(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101799
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】バルブユニット
(51)【国際特許分類】
F25B 41/20 20210101AFI20240723BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F25B41/20 Z
F25B43/00 L
F25B43/00 W
F25B43/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005940
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】野田 圭俊
(57)【要約】
【課題】レシーバが一体に設けられるバルブユニットのコンパクト化を実現する。
【解決手段】バルブユニット1は、レシーバ108の上部に着脱可能に組み付けられるブロック10と、ブロック10に着脱可能に組み付けられる複数の制御弁を備える。レシーバ108は、冷媒を貯留可能なタンク20と、タンク20の上端開口部を閉じるように設けられる上端部材52と、タンク20の下端開口部を閉じるように設けられる下端部材54と、を含む。上端部材52には、第2冷媒循環通路を構成する第1入口ポート140および第1出口ポート142が設けられ、ブロックが着脱可能に取り付けられる。下端部材54には、第1冷媒循環通路を構成する第2入口ポート144および第2出口ポート146が設けられる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷房運転時に開放される第1冷媒循環通路と、暖房運転時に開放される第2冷媒循環通路と、を備える冷凍サイクルに適用されるバルブユニットであって、
冷房運転時に前記第1冷媒循環通路を流れる冷媒を気液分離し、暖房運転時に前記第2冷媒循環通路を流れる冷媒を気液分離するレシーバと、
前記レシーバの上部に着脱可能に組み付けられるブロックと、
前記ブロックに着脱可能に組み付けられ、前記ブロックに形成された流路を開閉する複数の制御弁と、
を備え、
前記レシーバは、
冷媒を貯留可能なタンクと、
前記タンクの上端開口部を閉じるように設けられる上端部材と、
前記タンクの下端開口部を閉じるように設けられる下端部材と、
を含み、
前記上端部材には、前記第2冷媒循環通路を構成する第1入口ポートおよび第1出口ポートが設けられ、前記ブロックが着脱可能に取り付けられ、
前記下端部材には、前記第1冷媒循環通路を構成する第2入口ポートおよび第2出口ポートが設けられることを特徴とするバルブユニット。
【請求項2】
前記ブロックが、前記第1冷媒循環通路を構成する第1流路と、前記第2冷媒循環通路を構成し前記第1入口ポートと連通する第2流路と、前記第2冷媒循環通路を構成し前記第1出口ポートと連通する第3流路とを有し、
前記複数の制御弁として、
前記ブロックに着脱可能に組み付けられ、前記第1流路を開閉する第1制御弁と、
前記ブロックに着脱可能に組み付けられ、前記第2流路を開閉する第2制御弁と、
前記ブロックに着脱可能に組み付けられ、前記第3流路を開閉する第3制御弁と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のバルブユニット。
【請求項3】
前記レシーバは、冷媒中の異物を捕獲するためのフィルタと、冷媒中の水分を除去するための乾燥剤を前記タンク内に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブユニット。
【請求項4】
前記レシーバは、前記第2入口ポートを介した冷媒の逆流を防止する逆止弁を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブユニット。
【請求項5】
