(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101759
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/00 20060101AFI20240723BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B60K1/00
B62D25/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005867
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤松 高志
(72)【発明者】
【氏名】毎熊 宗幸
(72)【発明者】
【氏名】松田 隆寛
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203BB16
3D203BB35
3D203BB43
3D203CA23
3D203CB19
3D235AA02
3D235BB03
3D235CC12
3D235CC13
3D235DD12
3D235DD17
3D235FF06
3D235FF14
3D235HH22
(57)【要約】
【課題】安全性を向上する。
【解決手段】車両は、下方側の所定位置における左右方向に沿った回転軸を回転中心として回転可能に第1マウント部に支持されたモータと、モータに接続された電気部品と、インバータ3をモータの上方で支持し、モータが回転した際にモータの回転に伴って電気部品を上後方に移動させる支持装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方側の所定位置における左右方向に沿った回転軸を回転中心として回転可能に第1マウント部に支持されたモータと、
前記モータに接続された電気部品と、
前記電気部品を前記モータの上方で支持し、前記モータが回転した際に前記モータの回転に伴って前記電気部品を上後方に移動させる支持装置と、
を備える車両。
【請求項2】
前記モータは、上部側において車体に第2マウント部を介して支持されており、
前記支持装置は、前記第2マウント部に取り付けられる
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記支持装置は、
後方側において車体に回転可能に支持される
請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記支持装置は、
前記第2マウント部に取り付けられた可動フレームと、
前記電気部品が載せられるメインフレームと、
を備え、
前記可動フレームは、前記メインフレームに対して前後方向にスライド可能に係合される
請求項2に記載の車両。
【請求項5】
前記モータ、前記電気部品及び前記支持装置はモータルーム内に設けられており、
前記モータルームを開閉するためのフードは、前後方向の中央部分が上方向に折れ曲がり可能である
請求項1又は請求項2に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ及び電気部品を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両には、車両後方側へスライド可能に保持されたスライド機構の上にインバータが固定されたものが提案されている(例えば、特許文献1)。この車両では、前方衝突時にインバータがスライド機構によって車両後方側にスライドされることになり、インバータの破損を低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータの動力により走行する車両では、モータルーム内(フード内)にモータやインバータ等が収容されることになる。このような車両では、前方衝突時にモータルームが圧壊されることでモータが移動すると、移動したモータによってインバータ等を損傷させるおそれがある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、安全性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態に係る車両は、下方側の所定位置における左右方向に沿った回転軸を回転中心として回転可能に第1マウント部に支持されたモータと、前記モータに接続された電気部品と、前記電気部品を前記モータの上方で支持し、前記モータが回転した際に前記モータの回転に伴って前記電気部品を上後方に移動させる支持装置と、を備える。
これにより、車両は、前方衝突した際にモータが移動したとしても、モータと電気部品との相対距離を維持することで、モータが電気部品に接触してしまうことを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】前方衝突時のモータルームを説明する図である。
