(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101788
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005918
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和貴
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BB06
3E013BB09
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD11
3E013BD12
3E013BE01
3E013BF02
3E013BF23
3E013BF34
(57)【要約】
【課題】電子レンジによる加熱によって包装体内部の温度や圧力が増大した場合にも、ヒートシール線がその熱や内圧に耐えて、ヒートシール線の後退や破断が生じない包装体を提供すること。
【解決手段】熱融着可能な熱可塑性樹脂からなる内層12bと、前記内層に積層された外層12aとで構成される積層フィルムで構成された蓋材12を使用して、包装容器11を密封する。蓋材12に、外層12aのうち少なくともその一部を除去して成る溝であって、かつ、前記内層を貫通していない溝から成る脆弱加工線X
1を設けている。そして、脆弱加工線X
1を15mm幅に切り出して測定した引張破断強度(N/15mm)を破断強度Aとし、前記ヒートシール線を15mm幅に切り出して測定した引張破断強度(N/15mm)を封緘強度Bとして、A>17であり、かつ、B>0.26A+6.5とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱融着可能な熱可塑性樹脂からなる内層と、前記内層に積層された外層とで構成される積層フィルムを使用し、周囲でヒートシールして形成された包装体であって、
外層のうち少なくともその一部を除去して成る溝であって、かつ、前記内層を貫通していない溝から成る脆弱加工線が設けられており、
脆弱加工線を15mm幅に切り出して測定した引張破断強度(N/15mm)を破断強度Aとし、前記ヒートシール線を15mm幅に切り出して測定した引張破断強度(N/15mm)を封緘強度Bとして、A>17であり、かつ、B>0.26A+6.5であることを特徴とする包装体。
【請求項2】
熱融着可能な熱可塑性樹脂からなる内層と、前記内層に積層された外層とで構成される積層フィルムを使用し、周囲でヒートシールして形成された包装体であって、
外層のうち少なくともその一部を除去して成る溝であって、かつ、前記内層を貫通していない溝から成る脆弱加工線が設けられており、
脆弱加工線を15mm幅に切り出して測定した引張破断強度(N/15mm)を破断強度Aとし、前記ヒートシール線を15mm幅に切り出して測定した引張破断強度(N/15mm)を封緘強度Bとして、A≦17であり、かつ、B>18であることを特徴とする包装体。
【請求項3】
前記積層フィルムを蓋材として使用し、プラスチックトレーとこの蓋材とを周囲でヒートシールして形成された包装体であって、B≦23であることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項4】
前記脆弱加工線がレーザー加工によって形成されたものである請求項1又は2に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内容物を収容したまま電子レンジで加熱することができる包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、調理済み又は半調理済みの食品を常温、低温、あるいは冷凍保存可能に包装容器に収容密封し、開封せずに電子レンジで加熱して、食べられる状態にする包装体が知られている。
【0003】
包装体を開封せずに電子レンジで加熱すると、包装体内の水分が水蒸気になり、体積が増加する。したがって、水蒸気が逃げられる隙間がないと破袋のおそれがある。一方、内容物が半調理状態等の場合には、単に加熱するだけでなく、発生した水蒸気による蒸らし等が必要となる場合がある。この場合、蒸気が逃げる孔が過度に大きいと、蒸らしが十分行われず、風味が落ちる等の問題がある。
【0004】
この用途に対応した包装体はいくつか知られている。いずれも積層フィルムから構成された包装容器を用いるのが一般的であり、内圧が高まると、積層フィルムの一部に裂け目ができて、この裂け目を蒸気抜き孔として水蒸気を逃がすことにより破袋を防止する。
【0005】