前記ブロックは、前記第3流路における冷媒の逆流を防止する逆止弁を備えることを特徴とする請求項2に記載のバルブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を気液分離するレシーバが一体に設けられるバルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気自動車の普及に伴い、その空調システムの開発も進められている。電気自動車は内燃機関による熱源そのものがないため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いてサイクル運転を行うヒートポンプ式の冷暖房装置が採用される(特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、膨張装置、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が暖められる。冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒は、膨張装置により減圧膨張されて気液二相冷媒となり、蒸発器にて蒸発される。その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。
【0004】
このような冷凍サイクルでは、蒸発器における安定した熱交換を維持するために、室外熱交換器から導出された冷媒を気液分離して溜め置くレシーバドライヤ(以下、単に「レシーバ」ともいう)が設けられることがある。室外熱交換器による凝縮が不十分であってもレシーバの液相部の冷媒を膨張装置に導出することで、蒸発器での熱交換に必要な気液二相冷媒を供給できる。また、余剰液冷媒についてはレシーバに溜め置くことで、膨張装置に対して適量の液冷媒を供給できる。
【0005】
ヒートポンプ式の冷暖房装置を採用する場合、冷媒循環通路に配置される各種制御弁等のデバイスの数も多くなる。このため、複数のデバイスをユニット化するなどコンパクトにまとめることで、車両における省スペースを図ることも重要となる。この点、特許文献1には、冷媒通路が形成されたブロックを介して複数の制御弁とレシーバとが一体化されたバルブユニットが開示されている。このバルブユニットは、レシーバが有底筒状のタンクを有し、そのタンクの上端開口部を閉じるようにブロックが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、レシーバには一般に、冷凍サイクルを循環する冷媒に含まれる異物を捕獲するためのフィルタ部材が設けられる。このようにして異物の循環を抑制することで、冷凍サイクルの正常な作動を担保できる。フィルタ部材には、冷媒中の水分を除去するための乾燥剤が含まれることもある。このようなフィルタ部材は使い捨て部品であるため、定期的に交換する必要があるが、その際、システムのリフレッシュも兼ねてレシーバ全体を交換することが推奨されている。
【0008】
この点、特許文献1のバルブユニットの場合、ブロックがレシーバの一部を構成することから、レシーバをブロックごと交換する必要が生じ得る。また、レシーバの上部に冷媒通路が集約されるため、冷媒循環通路が複雑になるにつれてブロックを大きくする必要がある。ブロックが大きくなることでその重量も増すため、バルブユニットの再組み立てに要する作業負担も増大する。
【0009】
本発明の目的の一つは、レシーバが一体に設けられるバルブユニットのコンパクト化を容易に実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、冷房運転時に開放される第1冷媒循環通路と、暖房運転時に開放される第2冷媒循環通路と、を備える冷凍サイクルに適用されるバルブユニットである。このバルブユニットは、冷房運転時に第1冷媒循環通路を流れる冷媒を気液分離し、暖房運転時に第2冷媒循環通路を流れる冷媒を気液分離するレシーバと、レシーバの上部に着脱可能に組み付けられるブロックと、ブロックに着脱可能に組み付けられ、ブロックに形成された流路を開閉する複数の制御弁と、を備える。
【0011】
レシーバは、冷媒を貯留可能なタンクと、タンクの上端開口部を閉じるように設けられる上端部材と、タンクの下端開口部を閉じるように設けられる下端部材と、を含む。上端部材には、第2冷媒循環通路を構成する第1入口ポートおよび第1出口ポートが設けられ、ブロックが着脱可能に取り付けられる。下端部材には、第1冷媒循環通路を構成する第2入口ポートおよび第2出口ポートが設けられる。
【0012】
この態様によると、タンクの上端開口部を上端部材で閉じ、下端開口部を下端部材で閉じることでレシーバが構成される。そのうえでブロックが上端部材に着脱可能に取り付けられるため、レシーバとブロックとを容易に分離できる。また、下端部材に第2入口ポートと第2出口ポートを設ける構成としたため、第1冷媒循環通路の一部をレシーバの下部に形成できる。言い換えれば、各冷媒循環通路を形成するための通路をブロックに集約する必要がないため、ポート数の増加に応じてブロックが大きくなるのを抑制できる。結果的に、バルブユニットのコンパクト化を実現しやすくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レシーバが一体に設けられるバルブユニットのコンパクト化を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成図である。
