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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101786
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/00 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
B41M3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005916
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】三谷 まどか
(72)【発明者】
【氏名】原田 雅史
【テーマコード(参考)】
2H113
【Fターム(参考)】
2H113AA04
2H113BA01
2H113BB08
2H113BB22
2H113BC09
2H113CA46
2H113DA07
2H113EA25
(57)【要約】
【課題】凸版印刷を用いてデザイン印刷層を形成した場合でも、印刷品質が低下するのを抑えることができる印刷物の製造方法を提供する。
【解決手段】ラベル包材(1)の製造方法は、ラベル基材(2)の第1面(2a)の第1印刷領域(P1)に対して、所定色のインキを用いて基準印刷層(3)を形成する第1形成工程と、基準印刷層(3)の第2印刷領域(P2)に対して、第1デザインで凸版印刷がされた第1デザイン印刷層(4A、4B)を形成する第2形成工程と、を含む。第2形成工程において、凸版印刷には、第1接着部材を介して当該凸版印刷のための第1凸版印刷版を第1スリーブに固定した第1版胴が用いられ、かつ、第1接着部材の硬度としては、JIS K7312:1996に準拠した方法によって測定した測定値が75以上92以下の範囲内の値が設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1面及び第2面を有する基材を備えた印刷物の製造方法であって、
前記第1面または前記第2面の第1印刷領域に対して、所定色のインキを用いて基準印刷層を形成する第1形成工程と、
前記基準印刷層の、前記基材とは反対側の表面の第2印刷領域に対して、第1デザインで凸版印刷がされた第1デザイン印刷層を形成する第2形成工程と、を含み、
前記第2形成工程において、
前記凸版印刷には、第1接着部材を介して当該凸版印刷のための第1凸版印刷版を第1スリーブに固定した第1版胴が用いられ、かつ、
前記第1接着部材の硬度としては、JIS K7312:1996に準拠した方法によって測定した測定値が75以上92以下の範囲内の値が設定されている、印刷物の製造方法。
【請求項2】
前記基準印刷層は、第2凸版印刷版が第2接着部材を介して第2スリーブに固定された第2版胴を用いた凸版印刷によって印刷され、
前記第2接着部材の硬度は、前記第1接着部材の硬度よりも大きい、請求項1に記載の印刷物の製造方法。
【請求項3】
前記基準印刷層が、前記第1印刷領域を遮蔽する遮蔽印刷層である、請求項2に記載の印刷物の製造方法。
【請求項4】
前記遮蔽印刷層は、前記第1印刷領域に対して、印刷された第1遮蔽印刷層と、前記第1遮蔽印刷層に積層された第2遮蔽印刷層と、を有し、
前記第2印刷領域は、前記第2遮蔽印刷層の、前記第1遮蔽印刷層とは反対側の表面に設けられている、請求項3に記載の印刷物の製造方法。
【請求項5】
前記所定色のインキには、白色顔料または銀色顔料の少なくとも一方が含まれている、請求項4に記載の印刷物の製造方法。
【請求項6】
前記第1面または前記第2面の第3印刷領域には、第2デザインが印刷された第2デザイン印刷層が設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の印刷物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷物として、例えば、ペットボトルなどの物品に取り付けられて、情報表示のための印刷が施されたラベル包材が普及している。例えば、特許文献1には、原反フィルム上に、外面側から認識できる第一の表示及び当該第一の表示の背景を隠蔽する第一の印刷基層と、内面側から認識できる第二の表示及び当該第二の表示の背景を隠蔽する第二の印刷基層とを設けたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-323854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の印刷物の製造方法では、例えば、透明な材料からなるラベル基材に対して、白色顔料を含んだ白色インキを用いて基準印刷層を形成した後、情報表示を行うためのデザイン印刷層を基準印刷層に積層して形成していた。
【0005】
しかしながら、従来の印刷物の製造方法では、デザイン印刷層の外縁部であるエッジ部が基準印刷層上で不自然に強調されて印刷されることがあり、印刷物の印刷品質が低下するというおそれがあった。
【0006】
具体的にいえば、従来の印刷物の製造方法では、例えば、水性フレキソ印刷などの凸版印刷を用いてデザイン印刷層を形成した場合、当該デザイン印刷層のエッジ部が、中央部などのエッジ部以外の他の領域に比べて、基準印刷層に対して強い圧力で印刷される。この結果、従来の印刷物の製造方法では、エッジ部が細文字や小さい絵柄などであっても、当該エッジ部が他の領域よりもはっきりと、つまり強調されすぎて印刷されることがあった。このため、従来の印刷物の製造方法では、印刷品質の低下を招くことがあった。
【0007】
