(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101768
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】液晶材料、積層体、光学部材、表示装置および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 19/38 20060101AFI20240723BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240723BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240723BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240723BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20240723BHJP
C09K 19/54 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C09K19/38
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
G02F1/13363
C09K19/54 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005893
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】大山 毅
(72)【発明者】
【氏名】横手 恵紘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】宇田川 和男
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
3K107
4H027
【Fターム(参考)】
2H149AA07
2H149AA18
2H149AB26
2H149BA02
2H149DA02
2H149DA16
2H149DA27
2H149DB02
2H149DB03
2H149DB15
2H149EA03
2H149EA06
2H149EA16
2H149EA19
2H149FA02Y
2H149FA22Y
2H149FA58Y
2H149FD03
2H149FD05
2H149FD06
2H149FD25
2H149FD43
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA30X
2H291FA30Z
2H291FA82Z
2H291FA85Z
2H291FB05
2H291FC33
2H291FD07
2H291HA15
2H291PA07
2H291PA62
2H291PA82
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC45
3K107EE26
3K107FF06
3K107FF09
3K107FF14
4H027BA14
4H027BB11
4H027BD24
4H027BE05
(57)【要約】
【課題】配向膜を用いなくても液晶モノマーが垂直配向可能な液晶材料等を提供する。
【解決手段】液晶材料は、重合性液晶化合物を形成するための液晶材料であって、液晶モノマーと、アクリルアミドモノマーとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性液晶化合物を形成するための液晶材料であって、
液晶モノマーと、
アクリルアミドモノマーとを含む
液晶材料。
【請求項2】
さらに、シランカップリング剤を含む請求項1に記載の液晶材料。
【請求項3】
前記シランカップリング剤は、アミノ基を有する請求項2に記載の液晶材料。
【請求項4】
前記液晶モノマーは、分子の両端に反応基を有する第1の液晶モノマーと、分子の一端に反応基を有し他端にシアノ基を有する第2の液晶モノマーとを、少なくとも1種類ずつ含む請求項1に記載の液晶材料。
【請求項5】
前記液晶モノマーは、前記第2の液晶モノマーと比べて前記第1の液晶モノマーを多く含む請求項4に記載の液晶材料。
【請求項6】
前記液晶材料の全量を100質量部とした場合に、アミノ基を有する材料の含有量が1質量部以上30質量部以下である請求項1乃至3のいずれかに記載の液晶材料。
【請求項7】
支持層と、
前記支持層上に積層され、液晶モノマーと、アクリルアミドモノマーとを含む重合性液晶化合物からなる液晶層と
を備える積層体。
【請求項8】
前記液晶層は、前記液晶モノマーと前記アクリルアミドモノマーとを含む液晶材料を前記支持層上に塗布し重合することにより形成されており、
前記支持層は、水に対する接触角が30°以上60°以下である請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記液晶層は、前記液晶モノマーが垂直配向したポジティブCプレートであり、当該液晶層の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_C(λ)とした場合に、-50nm<Rth_C(550)<-150nmを満たす請求項7に記載の積層体。
【請求項10】
前記支持層は、当該支持層の面内方向における2方向の屈折率をnx2およびny2とし、当該支持層の厚さ方向の屈折率をnz2とした場合に、nx2≧ny2>nz2を満たし、
前記液晶層は、前記液晶モノマーが垂直配向した状態で架橋したポジティブCプレートであり、前記支持層上に直接積層されている請求項7に記載の積層体。
【請求項11】
前記支持層は、当該支持層の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe_A(λ)とした場合に、10nm<Re_A(550)<200nmを満たす請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
前記支持層は、当該支持層の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe_A(λ)とした場合に、Re_A(450)<Re_A(550)<Re_A(650)を満たす請求項10に記載の積層体。
【請求項13】
前記支持層は、樹脂として、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シクロオレフィンおよびポリカーボネートの少なくとも1つを含む請求項10に記載の積層体。
【請求項14】
前記支持層は、波長分散特性の異なる複数種類の前記樹脂を含む請求項13に記載の積層体。
【請求項15】
前記支持層は、樹脂と、粒子とを含む請求項10に記載の積層体。
【請求項16】
前記粒子は、スメクタイトを含む請求項15に記載の積層体。
【請求項17】
前記粒子は、前記支持層の面内方向における2方向の屈折率をnx3およびny3とし、当該支持層の厚さ方向の屈折率をnz3とした場合に、nx3≧ny3>nz3を満たす請求項15に記載の積層体。
【請求項18】
前記粒子は、前記支持層の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_P(λ)とした場合に、Rth_P(450)>Rth_P(550)>Rth_P(650)を満たす請求項15に記載の積層体。
【請求項19】
前記支持層は、当該支持層の面内方向における位相差の波長分散特性と、当該支持層の厚さ方向における位相差の波長分散特性とが異なっている請求項10に記載の積層体。
【請求項20】
前記支持層は、当該支持層の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe_A(λ)、当該支持層の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_A(λ)とした場合に、Re_A(450)/Re_A(550)<Rth_A(450)/Rth_A(550)を満たす請求項19に記載の積層体。
【請求項21】
光を偏光する偏光部材と、
前記偏光部材に積層された位相差フィルムとを備え、
前記位相差フィルムは、請求項7乃至20のいずれかに記載された積層体からなる光学部材。
【請求項22】
前記積層体における前記支持層は、当該支持層の面内方向における2方向の屈折率をnx2およびny2とし、当該支持層の厚さ方向の屈折率をnz2とした場合に、nx2≧ny2>nz2を満たし、
前記偏光部材と前記支持層と前記液晶層とがこの順で積層される場合、当該偏光部材の吸収軸と当該支持層の遅相軸とが直交して配置され、
前記偏光部材と前記液晶層と前記支持層とがこの順で積層される場合、当該偏光部材の吸収軸と当該支持層の遅相軸とが平行に配置される請求項21に記載の光学部材。