【
図7】レシーバとブロックとの組み付け構造を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0016】
図1は、実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成図である。
冷暖房装置100は、圧縮機102、補助凝縮器104、室外熱交換器106、レシーバ108および蒸発器110等を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。冷暖房装置100は、HFC-134a(代替フロン)、HFO-1234yfなどの冷媒が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式冷暖房装置として構成される。
【0017】
圧縮機102、室外熱交換器106およびレシーバ108は、車室外(エンジンルーム)に設けられている。一方、車室内には空気の熱交換が行われるダクト112が設けられている。ダクト112における空気の流れ方向上流側に蒸発器110が配設され、下流側に補助凝縮器104が配設される。補助凝縮器104の上流側には、エアミックスドア113が回動自在に設けられている。
【0018】
冷暖房装置100は、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。この冷凍サイクルは、補助凝縮器104と室外熱交換器106とが凝縮器として直列に動作可能に構成され、また、蒸発器110と室外熱交換器106とが蒸発器として切り替え可能に構成されている。冷房運転時に冷媒が循環する第1冷媒循環通路と、暖房運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路が形成される。
【0019】
第1冷媒循環通路は、圧縮機102→補助凝縮器104→室外熱交換器106→レシーバ108→蒸発器110→圧縮機102のように冷媒が循環する通路である(
図2(A)参照)。第2冷媒循環通路は、圧縮機102→補助凝縮器104→レシーバ108→室外熱交換器106→圧縮機102のように冷媒が循環する通路である(
図2(B)参照)。すなわち、第2冷媒循環通路は、蒸発器110を迂回する通路とされている。
【0020】
そして、これらの冷媒循環通路を切り替えるためのバルブユニット1が設けられている。バルブユニット1は、電磁弁2、電磁弁4および電動弁6を、ブロック10を介してレシーバ108に組み付けて構成される。レシーバ108の上部には第1入口ポート140および第1出口ポート142が設けられ、下部には第2入口ポート144および第2出口ポート146が設けられている。
【0021】
レシーバ108内の上部にガス冷媒を溜める気相空間GSが形成され、下部に液冷媒を溜める液相空間LSが形成される。第1入口ポート140は、レシーバ108内の上部に連通する。第2入口ポート144および第2出口ポート146は、それぞれレシーバ108内の下部に連通する。第1出口ポート142は、排出管148を介してレシーバ108内の下部に連通する。レシーバ108の下部には、第2入口ポート144を介した冷媒の逆流を防止する逆止弁150が設けられている。
【0022】
ブロック10は、第1流路131、第2流路132および第3流路133を有し、レシーバ108の上部に着脱可能に組み付けられる。第1流路131は、第1冷媒循環通路を構成する。第2流路132は、第2冷媒循環通路を構成し、レシーバ108の第1入口ポート140と連通する。第3流路133は、第2冷媒循環通路を構成し、レシーバ108の第1出口ポート142と連通する。第1流路131と第3流路133とは中途に合流点Pを有する。ブロック10には、第3流路133における冷媒の逆流を防止する逆止弁152が設けられている。
【0023】
電磁弁2、電磁弁4および電動弁6は、それぞれブロック10に対して着脱可能に組み付けられている。電磁弁2は、第1流路131の入口に接続され、第1流路131を開閉する「第1制御弁」として機能する。電磁弁4は、第2流路132の入口に接続され、第2流路132を開閉する「第2制御弁」として機能する。電動弁6は、第1流路131および第3流路133の出口に接続され、第1流路131および第3流路133を開閉する「第3制御弁」として機能する。バルブユニット1の構造の詳細については後述する。
