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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101756
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G01D5/20 110F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005863
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉戸 達明
(72)【発明者】
【氏名】河野 司
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤史
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077AA25
2F077CC02
2F077NN22
2F077PP06
2F077PP21
2F077QQ03
2F077QQ07
2F077TT33
2F077TT43
2F077TT49
2F077TT66
2F077WW04
(57)【要約】
【課題】S/N比を向上させることができる位置検出装置を提供する。
【解決手段】基板30と、基板30に配置され、交流電流の供給によって磁界を発生させる送信コイルと、基板30に対向し所定の移動方向に移動するように配置され、該磁界によって渦電流が流れることにより該磁界を相殺する磁界を発生させるターゲット22と、基板30において移動方向に並ぶように配置され、送信コイルが発生させた磁界を受信する複数の受信コイル34、35と、を備え、基板30において複数の受信コイル34、35が占める領域を受信領域301とし、移動方向における受信領域301の幅をw1とし、移動方向におけるターゲット22の幅をw2とし、Mを1以上3以下の整数とし、基準幅をw3=M/4×w1として、(M-1)/4×w1<w2<w3とされている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置検出装置であって、
基板(30)と、
前記基板に配置され、交流電流の供給によって磁界を発生させる送信コイル(31、32)と、
前記基板に対向し所定の移動方向(Dc)に移動するように配置され、該磁界によって渦電流が流れることにより該磁界を相殺する磁界を発生させるターゲット(22、23、24、25)と、
前記基板において前記移動方向に並ぶように配置され、前記送信コイルが発生させた磁界を受信する複数の受信コイル(34、35、36、37、40、41、42、43)と、を備え、
前記基板において複数の前記受信コイルが占める領域を受信領域(301、302、303、304)とし、
前記移動方向における前記受信領域の幅をw1とし、
前記移動方向における前記ターゲットの幅をw2とし、
Mを1以上3以下の整数とし、
基準幅をw3=M/4×w1として、
(M-1)/4×w1<w2<w3とされている位置検出装置。
【請求項2】
前記受信コイルは、渦巻状部(34a、34b、35a、35b、36a、36b、37a、37b、40a、40b、41a、41b、42a、42b、43a、43b)を備えている請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記受信コイルは、波状部(34d、34e、35d、35e、36d、36e、37d、37e、40d、40e、41d、41e、42d、42e、43d、43e)を備えており、
M=2である請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記基板は、円盤形状とされており、
前記受信領域は、前記基板の一部である扇台形状の領域とされており、
前記送信コイルは、前記受信領域の外周に沿って扇台形状に配置されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記基板は、円盤形状とされており、
前記送信コイルは、前記基板の周方向(Dc)に沿って円環状に配置されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
位置検出装置として、電磁誘導を利用した回転角度検出装置が知られている。例えば特許文献1に記載の回転角度センサは、基板と、基板に配置された送信コイルおよび受信コイルと、基板に対向するターゲットを備えている。送信コイルは、高周波電流を供給されることによって磁界を発生させるものであり、受信コイルは、この磁界を受信するものである。ターゲットは、送信コイルからの磁界によって渦電流が流れ、この磁界を相殺する磁界を発生させるものであり、ターゲットの位置によって受信コイルの出力が変化することを利用して、ターゲットの位置を検出することができる。受信コイルは4つ並んで配置されており、4つの受信コイルは0.25周期ずつずれた正弦波状の信号を出力するようになっている。そして、1番目と3番目の受信コイルを直列に接続し、2番目と4番目の受信コイルを直列に接続することにより、信号振幅が増幅される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-71340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、ターゲットからの磁束を、1番目と3番目の受信コイルのうち一方のみに通すことにより、信号の振幅が大きくなる。また、ターゲットからの磁束を、2番目と4番目の受信コイルのうち一方のみに通すことにより、信号の振幅が大きくなる。
【0005】
このように信号の振幅を大きくするためには、ターゲットの幅を、受信コイルが並んだ領域の幅の1/4、1/2あるいは3/4とすることが考えられる。しかしながら、ターゲットから発生する磁束は、ターゲットから基板表面に平行な方向の外側にも向かう。そのため、例えばターゲット幅を受信コイルが並んだ領域の幅の1/2とすると、ターゲットが2番目、3番目の受信コイルに対向しているときに、1番目、4番目の受信コイルにもターゲットからの磁束が入り、信号振幅が小さくなってS/N比が低下する。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、S/N比を向上させることができる位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、位置検出装置であって、基板(30)と、基板に配置され、交流電流の供給によって磁界を発生させる送信コイル(31、32)と、基板に対向し所定の移動方向(Dc)に移動するように配置され、該磁界によって渦電流が流れることにより該磁界を相殺する磁界を発生させるターゲット(22、23、24、25)と、基板において移動方向に並ぶように配置され、送信コイルが発生させた磁界を受信する複数の受信コイル(34、35、36、37、40、41、42、43)と、を備え、基板において複数の受信コイルが占める領域を受信領域(301、302、303、304)とし、移動方向における受信領域の幅をw1とし、移動方向におけるターゲットの幅をw2とし、Mを1以上3以下の整数とし、基準幅をw3=M/4×w1として、(M-1)/4×w1<w2<w3とされている。
【0008】
これによれば、(M-1)/4×w1<w2<w3とされているため、複数の受信コイルに含まれる2つの受信コイルのうち一方をターゲットで覆うとともに、他方に入る磁束が低減された状態を作ることができる。したがって、受信コイルから出力される信号の振幅を増加させ、S/N比を向上させることができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態における位置検出装置を部材軸方向に沿う方向視で表示し、その位置検出装置の概略構成を示した模式図である。
図2図1のII-II断面を示した断面図であって、位置検出装置の縦断面図である。
図3図1のIII-III断面を示した断面図であって、図2とは異なる向きで位置検出装置を示した縦断面図である。
図4】第1実施形態において、位置検出装置が有する回転部材を単体で示した平面図である。
図5】第1実施形態において、位置検出装置が有する基板を単体で示すと共に、その基板内の各コイルを模式的に示した図である。
図6図5のVI方向の矢視図であって、基板内の各送信コイルを模式的に示した図である。
図7図5に相当する図であって、その図5に表示された受信コイルを、その受信コイルが形成する受信領域に置き換えて表示した模式図である。
図8】第1実施形態における位置検出装置のブロック図である。
図9】第1実施形態において、第1一方側受信コイルに発生する第1電圧値の波形と、第2一方側受信コイルに発生する第2電圧値の波形とをそれぞれ例示した図である。
図10図1のX-X断面を示した断面図である。
