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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101798
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ガスエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20240723BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F02M21/02 G
F02D19/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005939
(22)【出願日】2023-01-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/次世代船舶の開発/水素燃料船の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 哲司
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AB09
3G092EA11
3G092FA36
(57)【要約】
【課題】水素ガスを燃焼可能なガスエンジンにおいて、その構成材料内に吸収された水素ガスを十分に排出させる。
【解決手段】エンジン1は、シリンダ16に水素ガスを供給する第1供給管51と、第1供給管51に不燃性ガスを供給する第2供給管52と、第2供給管52における不燃性ガスを加熱する加熱手段(熱交換器19a,第2熱交換器95)と、第1供給管51を介したシリンダ16への水素ガスの供給と、第2供給管52を介した第1供給管51への不燃性ガスの供給と、をそれぞれ制御するコントローラ100と、を備え、コントローラ100は、シリンダ16への水素ガスの非供給時に、第1供給管51から水素ガスを排出させるパージ制御を実行し、コントローラ100は、パージ制御の実行に際し、不燃性ガスを、加熱手段によって加熱された状態で、第2供給管52を介して第1供給管51へ供給する。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内で水素ガスを燃焼可能なガスエンジンであって、
前記シリンダに前記水素ガスを供給する第1供給管と、
前記第1供給管に不燃性ガスを供給する第2供給管と、
前記第2供給管における前記不燃性ガスを加熱する加熱手段と、
前記第1供給管を介した前記シリンダへの前記水素ガスの供給と、前記第2供給管を介した前記第1供給管への前記不燃性ガスの供給と、をそれぞれ制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記シリンダへの前記水素ガスの非供給時に、前記第1供給管から前記水素ガスを排出させるパージ制御を実行し、
前記コントローラは、前記パージ制御の実行に際し、前記不燃性ガスを、前記加熱手段によって加熱された状態で、前記第2供給管を介して前記第1供給管へ供給する
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたガスエンジンにおいて、
前記ガスエンジンは、船舶の機関室に配置され、
前記加熱手段は、前記機関室の室温以上となるように、前記不燃性ガスを加熱する
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項3】
請求項1に記載されたガスエンジンにおいて、
前記加熱手段は、摂氏35度以上となるように、前記不燃性ガスを加熱する
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項4】
請求項1に記載されたガスエンジンにおいて、
前記加熱手段は、前記ガスエンジンのシリンダジャケットに熱媒体を流通させる熱交換系統によって構成され、
前記加熱手段は、前記シリンダジャケットから受熱した熱媒体によって前記不燃性ガスを加熱する
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項5】
請求項1に記載されたガスエンジンにおいて、
前記加熱手段は、前記シリンダに接続された排気管によって構成され、
前記加熱手段は、前記シリンダから排出される排ガスによって前記不燃性ガスを加熱する
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項6】
請求項1に記載されたガスエンジンにおいて、
前記第1供給管に前記不燃性ガスを供給する第1モードと、該第1供給管に空気を供給する第2モードとの間で切替可能に構成された切替手段を備え、
前記コントローラは、前記パージ制御において前記切替手段を制御することで、
前記第1モードによって前記不燃性ガスを供給する工程と、
前記第1モードによって供給された前記不燃性ガスと入れ替えるように、前記第2モードによって前記空気を供給する工程と、をそれぞれ実行する
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載されたガスエンジンにおいて、
前記コントローラは、前記パージ制御の実行に際し、前記加熱手段により加熱された状態にある略大気圧の前記不燃性ガスを前記第1供給管へ供給する
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項8】
請求項7に記載されたガスエンジンにおいて、
前記コントローラは、前記パージ制御の実行に際し、
大気圧よりも高圧の前記不燃性ガスを、前記第1供給管へ供給する工程を行った後に、
前記加熱手段により加熱された状態にある略大気圧の前記不燃性ガスを、前記第1供給管へ供給する工程を行う
ことを特徴とするガスエンジン。
【請求項9】
請求項1に記載されたガスエンジンにおいて、
前記コントローラは、前記シリンダへの前記水素ガスの非供給時に前記第1供給管を大気開放することで、該第1供給管から前記水素ガスを排出させるブロー制御を実行し、
前記コントローラは、前記パージ制御を開始する前に前記ブロー制御を実行する
ことを特徴とするガスエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素ガスを燃焼可能なガスエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水素ガス等の可燃性ガスを燃焼可能なガスエンジンの一例として、油燃料とガス燃料を併用する二元燃料エンジンが開示されている。具体的に、この特許文献1に開示されている二元燃料エンジンは、燃焼シリンダにガス燃料を供給するガス燃料供給ライン(元管)と、ガス燃料供給ラインから分岐する大気圧開放ラインと、ガス燃料供給ラインに接続された気体供給ラインと、を備えている。
【0003】
ここで、前記特許文献1に係る気体供給ラインは、乾燥した不活性ガス(窒素ガス、二酸化炭素等)又は空気を、ガス燃料供給ライン内に供給することができる。
【0004】
