(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101748
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】CO2固定方法、及び、CO2固定装置
(51)【国際特許分類】
C04B 40/02 20060101AFI20240723BHJP
B28B 11/24 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C04B40/02
B28B11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005850
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】517390074
【氏名又は名称】タケ・サイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛人
(72)【発明者】
【氏名】神代 泰道
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕太
(72)【発明者】
【氏名】武田 雅成
【テーマコード(参考)】
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055BA02
4G112RA02
(57)【要約】
【課題】CO
2固定量の増大、及び、廃棄物の低減を図る。
【解決手段】不要となったセメント組成物を粉砕し、セメントを含有する粒状物を生成する粒状物生成ステップと、前記粒状物を大気中よりもCO
2濃度の高い高濃度CO
2環境中に敷設して前記粒状物にCO
2を固定するCO
2固定ステップとを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不要となったセメント組成物を粉砕し、セメントを含有する粒状物を生成する粒状物生成ステップと、
前記粒状物を、大気中よりもCO2濃度の高い高濃度CO2環境中に敷設して、前記粒状物にCO2を固定するCO2固定ステップと、
を有することを特徴とするCO2固定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のCO2固定方法であって、
前記CO2固定ステップにおいて、前記粒状物に給水を行う、
ことを特徴とするCO2固定方法。
【請求項3】
請求項1に記載のCO2固定方法であって、
前記CO2固定ステップでは、前記粒状物を所定空間に配置し、前記所定空間内に前記高濃度CO2環境とするための高濃度CO2ガスを取り入れつつ、前記所定空間の温度及び湿度の一方又は両方を調整する、
ことを特徴とするCO2固定方法。
【請求項4】
請求項1に記載のCO2固定方法であって、
前記CO2固定ステップでは、前記粒状物を前記高濃度CO2環境中に0~8日間配置する、
ことを特徴とするCO2固定方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れかにに記載のCO2固定方法であって、
前記CO2固定ステップで生成されたCO2固定粒状物の粒度を調整して粉末を形成する粒度調整ステップを有する、
ことを特徴とするCO2固定方法。
【請求項6】
請求項5に記載のCO2固定方法であって、
前記粒度調整ステップは、前記セメント組成物の種類、又は、前記粉末の用途に応じて行う、
ことを特徴とするCO2固定方法。
【請求項7】
請求項5に記載のCO2固定方法であって、
前記粉末に、CO2を再固定するCO2再固定ステップをさらに有する、
ことを特徴とするCO2固定方法。
【請求項8】
請求項1に記載のCO2固定方法であって、
前記セメント組成物は、使用されなかったコンクリート起源の脱水ケーキ、又は、廃コンクリート起源のセメント含有粉体である、
ことを特徴とするCO2固定方法。
【請求項9】
請求項1に記載のCO2固定方法であって、
前記セメント組成物は、固形分重量50単位に対して、水分重量0~100単位である、
ことを特徴とするCO2固定方法。
【請求項10】
セメントを含有する粒状物にCO2を固定するCO2固定装置であって、
所定空間と、
前記所定空間に設けられ、前記粒状物を敷設する敷設床と、
前記粒状物に給水する給水装置と、
前記所定空間に大気よりもCO2濃度の高い高濃度CO2ガスを取り入れる給気装置と、
前記所定空間の温度及び湿度の一方又は両方を調整する温湿度調整装置と、
