(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101757
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】配管接続構造、及び、配管接続方法
(51)【国際特許分類】
F16L 33/213 20060101AFI20240723BHJP
F16L 33/22 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F16L33/213
F16L33/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005864
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】石井 大基
(72)【発明者】
【氏名】坂田 凌誓
【テーマコード(参考)】
3H017
【Fターム(参考)】
3H017GA11
3H017HA06
(57)【要約】
【課題】石鹸水等の助剤を用いることなくホースを容易に嵌合することができ、かつ、ホースの抜けをより確実に防止することが可能な配管接続構造を提供する。
【解決手段】配管接続構造は、ホース20が嵌合される配管10の先端部外周に嵌められた無底円筒状の筒状部材11を備えている。筒状部材11は、軸方向に伸びる複数の切り込み111が周方向に沿って平行に並べて形成されており、かつ、先端部が配管10に固定されるとともに、後端部が軸方向に摺動自在とされており、後端部が先端部方向に圧縮された場合に、山折れ変形して径方向外方に隆起する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースが嵌合される配管の先端部外周に嵌められる無底円筒状の筒状部材を備え、
前記筒状部材は、
軸方向に伸びる複数の切り込みが周方向に沿って平行に並べて形成されており、
かつ、先端部が前記配管に固定されるとともに、後端部が軸方向に摺動自在とされており、
前記後端部が前記先端部方向に圧縮された場合に、山折れ変形して径方向外方に隆起する
ことを特徴とする配管接続構造。
【請求項2】
前記筒状部材の先端部は、溶接により、前記配管の先端に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の配管接続構造。
【請求項3】
前記筒状部材の後端部よりも後方に取り付けられ、前記配管に嵌合されるホースを締め付けるホースバンドをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の配管接続構造。
【請求項4】
前記筒状部材には、前記切り込みが形成されている領域の略中央部に、山折れ変形を誘導する山折り線が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の配管接続構造。
【請求項5】
請求項3に記載の配管接続構造を備える配管の先端部にホースを嵌合する第1工程と、
前記ホースが嵌合された前記配管の先端部に外嵌されている筒状部材の後端部を先端部方向に圧縮して、前記筒状部材を山折れ変形させて径方向外方に隆起させる第2工程と、
前記筒状部材の後端部よりも後方において、前記ホースを締め付けるホースバンドを取り付ける第3工程と、を備えることを特徴とする配管接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管接続構造、すなわち、配管のホースとの接続構造、及び、該配管接続構造を備える配管にホースを接続する配管接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の製造ラインなどでは、燃料や、エンジン冷却水、オイル、空気等を送る各種ホースが対応する配管(パイプ)に嵌め付けられて接続される。従来から、ホースの抜けを防止するため、先端部の外周に環状のバルジが形成された配管(パイプ)が広く用いられている。例えば、特許文献1には、ホース(ターボホース)を、バルジ付の配管連結部に嵌合し、その嵌合部分をクランプで止着した配管の締結構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、配管の先端にバルジが形成されていると、例えば、自動車の製造ライン等においてホースを配管に嵌合する際(嵌め付ける際)に、比較的大きな力を必要とし、作業性が悪化する。そのため(ホースの嵌合を容易にして作業性を改善するため)、例えば、製造ラインでは、石鹸水等の助剤(摩擦低減剤)が用いられている。しかしながら、石鹸水等の助剤を用いると、ホースの嵌合が容易となる半面、嵌合したホースが抜け易くなってしまうという問題が生じ得る。
【0005】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、石鹸水等の助剤を用いることなくホースを容易に嵌合することができ、かつ、ホースの抜けをより確実に防止すること(すなわち、ホースの嵌合作業性の向上と、抜け防止性とを両立すること)が可能な配管接続構造、及び、配管接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る配管接続構造は、ホースが嵌合される配管の先端部外周に嵌められた無底円筒状の筒状部材を備え、該筒状部材は、軸方向に伸びる複数の切り込みが周方向に沿って平行に並べて形成されており、かつ、先端部が配管に固定されるとともに、後端部が軸方向に摺動自在とされており、後端部が先端部方向に圧縮された場合に、山折れ変形して径方向外方に隆起することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る配管接続構造によれば、ホースが嵌合される配管の先端部外周に無底円筒状の筒状部材が嵌められており(外嵌されており)、該筒状部材には、軸方向に伸びる複数の切り込みが周方向に沿って平行に並べて形成されており、かつ、先端部が配管に固定されるとともに、後端部が軸方向に摺動自在とされている。