【0024】
圧縮機102の出口(吐出室)は、第1通路121を介して補助凝縮器104の入口に接続される。補助凝縮器104の出口は、第2通路122を介して電磁弁2の入口に接続される。電磁弁2の出口が第1流路131を介して電動弁6の入口に接続される。電動弁6の出口は、第3通路123を介して室外熱交換器106の入口に接続される。室外熱交換器106の出口は、第4通路124を介して圧縮機102の入口に接続される。第4通路124の中途には分岐点P1が設けられ、第5通路125が分岐する。
【0025】
第5通路125は、レシーバ108の第2入口ポート144に接続される。第2出口ポート146は、第6通路126を介して蒸発器110の入口に接続される。第6通路126における蒸発器110の上流側に電動弁114が設けられている。蒸発器110の出口は、第7通路127(戻り通路)および第4通路124を介して圧縮機102の入口(吸入室)に接続される。すなわち、第4通路124における圧縮機102の上流側に第7通路127との合流点P2が設けられる。第4通路124における分岐点P1と合流点P2との間に、第4通路124を開閉する開閉弁116が設けられている。開閉弁116は、本実施形態ではソレノイド駆動の電磁弁からなるが、モータ駆動の電動弁としてもよい。
【0026】
第2通路122の中途には分岐点P3が設けられ、第8通路128が分岐する。第8通路128は、電磁弁4の入口に接続される。電磁弁4の出口が第2流路132の入口に接続されている。
【0027】
このような構成により、第1通路121、第2通路122、第1流路131、第3通路123、第4通路124の上流部(分岐点P1の上流側)、第5通路125、第6通路126、第7通路127および第4通路124の下流部(合流点P2の下流側)により第1冷媒循環通路が形成される(
図2(A)参照)。
【0028】
また、第1通路121、第2通路122(分岐点P3の上流側)、第8通路128、第2流路132、第3流路133、第3通路123および第4通路124により第2冷媒循環通路が形成される(
図2(B)参照)。さらに、第1通路121、第2通路122(分岐点P3の上流側)、第8通路128、第2流路132、第6通路126、第7通路127および第4通路124の下流部(合流点P2の下流側)により第3冷媒循環通路が形成される(
図3(A)参照)。これらの詳細については後述する。
【0029】
圧縮機102は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成される。圧縮機102は、図示略のバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。なお、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明を省略する。
【0030】
補助凝縮器104は、室外熱交換器106とは別に冷媒を放熱させる室内凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機102から吐出された高温・高圧の冷媒が補助凝縮器104を通過する際に放熱する。
【0031】
室外熱交換器106は、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外熱交換器106は、外気と冷媒との間で熱交換をさせる。冷房運転時には開閉弁116が閉じられるため、室外熱交換器106を経た冷媒はレシーバ108に導かれる。暖房運転時には開閉弁116が開かれるため、室外熱交換器106を経た冷媒は圧縮機102に導かれる。
【0032】
電動弁114は、冷房運転時に膨張弁として機能し、レシーバ108から導出された液冷媒を絞り膨張させて蒸発器110へ供給する。
【0033】
蒸発器110は、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。電動弁114の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器110を通過する際に蒸発する。ダクト112の上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア113の開度に応じて補助凝縮器104を通過するものと、補助凝縮器104を迂回するものとに振り分けられる。補助凝縮器104を通過する空気は、その通過過程で加熱される。補助凝縮器104を通過した空気と迂回した空気とが補助凝縮器104の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。