を備える、ことを特徴とするCO2固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2固定方法、及び、CO2固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場などで使用されなかったコンクリート(残コン・戻りコン)から生成される脱水ケーキ(コンクリートスラッジの固体部位)や、構造物を解体した際に得られる廃コンクリートは、通常、産業廃棄物として処理(廃棄)されている。しかし、廃棄するにはコストが嵩むし、環境負荷にもなるため、廃棄せずに有効利用する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、生コンスラッジをスラッジ造粒物とし、珪酸石灰肥料として再利用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリートの製造の際には二酸化炭素(CO2)が多量に排出される。上記の特許文献1は、生コンスラッジを粒状物にして再利用する技術であり、CO2の削減には貢献していない。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、CO2固定量の増大、及び、廃棄物の低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、不要となったセメント組成物を粉砕し、セメントを含有する粒状物を生成する粒状物生成ステップと、前記粒状物を大気中よりもCO2濃度の高い高濃度CO2環境中に敷設して前記粒状物にCO2を固定するCO2固定ステップとを有することを特徴とするCO2固定方法である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、CO2固定量の増大、及び、廃棄物の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のCO
2固定方法を実施するためのシステム構成の一例を示す概略図である。
【
図2】CO
2固定方法の一例を示すフロー図である。
【
図3】CO
2固定の日数とCO
2固定量との関係の一例を示す図である。
【
図4】水分量とCO
2固定量との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
(態様1)
不要となったセメント組成物を粉砕し、セメントを含有する粒状物を生成する粒状物生成ステップと、前記粒状物を大気中よりもCO2濃度の高い高濃度CO2環境中に敷設して前記粒状物にCO2を固定するCO2固定ステップとを有することを特徴とするCO2固定方法。
【0012】
このようなCO2固定方法によれば、不要となったセメント組成物の粒状物をCO2の固定材料として利用することができ、また、CO2を固定した粒状物をコンクリートの使用材料だけでなく、他の工業製品(例えばプラスチックのフィラー)などに用いることができる。よって、CO2固定量の増大、及び、廃棄物の低減を図ることができる。また、高濃度CO2環境中でCO2の固定を行うことにより大気中よりも高効率で材料にCO2を固定させることができる。
【0013】
(態様2)
態様1に記載のCO2固定方法であって、前記CO2固定ステップにおいて、前記粒状物が乾燥した場合、給水することが望ましい。さらに、給水後に粒状物の表面を適切な時期に乱すことが望ましい。
【0014】
態様2のCO2固定方法によれば、適度に水分が供給されることで、液相中にCO2が溶け込みやすくなり、CO2固定性能(反応性)を高めることができCO2の固定量を増大させることができる。なお、給水に使用する水とは、上水道水、回収水(スラッジ水、上澄水)などを含む。回収水を使用することで、廃棄物の削減に寄与する。
【0015】
(態様3)
態様1又は2に記載のCO2固定方法であって、前記CO2固定ステップでは、前記粒状物を所定空間に配置し、前記所定空間内に前記高濃度CO2環境とするための高濃度CO2ガスを取り入れつつ、前記所定空間の温度及び湿度の一方又は両方を調整することが望ましい。
【0016】
態様3のCO2固定方法によれば、粒状物へのCO2の固定量を増大させることができる。また、固定時間の短縮を図ることができる。
【0017】
(態様4)
態様1~3の何れかに記載のCO2固定方法であって、
前記CO2固定ステップでは、前記粒状物を前記高濃度CO2環境中に0~8日間配置することが望ましい。
【0018】
態様4のCO2固定方法によれば、CO2固定量の増大を図ることができる。