本発明の一態様は、凸版印刷を用いてデザイン印刷層を形成した場合でも、印刷品質が低下するのを抑えることができる印刷物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る印刷物の製造方法は、互いに対向する第1面及び第2面を有する基材を備えた印刷物の製造方法であって、前記第1面または前記第2面の第1印刷領域に対して、所定色のインキを用いて基準印刷層を形成する第1形成工程と、前記基準印刷層の、前記基材とは反対側の表面の第2印刷領域に対して、第1デザインで凸版印刷がされた第1デザイン印刷層を形成する第2形成工程と、を含み、前記第2形成工程において、前記凸版印刷には、第1接着部材を介して当該凸版印刷のための第1凸版印刷版を第1スリーブに固定した第1版胴が用いられ、かつ、前記第1接着部材の硬度としては、JIS K7312:1996に準拠した方法によって測定した測定値が75以上92以下の範囲内の値が設定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、凸版印刷を用いてデザイン印刷層を形成した場合でも、印刷品質が低下するのを抑えることができる印刷物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係る印刷物の製造方法で製造されるラベル包材の構成例を説明する断面図である。
図2図1に示したIIから上記ラベル包材を見た場合での当該ラベル包材を説明する上面図である。
図3】上記ラベル包材の製造装置の具体的な構成例を説明する図である。
図4図3に示した版胴の具体例を説明する図である。
図5】上記ラベル包材の製造方法の具体例を説明するフローチャートである。
図6】本発明の実施形態2に係る印刷物の製造方法で製造されるラベル包材の構成例を説明する断面図である。
図7】本発明の実施形態3に係る印刷物の製造方法で製造されるラベル包材の構成例を説明する断面図である。
図8】本発明の実施形態4に係る印刷物の製造方法で製造されるラベル包材の構成例を説明する断面図である。
図9】実施例1~3及び比較例における、検証試験の結果例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について図1及び図2を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、印刷物として、平面視で、例えば、矩形状の外形形状を有するラベル包材1を製造する場合を例示して説明する。また、以下の説明では、まず本発明の印刷物の製造方法の製造対象物の具体例である、ラベル包材1について具体的に説明する。
【0012】
〔ラベル包材の構成〕
図1は、本発明の実施形態1に係る印刷物の製造方法で製造されるラベル包材1の構成例を説明する断面図である。図2は、図1に示したIIから上記ラベル包材1を見た場合での当該ラベル包材1を説明する上面図である。
【0013】
また、本発明に係るラベル包材1は、具体的にいえば、例えば、シュリンクラベル、ストレッチラベル、巻付けラベル、感熱ラベル、タックラベル、インモールドラベル等のラベル、シュリンク包装、ピロー包装、パウチ等のフィルム包装として用いることができる。さらに、ラベル包材1の好ましい用途は、シュリンクラベルと巻付けラベルが最も好ましい。
【0014】
なお、以下の説明では、図1に例示するように、ラベル包材1が取り付けられる物品Wの表面側を下として上下方向を定義する。ラベル包材1は上下方向の上方向または下方向のいずれの方向からでも視認可能ではあるが、当該上下方向において、ラベル包材1の表面(オモテ面)側である上側からラベル包材1の裏面側である下側に向かう方向がラベル包材1を基本的に視認する視認方向に実質的に一致する。また、図1に例示するように、ラベル包材1を一側面から見た場合での図1の紙面の左側を左として左右方向を定義する。また、図2に例示するように、ラベル包材1を上面から見た場合での図2の紙面の下側を前として前後方向を定義する。
【0015】
図1及び図2において、本実施形態1のラベル包材1は、基材としてのラベル基材2と、基準印刷層としての遮蔽印刷層3と、2つの第1デザイン印刷層4A、4Bと、を備える。なお、ラベル包材1において、2つの第1デザイン印刷層4A、4Bを設けた場合を例示して説明するが、第1デザイン印刷層の設置数は1つ以上であれば何等限定されない。
【0016】
〔ラベル基材〕
図1に示すように、ラベル基材2は、互いに対向する第1面2a及び第2面2bを有している。ラベル基材2は、従来公知の種々のフィルム材を用いて構成されている。具体的には、ラベル基材2の材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、スチレン系樹脂(スチレン・ブタジエン共重合体等)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂を採用することができる。
【0017】
具体的にいえば、ラベル包材1がシュリンクラベルなどのシュリンク包材(シュリンク性のあるラベル包材)である場合、熱収縮性フィルムを使用することができる。また、この熱収縮性フィルムでは、主収縮方向において、例えば、90℃熱水、及び10秒浸漬での熱収縮率が30%以上90%以下、好ましくは50%以上である。
【0018】
また、ラベル包材1が巻付けラベルを含むシュリンク包材以外のラベル包材である場合、非熱収縮性フィルムを使用することができる。この非熱収縮性フィルムは、どの方向においても、例えば、90℃熱水、及び10秒浸漬での熱収縮率が5%未満、好ましくは2%未満である。
【0019】
また、ラベル基材2には、透明または不透明なフィルム材を用いることが可能であるが、ラベル基材2は透明なフィルム材を用いることが好ましい。具体的にいえば、本実施形態1または後掲の実施形態3のラベル包材1では、ラベル基材2は透明なフィルム材に限定されずに、不透明なフィルム材であってもよい。また、後掲の実施形態2または後掲の実施形態4のラベル包材1では、上記視認方向で視認した場合、ラベル基材2越しに当該ラベル包材1を視認することから、透明なフィルム材をラベル基材2に用いることが好適である。
【0020】
図1及び図2に示すように、ラベル基材2では、第1面2aにおいて、例えば、矩形状の第1印刷領域P1が設けられている。具体的には、第1印刷領域P1は、左右方向での寸法P1Xと前後方向での寸法P1Yとによって規定された矩形状の領域である。
【0021】
〔遮蔽印刷層〕
