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  • 特開-眼鏡レンズ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101767
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/02 20060101AFI20240723BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240723BHJP
【FI】
G02C7/02
G02B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005886
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】300035870
【氏名又は名称】株式会社ニコン・エシロール
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】伊神 優香
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 将吾
【テーマコード(参考)】
2K009
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009CC24
(57)【要約】
【課題】透明性に優れ、耐衝撃にも優れる眼鏡レンズの提供。
【解決手段】眼鏡レンズ基材と、プライマー層Aと、ハードコート層とをこの順で有し、前記プライマー層Aが、前記眼鏡レンズ基材側から順に、第1プライマー層と第2プライマー層とから構成され、前記プライマー層Aの厚みが、4.0μm以上であり、前記第2プライマー層の厚みが、前記プライマー層Aの厚みに対して、0.17~0.67であり、前記第1プライマー層が、ポリウレタンを含む第1樹脂粒子を含む第1組成物を用いて形成され、前記第2プライマー層が、ウレタン(メタ)アクリレートを含む第2樹脂粒子を含む第2組成物を用いて形成される、眼鏡レンズ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズ基材と、プライマー層Aと、ハードコート層とをこの順で有し、
前記プライマー層Aが、前記眼鏡レンズ基材側から順に、第1プライマー層と第2プライマー層とから構成され、
前記プライマー層Aの厚みが、4.0μm以上であり、
前記第2プライマー層の厚みが、前記プライマー層Aの厚みに対して、0.17~0.67であり、
前記第1プライマー層が、ポリウレタンを含む第1樹脂粒子を含む第1組成物を用いて形成され、
前記第2プライマー層が、ウレタン(メタ)アクリレートを含む第2樹脂粒子を含む第2組成物を用いて形成される、眼鏡レンズ。
【請求項2】
前記第1樹脂粒子の平均粒子径が、10~500nmである、請求項1に記載の眼鏡レンズ。
【請求項3】
前記第2樹脂粒子の平均粒子径が、10~100nmである、請求項1又は2に記載の眼鏡レンズ。
【請求項4】
前記第1組成物が、更にカルボジイミド化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【請求項5】
前記第2組成物が、更に重合開始剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の眼鏡レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プライマー層と、ハードコート層とを有する光学物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-066740号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示は、眼鏡レンズ基材と、プライマー層Aと、ハードコート層とをこの順で有し、プライマー層Aが、眼鏡レンズ基材側から順に、第1プライマー層と第2プライマー層とから構成され、プライマー層Aの厚みが、4.0μm以上であり、第2プライマー層の厚みが、プライマー層Aの厚みに対して、0.17~0.67であり、第1プライマー層が、ポリウレタンを含む第1樹脂粒子を含む第1組成物を用いて形成され、第2プライマー層が、ウレタン(メタ)アクリレートを含む第2樹脂粒子を含む第2組成物を用いて形成される、眼鏡レンズに関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】眼鏡レンズの断面を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本開示の眼鏡レンズについて詳述する。
