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特開2024-101790光空間通信装置の制御装置、光空間通信システム、光空間通信装置、および、光空間通信装置の制御方法
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  • 特開-光空間通信装置の制御装置、光空間通信システム、光空間通信装置、および、光空間通信装置の制御方法 図1
  • 特開-光空間通信装置の制御装置、光空間通信システム、光空間通信装置、および、光空間通信装置の制御方法 図2
  • 特開-光空間通信装置の制御装置、光空間通信システム、光空間通信装置、および、光空間通信装置の制御方法 図3
  • 特開-光空間通信装置の制御装置、光空間通信システム、光空間通信装置、および、光空間通信装置の制御方法 図4
  • 特開-光空間通信装置の制御装置、光空間通信システム、光空間通信装置、および、光空間通信装置の制御方法 図5
  • 特開-光空間通信装置の制御装置、光空間通信システム、光空間通信装置、および、光空間通信装置の制御方法 図6
  • 特開-光空間通信装置の制御装置、光空間通信システム、光空間通信装置、および、光空間通信装置の制御方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101790
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】光空間通信装置の制御装置、光空間通信システム、光空間通信装置、および、光空間通信装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/112 20130101AFI20240723BHJP
   H04B 10/564 20130101ALI20240723BHJP
   H04B 10/079 20130101ALN20240723BHJP
【FI】
H04B10/112
H04B10/564
H04B10/079
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005922
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山崎 耕太郎
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA26
5K102AL11
5K102AL22
5K102LA06
5K102LA13
5K102LA26
5K102LA35
5K102LA52
5K102MA01
5K102MB02
5K102MC11
5K102MD01
5K102MD04
5K102MH01
5K102MH02
5K102MH03
5K102MH11
5K102MH13
5K102MH14
5K102MH21
5K102MH22
5K102MH26
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】通信損失の予測におけるモデル誤差を低減し、通信光の送信出力を適切に制御する。
【解決手段】光空間通信装置の制御装置(10)は、通信光の送信出力および受光レベルから算出される通信損失の実測値と大気の状態とを対応付けた学習用データを用いて、機械学習モデル(M)を機械学習する学習部(13)と、機械学習モデル(M)を用いて算出した通信損失の予測値に基づいて光空間通信装置の送信出力を制御する制御部(15)を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光空間通信装置の制御装置であって、
前記光空間通信装置が対向局に通信光を送信したときの、大気の状態、当該通信光の送信出力、および、前記対向局における当該通信光の受光レベルを含む損失関連情報を取得する取得部と、
前記損失関連情報に含まれる前記送信出力および前記受光レベルから算出される、前記光空間通信装置と前記対向局との間の通信損失の実測値と、当該損失関連情報に含まれる前記大気の状態とを対応付けた学習用データを生成する生成部と、
前記学習用データを用いて、大気の状態が入力され、前記通信損失の予測値を出力する機械学習モデルを機械学習する学習部と、
前記機械学習モデルを用いて、前記大気の状態から、前記通信損失の予測値を算出する予測部と、
前記通信損失の予測値に基づいて、前記光空間通信装置の送信出力を制御する制御部と、を備える光空間通信装置の制御装置。
【請求項2】
前記予測部が算出した前記通信損失の予測値と、
当該通信損失の予測値に基づいて前記制御部が制御した前記送信出力、および、当該送信出力で送信された通信光の前記対向局における受光レベルから算出される前記通信損失の実測値と、