図11】第2実施形態における位置検出装置の断面図であって、図10に相当する図である。
図12】第3実施形態において、位置検出装置が有する基板を単体で示すと共に、その基板内の各コイルを模式的に示した図であって、図5に相当する図である。
図13】第4実施形態において、位置検出装置が有する基板を単体で示すと共に、その基板内の各コイルを模式的に示した図であって、図5に相当する図である。
図14】第5実施形態において、位置検出装置が有する基板を単体で示すと共に、その基板内の各コイルを模式的に示した図であって、図5に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態では、位置検出装置1が車両用ペダル装置のブレーキペダルまたはアクセルペダルの回転位置を検出するために用いられた例について説明する。なお、以下の説明では、ブレーキペダルまたはアクセルペダルを単にペダルと称する場合がある。
【0013】
図1図3に示すように、本実施形態の位置検出装置1は、回転部材20と基板30とを備えている。なお、図1図3に表示された回転軸心CLは、ペダルの回転軸70および回転部材20の回転中心である。また、本実施形態の説明では、回転軸心CLの軸方向Daは部材軸方向Daとも称され、回転軸心CLの径方向Drは部材径方向Drとも称され、回転軸心CLの周方向Dcは部材周方向Dcとも称される。これらの方向Da、Dr、Dcは互いに交差する方向、厳密に言えば互いに垂直な方向である。また、図1は、図2のI-I断面を示した断面図である。
【0014】
回転部材20は金属で構成され、部材軸方向Daに厚みを有する平板状に形成されている。図1図4に示すように、回転部材20は、ペダルの回転軸70に対し相対回転不能に連結されている。例えば、回転部材20は、回止めキー部材を介することで回転軸70に対し相対回転不能とされていてもよいし、回転軸70に対し溶接されることで相対回転不能とされていてもよい。
【0015】
回転部材20は、所定の回転軸心CLを中心に回転可能なように回転軸70を介して非回転部材に支持されており、ペダルおよび回転軸70と共に一体回転する。従って、回転部材20の回転位置を検出することでペダルの回転位置を検出することができる。すなわち、回転部材20の回転位置はペダルの回転位置でもあり、被検出体としての回転軸70の回転位置でもある。
【0016】
また、回転部材20はペダルの回転軸70に連結されているので、回転軸心CLまわりに一回転するのではなく、回転軸心CLまわりの所定の角度範囲内で、ペダルの踏込み操作に伴って往復運動する。図1では、その往復運動での端位置における回転部材20の各ターゲット22~25の外形の一部が二点鎖線で図示されている。
【0017】
回転部材20は、連結部21と、2つの第1ターゲット22、23と、2つの第2ターゲット24、25とを有している。すなわち、その回転部材20に含まれる2つの第1ターゲット22、23と2つの第2ターゲット24、25は、回転軸心CLを中心に一体回転する。そして、ペダルの踏込み操作に伴って、2つの第1ターゲット22、23と2つの第2ターゲット24、25は共に、部材周方向Dcに往復移動する。本実施形態において部材周方向Dcは、本開示の所定の移動方向に対応する。
【0018】
例えば、回転部材20は、その連結部21と2つの第1ターゲット22、23と2つの第2ターゲット24、25とを含んだ単一の部品として構成されている。例えば、回転部材20は部材軸方向Daの厚みが均一な平板状に形成されており、そのため、4つのターゲット22~25の部材軸方向Daの厚みは互いに同じ大きさになっている。なお、本実施形態の説明では、2つの第1ターゲット22、23と2つの第2ターゲット24、25とをまとめて、ターゲット22~25と称する場合がある。
【0019】
連結部21は、回転部材20の中で中央部分に配置され、回転軸心CLを中心とした円環形状を成している。連結部21の内側には、連結部21を部材軸方向Daに貫通した嵌入孔21aが形成され、回転軸70が、連結部21に対し相対回転不能となるようにその嵌入孔21aに嵌入されている。すなわち、回転部材20は、この連結部21にて回転軸70に連結している。
【0020】
2つの第1ターゲット22、23はそれぞれ、連結部21から部材径方向Drの外側に突き出るように形成され、2つの第2ターゲット24、25もそれぞれ、連結部21から部材径方向Drの外側に突き出るように形成されている。
【0021】
2つの第1ターゲット22、23のうちの一方である第1一方側ターゲット22は、2つの第1ターゲット22、23のうちの他方である第1他方側ターゲット23に対し回転軸心CLを挟んだ反対側に配置されている。また、2つの第2ターゲット24、25のうちの一方である第2一方側ターゲット24は、2つの第2ターゲット24、25のうちの他方である第2他方側ターゲット25に対し回転軸心CLを挟んだ反対側に配置されている。
【0022】
詳細には、それら4つのターゲット22~25は、第1一方側ターゲット22、第2一方側ターゲット24、第1他方側ターゲット23、第2他方側ターゲット25の順に、部材周方向Dcの一方側へ相互間隔をあけながら等ピッチ(具体的には、90度ピッチ)で並ぶように配置されている。例えば部材軸方向Daに沿う方向視で、4つのターゲット22~25は全体として、回転軸心CLを中心に点対称となるように配置されている。
【0023】
第1一方側ターゲット22は、部材軸方向Daの一方側に形成され基板30の他面30bに対向する対向面22aを有し、第1他方側ターゲット23も、部材軸方向Daの一方側に形成され基板30の他面30bに対向する対向面23aを有している。また、第2一方側ターゲット24も、部材軸方向Daの一方側に形成され基板30の他面30bに対向する対向面24aを有し、第2他方側ターゲット25も、部材軸方向Daの一方側に形成され基板30の他面30bに対向する対向面25aを有している。これらの対向面22a~25aは、基板30の他面30bに対し平行に形成されている。
【0024】
第1一方側ターゲット22は、部材周方向Dcの一方側に設けられた一端縁221と、部材周方向Dcの他方側に設けられた他端縁222とを有している。そして、第1一方側ターゲット22は、部材径方向Drの外側ほど部材周方向Dcに拡幅する扇形形状を成している。従って、第1一方側ターゲット22の一端縁221と他端縁222はそれぞれ、部材軸方向Daに沿う方向視で部材径方向Drに沿った直線状に延伸している。すなわち、第1一方側ターゲット22の一端縁221と他端縁222はそれぞれ、部材周方向Dcである第1一方側ターゲット22の移動方向に対して直交するように延伸している。
【0025】
また、第1他方側ターゲット23、第2一方側ターゲット24、および第2他方側ターゲット25も、第1一方側ターゲット22と同様の扇形形状を成している。本実施形態では、4つのターゲット22~25は全て同一の形状を成している。
【0026】
従って、第1他方側ターゲット23のうち部材周方向Dcの一方側に設けられた一端縁231と、部材周方向Dcの他方側に設けられた他端縁232もそれぞれ、部材軸方向Daに沿う方向視で部材径方向Drに沿った直線状に延伸している。また、第2一方側ターゲット24のうち部材周方向Dcの一方側に設けられた一端縁241と、部材周方向Dcの他方側に設けられた他端縁242もそれぞれ、部材軸方向Daに沿う方向視で部材径方向Drに沿った直線状に延伸している。また、第2他方側ターゲット25のうち部材周方向Dcの一方側に設けられた一端縁251と、部材周方向Dcの他方側に設けられた他端縁252もそれぞれ、部材軸方向Daに沿う方向視で部材径方向Drに沿った直線状に延伸している。
【0027】
本実施形態では、上記したように4つのターゲット22~25は全て同一の形状であり一体回転するので、各ターゲット22~25の動作範囲W1a、W1b、W2a、W2bは部材周方向Dcに同じ長さとなる。
【0028】
なお、第1一方側ターゲット22の動作範囲W1aとは、第1一方側ターゲット22の往復移動に伴って第1一方側ターゲット22が及ぶ部材周方向Dcの最大範囲であり、第1一方側ターゲット22は、その動作範囲W1a内で部材周方向Dcに往復移動する。また、第1他方側ターゲット23の動作範囲W1bとは、第1他方側ターゲット23の往復移動に伴って第1他方側ターゲット23が及ぶ部材周方向Dcの最大範囲であり、第1他方側ターゲット23は、その動作範囲W1b内で部材周方向Dcに往復移動する。また、第2一方側ターゲット24の動作範囲W2aとは、第2一方側ターゲット24の往復移動に伴って第2一方側ターゲット24が及ぶ部材周方向Dcの最大範囲であり、第2一方側ターゲット24は、その動作範囲W2a内で部材周方向Dcに往復移動する。また、第2他方側ターゲット25の動作範囲W2bとは、第2他方側ターゲット25の往復移動に伴って第2他方側ターゲット25が及ぶ部材周方向Dcの最大範囲であり、第2他方側ターゲット25は、その動作範囲W2b内で部材周方向Dcに往復移動する。