遮蔽印刷層3は、ラベル基材2の第1面2aの第1印刷領域P1に対して、遮蔽色のインキを用いて印刷されることにより、ラベル基材2の第1面2a上に積層されている。遮蔽印刷層3は、例えば、水性インキを用いた水性フレキソ印刷などの凸版印刷によって、第1印刷領域P1を遮蔽するように第1面2a上に形成されている。換言すれば、遮蔽印刷層3は、互いに対向する第1表面3a及び第2表面3bを有している。遮蔽印刷層3は、ラベル基材2側の第2表面3bが第1印刷領域P1を覆うように、ラベル基材2に対して印刷されている。
【0022】
遮蔽印刷層3では、遮蔽色のインキとして、例えば、白色顔料または銀色顔料の少なくとも一方を含んだインキが用いられている。この遮蔽色のインキとは、第1印刷領域P1に対する、遮蔽性を発現可能なインキをいう。具体的にいえば、遮蔽印刷層3では、所望の遮蔽性を発現するために、当該遮蔽印刷層3の全体で、上記のような遮蔽性を有する色の顔料を15%以上含むことが好ましい。
【0023】
詳細にいえば、遮蔽印刷層3において、遮蔽色のインキとして、白色顔料を用いる場合には、当該白色顔料は酸化チタンが好ましい。また、この場合、白色顔料の含有量は、例えば、遮蔽印刷層3の全体に対して30~80質量%が好ましい。
【0024】
また、遮蔽印刷層3において、遮蔽色のインキとして、銀色顔料を用いる場合には、当該銀色顔料はアルミニウムペーストが好ましい。また、この場合、銀色顔料の含有量は、例えば、遮蔽印刷層3の全体に対して15~70質量%が好ましい。
【0025】
換言すれば、遮蔽印刷層3では、上記のような遮蔽性を有する色の顔料を含んだインキを用いて第1印刷領域P1を遮蔽している。これにより、ラベル包材1では、遮蔽色のインキによって第1デザイン印刷層4A、4Bの各第1デザインの背景色が整えられて、当該各第1デザインの視認性、ひいては、ラベル包材1の見栄えを容易に、かつ、より確実に向上することができる。
【0026】
図1及び図2に示すように、遮蔽印刷層3では、第1表面3aにおいて、例えば、2つの矩形状の第2印刷領域P2が設けられている。具体的には、2つの各第2印刷領域P2は、左右方向での寸法P2Xと前後方向での寸法P2Yとによって規定された矩形状の領域である。
【0027】
なお、上記の説明では、基準印刷層として、第1印刷領域P1を遮蔽する遮蔽印刷層3を設けた場合について説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、基準印刷層は、第1面2aまたは第2面2bの第1印刷領域P1に対して、所定色のインキを用いて印刷された印刷層であれば何等限定されない。具体的には、基準印刷層は、例えば、単一色のベタ塗りやグラデーション、または複数色のインキを含んだ模様等の印刷層であってもよい。但し、基準印刷層は、第1デザイン印刷層4A、4Bの各第1デザインの視認性を高めて、これらの各第1デザインを強調できる印刷層が好ましい。
【0028】
また、上記の説明では、遮蔽印刷層3が凸版印刷によって形成された場合について説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、凹版印刷などの他の印刷方法を用いて遮蔽印刷層(基準印刷層)3を形成してもよい。但し、第1デザイン印刷層4A、4Bと同じ凸版印刷によって遮蔽印刷層3を形成する場合の方が、ラベル包材(印刷物)1の製造を容易に行うことができる点で好ましい(詳細は後述。)。
【0029】
〔第1デザイン印刷層〕
図2に示すように、第1デザイン印刷層4A、4Bは、各々第1デザインとして、例えば、同じ「A」の文字が印刷されている。第1デザインは、所望の文字、図形、あるいは模様(ベタも含む)及びこれらの組み合わせなどの情報表示を行うためのものである。第1デザイン印刷層4A、4Bは、各々、遮蔽印刷層3の第1表面3aの第2印刷領域P2に対して、所望の特定色のインキを用いて印刷されることにより、遮蔽印刷層3の第1表面3a上に積層されている。また、第1デザインでは、1または複数種類の色のインキが特定色のインキとして用いることができる。但し、第1デザインを表示するためのインキは、遮蔽印刷層3の遮蔽色のインキとは異なる種類の色のインキが用いられている。
【0030】
具体的にいえば、第1デザイン印刷層4A、4Bは、各々、例えば、所望の色の水性インキを用いた水性フレキソ印刷などの凸版印刷によって、遮蔽印刷層3の、ラベル基材2とは反対側の第1表面3aの第2印刷領域P2に印刷されている。
【0031】
〔ラベル包材の製造装置〕
次に、図3及び図4も参照して、本実施形態1のラベル包材1の製造方法に用いられる製造装置10について具体的に説明する。図3は、上記ラベル包材1の製造装置10の具体的な構成例を説明する図である。図4は、図3に示した版胴12の具体例を説明する図である。なお、以下の説明では、製造装置10として、例えば、センタードラム方式のフレキソ印刷機を用いた、凸版印刷としてのフレキソ印刷を行う場合を例示して説明する。
【0032】
本実施形態1のラベル包材1の製造方法においては、製造装置10は、センタードラム11と、少なくとも1つ、例えば、4つの版胴12A、12B、12C、12D(以下、”12”で総称する)と、を備える。また、製造装置10では、図3に示すように、ラベル基材2が、供給機構(図示せず)により、第1面2aを外側に露出させた状態で、センタードラム11の外周面に順次巻回されるように供給される。
【0033】
版胴12A、12B、12C、12Dは、センタードラム11の周方向に沿って所定の間隔でセンタードラム11に巻回されたラベル基材2の第1面2aに順次対向するように配置されている。製造装置10では、版胴12とラベル基材2の被印刷面としての第1面2aとが接触することにより、版胴12による凸版印刷が第1面2aに施される。
【0034】