に基づいて、前記通信損失の予測誤差を算出する誤差算出部をさらに備えている、請求項1に記載の光空間通信装置の制御装置。
【請求項3】
前記光空間通信装置による前記通信光の送信ごとに、前記取得部による前記損失関連情報の取得、前記生成部による前記学習用データの生成、前記学習部による前記機械学習モデルの機械学習、前記予測部による前記通信損失の予測値の算出、前記制御部による前記送信出力の制御を繰り返し実行する、請求項1に記載の光空間通信装置の制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光空間通信装置の制御装置を備える、光空間通信装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光空間通信装置の制御装置と、前記光空間通信装置とを備える、光空間通信システム。
【請求項6】
光空間通信装置の制御方法であって、
前記光空間通信装置が対向局に通信光を送信したときの、大気の状態、当該通信光の送信出力、および、前記対向局における当該通信光の受光レベルを含む損失関連情報を取得すること、
前記損失関連情報に含まれる前記送信出力および前記受光レベルから算出される、前記光空間通信装置と前記対向局との間の通信損失の実測値と、当該損失関連情報に含まれる前記大気の状態とを対応付けた学習用データを生成すること、
前記学習用データを用いて、大気の状態が入力され、前記通信損失の予測値を出力する機械学習モデルを機械学習すること、
前記機械学習モデルを用いて、前記大気の状態から、前記通信損失の予測値を算出すること、ならびに
前記通信損失の予測値に基づいて、前記光空間通信装置の送信出力を制御すること、を含む、光空間通信装置の制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光空間通信装置の制御装置、光空間通信システム、光空間通信装置、および、光空間通信装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光空間通信システムでは、大気を介して通信光をやり取りするため、大気による通信光の損失が発生する。そのため、通信光の出力パラメータは、大気による通信光の損失を考慮して決定される。大気による通信光の損失の導出は、例えば、シミュレーションにより事前に計算することにより行なわれる。例えば、特許文献1には、大気状態監視センサが検出した物理量に基づいて伝搬路における伝搬損失を求めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-114801公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、大気による通信光の損失(通信損失)には、未知パラメータが多く存在するため、シミュレーションにはモデル誤差が存在する。そのため、通信光の送信出力には、モデル誤差に対応するためのマージンが必要となる。したがって、消費電力および発熱等について、モデル誤差を考慮した設計が必要となるという問題が存在する。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、通信損失の予測におけるモデル誤差を低減し、通信光の送信出力を適切に制御するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る光空間通信装置の制御装置は、光空間通信装置の制御装置であって、前記光空間通信装置が対向局に通信光を送信したときの、大気の状態、当該通信光の送信出力、および、前記対向局における当該通信光の受光レベルを含む損失関連情報を取得する取得部と、前記損失関連情報に含まれる前記送信出力および前記受光レベルから算出される、前記光空間通信装置と前記対向局との間の通信損失の実測値と、当該損失関連情報に含まれる前記大気の状態とを対応付けた学習用データを生成する生成部と、前記学習用データを用いて、大気の状態が入力され、前記通信損失の予測値を出力する機械学習モデルを機械学習する学習部と、前記機械学習モデルを用いて、前記大気の状態から、前記通信損失の予測値を算出する予測部と、前記通信損失の予測値に基づいて、前記光空間通信装置の送信出力を制御する制御部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る光空間通信装置の制御方法は、光空間通信装置の制御方法であって、前記光空間通信装置が対向局に通信光を送信したときの、大気の状態、当該通信光の送信出力、および、前記対向局における当該通信光の受光レベルを含む損失関連情報を取得すること、前記損失関連情報に含まれる前記送信出力および前記受光レベルから算出される、前記光空間通信装置と前記対向局との間の通信損失の実測値と、当該損失関連情報に含まれる前記大気の状態とを対応付けた学習用データを生成すること、前記学習用データを用いて