【
図7】前方衝突時の支持装置7を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1 車両の構成>
図1は、車両1の構成概要を示した図である。以下では、車両1の進行方向を前方向、車両1の後退方向を後方向、車両1の進行方向に対して右側を右方向、車両1の進行方向に対して左側を左方向、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向として説明する。
【0010】
図1に示すように、車両1は、動力源としてモータ2を備える電気自動車である。車両1は、モータ2、インバータ3及びバッテリ4を備える。
【0011】
モータ2及びインバータ3は、フード11、ダッシュパネル12、一対のサイドメンバー13及び一対のサイドフレーム14等に囲まれた車両1の前方側のモータルーム10内に収容される。
バッテリ4は、ダッシュパネル12よりも後方側であって、例えばキャビン16の下方に設けられる。
【0012】
モータ2は、例えば三相交流モータであり、インバータ3を介してバッテリ4に電気的に接続される。モータ2は、バッテリ4からインバータ3を介して供給される電力によって動力を発生させ、その動力を駆動輪に伝達することで車両1を走行させる。
【0013】
また、モータ2は、回生運転を行うことによって電気(電力)を生成する。モータ2の回生運転によって生成された電気は、インバータ3を介してバッテリ4に供給される。
【0014】
モータ2は、サイドメンバー13に架け渡されたクロスメンバー15に第1マウント部5を介して支持されているとともに、左右のサイドフレーム14に2個の第2マウント部6を介してそれぞれ支持されている。従って、モータ2は、第1マウント部5及び2個の第2マウント部6を介して車体に3点支持されている。
【0015】
インバータ3は、バッテリ4から供給される直流電流を三相の交流電流に変換してモータ2に供給する。また、モータ2が回生運転を行う場合、インバータ3は、モータ2から供給される交流電流を直流電流に変換してバッテリ4に供給する。
【0016】
バッテリ4は、いわゆる高電圧バッテリであり、モータ2に供給するための電気を蓄電可能である。
【0017】
フード11は、前後方向の中央部分が上方向に折れ曲がり可能な構造を有している。
【0018】
ダッシュパネル12、一対のサイドメンバー13、一対のサイドフレーム14及びクロスメンバー15は車体(ボディ)に相当する。
【0019】
ダッシュパネル12は、モータルーム10と乗員が搭乗するキャビン16とを隔てる例えば金属製のプレートである。
【0020】
サイドメンバー13は、車両1の下方側において前後方向に沿って配置されるメンバーであり、左右方向(幅方向)の両側に並行して配置される。一対のサイドメンバー13の間には、複数のクロスメンバーが架け渡されている。クロスメンバー15は、複数のクロスメンバーのうちの一つであり、モータ2の下方に設けられている。
【0021】
第1マウント部5は、ロッド機構(リンク機構)でなり、2つのロッド5a、5b、関節機構5c及び支持機構5dを備える。ロッド5aは、クロスメンバー15における左右方向の略中央に支持機構5dを介して回転可能に接続される。支持機構5dは、左右方向に沿った回転軸を有し、ロッド5aを回転軸周りに回転可能に支持する。
ロッド5aは、一端が支持機構5dに支持されるとともに、一端から他端にかけて後方向に沿うように配置される。ロッド5aの他端には関節機構5cを介してロッド5bが回転可能に接続される。
【0022】
関節機構5cは、左右方向に沿った回転軸を有し、ロッド5a、5bを回転軸周りに回転可能に支持する。換言すると、関節機構5cは、ロッド5aに対してロッド5bを回転軸周りに回転可能に支持する。
【0023】
ロッド5bは、一端が関節機構5cに支持されるとともに、一端から他端にかけて前斜め上方向に沿うように配置される。ロッド5bの他端はモータ2の下部に接続される。
【0024】
このようにしてモータ2の下部は、第1マウント部5を介してクロスメンバー15に支持される。
【0025】
サイドフレーム14は、サイドメンバー13より上方において前後方向に沿って配置されており、左右方向(幅方向)の両側に並行して配置されている。
【0026】
第2マウント部6は、例えば円柱形状に形成されており、サイドフレーム14上に不図示の締結ボルト等によってそれぞれ固定されている。第2マウント部6は、左右方向に沿って配置されるマウントアーム部6a(
図6参照)を介してモータ2の上部に接続される。
【0027】
このようにしてモータ2の上部は、第2マウント部6を介して左右それぞれのサイドフレーム14に支持される。