【請求項23】
光の透過状態を制御する液晶セルと、
前記液晶セルに積層された請求項21に記載の光学部材と
を備える表示装置。
【請求項24】
有機EL発光素子を含む有機EL層と、
前記有機EL層上に積層された請求項21に記載の光学部材と
を備える表示装置。
【請求項25】
前記偏光部材の吸収軸と前記支持層の遅相軸とがなす角度が40°以上50°以下である請求項24に記載の表示装置。
【請求項26】
支持層上に、液晶モノマーと、アクリルアミドモノマーとを含む液晶材料を塗布する工程と、
前記液晶材料を重合し、前記液晶モノマーが垂直配向した重合性液晶化合物からなる液晶層を形成する工程と
を含む積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶材料、積層体、光学部材、表示装置および積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許文献1には、透明支持体と、透明支持体上に液晶性化合物を含む液晶性組成物から形成された光学異方性層とを有する光学補償フィルムが開示されている。この光学補償フィルムの光学異方性層では、重合性基を有する液晶性化合物が垂直配向している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶モノマーが垂直配向している重合性液晶化合物からなる液晶層を位相差フィルム等に用いる場合がある。液晶層において液晶モノマーを垂直配向させる方法としては、例えば、液晶モノマーを垂直配向させるための配向膜を用いる方法が挙げられる。この方法では、液晶層を積層する支持層上に配向膜を形成し、この配向膜上に液晶モノマーを含む液晶材料を塗布する。しかしながら、支持層上に配向膜を形成する場合、液晶層と支持層との密着性が低下したり、液晶層を有する位相差フィルム等の製造工程が複雑になったりする場合がある。
本発明は、配向膜を用いなくても液晶モノマーが垂直配向可能な液晶材料等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液晶材料は、重合性液晶化合物を形成するための液晶材料であって、液晶モノマーと、アクリルアミドモノマーとを含む。
ここで、さらに、シランカップリング剤を含むようにすることができる。
また、シランカップリング剤は、アミノ基を有するようにすることができる。
また、液晶モノマーは、分子の両端に反応基を有する第1の液晶モノマーと、分子の一端に反応基を有し他端にシアノ基を有する第2の液晶モノマーとを、少なくとも1種類ずつ含むようにすることができる。
また、液晶モノマーは、第2の液晶モノマーと比べて第1の液晶モノマーを多く含むようにすることができる。
また、液晶材料の全量を100質量部とした場合に、アミノ基を有する材料の含有量が1質量部以上30質量部以下であるようにすることができる。
【0006】
また、本発明の積層体は、支持層と、支持層上に積層され、液晶モノマーと、アクリルアミドモノマーとを含む重合性液晶化合物からなる液晶層とを備える。
ここで、液晶層は、液晶モノマーとアクリルアミドモノマーとを含む液晶材料を支持層上に塗布し重合することにより形成されており、支持層は、水に対する接触角が30°以上60°以下であるようにすることができる。
また、液晶層は、液晶モノマーが垂直配向したポジティブCプレートであり、液晶層の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_C(λ)とした場合に、-50nm<Rth_C(550)<-150nmを満たすようにすることができる。
また、支持層は、支持層の面内方向における2方向の屈折率をnx2およびny2とし、支持層の厚さ方向の屈折率をnz2とした場合に、nx2≧ny2>nz2を満たす。そして、液晶層は、液晶モノマーが垂直配向した状態で架橋したポジティブCプレートであり、支持層上に直接積層されているようにすることができる。
また、支持層は、支持層の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe_A(λ)とした場合に、10nm<Re_A(550)<200nmを満たすようにすることができる。
また、支持層は、支持層の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe_A(λ)とした場合に、Re_A(450)<Re_A(550)<Re_A(650)を満たすようにすることができる。
また、支持層は、樹脂として、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シクロオレフィンおよびポリカーボネートの少なくとも1つを含むようにすることができる。
また、支持層は、波長分散特性の異なる複数種類の樹脂を含むようにすることができる。
また、支持層は、樹脂と、粒子とを含むようにすることができる。
また、粒子は、スメクタイトを含むようにすることができる。
また、粒子は、支持層の面内方向における2方向の屈折率をnx3およびny3とし、支持層の厚さ方向の屈折率をnz3とした場合に、nx3≧ny3>nz3を満たすようにすることができる。
また、粒子は、支持層の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_P(λ)とした場合に、Rth_P(450)>Rth_P(550)>Rth_P(650)を満たすようにすることができる。
また、支持層は、支持層の面内方向における位相差の波長分散特性と、支持層の厚さ方向における位相差の波長分散特性とが異なっているようにすることができる。
また、支持層は、支持層の面内方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRe_A(λ)、支持層の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_A(λ)とした場合に、Re_A(450)/Re_A(550)<Rth_A(450)/Rth_A(550)を満たすようにすることができる。
【0007】
また、本発明の光学部材は、光を偏光する偏光部材と、偏光部材に積層された位相差フィルムとを備える。そして、積層体は、支持層と、支持層上に積層され、液晶モノマーと、アクリルアミドモノマーとを含む重合性液晶化合物からなる液晶層とを備える。
ここで、積層体の支持層は、支持層の面内方向における2方向の屈折率をnx2およびny2とし、支持層の厚さ方向の屈折率をnz2とした場合に、nx2≧ny2>nz2を満たす。さらに、偏光部材と支持層と液晶層とがこの順で積層される場合、偏光部材の吸収軸と支持層の遅相軸とが直交して配置されるようにすることができる。また、偏光部材と液晶層と支持層とがこの順で積層される場合、偏光部材の吸収軸と支持層の遅相軸とが平行に配置されるようにすることができる。
【0008】
また、本発明の表示装置は、光の透過状態を制御する液晶セルと、液晶セルに積層された光学部材とを含む。光学部材は、光を偏光する偏光部材と、偏光部材に積層された積層体からなる位相差フィルムとを備える。そして、積層体は、支持層と、支持層上に積層され、液晶モノマーと、アクリルアミドモノマーとを含む重合性液晶化合物からなる液晶層とを備える。
また、本発明の表示装置は、有機EL発光素子を含む有機EL層と、有機EL層上に積層された光学部材とを含む。光学部材は、光を偏光する偏光部材と、偏光部材に積層された積層体からなる位相差フィルムとを備える。そして、積層体は、支持層と、支持層上に積層され、液晶モノマーと、アクリルアミドモノマーとを含む重合性液晶化合物からなる液晶層とを備える。
ここで、偏光部材の吸収軸と支持層の遅相軸とがなす角度が40°以上50°以下であるようにすることができる。
また、本発明の積層体の製造方法は、支持層上に、液晶モノマーと、アクリルアミドモノマーとを含む液晶材料を塗布する工程と、液晶材料を重合し、液晶モノマーが垂直配向した重合性液晶化合物からなる液晶層を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配向膜を用いなくても液晶モノマーが垂直配向可能な液晶材料等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態が適用される位相差フィルムを説明する図である。
【
図2】位相差フィルムの液晶層の配向状態を説明する図である。
【
図4】本実施形態の位相差フィルムの製造方法の一例を説明する図である。
【
図5】本実施形態の位相差フィルムが適用される液晶表示装置を説明する図である。
【
図6】本実施形態の位相差フィルムが適用される有機EL表示装置2を説明する図である。
【
図7】(a)~(b)は、液晶表示装置の輝度の測定結果を示す図である。
【