、大気の状態が入力され、前記通信損失の予測値を出力する機械学習モデルを機械学習すること、前記機械学習モデルを用いて、前記大気の状態から、前記通信損失の予測値を算出すること、ならびに前記通信損失の予測値に基づいて、前記光空間通信装置の送信出力を制御すること、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、通信損失の予測におけるモデル誤差を低減し、通信光の送信出力を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る光空間通信装置の制御装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係る光空間通信装置の制御装置の概略動作の一例を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態2に係る光空間通信装置の制御装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態2に係る光空間通信装置の制御装置の概略動作の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態2に係る光空間通信装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図6】本発明の実施形態2に係る光空間通信システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
図7】コンピュータの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔例示的実施形態1〕
本発明の第1の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態は、後述する例示的実施形態の基本となる形態である。
【0011】
(制御装置の構成)
本例示的実施形態に係る制御装置10の構成について、図1を参照して説明する。図1は、制御装置10の概略構成の一例を示すブロック図である。制御装置10は、光空間通信装置を制御する制御装置である。光空間通信装置は、光空間通信を行う通信装置である。光空間通信とは、空間を伝搬する光を用いた通信である。光空間通信に用いられる光には、ミリ波、サブミリ波、赤外光、可視光、紫外光等が含まれ得る。
【0012】
制御装置10は、取得部11、生成部12、学習部13、予測部14、および、制御部15を備えている。
【0013】
取得部11は、損失関連情報を取得する。損失関連情報は、光空間通信装置が対向局に通信光を送信したときの、大気の状態、当該通信光の送信出力、および、前記対向局における当該通信光の受光レベルを含む。
【0014】
すなわち、損失関連情報に含まれる大気の状態は、光空間通信装置が対向局に当該通信光を送信したときの大気の状態である。また、損失関連情報に含まれる送信出力は、光空間通信装置が対向局に当該通信光を送信したときの送信出力である。また、損失関連情報に含まれる受光レベルは、光空間通信装置が対向局に当該通信光を送信したときの対向局における受光レベルである。
【0015】
大気の状態としては、特に限定されないが、以下のようなデータを含めてよい。また、下記データは、実測値であってもよいし、予測値であってもよい。取得部11は、これらのデータを、天候に関する情報を提供する外部のサーバ等から取得してもよい。
・温度(気温)
・湿度
・降雨量
・降雪量
・視程
・雲量
・風速
・天候
一態様において、取得部11は、損失関連情報の一部または全部を光空間通信装置から取得してもよい。また、一態様において、取得部11は、光空間通信装置から通信光の送信出力を取得し、光空間通信装置または対向局から通信光の受光レベルを取得してもよい。取得部11は、各種情報を図示しない任意の通信手段を介して取得してよい。
【0016】
生成部12は、学習用データを生成する。学習用データは、光空間通信装置と対向局との間の通信損失の実測値と、大気の状態とを含む。通信損失の実測値は、損失関連情報に含まれる送信出力および受光レベルから算出され、大気の状態と対応付けられている。生成部12は、取得部11が取得した損失関連情報に含まれる送信出力および受光レベルから通信損失の実測値を算出するとともに、当該損失関連情報に含まれる大気の状態を対応付ける。すなわち、学習用データでは、光空間通信装置が対向局に通信光を送信したときの大気の状態と、当該通信光の通信損失の実測値とが対応付けられている。
【0017】
学習部13は、生成部12が生成した学習用データを用いて、機械学習モデルMを機械学習する。機械学習モデルMは、大気の状態が入力され、通信損失の予測値を出力する機械学習モデルである。
【0018】
