(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101758
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】経路探索装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20240723BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/0969
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005866
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大滝 啓介
(72)【発明者】
【氏名】前田 智祐
(72)【発明者】
【氏名】堺 浩之
(72)【発明者】
【氏名】吉村 貴克
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129CC19
2F129DD02
2F129DD39
2F129DD58
2F129EE02
2F129EE43
2F129EE52
2F129FF02
2F129FF18
2F129FF20
2F129FF36
2F129HH02
2F129HH12
2F129HH35
5H181AA01
5H181BB04
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF22
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF32
(57)【要約】
【課題】目的地までの経路を探索する経路探索装置を提供する。
【解決手段】経路探索装置は、複数の道路を含んだ地図情報を取得する手段を備える。経路探索装置は、地図情報上において、基準位置および目的地を決定する第1決定手段を備える。経路探索装置は、移動体が基準位置を始点として目的地まで移動する際の制約条件であって、目的地までの所要時間の上限値または目的地までの距離の上限値の少なくとも一方を含んだ制約条件を決定する第2決定手段を備える。経路探索装置は、制約条件を満たすように、基準位置から目的地までの経路を探索する経路探索手段を備える。経路探索手段は、複数の道路のうちから、移動体が通過したことのある道路または経路として選択されたことのある道路である所定道路を特定する。経路探索手段は、特定された所定道路が経路に含まれている割合が低くなるように、経路を探索する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の道路を含んだ地図情報を取得する手段と、
前記地図情報上において、基準位置および目的地を決定する第1決定手段と、
移動体が前記基準位置を始点として前記目的地まで移動する際の制約条件であって、前記目的地までの所要時間の上限値または前記目的地までの距離の上限値の少なくとも一方を含んだ前記制約条件を決定する第2決定手段と、
前記制約条件を満たすように、前記基準位置から前記目的地までの経路を探索する経路探索手段と、
を備え、
前記経路探索手段は、
前記複数の道路のうちから、前記移動体が通過したことのある道路または前記経路として選択されたことのある道路である所定道路を特定し、
特定された前記所定道路が前記経路に含まれている割合が低くなるように、前記経路を探索する、
経路探索装置。
【請求項2】
前記経路探索手段は、エントロピに基づく評価値に基づいて前記経路を探索する、請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項3】
前記地図情報は、複数の交差点を含んでおり、
前記経路探索装置は、複数の前記交差点の各々について、前記移動体が通過した回数、または、前記経路として選択されたことのある回数の少なくとも一方を積算した訪問回数を記憶する手段をさらに備え、
前記経路探索手段は、K番目の交差点を基準としてK+1番目の交差点を選択する処理をN回繰り返すことによって、前記基準位置からN個の交差点を経由して前記目的地へ至る前記経路を探索し、前記Nは1以上の自然数であり、前記Kは1以上N-1以下の自然数であり、
前記経路探索手段は、前記K+1番目の交差点を選択する場合に、前記訪問回数が少ない交差点を優先的に選択する、請求項2に記載の経路探索装置。
【請求項4】
前記経路探索手段は、ヒューリスティック探索によって前記K+1番目の交差点を選択する、請求項3に記載の経路探索装置。
【請求項5】
前記移動体の現在位置情報を取得する手段をさらに備え、
前記第1決定手段は、前記現在位置情報に基づいて現在の前記基準位置を決定し、
