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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101752
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240723BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20240723BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005855
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 佑斗
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD02
4E168AD18
4E168CA06
4E168CB07
4E168CB23
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
5F063AA36
5F063AA41
5F063BA05
5F063BA32
5F063BA33
5F063BA34
5F063BA43
5F063BA45
5F063BA47
5F063CB02
5F063CB06
5F063CB12
5F063CB16
5F063CB22
5F063CB26
5F063CB27
5F063DD26
5F063DD37
5F063DE02
5F063DE07
5F063DE33
5F063EE07
5F063EE09
5F063EE22
5F063EE34
5F063FF01
5F063FF05
(57)【要約】
【課題】マルチチャンネルカットにおいて加工位置ズレが生じた場合でも加工不良を抑制することができる被加工物の加工方法を提供すること。
【解決手段】被加工物の加工方法は、複数の分割予定ラインが設定された被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザービームの集光点を被加工物の表面から所定距離離れた第一の位置に設定し、分割予定ラインに沿ってレーザービームを照射することで、第一の幅を有する第一の加工溝を形成する第一の加工溝形成ステップ1と、第一の加工溝形成ステップ1を実施した後該レーザービームの集光点を第一の位置よりも被加工物の表面に近い第二の位置に設定し、分割予定ラインに沿ってレーザービームを照射することで、第一の幅より狭い第二の幅を有する第二の加工溝を形成する第二の加工溝形成ステップ2と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割予定ラインが設定された被加工物の該分割予定ラインに沿ってレーザービームを照射して該被加工物を加工する被加工物の加工方法であって、
該被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザービームの集光点を該被加工物の表面から所定距離離れた第一の位置に設定し、該分割予定ラインに沿って該レーザービームを照射することで、第一の幅を有する第一の加工溝を形成する第一の加工溝形成ステップと、
該第一の加工溝形成ステップを実施した後、該レーザービームの集光点を該第一の位置よりも該被加工物の表面に近い第二の位置に設定し、該分割予定ラインに沿って該レーザービームを照射することで、該第一の幅より狭い第二の幅を有する第二の加工溝を形成する第二の加工溝形成ステップと、
を備える
ことを特徴とする、被加工物の加工方法。
【請求項2】
該分割予定ラインは、第一の方向に沿って伸長する複数の第一の分割予定ラインと、該第一の方向と交差する第二の方向に沿って伸長する複数の第二の分割予定ラインと、を含み、
該第一の分割予定ラインおよび該第二の分割予定ラインに沿って該第一の加工溝形成ステップを実施した後、
該第一の分割予定ラインおよび該第二の分割予定ラインに沿って該第二の加工溝形成ステップを実施する
ことを特徴とする、請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハ等の被加工物を分割してチップに個片化する方法として、被加工物に設定された分割予定ラインに沿ってレーザービームを照射することで加工溝を形成した後、加工溝に沿って破断して分割する方法や、プラズマによってエッチングすることで分割する方法等が提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-305420号公報
【特許文献2】特開2018-190857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなレーザービームの照射による加工において、加工時にデブリが生じて加工溝の両側に沿って盛り上がるように付着する場合がある。このような場合、分割予定ラインの交差部では、一方の分割予定ラインを加工することで、他方の分割予定ライン上に当該分割予定ラインを遮るような盛り上がり(埋め戻り)が形成される。このような埋め戻りが分割予定ライン上に存在すると、チップ同士が分割されずにくっついてしまう、所謂ダブルダイの原因になるという問題があった。
【0005】