具体的にいえば、版胴12は、図4の401に示すように、例えば、スリーブ13と、接着部材14と、凸版印刷版15と、を備える。スリーブ13は、例えば、円柱形状のプラスチック材料または金属材料を用いて構成されている。接着部材14は、例えば、両面テープを用いて構成されており、スリーブ13と凸版印刷版15との間に設けられて、これらのスリーブ13及び凸版印刷版15を接合する。また、接着部材14は、後に詳述するように、凸版印刷版15の印刷対象とする印刷層により、その硬度が適切に設定されている。これにより、接着部材14では、上記被印刷面に対する凸版印刷版15の接触圧を最適に調整することが可能となり、印刷品質の低下が発生するのを極力抑えるようになっている。
【0035】
詳細にいえば、接着部材14として、例えば、両面テープを用いた場合、当該接着部材14は、例えば、第1接着層、基材、及び第2接着層を順次積層した所定の公知な構造を有している。なお、この説明以外に、例えば、スリーブ13及び凸版印刷版15の接合面に対して、接着剤や粘着剤などの接合剤を塗布することにより、接着部材14を構成してもよい。
【0036】
凸版印刷版15は、凸版印刷のための版であり、図4の402に例示するように、ベースフィルム15Aと、本体部15Bと、を備える。ベースフィルム15Aは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を用いて構成されている。本体部15Bは、例えば、感光性樹脂等の樹脂を用いて構成されており、ベースフィルム15Aに固定された基部15B1と、基部15B1から突出した凸部15B2と、を有する。また、凸版印刷版15は、図4にH1、H2、及びH3にてそれぞれ示す、ベースフィルム15Aの厚み、凸版印刷版15の厚み、及び凸部15B2の厚みが、例えば、0.188mm、1.14mm~1.15mmの範囲内の値、及び0.55mm~0.65mmの範囲内の値に設定されている。そして、凸版印刷版15では、凸部15B2の上面(突出側表面)に供給されたインキを上記被印刷面に転移することにより、当該インキによる凸版印刷を行うよう構成されている。
【0037】
より具体的にいえば、版胴12Aには、アニロックスロール21A及びドクターチャンバー22Aが近接して配置されている。アニロックスロール21Aが、例えば、図3のR5の方向に回転することにより、ドクターチャンバー22A内に充填されたインキ23Aがアニロックスロール21Aの外周面及び版胴12Aの外周面、つまり凸部15B2の上面に順次供給される。そして、版胴12Aが、例えば、図3のR1の方向に回転することにより、インキ23Aは、凸部15B2の上面からラベル基材2の第1面2aに転移して、インキ23Aを用いた凸版印刷による印刷層が第1面2aに形成される。
【0038】
同様に、版胴12Bには、アニロックスロール21B及びドクターチャンバー22Bが近接して配置されている。アニロックスロール21Bが、例えば、図3のR6の方向に回転することにより、ドクターチャンバー22B内に充填されたインキ23Bがアニロックスロール21Bの外周面及び版胴12Bの外周面、つまり凸部15B2の上面に順次供給される。そして、版胴12Bが、例えば、図3のR2の方向に回転することにより、インキ23Bは、凸部15B2の上面からラベル基材2の第1面2aに転移して、インキ23Bを用いた凸版印刷による印刷層が第1面2aに形成される。
【0039】
同様に、版胴12Cには、アニロックスロール21C及びドクターチャンバー22Cが近接して配置されている。アニロックスロール21Cが、例えば、図3のR7の方向に回転することにより、ドクターチャンバー22C内に充填されたインキ23Cがアニロックスロール21Cの外周面及び版胴12Cの外周面、つまり凸部15B2の上面に順次供給される。そして、版胴12Cが、例えば、図3のR3の方向に回転することにより、インキ23Cは、凸部15B2の上面からラベル基材2の第1面2aに転移して、インキ23Cを用いた凸版印刷による印刷層が第1面2aに形成される。
【0040】
同様に、版胴12Dには、アニロックスロール21D及びドクターチャンバー22Dが近接して配置されている。アニロックスロール21Dが、例えば、図3のR8の方向に回転することにより、ドクターチャンバー22D内に充填されたインキ23Dがアニロックスロール21Dの外周面及び版胴12Dの外周面、つまり凸部15B2の上面に順次供給される。そして、版胴12Dが、例えば、図3のR4の方向に回転することにより、インキ23Dは、凸部15B2の上面からラベル基材2の第1面2aに転移して、インキ23Dを用いた凸版印刷による印刷層が第1面2aに形成される。
【0041】
そして、製造装置10では、図3に示すように、版胴12A~12Dによって凸版印刷が施されたラベル基材2が、回収機構(図示せず)により、ラベル包材1として、センタードラム11から回収される。
【0042】
なお、凸版印刷版15を用いた凸版印刷では、基部15B1における、凸部15B2の形成位置及び凸部15B2の上面の面積をそれぞれ変更することにより、上記被印刷面にインキが付着される箇所及び大きさを変化させて所望の印刷層として形成することができる。それゆえ、インキ23A~23Dは、互いに異なる色のインキに限定されずに、同一の色のインキであってもよい。
【0043】
〔ラベル包材の製造方法〕
次に、図5も用いて、本実施形態1のラベル包材1の製造方法について具体的に説明する。図5は、上記ラベル包材1の製造方法の具体例を説明するフローチャートである。なお、ラベル包材1の製造方法では、図3に示したように、長尺状(ウェブ状)のラベル基材2の原反が用いられており、当該原反に順次印刷を施すことによって複数のラベル包材1を製造することができる。
【0044】
図3のステップS1に示すように、ラベル包材1の製造方法では、まず第1形成工程が実施される。この第1形成工程では、製造装置10を用いて、ラベル基材2の第1面2aの第1印刷領域P1に対して、遮蔽色のインキを用いて印刷されて、第1印刷領域P1を遮蔽する遮蔽印刷層3が形成される。
【0045】
具体的にいえば、例えば、版胴12Aにおいて、所定色のインキとしてのインキ23Aが上記遮蔽色のインキとして用いられる。そして、この版胴12Aは、第2凸版印刷版を構成する凸版印刷版15が用いられた第2版胴として機能する。また、版胴12Aでは、第2スリーブを構成するスリーブ13に対して、第2接着部材を構成する接着部材14を介して第2凸版印刷版としての凸版印刷版15が固定されている。