前記第2決定手段は、前記移動体が前記目的地へ向けて移動開始してからの経過時間を前記所要時間の上限値から減算して得られる残り時間を、前記制約条件として決定し、
前記経路探索手段は、前記残り時間内に前記目的地に到着できるように、前記経路を再探索する、請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項6】
前記移動体の現在位置情報を取得する手段をさらに備え、
前記第1決定手段は、前記現在位置情報に基づいて現在の前記基準位置を決定し、
前記第2決定手段は、前記移動体が前記目的地へ向けて移動開始してから経由した交差点または道路の数を、経由可能な交差点または道路の上限値から減算して得られる残り経由回数を、前記制約条件として決定し、
前記経路探索手段は、前記残り経由回数内に前記目的地に到着できるように、前記経路を再探索する、請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項7】
前記経路探索手段によって探索された前記経路を提示可能な提示手段をさらに備える、請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項8】
前記移動体は複数存在しており、
前記経路探索手段は、複数の前記移動体の何れか1つが通過したことのある道路、または、複数の前記移動体の何れか1つによって前記経路として選択されたことのある道路を、前記所定道路として特定する、請求項1に記載の経路探索装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、目的地までの経路を探索する経路探索装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンの地図アプリケーション等を用いて、出発地から目的地までの経路を検索する技術が知られている。これらの技術では、最短移動距離、最小移動時間、最小乗り換え回数など、いくつかの一般的な指標に従って計算された複数の経路の候補を、ユーザに提示することができる。そしてユーザは、複数候補の中から1つの経路を選択することができる。例えば特許文献1には、関連する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような技術では、最短経路や最小移動時間の経路から外れるような経路を探索することが困難である。すると、多様な地点を訪問しながら目的地へ到達するような回遊行動を、ユーザに提案することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
経路探索装置は、複数の道路を含んだ地図情報を取得する手段を備える。経路探索装置は、地図情報上において、基準位置および目的地を決定する第1決定手段を備える。経路探索装置は、移動体が基準位置を始点として目的地まで移動する際の制約条件であって、目的地までの所要時間の上限値または目的地までの距離の上限値の少なくとも一方を含んだ制約条件を決定する第2決定手段を備える。経路探索装置は、制約条件を満たすように、基準位置から目的地までの経路を探索する経路探索手段を備える。経路探索手段は、複数の道路のうちから、移動体が通過したことのある道路または経路として選択されたことのある道路である所定道路を特定する。経路探索手段は、特定された所定道路が経路に含まれている割合が低くなるように、経路を探索する。
【0006】
上記の構成によると、移動体の過去の行動履歴や経路の探索履歴を用いることで、一定の制約条件の中で遠回りを許すように、経路を最適化することができる。これにより、最短経路や最小移動時間の経路から外れて、多様な地点を訪問しながら目的地へ到達するような回遊行動を、移動体に促すことが可能となる。
【0007】
経路探索手段は、エントロピに基づく評価値に基づいて経路を探索してもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0008】
地図情報は、複数の交差点を含んでいてもよい。経路探索装置は、複数の交差点の各々について、移動体が通過した回数、または、経路として選択されたことのある回数の少なくとも一方を積算した訪問回数を記憶する手段をさらに備えていてもよい。経路探索手段は、K番目の交差点を基準としてK+1番目の交差点を選択する処理をN回繰り返すことによって、基準位置からN個の交差点を経由して目的地へ至る経路を探索してもよい。Nは1以上の自然数であり、Kは1以上N-1以下の自然数であってもよい。経路探索手段は、K+1番目の交差点を選択する場合に、訪問回数が少ない交差点を優先的に選択してもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0009】