そこで、一方の分割予定ライン(CH1;第一チャンネル)を加工した後、被加工物を保持するチャックテーブルを回転させて他方の分割予定ライン(CH2;第二チャンネル)を加工し、再度チャックテーブルを回転させて一方の分割予定ライン(CH3;第三チャンネル)を加工することで、他方の分割予定ラインの加工時に一方の分割予定ライン上に形成された埋め戻りを除去する、所謂マルチチャンネルカットが一般的に行われている。しかしながら、マルチチャンネルカットでは、加工時におけるチャックテーブルの回転軸の温度変化等に起因し、CH1を加工した際の加工位置に対して、CH3を加工した際の加工位置にズレが生じてしまうと、未分割が発生する可能性があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、マルチチャンネルカットにおいて加工位置ズレが生じた場合でも加工不良を抑制することができる被加工物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の加工方法は、複数の分割予定ラインが設定された被加工物の該分割予定ラインに沿ってレーザービームを照射して該被加工物を加工する被加工物の加工方法であって、該被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザービームの集光点を該被加工物の表面から所定距離離れた第一の位置に設定し、該分割予定ラインに沿って該レーザービームを照射することで、第一の幅を有する第一の加工溝を形成する第一の加工溝形成ステップと、該第一の加工溝形成ステップを実施した後、該レーザービームの集光点を該第一の位置よりも該被加工物の表面に近い第二の位置に設定し、該分割予定ラインに沿って該レーザービームを照射することで、該第一の幅より狭い第二の幅を有する第二の加工溝を形成する第二の加工溝形成ステップと、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の被加工物の加工方法において、該分割予定ラインは、第一の方向に沿って伸長する複数の第一の分割予定ラインと、該第一の方向と交差する第二の方向に沿って伸長する複数の第二の分割予定ラインと、を含み、該第一の分割予定ラインおよび該第二の分割予定ラインに沿って該第一の加工溝形成ステップを実施した後、該第一の分割予定ラインおよび該第二の分割予定ラインに沿って該第二の加工溝形成ステップを実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、マルチチャンネルカットにおいて加工位置ズレが生じた場合でも加工不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る被加工物の加工方法の加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、図2に示す第一の加工溝形成ステップの一状態を示す斜視図である。
図4図4は、図2に示す第一の加工溝形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図5図5は、図2に示す第一の加工溝形成ステップの後の被加工物の一部を拡大して示す平面図である。
図6図6は、図5におけるII-II’線断面図である。
図7図7は、図2に示す第二の加工溝形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
図8図8は、図2に示す第二の加工溝形成ステップの後の被加工物の一部を拡大して示す平面図である。
図9図9は、図8におけるII-II’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る被加工物10の加工方法について、図面に基づいて説明する。まず、加工対象の被加工物10について説明する。図1は、実施形態に係る被加工物10の加工方法の加工対象の被加工物10の一例を示す斜視図である。
【0013】
図1に示す被加工物10は、シリコン(Si)、サファイア(Al)、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、またはリチウムタンタレート(LiTaO)等を基板11とする円板状の半導体デバイスウエーハ、光デバイスウエーハ等のウエーハである。
【0014】
被加工物10は、基板11の表面12に格子状に設定される分割予定ライン13と、分割予定ライン13によって区画された各領域に形成されるデバイス14と、を有する。分割予定ライン13は、第一の分割予定ライン13-1と第二の分割予定ライン13-2とを含む。第一の分割予定ライン13-1は、第一の方向21に沿って伸長し、第一の方向21に交差する第二の方向22に並んで複数設定される。第二の分割予定ライン13-2は、第二の方向22に沿って伸長し、第一の方向21に並んで複数設定される。第一の方向21と第二の方向22とは、実施形態において、直交する。
【0015】
デバイス14は、例えば、IC(Integrated Circuit)、またはLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等である。
【0016】
被加工物10は、例えば、環状のフレーム30およびシート31に支持された状態で搬送および加工される。フレーム30は、金属または樹脂で形成され、被加工物10の外径より大きな開口を有する環状の板部材である。シート31は、フレーム30の開口より外径が大きなシート状であって、フレーム30の開口を覆うように、フレーム30の裏面側に貼着される。シート31は、例えば、伸縮性を有する合成樹脂で構成された基材層と、基材層に積層されかつ伸縮性および粘着性を有する合成樹脂で構成された糊層と、を含んで構成されてもよく、あるいは、糊層を有さず、熱可塑性を有する樹脂から構成されてもよい。
【0017】