【0019】
(態様5)
態様1~4の何れかにに記載のCO2固定方法であって、前記CO2固定ステップで生成されたCO2固定粒状物の粒度を調整して粉末を形成する粒度調整ステップを有することが望ましい。また、粒度調整ステップでは、高速回転粉砕機(サイクロン)の使用が望ましい。
【0020】
態様5のCO2固定方法によれば、CO2を固定した粉末を生成でき、製品の一部に利用することができる。また、粒度調整ステップの粉砕工程にて、高速回転粉砕機(サイクロン)を用いた風砕処理することにより、処理時にCO2を固定することが可能である。また、サイクロンでは比重選別が可能であり、CO2を固定化した部分とそれ以外に分離可能である。さらに、CO2を固定化したものにおいても、固定量の大小に分けることが可能である。
【0021】
(態様6)
態様5に記載のCO2固定方法であって、前記粒度調整ステップは、前記セメント組成物の種類、又は、前記粉末の用途に応じて行うことが望ましい。
【0022】
態様6のCO2固定方法によれば、セメント組成物の種類や、粉末の用途に適した粒度に形成できる。
【0023】
(態様7)
態様5又は6に記載のCO2固定方法であって、前記粉末に、CO2を再固定するCO2再固定ステップをさらに有することが望ましい。
【0024】
態様7のCO2固定方法によれば、粒度が調整された粒状物(粉末)にCO2をさらに固定できる。よって、CO2固定量をさらに増大できる。
【0025】
(態様8)
態様1~7の何れかに記載のCO2固定方法であって、前記セメント組成物は、使用されなかったコンクリート起源の脱水ケーキ、又は、廃コンクリート起源のセメント含有粉体であることが望ましい。
【0026】
態様8のCO2固定方法によれば、使用されなかった(余剰の)コンクリートや廃コンクリートを、CO2固定材料として有効利用することができる。これにより、廃棄物を低減することができる。
【0027】
(態様9)
態様1~8の何れかに記載のCO2固定方法であって、セメント組成物は、固形分重量50単位に対して、水分重量0~100単位であることが望ましい。
【0028】
態様9のCO2固定方法によれば、CO2固定量を増やすことができる。
【0029】
(態様10)
セメントを含有する粒状物にCO2を固定するCO2固定装置であって、所定空間と、前記所定空間に設けられ、前記粒状物を敷設する敷設床と、前記粒状物に給水する給水装置と、前記所定空間に大気よりもCO2濃度の高い高濃度CO2ガスを取り入れる給気装置と、前記所定空間の温度及び湿度の一方又は両方を調整する温湿度調整装置と、を備えることを特徴とするCO2固定装置。
【0030】
態様10のCO2固定装置によれば、CO2の固定量の増大を図ることができる。
【0031】
===実施形態===
<<システム構成について>>
図1は、本実施形態のCO
2固定方法を実施するためのシステム構成の一例を示す概略図である。
図1に示すシステムは、CO
2固定装置10と粒度調整装置20を備えている。
【0032】
<CO2固定装置10について>
CO2固定装置10は、材料(ここでは後述する粒状物Sなど)にCO2を固定させるための装置である。なお、後述するように、CO2固定装置10を使用しなくても、CO2を固定することは可能である。ただし、CO2固定装置10を使用すると、一定量のCO2を固定させるために要する時間を短縮できるとともに、CO2の固定量をより増大させることが可能である。
【0033】
CO2固定装置10は、ビニールハウスと同様の構成であり、合成樹脂のフィルムなどで周囲(外周)を被覆された内部空間10a(所定空間に相当)を有している。そして、CO2固定装置10の内部(内部空間10a)には、日射が差し込むようになっている。
【0034】
また、
図1に示すように、本実施形態のCO
2固定装置10は、敷設床11、ガス取り入れ管12、水噴霧装置13、除湿装置14、ヒータパネル15、CO
2濃度測定装置16、温湿度測定装置17、太陽光発電装置18などを備えている。
【0035】
敷設床11は、CO
2固定装置10内において水平に平らに取り付けられた棚状の部材である。
図1に示すように、敷設床11は、上下(鉛直方向)に間隔を空けて3段に構成されているが、これには限られず、例えば2段以下でも良いし、4段以上でもよい。なお、段数を増やすことにより、CO
2固定装置10内に敷設する材料(後述する粒状物S)の数を多くすることができ、CO
2固定の処理の効率化を図ることができる。
【0036】