【0029】
図1図3図5に示すように、基板30は、配線パターンが形成され不図示の電気部品が実装された多層のプリント基板である。基板30は、部材軸方向Daに直交する平面状の一面30aと他面30bとを有している。すなわち、基板30の法線方向は部材軸方向Daに一致する。基板30の一面30aは、基板30のうち部材軸方向Daの一方側に設けられ、基板30の他面30bは、基板30のうち部材軸方向Daの一方側とは反対側の他方側に設けられている。
【0030】
基板30は、車体などに対し回転しない非回転部材である。従って、回転部材20は、基板30に対し相対回転する。
【0031】
基板30は、4つのターゲット22~25に対し部材軸方向Daの一方側に配置されている。そして、基板30の他面30bは、4つのターゲット22~25の各対向面22a~25aに対し、部材軸方向Daに軸方向間隔AGをあけて対向している。この軸方向間隔AGは、基板30と4つのターゲット22~25のそれぞれとの間の何れにおいても同じ大きさになっている。
【0032】
また、基板30は、回転軸心CLを中心とした円盤形状を成し、基板30の中央には、基板30を部材軸方向Daに貫通した貫通孔30cが形成されている。この貫通孔30cには、回転軸70が挿通されている。
【0033】
図5図6に示すように、基板30は、配線パターンとして形成された第1送信コイル31、および第2送信コイル32を有している。また、基板30は、配線パターンとして形成された2つの第1受信コイル34、36、2つの第2受信コイル35、37、2つの第3受信コイル40、42、および2つの第4受信コイル41、43も有している。すなわち、位置検出装置1に設けられる全ての送信コイル31、32と全ての受信コイル34~37、40~43は、単一の基板30に形成されている。
【0034】
基板30が有する各コイル31、32、34~37、40~43はそれぞれ、不図示の接続配線パターンを介して、基板30に実装されたICなどで構成される信号処理部47、48(図8参照)へ接続されている。なお、図5図6では、見やすい図示とするため、各コイル31、32、34~37、40~43が簡易的に表示されており、このことは、各コイル31、32、34~37、40~43を表示する後述の図でも同様である。
【0035】
第1、第2送信コイル31、32は、部材軸方向Daに沿う方向視では互いに重なるように形成されているが、基板30の厚み方向すなわち部材軸方向Daにずれて配置されている。例えば、第1送信コイル31は、第2送信コイル32に対し部材軸方向Daの一方側に離れて配置されている。
【0036】
第1、第2送信コイル31、32はそれぞれ、1回または複数回巻き回され部材周方向Dcに沿って円環状に形成されている。そして、第1、第2送信コイル31、32はそれぞれ、部材軸方向Daに沿う方向視において、基板30が有する全ての受信コイル34~37、40~43を囲むように形成されている。別言すれば、部材軸方向Daに沿う方向視において、その全ての受信コイル34~37、40~43は、第1送信コイル31の内側に配置され且つ第2送信コイル32の内側に配置されている。
【0037】
従って、第1送信コイル31に交流電流が流れると、その第1送信コイル31への通電による電磁誘導によって、誘導電流が全ての受信コイル34~37、40~43に流れる。また、第2送信コイル32に交流電流が流れても、その第2送信コイル32への通電による電磁誘導によって、誘導電流が全ての受信コイル34~37、40~43に流れる。なお、第1送信コイル31と第2送信コイル32とがそれぞれ発生させる磁界が打ち消し合うことを回避するため、例えば、第1送信コイル31および第2送信コイル32には、同一位相かつ同一周波数の交流電流が流れる。
【0038】
2つの第1受信コイル34、36のうちの一方である第1一方側受信コイル34と、2つの第2受信コイル35、37のうちの一方である第2一方側受信コイル35は、部材周方向Dcにおける第1一方側ターゲット22の位置を検出するためのコイルである。つまり、第1一方側受信コイル34と第2一方側受信コイル35はそれぞれ、第1一方側ターゲット22の位置に応じた検出信号を出力する。
【0039】
また、2つの第1受信コイル34、36のうちの他方である第1他方側受信コイル36と、2つの第2受信コイル35、37のうちの他方である第2他方側受信コイル37は、部材周方向Dcにおける第1他方側ターゲット23の位置を検出するためのコイルである。つまり、第1他方側受信コイル36と第2他方側受信コイル37はそれぞれ、第1他方側ターゲット23の位置に応じた検出信号を出力する。
【0040】
また、2つの第3受信コイル40、42のうちの一方である第3一方側受信コイル40と、2つの第4受信コイル41、43のうちの一方である第4一方側受信コイル41は、部材周方向Dcにおける第2一方側ターゲット24の位置を検出するためのコイルである。つまり、第3一方側受信コイル40と第4一方側受信コイル41はそれぞれ、第2一方側ターゲット24の位置に応じた検出信号を出力する。
【0041】
また、2つの第3受信コイル40、42のうちの他方である第3他方側受信コイル42と、2つの第4受信コイル41、43のうちの他方である第4他方側受信コイル43は、部材周方向Dcにおける第2他方側ターゲット25の位置を検出するためのコイルである。つまり、第3他方側受信コイル42と第4他方側受信コイル43はそれぞれ、第2他方側ターゲット25の位置に応じた検出信号を出力する。
【0042】
なお、各受信コイル34~37、40~43は、互いに干渉しない(すなわち、重ならない)ように、ビアを介して異なる配線層が適宜接続されることで構成されている。図5およびその図5に相当する後述の図では、基板30のビアの図示は適宜省略される。また、各受信コイル34~37、40~43が出力する検出信号は例えば電圧値である。また、第1一方側受信コイル34が出力する検出信号は、例えば後述の図9に示された第1電圧値V1に該当し、第2一方側受信コイル35が出力する検出信号は、例えば後述の図9に示された第2電圧値V2に該当する。
【0043】
第1一方側受信コイル34は第1渦巻状部34aと第2渦巻状部34bとを有している。その第1、第2渦巻状部34a、34bはそれぞれ、部材軸方向Daに沿う方向視で渦巻状のパターン形状を成している。言い換えると、第1、第2渦巻状部34a、34bはそれぞれ、部材軸方向Daに沿う方向視で、螺旋状に巻いた平面曲線を描くように形成されている。第1、第2渦巻状部34a、34bは、例えば、不図示の接続配線パターンを介して直列接続されている。なお、第1、第2渦巻状部34a、34bの外形は、図5に示された形状に限らず、円形など他の形状になっていても差し支えない。
【0044】
他の受信コイル35~37、40~43についても、これと同様である。すなわち、第2一方側受信コイル35は、互いに直列接続された第1渦巻状部35aと第2渦巻状部35bとを有している。また、第1他方側受信コイル36は、互いに直列接続された第1渦巻状部36aと第2渦巻状部36bとを有し、第2他方側受信コイル37は、互いに直列接続された第1渦巻状部37aと第2渦巻状部37bとを有している。
【0045】
また、第3一方側受信コイル40は、互いに直列接続された第1渦巻状部40aと第2渦巻状部40bとを有し、第4一方側受信コイル41は、互いに直列接続された第1渦巻状部41aと第2渦巻状部41bとを有している。また、第3他方側受信コイル42は、互いに直列接続された第1渦巻状部42aと第2渦巻状部42bとを有し、第4他方側受信コイル43は、互いに直列接続された第1渦巻状部43aと第2渦巻状部43bとを有している。これらの渦巻状部35a、35b、36a、36b、37a、37b、40a、40b、41a、41b、42a、42b、43a、43bはそれぞれ、第1一方側受信コイル34の渦巻状部34a、34bと同様に、部材軸方向Daに沿う方向視で渦巻状のパターン形状を成している。
【0046】
第1一方側受信コイル34の渦巻状部34a、34bは、第1一方側ターゲット22の動作範囲W1a内の何れかの位置で第1一方側ターゲット22に対し部材軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。そして、第2一方側受信コイル35の渦巻状部35a、35bも、第1一方側ターゲット22の動作範囲W1a内の何れかの位置で第1一方側ターゲット22に対し部材軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。
【0047】
