(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101772
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】軸受ユニット
(51)【国際特許分類】
F16C 33/76 20060101AFI20240723BHJP
F16C 19/38 20060101ALI20240723BHJP
F16J 15/3268 20160101ALI20240723BHJP
F16C 23/08 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F16C33/76 Z
F16C19/38
F16J15/3268
F16C23/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005897
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】木村 大碁
【テーマコード(参考)】
3J012
3J043
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J012AB13
3J012BB03
3J012EB01
3J012FB07
3J043AA16
3J043BA07
3J043CA02
3J043DA05
3J043DA09
3J216AA03
3J216AA14
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA06
3J216CB02
3J216CB04
3J216CB19
3J216CC09
3J216CC14
3J216CC33
3J701AA15
3J701AA25
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA73
3J701FA46
3J701FA48
3J701FA60
(57)【要約】
【課題】軸(シャフト)の許容範囲の撓みや傾きに密封装置が十分対応できて、オイル漏れを生じさせない軸受ユニットを提供する。
【解決手段】シャフトを回転自在に支持する軸受と、軸受を収納する軸受箱とを備え、軸受が調心軸受である軸受ユニットである。軸受箱から突出するシャフトと、軸受箱の開口部との間を密封するシール部材を備える。シール部材は、シャフトの傾斜に合わせてシール部材を移動させる調整構造とともに軸受箱に着脱可能に付設した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを回転自在に支持する軸受と、前記軸受を収納する軸受箱とを備え、前記軸受が調心軸受である軸受ユニットであって、
前記軸受箱から突出する前記シャフトと、軸受箱の開口部との間を密封するシール部材と、前記シャフトの傾斜に合わせて移動させて前記シール部材を移動させる調整構造を有し、前記シール部材は前記調整構造とともに前記軸受箱に着脱可能に付設したことを特徴とする軸受ユニット。
【請求項2】
前記軸受箱は前記シャフトに外嵌されるリング体で構成され、かつ前記リング体は、シャフトから離間して分割される分割体で構成されることを特徴とする請求項1に記載の軸受ユニット。
【請求項3】
前記分割体の合わせ面に位置決め機構を設けたことを特徴とする請求項2に記載の軸受ユニット。
【請求項4】
前記調整構造は、前記軸受箱の軸心方向と平行に前記軸受箱に取り付けられる軸部材を備え、前記シール部材を保持する軸受箱蓋体と、前記軸受箱蓋体に、前記軸部材に遊嵌状に嵌入される嵌入孔を設けて、前記シャフトに対して前記軸受箱蓋体の変位を可能としたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の軸受ユニット。
【請求項5】
前記調整構造の軸部材は、先端に前記軸受箱に螺着されるねじ部を有する軸部と、前記軸部の反ねじ部に設けられる頭部とを備え、前記軸受箱蓋体は、軸部材の軸部の非ねじ部乃至頭部が遊嵌状に嵌合される嵌合孔部を有し、前記頭部よりもねじ部側に遊嵌状に外嵌されて軸部材に軸方向外方への押圧力を付与するばね部材を前記嵌合孔部に収納したことを特徴とする請求項4に記載の軸受ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受ユニットに関し、特に、軸受および軸受を支持する軸受箱を備えるプランマブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