敷設床11の上には、粒状物Sが複数配置されている。粒状物Sは、不要となったセメント組成物から形成された粒状(顆粒状や球状など)の物体であり、セメントを含有している。本実施形態において、粒状物Sは、汚泥状のスラッジが固結したものや、脱水ケーキを粉砕した粉砕物、又は、廃コンクリートの粉末である。
【0037】
ここで、スラッジとは、コンクリート製造時又は打設時に使用されなかった余剰コンクリート(残コン・戻りコン)から骨材(粗骨材、細骨材)を除去した汚泥状のものであり、脱水ケーキとは、コンクリートスラッジを脱水処理して得られたものである。この脱水ケーキを、例えば、後述する粒度調整装置20の粉砕機20aなどで粉砕することにより粒状物Sが得られる。
【0038】
また、廃コンクリートの粉末は、コンクリート構造物を解体する際に発生するコンクリート廃棄物を破砕(粉砕)して、破砕物から骨材などを回収(除去)し、その後、セメント水和物やセメント未水和物を含む微粉(粒状物S)として取り出したものである。
【0039】
なお、ここではコンクリートの場合を例示したが、コンクリートには限られず、セメントを含有するセメント組成物であればよい。例えば、モルタルでもよい。
【0040】
図1では、便宜上、敷設床11上の複数の粒状物Sを、同じ形状(球状)、及び、同じ大きさ(粒度)として示しているが、各粒状物Sの形状や大きさは、それぞれ異なっていてもよい。
【0041】
ガス取り入れ管12(給気装置に相当)は、CO2固定装置10の内部(内部空間10a)に、CO2を含む気体(ガス)を取り入れるための管状の部材である。ガス取り入れ管12から内部空間10aには、大気(外気)、または、高濃度CO2ガスを選択的に取り入れ可能であり、本実施形態では、主に高濃度CO2ガスを取り入れている。これにより、一定量のCO2の固定に要する時間を短くでき、また、CO2の固定量を増やす(固定効率を高める)ことができる。
【0042】
なお、高濃度CO2ガスは、大気中よりも二酸化炭素(CO2)の濃度の高いガスであり、例えば、コンクリート製品の製造時に排出される排出ガスからCO2を分離回収して得られる。具体的には、大気中のCO2濃度が約0.03%であるのに対し、高濃度CO2ガスはそれより高い濃度を有している。
【0043】
水噴霧装置13(給水装置に相当)は、CO2固定装置10内に水を噴霧し、これにより粒状物Sに給水を行う装置である。水噴霧装置13は、水が供給される配管13aと、配管13aの所定位置に設けられた噴射部13bを有している。そして、配管13aを流れる水が噴射部13bから噴射(噴霧)されて、粒状物Sに給水が行われる。これにより、CO2の固定量を増大させることができる。なお、水噴霧装置13の構成は、上記の例には限られず、CO2固定装置10内に水を噴霧できるものであればよい。また、CO2固定装置10に水噴霧装置13が設けられていなくてもよい。なお、給水に使用する水とは、上水道水、回収水(スラッジ水、上澄水)などを含む。回収水を使用することで、廃棄物の削減に寄与する。
【0044】
除湿装置14は、CO
2固定装置10内を除湿(湿度調整)する装置である。本実施形態(
図1)では、除湿装置14は各敷設床11の上にそれぞれ1つ(合計3つ)設置されているがこれには限られない。例えば、CO
2固定装置10内に除湿装置14が1つでもよいし、各敷設床11の上に除湿装置14が複数設けられていてもよい。また、CO
2固定装置10に除湿装置14が設けられていなくてもよい。
【0045】
ヒータパネル15は、輻射熱を利用して空間(ここではCO2固定装置10の内部空間10a)を加熱(温度調整)する器具である。換言すると、ヒータパネル15は、内部空間10aに配置された粒状物Sを加熱する。本実施形態では、ヒータパネル15はCO2固定装置10における最下部に設けられている。温められた空気(暖かい空気)は上昇するため、ヒータパネル15をCO2固定装置10の最下部に設けることで、加熱する際の効率が良くなる。また、CO2固定装置10への日射の差し込みの邪魔にならない。なお、本実施形態ではヒータパネル15で加熱しているが、これには限られず、他の装置(例えば炉など)で加熱するようにしてもよい。また、CO2固定装置10に、加熱装置が設けられていなくてもよい。
【0046】
CO2濃度測定装置16は、CO2固定装置10内(内部空間10a)のCO2濃度を測定する。
【0047】
温湿度測定装置17は、例えば、不図示の温度センサや湿度センサを備えており、CO2固定装置10内(内部空間10a)の温度及び湿度(以下、温湿度)を測定する。