そして、それらの渦巻状部34a、34b、35a、35bは、第1渦巻状部34a、第1渦巻状部35a、第2渦巻状部34b、第2渦巻状部35bの順に部材周方向Dcの一方側から他方側へ並んで配置されている。また、それらの渦巻状部34a、34b、35a、35bは、部材軸方向Daに沿う方向視で1つの領域を形成している。
【0048】
すなわち、第1一方側受信コイル34および第2一方側受信コイル35は、それらの受信コイル34、35が基板30内で占める第1一方側受信領域301を形成している。そして、第1一方側受信コイル34および第2一方側受信コイル35は、それらの受信コイル34、35の組合せとしての第1一方側受信コイル群301aを構成する。
【0049】
上記と同様に、第1他方側受信コイル36の渦巻状部36a、36bは、第1他方側ターゲット23の動作範囲W1b内の何れかの位置で第1他方側ターゲット23に対し部材軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。そして、第2他方側受信コイル37の渦巻状部37a、37bも、第1他方側ターゲット23の動作範囲W1b内の何れかの位置で第1他方側ターゲット23に対し部材軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。
【0050】
そして、それらの渦巻状部36a、36b、37a、37bは、第1渦巻状部36a、第1渦巻状部37a、第2渦巻状部36b、第2渦巻状部37bの順に部材周方向Dcの一方側から他方側へ並んで配置されている。また、それらの渦巻状部36a、36b、37a、37bは、部材軸方向Daに沿う方向視で1つの領域を形成している。
【0051】
すなわち、第1他方側受信コイル36および第2他方側受信コイル37は、それらの受信コイル36、37が基板30内で占める第1他方側受信領域302を形成している。そして、第1他方側受信コイル36および第2他方側受信コイル37は、それらの受信コイル36、37の組合せとしての第1他方側受信コイル群302aを構成する。
【0052】
また、第3一方側受信コイル40の渦巻状部40a、40bは、第2一方側ターゲット24の動作範囲W2a内の何れかの位置で第2一方側ターゲット24に対し部材軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。そして、第4一方側受信コイル41の渦巻状部41a、41bも、第2一方側ターゲット24の動作範囲W2a内の何れかの位置で第2一方側ターゲット24に対し部材軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。
【0053】
そして、それらの渦巻状部40a、40b、41a、41bは、第1渦巻状部40a、第1渦巻状部41a、第2渦巻状部40b、第2渦巻状部41bの順に部材周方向Dcの一方側から他方側へ並んで配置されている。また、それらの渦巻状部40a、40b、41a、41bは、部材軸方向Daに沿う方向視で1つの領域を形成している。
【0054】
すなわち、第3一方側受信コイル40および第4一方側受信コイル41は、それらの受信コイル40、41が基板30内で占める第2一方側受信領域303を形成している。そして、第3一方側受信コイル40および第4一方側受信コイル41は、それらの受信コイル40、41の組合せとしての第2一方側受信コイル群303aを構成する。
【0055】
また、第3他方側受信コイル42の渦巻状部42a、42bは、第2他方側ターゲット25の動作範囲W2b内の何れかの位置で第2他方側ターゲット25に対し部材軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。そして、第4他方側受信コイル43の渦巻状部43a、43bも、第2他方側ターゲット25の動作範囲W2b内の何れかの位置で第2他方側ターゲット25に対し部材軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。
【0056】
そして、それらの渦巻状部42a、42b、43a、43bは、第1渦巻状部42a、第1渦巻状部43a、第2渦巻状部42b、第2渦巻状部43bの順に部材周方向Dcの一方側から他方側へ並んで配置されている。また、それらの渦巻状部42a、42b、43a、43bは、部材軸方向Daに沿う方向視で1つの領域を形成している。
【0057】
すなわち、第3他方側受信コイル42および第4他方側受信コイル43は、それらの受信コイル42、43が基板30内で占める第2他方側受信領域304を形成している。そして、第3他方側受信コイル42および第4他方側受信コイル43は、それらの受信コイル42、43の組合せとしての第2他方側受信コイル群304aを構成する。
【0058】
図7は、図5に表示された受信コイル34~37、40~43を上記の受信領域301、302、303、304に置き換えて表示したものである。
【0059】
図5図7に示すように、受信コイル34~37、40~43が有する渦巻状部34a~43bは全体として、回転軸心CLを中心とした円環形状を成すように部材周方向Dcに等間隔で並んでいる。すなわち、4つの受信領域301~304も全体として、回転軸心CLを中心とした円環形状を成すように部材周方向Dcに並んでいる。上記の渦巻状部34a~43bは、渦巻状部34a、34b、35a、35b、36a、36b、37a、37b、40a、40b、41a、41b、42a、42b、43a、43bを意味する。
【0060】
そして、4つの受信領域301~304は、第1一方側受信領域301、第2他方側受信領域304、第1他方側受信領域302、第2一方側受信領域303の順に部材周方向Dcの一方側から他方側へ並んで配置されている。具体的には、4つの受信領域301~304は、回転軸心CLを中心として部材周方向Dcに90度ピッチで並んで配置されている。
【0061】
従って、第1一方側受信領域301は第1他方側受信領域302に対し回転軸心CLを挟んだ反対側に配置され、第2一方側受信領域303は第2他方側受信領域304に対し回転軸心CLを挟んだ反対側に配置されている。すなわち、第1一方側受信コイル群301aは第1他方側受信コイル群302aに対し回転軸心CLを挟んだ反対側に配置され、第2一方側受信コイル群303aは第2他方側受信コイル群304aに対し回転軸心CLを挟んだ反対側に配置されている。
【0062】
なお、確認的に述べるが、部材周方向Dcにおいて第1一方側受信領域301の一方側の端位置P1(すなわち、周方向一方端位置P1)は、第1一方側受信コイル34の一方側の端位置(すなわち、第1渦巻状部34aの一方側の端位置)に一致する。そして、部材周方向Dcにおいて第1一方側受信領域301の他方側の端位置P2(すなわち、周方向他方端位置P2)は、第2一方側受信コイル35の他方側の端位置(すなわち、第2渦巻状部35bの他方側の端位置)に一致する。この関係は、第1他方側受信領域302、第2一方側受信領域303、および第2他方側受信領域304に関しても同様である。
【0063】
図1図7に示すように、第1一方側ターゲット22は、上述したとおり、その第1一方側ターゲット22の動作範囲W1a内で部材周方向Dcに往復移動する。但し、その第1一方側ターゲット22の動作範囲W1aは、第2一方側受信領域303と第2他方側受信領域304とに対し第1一方側ターゲット22が部材軸方向Daの他方側に重なることのないように構成されている。別言すると、第1一方側ターゲット22は、第2一方側受信領域303と第2他方側受信領域304とに対し部材周方向Dcに外れた範囲内で往復移動する。
【0064】
他の動作範囲W1b、W2a、W2bについても、これと同様である。すなわち、第1他方側ターゲット23の動作範囲W1bは、第2一方側受信領域303と第2他方側受信領域304とに対し第1他方側ターゲット23が部材軸方向Daの他方側に重なることのないように構成されている。また、第2一方側ターゲット24の動作範囲W2aは、第1一方側受信領域301と第1他方側受信領域302とに対し第2一方側ターゲット24が部材軸方向Daの他方側に重なることのないように構成されている。また、第2他方側ターゲット25の動作範囲W2bは、第1一方側受信領域301と第1他方側受信領域302とに対し第2他方側ターゲット25が部材軸方向Daの他方側に重なることのないように構成されている。
【0065】
更に詳しく言うと、動作範囲W1aの部材周方向Dcにおける一方側の端位置は、第1一方側受信領域301の周方向一方端位置P1に一致する。また、動作範囲W1aの部材周方向Dcにおける他方側の端位置は、第1一方側受信領域301の周方向他方端位置P2に一致する。そして、第1一方側ターゲット22は、部材周方向Dcにおいて第1一方側受信領域301の周方向一方端位置P1に対する他方側かつ第1一方側受信領域301の周方向他方端位置P2に対する一方側の範囲から食み出ることなく往復移動する。このことは、他のターゲット23、24、25と受信領域302、303、304との位置関係についても同様である。