【0046】
さらに、第2版胴としての版胴12Aでは、上記第2接着部材の硬度は、後述の第1接着部材の硬度よりも大きい値が設定されている。そして、第1形成工程では、上記のように第2接着部材の硬度が設定された版胴12Aを用いて、基準印刷層としての遮蔽印刷層3が第1印刷領域P1に設けられる。
【0047】
次に、図3のステップS2に示すように、第2形成工程が実施される。この第2形成工程では、製造装置10を用いて、遮蔽印刷層3の第2印刷領域P2に対して、特定色のインキを用いて第1デザインで凸版印刷がされた第1デザイン印刷層4A、4Bが形成される。
【0048】
具体的にいえば、例えば、版胴12Cにおいて、所定色のインキとしてのインキ23Cが上記特定色のインキとして用いられる。そして、この版胴12Cは、第1凸版印刷版を構成する凸版印刷版15が用いられた第1版胴として機能する。また、版胴12Cでは、第1スリーブを構成するスリーブ13に対して、第1接着部材を構成する接着部材14を介して第1凸版印刷版としての凸版印刷版15が固定されている。
【0049】
さらに、第1版胴としての版胴12Cでは、上記第1接着部材の硬度としては、JIS K7312:1996に準拠した方法によって測定した測定値が75以上92以下の範囲内の値が設定されている。そして、第2形成工程では、上記のように第1接着部材の硬度が設定された版胴12Cを用いて、第1デザイン印刷層4A、4Bが第2印刷領域P2に設けられる。
【0050】
以上の製造工程により、本実施形態1のラベル包材1が製造される。
【0051】
なお、上記の説明では、版胴12A及び版胴12Cを用いて、第1形成工程及び第2形成工程をそれぞれ実施する場合について説明した。しかしながら、本実施形態は、ラベル基材2に対して、第2形成工程による、凸版印刷がされた第1デザイン印刷層の形成より前に、第1形成工程による基準印刷層の形成を行う印刷物の製造方法であれば、何等限定されない。但し、上記のように、製造装置10により、第1形成工程及び第2形成工程を連続的に行う場合の方が、コストが安価で、製造工程が簡略化された印刷物を容易に得ることができる点で好ましい。
【0052】
また、上記の説明では、第1デザイン印刷層4A、4Bに用いられる特定色のインキが1種類の色のインキである場合に、第2形成工程により、第1デザイン印刷層4A、4Bが同じ版胴12Cを用いて印刷される場合を例示して説明した。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、第1デザイン印刷層4A、4Bに用いられる特定色のインキが複数種類の色のインキである場合(つまり、第1デザインが複数種類の色で表示される場合)には、特定色に含まれた1つの色のインキ毎に、第2形成工程が行われる。すなわち、第1デザイン印刷層4A、4Bでは、上記硬度の値に設定された第1接着部材を備えた、インキ毎の第1版胴により、第1デザインが凸版印刷にて形成される。
【0053】
以上のように構成された本実施形態1のラベル包材1の製造方法は、ラベル基材2の第1面2aの第1印刷領域P1に対して、所定色のインキを用いて遮蔽印刷層3を形成する第1形成工程と、遮蔽印刷層3の第2印刷領域P2に対して、第1デザインで凸版印刷がされた第1デザイン印刷層4A、4Bを形成する第2形成工程と、を含む。また、第2形成工程において、凸版印刷には、第1接着部材を介して当該凸版印刷のための第1凸版印刷版を第1スリーブに固定した第1版胴が用いられ、かつ、第1接着部材の硬度としては、JIS K7312:1996に準拠した方法によって測定した測定値が75以上92以下の範囲内の値が設定されている。
【0054】
以上の構成により、本実施形態1のラベル包材1の製造方法では、上記従来例と異なり、第1デザイン印刷層4A、4Bの各エッジ部が、中央部などのエッジ部以外の他の領域に比べて、強調されすぎて印刷されるのを抑制することができる。つまり第1接着部材としての接着部材14では、その硬度を上記範囲内の値とすることにより、被印刷面としての遮蔽印刷層3の第2印刷領域P2に対する、第1凸版印刷版としての凸版印刷版15の接触圧を最適に低減したものとしている。このため、第1デザイン印刷層4A、4Bの各エッジ部が、遮蔽印刷層3に対して強い圧力で印刷されるのを抑えることができる。この結果、本実施形態1では、細文字や小さい絵柄が第1デザインに含まれている場合でも、第1デザイン印刷層4A、4Bの各エッジ部が他の領域よりもはっきりと印刷されるのを緩和することができる。したがって、本実施形態1では、凸版印刷を用いて第1デザイン印刷層4A、4Bを形成した場合でも、ラベル包材1での印刷品質が低下するのを抑えることができる。
【0055】
また、本実施形態1のラベル包材1の製造方法では、第1形成工程において、第2接着部材としての接着部材14の硬度を、第1接着部材の硬度よりも大きくしている。これにより、本実施形態1では、第1印刷領域P1に対して、遮蔽印刷層3を明瞭に印刷できるとともに、第1デザイン印刷層4A、4Bによる遮蔽印刷層3の傷つきを抑制して印刷品質の低下をより確実に抑えることができる。
【0056】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、図6を用いて具体的に説明する。図6は、本発明の実施形態2に係る印刷物の製造方法で製造されるラベル包材1の構成例を説明する断面図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0057】
本実施形態2と上記実施形態1との主な相違点は、ラベル基材2の第2面2b上に第2デザインが印刷された第2デザイン印刷層6A、6Bと、遮蔽印刷層3と、第1デザイン印刷層4A、4Bとを順次設ける点である。
【0058】
図6に示すように、本実施形態2では、裏面側に、例えば、フレキソ印刷を施した裏刷りのラベル包材1を製造する。さらに、本実施形態2では、第2デザイン印刷層6A、6Bが印刷されたラベル包材1を製造する。