図8】(a)~(b)は、液晶表示装置の輝度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。さらに、以下で使用する図面は、本発明の実施形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0012】
<位相差フィルム10の説明>
図1は、本実施形態が適用される位相差フィルム10を説明する図であって、位相差フィルム10の断面構造の一例を示した図である。
図2は、位相差フィルム10の後述する液晶層11の配向状態を説明する図である。
詳細については後述するが、本実施形態の位相差フィルム10は、液晶パネルや有機ELパネル等の表示装置に貼り付けられて使用される。位相差フィルム10を用いることにより、表示装置における視野角特性の向上や外光反射の抑制等の効果が得られる。
【0013】
位相差フィルム10は、積層体の一例であって、重合性液晶化合物により構成される液晶層11と、液晶層11が積層される支持層12とを備えている。本実施形態の位相差フィルム10では、支持層12上に、配向膜等の他の層を介すことなく直接、液晶層11が積層されている。
【0014】
(液晶層11)
液晶層11は、液晶モノマーを含む重合性液晶化合物により構成される。本実施形態の液晶層11は、所謂ポジティブCプレートであり、
図2に示すように、液晶モノマーが垂直配向(ホメオトロピック配向)している。付言すると、液晶層11では、液晶モノマーが重合することにより、配向方向が垂直方向を向くように、液晶モノマーの配向状態が固定されている。
本実施形態の液晶層11は、液晶モノマーと、アクリルアミドモノマーとを含む。
【0015】
液晶層11は、液晶モノマーとして、分子内に反応基を有する液晶モノマーを含む。反応基とは、例えば、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等の活性放射線の照射により重合反応する基である。液晶モノマーが有する反応基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、スチリル基等が挙げられる。これらの反応基は、置換基を有していてもよい。
液晶モノマーが分子内に反応基を有する場合、反応基によって液晶モノマーが重合することで、液晶層11において垂直配向している液晶モノマーの配向状態が固定されやすくなる。これにより、液晶層11の配向状態が経時により変化しにくくなり、位相差フィルム10の信頼性が向上する。
【0016】
液晶層11は、分子内に反応基を有する液晶モノマーとして、分子の両端に反応基を有する第1の液晶モノマーと、分子の一端に反応基を有し、分子の他端にシアノ基を有する第2の液晶モノマーとの双方を含むことが好ましい。分子の両端に反応基を有する第1の液晶モノマーは、1種類の液晶モノマーを単独で用いてもよく、複数種類の液晶モノマーを組み合わせて用いてもよい。同様に、分子の一端に反応基を有し、分子の他端にシアノ基を有する第2の液晶モノマーは、1種類の液晶モノマーを単独で用いてもよく、複数種類の液晶モノマーを組み合わせて用いてもよい。
【0017】
分子の両端に反応基を有する第1の液晶モノマーとしては、例えば、以下の式(1)~(9)の液晶モノマーを挙げることができる。
【0018】
【0019】
また、分子の一端に反応基を有し、分子の他端にシアノ基を有する第2の液晶モノマーとしては、例えば、以下の式(10)~(13)の液晶物モノマーを挙げることができる。
【0020】
【0021】
液晶層11は、分子の一端に反応基を有し、分子の他端にシアノ基を有する第2の液晶モノマーと比べて分子の両端に反応基を有する第1の液晶モノマーを多く含むことが好ましい。なお、液晶層11が第2の液晶モノマーと比べて第1の液晶モノマーを多く含むとは、液晶層11に含まれる第2の液晶モノマーおよび第2の液晶モノマーに由来する構造の数と比べて、第1の液晶モノマーおよび第1の液晶モノマーに由来する構造の数が多いことを意味する。
液晶層11は、第2の液晶モノマーと比べて第1の液晶モノマーを多く含むことで、液晶モノマー同士がより重合しやすくなる。これにより、液晶層11において、垂直配向している液晶モノマーの配向状態が固定されやすくなり、位相差フィルム10の信頼性がより向上する。
【0022】
また、液晶層11は、上述した第1の液晶モノマーおよび第2の液晶モノマーに加えて、分子の一端に反応基を有するその他の液晶モノマーを含んでもよい。
その他の液晶モノマーとしては、例えば、以下の式(14)~(18)の液晶モノマーを挙げることができる。
【0023】
【0024】
液晶層11における液晶モノマーの含有量は、液晶層11を構成する重合性液晶化合物全体を100質量部とした場合に、50質量部以上95質量部以下であることが好ましく、70質量部以上90質量部以下であることがより好ましい。
液晶モノマーの含有量が50質量部未満である場合、液晶層11に含まれる液晶モノマーの量が少ないため、液晶層11に入射した光を偏光することが難しくなる場合がある。
液晶モノマーの含有量が95質量部を超える場合、液晶材料の配向性が悪くなり、垂直配向しにくくなる傾向にある。
【0025】
また、液晶層11は、以下の式(18)で示すアクリルアミドモノマーを含む。
【0026】
【0027】
本実施形態の液晶層11は、アクリルアミドモノマーを含むことで、アクリルアミドモノマーと液晶モノマーとが架橋し、垂直配向している液晶モノマーの配向状態が固定されやすくなる。これにより、液晶層11と支持層12との密着性が向上し、液晶層11の配向状態が経時により変化しにくくなり、位相差フィルム10の信頼性が向上する。
また、液晶層11がアクリルアミドモノマーを含むことで、例えば、支持層12上に配向膜を設けない場合であっても、液晶層11において液晶モノマーが垂直配向しやすくなる。これにより、位相差フィルム10の製造において、配向膜を形成する工程が不要となり、位相差フィルム10の製造を簡易に行うことができる。
【0028】
液晶層11におけるアクリルアミドモノマーの含有量は、液晶層11を構成する重合性液晶化合物全体を100質量部とした場合に、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
アクリルアミドモノマーの含有量が1質量部未満である場合、アクリルアミドモノマーが液晶モノマーと架橋しにくくなり、液晶モノマーが垂直配向した液晶層11の配向特性が経時によって変化しやすくなる場合がある。このため、位相差フィルムの信頼性が低下しやすい。また、液晶層11と支持層12との密着性も低下する。
アクリルアミドモノマーの含有量が30質量部を超える場合、液晶層11に含まれる液晶モノマーの含有量が相対的に少なくなるため、液晶層11に入射した光を偏光することが難しくなる場合がある。
【0029】
また、液晶層11は、液晶モノマーおよびアクリルアミドモノマーに加えて、シランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤とは、ケイ素を含む化合物であって、無機材料と反応する加水分解基と、有機材料と反応する有機官能基とを有する化合物である。
液晶層11がシランカップリング剤を含むことで、液晶層11において液晶モノマーがより垂直配向しやすくなる。
【0030】
シランカップリング剤としては、例えば、有機官能基としてアミノ基を有するアミノ系のシランカップリング剤、有機官能基として(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤、有機官能基としてメルカプト基を有するメルカプト系のシランカップリング剤、有機官能基としてエポキシ基を有するエポキシ系のシランカップリング剤、有機官能基としてスルフィドを有するスルフィド系のシランカップリング剤等を用いることができる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基を意味する。シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の液晶層11では、これらのシランカップリング剤の中でも、有機官能基としてアミノ基を有するアミノ系のシランカップリング剤を用いることが好ましい。液晶層11がアミノ系のシランカップリング剤を含むことで、他のシランカップリング剤を用いる場合と比べて、液晶層11において液晶モノマーがより垂直配向しやすくなる。
【0031】
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0032】
(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0033】
メルカプト系のシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィドが挙げられる。
