2段階加圧処理として、インクジェットノズル面30aの圧力の値がデフォルト圧力値からデフォルト圧力値と目標圧力値との略中間の圧力値(中間圧力値)である「-0.6kPa」になるまで、加圧動作速度たる送液ポンプ101によりインクを送液する送液速度を「0.4ml/sec(秒)」し、かつ、検出閾値として送液ポンプ101の「送液動作時間」を「2.5sec(秒)」として設定し、送液ポンプ101によりインクを送液して加圧動作させる。
【0143】
最後に、第2段階加圧処理の後に時間間隔βをあけて、第3段階加圧処理として、インクジェットノズル面30aの圧力の値が中間圧力値から目標圧力値である「0.00kPa」になるまで、加圧動作速度たる送液ポンプ101によりインクを送液する送液速度を「0.4ml/sec(秒)」し、かつ、検出閾値として送液ポンプ101の「送液動作時間」を「2.5sec(秒)」として設定し、送液ポンプ101によりインクを送液して加圧動作させる。
【0144】
このように、初期圧力値から目標圧力値まで加圧する際の段階を増やすことにより、より安全かつ安定してインクを加圧することができるようになる。
【0145】
また、図12に示す例においては、第1段階加圧処理として、インクジェットノズル面30aの圧力の値が初期圧力値からデフォルト圧力値である「-1.23kPa」になるまで、加圧動作速度たる送液ポンプ101によりインクを送液する送液速度を「0.4ml/sec(秒)」とし、かつ、検出閾値として送液ポンプ101の「送液動作時間」を「2.5sec(秒)」として設定し、送液ポンプ101によりインクを送液して加圧動作させる。
【0146】
次に、第1段階加圧処理の後に時間間隔αをあけて、第2段階加圧処理として、インクジェットノズル面30aの圧力の値が目標圧力値の近傍に設定された調整開始圧力値である「-0.2kPa」になるまで、加圧動作速度たる送液ポンプ101によりインクを送液する送液速度を「0.4ml/sec(秒)」し、かつ、検出閾値として送液ポンプ101の「送液動作時間」を「5.0sec(秒)」として設定し、送液ポンプ101によりインクを送液して加圧動作させる。
【0147】
最後に、第2段階加圧処理の後に時間間隔βをあけて、第3段階加圧処理として、インクジェットノズル面30aの圧力の値が調整開始圧力値から目標圧力値である「0.00kPa」になるまで、加圧動作速度たる送液ポンプ101によりインクを送液する送液速度を「0.1ml/sec(秒)」し、かつ、検出閾値として送液ポンプ101の「送液動作時間」を「4.0sec(秒)」として設定し、送液ポンプ101によりインクを送液して加圧動作させる。
【0148】
このように、目標圧力値に到達する直前に送液速度を低速にすることにより、目標圧力値への到達精度を一層向上することができるようになる。
【0149】
(V-4) 上記した実施形態においては、インクジェットプリンタ10が、初期圧力値から目標圧力値まで2回に分けて2段階に細分化した加圧動作を自動的に実行するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、2段階で加圧動作を行う処理(図7乃至図10を参照する。)のプログラムと3段階で加圧動作を行う処理(図11乃至図12を参照する。)のプログラムとを、マイクロコンピューター34の記憶部34aにそれぞれ記憶しておく。そして、インクを加圧する際の状況などに応じて、マイクロコンピューター34が自動的に記憶部34aに記憶してあるプログラムを選択して実行するようにしてもよいし、あるいは、作業者が操作パネル40の操作子40aを操作することにより、記憶部34aに記憶してあるプログラムを選択して実行するようにしてもよい。
【0150】
(V-5) 上記した実施形態において、作業者が操作パネル40の操作子40aを操作することにより、検出閾値や加圧動作速度などの各種の値を任意に設定することができるようにしてもよい。
【0151】
(V-6) 上記した実施の形態ならびに上記した(V-1)乃至(V-5)に示す各種の他の実施の形態や変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明は、メディアに向けて印刷用のインクを吐出して当該メディア上に2次元の画像を印刷する、所謂、2次元プリンタたるインクジェットプリンタや、粉末材料などにバインダーや水などを吐出することにより当該粉末材料を硬化させて3次元造形物を造形する、所謂、3次元プリンタ(3次元造形装置)たるインクジェットプリンタに利用することができる。
【符号の説明】
【0153】
10 インクジェットプリンタ
12 基台部材
14 ベース部材
16L 側方部材
16R 側方部材
18 側方ユニット
20 中央壁
22 ガイドレール
24 タイミングベルト
26 キャリッジ
28 記録紙
30 インクジェットヘッド
30a インクジェットノズル面
32 ダンパー装置(送液経路)(送液系)
34 マイクロコンピューター(制御手段)
34a 記憶部
34b 判定部(制御手段)
34c 制御部(制御手段)
36 インクカートリッジ
38 キャップユニット
40 操作パネル
40a 操作子
40b 表示装置
42 廃液タンク
100 インク供給経路(送液経路)(送液系)
101 送液ポンプ(送液手段)(送液経路)(送液系)
102 インク供給チューブ
102a 端部
102b 端部
111 ステッピングモーター
112 キャップ部材
114 吸引ポンプ
116 キャップチューブ
116a 端部
116b 端部
117 廃液チューブ
117a 端部
117b 端部
120 バルブ
118 圧力センサー(圧力検知手段)
140 インク吸引経路
150 廃液経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12