機械学習モデルMに使用されるアルゴリズムは特に限定されず、例えば以下のような機械学習アルゴリズムの何れかまたはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0019】
・サポートベクターマシン(SVM: Support Vector Machine)
・クラスタリング(Clustering)
・帰納論理プログラミング(ILP: Inductive Logic Programming)
・遺伝的アルゴリズム(GP: Genetic Programming)
・ベイジアンネットワーク(BN: Bayesian Network)
・ニューラルネットワーク(NN: Neural Network)
なお、ニューラルネットワークとしては、例えば、深層ニューラルネットワークを使用してもよい。
【0020】
予測部14は、機械学習モデルMを用いて、大気の状態から、通信損失の予測値を算出する。
【0021】
制御部15は、予測部14が算出した通信損失の予測値に基づいて、光空間通信装置の送信出力を制御する。一例において、制御部15は、対向局における受光レベルが所望の受光レベルとなるように、通信損失の予測値に基づいて、光空間通信装置の送信出力を制御してよい。また、制御部15は、送信出力を規定する出力パラメータを含む制御信号を光空間通信装置に送信することにより、光空間通信装置の送信出力を制御してよい。
【0022】
(制御装置の動作)
本例示的実施形態に係る光空間通信装置の制御方法の流れについて、図2を参照して説明する。図2は、制御装置10の概略動作の一例を示すフローチャートである。
【0023】
ステップS11において、取得部11は、光空間通信装置が対向局に通信光を送信したときの、大気の状態、当該通信光の送信出力、および、対向局における当該通信光の受光レベルを含む損失関連情報を取得する(取得処理)。
【0024】
ステップS12において、生成部12は、ステップS11において取得された損失関連情報に含まれる送信出力および受光レベルから算出される、光空間通信装置と対向局との間の通信損失の実測値と、当該損失関連情報に含まれる大気の状態とを対応付けた学習用データを生成する(生成処理)。
【0025】
ステップS13において、学習部13は、ステップS12において生成された学習用データを用いて、大気の状態が入力され、通信損失の予測値を出力する機械学習モデルMを機械学習する(学習処理)。
【0026】
ステップS14において、予測部14は、ステップS13において機械学習された機械学習モデルMを用いて、大気の状態から、通信損失の予測値を算出する(算出処理)。
【0027】
ステップS15において、制御部15は、ステップS14において算出された通信損失の予測値に基づいて、光空間通信装置の送信出力を制御する(制御処理)。
【0028】
(本実施形態の効果)
以上のように、本例示的実施形態に係る制御装置10は、大気の状態と通信損失の実測値とを学習用データとして機械学習モデルMを機械学習し、機械学習した機械学習モデルMを用いて通信損失の予測値を算出することにより、通信損失の実測値と通信損失の予測値との誤差を0に近づけることができる。これにより、制御装置10は、通信損失の予測におけるモデル誤差を低減し、通信光の送信出力を適切に制御することができる。これにより、消費電力や発熱等の出力に関連する項目に関して最適な設計が可能となる。
【0029】
〔例示的実施形態2〕
本発明の第2の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、例示的実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0030】
(制御装置の構成)
図3は、本例示的実施形態に係る制御装置20の概略構成の一例を示すブロック図である。図3には、制御装置20が制御する光空間通信装置100、および、光空間通信装置100の通信相手である対向局100Aも記載されている。
【0031】
対向局100Aは、光空間通信装置であり、光空間通信装置100と光空間通信を行う。一態様において、光空間通信装置100と対向局100Aとは、双方向の光空間通信を行う。光空間通信には、データ通信の他、制御信号の通信も含まれる。制御信号の通信には、他方の光空間通信装置から受信した通信光の受光レベルを、当該他方の光空間通信装置に送信する通信も含まれる。
【0032】
制御装置20は、取得部21、データ保管部(生成部)22、学習部23、予測部24、制御部25および誤差算出部26を備えている。
【0033】
取得部21は、実施形態1における取得部11と同等の機能を有し、損失関連情報を取得する。
【0034】