そして、筒状部材は、後端部が先端部方向に圧縮された場合に、山折れ変形して径方向外方に隆起する。すなわち、環状のバルジ部が形成される。そのため、筒状部材を山折れ変形する前(バルジ部を形成する前)にホースを嵌合することにより、ホースを容易に嵌合することができる。そして、ホースを嵌合した後に(ホースを嵌合した状態で)筒状部材を山折れ変形させてバルジ部を形成することにより、ホースを抜け難くできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、石鹸水等の助剤を用いることなくホースを容易に嵌合することができ、かつ、ホースの抜けをより確実に防止すること(すなわち、ホースの嵌合作業性の向上と、抜け防止性とを両立すること)が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る配管接続構造の構成(ホース嵌合前の状態)を示す図である。
【
図2】実施形態に係る配管接続構造の構成(ホース嵌合時の状態)を示す図である。
【
図3】実施形態に係る配管接続構造の構成(バルジ部形成時の状態)を示す図である。
【
図4】実施形態に係る配管接続構造の構成(ホースバンド取付け後の状態)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、特に区別する必要がある場合を除いて、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0011】
まず、
図1~
図4を併せて用いて、実施形態に係る配管接続構造について説明する。
図1は、実施形態に係る配管接続構造の構成(ホース嵌合前の状態)を示す図である。
図2は、配管接続構造の構成(ホース嵌合時の状態)を示す図である。
図3は、配管接続構造の構成(バルジ部形成時の状態)を示す図である。
図4は、配管接続構造の構成(ホースバンド取付け後の状態)を示す図である。
【0012】
配管(パイプ)10は、例えば、自動車のエンジンやトランスミッションなどに設けられ(例えば突設され)、自動車の製造ラインなどにおいて、燃料や、エンジン冷却水、オイル、空気等を送るホース20が嵌合(接続)される。配管10は、例えば、アルミニウムや鉄などの金属等からなる。また、ホース20は、例えば、可撓性を有するゴムホースや、樹脂ホースなどである。
【0013】
特に、配管10は、石鹸水等の助剤を用いることなくホース20を容易に嵌合することができ(ホース20の嵌合作業性を向上でき)、かつ、ホース20の抜けをより確実に防止する配管接続構造(機能)を有している。
【0014】
そのため、配管10は、主として、ホース20が嵌合される配管10の先端部に外嵌された(すなわち、先端部外周を覆うように先端部外周に嵌められた)筒状部材11を備えている。
【0015】
筒状部材11は、例えば、アルミニウムや鉄などの金属等の薄板からなり、無底円筒状に形成されている。筒状部材11には、両端部を除き、軸方向に伸びる複数の切り込み(スリット)111が周方向に沿って平行に、かつ等間隔に並べて形成されている。なお、切り込み111の長さ、幅、数、間隔等は、例えば、後述する山折れ変形のし易さや、変形後の形状等の要件に応じて、任意に設定される。
【0016】
また、筒状部材11は、先端部が配管10に固定されるとともに、後端部(基端部)が軸方向に摺動自在(フリー)とされている。より具体的には、筒状部材11の先端部は、溶接等により、配管10の先端に固定されている。すなわち、筒状部材11の先端部は、配管10の先端に全周にわたって溶接固定されている。
【0017】
そして、筒状部材11は、後端部が先端部方向に圧縮された場合に、略中央部が山折れ変形して(山形に折れ曲がって)径方向外方に隆起する。そのため、
図3に示されるように、配管10にホース20が嵌合された状態で、ホース20の外側から筒状部材11の後端部を把持しつつ、該後端部を軸方向に引っ張る又は押すことにより、筒状部材11が山折れ変形して山状に隆起する。すなわち、環状のバルジ部が形成される。
【0018】
また、シール性を確保するため、
図4に示されるように、山折れ変形した筒状部材11の後端部よりも後方において、配管10に嵌合されたホース20を外周面から縮径方向に締め付けるホースバンド(ホースクランプ)30が取り付けられる。すなわち、配管10の端部に嵌められたホース20の嵌め付け端部外周にホースバンド30が取り付けられる。
【0019】
ホースバンド30は、例えば、円筒状に曲げられた薄金属板等からなる。より詳細には、ホースバンド30は、例えば、ホース20の嵌め付け端部の外周に取り付けられるように環状に形成されたバネ弾性を有する本体と、該本体の周方向両端部に形成された一対のグリップ部とを有する。本体は、グリップ部が接合(又は付勢力が付与)された拡径状態から、グリップ部の接合(又は付勢力)が解除されると、周方向両端側を周方向に交差させて縮径状態に弾性復帰し、ホース20の嵌め付け端部を締め付ける。よって、シール性は、ホースバンド30によるホース端部の配管10への締め付けによって確保される。
【0020】
なお、筒状部材11の山折れ変形を容易にするため、また、望ましい形状(整った山形)に変形させるため、筒状部材11には、切り込み111が形成されている領域の略中央部に、山折れ変形を誘導、促進する(容易にする)山折り線112(例えば筋状の凹み)が形成されていることが好ましい。同様に、筒状部材11には、切り込み111が形成されている領域の両端部に、谷折れ変形を誘導、促進する(容易にする)谷折り線113(例えば筋状の凹み)が形成されていることが好ましい。