本開示の眼鏡レンズは、透明性に優れ、耐衝撃にも優れる。
【0007】
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタアクリレートの両方を包含する概念である。
本明細書において、固形分とは、溶媒以外の成分であり、その成分の性状が常温常圧(25℃、101.3kPa)で液状であっても、固形分として計算する。また、固形分は、硬化処理の過程で化学変化する成分でもよい。
本明細書においては、各層の厚みは平均厚みであり、その測定方法はそれぞれの層の任意の5点の厚みを測定し、それらを算術平均して求める方法である。
【0008】
〔眼鏡レンズ〕
眼鏡レンズは、プライマー層Aと、ハードコート層とをこの順で有する。
図1は、眼鏡レンズの一実施形態の断面図である。
図1に示す眼鏡レンズ10は、眼鏡レンズ基材12と、眼鏡レンズ基材12の両面上に配置されたプライマー層A14と、プライマー層A14上に配置されたハードコート層20とを有する。プライマー層A14は、第1プライマー層16と、第2プライマー層18とから構成される。図1においては、それぞれの層が互いに直接接するように配置されているが、他の層を介して配置されていてもよい。また、図1においては、眼鏡レンズ基材12の両面上に第1プライマー層16と、第2プライマー層18と、ハードコート層20とこの順で配置されているが、眼鏡レンズ基材12の片面のみに第1プライマー層16と、第2プライマー層18と、ハードコート層20とがこの順で配置されていてもよい。また、各層の厚みについては、図1に示す大小関係に限定されない。
【0009】
以下、眼鏡レンズに含まれ得る各部材について詳述する。
【0010】
<眼鏡レンズ基材>
眼鏡レンズ基材としては、例えば、有機系材料又は無機系材料から構成される眼鏡レンズ基材が挙げられ、無機系材料から構成される眼鏡レンズ基材(例えば、ガラス基材等)が好ましい。
眼鏡レンズ基材としては、例えば、凸面及び凹面共に光学的に仕上げ、所望の度数に合わせて成形されるフィニッシュレンズ、凸面のみが光学面(例えば、球面、回転対象非球面及び累進面等)として仕上げられているセミフィニッシュレンズ、及び、セミフィニッシュレンズの凹面が装用者の処方に合わせて加工研磨されたレンズが挙げられる。
有機系材料としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、チオウレタン系樹脂、アリル系樹脂、エピスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエ-テルサルホン系樹脂、ポリ4-メチルペンテン-1系樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート系樹脂(CR-39)及びポリ塩化ビニル系樹脂が挙げられる。
【0011】
眼鏡レンズ基材の厚さは、取り扱い性の点から、1~30mmの場合が多い。
眼鏡レンズ基材の屈折率は、特に制限されない。
眼鏡レンズ基材は、透光性を有していれば、不透明であってもよく、着色されていてもよい。
【0012】
<プライマー層A>
プライマー層Aは、眼鏡レンズ基材側から順に、第1プライマー層と第2プライマー層とから構成される。つまり、眼鏡レンズは、眼鏡レンズ基材と、第1プライマー層と、第2プライマー層と、ハードコート層とをこの順で有する。
【0013】
プライマー層Aの厚みは、4.0μm以上であり、5.0μm以上が好ましく、5.5μm以上がより好ましい。上限は、20.0μm以下が好ましく、10.0μm以下がより好ましく、8.0μm以下が更に好ましい。
上記プライマー層Aの厚みは、第1プライマー層及び第2プライマー層の合計厚みと同義である。
【0014】
(第1プライマー層)
第1プライマー層は、後述するポリウレタンを含む第1樹脂粒子を含む第1組成物を用いて形成される層である。第1組成物については、後述する。
第1プライマー層は、第1組成物から形成される層であれば、特に制限されない。第1プライマー層は、第1組成物に含まれ得る各種成分、その硬化物及び/又はその分解物を含むことが好ましい。
【0015】
第1プライマー層の厚みは、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、2.0μm以上が更に好ましい。上限は、10.0μm以下が好ましく、5.0μm以下がより好ましい。
【0016】
第1プライマー層の形成方法としては、例えば、第1組成物を眼鏡レンズ基材上に塗布する方法が挙げられる。具体的には、後述するハードコート層の形成方法を参照できる。
【0017】
(第2プライマー層)