電子レンジによる加熱時に蒸らしも可能な包装体としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の包装体は、外層フィルムの内側にシール層を積層した積層フィルムから包装容器を構成して、その積層フィルムに、外層フィルムの内部に達し、かつ、シール層を貫通しない深さの線状蒸気抜き用脆弱加工線を、レーザー加工によって形成している。この包装体においては、電子レンジで加熱すると、前記脆弱加工線が裂けて細かい貫通孔が形成され、この結果、過度に水蒸気が逃げず、破袋を防ぎつつ蒸らしを行うことが可能となる。そして、この細かい貫通孔が次第に大きくなり、数が増え、互に繋がって大きい蒸気孔を形成する。この蒸気孔は十分な大きさを有するため、包装体内部の水蒸気が排出され、これと共に内圧も低下してその破裂を防ぐのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このような包装体にあっては、電子レンジによる加熱時に内容物を蒸らすため、包装体内部の温度や圧力が増大する。そして、こうして増大した熱と温度によって内容物を蒸らすのだが、前記脆弱加工線が破断して十分な大きさの蒸気孔が開くまでの間、増大した熱と圧力に包装体のヒートシール線も耐える必要がある。仮にヒートシール線のシール強度が不十分な場合には、前記蒸気孔が開く前にヒートシール線が包装体内側から剥離してヒートシール線が後退したり、あるいは積層フィルムが破断して意図しない部位から蒸気が噴き出したり、内容物の漏出が発生することがある。
【0008】
そこで、本発明は、電子レンジによる加熱によって包装体内部の温度や圧力が増大した場合にも、ヒートシール線がその熱や内圧に耐えて、ヒートシール線の後退や破断が生じ
ない包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、熱融着可能な熱可塑性樹脂からなる内層と、前記内層に積層された外層とで構成される積層フィルムを使用し、周囲でヒートシールして形成された包装体であって、
外層のうち少なくともその一部を除去して成る溝であって、かつ、前記内層を貫通していない溝から成る脆弱加工線が設けられており、
脆弱加工線を15mm幅に切り出して測定した引張破断強度(N/15mm)を破断強度Aとし、前記ヒートシール線を15mm幅に切り出して測定した引張破断強度(N/15mm)を封緘強度Bとして、A>17であり、かつ、B>0.26A+6.5であることを特徴とする包装体である。
【0010】
次に、請求項2に記載の発明は、熱融着可能な熱可塑性樹脂からなる内層と、前記内層に積層された外層とで構成される積層フィルムを使用し、周囲でヒートシールして形成された包装体であって、
外層のうち少なくともその一部を除去して成る溝であって、かつ、前記内層を貫通していない溝から成る脆弱加工線が設けられており、
脆弱加工線を15mm幅に切り出して測定した引張破断強度(N/15mm)を破断強度Aとし、前記ヒートシール線を15mm幅に切り出して測定した引張破断強度(N/15mm)を封緘強度Bとして、A≦17であり、かつ、B>18であることを特徴とする包装体である。
【0011】
本発明の包装体は、例えば、前記積層フィルムを蓋材として使用し、プラスチックトレーとこの蓋材とを周囲でヒートシールして形成された包装体であってよい。この場合、B≦23であることが望ましい。
【0012】
また、前記脆弱加工線はレーザー加工によって形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
封緘強度Bが式0.26A+6.5で算出される数値以下であると、脆弱加工線が破断して十分な大きさの蒸気孔が開く前にヒートシール線が後退する。
【0014】
このため、封緘強度Bはその数値より大きい必要がある。そして、封緘強度Bが式0.26A+6.5で算出される数値より大きいと、十分な大きさの前記蒸気孔が開く前にヒートシール線の後退や破断が生じないのである。
【0015】
なお、このとき、脆弱加工線が外層の一部を除去して成る溝で構成されていると、外層の一部が残っているので、十分な大きさの前記蒸気孔が開くときに、脆弱加工線全体にわたって残存する一部の外層が破断し、この破断により十分な大きさの前記蒸気孔が開き、一気に蒸気が抜けていく。
【0016】
一方、脆弱加工線の位置で外層の全部が除去されている場合、あるいは外層の一部が残存していても、その残存する外層がごくわずかである場合には、脆弱加工線はほぼ内層だけで構成されていることになる。この場合には、破断強度Aは小さいが、内圧の上昇に伴って、脆弱加工線上の内層に細かい貫通孔が多数発生する。この細かい貫通孔から蒸気が抜けるが、貫通孔が細かいので、蒸気の抜ける速度が遅く、このため、包装体内部の内圧も上がり続け、この間内容物を蒸らすことができる。そして、このため、脆弱加工線全体にわたって破断して十分な大きさの蒸気孔が開くまでの間、ヒートシール線の後退を防ぐためには、より強い封緘強度Bを必要とする。この場合、破断強度AはA≦17を満たす。封緘強度BはB>18である必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は本発明の第1の実施形態に関し、その包装体の斜視図である。