データ保管部22は、実施形態1における生成部12と同等の機能を有し、格納データDを生成し、保管(記憶)する。格納データDは、通信損失の実測値、大気の状態、および、通信損失の予測値を含む。通信損失の実測値および大気の状態は対応付けられており、学習用データを構成する。データ保管部22は、取得部21が取得した損失関連情報に含まれる送信出力および受光レベルから通信損失の実測値を算出するとともに、当該損失関連情報に含まれる大気の状態を対応付ける。
【0035】
また、格納データDにおいて、通信損失の予測値も通信損失の実測値と対応付けられている。詳細には、通信損失の予測値は、予測部24が算出した通信損失の予測値である。通信損失の実測値は、当該通信損失の予測値に基づいて制御部25が制御した送信出力、および、当該送信出力で送信された通信光の対向局100Aにおける受光レベルから算出される通信損失の実測値である。すなわち、格納データDに含まれる通信損失の予測値および通信損失の実測値は、同一の通信光の通信損失のそれぞれ予測値および実測値である。
【0036】
学習部23は、実施形態1における学習部13と同等の機能を有し、機械学習モデルMを機械学習する。学習部23は、格納データDに含まれる学習用データを用いて、機械学習モデルMを機械学習する。
【0037】
予測部24は、実施形態1における予測部14と同等の機能を有し、機械学習モデルMを用いて、大気の状態から、通信損失の予測値を算出する。予測部24は、例えば、取得部21を介して大気の状態を取得し、機械学習モデルMに入力することにより、通信損失の予測値を算出することができる。
【0038】
制御部25は、実施形態1における制御部15と同等の機能を有し、予測部24が算出した通信損失の予測値に基づいて、光空間通信装置の送信出力を制御する。一例において、制御部25は、対向局における受光レベルが所望の受光レベルとなるように、通信損失の予測値に基づいて、光空間通信装置の送信出力を制御してよい。この場合、制御部25は、通信損失の予測値が大きいほど、光空間通信装置の送信出力が大きくなるように当該送信出力を制御することになる。また、所望の受光レベルとしては、例えば、対向局において通信光に含まれる信号をエラーなく受信することができる最低限の受光レベルとしてもよい。また、送信出力は、光空間通信装置から送信される通信光の強度であってよい。
【0039】
誤差算出部26は、格納データDに含まれる通信損失の予測値と実測値とに基づいて、通信損失の予測誤差を算出する。通信損失の予測誤差は、制御装置20が、通信損失をどの程度の精度で予測しているかを示す指標である。通信損失の予測誤差は0に近いことが好ましい。
【0040】
制御装置20は、光空間通信装置100による通信光の送信ごとに、取得部21による損失関連情報の取得、データ保管部22による格納データDの保管、学習部23による機械学習モデルMの機械学習、予測部24による通信損失の予測値の算出、制御部25による送信出力の制御を繰り返し実行する。これにより、通信損失の予測誤差を自動的に0に近づけることができる。
【0041】
(制御装置の動作)
本例示的実施形態に係る光空間通信装置の制御方法の流れについて、図4を参照して説明する。図4は、制御装置20の概略動作の一例を示すフローチャートである。
【0042】
ステップS21において、取得部21は、光空間通信装置100が対向局100Aに通信光を送信したときの、大気の状態、当該通信光の送信出力、および、対向局における当該通信光の受光レベルを含む損失関連情報を取得する(取得処理)。
【0043】
ステップS22において、データ保管部22は、格納データDを生成し、保管(記憶)する(生成処理)。格納データDには、ステップS21において取得された損失関連情報に含まれる送信出力および受光レベルから算出される、光空間通信装置100と対向局100Aとの間の通信損失の実測値と、当該損失関連情報に含まれる大気の状態とを対応付けた学習用データが含まれる。格納データDには、また、通信損失の実測値に対応する通信損失の予測値が含まれる。
【0044】
ステップS23において、誤差算出部26は、ステップS22において保管された格納データDに含まれる通信損失の実測値と、通信損失の実測値に対応する通信損失の予測値とに基づいて通信損失の予測誤差を算出する。
【0045】
ステップS24において、学習部23は、ステップS22において保管された格納データDに含まれる学習用データを用いて、大気の状態が入力され、通信損失の予測値を出力する機械学習モデルMを機械学習する(学習処理)。
【0046】
ステップS25において、予測部24は、ステップS24において機械学習された機械学習モデルMを用いて、大気の状態から、通信損失の予測値を算出する(算出処理)。
【0047】
ステップS26において、制御部25は、ステップS25において算出された通信損失の予測値に基づいて、光空間通信装置100の送信出力を制御する(制御処理)。
【0048】
そして、光空間通信装置100が、ステップS26において制御された送信出力によって通信光を送信した後、ステップS21に戻り、各処理を繰り返し実行する。