【0034】
以上のように構成された冷暖房装置100は、制御部130により制御される。制御部130は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部130は、車室内外の温度、蒸発器110の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各制御弁の制御量(開閉状態)や圧縮機102の駆動量等を決定し、それらを駆動させるための制御電流を供給する。圧縮機102は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。
【0035】
図2および
図3は、冷暖房装置100の動作を表す図である。
図2(A)は冷房運転、
図2(B)は暖房運転を示す。
図3(A)および(B)は除湿暖房運転を示す。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示す。
【0036】
(冷房運転)
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、バルブユニット1において電磁弁2および電動弁6が開弁状態とされ、電磁弁4が閉弁状態とされる。電動弁6は全開状態に制御される。電動弁6は、例えば特開2022-146574号公報に記載のような大口径の第1弁(大口径弁)と小口径の第2弁(小口径弁)とを共用のアクチュエータ(モータ)で駆動する複合弁(「大小口径弁」ともいう)である。冷房運転の際には大口径弁が全開状態になる。また、開閉弁116は閉弁状態とされ、電動弁114が膨張弁として機能する微小開度状態とされる。このとき、第1流路131が開放され、差圧により逆止弁152が閉じ、逆止弁150が開く。それにより、第1冷媒循環通路が開放され、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路は遮断される。このため、圧縮機102から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、補助凝縮器104および室外熱交換器106を経ることで凝縮される。室外熱交換器106は室外凝縮器として機能する。
【0037】
そして、室外熱交換器106から導出された冷媒がレシーバ108にて気液分離され、その液冷媒が下流側に供給される。この液冷媒は、電動弁114で絞り膨張され、低温・低圧の霧状の冷媒となって蒸発器110に導入される。その冷媒が蒸発器110を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器110から導出された冷媒は、圧縮機102に戻される。
【0038】
(暖房運転)
図2(B)に示すように、暖房運転時においては、バルブユニット1において電磁弁4および電動弁6が開弁状態とされ、電磁弁2が閉弁状態とされる。また、開閉弁116が開弁状態とされ、電動弁114は閉弁状態とされる。このとき、第2流路132が開放されることで冷媒がレシーバ108内に導入される。差圧により逆止弁152が開き、逆止弁150が閉じる。その結果、第3流路133が開放される。レシーバ108内の下部の冷媒が排出管148を伝って排出される。
【0039】
それにより、第2冷媒循環通路が開放され、第1冷媒循環通路および第3冷媒循環通路は遮断される。このため、冷媒は蒸発器110を通過せず、蒸発器110は実質的に機能しなくなる。電動弁6が微小開度に制御され、膨張弁として機能する。このとき、電動弁6において大口径弁が閉弁し、小口径弁により微小開度に制御される。室外熱交換器106のみが蒸発器(室外蒸発器)として機能する。
【0040】
すなわち、圧縮機102から吐出された冷媒は、補助凝縮器104を経ることで凝縮される。その冷媒は、レシーバ108にて気液分離され、その液冷媒が下流側に供給される。この液冷媒は、電動弁6で絞り膨張され、低温・低圧の霧状の冷媒となって室外熱交換器106に導入される。その冷媒が室外熱交換器106を通過する過程で蒸発し、外部から熱量を吸収する。室外熱交換器106から導出された冷媒は、ガス冷媒となって圧縮機102に戻される。このとき、エアミックスドア113が大きく開かれ、補助凝縮器104における熱交換により車室内が暖められる。
【0041】
(除湿暖房運転)
