(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101810
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】医療器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20240723BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61B17/34 510
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005956
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】516011763
【氏名又は名称】仲山貴金属鍍金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】仲山 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】谷口 諒
【テーマコード(参考)】
4C160
4C601
【Fターム(参考)】
4C160FF47
4C160FF53
4C160MM32
4C160NN09
4C601EE11
4C601FF06
4C601FF16
4C601GA20
4C601GA26
(57)【要約】
【課題】医療器具を含む超音波画像を取得することを含む医療において、生体内の医療器具を明瞭に視認できることが望まれる。
【解決手段】粗面を含む外側表面1Sを有する部材を備える医療器具が開示される。医療器具は、生体内に導入された医療器具を含む超音波画像を取得することを含む医療のために用いられる。部材が管状体又は針管1であってもよい。医療器具が穿刺針10であってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗面を含む外側表面を有する部材を備える医療器具であって、
生体内に導入された当該医療器具を含む超音波画像を取得することを含む医療のために用いられる、医療器具。
【請求項2】
前記部材が管状体である、請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
当該医療器具が穿刺針であり、前記部材が針管である、請求項1に記載の医療器具。
【請求項4】
前記粗面が、不規則に形成された複数の凸部を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項5】
前記粗面の算術平均粗さRaが0.15μm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項6】
前記部材の前記外側表面が、0.2mm以上の最大幅を有する凸部及び凹部を有しない平坦面である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療器具。
【請求項7】
前記部材が、前記粗面を形成している金属めっき層を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波画像を取得することを含む医療のために用いられる医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内に導入された穿刺針等の医療器具の位置を超音波画像により確認しながら治療又は診断が行われることがある(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-187719号公報
【特許文献2】中国特許出願公開第114469272号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第114469273号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療器具を含む超音波画像を取得することを含む医療において、生体内の医療器具を明瞭に視認できることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は少なくとも以下を含む。
[1]
粗面を含む外側表面を有する部材を備える医療器具であって、
生体内に導入された当該医療器具を含む超音波画像を取得することを含む医療のために用いられる、医療器具。
[2]
前記部材が管状体である、[1]に記載の医療器具。
[3]
当該医療器具が穿刺針であり、前記部材が針管である、[1]に記載の医療器具。
[4]
前記粗面が、不規則に形成された複数の凸部を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の医療器具。
[5]
前記粗面の算術平均粗さRaが0.15μm以上である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の医療器具。
[6]
前記部材の前記外側表面が、0.2mm以上の最大幅を有する凸部及び凹部を有しない平坦面である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の医療器具。
[7]
前記部材が、前記粗面を形成している金属めっき層を有する、[1]~[6]のいずれか一項に医療器具。
【発明の効果】
【0006】
医療器具を含む超音波画像を取得することを含む医療において、生体内の医療器具を明瞭に視認できることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】医療器具である穿刺針の一例を示す平面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿う部分端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は以下の例に限定されない。
【0009】
図1は、生体内に挿入される医療器具である穿刺針の一例を示す平面図である。
図2は
図1のII-II線に沿う部分端面図である。
図1及び
図2に示される穿刺針10(医療器具)は、中空の針管1を有する。穿刺針を構成する部材である針管1は、針管1の長手方向に対して傾斜した端面によって形成された開口を含む先端部1Aを有する管状体である。針管1のように中空の部材の場合、その内側表面(内周面)も粗面を含んでいてもよい。
【0010】
針管1の外周面である外側表面1Sの一部又は全体が粗面である。粗面を含み外部に露出した外側表面1Sが超音波を乱反射させることにより、超音波画像における穿刺針10の視認性が向上する。針管1(又は部材)の外側表面全体のうち、粗面が占める割合が50面積%以上、60面積%以上、70面積%以上、80面積%以上、90面積%以上、95面積%以上、又は実質的に100面積%であってもよい。