【0034】
液晶層11がシランカップリング剤を含む場合、液晶層11におけるシランカップリング剤の含有量は、液晶層11を構成する重合性液晶化合物全体を100質量部とした場合に、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、2質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0035】
また、本実施形態の液晶層11は、液晶層11を構成する重合性液晶化合物全体を100質量部とした場合に、アミノ基を有する材料の含有量が、1質量部以上35質量部以下であることが好ましく、5質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
ここで、液晶層11に含まれるアミノ基を有する材料とは、アクリルアミドモノマー、アミノ系のシランカップリング剤等が挙げられる。
液晶層11に含まれるアミノ基を有する材料の含有量を上記範囲とすることで、例えば、液晶層11のもととなる液晶材料に対する支持層12の接触角が高い場合であっても、液晶モノマーが垂直配向しやすくなる。
【0036】
また、本実施形態の液晶層11は、上述した液晶モノマー、アクリルアミドモノマー、シランカップリング剤の他に、必要に応じて他の添加剤を含んでもよい。液晶層11が含む他の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、光重合開始剤、レベリング剤等が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン、2,2’-ジヒドロキシ-2,2’-ジメチル-1,1’-[メチレンビス(4,1-フェニレン)]ビス(プロパン-1-オン)等が挙げられる。また、光重合開始剤の市販品としては、BASFジャパン株式会社製のイルガキュアOXE04、イルガキュアOXE02、イルガキュアOXE01等が挙げられる。
【0037】
レベリング剤としては、フッ素系のレベリング剤、アクリル系のレベリング剤、シリコン系のレベリング剤を用いることができる。
フッ素系のレベリング剤の市販品としては、DIC株式会社製のメガファックR-08、R-30、R-90、F-410、F-411、F-114、F-510、F-551、RS-56、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-76-NS、RS-78、RS-90、DS-21、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンS-381、S-382、S-383、S-393、SC-101、SC-105、KH-40、SA-100等が挙げられる。
アクリル系のレベリング剤の市販品としては、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK-350、BYK-352、BYK-353、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358N等が挙げられる。
シリコン系のレベリング剤の市販品としては、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK-300、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-313、BYK-315N、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、信越化学工業株式会社製のKF-945、KF-6015、KF-6020等が挙げられる。
【0038】
液晶層11の厚さは、好ましくは3μm以下であり、より好ましくは2μm以下である。一方、液晶層11の厚さは、好ましくは0.3μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上である。
【0039】
液晶層11は、上述したように、ポジティブCプレートであり、液晶層11の面内方向における2方向の屈折率をnx1およびny1とし、液晶層11の厚さ方向の屈折率をnz1とした場合に、nz1>nx1=ny1を満たす。ここで、nx1は、液晶層11の面内の一方の方向の屈折率を意味し、ny1は、液晶層11の面内においてnx1の上記一方の方向と直交する方向の屈折率を意味する。また、nz1は、液晶層11の厚み方向の屈折率を意味する。なお、液晶層11において、屈折率nx1=ny1の関係については、厳密に成り立つ必要はなく、ほぼ同じであればよい。
【0040】
また、液晶層11は、液晶層11の厚さ方向における光の波長(λ)に対する位相差をRth_C(λ)とした場合に、-50nm<Rth_C(550)<-150nmを満たすことが好ましい。
液晶層11の厚さは、液晶層11の屈折率と位相差Rth_Cとの関係から計算される。そして、液晶層11の厚さをdとした場合、液晶層11として必要な位相差Rth_Cを実現するため、Rth_C=((nx1+ny1)/2-nz1)×dの関係から、液晶層11の必要な厚さdが計算される。通常の液晶材料を用いる場合、液晶層11の厚さdは、0.5μm以上、2μm以下である。
【0041】
(支持層12)
続いて、支持層12の構成について説明する。
本実施形態の支持層12は、支持層12の面内方向における2方向の屈折率をnx2およびny2とし、支持層12の厚さ方向の屈折率をnz2とした場合に、nx2≧ny2>nz2を満たす。ここで、nx2は、支持層12の遅相軸方向の屈折率を意味し、ny2は、支持層12の遅相軸と直交する進相軸方向の屈折率を意味し、nz2は、支持層12の厚み方向の屈折率を意味する。
付言すると、支持層12は、屈折率がnx2=ny2>nz2を満たす所謂ポジティブAプレート、または屈折率がnx2>ny2>nz2を満たす所謂ネガティブBプレートである。なお、支持層12がポジティブAプレートである場合の屈折率nx2=ny2の関係については、厳密に成り立つ必要はなく、ほぼ同じであればよい。
【0042】
また、支持層12は、支持層12の面内方向における光の波長(λ)に対する位相差をRe_A(λ)とした場合に、面内方向における位相差Re_A(λ)の波長分散特性が、フラット分散から逆波長分散特性であることが好ましい。逆波長分散特性とは、光の波長が大きくなるに従い位相差Re_A(λ)の値が大きくなる特性を意味する。すなわち、支持層12は、面内方向における位相差Re_A(λ)が、Re_A(450)<Re_A(550)<Re_A(650)を満たすことが好ましい。
さらに、支持層12は、面内方向における位相差Re_A(λ)が、Re_A(450)/Re_A(550)<0.9を満たすことが好ましい。
【0043】
支持層12の面内方向における位相差Re_A(λ)の波長分散特性が逆波長分散特性であることで、本実施形態の位相差フィルム10を後述する液晶表示装置1(
図4参照)等の表示装置に適用した場合に、表示装置を斜め方向から見た場合の光の抜けを少なくすることができる。これにより、本実施形態の位相差フィルム10を備える表示装置では、斜め方向から見た場合のコントラスト比が向上する。
【0044】
また、支持層12は、支持層12の面内方向における光の波長(λ)に対する位相差をRe_A(λ)とした場合に、10nm<Re_A(550)<200nmを満たすことが好ましい。
【0045】
支持層12は、例えば、樹脂を延伸したフィルムにより構成することができる。支持層12は、樹脂として、シクロオレフィンポリマー(COP:cyclo-olefin polymer)、トリアセチルセルロース(TAC:triacetylcellulose)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP:cellulose acetate propionate)、ジアセチルセルロース(diacetylcellulose)、アセチルセルロース(acetylcellulose)、ポリカーボネート(polycarbonate)の少なくとも1つを含む。支持層12は、これらの樹脂を単独で含んでもよいが、フィルム状にした際の面内方向における位相差の波長分散特性が異なる複数の樹脂を含むことが好ましい。
また、支持層12は、これらの樹脂の中でも、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースのいずれかを含むことが好ましく、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースとを含むことがより好ましい。
【0046】