【
図2】
図2は本発明の第1の実施形態に関し、その蓋材の説明用要部断面図である。
【
図3】
図3は本発明の第1の実施形態に関し、蒸気孔が開いた状態の包装体の斜視図である。
【
図4】
図4は本発明の第2の実施形態に関し、その蓋材の説明用要部断面図である。
【
図5】
図5は本発明の第2の実施形態に関し、
図5(a)は内層に細かい貫通孔が多数発生した状態の包装体の斜視図、
図5(b)は蒸気孔が開いた状態の包装体の斜視図である。
【
図6】
図6は、実験例第1グループに属する各実験例及び比較実験例の結果を示すグラフ図である。
【
図7】
図7は、実験例第2グループに属する各実験例及び比較実験例の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本開示の具体例を説明する。
【0019】
(本発明の第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に関し、その包装体10の斜視図である。
【0020】
この包装体10は、内容物を収容した包装容器11とその蓋材12とで構成されている。包装容器11は任意の合成樹脂を成型して製造したものでよいが、開口部の周囲にフランジを設けて、このフランジで蓋材12をヒートシールしてヒートシール線Y1を形成することができ、こうして形成したヒートシール線Y1で内部を密封できるものが望ましい。容器本体11を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル樹脂等を例示できる。また、成形方法としては、射出成型法を代表例として例示できるが、真空成形法等のシート成形法で成型したものであってもよい。
【0021】
蓋材12は、
図2に示すように、熱融着可能な熱可塑性樹脂からなる内層12bと、この内層12bに積層された外層12aとで構成された積層フィルムから成る。この例では、外層12aは外層フィルム12a
1と接着剤層12a
2とで構成されており、この接着剤層12a
2によって外層フィルム12a
1と内層12bとが接着一体化している。
【0022】
外層フィルム12a1は任意のフィルムでよく、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。単層構造の外層フィルム12a1としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアクリルニトリル、ポリイミド等のフィルムが例示できる。また、これら各種材質のフィルムを積層し、その他のフィルムを積層した多層構造のフィルムであってもよく、更に、蒸着層や印刷層を設けたフィルムを外層フィルム12a1としてもよい。
【0023】
蒸着層としては無機物を材質とする無機蒸着層を利用することができる。無機物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、酸化錫、酸化ナトリウム、酸化ホウ素、酸化チタン、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムなどの金属の酸化物が使用できる。中でも生産性、価格面から酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどが好ましい。これら無機蒸着層をその層構成中に含む外層フィルム12a1は水蒸気や酸素ガス等のバリア性に優れている。
【0024】
印刷層は、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系などのバインダー樹
脂に各種顔料、体質顔料および可塑剤、乾燥剤、安定剤などを添加されてなるインキにより印刷された層である。印刷方法としては、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷方法を用いることができる。また外層フィルム12a1の表面を、前処理として予めコロナ処理またはオゾン処理を施すことにより、印刷層の密着性を向上させることができる。
【0025】
一方、内層12bは、いわゆるシーラント層として機能し、ヒートシールによって包装容器11のフランジに接合して、このフランジと共にヒートシール線Y1を形成するものである。
【0026】