プランマブロックとしては、従来には、特許文献1に記載のものがあるが、プランマブロックは、一般的に、
図6に示すように、シャフト1を回転自在に支持する軸受2と、この軸受2を収納する軸受箱3とを備えたものである。この場合の軸受2は、自動調心ころ軸受である。自動調心ころ軸受は、外径面に二列の軌道溝5,6を有する内輪7と、内径面に球面の軌道面8を有する外輪9と、内輪7の軌道溝5,6と外輪9の軌道面8との間に介在されるたる形の転動体10、10とを備えたものである。この場合、外輪軌道面8の中心が軸受中心に一致しているので,自動調心性がありハウジングに対する取付誤差あるいは軸のたわみによって生じる内輪と外輪の傾きがある場合にも使用できる。このため、この軸受は負荷能力が大きく振動衝撃荷重を受ける用途に適している。
【0003】
軸受箱3は、短筒状の胴部11と、この胴部11の軸方向両開口部に設けられる内鍔部12,13とを備える。この場合、上方の上箱3Aと、下方の下箱3Bとを有する。上下の上箱3Aと下箱3Bが組み合されて軸受箱3とされる。なお、上箱3Aと下箱3Bを連結するための連結部材としてのボルト部材を図示省略している。
【0004】
そして、胴部11の内径面の軸方向中央部に周方向凹溝15が設けられ、この周方向凹溝15に軸受2の外輪9の外径部が嵌合されている。また、シャフト1の端部側に周方向切欠き部16が形成され、この周方向切欠き部16に軸受2の内輪7の内径部が嵌合されている。なお、シャフト1の端縁部にストッパ部材17が設けられている。
【0005】
軸受箱3の一方の開口部3aは蓋部材(エンドプレート)18にて施蓋されている。すなわち、一方の内鍔部12の内径部に肉厚部12aが設けられ、肉厚部12aの外端面に円盤形状の蓋部材18がねじ部材等の固着具19を介して取り付けられる。
【0006】
そして、他方の内鍔部13には、軸受箱3の他方の開口部3bを密封する密封装置20が設けられている。この場合、
図7(a)に示すように、他方の内鍔部13の内径部に肉厚部13aが設けられ、この肉厚部13aの内径面13a1に、一対の周方向凹溝21,21が設けられ、この周方向凹溝21,21に、リップ部22aがシャフト1に密接するシール部材22が嵌合されて、密封装置20を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、軸受2として、自動調心ころ軸受を用いているので、
図8に示すように、シャフト1が、軸受箱3の軸心に対して傾斜するのを許容している。しかしながら、この調心角θが大きくなれば、
図7(b)に示すように、シール部材22のリップ部22aがシャフト1に密接しない状態を奏することになる。なお、この場合の調心角θとしては、0.1°程度とされる、通常シール部材の許容全振れは、±0.1mm程度とされる。
【0009】
しかしながら、調心角θが大きくなるとオイルシール(密封装置)の許容偏心量を超えることになる。このように許容偏心量を超えると、
図7(b)に示すように、リップ部22aとシャフト1との間に隙間Cが生じる。このように隙間Cが生じると、密封装置20の機能を果たせず、オイル漏れや、外部からの異物混入等が生じる。
【0010】
また、上箱3Aと下箱3Bとを組み合わせた際に、形成される円環状の周方向凹溝21に嵌合されるものであるので、シール部材22を交換等する場合、上箱3Aを下箱3Bから取り外す必要があった。このため、シール部材交換作業が大がかりな作業となっていた。
【0011】
そこで、本願では、軸(シャフト)の許容範囲の撓みや傾きに密封装置が十分対応できて、オイル漏れを生じさせない軸受ユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の軸受ユニットは、シャフトを回転自在に支持する軸受と、前記軸受を収納する軸受箱とを備え、前記軸受が調心軸受である軸受ユニットであって、前記軸受箱から突出する前記シャフトと、軸受箱の開口部との間を密封するシール部材と、前記シャフトの傾斜に合わせて移動させて前記シール部材を移動させる調整構造を有し、前記シール部材は前記調整構造とともに前記軸受箱に着脱可能に付設したしたものである。
【0013】
本発明の軸受ユニットは、軸受箱蓋体を、シャフトの傾斜に合わせて移動させてシール部材をシャフトに追従するように移動させるものであるので、シャフトの多少の撓みや傾き(従来のシール部材が付設される部材が軸受箱と一体であるものよりも大きな撓みや傾き)に対して、シール部材がシャフトから離間するのを回避できる。しかも、軸受箱に着脱可能に付設したものであり、軸受箱から軸受箱蓋体を取り外すことができる。
【0014】