そして、前記特許文献1によると、ガス燃料の供給を停止する場合、大気圧開放ラインに介設された大気開放弁が開かれる。これにより、ガス燃料供給ライン内に溜まっているガス燃料が排出される。その後、気体供給ラインの開閉弁を開くことで、ガス燃料供給ラインに不活性ガス又は空気が供給される。その際、不活性ガス又は空気は、所定の給気圧力よりも若干高圧に調整された状態で、ガス燃料供給ラインに供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-203944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に開示されているようなガスエンジンでは、水素ガスの供給管から水素ガスを排出させるために、該供給管に対して窒素ガス等の不活性ガスを送り込む場合がある。
【0007】
しかしながら、例えば前記特許文献1に開示されている手法のように、単に高圧に調整された不活性ガスを送りこむだけでは、供給管の内壁等、ガスエンジンの構成材料内に吸収された水素ガスを十分に抜き出すことができなかった。鋼材等への水素ガスの吸収は、いわゆる水素脆化を引き起こすため不都合である。
【0008】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水素ガスを燃焼可能なガスエンジンにおいて、その構成材料内に吸収された水素ガスを十分に排出させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、シリンダ内で水素ガスを燃焼可能なガスエンジンに係る。このガスエンジンは、前記シリンダに前記水素ガスを供給する第1供給管と、前記第1供給管に不燃性ガスを供給する第2供給管と、前記第2供給管における前記不燃性ガスを加熱する加熱手段と、前記第1供給管を介した前記シリンダへの前記水素ガスの供給と、前記第2供給管を介した前記第1供給管への前記不燃性ガスの供給と、をそれぞれ制御するコントローラと、を備える。
【0010】
そして、前記第1の態様によれば、前記コントローラは、前記シリンダへの前記水素ガスの非供給時に、前記第1供給管から前記水素ガスを排出させるパージ制御を実行し、前記コントローラは、前記パージ制御の実行に際し、前記不燃性ガスを、前記加熱手段によって加熱された状態で、前記第2供給管を介して前記第1供給管へ供給する。
【0011】
ここで、「不燃性ガス」とは、水素ガスと比べて可燃性に劣るガスを示す。
【0012】
本願発明者らは、ガスエンジンの構成材料における水素脆化のし易さと、その周辺温度との関係に着目した。すなわち、ステンレス鋼材などの一般的な構成材料の場合、例えば35℃以上の試験温度の下では、その試験温度が高くなるにしたがって、構成材料は単調に水素脆化し難くなっていく。
【0013】
その際、本願発明者らは、水素脆化し難いということは、構成材料の内部に留まる水素分子の数と比較して、当該構成材料から出て行く水素分子の数が多いということに着目した。
【0014】
すなわち、本願発明者らの知見によれば、パージ制御に際してガスエンジンの構成材料を加熱することで、その構成材料からの水素ガスの放出を促進することができる。前記第1の態様に係るコントローラは、そうした知見に基づいたパージ制御を行うように構成されている。
【0015】
具体的に、前記第1の態様によると、コントローラは、パージ制御の実行に際し、不燃性ガスを、加熱手段によって加熱された状態で、第2供給管を介して第1供給管へ供給する。加熱された不燃性ガスを供給することによって、第1供給管の構成材料を加熱することができる。その加熱によって、該構成材料からの水素ガスの放出を促進し、その内部に吸収された水素ガスを、より多く排出させることができる。
【0016】
また、本開示の第2の態様によれば、前記ガスエンジンは、船舶の機関室に配置され、前記加熱手段は、前記機関室の室温以上となるように、前記不燃性ガスを加熱する、としてもよい。
【0017】
前記第2の態様によると、ガスエンジンの構成材料を適切に加熱することができ、そのことで、該構成材料からの水素ガスの放出を促進する上で有利になる。
【0018】
また、本開示の第3の態様によれば、前記加熱手段は、摂氏35度以上となるように、前記不燃性ガスを加熱する、としてもよい。
【0019】
前記第3の態様によると、ガスエンジンの構成材料を適切に加熱することができ、そのことで、該構成材料からの水素ガスの放出を促進する上で有利になる。
【0020】
また、本開示の第4の態様によれば、前記加熱手段は、前記ガスエンジンのシリンダジャケットに熱媒体を流通させる熱交換系統によって構成され、前記加熱手段は、前記シリンダジャケットから受熱した熱媒体によって前記不燃性ガスを加熱する、としてもよい。
【0021】
前記第4の態様によると、ヒータ等を新設することなく、不燃性ガスを加熱することができるようになる。これにより、ガスエンジンのコンパクト化を図る上で有利になる。また、熱媒体によって不燃性ガスを加熱した分、その熱媒体から熱を奪うことができるため、熱交換系統において熱媒体を冷却するための負荷を軽減することもできる。
【0022】
また、本開示の第5の態様によれば、前記加熱手段は、前記シリンダに接続された排気管によって構成され、前記加熱手段は、前記シリンダから排出される排ガスによって前記不燃性ガスを加熱する、としてもよい。
【0023】
前記第5の態様によると、ヒータ等を新設することなく、不燃性ガスを加熱することができるようになる。これにより、ガスエンジンのコンパクト化を図る上で有利になる。
【0024】
また、本開示の第6の態様によれば、前記ガスエンジンは、前記第1供給管に前記不燃性ガスを供給する第1モードと、該第1供給管に空気を供給する第2モードとの間で切替可能に構成された切替手段を備え、前記コントローラは、前記パージ制御において前記切替手段を制御することで、前記第1モードによって前記不燃性ガスを供給する工程と、前記第1モードによって供給された前記不燃性ガスと入れ替えるように、前記第2モードによって前記空気を供給する工程と、をそれぞれ実行する、としてもよい。
【0025】
前記第6の態様によると、コントローラは、不燃性ガスを供給した後に、空気の供給を実行する。空気中の酸素によって、構成材料に生じた亀裂の新生面を酸化させることができる。そのことで、構成材料への水素ガスの入り込みを抑制し、亀裂の進展を抑制することが可能になる。
【0026】
また、本開示の第7の態様によれば、前記コントローラは、前記パージ制御の実行に際し、前記加熱手段により加熱されかつ略大気圧になるように設定された状態で前記第1供給管へ前記不燃性ガスを供給する、としてもよい。
【0027】
なお、ここでいう「略大気圧」は、大気圧の国際基準となる標準気圧をPとすると、P±20%範囲内に収まる気圧を指す。
【0028】
前記第7の態様によると、コントローラは、従来知られたような高圧のガスではなく、略大気圧の不燃性ガスによってパージ制御を実行する。略大気圧の不燃性ガスを用いることで、水素の分圧を低下させることができる。これにより、構成材料内からの水素ガスの放出を促進することができる。
【0029】
また、本開示の第8の態様によれば、前記コントローラは、前記パージ制御の実行に際し、大気圧よりも高圧の前記不燃性ガスを、前記第1供給管へ供給する工程を行った後に、前記加熱手段により加熱された状態にある略大気圧の前記不燃性ガスを、前記第1供給管へ供給する工程を行う、としてもよい。
【0030】
加熱された略大気圧の不燃性ガスを供給することは、構成材料内に吸収されている水素ガスの放出には有利となるものの、構成材料に吸収されていない状態で留まっている水素ガス等、比較的高圧のガスを押し出すには不都合である。