支持層12は、波長分散特性の異なる複数の樹脂の含有比率を調整することで、支持層12の面内方向における位相差Re_A(λ)の波長分散特性を好ましい状態に制御することができる。より具体的には、支持層12は、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースとの含有比率を調整することで、支持層12の面内方向における位相差Re_A(λ)の波長分散特性を好ましい状態に制御することが可能となる。
支持層12におけるトリアセチルセルロースとジアセチルセルロースとの含有比率は、重量比で、トリアセチルセルロース:ジアセチルセルロース=30:70~60:40の範囲であることが好ましい。
【0047】
なお、支持層12は、樹脂の他に、樹脂の原料である未反応のモノマー等を含んでいてもよい。さらに、支持層12は、分散材、消泡剤、レベリング剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。
【0048】
また、支持層12は、液晶層11が積層される表面の、水に対する接触角が、30°以上60°以下であることが好ましい。水に対する支持層12の接触角が60°を超える場合、支持層12に液晶材料を塗布して液晶層11を形成する場合に、液晶層11に含まれる液晶モノマーが垂直配向しにくくなる場合がある。一方、水に対する支持層12の接触角が30°未満である場合、液晶モノマーの垂直配向に影響はないものの、接触角が小さい支持層12を実現するための表面処理が煩雑になりやすい。
【0049】
また、支持層12の厚さは、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。一方、支持層12の厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。
【0050】
ここで、支持層12は、上述した樹脂からなるフィルムに限定されず、例えば、樹脂の他に粒子を含むフィルムにより構成されてもよい。続いて、支持層12の他の形態について説明する。
図3は、支持層12の他の形態を説明する図であって、支持層12の断面の一例を示した図である。
図3に示す支持層12は、樹脂からなる樹脂部121と、粒子122とを有する。また、支持層12は、上述した例と同様に、樹脂部121および粒子122の他に、樹脂部121を構成する樹脂の原料である未反応のモノマーや、分散材、消泡剤、レベリング剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。
樹脂部121を構成する樹脂は、支持層12の主成分でもある。よって、支持層12は、樹脂部121中に粒子122が分散しているとも捉えられる。ただし、粒子122は、樹脂部121全体に分散していなくてもよく、部分的に凝集していてもよい。また、ある程度凝集した粒子122が、樹脂部121中に分布していてもよい。
【0051】
支持層12が、樹脂部121と粒子122とを有することで、支持層12の厚さ方向における位相差Rth_A(λ)の波長分散特性を制御することが可能となる。付言すると、支持層12では、例えば樹脂部121と粒子122との混合比率や、粒子122の屈折率等を調整することにより、支持層12の厚さ方向における位相差Rth_A(λ)の波長分散特性を制御することが可能となる。
【0052】
本実施形態の支持層12は、面内方向における位相差Re_A(λ)と、厚さ方向における位相差Rth_A(λ)とで波長分散特性が異なっている。付言すると、例えば支持層12の面内方向における位相差Re_A(λ)が逆波長分散特性である場合、支持層12の厚さ方向における位相差Rth_A(λ)は、波長が増加するに従い値が減少する正波長分散特性であるか、若しくは、波長が増加するに従い値がほとんど変化しないフラットな波長分散特性である。
【0053】
さらに、本実施形態の支持層12は、面内方向における位相差Re_A(λ)および厚さ方向における位相差Rth_A(λ)が、Re_A(450)/Re_A(550)<Rth_A(450)/Rth_A(550)を満たすことが好ましい。
【0054】
樹脂部121を構成する樹脂としては、上述した例と同様に、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、ジアセチルセルロース、アセチルセルロース、ポリカーボネートの少なくとも1つを用いることができる。これらの中でも、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースのいずれかを用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
粒子122は、微粒子であり、さらに、ナノ粒子であることが好ましい。粒子122の粒径は、特に限定されないが、例えば、1nm以上400nm以下の範囲とすることができる。
【0056】
粒子122は、支持層12の面内方向における2方向の屈折率をnx3およびny3とし、支持層12の厚さ方向の屈折率をnz3とした場合に、nx3≧ny3>nz3を満たすことが好ましい。ここで、nx3は、支持層12の遅相軸方向における粒子122の屈折率を意味し、ny3は、支持層12の遅相軸と直交する進相軸方向における粒子122の屈折率を意味し、nz3は、支持層12の厚み方向における粒子122の屈折率を意味する。
また、粒子122は、支持層12の厚さ方向における光の波長λ(nm)に対する位相差をRth_P(λ)とした場合に、Rth_P(450)>Rth_P(550)>Rth_P(650)を満たすことが好ましい。
【0057】
粒子122としては、例えば、スメクタイトを用いることができる。また、スメクタイト以外に使用できるものとしては、例えば、スメクタイト族の鉱物が挙げられる。具体的には、ヘクトライト、モンモリロナイト、ベンナイトが挙げられる。また、カオリナイト族の鉱物であるカオリナイト、アンチゴナイト、マイカ族の鉱物である雲母が挙げられる。
このうち、本実施形態では、粒子122として、人工合成により得られた、有機スメクタイトを特に好適に用いることができる。有機スメクタイトとしては、例えば、ジメチルステアリルアンモニウムヘクライトを挙げられる。また、有機スメクタイトとしては、珪酸リチウム・ナトリウム・マグネシウム・トリオクチルメチルアンモニウムが挙げられる。さらに、有機スメクタイトとしては、珪酸リチウム・ナトリウム・マグネシウム塩化ポリオキシエチレンヤシアルキルメチルアンモニウムが挙げられる。
【0058】
支持層12における樹脂部121と粒子122との混合比率は、重量比で、樹脂:粒子=95:5~70:30の範囲であることが好ましい。
このような範囲とすることで、支持層12の厚さ方向における位相差Rth_A(λ)の波長分散特性の制御をしやすくなる。
【0059】
<位相差フィルム10の製造方法>
続いて、位相差フィルム10の製造方法について説明する。
位相差フィルム10を製造する場合、まず、液晶層11を構成する重合性液晶化合物のもととなる液晶材料を用意する。
【0060】
液晶材料は、上述した液晶モノマーおよびアクリルアミドモノマーを含む。また、液晶材料は、必要に応じて、上述した各種の添加剤を含んでもよい。液晶材料は、添加剤として、シランカップリング剤を含むことが好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤を含むことがより好ましい。
【0061】
また、本実施形態では、液晶材料を100質量部とした場合に、アミノ基を有する材料の含有量が、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。上述したように、アミノ基を有する材料とは、アクリルアミドモノマー、アミノ系のシランカップリング剤等が挙げられる。
液晶材料におけるアミノ基を有する材料の含有量を上記範囲とすることで、例えば、液晶材料に対する接触角が高い支持層12を用いる場合であっても、液晶モノマーが垂直配向しやすくなる。
【0062】
液晶材料は、溶媒に分散されて使用される。
溶媒としては、液晶材料に含まれる液晶モノマーおよびアクリルアミドモノマーを均一に分散することができれば特に限定されず、公知の溶媒を用いることができる。溶媒としては、例えば、アセトン、トルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン、ヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等が挙げられる。
【0063】
続いて、液晶材料を、支持層12上に塗布する。
図4は、本実施形態の位相差フィルム10(
図1参照)の製造方法の一例を説明する図であって、位相差フィルム10の製造に用いる塗工装置500を示した図である。
図4は、塗工装置500を用いて、フィルム状の支持層12上に、液晶層11の材料である液晶材料を塗布している状態を示している。
【0064】