前記軸受箱は前記シャフトに外嵌されるリング体で構成され、かつ前記リング体は、シャフトから離間して分割される分割体で構成されているのが好ましい。軸受箱蓋体は分離可能な分割体で構成されるので、シール部材を交換や点検する場合に、上箱を下箱から外す作業を行う必要がなく、シール部材の交換作業等の簡素化を図ることができる。
【0015】
前記分割体の合わせ面に位置決め機構を設けるのが好ましい。このように、位置決め機構を設けることにより、各分割体の位置ずれを防止して、シール部材を保持する軸受箱蓋体に安定して付設することができ、高精度のシール機能を発揮することができる。
【0016】
前記調整構造は、前記軸受箱の軸心方向と平行に前記軸受箱に取り付けられる軸部材を備え、前記シール部材を保持する軸受箱蓋体と、前記軸受箱蓋体に、前記軸部材に遊嵌状に嵌入される嵌入孔を設けて、前記シャフトに対して前記軸受箱蓋体の変位を可能とした構成とできる。
【0017】
調整構造は、シャフトの傾斜に合わせた変位(移動)を可能とするものであるので、シャフトの撓みや傾きに対して、シール部材を安定して追従(移動)させることができる。
【0018】
前記調整構造の軸部材は、先端に前記軸受箱に螺着されるねじ部を有する軸部と、前記軸部の反ねじ部に設けられる頭部とを備え、前記軸受箱蓋体は、ねじ部が螺着されている軸部材の軸部乃至頭部が遊嵌状に嵌合される嵌合孔部を有し、前記頭部よりもねじ部側に遊嵌状に外嵌されて軸部材に軸方向外方への押圧力を付与するばね部材を前記嵌合孔部に収納したものとできる。
【0019】
このように構成することにより、シャフトが傾いていない状態で、軸部材と、ばね部材とを同一軸心上に配設することができる。このため、この状態からは、軸受箱蓋体をシャフトの傾きに安定して追従(移動)することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、シャフトの従来より大きな撓みや傾きに対して、シール部材がシャフトから離間するのを回避できる。このため、密封装置(シール部材)の許容量に制約を受けることなく、軸受ユニットとしてのシャフトの傾斜許容範囲内で、密封装置が密封装置としての機能を十分発揮できる。軸受箱から軸受箱蓋体を取り外すことができるため、シール部材を交換や点検する場合に、軸受箱自体を分解(このような軸受箱は、一般的に、上箱と下箱の組み合わせであるので、上箱を下箱から外す作業)を行う必要がなく、シール部材の交換作業等の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】軸受ユニットの要部を示し、(a)はシャフトが傾斜していない状態の軸受箱蓋体の拡大断面図であり、(b)はシャフトが傾斜した状態の軸受箱蓋体の拡大断面図である。
【
図5】シャフトと軸受箱蓋体との関係を示し、(a)はシャフトが傾斜していない場合の説明図であり、(b)はシャフトが下方に傾斜した場合の説明図であり、 (c)はシャフトが上方に傾斜した場合の説明図である。
【
図7】従来の軸受ユニットを示し、(a)はシャフトが傾斜していない状態の要部断面図であり、(b)はシャフトが傾斜した状態の要部拡大断面図である。
【
図8】従来の軸受ユニットにおいてシャフトが傾斜した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明の実施形態を
図1~
図5に基づいて説明する。本軸受ユニットは、
図6に示すプランマブロックと同様のプランマブロックであり、シャフト31を回転自在に支持する軸受32と、この軸受32を収納する軸受箱33とを備えたものである。この場合の軸受32は、自動調心ころ軸受である。自動調心ころ軸受は、外径面に二列の軌道溝35,36を有する内輪37と、内径面に球面の軌道面38を有する外輪39と、内輪37の軌道溝35,36と外輪39の軌道面38との間に介在されるたる形の転動体40、40とを備えたものである。
【0023】
軸受箱33は、短筒状の胴部41と、この胴部41の軸方向両開口部に設けられる内鍔部42,43とを備える。この場合、上方の上箱33Aと、下方の下箱33Bとで構成される。上箱33Aと下箱33Bが組み合されて軸受箱33とされる。なお、上箱33Aと下箱33Bを連結するための連結部材としてのボルト部材を図示省略している。このため、上箱33Aは、胴部半割体41Aと内鍔部半割体42A、43Aとを有し、下箱33Bは、胴部半割体41Bと内鍔部半割体42B、43Bとを有し、上箱33Aと下箱33Bとが組み合わされた際には、胴部半割体41Aと胴部半割体41Bとで胴部41を形成し、内鍔部半割体42A、43Aと内鍔部半割体42B、43Bとで、それぞれ内鍔部42,43を形成する。