被加工物10は、フレーム30の開口の所定の位置に位置決めされ、表面12または裏面15側がシート31に貼着することによって、フレーム30およびシート31に固定される。被加工物10は、複数の第一の分割予定ライン13-1および複数の第二の分割予定ライン13-2に沿って個々のデバイス14に分割されて、デバイスチップ16に個片化される。なお、デバイスチップ16は、実施形態において、正方形状であるが、長方形状であってもよい。また、被加工物10は、実施形態では円板状であるが、本発明では円板状でなくともよい。
【0018】
図2は、実施形態に係る被加工物10の加工方法の流れを示すフローチャートである。被加工物10の加工方法は、分割予定ライン13(実施形態では、第一の分割予定ライン13-1および第二の分割予定ライン13-2)に沿ってレーザービーム81を照射して被加工物10を加工する方法である。具体的には、被加工物10の加工方法では、加工溝(第一の加工溝40および第二の加工溝50)を形成する。被加工物10の加工方法は、図2に示すように、第一の加工溝形成ステップ1と、第二の加工溝形成ステップ2と、を備える。
【0019】
(第一の加工溝形成ステップ1)
図3は、図2に示す第一の加工溝形成ステップ1の一状態を示す斜視図である。図4は、図2に示す第一の加工溝形成ステップ1の一状態を一部断面で示す側面図である。図5は、図2に示す第一の加工溝形成ステップ1の後の被加工物10の一部を拡大して示す平面図である。図6は、図5におけるII-II’線断面図である。
【0020】
第一の加工溝形成ステップ1は、レーザービーム81の集光点82を第一の位置に設定し、分割予定ライン13に沿ってレーザービーム81を照射することで第一の幅41を有する第一の加工溝40を形成するステップである。第一の位置は、被加工物10の表面12から所定距離83離れた位置である。
【0021】
実施形態の第一の加工溝形成ステップ1では、図3等に示すレーザー加工装置60によるアブレーション加工によって、被加工物10の表面12側に分割予定ライン13に沿った第一の加工溝40を形成する。レーザービーム81は、被加工物10に対して吸収性を有する波長のレーザービームである。
【0022】
レーザー加工装置60は、保持テーブル70と、レーザービーム照射ユニット80と、撮像ユニット90と、保持テーブル70とレーザービーム照射ユニット80とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットと、各部を制御する制御装置と、を備える。なお、以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。実施形態のレーザー加工装置60は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向であり、集光点位置調整方向がZ軸方向である。
【0023】
第一の加工溝形成ステップ1では、まず、シート31を介して被加工物10の裏面15側を保持テーブル70の保持面71に保持する。次に、被加工物10を支持するフレーム30を、保持テーブル70の周囲に複数配置されたクランプ部72(図4等参照)で挟持する。次に、保持面71に真空吸引経路を介して接続する真空吸引源によって負圧を作動させて、保持面71上に載置された被加工物10を吸引保持する。
【0024】
第一の加工溝形成ステップ1では、次に、不図示の移動ユニットによって保持テーブル70を加工位置まで移動させる。次に、撮像ユニット90で被加工物10を撮像することによって、第一の分割予定ライン13-1を検出する。第一の分割予定ライン13-1が検出されたら、保持テーブル70をZ軸回りに回転させ、被加工物10の第一の分割予定ライン13-1が沿う第一の方向21と、レーザー加工装置60の加工送り方向(X軸方向)とを一致させる。また、不図示の移動ユニットによって、第一の分割予定ライン13-1を、レーザービーム81が照射される位置に位置づけるアライメントを遂行する。
【0025】
第一の加工溝形成ステップ1では、次に、レーザービーム81の集光点82を、被加工物10の表面12から所定距離83離れた第一の位置に設定する。この際、デフォーカスの方向は、被加工物10の内側(下方)でも外側(上方)でもよく、実施形態では、外側である。次に、不図示の移動ユニットによって、第一の分割予定ライン13-1とレーザービーム81の集光点82とを第一の方向21に沿って相対的に加工送りしつつ、被加工物10の表面12側からレーザービーム81を照射する。
【0026】
これにより、第一の分割予定ライン13-1に沿った第一の加工溝40が形成される。第一の加工溝40は、第一の幅41を有する。一本の第一の分割予定ライン13-1に第一の加工溝40を形成した後は、不図示の移動ユニットによって、集光点82を割り出し送り方向(Y軸方向)、すなわち第二の方向22に相対的に移動させ、隣接する第一の分割予定ライン13-1に同様に第一の加工溝40を形成する。
【0027】
全ての第一の分割予定ライン13-1に沿って第一の加工溝40を形成すると、次に、保持テーブル70をZ軸回りに回転させ、被加工物10の第二の分割予定ライン13-2が沿う第二の方向22と、レーザー加工装置60の加工送り方向(X軸方向)とを一致させる。また、不図示の移動ユニットによって、最初に加工する第二の分割予定ライン13-2を、レーザービーム81が照射される位置に位置づける。この後は、第一の分割予定ライン13-1と同様に、第二の分割予定ライン13-2に第一の加工溝40を形成する。全ての分割予定ライン13に沿って第一の加工溝40を形成すると、第一の加工溝形成ステップ1を終了する。
【0028】
(第二の加工溝形成ステップ2)