【0031】
そこで、前記第8の態様のように、略大気圧の不燃性ガスを供給する前に、相対的に高圧の不燃性ガスを事前に供給しておくことで、構成材料に吸収されていない状態で留まっている水素ガスを事前に押し出すことができる。これにより、構成材料に吸収されていない水素ガスによって阻害されることなく、構成材料に吸収された水素ガスを放出させることができる。その結果、可能な限り多くの水素ガスを除去することが可能になる。
【0032】
また、本開示の第9の態様によれば前記コントローラは、前記シリンダへの前記水素ガスの非供給時に前記第1供給管を大気開放することで、該第1供給管から前記水素ガスを排出させるブロー制御を実行し、前記コントローラは、前記パージ制御を開始する前に前記ブロー制御を実行する、としてもよい。
【0033】
前記第9の態様によると、コントローラは、パージ制御を実行する前にブロー制御を実行する。これにより、第1供給管内の圧力を事前に低下させた上でパージ制御を開始することが可能になる。これにより、パージ制御時に、不燃性ガスが第1供給管に入り易くなる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本開示によれば、水素ガスを燃焼可能なガスエンジンにおいて、その構成材料内に吸収された水素ガスを十分に排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、ガスエンジンの構成を例示する模式図である。
図2図2は、ガスエンジンを含んだシステム全体の概略図である。
図3図3は、コントローラの構成を例示するブロック図である。
図4A図4Aは、ブロー制御及びパージ制御のフローチャートである。
図4B図4Bは、パージ制御における窒素の供給に係るフローチャートである。
図5図5は、試験温度に対する水素脆化の傾向を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。図1は、ガスエンジン(以下、単に「エンジン」ともいう)1の構成を例示する模式図である。また、図2は、エンジン1を含んだシステム全体の概略図である。図3は、エンジン1のコントローラ100の構成を例示するブロック図である。
【0037】
<全体構成>
エンジン1は、水素ガスを燃焼可能な直列多気筒式のガスエンジンである。このエンジン1は、ユニフロー掃気方式の2ストローク1サイクル機関として構成されており、タンカー、コンテナ船、自動車運搬船等、大型の船舶に搭載される。
【0038】
エンジン1は、ガス燃料として水素ガスを用いるように構成されており、この水素ガスをシリンダ16内で燃焼させることができる。エンジン1は、水素ガスの単独燃焼と、水素ガスと油燃料を併用した混焼と、の少なくとも一方を実行可能とすればよい。例えば、以下に詳述するエンジン1は、水素ガスを単独で燃焼させるように構成されている。
【0039】
船舶に搭載されたエンジン1は、その船舶を推進させるための主機関として用いられる。エンジン1の出力軸は、プロペラ軸(不図示)を介して船舶のプロペラ(不図示)に連結されている。エンジン1が運転することで、その出力がプロペラに伝達されて、船舶が推進するようになっている。
【0040】
<エンジンの主要構成>
図1図3に示されるように、エンジン1は、前述のシリンダ16を有する機関本体10と、アキュムレータモジュール4と、ガスバルブモジュール5と、ガス貯留系統7と、熱交換系統9と、コントローラ100と、を備えている。コントローラ100については、図3にのみ示す。ここで、アキュムレータモジュール4は、機関本体10及びガスバルブモジュール5を接続する。ガスバルブモジュール5は、アキュムレータモジュール4を介して機関本体10及びガス貯留系統7を接続する。熱交換系統9は、機関本体10と熱的に接続されており、該機関本体10を冷却する。コントローラ100は、機関本体10、アキュムレータモジュール4、ガスバルブモジュール5、ガス貯留系統7及び熱交換系統9を制御する。
【0041】
以下、エンジン1の各部について順番に説明する。
【0042】
(1)機関本体10
機関本体10は、複数(図1では1つのみ例示)のシリンダ16を有している。機関本体10は、2ストローク式の機関であり、船舶の機関室Rに設置されている。
【0043】
本実施形態に係る機関本体10は、そのロングストローク化を実現するべく、いわゆるクロスヘッド式の内燃機関として構成されている。すなわち、この機関本体10においては、下方からピストン21を支持するピストン棒22と、クランクシャフト23に連接される連接棒24と、がクロスヘッド25により連結されている。
【0044】
具体的に、機関本体10は、下方に位置する台板11と、台板11上に設けられる架構12と、架構12上に設けられるシリンダジャケット13と、を備えている。各シリンダ16は、シリンダジャケット13内に設けられている。機関本体10はまた、シリンダ16内に配置されるピストン21と、ピストン21の往復運動に連動して回転する出力軸(例えばクランクシャフト23)と、を備えている。
【0045】
ここで、台板11は、エンジン1のクランクケースを構成するものであり、クランクシャフト23と、クランクシャフト23を回転自在に支持する軸受26と、を収容している。クランクシャフト23には、クランク27を介して連接棒24の下端部が連結されている。
【0046】
架構12は、一対のガイド板28と、連接棒24と、クロスヘッド25とを収容している。一対のガイド板28は、エンジン1の幅方向(図1の紙面左右方向)に間隔を空けて配置されている。連接棒24は、その下端部がクランクシャフト23に連結された状態で、一対のガイド板28の間に配置されている。連接棒24の上端部は、クロスヘッド25を介してピストン棒22の下端部に連結されている。
【0047】
クロスヘッド25は、一対のガイド板28の間に配置されており、各ガイド板28に沿って上下方向に摺動する。すなわち、一対のガイド板28は、クロスヘッド25の摺動を案内する。クロスヘッド25は、クロスヘッドピン29を介してピストン棒22及び連接棒24と接続されている。クロスヘッドピン29は、ピストン棒22に対しては一体的に上下動するよう接続されている一方、連接棒24に対しては、連接棒24の上端部を支点として、連接棒24を回動させるように接続されている。
【0048】
シリンダジャケット13は、内筒としてのシリンダライナ14を支持している。シリンダライナ14の内部には、前述のピストン21が配置されている。このピストン21は、シリンダライナ14の内壁に沿って上下方向に往復運動する。また、シリンダライナ14の上部にはシリンダカバー15が固定されている。シリンダカバー15は、シリンダライナ14とともにシリンダ16を構成している。
【0049】
また、シリンダカバー15には、不図示の動弁装置によって作動される排気弁18が設けられている。排気弁18は、シリンダライナ14及びシリンダカバー15から構成されるシリンダ16、並びに、ピストン21の頂面とともに燃焼室17を区画している。排気弁18は、その燃焼室17と排気管19との間を開閉するものである。排気管19は、燃焼室17に通じる排気口を有しており、排気弁18は、その排気口を開閉するように構成されている。
【0050】