第2プライマー層は、後述するウレタン(メタ)アクリレートを含む第2樹脂粒子を含む第2組成物を用いて形成される層である。第2組成物については、後述する。
第2プライマー層は、第2組成物から形成される層であれば、特に制限されない。第2プライマー層は、第2組成物に含まれ得る各種成分、その硬化物及び/又はその分解物を含むことが好ましい。
【0018】
第2プライマー層の厚みは、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、2.0μm以上が更に好ましい。上限は、10.0μm以下が好ましく、5.0μm以下がより好ましい。
第2プライマー層の厚みが、プライマー層Aの厚みに対して、0.17~0.67であり、0.20~0.50が好ましい。
【0019】
第2プライマー層の形成方法としては、例えば、第2組成物を第1プライマー層上に塗布して塗膜を形成し、塗膜に対して光照射処理等の硬化処理を実施する方法が挙げられる。具体的には、後述するハードコート層の形成方法を参照できる。
なかでも、第2組成物を用いて形成される塗膜と、後述するハードコート層形成用組成物を用いて形成される塗膜と、に対して同時に硬化処理を実施することが好ましい。言い換えると、硬化処理により、第2プライマー層及びハードコート層を同時に形成することが好ましい。
【0020】
<ハードコート層>
ハードコート層は、眼鏡レンズ基材上に配置される層であり、眼鏡レンズ基材に耐傷性を付与する層である。
ハードコート層は、ハードコート層形成用組成物により形成される層である。
【0021】
ハードコート層の厚みは、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましい。上限は、30μm以下が好ましい。
【0022】
ハードコート層の形成方法としては、例えば、ハードコート層形成用組成物を眼鏡レンズ基材上に塗布して塗膜を形成し、塗膜に対して光照射処理等の硬化処理を実施する方法が挙げられる。
なお、塗膜を形成した後、必要に応じて、塗膜から溶媒を除去するために、加熱処理等の乾燥処理を実施してもよい。
【0023】
ハードコート層形成用組成物を眼鏡レンズ基材上に塗布する方法は、公知の方法(例えば、ディッピングコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、インクジェットコーティング法及びフローコーティング法等)が挙げられる。
例えば、ディッピングコーティング法を用いる場合、ハードコート層形成用組成物に眼鏡レンズ基材を浸漬し、その後、眼鏡レンズ基材を引き上げて乾燥することにより、眼鏡レンズ基材上に所定の厚みの塗膜を形成できる。
眼鏡レンズ基材上に形成される塗膜の厚みは、適宜調整できる。
【0024】
光照射処理の条件は、使用される重合開始剤の種類によって適した条件が選択できる。
光照射の際の光の種類は、例えば、紫外線及び可視光線が挙げられる。光源としては、例えば、高圧水銀灯が挙げられる。
光照射の際の積算光量は、生産性及び塗膜の硬化性の点から、100~10000mJ/cmが好ましく、100~5000mJ/cmがより好ましい。
【0025】
<反射防止膜>
眼鏡レンズは、反射防止膜を有していてもよい。
反射防止膜の構造は、単層構造又は多層構造であってもよい。
反射防止膜としては、無機反射防止膜が好ましい。無機反射防止膜とは、無機化合物で構成される反射防止膜を意味する。
多層構造の反射防止膜としては、低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層した構造であってもよい。
高屈折率層を構成する材料としては、例えば、チタン、ジルコン、アルミニウム、ニオブ、タンタル及びランタン酸化物が挙げられる。低屈折率層を構成する材料としては、例えば、シリカ酸化物が挙げられる。
反射防止膜の製造方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法及びCVD法等の乾式法が挙げられる。
【0026】
〔第1組成物〕
第1組成物は、第1樹脂粒子を含み、第1プライマー層を形成できる組成物である。
以下、第1組成物が含み得る各種成分について詳述する。
【0027】
<第1樹脂粒子>
第1樹脂粒子は、ポリウレタンを含む。
ポリウレタンは、ウレタン結合を有する樹脂であり、例えば、イソシアネート基と水酸基とが反応することで得られる。
【0028】
第1樹脂粒子は、ラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選択される基を有していてもよい。ラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリレート基が挙げられる。カチオン重合性基としては、例えば、エポキシ基及びオキセタニル基等の脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基及びビニルオキシ基が挙げられる。