塗工装置500は、ロール状に巻き回された支持層12を巻き戻しながら供給する供給部510と、支持層12上に液晶層11が形成されて得られた位相差フィルム10を巻き取りながら回収する回収部520とを備えている。また、塗工装置500は、支持層12を裏面側から支持するとともに、支持層12を矢印A方向に搬送する複数の搬送ロール530を備えている。また、塗工装置500は、搬送ロール530により搬送される支持層12の表面に対して、液晶層11の材料である液晶材料を塗布する塗布部540を備えている。また、塗工装置500は、支持層12上に塗布された液晶材料を加熱する加熱部550を備えている。また、塗工装置500は、加熱部550を通過した液晶材料に活性放射線の一例である紫外線を照射する照射部560を備えている。
【0065】
塗工装置500では、供給部510から供給され搬送ロール530により搬送される支持層12の表面に対して、塗布部540により液晶材料を塗布する。
図4に示す塗布部540は、タンク541に保持される液晶材料を、スロットダイ542を用いて支持層12上に塗布する所謂スロットダイコータである。
なお、塗布部540により液晶材料を塗布する方法については特に限定されるものではなく、ダイコート法の他、スピンコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の公知方法を適用することができる。
【0066】
続いて、支持層12上に塗布された液晶材料を加熱し、乾燥させる。
具体的には、支持層12上に塗布された液晶材料を加熱部550により加熱する。これにより、液晶材料に含まれる溶媒が蒸発し、液晶材料が乾燥する。また、液晶材料を加熱して乾燥させることにより、液晶材料に含まれる液晶モノマーが垂直配向する。
なお、本実施形態では、上述したように、液晶材料にアクリルアミドモノマーが含まれている。これにより、液晶材料を、例えば配向膜等を介さずに直接支持層12上に塗布した場合であっても、アクリルアミドモノマーの作用により、液晶モノマーを垂直配向させることが可能となっている。
【0067】
加熱部550による液晶材料の加熱温度は、例えば、40℃以上100℃以下とすることができる。また、加熱部550による液晶材料の加熱時間は、例えば、30秒以上300秒以下とすることができる。
なお、加熱部550による液晶材料の加熱温度および加熱時間は、液晶材料に含まれる液晶モノマーの種類等によって調整することが好ましい。
【0068】
続いて、支持層12上に塗布された液晶材料に含まれる液晶モノマーを重合させ、重合性液晶化合物からなる液晶層11を得る。
具体的には、支持層12上に塗布された液晶材料に対し、照射部560により、活性放射線(この例では紫外線)を照射する。これにより、液晶材料に含まれる液晶モノマーが重合するとともに、液晶モノマーが重合することで、垂直配向した液晶モノマーの配向特性が固定される。以上により、支持層12上に、重合性液晶化合物からなる液晶層11が形成され、液晶層11と支持層12とが積層された本実施形態の位相差フィルム10が得られる。
照射部560により液晶材料に照射する紫外線の波長は、液晶材料に含まれる液晶モノマーの種類等によっても異なるが、例えば、300nm以上400nm以下とすることができる。
【0069】
その後、得られた位相差フィルム10は、回収部520によって、液晶層11側が内側となるようにロール状に巻き取られながら回収される。
【0070】
<液晶表示装置1の説明>
本実施形態の位相差フィルム10は、例えば、画像を表示する表示装置の一例として、液晶表示装置1に適用することができる。
図5は、本実施形態の位相差フィルム10が適用される液晶表示装置1を説明する図であって、液晶表示装置1の断面構造の一例を示した図である。
【0071】
液晶表示装置1は、IPS(In-Plane-Switching)方式により画像を表示する。液晶表示装置1は、バックライト20と、液晶パネル30とを備えている。バックライト20は、液晶表示装置1を視認するユーザから見て、液晶パネル30の背面側に設けられている。そして、液晶表示装置1は、バックライト20から出射された光を液晶パネル30により変調させることで、画像を表示する。
【0072】
バックライト20は、液晶パネル30に光を照射する。バックライト20は、エッジ型であってもよく、直下型であってもよい。バックライト20としては、例えば、冷陰極蛍光ランプや白色LED(Light Emitting Diode)等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
液晶パネル30は、バックライト20側から、第1直線偏光板40と、液晶セル50と、位相差フィルム10と、第2直線偏光板60とが順に積層されている。また、液晶パネル30では、液晶層11が液晶セル50に対向し、支持層12が第2直線偏光板60に対向するように、位相差フィルム10が積層されている。本実施形態では、第2直線偏光板60が偏光部材の一例であり、位相差フィルム10と第2直線偏光板60との積層構造が、光学部材の一例である。
【0074】
第1直線偏光板40は、偏光子41と、偏光子41の一方の面(バックライト20側の面)および他方の面(液晶セル50側の面)に積層された保護層42、43とを備えている。
また、第2直線偏光板60は、偏光子61と、偏光子61の位相差フィルム10とは反対側の面に積層された保護層62とを備えている。なお、偏光子61の位相差フィルム10側の面には保護層は設けられていない。本実施形態の液晶パネル30では、位相差フィルム10が偏光子61の保護層を兼ねている。
【0075】
第1直線偏光板40の偏光子41と、第2直線偏光板60の偏光子61とは、吸収軸方向が互いに直交するように配置されている。
偏光子41および偏光子61としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA:poly-vinyl alcohol)からなるフィルムに、ヨウ素化合物分子を染み込ませ、一軸延伸した樹脂フィルム等を用いることができる。
【0076】
第1直線偏光板40の保護層42、43および第2直線偏光板60の保護層62としては、例えば、樹脂からなるフィルムを用いることができる。樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
保護層43については、IPS方式の液晶表示装置1の光学補償のため、面内方向の位相差、および厚み方向の位相差が0または0に近いものが好ましい。
【0077】
液晶セル50は、上述したように、IPS方式による液晶セルであり、例えば、ガラス等からなる2枚の基板の間に液晶が挟み込まれたセル構造となっている。そして、液晶セル50では、不図示の電源により電力が供給され、液晶が液晶セル50の面内方向に沿って水平に回転することにより、光の透過状態が制御される。
このIPS方式による液晶セルに使われる液晶については、誘電率異方性が分子長軸方向にある所謂ポジ型液晶、誘電率異方性が分子短軸方向にある所謂ネガ型液晶のどちらを適用してもよい。また、電極の構造についても、IPS(In-Plane-Switching)方式とともに、FFS(Fringe-Field Switching)方式と呼ばれる、所謂縞電界方式であってもよく、電界が無い状態、またはある電界がかかっている状態で、セル水平方向に1軸に配向している液晶配向のものに適用可能である。
【0078】
ここで、本実施形態の液晶表示装置1では、偏光部材の一例である第2直線偏光板60と、支持層12と、液晶層11とがこの順に積層されている。そして、位相差フィルム10における支持層12の遅速軸と、位相差フィルム10に積層される第2直線偏光板60における偏光子61の吸収軸とが、直交して配置される。
【0079】
液晶表示装置1は、液晶層11と支持層12とを有する位相差フィルム10を備えることで、液晶セル50を黒表示とした場合に、液晶表示装置1を斜め方向から見た場合の光の抜けを少なくすることができる。これにより、本実施形態の位相差フィルム10を備える液晶表示装置1では、斜め方向から見た場合のコントラスト比が向上する。
【0080】
なお、
図5に示す液晶表示装置1では、位相差フィルム10が液晶セル50に対してバックライト20とは反対側に積層されているが、これに限られない。位相差フィルム10は、液晶セル50に対してバックライト20側に積層されていてもよい。
また、
図5に示す液晶表示装置1では、位相差フィルム10が、第2直線偏光板60(偏光子61)側に支持層12、液晶セル50側に液晶層11となるように配置されているが、これに限られない。第2直線偏光板60側に液晶層11、液晶セル側50に支持層12となるように、位相差フィルム10を配置してもよい。付言すると、偏光部材の一例である第2直線偏光板60と、液晶層11と、支持層12とがこの順に積層されてもよい。この場合、第2直線偏光板60における偏光子61の吸収軸と、支持層12の遅相軸とが、平行に配置される。