図7は、図2に示す第二の加工溝形成ステップ2の一状態を一部断面で示す側面図である。図8は、図2に示す第二の加工溝形成ステップ2の後の被加工物10の一部を拡大して示す平面図である。図9は、図8におけるII-II’線断面図である。
【0029】
第二の加工溝形成ステップ2は、第一の加工溝形成ステップ1を実施した後に実施される。第二の加工溝形成ステップ2は、レーザービーム81の集光点82を第二の位置に設定し、分割予定ライン13に沿ってレーザービーム81を照射することで第二の幅51を有する第二の加工溝50を形成するステップである。第二の位置は、第一の加工溝形成ステップ1においてレーザービーム81の集光点82が設定された第一の位置より、被加工物10の表面12に近い位置である。第二の幅51は、第一の加工溝形成ステップ1で形成された第一の加工溝40の第一の幅41より狭い。
【0030】
実施形態の第二の加工溝形成ステップ2では、第一の加工溝形成ステップ1と同様に、図3等に示すレーザー加工装置60によるアブレーション加工によって、被加工物10の表面12側に分割予定ライン13に沿った第二の加工溝50を形成する。レーザービーム81は、被加工物10に対して吸収性を有する波長のレーザービームである。
【0031】
第二の加工溝形成ステップ2では、第一の加工溝形成ステップ1の後、保持テーブル70をZ軸回りに回転させ、被加工物10の第一の分割予定ライン13-1が沿う第一の方向21と、レーザー加工装置60の加工送り方向(X軸方向)とを一致させる。また、不図示の移動ユニットによって、最初に加工する第一の分割予定ライン13-1を、レーザービーム81が照射される位置に位置づける。
【0032】
第二の加工溝形成ステップ2では、次に、レーザービーム81の集光点82を、被加工物10の表面12に近い第二の位置に設定する。第二の位置は、第一の加工溝40を形成した際の集光点82の位置である第一の位置よりも被加工物10の表面12に近ければよく、表面12と同平面上や第一の加工溝40の底面上であってもよい。不図示の移動ユニットによって、第一の分割予定ライン13-1とレーザービーム81の集光点82とを第一の方向21に沿って相対的に加工送りしつつ、被加工物10の表面12側からレーザービーム81を照射する。
【0033】
これにより、第一の分割予定ライン13-1に沿った第二の加工溝50が形成される。第二の加工溝50は、第一の加工溝40上に形成される。第二の加工溝50は、第一の加工溝40の第一の幅41より狭い第二の幅51を有する。一本の第一の分割予定ライン13-1に第二の加工溝50を形成した後は、不図示の移動ユニットによって、集光点82を割り出し送り方向(Y軸方向)、すなわち第二の方向22に相対的に移動させ、隣接する第一の分割予定ライン13-1に同様に第二の加工溝50を形成する。
【0034】
全ての第一の分割予定ライン13-1に沿って第二の加工溝50を形成すると、次に、保持テーブル70をZ軸回りに回転させ、被加工物10の第二の分割予定ライン13-2が沿う第二の方向22と、レーザー加工装置60の加工送り方向(X軸方向)とを一致させる。また、不図示の移動ユニットによって、最初に加工する第二の分割予定ライン13-2を、レーザービーム81が照射される位置に位置づける。この後は、第一の分割予定ライン13-1と同様に、第二の分割予定ライン13-2に第二の加工溝50を形成する。全ての分割予定ライン13に沿って第二の加工溝50を形成すると、第二の加工溝形成ステップ2を終了する。
【0035】
以上説明したように、実施形態における被加工物10の加工方法では、第一の加工溝40(CH1;第一チャンネル)を形成する際には、集光点82の位置を被加工物10の表面12から所定距離83離れた位置に設定、すなわち、デフォーカスさせた状態にし、第二の加工溝50(CH3;第三チャンネル)を形成する際には、集光点82の位置を被加工物10の表面12近傍の第二の位置に設定、すなわち、ジャストフォーカスさせた状態にする。これにより、第一の加工溝40の第一の幅41よりも第二の加工溝50の第二の幅51が狭くなるため、第二の加工溝50の形成位置が、第一の加工溝40の形成位置から多少ズレていても、互いの加工溝が重なるため、未分割等の加工不良を抑制することができるという効果を奏する。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0037】
例えば、実施形態では、第一の分割予定ライン13-1に沿った加工および第二の分割予定ライン13-2に沿った加工を二回(一回目:第一の加工溝40、二回目:第二の加工溝50)実施したが、三回以上実施してもよい。この場合、例えば、集光点82の位置を被加工物10の表面12に対して段階的に近付けていってもよい。
【0038】
なお、被加工物10の加工方法によってデバイスチップ16を製造する際、上記の方法によるレーザー加工で加工溝を形成した後、プラズマダイシング等の処理により被加工物10を分割してもよいし、被加工物10の裏面15に達する加工溝をレーザー加工で形成することで被加工物10を分割してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 被加工物
12 表面
13 分割予定ライン
13-1 第一の分割予定ライン
13-2 第二の分割予定ライン
14 デバイス
21 第一の方向
22 第二の方向
40 第一の加工溝
41 第一の幅
50 第二の加工溝
51 第二の幅
81 レーザービーム
82 集光点
83 所定距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9