【0049】
(適用例)
一例として、制御装置20は、個々の光空間通信装置100に組み込んでもよい。図5は、光空間通信装置100の概略構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、光空間通信装置100は、通信光を送受信する送受光部110と、制御装置20とを備えていてもよい。これにより、個々の光空間通信装置100において送信出力の最適化を図ることができる。
【0050】
また、一例として、制御装置20は、複数の光空間通信装置100を制御してもよい。図6は、光空間通信システム1の概略構成の一例を示すブロック図である。図6に示すように、光空間通信システム1は、1以上の光空間通信装置100と、制御装置20とを備えている。これにより、個々の光空間通信装置100に構成を追加することなく、各光空間通信装置100の送信出力の最適化を図ることができる。
【0051】
(本実施形態の効果)
以上のように、本例示的実施形態に係る制御装置20によっても、通信損失の予測におけるモデル誤差を低減し、通信光の送信出力を適切に制御することができる。これにより、消費電力や発熱等の出力に関連する項目に関して最適な設計が可能となる。
【0052】
また、制御装置20は、光空間通信装置に対し、自動で最適な送信出力の決定を行なうことができるため、本来時間のかかるモデル誤差を考慮した出力の設計が必要なくなる。また、今までは個別のシステムごとにモデル誤差等を算出していたが、制御装置10のパラメータ範囲や評価基準等を変更することで流用可能となり、開発期間等を削減することができる。
【0053】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置10および20の一部又は全部の機能は、集積回路(ICチップ)等のハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0054】
後者の場合、制御装置10および20は、例えば、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータによって実現される。このようなコンピュータの一例(以下、コンピュータCと記載する)を図7に示す。コンピュータCは、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2と、を備えている。メモリC2には、コンピュータCを制御装置10および20として動作させるためのプログラムPが記録されている。コンピュータCにおいて、プロセッサC1は、プログラムPをメモリC2から読み取って実行することにより、光空間通信装置の制御装置100の各機能が実現される。
【0055】
プロセッサC1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)、量子プロセッサ、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリC2としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0056】
なお、コンピュータCは、プログラムPを実行時に展開したり、各種データを一時的に記憶したりするためのRAM(Random Access Memory)を更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、他の装置との間でデータを送受信するための通信インタフェースを更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、キーボードやマウス、ディスプレイやプリンタなどの入出力機器を接続するための入出力インタフェースを更に備えていてもよい。
【0057】
また、プログラムPは、コンピュータCが読み取り可能な、一時的でない有形の記録媒体Mに記録することができる。このような記録媒体Mとしては、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、又はプログラマブルな論理回路などを用いることができる。コンピュータCは、このような記録媒体Mを介してプログラムPを取得することができる。また、プログラムPは、伝送媒体を介して伝送することができる。このような伝送媒体としては、例えば、通信ネットワーク、又は放送波などを用いることができる。コンピュータCは、このような伝送媒体を介してプログラムPを取得することもできる。
【0058】
〔付記事項1〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0059】
〔付記事項2〕
上述した実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得る。ただし、本発明は、以下の記載する態様に限定されるものではない。