【0081】
<有機EL表示装置2の構成>
本実施形態の位相差フィルム10は、上述した液晶表示装置1の他、発光型の表示装置の一例である有機EL表示装置2に適用することができる。
図6は、本実施形態の位相差フィルム10が適用される有機EL表示装置2を説明する図であって、有機EL表示装置2の断面構造の一例を示した図である。
【0082】
有機EL表示装置2は、有機EL発光素子を含む有機ELディスプレイ70と、有機ELディスプレイ70の表面に積層された位相差フィルム10と、位相差フィルム10の表面に積層された直線偏光板80とを備えている。また、有機EL表示装置2では、液晶層11が有機ELディスプレイに対向し、支持層12が直線偏光板80に対向するように、位相差フィルム10が積層されている。本実施形態では、直線偏光板80が偏光部材の一例であり、位相差フィルム10と直線偏光板80との積層構造が、光学部材の一例である。直線偏光板80は、上述した液晶表示装置1における第2直線偏光板60と同様に、偏光子81と保護層82とが積層された構造を有する。
有機EL表示装置2では、不図示の電源により電力が供給されること、有機ELディスプレイ70が発光し、画像が表示される。
【0083】
本実施形態の有機EL表示装置2では、位相差フィルム10における支持層12の遅相軸と、位相差フィルム10に積層される直線偏光板80における偏光子81の吸収軸とがなす角度が、40°以上50°以下であることが好ましく、45°であることがより好ましい。
支持層12の遅相軸と偏光子81の吸収軸とがなす角度が上記関係を有することで、位相差フィルム10と直線偏光板80との積層構造が、円偏光板となる。これにより、有機EL表示装置2に入射した外光が位相差フィルム10と直線偏光板80との積層構造によってカットされ、有機EL表示装置2において外光の反射を抑えることが可能となる。付言すると、位相差フィルム10と直線偏光板80との積層構造が、有機EL表示装置2の反射防止フィルムとしてはたらく。
【実施例0084】
続いて、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
[実施例1]
(液晶材料の調製)
下記の式(I)の液晶モノマー7質量部、式(II)の液晶モノマー13質量部、アクリルアミドモノマー2質量部、光重合開始剤(GM Resins B.V.社製の商品名:Omnirad907)0.5質量部からなる液晶材料を、溶媒であるプロピレングリコールメチルエーテルアセタート78質量部に溶解し液晶材料を含む塗工液を調製した。
【0086】
【0087】
(支持層12の準備)
支持層12として、厚さ30μmのCOPからなるフィルムを用意した。
【0088】
(位相差フィルム10の作製)
液晶材料を含む塗工液を、スロットダイコータを用いて支持層12上に塗布した後、80℃で3分間加熱乾燥させることにより、液晶モノマーを垂直配向させた。その後、波長365nmの紫外線を30秒間照射して液晶モノマーを重合させ、重合性液晶化合物からなる厚さ1.2μmの液晶層11を形成し、位相差フィルム10を得た。
得られた位相差フィルム10の厚さ方向における位相差Rth(550)は、-140nmであった。
【0089】
[比較例1]
アクリルアミドモノマーを含まず、シランカップリング剤として3-アミノプロピルトリメトキシシランを2質量部含む液晶材料を用いた以外は実施例1と同様にして、位相差フィルム10を得た。
得られた位相差フィルム10の厚さ方向における位相差Rth(550)は、-135nmであった。
【0090】
[比較例2]
アクリルアミドモノマーを含まない液晶材料を用いた以外は実施例1と同様にして、位相差フィルム10を得た。
得られた位相差フィルム10では、液晶モノマーが垂直配向せず、厚さ方向における位相差Rth(550)を測定することができなかった。
【0091】
[評価]
(密着性の評価)
実施例1および比較例1の位相差フィルム10について、密着性の評価を、クロスカット試験により行った。
まず、位相差フィルム10の液晶層11側の面に、カッターナイフを用いて、素地に対する11本の切り傷を付け、100個の碁盤目を作った。切り傷を付ける際はカッターガイドを使用し、切り傷の間隔は1mmとした。
その後、碁盤目部分にセロテープ(登録商標)を強く圧着させ、セロテープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、碁盤目の状態を目視で観察し評価した。
【0092】
上記試験の結果、実施例1の位相差フィルム10では、100個の碁盤目状の膜がすべて残っており、液晶層11と支持層12との密着性が高いことが確認された。
一方、比較例1の位相差フィルム10では、100個の碁盤目状の膜が全箇所で剥がれており、液晶層11と支持層12との密着性が不十分であることが確認された。
【0093】
(信頼性の評価)
実施例1および比較例1の位相差フィルム10について、信頼性の評価を、以下の方法により行った。
位相差フィルム10を、85℃85%の恒温恒湿槽に入れて200時間保持した。そして、試験前後(恒温恒湿槽に入れる前後)の位相差フィルム10の厚さ方向の位相差Rthを比較した。
【0094】
実施例1の位相差フィルム10では、試験前後の厚さ方向の位相差Rthの変化量が2%以下であり、ほぼ変化がなかった。これにより、実施例1の位相差フィルム10は、経時により品質が変化しにくく、信頼性が高いことが確認された。
これに対し、比較例1の位相差フィルム10では、試験後の厚さ方向の位相差Rthが、試験前と比べて15%低下しており、信頼性が低いことが確認された。
【0095】
続いて、液晶層11におけるアミノ基を有する材料の含有割合が異なる位相差フィルム10を作製し、評価を行った。
[実施例2]
上記の式(I)の液晶モノマー7質量部、式(II)の液晶モノマー13質量部、アクリルアミドモノマー0.2質量部、アミノ基を有するシランカップリング剤である3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.2質量部、光重合開始剤(GM Resins B.V.社製の商品名:Omnirad907)0.5質量部からなる液晶材料を、溶媒であるプロピレングリコールメチルエーテルアセタート79.1質量部に溶解し、液晶材料を含む塗工液を調製した。液晶材料の全量に対して、アミノ基を有する材料の含有割合は、2質量%であった。
調製した塗工液を用い、実施例1と同様にして、位相差フィルム10を得た。
【0096】
[実施例3]
上記の式(I)の液晶モノマー6質量部、式(II)の液晶モノマー14質量部、アクリルアミドモノマー1質量部、アミノ基を有するシランカップリング剤である3-アミノプロピルトリメトキシシラン1質量部、光重合開始剤(GM Resins B.V.社製の商品名:Omnirad907)0.5質量部を含む液晶材料を、溶媒であるプロピレングリコールメチルエーテルアセタート77.5質量部に溶解し、液晶材料を含む塗工液を調製した。液晶材料の全量に対して、アミノ基を有する材料の含有割合は、9質量%であった。
調製した塗工液を用い、実施例1と同様にして、位相差フィルム10を得た。
【0097】
[実施例4]
上記の式(I)の液晶モノマー5質量部、式(II)の液晶モノマー15質量部、アクリルアミドモノマー2質量部、アミノ基を有するシランカップリング剤であるN-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン1質量部、光重合開始剤(GM Resins B.V.社製の商品名:Omnirad907)0.5質量部を含む液晶材料を、溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテル76.5質量部に溶解し、液晶材料を含む塗工液を調製した。液晶材料の全量に対して、アミノ基を有する材料の含有割合は、13質量%であった。
調製した塗工液を用い、実施例1と同様にして、位相差フィルム10を得た。
【0098】
[実施例5]
上記の式(I)の液晶モノマー5質量部、式(II)の液晶モノマー15質量部、アクリルアミドモノマー3.5質量部、アミノ基を有するシランカップリング剤であるN-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン3質量部、光重合開始剤(GM Resins B.V.社製の商品名:Omnirad907)0.5質量部を含む液晶材料を、溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテル73.0質量部に溶解し、液晶材料を含む塗工液を調製した。液晶材料の全量に対して、アミノ基を有する材料の含有割合は、24質量%であった。
調製した塗工液を用い、実施例1と同様にして、位相差フィルム10を得た。
【0099】