ここで、排気管19は、前記排気口を介してシリンダ16に接続されている。この排気管19は、シリンダ16から排出される排気ガスを流通させるものである。排気管19、特に排気管19の途中に設けた熱交換器19aによって、本実施形態における加熱手段が構成されている(図2参照)。以下、この加熱手段を「第1の加熱手段」ともいう。
【0051】
また、シリンダカバー15には、燃焼室17に水素ガスを供給するためのガス噴射弁30が設けられている。ガス噴射弁30は、燃焼室17の室内に臨むような姿勢で設けられており、水素ガスを噴射するための噴射口を有している。
【0052】
図2に示すように、ガス噴射弁30は、シリンダ16毎に例えば2本ずつ設けられており、それぞれ、アキュムレータモジュール4に接続されている。このアキュムレータモジュール4と、ガスバルブモジュール5と、を介して、ガス貯留系統7から各ガス噴射弁30に水素ガスが供給されるようになっている。
【0053】
各ガス噴射弁30は、燃焼室17に水素ガスを供給し、燃焼室17内で燃焼を生じさせる。この燃焼によって、ピストン21が上下方向に往復運動をする。このとき、排気弁18が作動して燃焼室17が開放されると、燃焼によって生じた排ガスが排気管19に押し出されるとともに、不図示の掃気ポートから燃焼室17にガスが導入される。
【0054】
また、燃焼によってピストン21が往復運動をすると、ピストン21とともにピストン棒22が上下方向に往復運動をする。これにより、ピストン棒22に連結されたクロスヘッド25が、上下方向に往復運動をする。このクロスヘッド25は、連接棒24の回動を許容するようになっており、クロスヘッド25との接続部位を支点として、連接棒24を回動させる。そして、連接棒24の下端部に接続されるクランク27がクランク運動し、そのクランク運動に応じてクランクシャフト23が回転する。こうして、クランクシャフト23は、ピストン21の往復運動を回転運動に変換し、プロペラ軸とともに船舶のプロペラを回転させる。これにより、船舶が推進する。
【0055】
(2)ガス貯留系統7
図2に示すように、ガス貯留系統7は、タンクモジュール71と、高圧ポンプ72と、熱交換器モジュール73と、バッファモジュール74と、焼却炉モジュール75と、を備えている。
【0056】
このうち、タンクモジュール71は、水素ガスと、ボイルオフガス(Boil Off Gas:BOG)と、を貯留するガスタンクによって構成されている。タンクモジュール71は、高圧ポンプ72に水素ガスを供給するとともに、高圧ポンプ72において生じたBOGを貯留するように構成されている。
【0057】
高圧ポンプ72は、タンクモジュール71から供給された水素ガスの圧力を調整し、調整後の水素ガスを熱交換器モジュール73に供給する。高圧ポンプ72において生じたBOGは、前述のようにタンクモジュール71へ送り戻されるようになっている。なお、高圧ポンプ72の作動は、ガス圧センサSw2の検出信号に基づいて制御される。このガス圧センサSw2は、ガスバルブモジュール5に設けられている。
【0058】
熱交換器モジュール73は、蒸気等を熱源とした熱交換器によって構成されている。熱交換器モジュール73は、熱源との熱交換によって、高圧ポンプ72から供給された水素ガスを加熱する。熱交換器モジュール73はまた、加熱後の水素ガスをバッファモジュール74へ供給する。なお、バッファモジュール74への水素ガスの供給量は、ガス流量センサSw1の検出信号に基づいて制御される。このガス流量センサSw1は、バッファモジュール74及び熱交換器モジュール73を接続する配管に設けられている。
【0059】
バッファモジュール74は、いわゆるバッファタンクと、該バッファタンクからのガスの供給を制御する制御弁とによって構成されている。バッファモジュール74は、高圧ポンプ72によって加圧されかつ熱交換器モジュール73によって加熱された水素ガスを一時的に貯えるとともに、これをガスバルブモジュール5又は焼却炉モジュール75へと送り出すように構成されている。
【0060】
焼却炉モジュール75は、焼却炉と、煙道と、ガスバルブモジュール5又はバッファモジュール74からのオフガスの供給を制御する制御弁とによって構成されている。焼却炉モジュール75は、機関本体10等から排出される水素ガスを焼却処理したり、水素ガスの排出に用いられる不燃性ガスを船外に排出したりするために用いられるようになっている。本実施形態に係る焼却炉モジュール75は、少なくとも一部が大気開放されている。なお、焼却炉モジュール75は必須ではない。焼却炉モジュール75を省略した場合、水素ガスは、焼却されることなく大気へ放出されることになる。
【0061】
タンクモジュール71に貯留されている水素ガスは、高圧ポンプ72及び熱交換器モジュール73を経てバッファモジュール74に供給され、該バッファモジュール74において一時的に貯留される。一時的に貯留された水素ガスは、エンジン1の運転に際してガスバルブモジュール5へと供給されることになる。
【0062】
(3)ガスバルブモジュール5
ガスバルブモジュール5は、図2に示すように、第1供給管51と、第2供給管52と、排出管53と、を備えている。
【0063】
このうち、第1供給管51は、バッファモジュール74とアキュムレータモジュール4とを接続している。水素ガスによるエンジン1の運転時に、第1供給管51は、アキュムレータモジュール4を介してシリンダ16に水素ガスを供給する。
【0064】
図2に示すように、第1供給管51には、水素ガスの流れ方向(特に、シリンダ16への水素ガス供給時における流れ方向)に沿って上流側から順に、ガス圧センサSw2と、第1遮断弁55aと、第2遮断弁55bと、が設けられている。
【0065】
ガス圧センサSw2は、コントローラ100と電気的に接続されている(図3参照)。ガス圧センサSw2は、第1供給管51における水素ガスの圧力を検出し、その検出信号をコントローラ100に入力する。
【0066】
第1遮断弁55a及び第2遮断弁55bは、それぞれ、第1供給管51を開閉するように構成されており、その開放時には水素ガスの流通を許容する一方、その閉塞時には水素ガスの流通を遮断することができる。第1遮断弁55a及び第2遮断弁55bは、それぞれ、コントローラ100からの制御信号を受けて開閉する。
【0067】
第2供給管52は、不燃性ガスを貯留する不燃性ガスタンク(不図示)と、アキュムレータモジュール4及び第1供給管51と、を接続している。水素ガスによるエンジン1の非運転時(言い換えると、水素ガスの非供給時)に行われるパージ制御時に、第2供給管52は、アキュムレータモジュール4を介して第1供給管51に不燃性ガスを供給したり、第1供給管51に直に不燃性ガスを供給したりする。
【0068】
特に、本実施形態に係る第2供給管52は、不燃性ガスとしての窒素ガスを第1供給管51に供給することができる。不燃性ガスとしては、アルゴンガス、窒素ガス等、水素ガスと比べて可燃性に劣る不活性ガスを用いることができる。
【0069】
図2に示すように、第2供給管52は、不燃性ガスの流れ方向の中途の部位である分岐部52dにおいて、アキュムレータモジュール4に接続される第1枝管52aと、第1供給管51に接続される第2枝管52b及び第3枝管52cと、に分岐している。
【0070】