なかでも、耐衝撃性が向上できる点で、第1樹脂粒子は、ラジカル重合性基及びカチオン重合性基を有さないことが好ましい。
【0029】
第1樹脂粒子を含む分散液(第1組成物)としては、例えば、エバファノールHA170(日華化学社製)及びUW-1013D-C1(UBE社製)が挙げられる。
【0030】
第1樹脂粒子は、ポリウレタンを含んでいれば、更に他の樹脂を含んでいてもよい。
なかでも、第1樹脂粒子は、ポリウレタンのみからなることが好ましい。
【0031】
第1樹脂粒子の平均粒子径は、10nm~1μmが好ましく、10~500nmがより好ましく、20~100nmが更に好ましい。
上記平均粒子径は、例えば、後述する無機化合物の平均粒子径の測定方法で測定できる。
【0032】
第1樹脂粒子は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
第1樹脂粒子の含有量は、第1組成物の全固形分に対して、50~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましい。
ポリウレタンの含有量は、第1樹脂粒子の全質量に対して、30~100質量%が好ましく、50~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましい。
【0033】
<界面活性剤>
第1組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、例えば、シリコーンオイル等のシリコーン化合物が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、DOWSILシリーズ(Dow社製)が挙げられる。
界面活性剤は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
第1組成物が界面活性剤を含む場合、その含有量は、第1組成物の全固形分に対して、0.001~5質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0034】
<カルボジイミド化合物>
第1組成物は、更にカルボジイミド化合物を含むことが好ましい。
カルボジイミド化合物としては、例えば、カルボジライトSV-02(日清紡ケミカル社製)、カルボジライトV-04(日清紡ケミカル社製)及びカルボジライトV-02(日清紡ケミカル社製)が挙げられる。
カルボジイミド化合物は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
第1組成物がカルボジイミド化合物を含む場合、その含有量は、0.1~20質量%が好ましく、0.2~15質量%がより好ましく、1~10質量%が更に好ましい。
【0035】
<溶媒>
第1組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、例えば、水及び有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒及びスルホキシド系溶媒が挙げられる。
溶媒は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
第1組成物が溶媒を含む場合、その含有量は、第1組成物の全質量に対して、10.0~90.0質量%が好ましく、20.0~60.0質量%がより好ましい。
【0036】
<その他成分>
第1組成物は、上記各種成分以外に、その他成分を含んでいてもよい。
その他成分としては、例えば、後述する第2組成物又は後述するハードコート層形成用組成物が含み得る各種成分が挙げられる。
【0037】
〔第2組成物〕
第2組成物は、第2樹脂粒子を含み、第2プライマー層を形成できる組成物である。
以下、第2組成物が含み得る各種成分について詳述する。
【0038】
<第2樹脂粒子>
第2樹脂粒子は、ウレタン(メタ)アクリレートを含む。
ウレタン(メタ)アクリレートは、イソシアネート基と水酸基とが反応して形成されるウレタン結合と、(メタ)アクリレート基とを有する化合物である。
【0039】
第2樹脂粒子は、(メタ)アクリレート基を有する。
第2樹脂粒子は、(メタ)アクリレート基以外のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選択される基を更に有していてもよい。上記ラジカル重合性基及び上記カチオン重合性基としては、例えば、第1樹脂粒子が有し得る各基が挙げられる。