【0066】
また、第1一方側ターゲット22の動作範囲W1aは、部材周方向Dcでの第1一方側受信領域301の中心位置301bを基準として部材周方向Dcに対称になっている。これと同様に、第1他方側ターゲット23の動作範囲W1bは、部材周方向Dcでの第1他方側受信領域302の中心位置302bを基準として部材周方向Dcに対称になっている。また、第2一方側ターゲット24の動作範囲W2aは、部材周方向Dcでの第2一方側受信領域303の中心位置303bを基準として部材周方向Dcに対称になっている。また、第2他方側ターゲット25の動作範囲W2bは、部材周方向Dcでの第2他方側受信領域304の中心位置304bを基準として部材周方向Dcに対称になっている。
【0067】
図8に示すように、基板30には、上記したコイル31、32、34~37、40~43のほかにも種々の電気部品が実装されている。具体的に、基板30には、複数のコンデンサ451、452、461、462、第1信号処理部47を構成するIC、第2信号処理部48を構成するIC、第1ターミナル49、および第2ターミナル50なども実装されている。
【0068】
そして、第1送信コイル31、2つの第1受信コイル34、36、2つの第2受信コイル35、37、2つのコンデンサ451、452、第1信号処理部47、および第1ターミナル49は、第1系統305を構成している。一方、第2送信コイル32、2つの第3受信コイル40、42、2つの第4受信コイル41、43、2つのコンデンサ461、462、第2信号処理部48、および第2ターミナル50は、第2系統306を構成している。これら第1系統305と第2系統306は電気回路として独立した構成となっているので、位置検出装置1は、第1系統305と第2系統306との一方が故障しても他方によって、回転部材20の回転位置を検出することができる。
【0069】
第1、第2信号処理部47、48はそれぞれ、図示しないCPU、RAM、ROM、不揮発性リライタブルメモリ等を備えた車載マイクロコンピュータとしての構成を有している。すなわち、第1、第2信号処理部47、48はそれぞれ、非遷移的実体的記録媒体であるROMまたは不揮発性リライタブルメモリに格納されたコンピュータプログラムを読み出して実行する。このコンピュータプログラムが実行されることで、コンピュータプログラムに対応する方法が実行される。このような構成は、後述する電子制御装置72についても同様である。CPUは、Central Processing Unitの略であり、ROMは、Read Only Memoryの略であり、RAMは、Random Access Memoryの略である。
【0070】
第1信号処理部47には、第1送信コイル31、2つの第1受信コイル34、36、および2つの第2受信コイル35、37がそれぞれ接続されている。また、第1送信コイル31の両端と第1信号処理部47との間には、例えば、2つのコンデンサ451、452が直列に接続されていると共に、各コンデンサ451、452同士を接続する部分がグランドに接続されている。そして、第1信号処理部47は、基板30に固定された第1ターミナル49を介して、位置検出装置1の外部に設けられた電子制御装置72へ接続される。
【0071】
第2信号処理部48まわりの接続関係についてもこれと同様である。すなわち、第2信号処理部48には、第2送信コイル32、2つの第3受信コイル40、42、および2つの第4受信コイル41、43がそれぞれ接続されている。また、第2送信コイル32の両端と第2信号処理部48との間には、例えば、2つのコンデンサ461、462が直列に接続されていると共に、各コンデンサ461、462同士を接続する部分がグランドに接続されている。そして、第2信号処理部48は、基板30に固定された第2ターミナル50を介して外部の電子制御装置72へ接続される。このように、第1信号処理部47と第2信号処理部48は、回転部材20の回転位置(言い換えれば、回転角度)を電子制御装置72へ別々に出力する。
【0072】
次に、上記の第1信号処理部47の作動について説明する。
【0073】
図8に示すように、第1信号処理部47は発振部471と受信部472とを備えている。発振部471は、第1送信コイル31の両端と接続されており、所定の周波数の交流電流を第1送信コイル31に対して印加する。これにより、第1送信コイル31は、受信コイル34~37、40~43を通過する部材軸方向Daの磁界を発生させる。この磁界によって、受信コイル34~37、40~43にそれぞれ誘導電流が流れる。
【0074】
受信部472は、第1、第2受信コイル34、36、35、37のそれぞれの両端と接続されている。受信部472は、第1一方側受信コイル34からの出力に対し復調やAD変換を行って得られる変換信号(すなわち、図9の第1電圧値V1)を取得する。それと共に、受信部472は、第2一方側受信コイル35からの出力に対し復調やAD変換を行って得られる変換信号(すなわち、図9の第2電圧値V2)も取得する。
【0075】
なお、渦巻状部34a、34b、35a、35bは、それぞれ、以下の(1)~(4)式で表される異なる電気信号を出力する。
【0076】
sin=Asin(θ+α)・・・(1)
sin=Asin(θ-α)・・・(2)
cos=Acos(θ+α)・・・(3)
cos=Acos(θ-α)・・・(4)
Aは、振幅であり、渦巻状部34a、34b、35a、35bにおいて同じとなっている。θは、回転角度(電気角:deg)であり、360°周期で変化する。αは、電気角における位相である。αは、第1一方側受信コイル34および第2一方側受信コイル35から出力される検出信号に重畳する高次成分をキャンセルするため、適宜数値が設定される。
【0077】
以下、説明の簡便化のため、(1)式で表される信号をsin信号、(2)式で表される信号をsin信号、(3)式で表される信号をcos信号、(4)式で表される信号をcos信号、とそれぞれ称する。
【0078】
前述したように、第1渦巻状部34aがsin信号を出力し、第2渦巻状部34bがsin信号を出力する。そして、第1一方側受信コイル34は、第1、第2渦巻状部34a、34bが直列接続された構成であり、sin信号とsin信号とが合成された信号(以下sin信号という)を検出信号として出力する。また、第1渦巻状部34aおよび第2渦巻状部34bが直列接続されることで、第1一方側受信コイル34は、sin信号とsin信号とが合成された差動信号を受信部472に出力する。
【0079】
一方、第1渦巻状部35aがcos信号を出力し、第2渦巻状部35bがcos信号を出力する。そして、第2一方側受信コイル35は、第1、第2渦巻状部35a、35bが直列接続された構成であり、cos信号とcos信号とが合成された信号(以下cos信号という)を検出信号として出力する。第2一方側受信コイル35は、第1一方側受信コイル34と同様に、cos信号とcos信号とが合成された差動信号を受信部472に出力する。
【0080】
そして、受信部472は、その取得した各変換信号に基づき、例えばそれらの変換信号を用いた逆正接関数を演算して第1一方側ターゲット22の回転角度(言い換えると、回転位置)を算出する。なお、各受信コイル34、35の電気信号における電気角θと第1一方側ターゲット22の回転角度(すなわち、機械角)との関係については、例えば第1一方側ターゲット22および受信コイル34、35の大きさ等に応じて予め決定されている。そのため、電気角θに基づいて第1一方側ターゲット22の回転角度を算出することができる。例えば本実施形態では、上記電気角θと機械角と関係は、何れの受信コイル群301a、302a、303a、304aでも同じになっている。
【0081】
また、上記と同様に、受信部472は、コイル出力に対する復調やAD変換を行うことにより、第1他方側受信コイル36からの出力に基づいた変換信号と、第2他方側受信コイル37からの出力に基づいた変換信号とを取得する。そして、上記した第1一方側ターゲット22の回転角度の算出と同様に、受信部472は、その取得した各変換信号に基づき、第1他方側ターゲット23の回転角度(言い換えると、回転位置)を算出する。
【0082】
そして、受信部472は、第1一方側ターゲット22と第1他方側ターゲット23との各回転位置に基づき、回転部材20の回転位置を決定する。例えば、第1一方側ターゲット22と第1他方側ターゲット23との各回転位置の平均が回転部材20の回転位置とされてもよい。或いは、第1一方側ターゲット22と第1他方側ターゲット23との各回転位置の一方が優先して採用され、その一方の回転位置が異常値でない限り、一方の回転位置がそのまま回転部材20の回転位置とされてもよい。
【0083】
なお、第1一方側ターゲット22と第1他方側ターゲット23との各回転位置が算出されることなく、回転部材20の回転位置が算出されてもよい。例えば、各第1受信コイル34、36からの検出信号(例えば、上記変換信号)としての電圧値を合計した合計値と、各第2受信コイル35、37からの検出信号としての電圧値を合計した合計値とに基づいて、回転部材20の回転位置が算出されてもよい。