経路探索手段は、ヒューリスティック探索によってK+1番目の交差点を選択してもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0010】
移動体の現在位置情報を取得する手段をさらに備えていてもよい。第1決定手段は、現在位置情報に基づいて現在の基準位置を決定してもよい。第2決定手段は、移動体が目的地へ向けて移動開始してからの経過時間を所要時間の上限値から減算して得られる残り時間を、制約条件として決定してもよい。経路探索手段は、残り時間内に目的地に到着できるように、経路を再探索してもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0011】
移動体の現在位置情報を取得する手段をさらに備えていてもよい。第1決定手段は、現在位置情報に基づいて現在の基準位置を決定してもよい。第2決定手段は、移動体が目的地へ向けて移動開始してから経由した交差点または道路の数を、経由可能な交差点または道路の上限値から減算して得られる残り経由回数を、制約条件として決定してもよい。経路探索手段は、残り経由回数内に目的地に到着できるように、経路を再探索してもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0012】
経路探索手段によって探索された経路を提示可能な提示手段をさらに備えていてもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【0013】
移動体は複数存在していてもよい。経路探索手段は、複数の移動体の何れか1つが通過したことのある道路、または、複数の移動体の何れか1つによって経路として選択されたことのある道路を、所定道路として特定してもよい。効果の詳細は実施例で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】ステップS40の具体的処理内容について説明するフロー図である。
【
図4】検索の具体例を説明するためのグラフ構造GSである。
【
図5】検索の具体例を説明するためのグラフ構造GSである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0015】
(経路探索装置1の構成)
図1に、経路探索装置1のブロック図を示す。経路探索装置1は、例えば、CPU、ROM、RAM、不揮発性記憶装置などを備えたPC(Personal Computerの略)や、タブレット端末や、スマートフォンによって構成することができる。経路探索装置1は、ユーザインターフェース部10、地図情報取得部11、目的地決定部12、制約条件決定部13、現在位置取得部14、履歴記憶部15、経路探索部16、提示部17、を主に備える。CPUが不揮発性記憶装置に記憶されているプログラムを実行することで、CPUは、
図1に示す地図情報取得部11~提示部17等として機能する。
【0016】
ユーザインターフェース部10は、ユーザからの各種入力を受け付けたり、ユーザへ各種情報を提示するための部位である。ユーザインターフェース部10は、例えば、タッチパネル、キーボード、スピーカ、マイク等を備えていてもよい。またユーザインターフェース部10は、車載ヘッドアップディスプレイや、装着型の視覚ディスプレイ(例:ヘッドマウントディスプレイ)を備えていても良い。地図情報取得部11は、地図情報を取得する部位である。地図情報は、複数の道路および複数の交差点を含んでいるデータである。目的地決定部12は、地図情報上において、基準位置および目的地を決定する部位である。基準位置は、様々な概念を含む位置である。例えば、出発地でもよいし、現在地でもよい。
【0017】
制約条件決定部13は、移動体が基準位置を始点として目的地まで移動する際の制約条件を決定する部位である。移動体は、例えば、経路探索装置1を所持しているユーザや、経路探索装置1が搭載されている車両である。制約条件は、様々な概念を含む位置である。例えば、制約条件は、目的地までの所要時間の上限値、または、目的地までの距離の上限値、の少なくとも一方を含んでいてもよい。目的地までの距離は、様々な概念を含んでいる。例えば、直線距離や、道路距離であってもよい。また、交差点間を接続する道路の数によって距離を表してもよいし、経由する交差点の数によって距離を表してもよい。
【0018】