なかでも、第2樹脂粒子は、(メタ)アクリレート基以外のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選択される基を有さないことが好ましい。
【0040】
第2樹脂粒子を含む分散液(第2組成物)としては、例えば、ETERNACOLL UW-9102(UBE社製)及びアクリットWBR-8519D(大成ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0041】
第2樹脂粒子は、ウレタン(メタ)アクリレートを含んでいれば、更に他の樹脂を含んでいてもよい。
なかでも、第2樹脂粒子は、ウレタン(メタ)アクリレートのみからなることが好ましい。
【0042】
第2樹脂粒子の平均粒子径は、3nm~1μmが好ましく、10~100nmがより好ましく、5~100nmが更に好ましい。
上記平均粒子径は、例えば、後述する無機化合物の平均粒子径の測定方法で測定できる。
【0043】
第2樹脂粒子は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
第2樹脂粒子の含有量は、第2組成物の全固形分に対して、1~99.99質量%が好ましく、5~99.99質量%がより好ましく、10~99.99質量%が更に好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、第2樹脂粒子の全質量に対して、30~100質量%が好ましく、50~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましい。
【0044】
<重合開始剤>
第2組成物は、更に重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤及び熱重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、Omnirad 127、184、907、651、1700、1800、819、369、2959及びTPO(IGM Resins B.V.社製);DAROCUR1173(Sigma-Aldrich社製);エザキュアーKIP150及びTZT(日本シイベルヘグナー社製);カヤキュアBMS及びカヤキュアDMBI(日本化薬社製);Tinuvin400、Tinuvin405、Tinuvin460、Tinuvin477、Tinuvin479及びTinuvin1577(BASF社製);が挙げられる。
【0045】
重合開始剤は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
第2組成物が重合開始剤を含む場合、その含有量は、第2組成物の全固形分に対して、0.001~5質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。
【0046】
<界面活性剤>
第2組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤は、第1組成物が含み得る界面活性剤が挙げられ、好適態様も同じである。
【0047】
<溶媒>
第2組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒及びその好適態様(例えば、含有量及び具体例等)は、第1組成物が含み得る溶媒と同じである。
【0048】
<その他成分>
第2組成物は、上記各種成分以外に、他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、第1組成物又はハードコート層形成用組成物が含み得る各種成分が挙げられる。
【0049】
〔ハードコート層形成用組成物〕
ハードコート層形成用組成物は、ハードコート層を形成できる組成物である。
以下、ハードコート層形成用組成物が含み得る各種成分について詳述する。
【0050】
<無機化合物>
ハードコート層形成用組成物は、無機化合物を含んでいてもよい。
無機化合物は、無機酸化物及びシルセスキオキサンからなる群から選択される無機化合物である。なお、本明細書において、シルセスキオキサンは、無機酸化物に含めない。
【0051】
無機酸化物は、金属酸化物粒子が好ましい。
金属酸化物粒子としては、例えば、Ti、Zr、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W及びInからなる群から選択される1以上の金属の酸化物粒子、並び、それらの複合金属酸化物粒子が挙げられる。複合金属酸化物粒子とは、2種以上の金属(金属原子)を含む酸化物粒子である。