【0084】
受信部472は、このように第1、第2受信コイル34、36、35、37からの検出信号に基づき回転部材20の回転位置を算出または決定すると、その回転部材20の回転位置を示す信号を、第1ターミナル49を介して外部の電子制御装置72へ出力する。
【0085】
以上が、第1信号処理部47の基本的な作動である。なお、第2信号処理部48も第1信号処理部47と同様に発振部481と受信部482とを有している。その第2信号処理部48の発振部481は第1信号処理部47の発振部471と同様であり、第2信号処理部48の受信部482は第1信号処理部47の受信部472と同様である。第2信号処理部48の作動は、第1信号処理部47の作動と同様であるので、第2信号処理部48の作動の説明は省略する。
【0086】
次に、回転部材20が回転した際の第1一方側受信コイル34の第1電圧値V1および第2一方側受信コイル35の第2電圧値V2について説明する。
【0087】
例えば、第1送信コイル31に所定の周波数の交流電流が印加されると、それにより、第1一方側受信コイル34と第2一方側受信コイル35とを通過する部材軸方向Daの磁界が発生する。また、交流電流によって磁界が変化するため、電磁誘導により、第1一方側受信コイル34と第2一方側受信コイル35とのそれぞれに対し誘導起電力が発生する。
【0088】
そして、第1一方側ターゲット22が第1送信コイル31、第1一方側受信コイル34、第2一方側受信コイル35と対向すると、第1一方側ターゲット22に渦電流が発生すると共に渦電流に起因する磁界が発生する。このため、第1一方側受信コイル34と第2一方側受信コイル35とを通過する部材軸方向Daの磁界のうちの第1一方側ターゲット22と対向する部分を通過する磁界は、渦電流を起因とする磁界によって相殺される。
【0089】
そして、回転部材20の回転に伴って、第1一方側受信コイル34と第2一方側受信コイル35とのそれぞれで第1一方側ターゲット22に対向する部位の位置および大きさが変化する。このため、回転部材20の回転に伴い、第1一方側受信コイル34に発生する第1電圧値V1および第2一方側受信コイル35に発生する第2電圧値V2は、周期的に変化する。本実施形態では例えば、図9に示すように、第1一方側受信コイル34に発生する第1電圧値V1は正弦波状となり、第2一方側受信コイル35に発生する第2電圧値V2は、第1電圧値V1と同じ波長の余弦波状となる。
【0090】
なお、第1一方側受信コイル34および第2一方側受信コイル35以外の受信コイル36、37、40~43に発生する電圧値も上記と同様であるので、その説明を省略する。
【0091】
図10に示すように、部材周方向Dcにおける第1一方側受信領域301の幅をw1とする。また、部材周方向Dcにおける第1一方側ターゲット22の幅をw2とする。また、所定の基準幅をw3として、幅w2は、基準幅w3よりも小さくされている。基準幅w3は、Mを自然数とし、NをMより大きい整数として、w3=M/N×w1とされている。詳細には、Mは1以上3以下の整数とされており、N=4とされており、(M-1)/4×w1<w2<w3とされている。本実施形態では、M=2とされている。すなわち、基準幅w3はw1/2とされており、w1/4<w2<w1/2とされている。
【0092】
なお、幅w1、w2、基準幅w3は、部材径方向Drの同じ位置における幅とする。すなわち、図1に示すX-X線に沿った断面における第1一方側受信領域301の幅をw1とする場合には、同じ断面における第1一方側ターゲット22の幅をw2とし、この幅w1に基づいて基準幅w3を設定する。また、例えば、第1一方側受信領域301のうち部材径方向Drにおける回転軸心CL近傍の内周部を通る部材周方向Dcに沿った断面を想定し、この断面において幅w1を設定する場合には、この断面における第1一方側ターゲット22の幅をw2とする。また、例えば、第1一方側受信領域301のうち部材径方向Drにおいて回転軸心CLから遠い外周部を通る部材周方向Dcに沿った断面を想定し、この断面において幅w1を設定する場合には、この断面における第1一方側ターゲット22の幅をw2とする。
【0093】
幅w2の設計値は幅w1の設計値に基づいて上記のように設定されるが、位置検出装置1の製造過程で第1一方側受信領域301、第1一方側ターゲット22等の寸法、配置等にばらつきが生じることがある。位置検出装置1の設計においては、このようなばらつきを考慮して幅w2を設定してもよいし、ばらつきを考慮せずに幅w2を設定してもよい。
【0094】
位置検出装置1では、第1一方側ターゲット22からの磁束を、第1、第2渦巻状部34a、34bのうち一方のみに通すことにより、sin信号の振幅が大きくなる。同様に、第1一方側ターゲット22からの磁束を、第1、第2渦巻状部35a、35bのうち一方のみに通すことにより、cos信号の振幅が大きくなる。
【0095】
このように信号の振幅を大きくするために、例えば、w2=w1/2とすることが考えられる。しかしながら、第1一方側ターゲット22から発生する磁束は、部材軸方向Daだけでなく、第1一方側ターゲット22から部材周方向Dcの外側にも向かう。そのため、w2=w1/2とした構成では、例えば第1一方側ターゲット22が渦巻状部34b、35aに対向しているときに、渦巻状部34a、35bにも第1一方側ターゲット22からの磁束が入り、sin信号およびcos信号の振幅が小さくなる。すなわち、w2=w3とされていると、図10に示すように、第1一方側ターゲット22から発生する磁束は、矢印A1で示すように部材軸方向Daに向かうとともに、矢印A2で示すように渦巻状部34a、35bにも向かう。なお、図10では、w2=w3のときの第1一方側ターゲット22の外形の一部が二点鎖線で図示されている。
【0096】
これに対して、本実施形態では幅w2がw1/2よりも小さくされており、第1一方側ターゲット22が第1、第2渦巻状部34a、34bの一方にのみ対向しているときには、他方に入る磁束が低減する。例えば図10に示すように、第1一方側ターゲット22が渦巻状部34b、35aに対向しているときに、第1一方側ターゲット22からの磁束が矢印A3で示すように部材周方向Dcの外側に向かう。しかしながら、幅w2がw1/2よりも小さくされているため、w2=w1/2の場合に比べて渦巻状部34a、35bに入る磁束が低減する。また、第1一方側ターゲット22が第1、第2渦巻状部35a、35bの一方にのみ対向しているときには、他方に入る磁束が低減する。例えば第1一方側ターゲット22が渦巻状部34b、35aに対向しているときに、第1一方側ターゲット22から渦巻状部34a、35bに入る磁束が低減する。これにより、sin信号およびcos信号の振幅が大きくなり、S/N比が向上する。
【0097】
なお、幅w2をあまりに小さくすると、第1一方側ターゲット22に対向する渦巻状部34a、34b、35a、35bを通る磁束が減り、S/N比が低下するため、幅w2をある程度大きくすることが望ましい。具体的には、第1一方側ターゲット22によって第1、第2渦巻状部34a、34bのうちの一方の全体を覆う状態を作ることができるように、幅w2を設定することが望ましい。また、第1一方側ターゲット22によって第1、第2渦巻状部35a、35bのうちの一方の全体を覆う状態を作ることができるように、幅w2を設定することが望ましい。そのため、例えば、w1/4<w2とすることが望ましい。
【0098】
ターゲット23~25、受信コイル36、37、40~43についても、これと同様である。すなわち、第1他方側ターゲット23の部材周方向Dcにおける幅を、第1他方側受信領域302の幅の1/4よりも大きく1/2よりも小さくすることにより、受信コイル36、37から出力されるsin信号、cos信号の振幅が大きくなり、S/N比が向上する。また、第2一方側ターゲット24の部材周方向Dcにおける幅を、第2一方側受信領域303の幅の1/4よりも大きく1/2よりも小さくすることにより、受信コイル40、41から出力されるsin信号、cos信号の振幅が大きくなり、S/N比が向上する。また、第2他方側ターゲット25の部材周方向Dcにおける幅を、第2他方側受信領域305の幅の1/4よりも大きく1/2よりも小さくすることにより、受信コイル42、43から出力されるsin信号、cos信号の振幅が大きくなり、S/N比が向上する。
【0099】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。このことは後述の実施形態の説明においても同様である。
【0100】
図11に示すように、本実施形態では、基準幅w3がw3=3/4×w1とされており、w1/2<w2<w3とされている。
【0101】