【0059】
具体的にいえば、本実施形態2のラベル包材1では、実施形態1のものと異なり、第1デザイン印刷層4A、4Bの第1デザインはラベル包材1の裏面側からみる目的で形成されている。また、第2デザイン印刷層6A、6Bの後掲の第2デザインはラベル包材1のオモテ面側からみる目的で形成されている。遮蔽印刷層3は第1デザイン及び第2デザインそれぞれが透けて見えるのを抑制している。換言すれば、遮蔽印刷層3は、第1デザインがオモテ面側から、第2デザインが裏面側から透けて見えるのを抑えている。
【0060】
〔第2デザイン印刷層〕
第2デザイン印刷層6A、6Bは、各々、所望の文字、図形、あるいは模様(ベタも含む)及びこれらの組み合わせなどの情報表示を行うための第2デザインが含まれている(図示せず)。第2デザイン印刷層6A、6Bは、各々、ラベル基材2の第2面2bの第3印刷領域P3に対して、所望の特定色のインキを用いて印刷されることにより、ラベル基材2の第2面2b上に積層されている。また、第2デザインでは、1または複数種類の色のインキが特定色のインキとして用いることができる。但し、第2デザインを表示するためのインキは、遮蔽印刷層3の遮蔽色のインキとは異なる種類の色のインキが用いられている。
【0061】
具体的にいえば、第2デザイン印刷層6A、6Bは、各々、例えば、所望の特定色の水性インキを用いた水性フレキソ印刷などの凸版印刷によって、遮蔽印刷層3の形成前に、ラベル基材2の第2面2bの第3印刷領域P3に印刷されている。詳細にいえば、第2デザイン印刷層6A、6Bは、上記第1形成工程を行う前に、第2版胴として、例えば、版胴12Aを用いた第3形成工程を実施することにより、ラベル基材2の第2面2bの第3印刷領域P3に形成される。これにより、本実施形態2では、実施形態1のものと同様に、安全性に優れたラベル包材1を容易に製造することができる。なお、ラベル包材1において、2つの第2デザイン印刷層6A、6Bを設けた場合を例示して説明するが、第2デザイン印刷層の設置数は1つ以上であれば何等限定されない。
【0062】
第3印刷領域P3は、図2に示した第2印刷領域P2と同様に、例えば、左右方向での図示しない寸法と前後方向での図示しない寸法とによって規定された矩形状の領域である。換言すれば、本実施形態2のラベル包材1では、ラベル基材2の第2面2bにおいて、第2デザイン印刷層6A、6Bごとに、2つの矩形状の第3印刷領域P3が設けられている。
【0063】
本実施形態2のラベル包材1では、遮蔽印刷層3は第2デザイン印刷層6A、6Bを覆うようにラベル基材2の第2面2b上に設けられている。換言すれば、本実施形態2では、遮蔽印刷層3は、ラベル基材2の第2面2bの第1印刷領域P1に対して、上記遮蔽色のインキを用いて印刷されて、第1印刷領域P1を遮蔽する。但し、第2デザイン印刷層6A、6Bは、各々、第3印刷領域P3に印刷されているので、ラベル基材2の第1面2a側から視認した場合には、第2デザイン印刷層6A、6Bの各第2デザインは、遮蔽印刷層3によって遮蔽されることなく、視認可能である。
【0064】
本実施形態2のラベル包材1では、第1デザイン印刷層4A、4Bが、各々、遮蔽印刷層3の、ラベル基材2とは反対側の第1表面3aの第2印刷領域P2に対して、所望の色のインキを用いて印刷されることにより、遮蔽印刷層3の第1表面3a上に積層されている。
【0065】
以上の構成により、本実施形態2は、実施形態1のものと同様な効果を奏する。また、本実施形態2では、第2デザイン印刷層6A、6Bが設けられているので、多くの情報表示を行うことができるラベル包材1を製造することができる。
【0066】
なお、本実施形態2では、第1形成工程は上記第3形成工程の後で当該第3形成工程に使用された版胴以外の版胴を用いて実施される。また、本実施形態2では、凹版印刷などの他の印刷方法を用いて、第3形成工程を実施することも可能ではある。しかしながら、実施形態1と同様に、製造装置10を用いて、第3形成工程、第1形成工程、及び第2形成工程を連続的に行う場合の方が、コストが安価で、製造工程が簡略化されたラベル包材1を容易に得ることができる点で好ましい。
【0067】
〔実施形態3〕
本開示の実施形態3について、図7を用いて具体的に説明する。図7は、本発明の実施形態3に係る印刷物の製造方法で製造されるラベル包材1の構成例を説明する断面図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0068】
本実施形態3と上記実施形態2との主な相違点は、ラベル基材2の第1面2a上に第2デザイン印刷層6A、6Bを設ける点である。
【0069】
図7に示すように、本実施形態3では、第2デザイン印刷層6A、6Bは、各々、ラベル基材2の第1面2aの第3印刷領域P3に対して、所望の特定色のインキを用いて印刷されることにより、ラベル基材2の第1面2a上に積層されている。
【0070】
具体的にいえば、第2デザイン印刷層6A、6Bは、各々、例えば、所望の色の水性インキを用いた水性フレキソ印刷などの凸版印刷によって、ラベル基材2の第1面2aの第3印刷領域P3に印刷されている。換言すれば、本実施形態3では、上記実施形態2と異なり、上記第3形成工程がラベル基材2の第1面2aの第3印刷領域P3に対して、実施される。
【0071】
なお、本実施形態3では、第3形成工程が、例えば、製造装置10を用いて、第1形成工程より先に実施された後、製造装置10から一旦取り出された後、被印刷面を第1面2aから第2面2bに反転して、製造装置10によって第1形成工程及び第2形成工程を順次実施してもよい。あるいは、本実施形態3では、先に第1形成工程及び第2形成工程を実施した後、被印刷面を反転して、第3形成工程を実施してもよい。
【0072】
以上の構成により、本実施形態3は、実施形態2のものと同様な効果を奏する。
【0073】
〔実施形態4〕
本開示の実施形態4について、図8を用いて具体的に説明する。図8は、本発明の実施形態4に係る印刷物の製造方法で製造されるラベル包材1の構成例を説明する断面図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0074】