内層12bとしては、熱融着可能な熱可塑性樹脂、例えば公知の各種汎用ポリオレフィンおよび特殊ポリオレフィンを用いることができる。具体例としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンアクリル酸共重合体(EAA)、エチレンメタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンメチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレンアクリル酸メチル共重合体(EMA)、及びアイオノマー等を挙げることができるが、これらに限られない。これらの樹脂を押出し機によりフィルム状に製膜することにより、内層12bとして使用することが可能である。
【0027】
次に、接着剤層12a2を構成する接着剤としては、たとえば、ドライラミネート用接着剤を使用できる。例えば、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤等である。積層方法としてはドライラミネート法にて可能である。なお、このほか、接着性樹脂を溶融押出し製膜して、その接着力を失わない間に外層フィルム12a1と内層12bとを圧着して積層することも可能である。
【0028】
そして、
図1及び
図2から分かるように、この蓋材12には、脆弱加工線X
1が設けられている。脆弱加工線X
1は、外層12aのうち少なくともその一部を除去して成る溝であって、かつ、前記内層12bを貫通していない溝で構成されている。この実施形態では、脆弱加工線X
1は外層12aの一部を除去した溝である。すなわち、脆弱加工線X
1は、外層12a側から掘削した溝で構成されており、その先端は外層フィルム12a
1の内部に留まっている。このため、この脆弱加工線X
1は内層12bや接着剤層12a
2に達しておらず、この脆弱加工線X
1の位置でも、内層12bや接着剤層12a
2は無傷のまま残っている。また、外層フィルム12a
1もその一部が残っている。
【0029】
この包装体10を、内容物を密封したまま電子レンジ中で加熱すると、包装体10内部の内容物が発熱する。そして、この発熱と温度上昇に伴って、包装体10内部に水蒸気が発生し、また、その内圧も増大する。そして、その内圧が限界に達すると、
図3に示すように、脆弱加工線X
1の全体にわたって、内層12b、接着剤層12a
2及び残存する外層フィルム12a
1の一部が、同時に破断して蒸気孔X’
1が開く。なお、このとき破裂音を伴うこともあるが、包装体10の破裂に伴う破裂音よりはるかに小さい音である。そして、こうして、開いた蒸気孔X’
1から一気に水蒸気が抜けていく。この水蒸気の放出により、包装体10内部の内圧も低下して、包装体10の破裂を防止することができる。
【0030】
ところで、このように包装体10の破裂を防止するためには、脆弱加工線X1の位置で蓋材12が破断するまでの間、ヒートシール線Y1において包装容器11と蓋材12との間で剥離が生じないように、十分なシール強度でヒートシールされていなくてはならない。そこで、この実施形態では、脆弱加工線X1の位置で蓋材12を15mm幅に切り出して得られた試料片を使用して、測定した脆弱加工線X1の引張破断強度(N/15mm)を破断強度Aとし、前記ヒートシール線Y1を含むように15mm幅に切り出して得られた試料片を使用して、測定したヒートシール線Y1における引張破断強度(N/15mm)を封緘強度Bとしたとき、式B>0.26A+6.5を満たすように構成している。後述する実験例第1グループから分かるように、破断強度Aと封緘強度Bとが式B>0.26A+6.5を満たすとき、脆弱加工線X1の位置で蓋材12が破断するまでの間、ヒートシール線Y1において包装容器11と蓋材12との間で剥離が生じることがなく、また、そのヒートシール線Y1が包装体内側から剥離してヒートシール線が後退するシール後退も生じない。なお、封緘強度Bは23N/15mm以下でよい。
【0031】
なお、脆弱加工線X1は、外層12a側からレーザー光線を照射して形成することができる。そして、脆弱加工線X1の引張破断強度(破断強度A)は、レーザー光線の照射条件によってコントロールすることができる。例えば、その強度、照射時間や走査速度等である。
【0032】
また、ヒートシール線Y1における引張破断強度(封緘強度B)は、ヒートシールの際の温度、圧力、時間等の条件によって制御することが可能である。
【0033】
なお、前述のように、外層12aの一部を残して脆弱加工線X1を形成した場合、破断強度A、すなわち、脆弱加工線X1の引張破断強度(N/15mm)は、一般に17N/15mmより大きい(A>17)。一方、第2の実施形態として次に説明するように、外層を貫通して、先端が内層に達するように脆弱加工線を形成した場合には、脆弱加工線は内層だけで形成されているので、その破断強度A(N/15mm)は一般に17N/15mm以下(A≦17)である。