【0060】
(付記1)
光空間通信装置の制御装置であって、
前記光空間通信装置が対向局に通信光を送信したときの、大気の状態、当該通信光の送信出力、および、前記対向局における当該通信光の受光レベルを含む損失関連情報を取得する取得部と、
前記損失関連情報に含まれる前記送信出力および前記受光レベルから算出される、前記光空間通信装置と前記対向局との間の通信損失の実測値と、当該損失関連情報に含まれる前記大気の状態とを対応付けた学習用データを生成する生成部と、
前記学習用データを用いて、大気の状態が入力され、前記通信損失の予測値を出力する機械学習モデルを機械学習する学習部と、
前記機械学習モデルを用いて、前記大気の状態から、前記通信損失の予測値を算出する予測部と、
前記通信損失の予測値に基づいて、前記光空間通信装置の送信出力を制御する制御部と、を備える光空間通信装置の制御装置。
【0061】
(付記2)
前記予測部が算出した前記通信損失の予測値と、
当該通信損失の予測値に基づいて前記制御部が制御した前記送信出力、および、当該送信出力で送信された通信光の前記対向局における受光レベルから算出される前記通信損失の実測値と、
に基づいて、前記通信損失の予測誤差を算出する誤差算出部をさらに備えている、付記1に記載の光空間通信装置の制御装置。
【0062】
(付記3)
前記光空間通信装置による前記通信光の送信ごとに、前記取得部による前記損失関連情報の取得、前記生成部による前記学習用データの生成、前記学習部による前記機械学習モデルの機械学習、前記予測部による前記通信損失の予測値の算出、前記制御部による前記送信出力の制御を繰り返し実行する、付記1または2に記載の光空間通信装置の制御装置。
【0063】
(付記4)
付記1~3の何れか一つに記載の光空間通信装置の制御装置を備える、光空間通信装置。
【0064】
(付記5)
付記1~3の何れか一つに記載の光空間通信装置の制御装置と、前記光空間通信装置とを備える、光空間通信システム。
【0065】
(付記6)
光空間通信装置の制御方法であって、
前記光空間通信装置が対向局に通信光を送信したときの、大気の状態、当該通信光の送信出力、および、前記対向局における当該通信光の受光レベルを含む損失関連情報を取得すること、
前記損失関連情報に含まれる前記送信出力および前記受光レベルから算出される、前記光空間通信装置と前記対向局との間の通信損失の実測値と、当該損失関連情報に含まれる前記大気の状態とを対応付けた学習用データを生成すること、
前記学習用データを用いて、大気の状態が入力され、前記通信損失の予測値を出力する機械学習モデルを機械学習すること、
前記機械学習モデルを用いて、前記大気の状態から、前記通信損失の予測値を算出すること、ならびに
前記通信損失の予測値に基づいて、前記光空間通信装置の送信出力を制御すること、を含む、光空間通信装置の制御方法。
【0066】
(付記7)
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記光空間通信装置が対向局に通信光を送信したときの、大気の状態、当該通信光の送信出力、および、前記対向局における当該通信光の受光レベルを含む損失関連情報を取得する取得処理、
前記損失関連情報に含まれる前記送信出力および前記受光レベルから算出される、前記光空間通信装置と前記対向局との間の通信損失の実測値と、当該損失関連情報に含まれる前記大気の状態とを対応付けた学習用データを生成する生成処理、
前記学習用データを用いて、大気の状態が入力され、前記通信損失の予測値を出力する機械学習モデルを機械学習する学習処理、
前記機械学習モデルを用いて、前記大気の状態から、前記通信損失の予測値を算出する予測処理、ならびに
前記通信損失の予測値に基づいて、前記光空間通信装置の送信出力を制御する制御処理、を実行する、光空間通信装置の制御装置。
【0067】
なお、この光空間通信装置の制御装置は、更にメモリを備えていてもよく、このメモリには、前記取得処理、前記生成処理、前記学習処理、前記予測処理および前記制御処理を前記プロセッサに実行させるためのプログラムが記憶されていてもよい。また、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録されていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 光空間通信システム
10、20 制御装置
11、21 取得部
12 生成部
13、23 学習部
14、24 予測部
15、25 制御部
22 データ保管部
26 誤差算出部
100 光空間通信装置
110 送受光部
D 格納データ
M 機械学習モデル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7