本実施形態4と上記実施形態2との主な相違点は、遮蔽印刷層3としてラベル基材2側から第1遮蔽印刷層7及び第2遮蔽印刷層8を設ける点である。
【0075】
図8に示すように、本実施形態4では、遮蔽印刷層3は、ラベル基材2の第1印刷領域P1に対して、印刷された第1遮蔽印刷層7と、第1遮蔽印刷層7に積層された第2遮蔽印刷層8とを有する。第1遮蔽印刷層7は、上記実施形態2と同様に、上記第3形成工程による第2デザイン印刷層6A、6Bが形成された後に、上記第1形成工程を実施することにより形成される。また、第2遮蔽印刷層8は、第1遮蔽印刷層7が形成された後に、第2版胴として、例えば、版胴12Cを用いた第4形成工程を実施することにより、第1遮蔽印刷層7上に形成される。
【0076】
具体的にいえば、第1遮蔽印刷層7は、第2デザイン印刷層6A、6Bを覆うようにラベル基材2の第2面2b上に設けられている。換言すれば、本実施形態4では、第1遮蔽印刷層7は、その第1表面7aが第2面2bに当接している。第1遮蔽印刷層7は、ラベル基材2の第2面2bの第1印刷領域P1に対して、上記遮蔽色のインキを用いて印刷されて、第1印刷領域P1を遮蔽する。但し、第2デザイン印刷層6A、6Bは、各々、第3印刷領域P3に印刷されているので、ラベル基材2の第1面2a側から視認した場合には、第2デザイン印刷層6A、6Bの各第2デザインは、第1遮蔽印刷層7によって遮蔽されることなく、視認可能である。
【0077】
第2遮蔽印刷層8は、第1遮蔽印刷層7を覆うように第1遮蔽印刷層7の第2表面7b上に設けられている。換言すれば、本実施形態4では、第2遮蔽印刷層8は、その第1表面8aが第1遮蔽印刷層7の第2表面7bに当接している。第2遮蔽印刷層8は、第1遮蔽印刷層7の第2表面7bに対して、上記遮蔽色のインキを用いて印刷されて、ラベル基材2の第2面2bの第1印刷領域P1を遮蔽する。なお、第1遮蔽印刷層7及び第2遮蔽印刷層8に用いる遮蔽色のインキは、同一色のインキでもあってよいし、互いに異なる色のインキであってもよい。
【0078】
第2遮蔽印刷層8では、第2印刷領域P2が第1遮蔽印刷層7とは反対側の第2表面8bに設けられている。換言すれば、本実施形態4では、第1デザイン印刷層4A、4Bが第2遮蔽印刷層8の第2表面8b上に設けられている。
【0079】
以上の構成により、本実施形態4は、実施形態2のものと同様な効果を奏する。また、本実施形態4では、第1デザイン印刷層4A、4Bが第1遮蔽印刷層7に積層された第2遮蔽印刷層8上に形成されている。これにより、本実施形態4では、印刷品質の低下を抑制しつつ、第1デザイン印刷層4A、4Bの第1デザインを明確に表示することができ、ラベル包材1の見栄えをさらに向上することができる。
【0080】
〔実施例〕
以下、本発明のラベル包材1について、図9も用いて、実施例1~3と比較例を挙げてさらに詳細に説明する。図9は、実施例1~3及び比較例における、検証試験の結果例を示す表である。しかしながら、本発明は下記の実施例のみに制限されるものではない。
【0081】
〔検証試験の評価結果〕
本検証試験では、実施例1~3と比較例とにおいて、例えば、図4の401に示したスリーブ13、接着部材14、及び凸版印刷版15を備えた版胴12を準備した。また、実施例1~3と比較例とでは、プラスチック材料からなるスリーブ13と、PET樹脂からなるベースフィルム15A及び樹脂からなる本体部15Bを有する凸版印刷版15とを用いた。さらに、スリーブ13に対して、マウンターと呼ばれる、オリエント社製、フレキソ樹脂版張り込み装置を用いて、アクリル樹脂を有する接着部材14を貼り付けた後、スリーブ13とは反対側の接着部材14に対して、凸版印刷版15を固定した。
【0082】
具体的にいえば、接着部材14は、ポリエチレン系樹脂の発泡基材と、当該発泡基材の両面に設けられたアクリル系粘着剤層とを有するものを使用した。
【0083】
また、図9に示すように、接着部材14において、硬度の大きさが互いに異なる実施例1~3と比較例とを測定物として準備した。また、この硬度の大きさは、JIS K7312:1996に準拠した方法によって測定した測定値である。より具体的には、高分子計器株式会社製、アスカーゴム硬度計C型を使用して、手押しによる硬度測定、すなわち当該硬度計を真上から測定物に押し当て加圧面を密着させて目盛を読みとった。また、この硬度測定では、一方の上記アクリル系粘着剤層をSUS板に貼り付けた状態で他方の上記アクリル系粘着剤層に硬度計を押し当てて測定した。これらの条件以外は、実施例1~3と比較例とにおいて同一とした。
【0084】
そして、検証試験では、実施例1~3と比較例とにおいて、例えば、図8に示した実施形態4のラベル包材1と同等の構成を有するものを製造し、当該ラベル包材での印刷品質を視認により確認した。より詳細には、実施例1~3と比較例とにおいて、ラベル基材2は、例えば、東洋紡株式会社製の二軸延伸PETフィルム(透明、厚さ12μm)を用いた。また、第2デザイン印刷層6A、6Bは、水性プロセスカラーインキを用いて、文字や絵などを含む所定のデザインを形成した。また、第1遮蔽印刷層7及び第2遮蔽印刷層8は、各々、白色顔料として酸化チタンを含む水性白インキ(塗布後の顔料濃度が72重量%)を2度塗りすることによって形成した。また、第1デザイン印刷層4A、4Bは、水性緑色インキを用いて文字デザインを形成した。
【0085】
そして、本検証試験では、ラベル包材の裏面またはオモテ面から視認したときの評価1及び評価2を実施した。また、評価1では、その評価基準として、第1デザイン印刷層による遮蔽印刷層の印刷かすれ及び見栄えについて検証した。また、評価2では、その評価基準として、第1デザイン印刷層による遮蔽印刷層のかきとりの発生、つまり遮蔽印刷層が傷つけられているか否かについて検証した。
【0086】
図9に示すように、評価1において、実施例1では、若干の印刷かすれが発生していることが確かめられたが、ラベル包材の見栄えについては損なわれていなかったので、△評価とした。また、実施例2及び3では、印刷かすれの発生がないことと、見栄えが損なわれていないことが確かめられたので、〇評価とした。