【0034】
(本発明の第2の実施形態)
この実施形態に係る包装体20は、脆弱加工線X
2が外層22aを貫通して、先端が内層22bに達している点を除き、第1の実施形態に係る包装体10と同様である。
図4は、このように内層22bに達する脆弱加工線X
2を設けた蓋材の説明用要部断面図である。
すなわち、この包装体20は、包装容器21の開口部周囲のフランジに蓋材22を重ね、ヒートシールすることにより、そのヒートシール線Y
2で密封したものである。蓋材22は外層22aと内層22bとで構成されており、外層22aは外層フィルム22a
1と接着剤層22a
2とで構成されている。包装容器21、外層フィルム22a
1、接着剤層22a
2および内層22bの材質は、それぞれ、第1の実施形態における包装容器11、外層フィルム12a
1、接着剤層12a
2および内層12bの材質と同様であり、また、その製造方法も、第1の実施形態の場合と同様である。
【0035】
ところで、この実施形態においては、脆弱加工線X2の位置では内層22bだけが残っており、外層22aは完全に除去されているので、破断強度A、すなわち、脆弱加工線X2の引張破断強度(N/15mm)は、外層22aの一部が残されている場合に比較して小さいものとなり、一般に17N/15mm以下(A≦17)である。なお、外層22aの一部が残存していても、その残存する外層22aがごくわずかである場合には、脆弱加工線がX2内層22bだけで構成されている場合と変わらない。その破断強度Aは一般に17N/15mm以下(A≦17)である。
【0036】
しかしながら、このように脆弱加工線X2の位置で外層22aが実質的に除去されている包装体20を、内容物を密封したまま電子レンジ中で加熱した場合の挙動は、この位置に外層12aが残っている実施形態1の包装体10を加熱した場合の挙動とは異なっている。
【0037】
すなわち、
図5(a)に示すように、電子レンジ加熱に伴う温度上昇と内圧の上昇によ
って、脆弱加工線X
2の位置において蓋材22は、外層22aが脆弱加工線X
2の位置で開くと共に内層22bが薄く引き延ばされ、こうして薄く引き延ばされた内層22bが部分的に裂けてそこに細かい貫通孔αが形成される。水蒸気はこの細かい貫通孔αから放出されるが、貫通孔αが細かいので、水蒸気の抜ける速度は遅いため過度に水蒸気が逃げず、このため、包装体20内部の内圧も上がり続け、この間内容物を蒸らすことができる。
【0038】
そして、その内圧の上昇に伴って、内層22bの裂け目で形成された貫通孔αが大きくなり、また、その数も増え、貫通孔α同士が繋がり、やがて、脆弱加工線X
2全体に広がって、
図5(b)に示すように、十分な大きさの蒸気孔X’
2が開く。こうして、開いた蒸気孔X’
2から水蒸気が十分に放出され、包装体20内部の内圧も低下する。
【0039】
このように脆弱加工線X2の位置で外層22aが実質的に除去されている場合には、貫通孔αが脆弱加工線X2全体に広がるまでの間、包装体20の内圧は増大し続ける。したがって、この場合のヒートシール線Y2は、そのときまで、すなわち、貫通孔αが脆弱加工線X2全体に広がるまで包装容器11と蓋材12との間で剥離が生じないように、十分なシール強度でヒートシールされていなくてはならない。この場合には、脆弱加工線X1の位置に外層12aが残っている場合(第1の実施形態)の場合に比べて、返って封緘強度B、すなわち、ヒートシール線Y2の引張破断強度(N/15mm)を高くする必要がある。
【0040】
この実施形態では、封緘強度B(N/15mm)を18より大きくしている(B>18)。後述する実験例第2グループから分かるように、破断強度Aと封緘強度Bとが、式A≦17と式B>18の両式を満たすとき、脆弱加工線X2全体に広がった十分な大きさの蒸気孔X’2が開くまでの間、ヒートシール線Y2において包装容器21と蓋材12との間で剥離が生じることがなく、また、そのヒートシール線Y2が包装体内側から剥離してヒートシール線が後退するシール後退も生じない。なお、このように封緘強度Bが18N/15mmより大きい場合にも、封緘強度Bは23N/15mm以下でよい。
【0041】
なお、脆弱加工線X2の引張破断強度(破断強度A)は、第1の実施形態の場合と同様に、レーザー光線の強度、照射時間や走査速度等の照射条件によってコントロールすることができる。また、ヒートシール線Y2における引張破断強度(封緘強度B)も、ヒートシールの際の温度、圧力、時間等の条件によって制御することが可能である。
【0042】
(その他の実施形態)
以上、包装容器とその蓋材とで構成された包装体を例として本発明を説明したが、本発明はこれに限られず、任意の包装体であってよい。