【0028】
第2マウント部6の上には、支持装置7が取り付けられる。支持装置7は、モータ2の上方でインバータ3を支持する。
【0029】
図2は、支持装置7の側面図である。
図3は、支持装置7の上面図である。
図4は、
図2におけるA-A断面図である。但し、
図4では、インバータ3を省略するとともに、A-A断面の一部を図示している。
【0030】
図2~
図4に示すように、支持装置7は、可動フレーム21、メインフレーム22及びピン23を備える。
【0031】
可動フレーム21は、下端が第2マウント部6に取り付けられる。可動フレーム21の上端には、左右方向に沿って配置される円柱形状のピン21aが取り付けられる。
【0032】
メインフレーム22は、略四角形の枠状に形成されたメインフレーム本体22a、及び、メインフレーム本体22aの後方から後方向に沿って配置されるメインフレーム軸部22bを備える。
【0033】
メインフレーム本体22aは、左右方向に沿って配置される一対のフレーム軸と、前後方向に沿って配置される一対のフレーム軸とが略四角形を形成するように接続される。
【0034】
前後方向に沿って配置される一対のフレーム軸には、前後方向に沿って貫通孔22cが形成される。貫通孔22cには可動フレーム21のピン21aが挿入されており、ピン21aは貫通孔22c内において前後方向にスライド可能である。
従って、可動フレーム21は、メインフレーム22に対して前後方向にスライド可能に係合されている。
【0035】
メインフレーム軸部22bは、後方側がピン23によってダッシュパネル12に回転可能に支持されている。ダッシュパネル12には、前方に突出する支持部12aが形成される。
【0036】
ピン23は、支持部12aに形成された貫通孔、及び、メインフレーム軸部22bに形成された貫通孔に挿入されることで、左右方向に沿って配置される。これにより、ピン23は、左右方向に沿って配置される回転軸として機能し、メインフレーム22をダッシュパネル12に対して回転軸周りに回転可能に支持することになる。
【0037】
メインフレーム本体22aの上部には、インバータ3が搭載される。このように、インバータ3は、モータルーム10においてメインフレーム22を介してモータ2の上部に支持される。
【0038】
図5は、前方衝突時のモータルーム10を説明する図である。
図6は、前方衝突時のモータルーム10の斜視図である。
図7は、前方衝突時の支持装置7を説明する図である。
図5及び
図6に示すように、車両1が前方から障害物100に衝突した場合、モータルーム10が障害物100によって前後方向に潰されることがある。
【0039】
モータルーム10が前後方向に潰される場合、サイドフレーム14が前後方向に圧縮するように圧壊される。このとき、サイドフレーム14に固定されている第2マウント部6は、サイドフレーム14の圧壊に伴って後方又は上後方に移動する。
【0040】
第2マウント部6が後方又は上後方に移動すると、第2マウント部6に支持されているモータ2は、第1マウント部5の支持機構5dを回転中心として、
図6中矢印で示すように、上部側が上後方に回転軌跡を描くように
図5中時計回りに回転する。
このとき、モータ2の下部は、第1マウント部5に接続されているため、後方に移動することはない。
これにより、モータ2は、モータ2の後方に配置されたバッテリ4との接触を回避することが可能となる。従って、車両1では、バッテリ4の破損を低減することができる。
【0041】
また、
図5、
図6及び
図7に示すように、第2マウント部6が後方又は上後方に移動する際に、支持装置7では、可動フレーム21が第2マウント部6とともに後方又は上後方に移動する。
【0042】
このとき、ピン21aが貫通孔22cに沿って後方向にスライド移動する。ピン21aが後方向にスライド移動するときに、メインフレーム22は、ピン23を回転中心として、メインフレーム本体22aが上後方に回転軌跡を描くように
図5中時計回りに回転する。
【0043】
そうすると、メインフレーム22に搭載されたインバータ3は、
図5矢印で示すように、メインフレーム本体22aとともに上後方に回転軌跡を描くように
図5中時計回りに回転する。
すなわち、車両1では、モータ2の上部が上後方に回転軌跡を描くように回転するとともに、インバータ3も上後方に回転軌跡を描くように回転する。
【0044】
このように、車両1では、前方衝突時にモータ2及びインバータ3がともに上後方に回転軌跡を描くように回転することになるため、モータ2及びインバータ3の位置関係(相対距離)を維持させることが可能となる。
【0045】
また、車両1では、モータルーム10が障害物100によって前後方向に潰されると、フード11の中央部分が上方向に折れ曲がることで、インバータ3が上後方に回転移動する際の空間を確保することが可能となる。