【0011】
外側表面1Sが形成する粗面は、不規則に形成された微細な複数の凸部、及びそれぞれの凸部を囲む凹部を有していてもよい。例えば、粗面が、0.3μm以上5.0μm以下の高さを有し、不規則に形成された複数の凸部を有していてもよい。凸部の高さは、凸部を囲む凹部における最も深い位置を基準とする高さを意味する。
【0012】
外側表面1Sが形成する粗面の算術平均粗さRaが0.15μm以上、0.20μm以上、0.25μm以上、0.30μm、0.35μm以上、0.40μm以上、0.45μm以上、又は0.50μm以上であってもよく、5.0μm以下、4.0μm以下、3.0μm以下、2.0μm以下、1.0μm以下、0.90μm以下、0.80μm以下、0,70μm以下、0.60μm以下、又は0.55μm以下であってもよい。粗面の算術平均粗さRaが大きいと、超音波画像における穿刺針(医療器具)の視認性がより一層向上する傾向がある。ここでの算術平均粗さRaは、JIS B0601:1994に従って決定される値であることができる。
【0013】
外側表面1Sは、全体として平坦面であることができる。より具体的には、外側表面1Sが0.05mm以上、0.1mm以上又は0.2mm以上の最大幅を有する凸部及び凹部を有しない平坦面であってもよい。外側表面1Sが、0.05mm以上、0.1mm以上又は0.2mm以上の最大幅を有し、その周囲の平坦面に対する最大高さが0.05mm以上、又は0.01mm以上である凸部、及び、0.05mm以上、0.1mm以上又は0.2mm以上の最大幅を有し、その周囲の平坦面に対する最大深さが0.05mm以上、又は0.01mm以上である凹部を有しない平坦面であってもよい。外側表面1Sが平坦面であると、医療器具が導入される生体への負担を更に軽減することができる。
【0014】
針管1の外径は、例えば0.5mm以上2.0mm以下であってもよい。針管1の肉厚は、例えば50μm以上1000μm以下であってもよい。
【0015】
図2に示されるように、穿刺針10(医療器具)の針管1(部材)は、基材3と、基材3の外側表面3S側に設けられた金属めっき層5と、基材3と金属めっき層5との間に設けられた下地層4とから構成されていてもよい。
図2の例の場合、基材3は外側表面3Sである外周面を有する管状体である。金属めっき層5は針管1の最外層に位置し、その外周面が、粗面を含む外側表面1S(外周面)である。
【0016】
基材3は、ステンレス鋼等の金属から形成された金属成形体であってもよい。基材3の肉厚は、例えば50μm以上100μm以下であってもよい。
【0017】
下地層4は、主として、粗面を有する金属めっき層5を効率的に形成するために設けられる層である。下地層4は必ずしも設けられなくてもよい。下地層4は金属層であってもよく、特に金属めっき層であってもよい。下地層4がニッケルを含む金属層であってもよい。あるいは、生体への負担軽減等の観点から、下地層4がニッケルを実質的に含まない層であってもよい。下地層4の厚さは、例えば0.05μm以上10μm以下であってもよい。
【0018】
下地層4の外側表面4Sが粗面を含んでいてもよい。下地層4の外側表面4Sが粗面を含むと、粗面を含む外側表面1Sを有する金属めっき層5が形成され易い。粗面を含む外側表面4Sを有する下地層4は、例えば、不均一に金属めっきが形成されるように調整された条件の電解めっきによって形成することができる。例えば、電解めっきのための電流密度、又はめっき浴における電導性塩の濃度が大きいと、金属めっきの均一性が低下し、粗面を有する金属めっき層が形成され易い。例えば、電流密度が0.1A/dm2以上5A/dm2以下、及び/又は電導性塩の濃度が60g/L以上180g/L以下の範囲内で調整された条件の電解めっきにより、粗面を含む外側表面を有する金属めっき層である下地層4が形成され易い。
【0019】
金属めっき層5は、貴金属を含む層であってもよい。例えば、金属めっき層5が金、白金、又はこれらの両方を含んでいてもよい。金属めっき層5の厚さは、例えば0.03μm以上5μm以下であってもよい。
【0020】
金属めっき層5は、電解めっき又は無電解めっきにより形成することができる。平滑な外側表面を有する金属めっき層を形成し、その後、金属めっき層の平滑な外側表面をエッチング等によって粗化することにより、粗面を形成してもよい。その場合、粗化される前の金属めっき層5の外側表面の算術平均粗さRaが0.14μm以下、又は0.13μm以下であってもよい。
【0021】
粗面を含む外側表面を有する金属めっき層を設けることに代えて、基材の外側表面を粗化することを含む方法等により、粗面を含み外部に露出した外側表面を有する部材を有する医療器具を得てもよい。
【0022】
本開示に係る医療器具は、以上例示された穿刺針に限られず、生体内に留置、又は一時的に挿入された医療器具を含む超音波画像を利用する治療又は診断等の医療に用いられる任意の医療器具であることができる。穿刺針以外の医療器具の例としては、カテーテル、焼灼デバイス、及び鉗子が挙げられる。
【実施例0023】
本発明は以下の実施例に限定されない。
【0024】
穿刺針の作製
塩化ニッケル(濃度:130g/L)及びホウ酸(濃度:61g/L)を含むニッケルめっき用のめっき浴を準備した。このめっき浴に、ステンレス鋼製の針管(外径:1.2mm)を浸漬した。めっき浴の温度60℃、電流密度1.0A/dm
2の条件で、めっき浴を撹拌しながら60分間の電解めっきにより、粗面を有する下地層としてのニッケルめっき層を形成した。続いて、針管を、塩化金酸(濃度:2g/L)及び塩酸(濃度:110g/L)を含む金めっき用のめっき浴に浸漬した。めっき浴の温度25℃、電流密度2.0A/dm
2の条件で、1分間の電解めっきにより、ニッケルめっき層上に金めっき層を有する針管(穿刺針)を得た。
図3は得られた針管の外側表面(外周面)の電子顕微鏡写真(倍率:3000倍)である。不規則に形成された微細な多数の凸部と、それぞれの凸部を囲む凹部とを含む粗面が形成されていることが確認された。この粗面の算術平均粗さRaは0.55μmであった。
【0025】
超音波画像における視認性
ニッケルめっき層形成前のステンレス製の針管、及び粗面を有する金めっき層を有する針管を生体内に挿入し、超音波画像診断装置を用いて各針管の超音波画像を取得した。
図4は取得された超音波画像の例である。(a)は粗面を有しないステンレス製の針管の像であり、(b)は粗面を有する金めっき層を有する針管の像である。粗面が形成されていることにより、針管(穿刺針)の超音波画像における視認性が向上することが確認された。