【0024】
そして、胴部41の内径面の軸方向中央部に周方向凹溝45が設けられ、この周方向凹溝45に軸受32の外輪39の外径部が嵌合されている。また、シャフト31の端部側に周方向切欠き部46が形成され、この周方向切欠き部46に軸受32の内輪37の内径部が嵌合されている。なお、シャフト31の端縁部にストッパ部材47が設けられている。
【0025】
軸受箱33の一方の開口部33aは蓋部材(エンドプレート)48にて施蓋されている。すなわち、一方の内鍔部42の内径部に肉厚部42aが設けられ、肉厚部42aの外端面に円盤形状の蓋部材48がねじ部材等の固着具49を介して取り付けられる。
【0026】
そして、他方の内鍔部43には、シャフト31と、軸受箱33の他方の開口部33aとの間を密封する密封装置50を備える。密封装置50は、シール部材51,51と、シール部材51,51を保持する軸受箱蓋体52とを有する。
【0027】
軸受箱蓋体52は、
図3に示すように、リング体からなり、
図2(a)(b)に示すように、その内周面に周方向溝53,53が設けられ、この周方向溝53,53にシール部材51,51が嵌合されている。この場合、シール部材51は、一対のリップ55a、55aを有するシール材55と、剛性保持材のリング体56と、ガータスプリング57とを備える。なお、周方向溝53は、その断面形状が、外径側から内径側に向かって幅方向が拡大する台形状とされる。
【0028】
そして、
図2(a)では、シャフト31が、軸受箱33に対して傾斜していない状態を示し、シャフト31の軸心と軸受箱33の軸心とが同一軸心上にある場合であって、シャフト31が軸受箱33に対して傾斜していない状態を示している。このシール材55のリップ55a、55aの内径部が軸受箱蓋体52の内径面よりも内径側に突出して、リップ55a、55aがシャフト31に接触乃至圧接している。これによって、シャフト31と、軸受箱33の他方の開口部33aとの間を密封している。
【0029】
ところで、軸受箱蓋体52は、シャフト31の傾斜に合わせた移動を許容する調整構造Mを介して、軸受箱33に取り付けている。調整構造Mは、軸受箱33の他方の内鍔部43に固定される軸部材60と、この軸部材60が遊嵌状に嵌入される軸方向の嵌入孔61に嵌合されるコイルスプリングからなるばね部材66とを備える。
【0030】
軸部材60は、先端にねじ部(雄ねじ部)62aを有する軸部62と、この軸部62の反ねじ部側の頭部63とを有するボルト部材(ストリッパーボルト)で構成している。この場合、軸部材60は、軸受箱33の内鍔部43から突出する軸部62の非ねじ部62b及び頭部63が、軸受箱蓋体52に設けられた嵌入孔61に遊嵌状に嵌入されている。また、軸部材60は、そのねじ部62aを、軸受箱33の内鍔部43の外面に設けられたねじ孔64に螺着することによって、軸受箱33の内鍔部43に取り付けることができるが、この場合、この取り付け状態では、非ねじ部62bとねじ部62aとの間の段付き面62cが、軸受箱33の内鍔部43の外面に当接した状態となっている。
【0031】
嵌入孔61は、この場合、軸受箱33の内鍔部43側から大径の第1部61aと小径の第2部61bと中径の第3部61cとを有し、軸方向長さが、第1部61a<第2部61b<第3部61cとなっている。また、第2部61bの内径は軸部62の非ねじ部62bの外径よりも大となっている。なお、第3部61cが後述する嵌合孔部65を構成する。なお、第1部61aには、シール材としてのOリング67が嵌合されている。
【0032】
この場合、軸部材60の頭部63は、第3部61cの開口側に位置し、第2部61bと第3部61cとの間の段付き面61dと頭部63との間にばね部材(圧縮コイルばね)66が遊嵌状に嵌合されている。つまり、ばね部材66は嵌合孔部65に収納される。ばね部材66の内径が第2部61bの内径と同一寸に設定され、ばね部材66の外径面が第3部61cの内径面に接触するように構成されている。また、ばね部材66の頭部側端面が頭部63の後端面に弾性的に接触乃至圧接している。
【0033】
このため、
図5(a)に示すように、軸受箱33の軸心O2と軸受箱蓋体52の軸心O1とが同一軸心に配設されている状態、つまり、シャフト31の軸心Oが軸受箱33の軸心O2に対して傾斜していない状態では、
図2(a)に示すように、密封装置50のシール部材51のリップ55aがシャフト31に密接している状態となっている。
【0034】