sin信号、cos信号の振幅を大きくするために、例えば、幅w2を3/4×w1とすることが考えられる。すなわち、一端縁221が動作範囲W1aの一方側端位置に達したときに、第1、第2渦巻状部34a、34bの両方に第1一方側ターゲット22からの磁束を通す。そして、第2一方側受信コイル35については第1渦巻状部35aにのみ第1一方側ターゲット22からの磁束を通して、cos信号の振幅を大きくすることが考えられる。また、他端縁222が動作範囲W1aの他方側端位置に達したときに、第1、第2渦巻状部35a、35bの両方に第1一方側ターゲット22からの磁束を通す。そして、第1一方側受信コイル34については第2渦巻状部34bにのみ第1一方側ターゲット22からの磁束を通して、sin信号の振幅を大きくすることが考えられる。
【0102】
しかしながら、第1一方側ターゲット22から発生する磁束は、部材軸方向Daだけでなく、第1一方側ターゲット22から部材周方向Dcの外側にも向かう。そのため、w2=3/4×w1とした構成では、一端縁221が動作範囲W1aの一方側端位置に達したときに、第2渦巻状部35bにも第1一方側ターゲット22からの磁束が入り、cos信号の振幅が小さくなる。また、他端縁222が動作範囲W1aの他方側端位置に達したときに、第1渦巻状部34aにも第1一方側ターゲット22からの磁束が入り、sin信号の振幅が小さくなる。
【0103】
これに対して、本実施形態では幅w2が3/4×w1よりも小さくされており、一端縁221が動作範囲W1aの一方側端位置に達したときには、第2渦巻状部35bに入る磁束が低減する。また、他端縁222が動作範囲W1aの他方側端位置に達したときには、第1渦巻状部34aに入る磁束が低減する。これにより、sin信号およびcos信号の振幅が大きくなり、S/N比が向上する。
【0104】
ターゲット23~25、受信コイル36、37、40~43についても、これと同様である。すなわち、第1他方側ターゲット23の部材周方向Dcにおける幅を、第1他方側受信領域302の幅の1/2よりも大きく3/4よりも小さくすることにより、受信コイル36、37から出力されるsin信号、cos信号の振幅が大きくなり、S/N比が向上する。また、第2一方側ターゲット24の部材周方向Dcにおける幅を、第2一方側受信領域303の幅の1/2よりも大きく3/4よりも小さくすることにより、受信コイル40、41から出力されるsin信号、cos信号の振幅が大きくなり、S/N比が向上する。また、第2他方側ターゲット25の部材周方向Dcにおける幅を、第2他方側受信領域305の幅の1/2よりも大きく3/4よりも小さくすることにより、受信コイル42、43から出力されるsin信号、cos信号の振幅が大きくなり、S/N比が向上する。
【0105】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0106】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0107】
図12に示すように、本実施形態では、受信コイル34~37、40~43のパターン形状が第1実施形態と異なっている。従って、本実施形態では、第1実施形態の渦巻状部34a~43b(図5参照)は設けられていない。
【0108】
なお、本実施形態でも第1実施形態と同様に、部材軸方向Daに沿う方向視において、全ての受信コイル34~37、40~43は、第1送信コイル31の内側に配置され且つ第2送信コイル32の内側に配置されている。そして、各受信コイル34~37、40~43は、互いに干渉しない(すなわち、重ならない)ように、ビア30dを介して異なる配線層が適宜接続されることで構成されている。
【0109】
本実施形態では、各受信コイル34~37、40~43は、順に積層された配線層のうちの隣合う2つの配線層がビア30dで接続されて構成されている。例えば本実施形態では、各受信コイル34~37、40~43は、基板30の他面30b側に位置する最表層の配線層と、最表層の次層となる配線層とが接続されて形成されている。図12における各受信コイル34~37、40~43の表示に関しては、基板30における最表層に形成される配線層を実線で示し、最表層の次層に形成される配線層を破線で示している。また、送信コイル31、32は、全て実線で表示されている。
【0110】
具体的に、第1一方側受信コイル34は第1波状部34dと第2波状部34eとを有している。その第1、第2波状部34d、34eはそれぞれ、部材軸方向Daに沿う方向視で正弦曲線を描くパターン形状を成している。そして、第1、第2波状部34d、34eは、例えば接続配線パターンを介して直列接続され、閉ループを形成している。
【0111】
また、第2一方側受信コイル35は第1波状部35dと第2波状部35eとを有している。その第1、第2波状部35d、35eはそれぞれ、部材軸方向Daに沿う方向視で余弦曲線を描くパターン形状を成している。そして、第1、第2波状部35d、35eは、例えば接続配線パターンを介して直列接続され、閉ループを形成している。例えば、第1、第2一方側受信コイル34、35の波状部34d、34e、35d、35eは、第1一方側ターゲット22の動作範囲W1a内の何れの位置でも、第1一方側ターゲット22に対し部材軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。
【0112】
上記した受信コイル34、35を含む第1一方側受信コイル群301a以外の他の受信コイル群302a、303a、304aについても、上記と同様である。すなわち、第1他方側受信コイル36は、部材軸方向Daに沿う方向視で正弦曲線を描くパターン形状を成し互いに直列接続された第1波状部36dと第2波状部36eとを有している。また、第2他方側受信コイル37は、部材軸方向Daに沿う方向視で余弦曲線を描くパターン形状を成し互いに直列接続された第1波状部37dと第2波状部37eとを有している。例えば、第1、第2他方側受信コイル36、37の波状部36d、36e、37d、37eは、第1他方側ターゲット23の動作範囲W1b内の何れの位置でも、第1他方側ターゲット23に対し部材軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。
【0113】
また、第3一方側受信コイル40は、部材軸方向Daに沿う方向視で正弦曲線を描くパターン形状を成し互いに直列接続された第1波状部40dと第2波状部40eとを有している。また、第4一方側受信コイル41は、部材軸方向Daに沿う方向視で余弦曲線を描くパターン形状を成し互いに直列接続された第1波状部41dと第2波状部41eとを有している。例えば、第3、第4一方側受信コイル40、41の波状部40d、40e、41d、41eは、第2一方側ターゲット24の動作範囲W2a内の何れの位置でも、第2一方側ターゲット24に対し部材軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。
【0114】
また、第3他方側受信コイル42は、部材軸方向Daに沿う方向視で正弦曲線を描くパターン形状を成し互いに直列接続された第1波状部42dと第2波状部42eとを有している。また、第4他方側受信コイル43は、部材軸方向Daに沿う方向視で余弦曲線を描くパターン形状を成し互いに直列接続された第1波状部43dと第2波状部43eとを有している。例えば、第3、第4他方側受信コイル42、43の波状部42d、42e、43d、43eは、第2他方側ターゲット25の動作範囲W2b内の何れの位置でも、第2他方側ターゲット25に対し部材軸方向Daの一方側に重なるように配置されている。
【0115】
なお、本実施形態では、第1一方側受信領域301の周方向一方端位置P1は、部材周方向Dcにおける第2一方側受信コイル35の一方側の端位置に一致する。そして、第1一方側受信領域301の周方向他方端位置P2は、部材周方向Dcにおける第2一方側受信コイル35の他方側の端位置に一致する。この関係は、第1他方側受信領域302、第2一方側受信領域303、および第2他方側受信領域304に関しても同様である。
【0116】
このように受信コイル34、35が波状部34d、34e、35d、35eを有する構成では、第1一方側ターゲット22からの磁束を、例えば波状部34d、34e、35d、35eの半周期分のみに通すことにより、sin信号、cos信号の振幅が大きくなる。本実施形態では、第1実施形態と同様にw1/4<w2<w1/2とされているため、上記のように磁束を通し、信号振幅を増加させて、S/N比を向上させることができる。ターゲット23~25、受信コイル36、37、40~43についても、これと同様である。
【0117】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0118】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0119】