現在位置取得部14は、移動体の現在位置情報を取得する部位である。現在位置情報は、現在位置取得部14が備えているGPSによって取得してもよいし、地図情報上で取得してもよい。履歴記憶部15は、複数の交差点の各々について、訪問回数を記憶する部位である。訪問回数は、移動体が通過した回数、または、経路として選択されたことのある回数の少なくとも一方を積算して得られる回数である。経路探索部16は、制約条件を満たすように、基準位置から目的地までの経路を探索する部位である。経路探索部16の具体的な処理内容については後述する。提示部17は、経路探索部16によって探索された経路を提示可能な部位である。経路の提示方法は様々であってよい。例えば、ディスプレイに地図画像を示してもよいし、音声ガイドであってもよい。
【0019】
(経路探索部16の探索内容)
経路探索部16は、一定の制約条件の中で遠回りを許すような経路を探索する。そのために、生成した経路の新規性やばらつきを評価する手法を備えている。経路の新規性とは、ユーザが通ったことのある経路や、過去に生成した経路に対して、今回生成した経路がどの程度異なっているかの度合いである。経路のばらつきとは、複数の経路を生成した場合において、複数の経路間における異なり度合いである。
【0020】
本実施例では、経路探索部16は、回遊エントロピの計算式に基づいて、経路の新規性および経路のばらつきを評価している。ここで、経路探索の対象となっている地図情報のネットワーク構造(道路ネットワーク)を、G=(V,E)で示す。ここでVは頂点集合を示し、Eは辺集合を示す。頂点は交差点に対応し、辺は道路に対応している。また、過去に提示して移動したn回の移動経路の集合を、下式で表す。
【数1】
ただしP
iは、頂点集合Vの要素の列である。
【0021】
過去に訪問した頂点と辺の訪問回数を計算し、下式で表す。
【数2】
【0022】
頂点について、正規化した量を、下式のように計算する。
【数3】
なお、辺についても、同様にして、正規化した量を計算する。
【0023】
新しい経路P
n+1を提示した際の回遊エントロピに基づく評価値は、下式で近似的に計算することができる。
【数4】
【0024】
(経路探索部16の具体的な計算手法の例)
経路探索部16が新規性のある経路を探索するための計算手法の概念を説明する。すなわち経路探索部16は、地図情報に含まれる複数の道路のうちから、移動体が通過したことのある道路、または、経路として選択されたことのある道路(所定道路)を特定する。そして所定道路が経路に含まれている割合が低くなるように、経路を探索する。
【0025】
経路探索部16による具体的な計算手法の例を説明する。計算の前提を説明する。道路ネットワーク情報のみを用いる。また制約条件は、目的地までの距離の上限値とする。具体的には、距離の上限値を、最短移動距離の定数倍(1.3倍~2倍)の範囲としている。
【0026】
最適化を近似的に達成するために、本実施例では、ヒューリスティック探索を実装した。ヒューリスティック探索では、過去に通過した頂点と辺を探索する優先度を下げるような評価関数f(n)を用いる。ここでは評価関数f(n)として、下式(1)を用いた。
【数5】
ここで、f
1は、スタートsから頂点nまでに通過した頂点数である。f
2は、頂点nからゴールgまでの距離である。f
3は、頂点nの過去の訪問回数である。
【0027】
本実施例では、評価関数f(n)の計算値が低いほど、評価値が高い(すなわち新規性が高い、ばらつきが大きい)とした。従ってγが正の値の場合には、γを大きくするほど、訪問回数の多い頂点が選択されにくい状態にすることができる。その結果、より新規性が高く、ばらつきが大きい経路を探索することが可能となる。
【0028】
(経路探索処理の内容)
図2を参照して、経路探索装置1によって実行される探索処理について説明する。
図2のフローは、経路探索の指示が経路探索装置1に入力されたときに、開始される。ステップS10において、地図情報取得部11は、地図情報を取得する。地図情報の取得方法は様々であってよい。例えば、不図示の通信手段によって、外部サーバから受信してもよい。
【0029】
ステップS20において、目的地決定部12は、基準位置および目的地を決定する。基準位置および目的地の決定方法は様々であってよい。例えば、ユーザからの入力をユーザインターフェース部10で受け付けることによって決定してもよい。ステップS30において、制約条件決定部13は、制約条件を決定する。制約条件の決定方法は様々であってよい。例えば、ユーザからの入力をユーザインターフェース部10受け付けることによって決定してもよい。
【0030】
ステップS40において、経路探索部16は、制約条件を満たすように、基準位置から目的地までの経路を探索する。具体的には、ヒューリスティック探索によって、K番目の交差点を基準として、K+1番目の交差点が選択される。この選択時において、訪問回数が少ない交差点が優先的に選択される。この選択処理をN回繰り返すことによって、基準位置からN個の交差点を経由して目的地へ至る経路を探索することができる。ここで、Nは1以上の自然数であり、Kは1以上N-1以下の自然数である。