【0048】
太陽光発電装置18は、太陽の光エネルギーを電気に変換することにより発電を行う装置である。太陽光発電装置18は、CO2固定装置10で使用する電力を全てカバーできるものであることが望ましい。これにより、電力を購入・生産する際に発生するCO2ガスを削減し、CO2排出量を削減できる。
【0049】
また、CO2固定装置10は、CO2濃度測定装置16及び温湿度測定装置17の測定結果に基づいて、各部の動作を制御する制御装置(不図示)を備えている。例えば、制御装置は、CO2濃度測定装置16の測定結果に基づいて、ガス取り入れ管12から取り入れるガスの量やCO2濃度を制御する。また、制御装置は、温湿度測定装置17の測定結果に基づいて、温湿度調整装置(ここでは、水噴霧装置13、除湿装置14、及び、ヒータパネル15)をそれぞれ制御して、内部空間10aの温湿度を調整する。
【0050】
なお、CO2固定装置10内の温度、湿度、含水状態などを変化させて、粒状物SへのCO2の固定量が最大となる条件(温度、湿度、含水状態)を、予め求めておくことが望ましい。この場合、温湿度測定装置17の測定結果に基づいて、制御装置が、水噴霧装置13、除湿装置14、ヒータパネル15を適宜制御することで、CO2固定装置10内の温湿度を、CO2の固定に最適な値に調整することができる。なお、温度及び湿度の一方を調整してもよいし、両方を調整してもよい。これにより、粒状物SへのCO2の固定量を増大させることができる。さらに、制御装置は、CO2濃度測定装置16の測定結果に基づいて、高濃度CO2ガスのCO2濃度を調整する。これにより、CO2の固定の効率を高めることができる。このように、本実施形態のCO2固定装置10では、粒状物Sによって固定化の最適条件を設定できる。
【0051】
<粒度調整装置20について>
粒度調整装置20は、材料(本実施形態では残コン・戻りコン起源の脱水ケーキ、又は、廃コンクリート)から粒状物Sを生成したり、粒状物Sの粒度を調整したりするための装置である。本実施形態の粒度調整装置20は、粉砕機20aおよび分級機20bを備えている。
【0052】
粉砕機20aは、材料の粉砕を行う装置である。粉砕機20aの種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、粉砕の程度(粒度)に応じて粗砕機や微粉砕機などがある。
【0053】
粗砕機としては、一般的なセメント工場で用いられているハンマークラッシャー、ロールクラッシャー、ジョークラッシャー、竪型ミル、ボールミル、ロッドミル、ディスクミル等が挙げられる。粗砕機は、主に、後述する一次粉砕(脱水ケーキの粉砕など)に用いられる。また、フォークリフトなどの車両や人力(手で粉砕)などによって、粉砕してもよい。
【0054】
微粉砕機は、粗砕機よりもさらに小さく(材料を数mm以下まで細かく)粉砕可能な粉砕機である。微粉砕機としては、例えば、ローラーミル、ジェットミル、高速回転粉砕機(サイクロン)、容器駆動型ミルなどが挙げられる。微粉砕機は、主に、後述する二次粉砕に用いられる。なお、二次粉砕には限られず、例えば一次粉砕に用いてもよい。また、サイクロンの利用(風砕処理)により、粉砕工程でもCO2を固定することが可能である。また、サイクロンでは比重選別が可能であり、CO2を固定化した部分とそれ以外に分離可能である。さらに、CO2を固定化したものにおいても、固定量の大小に分けることが可能である。例えば、細骨材(セメントを含まない部分)とセメント含有物に分けることができる。
【0055】
分級機20bは、粒度を揃えることを目的として、粒子径によって粒子(粒状物S)を分ける(分級する)機械である。なお、分級機20bの種類は特に限定されず、例えば篩でもよい。
【0056】
<<CO
2固定方法について>>
図2は、CO
2固定方法の一例を示すフロー図である。
【0057】
まず、CO2を固定させる材料を定め、その材料を粉砕することにより粒状物Sを生成する(S101)。本実施形態では、不要となったセメント組成物として残コン・戻りコン起源の脱水ケーキ、又は、廃コンクリートの何れかを選択して粉砕(一次粉砕)することにより、セメントを含有する粒状の粒状物Sを生成する。
【0058】