図13に示すように、本実施形態の基板30は、第1実施形態の第1送信コイル31(図5参照)に替えて2つの第1送信コイル311、312を有し、第1実施形態の第2送信コイル32(図5参照)に替えて2つの第2送信コイル321、322を有している。
【0120】
その2つの第1送信コイル311、312とは、第1一方側送信コイル311と第1他方側送信コイル312とのことである。また、2つの第2送信コイル321、322とは、第2一方側送信コイル321と第2他方側送信コイル322とのことである。
【0121】
また、部材軸方向Daに沿う方向視において、第1、第2一方側受信コイル34、35は第1一方側送信コイル311の内側に配置される一方で、他の受信コイル36、37、40~43は第1一方側送信コイル311の外側に配置されている。従って、第1一方側送信コイル311に交流電流が流れると、その第1一方側送信コイル311への通電による電磁誘導によって、誘導電流が第1、第2一方側受信コイル34、35に流れる。部材軸方向Daに沿う方向視において、第1一方側送信コイル311は、第1一方側受信領域301の外周に沿って扇台形状に形成されている。
【0122】
また、部材軸方向Daに沿う方向視において、第1、第2他方側受信コイル36、37は第1他方側送信コイル312の内側に配置される一方で、他の受信コイル34、35、40~43は第1他方側送信コイル312の外側に配置されている。従って、第1他方側送信コイル312に交流電流が流れると、その第1他方側送信コイル312への通電による電磁誘導によって、誘導電流が第1、第2他方側受信コイル36、37に流れる。部材軸方向Daに沿う方向視において、第1他方側送信コイル312は、第1他方側受信領域302の外周に沿って扇台形状に形成されている。
【0123】
また、部材軸方向Daに沿う方向視において、第3、第4一方側受信コイル40、41は第2一方側送信コイル321の内側に配置される一方で、他の受信コイル34~37、42、43は第2一方側送信コイル321の外側に配置されている。従って、第2一方側送信コイル321に交流電流が流れると、その第2一方側送信コイル321への通電による電磁誘導によって、誘導電流が第3、第4一方側受信コイル40、41に流れる。部材軸方向Daに沿う方向視において、第2一方側送信コイル321は、第2一方側受信領域303の外周に沿って扇台形状に形成されている。
【0124】
また、部材軸方向Daに沿う方向視において、第3、第4他方側受信コイル42、43は第2他方側送信コイル322の内側に配置される一方で、他の受信コイル34~37、40、41は第2他方側送信コイル322の外側に配置されている。従って、第2他方側送信コイル322に交流電流が流れると、その第2他方側送信コイル322への通電による電磁誘導によって、誘導電流が第3、第4他方側受信コイル42、43に流れる。部材軸方向Daに沿う方向視において、第2他方側送信コイル322は、第2他方側受信領域304の外周に沿って扇台形状に形成されている。
【0125】
そして、複数の送信コイル311、312、321、322は、第1一方側送信コイル311、第2他方側送信コイル322、第1他方側送信コイル312、第2一方側送信コイル321の順に部材周方向Dcの一方側から他方側へ相互間隔をあけて並んで配置されている。それらの送信コイル311、312、321、322は全体として、回転軸心CLを中心とした円環形状を成している。
【0126】
以上説明したことを除き、第1一方側送信コイル311と第1他方側送信コイル312は第1実施形態の第1送信コイル31と同様であり、第2一方側送信コイル321と第2他方側送信コイル322は第1実施形態の第2送信コイル32と同様である。
【0127】
上述した送信コイル311、312、321、322の構成により、受信コイル群301a、302a、303a、304a毎に別々に、受信コイルに対する電磁誘導を生じさせることが可能である。
【0128】
なお、本実施形態では、各送信コイル311、312、321、322は、基板30において同じ配線層に形成されていても差し支えない。
【0129】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0130】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第3実施形態と異なる点を主として説明する。
【0131】
図14に示すように、本実施形態の基板30は、第3実施形態の第1送信コイル31(図12参照)に替えて第4実施形態と同様の2つの第1送信コイル311、312を有している。また、基板30は、第3実施形態の第2送信コイル32(図12参照)に替えて第4実施形態と同様の2つの第2送信コイル321、322を有している。
【0132】
以上説明したことを除き、本実施形態は第3実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第3実施形態と共通の構成から奏される効果を第3実施形態と同様に得ることができる。
【0133】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、位置検出装置1は、例えば車両用のブレーキペダルまたはアクセルペダルの回転位置を検出するために用いられるが、位置検出装置1の用途はこれに限らず、種々想定できる。また、位置検出装置1は、車両用以外の用途に用いられても構わない。
【0134】
(2)上述の各実施形態では、例えば図1に示すように、ターゲット22~25の移動方向は部材周方向Dcであるが、これは一例である。例えば、ターゲット22~25は直線的に往復移動し、位置検出装置1は、そのターゲット22~25の移動方向における位置を検出するものであっても差し支えない。
【0135】
(3)上述の各実施形態では、図1に示すように、4つのターゲット22~25は全て同一の扇形形状を成しているが、これは一例である。そのターゲット22~25の形状は扇形形状でなくてもよいし、ターゲット22~25の形状が相互に異なっていてもよい。
【0136】
(4)上述の各実施形態では、例えば図1に示すように、回転部材20は2つの第1ターゲット22、23を有しているが、その2つの第1ターゲット22、23のうちの一方を有し、他方を有していないことも想定できる。これと同様に、回転部材20は2つの第2ターゲット24、25のうちの一方を有し、他方を有していないことも想定できる。更に言えば、第1ターゲット22、23は3つ以上であってもよいし、第2ターゲット24、25も3つ以上であってもよい。
【0137】
(5)上述の各実施形態では、図8に示すように、位置検出装置1は、電気回路として独立した構成の第1系統305と第2系統306とを備えているが、電気回路として独立した構成の3つ以上の系統を備えていても差し支えない。また、位置検出装置1が、第1系統305と第2系統306のうち、一方のみを備えていても差し支えない。
【0138】
(6)各受信領域301~304に受信コイル群301a~304aが複数配置されていてもよい。例えば、第1一方側受信領域301に2つの受信コイル群301aが部材周方向Dcに並ぶように配置されていてもよい。この場合には、第1一方側ターゲット22は、同じ中心角のものが45度ピッチで2つ配置される。そして、2つの第1一方側ターゲット22の幅の合計をw2として、(M-1)/4×w1<w2<w3とされる。
【0139】
(7)第1、第4実施形態において、0<w2<w1/4とされていてもよい。このような構成においても、第1一方側ターゲット22が第1、第2渦巻状部34a、34bの一方にのみ対向しているときには、他方に入る磁束が低減する。また、第1一方側ターゲット22が第1、第2渦巻状部35a、35bの一方にのみ対向しているときには、他方に入る磁束が低減する。これにより、sin信号およびcos信号の振幅が大きくなり、S/N比が向上する。
【0140】
(8)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。例えば、第2実施形態と第3~第5実施形態とを組み合わせることが可能である。
【0141】
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0142】
22 第1一方側ターゲット(第1ターゲット)
23 第1他方側ターゲット(第1ターゲット)
24 第2一方側ターゲット(第2ターゲット)
25 第2他方側ターゲット(第2ターゲット)
30 基板
31、311、312 第1送信コイル
32、321、322 第2送信コイル
34、36 第1受信コイル
35、37 第2受信コイル
40、42 第3受信コイル
41、43 第4受信コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14