第1枝管52aは、逆止弁56を介して分岐部52dとアキュムレータ41とを接続している。第2枝管52bは、分岐部52dと、第1供給管51におけるガス圧センサSw2及び第1遮断弁55aの間の部位と、を接続している。第3枝管52cは、分岐部52dと、第1供給管51における第1遮断弁55a及び第2遮断弁55bの間の部位と、を接続している。なお、逆止弁56は、第2供給管52からアキュムレータ41へと向かうガス流を許容し、アキュムレータ41から第2供給管52へと向かうガス流を規制するように構成されている。
【0071】
第2供給管52における分岐部52dよりも上流側の部位には、第1パージ弁57aが設けられている。同様に、第1枝管52aには第2パージ弁57bが設けられており、第2枝管52bには第3パージ弁57cが設けられており、第3枝管52cには第4パージ弁57dが設けられている。
【0072】
第1パージ弁57a、第2パージ弁57b、第3パージ弁57c及び第4パージ弁57dは、それぞれ、第2供給管52における分岐部52dよりも上流側の部位、第1枝管52a、第2枝管52b及び第3枝管52cを開閉するように構成されている。各弁57a~57dの開放時には、対応する配管における不燃性ガスの流通が許容される一方、各弁57a~57dの閉塞時には、対応する配管における不燃性ガスの流通を遮断することができる。第1パージ弁57a、第2パージ弁57b、第3パージ弁57c及び第4パージ弁57dは、それぞれ、コントローラ100からの制御信号を受けて開閉する。
【0073】
排出管53は、第1供給管51と焼却炉モジュール75とを接続している。前記パージ制御時、及び、該パージ制御と同様に水素ガスの非供給時に行われるブロー制御時に、排出管53は、第1供給管51を介して焼却炉モジュール75に水素ガス及び不燃性ガスを送り込む。
【0074】
図2に示すように、排出管53の上流側部分は、第1上流管53aと第2上流管53bとの2つの配管に別れている。第1上流管53aと第2上流管53bは、合流部53cにおいて合流し、1つの配管となって焼却炉モジュール75に至る。
【0075】
第1上流管53aの上流端は、第1供給管51及びアキュムレータ41の接続部と、第2遮断弁55bと、の間の部位に接続されている。第2上流管53bの上流端は、第1供給管51における、第1遮断弁55aと第2遮断弁55bとの間の部位に接続されている。
【0076】
第1上流管53aには第1排出弁58aが設けられており、第2上流管53bには第2排出弁58bが設けられている。
【0077】
第1排出弁58a及び第2排出弁58bは、それぞれ、第1上流管53a及び第2上流管53bを開閉するように構成されており、その開放時には水素ガス及び不燃性ガスの流通を許容する一方、その閉塞時には水素ガス及び不燃性ガスの流通を遮断することができる。第1排出弁58a及び第2排出弁58bは、それぞれ、コントローラ100からの制御信号を受けて開閉する。
【0078】
例えば水素ガスによるエンジン1の運転時には、第1供給管51における第1遮断弁55a及び第2遮断弁55bを開放するとともに、第2供給管52における第1パージ弁57a、第2パージ弁57b及び第3パージ弁57cと、排出管53における第1排出弁58a及び第2排出弁58bとを閉塞する。これにより、バッファモジュール74から第1供給管51へと水素ガスを供給するとともに、その第1供給管51からアキュムレータ41へと水素ガスを供給することが可能になる。
【0079】
一方、不燃性ガスによるパージ制御時には、第1パージ弁57aと、第2パージ弁57b、第3パージ弁57c及び第4パージ弁57dの少なくとも1つと、第1排出弁58a及び第2排出弁58bの少なくとも1つと、をそれぞれ開放し、必要に応じて第1遮断弁55a及び第2遮断弁55bの少なくとも1つを閉塞する。これにより、第2供給管52から第1供給管51又はアキュムレータ41へと不燃性ガスを供給することが可能となる。
【0080】
また、前記パージ制御を開始する前に行われるブロー制御時には、第1パージ弁57a、第2パージ弁57b、第3パージ弁57c及び第4パージ弁57dを全て閉塞し、第1排出弁58a及び第2排出弁58bの少なくとも1つを開放する。これにより、アキュムレータ41及び第1供給管51から、排出管53を介して焼却炉モジュール75へと不燃性ガスを排出することが可能になる。ここで、焼却炉モジュール75を介して第1供給管51を開放してもよいし、焼却炉モジュール75以外の配管を介して大気開放してもよい。
【0081】
(4)アキュムレータモジュール4
アキュムレータモジュール4は、図2に示すように、アキュムレータボックス40と、アキュムレータ41と、ガスゲート弁42と、を備えている。
【0082】
アキュムレータボックス40は、いわゆる筐体であり、アキュムレータ41と、ガスゲート弁42と、第1供給管51及びアキュムレータ41の接続部と、第2供給管52及びアキュムレータ41の接続部と、前述の逆止弁56と、を収容するように構成されている。アキュムレータボックス40がこれらの部材を収容することで、仮にガス漏れが生じたとしても、漏れ出したガスをアキュムレータボックス40内に封じ込めることができる。
【0083】
アキュムレータ41は、圧力容器によって構成されており、各シリンダ16に供給される直前の水素ガスを貯えることができる。アキュムレータ41から各シリンダ16への水素ガスの供給は、ガスゲート弁42の開閉によって制御される。ガスゲート弁42は、2又に分岐したガス供給管32を介して各ガス噴射弁30と接続されている。
【0084】
例えば水素ガスによるエンジン1の運転時には、ガスゲート弁42が開放される。これにより、アキュムレータ41に貯えられた水素ガスは、ガス供給管32を介して各ガス噴射弁30へと至り、各ガス噴射弁30から対応するシリンダ16へと噴射されることになる。噴射された水素ガスが燃焼すると、その燃焼によって生じた排ガスは、前述の排気管19を介して排出される。
【0085】
ここで、図2に示すように、排気管19の途中には、第1の加熱手段としての熱交換器19aが設けられている。この熱交換器19aは、第2供給管52との間で熱交換を行うように構成されている。熱交換器19aは、シリンダ16から排出された排ガスによって、第2供給管52中の不燃性ガスを加熱することができる。
【0086】
(5)熱交換系統9
熱交換系統9は、機関本体10、特に機関本体10のシリンダジャケット13に熱媒体を流通させるように構成されている。具体的に、本実施形態に係る熱交換系統9は、熱媒体配管91と、エンジン1のシリンダジャケット13に設けられた熱媒体通路部(不図示)と、を備えている。熱媒体配管91及び熱媒体通路部(不図示)は、熱媒体としての清水を循環させる熱媒体経路Lを構成している。
【0087】
熱媒体経路L上には、海水によって熱媒体を冷却する第1熱交換器92と、熱媒体を循環させるためのポンプ93と、第1熱交換器92を迂回するバイパス経路94と、が設けられている。
【0088】
また、熱媒体経路Lにおける機関本体10と第1熱交換器92との間の部位(つまり、機関本体10から排出された熱媒体が、第1熱交換器92に至る前に通過する部位)には、第2の加熱手段としての第2熱交換器95が設けられている。この第2熱交換器95は、機関本体10のシリンダジャケット13から受熱した熱媒体によって、第2供給管52中の不燃性ガスを加熱することができる。熱媒体経路L、特に熱媒体経路L上に設けた第2熱交換器95によって、本実施形態におけるもう1つの加熱手段が構成されている。以下、これを「第2の加熱手段」ともいう。第1及び第2の加熱手段を「加熱手段」と総称する場合もある。
【0089】