図3(A)に示すように、除湿暖房運転においては、バルブユニット1において電磁弁4が開弁状態とされ、電磁弁2および電動弁6が閉弁状態とされる。また、開閉弁116は閉弁状態とされ、電動弁114が開弁されて膨張弁として機能する。このとき、第2流路132が開放されることで冷媒がレシーバ108内に導入される。逆止弁150および逆止弁152が閉弁状態を保ち、第1流路131および第3流路133は遮断される。それにより、第3冷媒循環通路が開放され、第1冷媒循環通路および第2冷媒循環通路は遮断される。このため、圧縮機102から吐出された冷媒は、補助凝縮器104を経てバルブユニット1に導かれるものの、その冷媒は室外熱交換器106を通過せず、レシーバ108、電動弁114および蒸発器110を経由して圧縮機102に戻る。その際、蒸発器110による除湿機能が発揮される。エアミックスドア113が大きく開かれるため、車室内の暖房は維持される。
【0042】
なお、変形例においては、
図3(B)に示すように、除湿暖房運転において第1冷媒循環通路を開放するとともに、電動弁6を微小開度に制御することで、膨張弁として機能させてもよい。このとき、電動弁114も膨張弁として機能する。電動弁6以外の制御弁の開閉制御については、
図2(A)に示した冷房運転時と同様である。冷媒は室外熱交換器106を通過する過程で蒸発し、外部から熱量を吸収する。室外熱交換器106から導出された冷媒は、レシーバ108、電動弁114および蒸発器110を経由して圧縮機102に戻る。その際、蒸発器110による除湿機能が発揮される。エアミックスドア113が大きく開かれるため、車室内の暖房は維持される。
【0043】
次に、バルブユニット1の構造について説明する。
図4~
図6は、バルブユニット1の外観を表す図である。
図4は左斜め上方からみた斜視図、
図5は正面図、
図6は平面図である
図4に示すように、バルブユニット1は、レシーバ108の上端にブロック10を組み付け、そのブロック10に電磁弁2、電磁弁4および電動弁6を組み付けて構成される。レシーバ108は、円筒状のタンク20を備える。
【0044】
図5および
図6にも示すように、ブロック10は、正面視長方形状かつ平面視長方形状の直方体形状をなし、複数のボルト22によりレシーバ108の上端面に固定されている。電磁弁2、電磁弁4および電動弁6は、ブロック10の上面に横並びに配置され、それぞれ貫通孔24に挿通されるボルト(図示せず)によりブロック10に固定される。ブロック10の平面視において電磁弁2が中央に設けられ、その両側に電磁弁4、電動弁6が設けられている。
【0045】
電磁弁2は、ブロック状のボディ30に駆動部32(ソレノイド)を組み付けて構成される。駆動部32は、ボディ30の側面から露出する。ボディ30は内部通路を有し、その内部通路の中途に弁部が設けられている。ボディ30の上面には内部通路の一端が入口ポート34として開口し、ボディ30の下面には、内部通路の他端が出口ポートとして開口している。駆動部32の駆動により弁部を開閉できる。
【0046】
電磁弁4は、本実施形態では電磁弁2と同様の構造(同一の外形状)を有するが、変形例においては駆動部としてソレノイドを有する点を共通としつつも、外観や内部構造などの具体的構造や大きさを電磁弁2と異ならせてもよい。なお、このような電磁弁の内部構造は公知であるため、その詳細については説明を省略する。
【0047】
電動弁6は、ブロック状のボディ40に駆動部42(モータユニット)を組み付けて構成される。駆動部42は、ボディ40の側面から露出する。ボディ40は内部通路を有し、その内部通路の中途に弁部が設けられている。ボディ40の上面には内部通路の一端が出口ポート46として開口し、ボディ40の下面には、内部通路の他端が入口ポートとして開口している。駆動部42の駆動により弁部を開閉できる。このような電動弁の内部構造は、例えば特開2022-146574号公報に記載のように公知であるため、その詳細については説明を省略する。
【0048】
図7は、レシーバ108とブロック10との組み付け構造を表す断面図である。本図は、
図6のA-A矢視断面に対応する分解図である。
レシーバ108は、円筒状のタンク20と、タンク20の上端開口部を閉じるように設けられる上端部材52と、タンク20の下端開口部を閉じるように設けられる下端部材54を備える。タンク20の上下方向中央部にフィルタ部材56が配設されている。
【0049】
上端部材52は、円板状の部材であり、タンク20の上端部に挿入され、外周溶接により気密に固定されている。上端部材52を上下に貫通するように、第1入口ポート140および第1出口ポート142が設けられている。