なお、粉砕によって固体材料の大きさが小さくなると、その固体全体における表面積が大きくなる。また、粉砕で得られた粒状物Sには、炭酸化が進行していないセメント分が残っている。このため、CO2の固定量を増やすことができる。特に、脱水ケーキの粉砕物は、廃コンクリートを破砕したものよりもセメント成分(炭酸化が進行していないセメント成分)が多いため、CO2の固定性能(反応性)が高い。また、硬化したコンクリートよりも、粉砕しやすく、骨材量も少ないため、粉砕に必要なエネルギーや時間を減らすことができる。
【0059】
次に、例えば、作業者は、粒状物SにCO2を固定させる際に、CO2固定装置10を使用するか否を判断する(S102)。この判断は、例えば、CO2固定装置10の使用状況や天候などに応じて行なわれる。
【0060】
CO2固定装置10を使用しない場合(S102でNO)、自然環境下に粒状物Sを配置(敷設)して、自然環境下でCO2の固定を行う(S103)。自然環境としては、屋外でもよいし、屋内でもよい。自然環境下では、大気中に粒状物Sが配置(敷設)されることになる。なお、本実施形態において、ステップS103は比較例に相当し、図中ではステップS103を介する部分を破線で示している。
【0061】
一方、CO2固定装置10を使用する場合(S102でYES)、粒状物SをCO2固定装置10内(内部空間10a)の敷設床11の上に配置(敷設)し、高濃度CO2環境中にてCO2の固定を行う(S104)。すなわち、CO2固定装置10内にガス取り入れ管12から高濃度CO2ガスを取り入れて、敷設した粒状物SにCO2を固定させる。この際、経過日数、水分量、温湿度、CO2濃度の調整を行うことにより、自然環境下でCO2の固定行う場合(ステップS103の比較例の場合)よりも、CO2の固定速度を速めたり、固定量を増やしたりすることができる。なお、本実施形態において、ステップS104は、CO2固定ステップに相当する。
【0062】
なお、CO2固定ステップにおいて、粒状物Sが乾燥した場合、給水することが望ましい。適度に水分が供給されることで、液相中にCO2が溶け込みやすくなり、CO2固定性能(反応性)を高めることができCO2の固定量を増大させることができる。さらに、給水後に粒状物Sの表面を適切な時期に乱すことが望ましい。粒状物Sの表面を適切な時期に乱すことで、よりCO2固定性能(反応性)を高めることができる。
【0063】
ステップS104の後、例えば、作業者は、コンクリート(セメント組成物)の種類や、生成する粉末の用途に応じて、CO2固定後の粒状物Sを粉砕(二次粉砕)するか否を判断する(S105)。なお、CO2固定後の粒状物SはCO2固定粒状物に相当する。
【0064】
二次粉砕する場合(S105でYES)、CO2固定後の粒状物Sを、粒度調整装置20の粉砕機(例えば、微粉砕機)を用いて、数mm以下の粒度まで粉砕して粒度分布の調整を行う(S106)。以下、二次粉砕で得られた粒状物(粒度が調整された粒状物)のことを粒状物S´と呼ぶ。
【0065】
その後、例えば、作業者は、粒状物S´にさらにCO2を固定(再固定)するか否かを判断する(S107)。
【0066】
CO2を固定(再固定)する場合(S107でYES)、自然環境下、または、CO2固定装置10を用いて、粒状物S´にCO2の固定(再固定)を行う(S108)。なお。ステップS108において、CO2固定装置10を用いる場合、大気中で固定してもよいし、高濃度CO2環境中で固定してもよい。
【0067】
これにより、CO2を固定した粉末(粒状物S´)が得られる(S109)。また、ステップS105でNO、及びステップS107でNOの場合も、CO2を固定した粉末(粒状物Sまたは粒状物S´)が得られる(S109)。
【0068】
そして、CO2を固定した粉末を、製品の一部として利用する(S110)。なお、脱水ケーキなどのセメント含有物がCO2と反応すると、炭酸カルシウム(CaCO3)を多く含む材料となるため、上記粉末は、様々な工業製品に使用される炭酸カルシウムの代替として利用できる。
【0069】
例えば、コンクリートの混和材として用いても良いし、プラスチックのフィラーとして用いても良い。なお、フィラーとは、プラスチックや樹脂の素材原料に添加する(混ぜ込む)無機材料である。フィラーを添加することにより、強度や耐熱性、各種耐性を高めたり、新しい機能を持たせたせたりすることが可能になる。フィラーは充填材とも呼ばれており、通常、炭酸カルシウムが用いられている。この炭酸カルシウムの代替として上記粉末(CO2を固定した粒状物Sまたは粒状物S´)を適用できる。
【0070】
これにより、従来では廃棄されていた残コン・戻りコン起源の脱水ケーキや、廃コンクリートの粉末などをCO2固定材料として使用することができ、CO2固定後に他の工業製品などに再利用することができる。よって、廃棄物(残コン・戻りコンの脱水ケーキ、廃棄コンクリート)の低減を図ることができ、また、CO2固定量を増大できる。