[評価]
(配向性の評価)
実施例2~実施例5で得られた位相差フィルム10を観察し、液晶層11における液晶モノマーの配向状態を評価した。また、実施例2~実施例5で得られた位相差フィルム10の位相差フィルム10の厚さ方向における位相差Rth(550)を測定した。
表1に、実施例2~実施例5で得られた位相フィルム10の厚さ方向における位相差Rth(550)の測定結果、および目視評価の結果を示す。
【0100】
【0101】
実施例2~実施例5のいずれの位相差フィルム10においても、液晶モノマーが垂直配向していた。したがって、アミノ基を有する材料の含有割合が1質量%以上30質量%以下である液晶材料を用いて液晶層11を作製することで、液晶層11において液晶モノマーが垂直配向することが確認された。
【0102】
また、実施例2~実施例5で得られた位相差フィルム10を互いに比較すると、アミノ基を有する材料の含有割合が2質量%である液晶材料を用いた実施例2の位相差フィルム10では、実施例3および実施例4の位相差フィルム10と比較して、液晶層11が白濁していた。また、アミノ基を有する材料の含有割合が24質量%である液晶材料を用いた実施例5の位相差フィルム10では、実施例3および実施例4の位相差フィルム10と比較して、液晶モノマーの配向性が低く、厚さ方向の位相差Rthの値が小さかった。これにより、アミノ基を有する材料の含有割合が5質量%以上20質量%以下である液晶材料を用いて液晶層11を作製することがより好ましいことが確認された。
【0103】
続いて、面内方向における位相差Re_A(λ)の波長分散特性が、逆波長分散特性である支持層12を用いた位相差フィルム10を作製し、評価を行った。
[実施例6]
(支持層12の作製)
トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースとを、トリアセチルセルロース:ジアセチルセルロース=70:30の比率で含む樹脂を用い、厚さ70μmのフィルムからなる支持層12を作製した。
【0104】
(位相差フィルム10の作製)
実施例1と同様にして、液晶材料を含む塗工液を作製した。
液晶材料を含む塗工液を、スロットダイコータを用いて支持層12上に塗布した後、80℃で3分間加熱乾燥させることにより、液晶モノマーを垂直配向させた。その後、波長365nmの紫外線を30秒間照射して液晶モノマーを重合させ、重合性液晶化合物からなる厚さ1.2μmの液晶層11を形成し、位相差フィルム10を得た。
【0105】
[評価]
(コントラスト比の評価)
実施例6で得られた位相差フィルム10をIPS方式の液晶表示装置1に適用し、コントラスト比の評価を行った。
まず、厚さ20μmのポリビニルアルコール系の偏光子61および厚さ30μmのトリアセチルセルロースからなる保護層62からなる第2直線偏光板60を用意した。そして、第2直線偏光板60を、偏光子61が位相差フィルム10側となるように、位相差フィルム10の支持体12側に積層し、位相差フィルム10と第2直線偏光板60とからなる光学部材を得た。そして、位相差フィルム10と第2直線偏光板60とからなる光学部材を、IPS方式のモニター用液晶セル50の表面に、位相差フィルム10が液晶セル50側となるように粘着剤を使って貼り付け、
図5に示した積層構造を有する液晶表示装置1とした。
【0106】
そして、液晶セル50を白表示とした場合と、液晶セル50を黒表示とした場合とのそれぞれについて、方位角45°で、仰角を-80°から80°の範囲で変化させて、液晶表示装置1の輝度を測定した。なお、仰角とは、液晶表示装置1(位相差フィルム10)の表面に垂直な方向(法線方向)に対する傾斜角度を意味する。付言すると、仰角0°は液晶表示装置1の法線方向である。また、仰角80°とは液晶表示装置1の法線方向から方位角45°方向に80°傾いた方向であり、仰角-80°とは液晶表示装置1の法線方向から方位角45°方向とは反対方向(方位角225°方向)に80°傾いた方向である。
【0107】
また、比較例3として、位相差フィルム10および第2直線偏光板60を貼り付けていない液晶表示装置1についても同様にして、液晶セル50を白表示とした場合と、液晶セル50を黒表示とした場合とのそれぞれについて、液晶表示装置1の輝度を測定した。
以下では、液晶セル50を白表示とした場合の液晶表示装置1の輝度を、白表示輝度と表記し、液晶セル50を黒表示とした場合の液晶表示装置1の輝度を、黒表示輝度と表記する。
【0108】
図7(a)~(b)に、液晶表示装置1の輝度の測定結果を示す。
図7(a)は、白表示輝度の測定結果を示しており、
図7(b)は、黒表示輝度の測定結果を示している。
また、表1に、実施例6および比較例3について、仰角60°における白表示輝度および黒表示輝度の測定結果、および仰角60°における白表示輝度と黒表示輝度との比(コントラスト比CR)を示す。なお、コントラスト比CRは、(白表示輝度)/(黒表示輝度)により算出される値である。
【0109】
【0110】
図7(b)に示すように、位相差フィルム10を有しない比較例3の液晶表示装置1では、仰角の絶対値が大きくなるに従い黒表示輝度が大きくなっており、液晶表示装置1を斜め方向から見た場合に、バックライト20から出射された光の光抜けが生じている。これに対し、本実施形態の位相差フィルム10を適用した実施例6の液晶表示装置1では、仰角の絶対値が大きくなった場合でも黒表示輝度の上昇が抑えられている。したがって、本実施形態の位相差フィルム10を適用することで、液晶表示装置1を斜め方向から見た場合の光抜けが低減されていることが確認された。
【0111】
また、仰角60°におけるコントラスト比については、比較例3のコントラスト比と比べて実施例6のコントラスト比が6.6倍大きくなっていた。したがって、本実施形態の位相差フィルム10を適用することで、液晶表示装置1のコントラスト性が向上することが確認された。
【0112】
[実施例7]
支持層12として延伸したCOPフィルム(日本ZEON社製の商品名:ZF-35)を用いた以外は実施例3と同様にして、位相差フィルム10を得た。
そして、得られた位相差フィルム10を、実施例6と同様に液晶表示装置1に適用し、コントラスト比の評価を行った。具体的には、実施例6と同様に、第2直線偏板60を、偏光子61が位相差フィルム10側となるように、位相差フィルム10の支持体12側に積層し、位相差フィルム10と第2直線偏光板60とからなる光学部材を得た。そして、この光学部材をTV用の液晶セル50の表面に、位相差フィルム10が液晶セル50側となるように接着剤を使って貼り付け、
図5に示した積層構造を有する液晶表示装置1とした。
【0113】
そして、液晶セル50を白表示とした場合と、液晶セル50を黒表示とした場合とのそれぞれについて、方位角45°で、仰角を-80°から80°の範囲で変化させて、液晶表示装置1の輝度を測定した。
また、比較例4として、位相差フィルム10を貼り付けていない液晶表示装置1についても同様にして、液晶セル50を白表示とした場合と、液晶セル50を黒表示とした場合のそれぞれについて、液晶表示装置1の輝度を測定した。
【0114】
図8(a)~(b)に、液晶表示装置1の輝度の測定結果を示す。
図8(a)は、白表示輝度の測定結果を示しており、
図8(b)は、黒表示輝度の測定結果を示している。なお、
図8(a)~(b)では、仰角0°における輝度が1となるように、規格化している。
また、表3に、実施例7および比較例4について、正面、および仰角60°における白表示輝度および黒表示輝度の測定結果と、正面、および仰角60°における白表示輝度と黒表示輝度との比(コントラスト比CR)を示す。
【0115】
【0116】
図8(b)に示すように、比較例3と同様、位相差フィルム10を有しない比較例4の液晶表示装置1では、仰角の絶対値が大きくなるに従い黒表示輝度が大きくなっており、液晶表示装置1を斜め方向から見た場合に、バックライト20から出射された光の光抜けが生じている。これに対し、本実施形態の位相差フィルム10を適用した実施例7の液晶表示装置1では、仰角の絶対値が大きくなった場合でも黒表示輝度の上昇が抑えられている。したがって、本実施形態の位相差フィルム10を適用することで、液晶表示装置1を斜め方向から見た場合の光抜けが低減されていることが確認された。
【0117】
また、仰角60°におけるコントラスト比については、比較例4のコントラスト比と比べて実施例7のコントラスト比が11倍大きくなっていた。したがって、本実施形態の位相差フィルム10を適用することで、液晶表示装置1のコントラスト性が向上することが確認された。
1…液晶表示装置、2…有機EL表示装置、10…位相差フィルム、11…液晶層、12…支持層、20…バックライト、30…液晶パネル、40…第1直線偏光板、50…液晶セル、60…第2直線偏光板、70…有機ELディスプレイ、80…直線偏光板