【0031】
ステップS40の具体的処理内容について、
図3のサブルーチンを用いて説明する。ステップS41において経路探索部16は、地図情報に含まれる複数の交差点の各々にインデックスを付与する。インデックスは、個々の交差点を識別するための、一連の一意で等差な整数である。なお、各交差点にインデックスが予め付与されている場合には、本ステップは省略してもよい。
【0032】
ステップS42において経路探索部16は、スタート地点sから移動する1つ目の交差点を選択する。具体的に説明する。経路探索部16は、移動可能な交差点(候補点)を全てピックアップする。また、全ての候補点の訪問回数を、履歴記憶部15から読み出す。次に、全ての候補点に対して、評価関数f(n)を計算し、評価値を算出する。そして、評価値が最良(すなわち最小)の候補点を、次の基準位置として決定する。なお、評価値が最良の候補点が複数存在する場合には、所定ルールに基づき、何れか1の候補点を選択する。本実施例では、所定ルールとして、インデックスが最小の候補点を選択している。ステップS43において、履歴記憶部15は、ステップS42で選択された交差点の訪問回数を1カウントアップする。
【0033】
ステップS44において経路探索部16は、基準位置から移動する次の交差点を選択する。具体的な処理内容は、ステップS42の内容と同様であるため、説明を省略する。ステップS45において、履歴記憶部15は、ステップS44で選択された交差点の訪問回数を1カウントアップする。
【0034】
ステップS46において経路探索部16は、目的地tに到達したか否かを判断する。否定判断される場合(S46:NO)には、ステップS44へ戻り、ループ処理が実行される。一方、肯定判断される場合(S46:YES)には、1個の経路が完成したと判断され、ステップS47へ進む。
【0035】
ステップS47において経路探索部16は、次の経路を作成するか否かを判断する。当該判断は、例えば、予め定められた所定数まで経路が作成されたか否かによって行ってもよい。肯定判断される場合(S47:YES)には、ステップS42へ戻り、次の経路の作成が開始される。一方、否定判断される場合(S47:NO)には、経路探索が終了したと判断され、ステップS50(
図2)へ進む。
【0036】
ステップS50において提示部17は、探索された経路を、ユーザインターフェース部10を介してユーザに提示する。このとき、複数個の経路を提示し、ユーザによる何れか1つの経路の選択を受け付けてもよい。ステップS60において、提示部17は、ユーザを経路に沿って誘導する。ステップS70において、履歴記憶部15は、ユーザが通過した交差点の訪問回数を1カウントアップする。
【0037】
ステップS75において、目的地に到着したか否かを判断する。肯定判断される場合(S75:YES)にはフローを終了し、否定判断される場合(S75:NO)にはS80へ進む。ステップS80において、経路の再探索を行うか否かを判断する。当該判断は、例えば、前回の経路探索から予め定められた所定時間が経過することに応じて行われてもよい。否定判断される場合(S80:NO)にはS75へ戻り、肯定判断される場合(S80:YES)にはS90へ進む。
【0038】
ステップS90において、現在位置取得部14は、現在位置を取得する。目的地決定部12は、取得された現在位置を、基準位置に設定する。ステップS100において、制約条件決定部13は、制約条件を更新する。具体的には、残り時間を計算する。残り時間は、移動体が目的地へ向けて移動開始してからの経過時間を、所要時間の上限値から減算して得られる時間である。そして、残り時間を、制約条件として決定する。
ステップS40へ戻り、経路探索部16は、残り時間内に目的地に到着できるように、経路を再探索する。以後、ループ処理が行われる。
【0039】
(探索の具体例)
図4に示すようなグラフ構造GSを例として、検索の具体例を説明する。本具体例では、グラフ構造GSの上で、スタート地点sから目的地tまでの移動経路を探索する。また、式(1)で示す評価関数f(n)を使用し、α=-1、β=0、γ=1e-12、とする場合を説明する。また、ステップS41において、スタート地点sに「0」、交差点C1-C5に「1-5」、目的地tに「6」のインデックスが付与される場合を説明する。また制約条件が、目的地までの距離であり、「交差点間を接続する道路を経由できる数が5個以下」という内容である場合を説明する。
【0040】
1本目の経路を探索する場合を説明する。1回目の探索が、スタート地点sを基準位置として開始される。ステップS42(