軸部材60を螺退させることにより、この軸部材60を軸受箱33から取り外すことができ、これによって、軸受箱蓋体52を軸受箱33から取り外すことができる。また、逆に、第1部61aのOリング67を嵌合させるとともに、ばね部材66を第3部61cに嵌入した状態で、外方から、軸部材60を嵌入孔61に挿入して、軸部材60のねじ部62aを軸受箱33のねじ孔54に螺着すれば、軸受箱蓋体52を軸受箱33に取り付けることができる。
【0035】
ところで、
図3に示すように、軸受箱蓋体52は、シャフト31に外嵌されるリング体で構成されるが、この場合、リング体は、シャフト31から離間して分割する一対の分割体71、72で構成されている。このため、分割体71、72の合わせ面71a、71a、72a、72aを突き合せた状態で、ボルト部材等の固着具70を介して一体結合することにより、リング体からなる軸受箱蓋体52を構成することができる。
【0036】
この場合、一方の半円弧形状の分割体71には、外周側に一対の切り欠き部73、73が形成され、各切り欠き部73、73の切り欠き端面73a、73aには、合わせ面71aに開口する貫孔が形成され、他方の分割体72の合わせ面72aには、ねじ孔が設けられている。このため、固着具70を分割体71の貫孔に挿入して、相手側の合わせ面72aのねじ孔に螺合させれば、分割体71、72が一体化する。
【0037】
組み合わせする際には、分割体71、72の位置合わせを行う必要があるので、この軸受箱蓋体52には、位置決め機構Pが設けられている。この位置決め機構Pは、
図4に示すように、他方の分割体72の合わせ面72aに設けられる凸部75と、一方の分割体71の合わせ面71aに設けられる凹部76とで構成される。この場合、ノックボール式の位置決め機構を採用している。凸部75は、他方の分割体72の合わせ面72aに形成された凹部77に嵌合される球状体78の一部で構成される。すなわち、球状体78の一部が分割体72の合わせ面72aにより突出し、分割体71の合わせ面71aに設けられた凹部76に、球状体78の一部が嵌合するものである。
【0038】
また、
図1に示すように軸受箱33には、給油口80が設けられ、軸受箱33には
図1に示すように潤滑油(オイル)Lが給油されている。潤滑油Lのオイルレベル高さは、最下点ころの中心位置である。
【0039】
次に、上述のように構成された軸受ユニットの動作について説明する。まず、シャフト31が傾斜していない状態では、
図5(a)に示すように、シャフト31の軸心Oと、軸受箱33の軸心O2と、軸受箱蓋体52の軸心O1とが一致している状態では、
図2(a)に示すように、軸受箱蓋体52に設けられたシール部材51のリップ55aがシャフト31に接触乃至圧接した状態となって、軸受箱33の他方の開口部33bを密封している。
【0040】
図2(a)に示す状態からシャフト31に
図2(b)に示すように傾きが生じた場合、
図2(b)では、軸受箱33側から軸受箱蓋体52に向かって下傾した場合であって、
図5(b)に示すように、シャフト31の軸心(軸受箱蓋体52に対応する部位におけるシャフト31の軸心)位置が
図5(a)の傾斜していないシャフト31の軸心O位置より寸法Sだけ下方に変位して軸心O´になれば、軸受箱蓋体52の軸心O1も寸法Sだけ下方に変位して軸心O´1となる。このため、軸受箱蓋体52に設けられたシール部材51のリップ55aがシャフト31に接触乃至圧接した状態のままであり、軸受箱33の他方の開口部33bを密封している。
【0041】
図5(c)に示すように、シャフト31の軸心(軸受箱蓋体52に対応する部位におけるシャフト31の軸心)位置が
図5(a)の傾斜していないシャフト31の軸心O位置より寸法Sだけ上方に変位して軸心O´´になれば、軸受箱蓋体52の軸心O1も寸法Sだけ上方に変位して軸心O´´1となる。このため、軸受箱蓋体52に設けられたシール部材51のリップ55aがシャフトに接触乃至圧接した状態のままであり、軸受箱33の他方の開口部33bを密封している。
【0042】
ところで、シャフト31が下方へ傾斜した場合と、上方へ傾斜した場合とを説明したが、360°いずれの方向に傾斜しても、軸受箱蓋体52は、シャフト31の変位に追従するように移動させることができる。このため、シール部材51のリップ55aがシャフト31に接触乃至圧接した状態のままであり、軸受箱33の他方の開口部33bを密封する。
【0043】