【0046】
これにより、車両1では、インバータ3がモータ2やフード11と接触してインバータ3が破損してしまうことを低減することが可能となる。また、車両1では、インバータ3が破損してしまうことを低減することが可能であるため、インバータ3からの漏電も低減することが可能である。
【0047】
<2.変形例>
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記した具体例に限定されず多様な構成を採り得るものである。
例えば、上記した実施形態では、支持装置7が可動フレーム21、メインフレーム22及びピン23を備えるようにした。しかしながら、支持装置7は、インバータ3をモータ2の上方で支持し、モータ2の上部が上後方に回転した際にインバータ3を上後方に移動させる構造であればよく、その構造はこれに限らない。
【0048】
また、上記した実施形態では、支持装置7が第2マウント部6に取り付けられるようにしたが、支持装置7は、インバータ3をモータ2の上方で支持し、モータ2が回転した際にモータ2の回転に伴ってインバータ3を上後方に移動させる構造であれば、第2マウント部6に取り付けられていなくてもよい。
【0049】
また、上記した実施形態では、前方衝突時にサイドフレーム14が前後方向に圧縮されることで、第2マウント部6が後方又は上後方に移動されてモータ2及び支持装置7が回転するようにした。しかしながら、前方衝突時に障害物100によりモータ2が後方側に押されることとで回転し、モータ2の回転によって支持装置7が回転されるようにしてもよい。
【0050】
<3.実施形態のまとめ>
上記のように実施形態の車両1は、下方側の所定位置における左右方向に沿った回転軸(支持機構5d)を回転中心として回転可能に第1マウント部5に支持されたモータ2と、モータ2に接続された電気部品(インバータ3)と、電気部品をモータ2の上方で支持し、モータ2が回転した際にモータ2の回転に伴ってインバータ3を上後方に移動させる支持装置7と、を備える。なお、インバータ3は電気部品の一例である。
これにより、車両1は、車両1が前方衝突した際にモータ2の上部が上後方に回転軌跡を描くように回転することになり、モータ2の後方に配置されたバッテリ4と衝突するおそれを低減することが可能となる。
また、車両1は、モータ2の上部が上後方に回転したとしても、支持装置7によりモータ2とインバータ3との位置関係が維持されインバータ3がモータ2に接触することにより破損されてしまうおそれを低減することが可能となる。
従って、車両1は、インバータ3の漏電のおそれを低減させることができ、安全性を向上することができる。
【0051】
また、モータ2は上部側において車体(サイドフレーム14)に第2マウント部6を介して支持されており、支持装置7は、第2マウント部6に接続されている。
これにより、車両1は、車両1が前方衝突した際に第2マウント部6が支持装置7を上後方に回転移動させる。そして、支持装置7は、インバータ3を上後方に移動させる。
これにより、車両1では、モータ2の回転移動に伴う上後方への回転移動と、インバータ3の上後方への移動とが一体的に発生するため、モータ2とインバータ3との位置関係を簡易な構成で維持させることができる。
【0052】
また、支持装置7は、後方側において車体(ダッシュパネル12)に回転可能に支持される。
これにより、車両1の前方衝突時に支持装置7は、ダッシュパネル12に設けられたピン23を中心として回転することにより、インバータ3を上後方に回転移動させることができる。
【0053】
また、支持装置7は、第2マウント部6に接続される可動フレーム21と、インバータ3が載せられるメインフレーム22と、を備え、可動フレーム21は、メインフレーム22に対して前後方向にスライド可能に係合される。
これにより、第2マウント部6が後方又は上後方に移動した際に可動フレーム21が第2マウント部6とともに後方又は上後方に移動する。このとき可動フレーム21がメインフレーム22に対してスライドしながらメインフレーム22を上後方に押し上げる。このように、支持装置7は、簡易な構成でインバータ3を上後方に移動させることができる。
【0054】
モータ2、インバータ3及び支持装置7はモータルーム10内に設けられており、モータルーム10を開閉するためのフード11は、前後方向の中央部分が上方向に折れ曲がり可能である。
これにより、フード11の中央部分が上方向に折れ曲がることで、インバータ3が上後方に回転移動する際の空間を確保することができ、インバータ3がフード11に接触して破損するおそれを低減することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 車両
2 モータ
3 電気装置
4 バッテリ
5 ロッド機構
6 保持装置