図3)において、全ての交差点の訪問回数が、履歴記憶部15から読み出される。本実施例では、読みだされた訪問回数が、交差点C1-C5の順に、「1、1、1、0、1」である場合を説明する。またスタート地点sおよび目的地tの訪問回数が、「1、1」である場合を説明する。なお
図4では、訪問回数を四角で囲まれた数字で示している。また、移動可能な交差点(すなわち道路で直接接続されている交差点)が、候補点としてピックアップされる。この例では、候補点は、交差点C1およびC2である。そして式(A)に基づき、交差点C1の評価関数f(1)=-1+γ、および、交差点C2の評価関数f(2)=-1+γ、が算出される。評価値が等しいため、インデックスが小さい交差点C1が選択される(矢印A1参照)。そして、交差点C1の訪問回数が1カウントアップされる(ステップS43、
図5)。
【0041】
2回目の探索が、交差点C1(現在位置情報)を基準位置として開始される。経由可能な道路の数は、残り4つである(制約条件)。ステップS44において、交差点C3およびC4が候補点となる。そして式(A)に基づき、評価関数f(3)=-2+γ、f(4)=-2、が算出される。最小の評価値を有する交差点C4が選択される(矢印A2参照)。そして、交差点C4の訪問回数が1カウントアップされる(ステップS43、
図5)。
【0042】
3回目の探索が、交差点C4(現在位置情報)を基準位置として開始される。経由可能な道路の数は、残り3つである(制約条件)。ステップS44において、交差点C3、および目的地tが候補点となる。そして式(A)に基づき、評価関数f(3)=-3+γ、f(t)=-3+γ、が算出される。評価値が等しいため、インデックスが小さい交差点C3が選択される(矢印A3参照)。そして、交差点C3の訪問回数が1カウントアップされる(ステップS43、
図5)。
【0043】
4回目の探索が、交差点C3(現在位置情報)を基準位置として開始される。経由可能な道路の数は、残り2つである(制約条件)。ステップS44において、交差点C2およびC5が候補点となる。しかし交差点C2に進むと、目的地tまでに経由する道路の数が6個以上になってしまうため、制約条件を満たさない。よって交差点C2の探索を枝刈りする。その結果、交差点C5が選択される(矢印A4参照)。そして、交差点C5の訪問回数が1カウントアップされる(ステップS43、
図5)。
【0044】
5回目の探索が、交差点C5(現在位置情報)を基準位置として開始される。経由可能な道路の数は、残り1つである(制約条件)。ステップS44において、交差点C2および目的地tが候補点となる。しかし交差点C2に進むと、制約条件を満たせないため、交差点C2の探索を枝刈りする。よって目的地tが選択される(矢印A5参照)。以上により、スタート地点sから、交差点C1、C4、C3、C5を経由して目的地tへ到達する、1本目の経路が生成される。また
図5に示すように、各交差点の訪問回数が更新される。
【0045】
2本目の経路は、1本目の経路生成時に訪問回数が更新されたグラフ構造GS(
図5)に基づいて生成される。具体的な経路生成方法は、1本目の経路生成方法と同様であるため、説明を省略する。以降、上述した経路生成処理を繰り返すことにより、複数の経路を生成することができる。
【0046】
従来の経路探索技術では、最短移動距離、最小移動時間、最小乗り換え回数などの指標から外れるような経路を探索することが困難であった。一方、本明細書の技術では、ユーザの過去の行動履歴や経路の探索履歴を用いることで、一定の制約条件の中で遠回りを許すように、経路を最適化することができる。これにより、最短経路や最小移動時間の経路から外れて、多様な地点を訪問しながら目的地へ到達するような回遊行動を、ユーザに促すことが可能となる。従って、「ワクワクする移動行動」をユーザが求めている状況や、「空き時間の中である地域を回遊したい」とユーザが望んでいる状況などにおいて、回遊的な移動経路の探索をサポートすることができる。これにより例えば、「旅先や出張の合間などに訪れる馴染みのない町での回遊行動」や、「普段訪れる町の中で新しい気付きや体験が得られるような回遊行動」をユーザに実行させることができるため、心理的に良い影響をユーザに与えることが可能となる。
実施例1では、経路の新規性やばらつきの評価手法として、頂点の訪問回数による回遊エントロピの近似計算方法を説明した。実施例2では、他の評価手法について説明する。
経路の新規性を評価する第1の方法としては、GPS位置情報と滞在時間でヒストグラム計算を行った結果の回遊エントロピの計算方法を用いてもよい。具体的内容は既知であるため、ここでは説明を省略する。
以上、本明細書が開示する技術の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。