無機酸化物粒子は、SiO(酸化ケイ素)、Al(酸化アルミニウム)、SnO(酸化スズ)、ZrO(酸化ジルコニウム)及びTiO(酸化チタン)からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、SiO及びZrOからなる群から選択される1種以上を含むことがより好ましく、SiOを含むことが更に好ましい。
無機酸化物粒子は、市販品を用いてもよい。市販品の無機酸化物粒子としては、例えば、SiO、Al、SnO、ZrO、TiO及びそれらの複合酸化物粒子からなる群から選択される1種以上の無機酸化物粒子が、水又は有機溶媒中に分散したゾルが挙げられる。
【0052】
シルセスキオキサンとは、アルコキシシラン、クロロシラン及びシラノール等の3官能性シラン化合物を加水分解することで得られる式(Q)で表される基本骨格を有するシラン化合物である。
シルセスキオキサンの構造としては、例えば、ランダム構造等の不規則の形態、ラダー構造、かご型(完全縮合ケージ型)構造、及び、不完全かご型構造(かご型構造の部分開裂構造体であって、かご型構造からケイ素原子のうちの一部が欠けた構造及びかご型構造の一部のケイ素-酸素結合が切断された構造のもの)が挙げられる。
【0053】
-SiO3/2 (Q)
式(Q)中、Rは、1価の有機基を表す。
【0054】
シルセスキオキサンとしては、例えば、SQシリーズ(例えば、AC-SQシリーズ及びMAC-SQシリーズ等、東亞合成社製)が挙げられる。
【0055】
無機化合物は、表面処理されていてもよい。
表面処理としては、例えば、各種官能基の導入及び公知の表面修飾剤を用いる処理が挙げられる。上記無機化合物の表面に導入される官能基としては、例えば、重合性基が挙げられ、(メタ)アクリレート基が好ましい。無機化合物が表面上に(メタ)アクリレート基を有する場合、第2組成物に含まれる第2樹脂粒子と反応しやすい点で好ましい。
【0056】
無機化合物の平均粒子径は、0.5~200nmが好ましく、1~50nmがより好ましい。
上記の平均粒子径を測定する方法としては、例えば、走査電子顕微鏡を用いて任意の100個の無機化合物の各粒径を測定してその算術平均する方法及び動的光散乱法を用いて下記条件で測定する方法が挙げられる。
測定装置:ゼータ電位・粒径測定システム ELS-Z2(大塚電子社製)
測定セル:粒径セルユニット(散乱角度165°)
測定温度:25℃
粒径解析法:Contin法
測定の際には、測定対象の無機化合物、又は、測定対象の無機化合物を含む分散液を、必要に応じて希釈溶媒で希釈する。希釈溶媒としては、例えば、MEK(メチルエチルケトン)を使用し、MEKを使用することで無機化合物の凝集等の問題が生じる場合、その他適切な希釈溶媒を使用する。
また、本明細書において、特段の断りがない限り、平均粒子径は、体積分布基準での平均粒子径を意味する。
【0057】
無機化合物は、1種単独又は2種以上で用いてもよい。
ハードコート層形成用組成物が無機化合物を含む場合、その含有量は、ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、10.0~99.0質量%が好ましく、50.0~95.0質量%がより好ましく、80.0~95.0質量が更に好ましい。
【0058】
<その他成分>
ハードコート層形成用組成物は、上記各種成分以外に、その他成分を含んでいてもよい。
その他成分としては、例えば、第1組成物又は第2組成物が含み得る各種成分(例えば、界面活性剤等)、増感剤(例えば、アントラキュアーシリーズ(川崎化成工業社製)等)、紫外線吸収剤(例えば、トリアジン化合物及びベンゾトリアゾール化合物等)、劣化防止剤、塗膜調整剤、光安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、充填剤及び内部離型剤が挙げられる。
【0059】
<各組成物の製造方法>
各組成物(第1組成物、第2組成物及びハードコート層形成用組成物)の製造方法としては、例えば、各組成物が含み得る各種成分を一括で混合してもよいし、分割して段階的に各種成分を混合してもよい。
【実施例0060】
以下、本開示の眼鏡レンズに関して実施例及び比較例により更に詳しく説明するが、これらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0061】
〔実施例1〕
<第1組成物の調製>
界面活性剤として、10質量%DOWSIL 501WAdditive水溶液(0.16質量部(B))と、10質量%DOWSIL L-7604水溶液(0.16質量部(C))と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(0.40質量部(D))と、エバファノールHA170(39.3質量部(E))と、を混合し、固形分濃度36.3質量%(R1)の第1組成物を調製した。