なお、熱交換器19a及び第2熱交換器95は、不燃性ガスを貯留する不燃性ガスタンクから、第2供給管52における分岐部52dに至る途中に設けられている。
【0090】
そして、第2供給管52における第1パージ弁57aよりも上流側の部位は、不燃性ガスの流れ方向に逆らって見て、二又に分岐している。二又に分岐した各管には、第1切替弁59aと、第2切替弁59bとが設けられている。切替手段としての第1切替弁59a及び第2切替弁59bは、それぞれ、コントローラ100からの制御信号を受けて開閉する。
【0091】
例えば、第1切替弁59aを開いて第2切替弁59bを閉じると、不燃性ガスタンクと第2供給管52を接続する第1経路L1が形成される。第1経路L1上には、熱交換器19a及び第2熱交換器95が配置されている。
【0092】
一方、第1切替弁59aを閉じて第2切替弁59bを開くと、機関本体10を始動するための始動用空気が貯留されたエアタンク76と第2供給管52を接続する第2経路L2が形成される。
【0093】
切替手段としての第1切替弁59a及び第2切替弁59bは、第1経路L1を形成することで第1供給管51に不燃性ガスを供給する第1モードと、第2経路L2を形成することで第1供給管51に空気を供給する第2モードとの間で切替可能に構成されている。
【0094】
(6)コントローラ100
コントローラ100は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、入出力デバイスを有している。コントローラ100には、前述のガス圧センサSw2及びガス流量センサSw1に加え、第1供給管51に設けられた水素濃度センサSw3等が接続されている。なお、水素濃度センサSw3は、図3のみに示す。この水素濃度センサSw3は、第1供給管51における水素ガスの濃度を検出し、その検出信号をコントローラ100に入力する。
【0095】
コントローラ100は、それらのセンサから入力された検出信号に基づいて制御信号を生成し、その制御信号を、例えば、ガス貯留系統7の各部と、ガスバルブモジュール5の第1遮断弁55a、第2遮断弁55b、第1パージ弁57a、第2パージ弁57b、第3パージ弁57c及び第4パージ弁57d、第1排出弁58a及び第2排出弁58bと、アキュムレータモジュール4のガスゲート弁42と、機関本体10の各ガス噴射弁30と、第1切替弁59a及び第2切替弁59bと、に入力する。
【0096】
コントローラ100がエンジン1の各部に制御信号を入力することで、水素ガスによる機関本体10の運転を制御したり、水素ガスをブローするためのブロー制御を実行したり、水素ガスをパージするためのパージ制御を実行したりすることができる。
【0097】
具体的に、コントローラ100は、ガスバルブモジュール5を構成する各弁を開閉することで、第1供給管51を介したシリンダ16への水素ガスの供給を制御する。例えば、コントローラ100は、ガス貯留系統7から各シリンダ16へ至る水素ガスの経路を構築することで、各シリンダ16へと水素を送り込むことができる。その際、コントローラ100は、例えばガス圧センサSw2及びガス流量センサSw1の検出信号に基づいて、高圧ポンプ72の作動を制御するようになっている。
【0098】
また、コントローラ100はガスバルブモジュール5を構成する各弁を開閉することで、第2供給管52を介した第1供給管51への不燃性ガスの供給を制御する。例えば、コントローラ100は、第2供給管52と第1供給管51とを直に結ぶ経路を構築したり、アキュムレータ41を介して第2供給管52と第1供給管51とを結ぶ経路を構築したりすることで、第1供給管51へと不燃性ガスを送り込むことができる。
【0099】
そして、コントローラは、シリンダ16への水素ガスの非供給時(言い換えると、水素ガスによる機関本体10の非運転時/水素ガスの非燃焼時)に、第1供給管51及びアキュムレータ41のうち、少なくとも第1供給管51から水素ガスを排出させるパージ制御を実行する。
【0100】
ここで、本実施形態に係るパージ制御は、コントローラ100がガスバルブモジュール5を制御することで、第2供給管52を介して第1供給管51へと不燃性ガスを供給することで行われるようになっている。
【0101】
ところで、従来知られた手法のように、単に高圧に調整された不燃性ガスを供給するだけでは、第1供給管51の内壁等、エンジン1の構成材料内に吸収された水素ガスを十分に抜き出すことができなかった。鋼材等への水素ガスの吸収は、いわゆる水素脆化を引き起こすため不都合である。
【0102】
これに対して、本願発明者らは、エンジン1の構成材料における水素脆化のし易さと、その周辺温度との関係に着目し、本開示を想到するに至った。
【0103】
ここで、図5は、試験温度に対する水素脆化の傾向を示すプロットである。図5の横軸は、構成材料の周辺温度(試験温度)であり、縦軸は、その試験温度における水素脆化の起こり易さを示している。詳しくは、図5の縦軸は、大気又は不活性ガス中における構成材料の塑性伸び率に対する、水素ガス中における構成材料の塑性伸び率の比を示している。塑性伸び率の比が1に近くなるほど(言い換えると、図5の縦方向に沿って上方に向かうほど)、大気中の塑性伸び率に近くなりし、構成材料が水素脆化し難くなると解釈することができる。図5に示すプロットの詳細は、該プロットの引用元であるJonathan A. LEE, "Hydrogen Embrittlement", NASA/TM-2016-218602, (2016)、及び当該文献の引用元であるCaskey, G R., "Hydrogen Effects in Stainless Steel", In: Hydrogen Degradation of Ferrous Alloys, R.A. Oriani, J. P. Hirth, M. Smialowski (eds.), Noyes Publications, New Jersey, pp. 822-862, (1985)に記載の通りである。
【0104】
また、図5の各プロットは、構成材料の種類に対応している。例えば、「304L」、「316」、「310」及び「304N」とは、それぞれ、AISIで規定されたステンレス鋼304L、ステンレス鋼316、ステンレス鋼310及びステンレス鋼304Nを示している。例えば、本実施形態に係るエンジン1の構成材料には、ステンレス鋼316とステンレス鋼304Nとが含まれている。
【0105】
図5に示すように、塑性伸び率の大きさは、-70℃から20℃付近で減少から増加に転じている。例えば35℃以上では、温度が高くなるにしたがって、単調に水素脆化し難くなっていくとみなすことができる。35℃という温度は、機関本体10の設置環境における環境温度(例えば、機関室Rの室温)と比べて高い。
【0106】
本願発明者らは、そうした環境温度においては、温度が高くなるにしたがって、構成材料が単調に水素脆化し難くなっていくことに着目した。その際、本願発明者らは、水素脆化し難いということは、ステンレス鋼316等の内部に留まる水素分子の数と比較して、当該構成材料から出て行く水素分子の数が多いと解釈できることに気付いた。
【0107】
すなわち、本願発明者らの知見によれば、パージ制御に際してエンジン1の構成材料を加熱することで、その構成材料に吸収された水素ガスの放出を促進することができる。本実施形態に係るコントローラ100は、そうした知見に基づいたパージ制御を行うように構成されている。