【0050】
下端部材54は、円板状の部材であり、タンク20の下端部に挿入され、外周溶接により気密に固定されている。下端部材54を上下に貫通するように、第2入口ポート144および第2出口ポート146が設けられている。第2入口ポート144の内方に逆止弁150が配設されている。
【0051】
下端部材54は、第2入口ポート144の上端開口部からエンボス状に突出する支持部55を有する。逆止弁150は、円筒状のボディ154と、ボディ154の内方に組み付けられる軸受部材156と、軸受部材156に支持される弁体158を備える。ボディ154は、支持部55の内側に挿入されるように組み付けられる。ボディ154の下流側端部の外周面にシールリング160が設けられ、第2入口ポート144の内周面との間の気密性が担保される。ボディ154の上流側端部に弁座162が設けられている。
【0052】
弁体158の上流側端部には、ゴム等の弾性体からなるシール部材159が嵌着されている。弁体158は、軸受部材156により軸線方向に摺動可能に支持される。弁体158と軸受部材156との間には、弁体158を閉弁方向に付勢するスプリング164が介装されている。弁体158が下流側から弁座162に着脱して逆止弁150を開閉する。
【0053】
フィルタ部材56は、上下一対の円板状のフィルタ60の間に乾燥剤62を充填し、一対の支持部材64により上下に挟むようにして構成される。フィルタ60は冷媒中の異物(塵埃等)を捕獲する機能を有し、乾燥剤62は冷媒中の水分を除去する機能を有する。支持部材64は円板状の金属板であり、ガス冷媒を通過させるための多数の小孔を有する。これらの支持部材64がタンク20に圧入されることで、フィルタ部材56がタンク20の中央部に固定される。
【0054】
フィルタ部材56を中心軸に沿って貫通するように挿通孔66が設けられ、排出管148がその挿通孔66を貫通している。排出管148の上端が第1出口ポート142に開口し、下端がタンク20内の下部(底部近傍)に開口している。本実施形態では、タンク20に対して上端部材52および下端部材54を組み付ける構成としたため、図示のように排出管148をタンク20内に収容することができる。
【0055】
ブロック10には上述のように、第1流路131、第2流路132および第3流路133が形成される。第1流路131は、その入口および出口がブロック10の上面に開口するU字状の流路とされている。第2流路132は、ブロック10を上下方向に貫通する。第3流路133は、一端がブロック10の下面に開口し、他端がブロック10の上面に開口する。第3流路133は、中途の合流点Pにて第1流路131と接続され、第1流路131と出口を共用する。第3流路133は、逆止弁152を取り付ける取付孔135としても機能する。取付孔135の開口端は栓体137により閉止されている。
【0056】
逆止弁152は、逆止弁150とほぼ同様の構成を有する。このため、同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。逆止弁152は、ボディ174の上流側端部の外周面にシールリング160が設けられ、第3流路133の内周面との間の気密性が担保される。ボディ174の上流側端部に弁座162が設けられている。弁体158が下流側から弁座162に着脱して逆止弁152を開閉する。
【0057】
ブロック10の上面には、第1流路131の入口を構成する継手部70と、第1流路131および第3流路133の出口を構成する継手部72と、第2流路132の入口を構成する継手部74が突設されている。ブロック10の下面には、第2流路132の出口を構成する継手部76と、第3流路133の入口を構成する継手部78が突設されている。各継手部にはシールリング80(Oリング)が嵌着されている。
【0058】
バルブユニット1を組み立てる際には、継手部76を第1入口ポート140に挿入し、継手部78を第1出口ポート142に挿入するようにしてブロック10をレシーバ108に組み付ける。そして、上述した複数のボルト22により両者を固定する。さらに、継手部70を電磁弁2の出口ポートに挿入し、継手部72を電動弁6の入口ポートに挿入し、継手部74を電磁弁4の出口ポートに挿入するようにして各制御弁をブロック10に組み付ける。そして、上述した複数のボルトにより各制御弁をブロック10に固定する。
【0059】
以上に説明したように、本実施形態では、タンク20の上端開口部を上端部材52で閉じ、下端開口部を下端部材54で閉じることでレシーバ108が構成される。そのうえでブロック10が上端部材52に着脱可能に取り付けられるため、レシーバ108とブロック10とを容易に分離できる。