【0071】
なお、CO2固定ステップでは、粒状物Sを高濃度CO2環境中に0~8日間(好ましくは、2~8日間)配置することが望ましい。これにより、CO2の固定量を増やすことができる。
【0072】
図3は、CO
2固定の日数とCO
2固定量との関係の一例を示す図である。図において縦軸はCO
2固定量(kg-CO
2/t)である。また、横軸はCO
2固定の日数(日)であり、図の各試料を示す記号のxの値に相当する。この記号は、左から順に、材料起源の工場名-脱水ケーキを回収した日から一次粉砕するまでの期間(外気からのCO
2固定なし)-CO
2固定場所(屋外または屋内)-一次粉砕後のCO
2固定期間(自然環境下でのCO
2固定日数)-二次粉砕の回数(サイクロンの使用回数)を示している。
例えば、A-3-OUT-4-1の場合、以下のことを示す。
・材料起源の工場名:A
・脱水ケーキを回収した日から一次粉砕するまでの期間:3日
・CO
2固定場所(屋外または屋内):屋外(OUT)
・一次粉砕後のCO
2固定期間:4日(図の横軸の値)
・二次粉砕の回数(サイクロンの使用回数):1回
【0073】
この評価では、全て自然環境下でのCO2固定のみであり、CO2固定装置10は使用していない。評価フローとしては、生コン工場より材料(脱水ケーキ)回収→一次粉砕を行う所定材齢まで保管→一次粉砕→自然環境下でCO2固定(日数振り)→二次粉砕(しない場合も含む)→CO2固定量の測定となる。
【0074】
また、CO2固定量の測定方法は、測定した試料(約20g)に含まれていたCaCO3量(%)を測定し、CaCO3に含まれるCO2量を算出(モル比より)する。これにより各試料に含まれているCO2量を算出する。
【0075】
図3より、いずれの試料(粒状物S)においても0日からCO
2が固定されていることがわかる。また0~2日の間でCO
2の固定量が急に増えており(傾きが急であり)、2~8日では緩やかに増えている。このように、粒状物Sを0~8日間(好ましくは、2~8日間)、自然環境下(屋外)に配置することでCO
2固定量の増大を図ることができる。ここでは自然環境下の場合を例示したが、CO
2固定装置10を用いると(本実施形態では高濃度CO
2環境中に敷設することで)、よりCO
2固定を促進することが可能である。
【0076】
また、
図4は、水分量とCO
2固定量との関係の一例を示す図である。図の縦軸はCO
2固定量であり、横軸は、試料におけるセメント組成物の固形分重量(D50)と水分重量(W0~100)を示している。例えば、D50-W30は、セメント組成物の固形分重量50単位(例えば50g)と水分量30単位(例えば上水道水30g)を含んだ状態である。なお、固定期間は、0日(初期値)と7日(大気中及び高濃度CO
2環境中)としている。
【0077】
各試料(固形分重量50単位に対して水分重量0~100単位)においてCO2が固定されている。また、0日(初期値)に対して固定期間7日(大気中及び高濃度CO2環境中)ではCO2固定量が増えている。特に、高濃度CO2環境中では大気中よりもCO2固定が増えている。このように、脱水ケーキ起源の粒状物S(セメント組成物)は、固形分重量50単位に対して、水分重量0~100単位であることが望ましい。これにより、CO2の固定量を増やすことができる。
【0078】
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0079】
10 CO2固定装置
11 敷設床
12 ガス取り入れ管
13 水噴霧装置
13a 配管
13b 噴射部
14 除湿装置
15 ヒータパネル
16 CO2濃度測定装置
17 温湿度測定装置
18 太陽光発電装置
20 粒度調整装置
【手続補正書】
【提出日】2023-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
(態様4)
態様1~3の何れかに記載のCO
2
固定方法であって、
前記CO2固定ステップでは、前記粒状物を前記高濃度CO2環境中に0~8日間配置することが望ましい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
請求項1に記載のCO2固定方法であって、
前記セメント組成物は、固形分重量50単位に対して、水分重量0~100単位である、
ことを特徴とするCO
2
固定方法。