【0108】
以下、本実施形態におけるパージ制御について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0109】
<パージ制御の詳細>
図4Aは、ブロー制御及びパージ制御のフローチャートである。この図4Aは、ブロー制御及びパージ制御のうち、後者のパージ制御について詳細に示している。図4Bは、パージ制御における窒素の供給に係るフローチャートである。
【0110】
まず、図4Aにおけるスタート後のステップS1において、コントローラ100は、エンジン1の水素運転を停止する。具体的に、ステップS1において、コントローラ100は、第1遮断弁55a及び第2遮断弁55bのうちの少なくとも一方を閉じる。第1遮断弁55aと第2遮断弁55bの両方を閉じるか、或いは、どちらか一方を閉じるかの選択は、第1供給管51においてパージ対象とする部位に応じて決定することができる。
【0111】
その後、ステップS2において、コントローラ100は、シリンダ16への水素ガスの非供給時に第1供給管51を大気開放することで、該第1供給管51から水素ガスを排出させるブロー制御を実行する。ステップS2と、ステップS3以降の処理との前後関係に示すように、本実施形態に係るコントローラ100は、パージ制御を開始する前にブロー制御を実行する。
【0112】
具体的に、ステップS2において、コントローラ100は、第1パージ弁57a、第2パージ弁57b、第3パージ弁57c及び第4パージ弁57dを全て閉塞し、第1排出弁58a及び第2排出弁58bの少なくとも1つを開放する。これにより、アキュムレータ41及び第1供給管51と焼却炉モジュール75とが流体的に接続される。焼却炉モジュール75を大気に連通させることで、第1供給管51が大気開放される。これにより、第1供給管51内に残存している高圧の水素ガスを事前に排出し、第1供給管51内の圧力が低下する。
【0113】
続くステップS3において、コントローラ100は、第1パージ弁57aと、第2パージ弁57b、第3パージ弁57c及び第4パージ弁57dのうちの少なくとも1つと、第1排出弁58a及び第2排出弁58bの少なくとも1つとを開放する。これにより、第2供給管52と第1供給管51とが流体的に接続されることになる。
【0114】
続くステップS4で、コントローラ100は、切替手段としての第1切替弁59a及び第2切替弁59bを制御して前述の第1経路L1を形成することで、エンジン1を、第1供給管51に不燃性ガスを供給する第1モードに設定する。
【0115】
続くステップS5で、コントローラ100は、パージ制御の実行に際し、第1及び第2の加熱手段のうちの少なくとも一方によって加熱された不燃性ガスを、第2供給管52を介して第1供給管51へ供給する。
【0116】
図4Bは、図4AのステップS5で行われる処理を示している。
【0117】
まず、図4BのステップS501において、コントローラ100は、大気圧よりも高圧の不燃性ガスを、第2供給管52を介して第1供給管51に供給する。その際、不燃性ガスの圧力は、第1経路L1上に設けたポンプ(不図示)等によって調整することができ、例えば、第1供給管51内に残存している水素ガス(第1供給管51の管路内に充填されている水素ガス)の圧力よりも高圧になるように設定すればよい。その際、コントローラ100は、第1パージ弁57aと、第2パージ弁57b~第4パージ弁57dのうちの少なくとも1つと、に加えて、第1排出弁58a及び第2排出弁58bのうちの少なくとも1つを開く。
【0118】
高圧の不燃性ガスを供給することで、第1供給管51等に残存しつつも、その構成材料内に吸収されていな水素ガスを押し出して、これをパージすることができる。パージされた水素ガスは、排出管53を介して焼却炉モジュール75に送り込まれ、そこで焼却される。なお、パージに用いられる不燃性ガスは、後述のステップS502のように、加熱手段によって加熱された状態で、第1供給管51に供給してもよい。
【0119】
続くステップS502において、コントローラ100は、パージ制御の実行に際し、加熱手段によって加熱され高温の状態にある不燃性ガスを、第2供給管52を介して第1供給管51に供給する。
【0120】
高温の不燃性ガスを供給することで、第1供給管51の内壁等が加熱されて、その内部からの水素ガスの放出を促進することができる。その際、加熱手段としての熱交換器19a及び第2熱交換器95は、摂氏35度以上(図5の境界線Blを参照)、好ましくは摂氏40度以上、さらに好ましくは摂氏50度以上となるように、不燃性ガスを加熱する。
【0121】
図5に示したように、摂氏35度のときと比べて、摂氏40度のとき、構成材料は相対的に水素脆化し難い。そのため、構成材料に吸収された水素ガスを放出させる上で有利になる。同様に、摂氏40度のときと比べて、摂氏50度のときは相対的に水素脆化し難い。そのため、水素ガスを放出させる上でさらに有利になる。
【0122】
その他、熱交換器19a及び第2熱交換器95は、機関室Rの室温以上となるように不燃性ガスを加熱してもよい。この場合、実際の室温の代わりに、日本産業規格(Japanese Industrial Standards:JIS)で規定された機関室温度を目安として不燃性ガスを加熱してもよい。その場合、不燃性ガスは、「JIS F 0408:1999 船舶-機関制御室の空調及び通風基準」で規定された機関室温度(摂氏+45度)以上となるように加熱されることが好ましい。
【0123】
第1供給管51の内壁等から放出された水素ガスは、排出管53を介して焼却炉モジュール75に送り込まれ、該焼却炉モジュール75で焼却される。
【0124】
また、コントローラ100は、単に加熱されただけでなく、略大気圧の不燃性ガスを第1供給管51に供給する。
【0125】
すなわち、このステップS502では、コントローラ100は、加熱手段によって加熱された状態にある略大気圧の不燃性ガスを、第1供給管51へ供給する。略大気圧の不燃性ガスを供給することで、水素の分圧を低下させることができる。これにより、水素ガスの拡散性を向上させることで、構成材料に吸収された水素を効果的に除去することができる。
【0126】
ステップS502に係る処理が終了すると、制御プロセスは、図4Bに示すフローからリターンし、図4AのステップS6へ進む。なお、図4Bに示す処理は、水素ガスと不燃性ガスとを置き換える一定量の不燃性ガスを供給し終わるまで行ってもよいが、本実施形態では、以下に説明するステップS7へ移行するまで持続的に行われる(つまり、不燃性ガスは、ステップS7に至るまで供給され続ける)。不燃性ガスの供給を持続的に行うことで、不燃性ガス中のH2濃度を下げ、結果的に水素の分圧を低下させる上で有利になる。
【0127】
図4でステップS5から続くステップS6において、コントローラ100は、水素ガスの濃度(水素濃度)が静定したか否かを判定する。この判定は、水素濃度センサSw3の検出信号に基づいて行ってもよい。ステップS6の判定がYESの場合、制御プロセスはステップS7に進む。ステップS6の判定がNOの場合、制御プロセスはステップS6に戻る。
【0128】
また、ステップS6からステップS7へ進む前に、水素濃度が所定の爆発限界以下であることを判定するステップを行ってもよい。そうしたステップを設けた場合、水素濃度が所定の爆発限界以下となるまで、コントローラ100は、ステップS7に係る処理の実行を規制することになる。