【0062】
-10質量%DOWSIL 501WAdditive水溶液(B)-
純水(9質量部)と、界面活性剤のDOWSIL 501WAdditive(Dow社製)(1質量部)とを混合して得た。
【0063】
-10質量%DOWSIL L-7604水溶液(C)-
純水(9質量部)と、界面活性剤のDOWSIL L-7604(Dow社製)(1質量部)と、を混合して得た。
【0064】
<第2組成物の調製>
純水(9.1質量部(A))と、10質量%DOWSIL 501WAdditive水溶液(0.16質量部(B))と、10質量%DOWSIL L-7604水溶液(0.16質量部(C))と、ETERNACOLL UW-9102(31.0質量部(I))と、Omnirad2959(0.10質量部(J))と、を混合し、固形分濃度24.0質量%(R2)の第2組成物を調製した。
【0065】
<ハードコート層形成用組成物の調製>
アクリル基被覆SiOナノ粒子分散液(MEK-AC-4130Y)(日産化学社製、固形分濃度31質量%)(129.0質量部)と、ACSQ-TA100(東亞合成社製)(58.5質量部)と、Omnirad369E(IGM Rseins B.V.社製)(1.0質量部)と、Omnirad127(IGM Rseins B.V.社製)(0.5質量部)と、L-7001(DOWSIL L-7001、Dow社製)(0.08質量部)と、を混合し、固形分濃度52.9質量%のハードコート層形成用組成物を調製した。
【0066】
<眼鏡レンズの作製>
まず、以下の手順で第1プライマー層を形成した。
眼鏡レンズ基材としては、屈折率1.60のレンズ(ニコン・エシロール社製、ニコンライト3AS生地 S0.00D)、又は、屈折率1.74のレンズ(ニコン・エシロール社製、S-1.50)を用いた。具体的には、透明性(ヘーズ)の評価を行うための眼鏡レンズを作製する際には眼鏡レンズ基材として上記屈折率1.60のレンズを使用し、耐衝撃性の評価を行うための眼鏡レンズを作製する際には眼鏡レンズ基材として上記屈折率1.74のレンズを使用した。
上記眼鏡レンズ基材の一方の表面上に、第1組成物(1.0mL)を垂らして、スピンコートした。上記スピンコートでは、第1組成物が塗布された眼鏡レンズ基材を下記表に示すスピン回転条件(X欄の条件)で回転させた。次に、得られた基材を90℃で下記表に示す焼成時間(Y欄の条件)で加熱し、第1プライマー層付き眼鏡レンズ基材を作製した。
更に、第2組成物を用いて、下記表に示すスピン回転条件(X欄の条件)及び焼成時間(Y欄の条件)に変更した以外は、第1組成物と同様の手順で、上記第1プライマー層上に、第2塗膜を形成し、第1プライマー層及び第2塗膜付き眼鏡レンズ基材を作製した。
また、第1プライマー層及び第2塗膜付き眼鏡レンズ基材における他方の眼鏡レンズ基材の表面上にも、上記と同様の手順で、第1プライマー層及び第2塗膜を形成して、積層体を得た。つまり、積層体は、第2塗膜、第1プライマー層、眼鏡レンズ基材、第1プライマー層及び第2塗膜をこの順に有する。
【0067】
次いで、以下の手順でハードコート層及び第2プライマー層を形成した。
得られた積層体の一方の第2塗膜上に、ハードコート層形成用組成物(2.0mL)垂らして、スピンコートした。スピンコートでは、ハードコート層形成用組成物が塗布された積層体を500rpmで10秒間、2000rpmで0.5秒間、最後に1秒間かけて0rpmとなるようにこの順で回転させた。得られた積層体を90℃で20分間加熱した。
その後、光源として高圧水銀灯(100mW/cm)を用いて、ハードコート層形成用組成物を用いて形成した塗膜及び第2塗膜に対して紫外線照射(積算光量:0.8J/cm)した後に、100℃で10分間焼成し、第2プライマー層およびハードコート層を形成した。
また、上記と同様の手順で、他方の第2塗膜上にもハードコート層及び第2プライマー層を形成して、実施例1の眼鏡レンズを得た。
【0068】
耐衝撃性の評価を行うための眼鏡レンズを作製する際には、得られた実施例1の眼鏡レンズにおける両方のハードコート層の表面上に、更に、真空蒸着法(電子ビーム法)により多層の無機反射防止層(厚み400nm、成分:SiО及びZrО)と有機防汚層(厚み20nm、成分:フッ素系有機化合物)とをこの順で形成した。
【0069】
<評価>
(透明性(ヘーズ))
透明性の評価は、ヘーズメーター(NDH7000II、日本電色工業社製)の受光器側に眼鏡レンズを置き、3回計測して計測値(JIS K7136に準拠)の平均値を算出し、これをヘーズ値として以下の評価基準で透明性を評価した。