【0060】
また、下端部材54に第2入口ポート144と第2出口ポート146を設ける構成としたため、第1冷媒循環通路の一部をレシーバ108の下部に形成できる。言い換えれば、各冷媒循環通路を形成するための通路をブロック10に集約する必要がないため、ポート数の増加に応じてブロック10が大きくなるのを抑制できる。結果的に、バルブユニット1のコンパクト化を実現しやすくなる。
【0061】
第2出口ポート146を下端部材54に設けることで、ブロック10から遠ざけることができるため、第2出口ポート146から導出される液冷媒が第1流路131の高温冷媒により加熱されることもない。このため、室外熱交換器で冷却・凝縮した冷媒が蒸発器に送られる前に再度加熱され、システムの制御に影響を与えることを防止できる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0063】
[変形例]
上記実施形態では、ブロック10に組み付けられる制御弁として2つの電磁弁と電動弁との組合せを例示した。変形例においては、電磁弁2および電磁弁4の少なくとも一方を電動弁に置換してもよい。あるいは、電動弁6を膨張弁として機能し得る電磁弁に置換してもよい。上記実施形態では開閉弁116を電磁弁で構成したが、電動弁としてもよい。
【0064】
上記実施形態では、
図1に示したように、電動弁114としてモータ駆動の電動弁を例示したが、ソレノイド駆動の電磁弁としてもよい。その場合、電磁弁により微小開度を制御する。あるいは、冷媒の温度および圧力を感知して動作する温度式膨張弁としてもよい。その場合、温度式膨張弁の上流側に制御部により開閉制御される開閉弁(小型の電磁弁等)を設けるとよい。
【0065】
上記実施形態では、
図7に示したように、逆止弁150をレシーバ108内に設ける構成を例示した。変形例においては、逆止弁150をレシーバ108の外部配管(具体的には、第5通路125(
図1参照)を形成する配管に設けてもよい。それにより、レシーバ108ひいてはバルブユニット1をよりコンパクトに構成できる。
【0066】
上記実施形態では、
図7に示したように、乾燥剤62をフィルタ60と一体に設けてフィルタ部材56とし、タンク20内に固定する構成を例示した。変形例においては、乾燥剤をフィルタと分離し、タンク内に袋状にして入れ込んでおいてもよい。
【0067】
上記実施形態では、電動弁6として複数の弁(大口径弁と小口径弁)を有する大小口径弁を例示したが、膨張機能を有する回転式のボール弁等(例えば国際公開第2022/117641号に開示の構成など)を採用してもよい。
【0068】
上記実施形態では、電磁弁2、電磁弁4および電動弁6の全てを、ブロック10を介してレシーバ108に接続する構成を例示した(
図1参照)。変形例においては、電磁弁2および電動弁6をブロックを介してレシーバ108に接続し、電磁弁4については、レシーバ108に直接接続してもよい。すなわち、バルブユニット1を構成する複数の制御弁として、レシーバ108の上端部材52にブロックを介して接続する制御弁と、上端部材52に直接接続する制御弁が含まれてもよい。
【0069】
あるいは、電磁弁2および電動弁6を第1ブロックを介してレシーバ108に接続し、電磁弁4を第2ブロックを介してレシーバ108に直接接続してもよい。第2ブロックは、第1ブロックよりも小さくてもよい。すなわち、バルブユニット1を構成する複数の制御弁として、レシーバ108の上端部材52に第1ブロックを介して接続する制御弁と、上端部材52に第2ブロックを介して接続する制御弁が含まれてもよい。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 バルブユニット、2 電磁弁、4 電磁弁、6 電動弁、10 ブロック、20 タンク、30 ボディ、32 駆動部、40 ボディ、42 駆動部、50 タンク、52 上端部材、54 下端部材、56 フィルタ部材、70 継手部、72 継手部、74 継手部、76 継手部、78 継手部、80 シールリング、100 冷暖房装置、102 圧縮機、104 補助凝縮器、106 室外熱交換器、108 レシーバ、110 蒸発器、114 電動弁、116 開閉弁、131 第1流路、132 第2流路、133 第3流路、140 第1入口ポート、142 第1出口ポート、144 第2入口ポート、146 第2出口ポート、148 排出管、150 逆止弁、152 逆止弁、158 弁体、160 シールリング。