【0043】
例えば、表裏のフィルムをその周縁で互いにヒートシールして形成された包装袋であってもよい。この場合、表裏のフィルムのうち、少なくとも一方のフィルムに、外層のうち少なくともその一部を除去して成る溝であって、かつ、前記内層を貫通していない溝から成る脆弱加工線が設けられていれば十分である。
【実施例0044】
続いて、本発明について、実験例を用いてさらに説明する。
【0045】
これらの実験例では、包装容器11として正方形状のポリプロピレン製トレーを使用した。
【0046】
また、蓋材は、外層フィルムとして厚さ12μmのポリエステルフィルムを使用し、また、内層として厚さ50μmのエチレン-プロピレン共重合体フィルムを使用し、この外
層フィルムと内層とをドライラミネート接着剤で接着したものである。
【0047】
そして、その外層側から炭酸ガスレーザーを照射して脆弱加工線を形成した。脆弱加工線の位置は蓋材の中央で、長さ30mmの直線状である。そして、この脆弱加工線の引張破断強度(破断強度A)は、炭酸ガスレーザーの出力によって制御した。
【0048】
次に、包装容器に水40ミリリットルを収容し、そのフランジに蓋材をヒートシールして密封した。そして、そのヒートシール線Y2における引張破断強度(封緘強度B)は、ヒートシール温度によって制御した。
【0049】
こうして得られた包装体を、1600W、1分の条件で電子レンジによって加熱し、
その結果、蒸気孔が開口したか否か、シール後退が発生したか否か、包装体が破裂することに伴う破裂音が生じたか否か、という3つの観点から評価した。
【0050】
なお、蒸気孔開口の有無については、開口したものを「〇」と評価し、開口しないものを「×」と評価した。
【0051】
シール後退の有無については、シール後退が生じないものを「〇」と評価し、発生したものを「×」と評価した。
【0052】
また、破裂音発生の有無については、破裂音がしないものを「〇」と評価し、破裂音がしたものを「×」と評価した。
【0053】
(実験例第1グループ)
実験例第1グループは、破断強度A、すなわち、脆弱加工線の引張破断強度を17N/15mmより大きくした実験例のグループである。この実験例第1グループは、実験例1-1~実験例1-14と、これらに対比する比較実験例1-1~比較実験例1-4とで構成されている。
【0054】
実験例第1グループに属する各実験例及び各比較実験例について、その脆弱加工線X1形成時の炭酸ガスレーザーの出力、脆弱加工線の引張破断強度(破断強度A)、ヒートシール線Y2形成時のヒートシール温度、ヒートシール線における引張破断強度(封緘強度B)と共に、評価の結果を表1に整理して示す。
【0055】
【0056】
また、
図6は、横軸を破断強度Aとし、縦軸を封緘強度Bとして、実験例第1グループに属する各実験例及び各比較実験例の結果をプロットしたグラフ図である。
【0057】
これら表1及び
図6から分かるように、破断強度Aが17N/15mmより大きいときには、
図6において、実験結果を示す座標が、式B=0.26A+6.5を満たす線より上方に位置するとき、すなわち、式B>0.26A+6.5を満たすとき、シール後退が生じることなく、蒸気孔が開口することが理解できた。そして、こうして開口した蒸気孔から包装体内部の水蒸気が速やかに放出されて包装体の内圧の増大を防ぐため、包装体が破裂することがないことも理解できる。
【0058】
(実験例第2グループ)
実験例第2グループは、破断強度A、すなわち、脆弱加工線X2の引張破断強度を17N/15mm以下とした実験例のグループである。この実験例第2グループは、実験例2-1~実験例2-4と、これらに対比する比較実験例2-1~比較実験例2-4とで構成されている。
【0059】
実験例第2グループに属する各実験例及び各比較実験例について、その脆弱加工線X2形成時の炭酸ガスレーザーの出力、脆弱加工線の引張破断強度(破断強度A)、ヒートシール線Y2形成時のヒートシール温度、ヒートシール線における引張破断強度(封緘強度B)と共に、評価の結果を表2に整理して示す。
【0060】
【0061】
また、
図7は、横軸を破断強度Aとし、縦軸を封緘強度Bとして、実験例第2グループに属する各実験例及び各比較実験例の結果をプロットしたグラフ図である。
【0062】
これら表2及び
図7から分かるように、脆弱加工線X
2の引張破断強度を17N/15mm以下のときには、
図7において、実験結果を示す座標が式B>0.26A+6.5を満たすだけでは足らず、式B>18を満たすとき、シール後退が生じることなく、蒸気孔が開口することが理解できた。そして、こうして開口した蒸気孔から包装体内部の水蒸気が速やかに放出されて包装体の内圧の増大を防ぐため、包装体が破裂することがない。