「A」:ヘーズ値が、0.35%以下
「B」:ヘーズ値が、0.35%超
【0070】
(耐衝撃性)
眼鏡レンズを、FDA Regulationの21CFR 801.410に準じて、ドロップボール試験機のレンズ支持台に設置し、眼鏡レンズ凸面の幾何中心に対し、高さ1270mmから鋼製ボール(16.2g、外径15.9mm)を落下させた。落下位置はレンズ幾何中心から直径15.9mmの円内とした。
鋼製ボール落下後、眼鏡レンズにおける傷の有無及び傷の形状等を目視確認し、以下評価基準で耐衝撃性を評価した。
「A」:クラックがないか、又は、鋼製ボールが眼鏡レンズを貫通はしなかったが、放射線状のクラック等が発生した。
「B」:鋼製ボールが眼鏡レンズを貫通した。
【0071】
〔実施例2~6及び比較例1~5〕
実施例2~6及び比較例1~5は、下記表に示す各種成分の含有量、スピンコート条件及び焼成時間を変更した以外は、実施例1と同様の手順で各眼鏡レンズを作製した。
【0072】
表中、各種成分の値の単位は、質量部である。
第1組成物の固形分濃度及び第2組成物の固形分濃度の単位は、質量%である。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
A:純水
B:10質量%DOWSIL 501WAdditive水溶液
C:10質量%DOWSIL L-7604水溶液
D:プロピレングリコールモノメチルエーテル
E:エバファノールHA170(ポリウレタン粒子を含む分散液、日華化学社製、固形分濃度37質量%)
F:UW-1013D-C1(ポリウレタン粒子を含む分散液、UBE社製、固形分濃度34質量%)
G:カルボジライトV-02(日清紡ケミカル社製、固形分濃度39.9質量%)
I:ETERNACOLL UW-9102(ウレタン(メタ)アクリレート粒子を含む分散液、UBE社製、固形分濃度31質量%)
J:Omnirad2959(IGM Rseins B.V.社製)
L:アクリットWBR-8519D(ウレタン(メタ)アクリレート粒子を含む分散液、大成ファインケミカル社製、固形分濃度29質量%)
M:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(富士フィルム和光純薬社製)
N:メチルエチルケトン(富士フィルム和光純薬社製)
O:NKオリゴ UA-122P(ウレタン(メタ)アクリレート、新中村化学社製)、粒子状ではないため、第1樹脂粒子及び第2樹脂粒子のいずれにも該当しない。
P:Omnirad127(IGM Resins B.V.社製)
Q:10質量%DOWSIL L-7001水溶液
【0076】
-10質量%DOWSIL L-7001水溶液(Q)-
純水(9質量部)と、界面活性剤のDOWSIL L-7001(Dow社製)(1質量部)と、を混合して得た。
【0077】
「第1プライマー層作製条件」及び「第2プライマー層作製条件」の「Spin(rpm)」欄は、スピンコートの際のスピン回転条件を示す。
「X1」である場合、基材を700rpmで10秒間、2000rpmで0.5秒間、最後に1秒間かけて0rpmとなるようにこの順で回転させた。
「X2」である場合、基材を1000rpmで10秒間、2000rpmで0.5秒間、最後に1秒間かけて0rpmとなるようにこの順で回転させた。
「X3」である場合、基材を1200rpmで10秒間、2000rpmで0.5秒間、最後に1秒間かけて0rpmとなるようにこの順で回転させた。
「X4」である場合、基材を2000rpmで10秒間、2000rpmで0.5秒間、最後に1秒間かけて0rpmとなるようにこの順で回転させた。
「X5」である場合、基材を500rpmで10秒間、2000rpmで0.5秒間、最後に1秒間かけて0rpmとなるようにこの順で回転させた。
「X6」である場合、基材を1500rpmで10秒間、2000rpmで0.5秒間、最後に1秒間かけて0rpmとなるようにこの順で回転させた。
「X7」である場合、基材を800rpmで10秒間、2000rpmで0.5秒間、最後に1秒間かけて0rpmとなるようにこの順で回転させた。
「X8」である場合、基材を600rpmで10秒間、2000rpmで0.5秒間、最後に1秒間かけて0rpmとなるようにこの順で回転させた。
【0078】
表1に示すように、本開示の膜は、所望の効果が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0079】
10 眼鏡レンズ
12 眼鏡レンズ基材
14 プライマー層A
16 第1プライマー層
18 第2プライマー層
20 ハードコート層
図1