【0129】
ステップS7において、コントローラ100は、不燃性ガスの供給を停止する。その後、ステップS8において、コントローラ100は、切替手段としての第1切替弁59a及び第2切替弁59bを制御して前述の第2経路L2を形成することで、エンジン1を、第1供給管51に空気を供給する第2モードに設定する。
【0130】
続くステップS9において、コントローラ100は、第1モードによって供給された不燃性ガスと入れ替えるように、第2モードによって空気を供給する。
【0131】
空気と置き換えられた不燃性ガスは、不図示のアキュムレータに一時的に貯えられ、後述のステップS13において再利用されるようになっている。これにより、パージ制御に使用される不燃性ガスの消費量を抑制することができる。こうした構成に代えて、水素ガスと同様に、不燃性ガスを焼却炉モジュール75に送り込んでもよい。
【0132】
窒素に代えて空気を供給することで、エンジン1の構成材料に生じた亀裂の新生面に酸素を供給し、その新生面を酸化させることができる。これにより、構成材料への水素ガスの入り込みを抑制し、亀裂の進展を抑制することができる。
【0133】
なお、ステップS9の処理は、不燃性ガスと空気とを置き換える一定量の空気を供給し終わるまで行ってもよいが、本実施形態では、以下に説明するステップS11へ移行するまで持続的に行われる(つまり、空気は、ステップS11に至るまで供給され続ける)。空気の供給を持続的に行うことで、前記新生面を酸化によって保護することができる。
【0134】
また、エアタンク76に貯えられたエンジン1の始動用空気を、ステップS9において供給される空気として用いることで、他の空気を用いる場合と比較して、動力軽減に有利になる。
【0135】
続くステップS10において、コントローラ100は、水素運転を再開するか否かを判定する。この判定は、コントローラ100に対する船員の操作入力等に基づいて行ってもよい。この判定がYESの場合、制御プロセスは、ステップS10からステップS11に進む。ステップS10の判定がNOの場合、制御プロセスはステップS10に戻る。
【0136】
続くステップS11において、コントローラ100は、パージ制御を終了する。コントローラ100は、空気の供給を停止させる。
【0137】
続くステップS12において、コントローラ100は、前述したステップS3と同様に、エンジン1を第2モードから第1モードに再度設定する。その後、ステップS13において、コントローラ100は、第1供給管51、第2供給管52及びアキュムレータ41から空気を排出させるように、不燃性ガス(図中の窒素ガス)の供給を再開する。不燃性ガスの供給時に、アキュムレータモジュール4、ガスバルブモジュール5等における気密性を判定する工程を行ってもよい。
【0138】
続くステップS14において、コントローラ100は、水素ガスによるエンジン1の運転を再開する。その際、第1パージ弁57a~第4パージ弁57d、並びに、第1排出弁58a及び第2排出弁58bが全て閉塞されるとともに、第1遮断弁55a及び第2遮断弁55bが双方とも開放される。
【0139】
<不燃性ガスを加熱することの意義>
図4AのステップS5に例示したように、コントローラ100は、パージ制御の実行に際し、不燃性ガスを、第1及び第2の加熱手段のうちの少なくとも一方によって加熱した状態で、第2供給管52を介して第1供給管51へ供給する。加熱された不燃性ガスを供給することによって、第1供給管51の構成材料を加熱することができる。その加熱によって、該構成材料からの水素ガスの放出を促進し、その内部に吸収された水素ガスを、より多く排出させることができる。
【0140】
また、図2を用いて説明したように、第1の加熱手段として排気管19に設けられた熱交換器19aを用いることで、ヒータ等を新設することなく、不燃性ガスを加熱することができるようになる。これにより、エンジン1のコンパクト化を図る上で有利になる。
【0141】
また、図2を用いて説明したように、第2の加熱手段として熱交換系統9の第2熱交換器95を用いることで、ヒータ等を新設することなく、不燃性ガスを加熱することができるようになる。これにより、エンジン1のコンパクト化を図る上で有利になる。また、熱媒体によって不燃性ガスを加熱した分、その熱媒体から熱を奪うことができるため、熱交換系統9において熱媒体を冷却するための負荷を軽減することもできる。これにより、第1熱交換器92の小型化を図ることができる。
【0142】
また、図4AのステップS5及びステップ9に例示したように、コントローラ100は、不燃性ガスを供給した後に、空気の供給を実行する。空気中の酸素によって、構成材料に生じた亀裂の新生面を酸化させることができる。そのことで、構成材料への水素ガスの入り込みを抑制し、亀裂の進展を抑制することが可能になる。
【0143】
また、図4BのステップS502に例示したように、コントローラ100は、従来知られたような高圧のガスではなく、略大気圧の不燃性ガスによってパージ制御を実行する。略大気圧の不燃性ガスを用いることで、水素の分圧を低下させることができる。これにより、構成材料内からの水素ガスの放出を促進することができる。
【0144】
また、加熱された略大気圧の不燃性ガスを供給することは、構成材料内に吸収されている水素ガスの放出には有利となるものの、構成材料に吸収されていない状態で留まっている水素ガス等、比較的高圧のガスを押し出すには不都合である。
【0145】
そこで、図4BのステップS501に例示したように、略大気圧の不燃性ガスを供給する前に、高圧の不燃性ガスを事前に供給しておくことで、構成材料に吸収されていない状態で留まっている水素ガスを事前に押し出すことができる。これにより、構成材料に吸収されていない水素ガスに阻害されることなく、構成材料に吸収された水素ガスを放出させることができる。これにより、可能な限り多くの水素ガスを除去することが可能になる。
【0146】
また、図4AのステップS2に例示したように、コントローラ100は、パージ制御を実行する前にブロー制御を実行する。これにより、第1供給管51内の圧力を事前に低下させた上でパージ制御を開始することが可能になる。これにより、パージ制御時に、不燃性ガスが第1供給管51に入り易くなる。
【0147】
<他の実施形態>
前記実施形態では、加熱手段として、第1の加熱手段としての熱交換器19aと、第2の加熱手段としての第2熱交換器95とを双方とも備えた構成を例示したが、本開示は、そうした構成には限定されない。エンジン1は、熱交換器19a及び第2熱交換器95のうちの少なくとも一方を備えていればよい。
【0148】
また、図4A及び図4Bに示すフローチャートは、例示に過ぎない。例えば、図4AのステップS8及びS9は、省略してもよい。図4BのステップS501も、省略可能である。
【符号の説明】
【0149】
1 エンジン(ガスエンジン)
10 機関本体
13 シリンダジャケット
16 シリンダ
51 第1供給管
52 第2供給管
19 排気管(第1の加熱手段、加熱手段)
19a 熱交換器(第1の加熱手段、加熱手段)
9 熱交換系統(第2の加熱手段、加熱手段)
95 第2熱交換器(第2の加熱手段、加熱手段)
59a 第1切替弁(切替手段)
59b 第2切替弁(切替手段)
R 機関室
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5