【0087】
また、図9から明らかなように、実施例1~3では、評価2において、遮蔽印刷層のかきとりが発生していないことが実証された。一方、比較例では、第1デザイン印刷層によって遮蔽印刷層がかきとられていることが確認されて、ラベル包材の印刷品質の低下が生じていることが確かめられた。
【0088】
また、本発明の発明者等による検証試験によれば、第1接着部材の硬度としては、JIS K7312:1996に準拠した方法によって測定した測定値が75以上92以下の範囲内の値に設定すれば、ラベル包材の印刷品質が低下するのを抑えることが確認された。また、上記測定値は、好ましくは80以上92以下の範囲内の値、より好ましくは85以上92以下の範囲内の値に設定されることにより、ラベル包材の印刷品質の低下をより抑制することができることが確かめられた。
【0089】
本発明のような構成によれば、凸版印刷を用いてデザイン印刷層を形成した場合でも、印刷品質が低下するのを抑えることができる印刷物(ラベル包材)を構成することができるため、印刷不良による廃棄物の発生を大幅に削減することが可能となる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12の達成にも貢献することができる。
【0090】
〔まとめ〕
本発明の態様1の印刷物の製造方法は、互いに対向する第1面及び第2面を有する基材を備えた印刷物の製造方法であって、前記第1面または前記第2面の第1印刷領域に対して、所定色のインキを用いて基準印刷層を形成する第1形成工程と、前記基準印刷層の、前記基材とは反対側の表面の第2印刷領域に対して、第1デザインで凸版印刷がされた第1デザイン印刷層を形成する第2形成工程と、を含み、前記第2形成工程において、前記凸版印刷には、第1接着部材を介して当該凸版印刷のための第1凸版印刷版を第1スリーブに固定した第1版胴が用いられ、かつ、前記第1接着部材の硬度としては、JIS K7312:1996に準拠した方法によって測定した測定値が75以上92以下の範囲内の値が設定されている。
【0091】
上記の構成によれば、凸版印刷を用いてデザイン印刷層を形成した場合でも、印刷品質が低下するのを抑えることができる印刷物の製造方法を提供することができる。
【0092】
本発明の態様2は、態様1の印刷物の製造方法であって、前記基準印刷層は、第2凸版印刷版が第2接着部材を介して第2スリーブに固定された第2版胴を用いた凸版印刷によって印刷され、前記第2接着部材の硬度は、前記第1接着部材の硬度よりも大きくてもよい。
【0093】
上記の構成によれば、基材の第1印刷領域に対して、基準印刷層を明瞭に印刷できるとともに、第1デザイン印刷層による基準印刷層の傷つきを抑制して印刷品質の低下をより確実に抑えることができる。
【0094】
本発明の態様3は、態様1または態様2の印刷物の製造方法であって、前記基準印刷層が、前記第1印刷領域を遮蔽する遮蔽印刷層であってもよい。
【0095】
上記の構成によれば、第1デザイン印刷層による情報表示を明確にすることができる。これにより、印刷物の見栄えを容易に向上することができる。
【0096】
本発明の態様4は、態様3の印刷物の製造方法であって、前記遮蔽印刷層は、前記第1印刷領域に対して、印刷された第1遮蔽印刷層と、前記第1遮蔽印刷層に積層された第2遮蔽印刷層と、を有し、前記第2印刷領域は、前記第2遮蔽印刷層の、前記第1遮蔽印刷層とは反対側の表面に設けられてもよい。
【0097】
上記の構成によれば、第1デザイン印刷層が第1遮蔽印刷層に積層された第2遮蔽印刷層上に形成される。これにより、印刷品質の低下を抑制しつつ、第1デザイン印刷層の第1デザインを明確に表示することができ、ラベル包材の見栄えをさらに向上することができる。
【0098】
本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれかの態様の印刷物の製造方法であって、前記所定色のインキには、白色顔料または銀色顔料の少なくとも一方が含まれてもよい。
【0099】
上記の構成によれば、基準印刷層に白色顔料または銀色顔料の少なくとも一方が含まれているので、印刷品質の低下を抑制しつつ、第1デザイン印刷層の第1デザインをより明確に表示することができる。この結果、ラベル包材の見栄えをより確実に向上することができる。
【0100】
本発明の態様6は、態様1から態様5のいずれかの態様の印刷物の製造方法であって、前記第1面または前記第2面の第3印刷領域には、第2デザインが印刷された第2デザイン印刷層が設けられてもよい。
【0101】
上記の構成によれば、第1デザイン及び第2デザインを表示するので、多くの情報表示を行うことができる印刷物を製造することができる。
【0102】
本発明の態様7は、態様6の印刷物の製造方法であって、前記基準印刷層、前記第1デザイン印刷層、及び前記第2デザイン印刷層では、水性インキを用いて印刷がされてもよい。
【0103】
上記の構成によれば、水性インキを用いることによって、安全性に優れたラベル包材を容易に構成することができる。
【0104】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、各実施形態および実施例それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0105】
1 ラベル包材(印刷物)
2 ラベル基材(基材)
2a 第1面
2b 第2面
3 遮蔽印刷層
4A、4B 第1デザイン印刷層
6A、6B 第2デザイン印刷層
7 第1遮蔽印刷層
8 第2遮蔽印刷層
12、12A、12B、12C、12D 版胴(第1版胴、第2版胴)
13 スリーブ(第1スリーブ、第2スリーブ)
14 接着部材(第1接着部材、第2接着部材)
15 凸版印刷版(第1凸版印刷版、第2凸版印刷版)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9