本発明では、本発明の軸受ユニットは、軸受箱蓋体52を、シャフト31の傾斜に合わせて移動させてシール部材51をシャフトに追従するように移動させるものであるので、シャフト31の多少の撓みや傾き(従来のシール部材が付設される部材が軸受箱と一体であるものよりも大きな撓みや傾き)に対して、シール部材51がシャフト31から離間するのを回避できる。しかも、軸受箱33に着脱可能に付設したものであり、軸受箱33から軸受箱蓋体52を取り外すことができる。すなわち、シール部材51は、調整構造Mとともに軸受箱33に着脱可能に付設されている。
【0044】
このため、本発明では、シャフトの従来より大きな撓みや傾きに対して、シール部材51がシャフト31から離間するのを回避できる。このため、密封装置50の許容量に制約を受けることなく、軸受ユニットとしてのシャフト31の傾斜許容範囲内で、密封装置50が密封装置50としての機能を十分発揮できる。しかも、軸受箱33から軸受箱蓋体52を取り外すことができ、シール部材51の交換や点検を容易に行うことができる。
【0045】
軸受箱蓋体52はシャフト31に外嵌されるリング体で構成され、かつリング体は、シャフト31から離間して分割する分割体で構成されているのが好ましい。このように、軸受箱蓋体52は分離可能な分割体で構成されるので、シール部材51を交換や点検する場合に、軸受箱自体52を分解(このような軸受箱は、一般的に、上箱と下箱の組み合わせであるので、上箱を下箱から外す作業)を行う必要がなく、シール部材51の交換作業等の簡素化を図ることができる。
【0046】
分割体71,72の合わせ面71a,72aに位置決め機構Pを設けるのが好ましい。このように、位置決め機構Pを設けることにより、各分割体71,72の位置ずれを防止して、シール部材51を保持する軸受箱蓋体52に安定して付設することができ、高精度のシール機能を発揮することができる。
【0047】
調整構造Mは、軸受箱33の軸心方向と平行に軸受箱に取り付けられる軸部材60を備え、シール部材51が付設される軸受箱蓋体52に、軸部材60に遊嵌状に嵌入される嵌入孔61を設けて、シャフト31に対して軸受箱蓋体52の変位を可能とした構成とできる。
【0048】
このため、調整構造Mは、シャフト31の傾斜に合わせた変位を可能とするものであるので、シャフト31の撓みや傾きに対して、シール部材51を安定して追従(移動)させることができる。
【0049】
調整構造Mの軸部材60は、先端に軸受箱33に螺着されるねじ部62aを有する軸部62と、軸部62a反ねじ部に設けられる頭部63とを備え、軸受箱蓋体52は、軸部材60の軸部62の非ねじ部62b乃至頭部63が遊嵌状に嵌合される嵌合孔部65を有し、頭部63よりもねじ部側に遊嵌状に外嵌されて軸部材60に軸方向外方への押圧力を付与するばね部材66を嵌合孔部65に収納したものとできる。
【0050】
このように構成することにより、シャフト32が傾いていない状態で、軸部材60と、ばね部材66とを同一軸心上に配設することができる。このため、この状態からは、軸受箱蓋体52をシャフト31の傾きに安定して追従(移動)することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、密封装置で用いるオイルシールとして、図例のものに限らず、既存の種々のタイプのものを使用することができる。また、シール部材51が嵌合する周方向溝としても、断面台形状のものに限らず、矩形状のものであってもよく、密封装置50として、実施形態では、2つのシール部材51を有するものであったが、1つのシール部材を有するものであってもよい。
【0052】
軸受箱体33として、一対の分割体71,72にて構成していたが、3個以上の分割体にて構成してもよい。調整構造Mとして前記実施形態では、
図3に示すように、各分割体71,72に3個ずつ設けていたが、調整構造Mの数の増減は任意であって、少なくとも、周方向に沿って定ピッチで設けるのが好ましく、少なくとも、3か所あればよい。また、位置決め機構Pとして、図例では、いわゆるノックボール式を用いたが、ノックピン方式を用いてもよい。
【0053】
軸受として、実施形態では、自動調心ころ軸受を用いたが、自動調心玉軸受を用いてもよい。また、図例では、エンドプレート48にて軸受箱33の一方の開口部33aを塞いでいたが、このようなエンドプレート48を有さないタイプであってもよい。このように、エンドプレート38を有さないタイプでは、この一方の開口部3a側において、軸受箱蓋体52を、調整構造Mを介して一方の内鍔部12に着脱可能に取り付けるのが好ましい。
【符号の説明】
【0054】
31 シャフト
32 軸受
33 軸受箱
50 密封装置
52 軸受箱蓋体
53,53 周方向溝
60 軸部材
61 嵌入孔
62 軸部
62a ねじ部
66 ばね部材
71,72 分割体
71a 合わせ面
72a 合わせ面