【0021】
次に、
図2~
図4を併せて参照しつつ、上述した配管接続構造を備えた配管10の接続方法(配管接続方法)について説明する。
【0022】
まず、第1工程(ホース嵌合工程)では、
図2に示されるように、筒状部材11が山折れ変形していない状態(初期状態)において、上記配管接続構造を備える配管10の先端部にホース20が嵌合される(嵌め付けられる)。
【0023】
次に、第2工程(バルジ部形成工程)では、
図3に示されるように、ホース20が嵌合された配管10の先端部に外嵌されている筒状部材11の後端部が先端部方向に圧縮されることにより、筒状部材11が山折れ変形して径方向外方に隆起する。すなわち、配管10にホース20が嵌合された状態で、ホース20の外側から筒状部材11の後端部が把持されつつ、該後端部が軸方向に引っ張る又は押されることにより、筒状部材11が山折れ変形し山状に隆起する。よって、環状(円環状)に、かつ、軸線を含む切断面による断面が三角形状にバルジ部が形成される。
【0024】
そして、第3工程(ホースバンド取付け工程)では、
図4に示されるように、山折れ変形した筒状部材11の後端部よりも後方において、配管10に嵌合されたホース20を外周面から縮径方向に締め付けるホースバンド30が取り付けられる。すなわち、配管10の端部に嵌められたホース20の嵌め付け端部外周にホースバンド30が取り付けられる。
【0025】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、ホース20が嵌合される配管10の先端部外周に無底円筒状の筒状部材11が嵌められており(外嵌されており)、該筒状部材11には、両端部を除き、軸方向に伸びる複数の切り込み111が周方向に沿って平行に等間隔に並べて形成されており、かつ、先端部が配管10に固定されるとともに、後端部が軸方向に摺動自在(フリー)とされている。そして、筒状部材11は、後端部が先端部方向に圧縮された場合に、略中央部が山折れ変形して径方向外方に隆起する。すなわち、環状のバルジ部が形成される。そのため、筒状部材11を山折れ変形する前(バルジ部を形成する前)にホース20を嵌合することにより、ホース20を容易に嵌合することができる。そして、ホース20を嵌合した後に(ホース20を嵌合した状態で)筒状部材11を山折れ変形させてバルジ部を形成することにより、ホース20を抜け難くできる。
【0026】
その結果、本実施形態によれば、石鹸水等の助剤を用いることなくホース20を容易に嵌合することができ、かつ、ホース20の抜けをより確実に防止すること(すなわち、ホース20の嵌合作業性(組付け作業性)の向上と、抜け防止性とを両立すること)が可能となる。
【0027】
本実施形態によれば、筒状部材11の先端部が、溶接により、配管10の先端に固定されているため、筒状部材11の先端部を配管10の先端に確実に固定することができる。また、筒状部材11の後端部を先端部方向に圧縮することにより、筒状部材11を山折れ変形させて径方向外方に隆起させることが可能となる。
【0028】
本実施形態によれば、筒状部材11の後端部よりも後方において、配管10に嵌合されたホース20を締め付けるホースバンド30が取付けられるため、配管10とホース20との接続部のシール性を確保することができる。
【0029】
本実施形態によれば、筒状部材11の切り込み111が形成されている領域の略中央部に、山折れ変形を誘導、促進する(容易にする)山折り線112が形成されているため、筒状部材11の山折れ変形を容易にできる。また、筒状部材11を望ましい形状(整った山形)に変形させることができる。
【0030】
本実施形態(配管接続方法)によれば、筒状部材11が山折れ変形していない状態(初期状態)において、上記配管接続構造を備える配管10の先端部にホース20を嵌合する(嵌め付ける)第1工程と、ホース20が嵌合された配管10の先端部に外嵌されている筒状部材11の後端部を先端部方向に圧縮して、筒状部材11を山折れ変形させて径方向外方に(山状に)隆起させる第2工程と、筒状部材11の後端部よりも後方において、ホース20を締め付けるホースバンド30を取り付ける第3工程とを備える。そのため、上述したように、石鹸水等の助剤を用いることなくホース20を容易に嵌合することができ、かつ、ホース20の抜けをより確実に防止すること(すなわち、ホース20の嵌合作業性の向上と、抜け防止性とを両立すること)が可能となる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、自動車のエンジンやトランスミッションなどに設けられ、自動車の製造ラインなどにおいて、燃料や、エンジン冷却水、オイル、空気等を送るホース20が嵌合(接続)される配管(パイプ)10を例にして説明したが、これら以外の配管、例えば、ブローバイガスや排気ガス等を通す(還流する)配管等にも適用することができる。また、本発明は、自動車以外の配管にも適用することができる。
【0032】
また、上記実施形態で示した寸法、材料、その他具体的な数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であり、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0033】
10 配管(パイプ)
11 筒状部材
111 切り込み(スリット)
112 山折り線(山折りの折れ線)
113 谷折り線(谷折りの折れ線)
20 ホース
30 ホースバンド(ホースクランプ)