(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101812
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ビール様発泡性飲料
(51)【国際特許分類】
C12C 5/02 20060101AFI20240723BHJP
C12G 3/04 20190101ALI20240723BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240723BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C12C5/02
C12G3/04
A23L2/00 B
A23L2/56
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005958
(22)【出願日】2023-01-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 繭
【テーマコード(参考)】
4B115
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B115LG03
4B115LH11
4B115LP02
4B117LC03
4B117LG16
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK27
4B117LL01
4B128CP16
(57)【要約】
【課題】リン酸や有機酸の含有量が少ないにもかかわらず、味に締まりを感じるとともに、ビールらしいコクとキレのバランスが向上したビール様発泡性飲料及びその製造方法の提供。
【解決手段】リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であり、3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が0.010ppb以上であることを特徴とする、ビール様発泡性飲料、及び、飲料中のリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であるように調整する工程と、飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度を調整する工程と、を有する、ビール様発泡性飲料の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であり、3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が0.15ppb以上であることを特徴とする、ビール様発泡性飲料。
【請求項2】
前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.00015以上である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項3】
前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.005以下である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項4】
3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が5.0ppb以下である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項5】
3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が2.5ppb以下である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項6】
アルコール濃度が、1.0~6.0v/v%である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項7】
アルコール濃度が、1.0v/v%未満である、請求項1に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項8】
発酵ビール様発泡性飲料である、請求項1~7のいずれか一項に記載のビール様発泡性飲料。
【請求項9】
飲料中のリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であるように調整する工程と、
飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.15ppb以上になるように調整する工程と、
を有する、ビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項10】
原料として、3-フェニルプロピオン酸エチルを用いる、請求項9に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項11】
飲料中の前記酸成分の総濃度及び飲料中の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度を、前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチル濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.00015以上になるように調整する、請求項9に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項12】
飲料中の前記酸成分の総濃度及び飲料中の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度を、前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチル濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.005以下になるように調整する、請求項9に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項13】
3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が5.0ppb以下になるように調整する、請求項9に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項14】
3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が2.5ppb以下になるように調整する、請求項9に記載のビール様発泡性飲料の製造方法。
【請求項15】
飲料中のリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であるビール様発泡性飲料の香味を改善する方法であって、
飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.15ppb以上になるように調整する工程、
を有する、ビール様発泡性飲料の香味改善方法。
【請求項16】
飲料中の前記酸成分の総濃度及び飲料中の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度を、前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチル濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチル濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.00015以上になるように調整する、請求項15に記載のビール様発泡性飲料の香味改善方法。
【請求項17】
3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が5.0ppb以下になるように調整する、請求項15に記載のビール様発泡性飲料の香味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール様発泡性飲料、ビール様発泡性飲料の製造方法、及びビール様発泡性飲料の香味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールや発泡酒等のビール様発泡性飲料は、消費者の嗜好の多様化にともない、多種多様の商品が上市されている。特に、健康や美容上の理由から、飲用により摂取する糖分やカロリー、アルコールを低減したビール様発泡性飲料に対する需要も高まっている。
【0003】
一方で、ビール様発泡性飲料において、糖質やアルコール分は、コク味や飲み応えに寄与する重要な成分であり、これらの濃度が低くなると、酸味とコク味がビールらしいバランスを保つように、有機酸含有量も低減されやすい。このように、糖質やアルコール分が抑えられたビール様発泡性飲料は、通常のビールと比べて全体的に呈味が弱くなり、水っぽさが目立ち、飲料全体としての嗜好性が低下しやすいという問題がある。
【0004】
ビール様発泡性飲料を含む各種の飲料において、香気成分を配合することによって香味を改善することが行われている。低糖質・低カロリーのビール様発泡性飲料の香味を改善する方法として、例えば、糖質含有量に対するリナロール含有量の比率を特定の範囲内に調整する方法がある(特許文献1)。また、麦芽使用比率が低いビール様発泡性飲料において、フェニルエチルアルコール、シス-3-ヘキサノール、4-メチル-3-ペンテン-1-オール、3-フェニルプロピオン酸エチル、3-メルカプト-1-ヘキサノール、ベンズアルデヒド、及びリナロールの6種類の香気成分を特定の配合比でバランスよく含有させることにより、さわやかな甘味を有し、かつ軽快感も良好なビール様発泡性飲料が製造できることも報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6814734号公報
【特許文献2】特開2015-154745号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Vesely et al., Journal of Agricultural and Food Chemistry, 2003, vol.51, p.6941-6944.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リン酸や有機酸の含有量が少ないビール様発泡性飲料では、後味がフラットになり、味の締まりがなくなりやすいという問題がある。本発明は、リン酸や有機酸の含有量が少ないにもかかわらず、味に締まりを感じるとともに、ビールらしいコクとキレのバランスが向上したビール様発泡性飲料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、リン酸や有機酸の含有量が少ないビール様発泡性飲料に対して、3-フェニルプロピオン酸エチル(CAS番号:2021-28-5)を含有させることにより、味の締まりが強化され、かつビールらしいコクとキレのバランスが向上されることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明に係るビール様発泡性飲料、ビール様発泡性飲料の製造方法、及びビール様発泡性飲料の香味改善方法は、下記の通りである。
[1] リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であり、3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が0.15ppb以上であることを特徴とする、ビール様発泡性飲料。
[2] 前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.00015以上である、前記[1]のビール様発泡性飲料。
[3] 前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.005以下である、前記[1]又は[2]のビール様発泡性飲料。
[4] 3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が5.0ppb以下である、前記[1]~[3]のいずれかのビール様発泡性飲料。
[5] 3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が2.5ppb以下である、前記[1]~[4]のいずれかのビール様発泡性飲料。
[6] アルコール濃度が、1.0~6.0v/v%である、前記[1]~[5]のいずれかのビール様発泡性飲料。
[7] アルコール濃度が、1.0v/v%未満である、前記[1]~[5]のいずれかのビール様発泡性飲料。
[8] 発酵ビール様発泡性飲料である、前記[1]~[7]のいずれかのビール様発泡性飲料。
[9] 飲料中のリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であるように調整する工程と、
飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.15ppb以上になるように調整する工程と、
を有する、ビール様発泡性飲料の製造方法。
[10] 原料として、3-フェニルプロピオン酸エチルを用いる、前記[9]のビール様発泡性飲料の製造方法。
[11] 飲料中の前記酸成分の総濃度及び飲料中の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度を、前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチル濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.00015以上になるように調整する、前記[9]又は[10]のビール様発泡性飲料の製造方法。
[12] 飲料中の前記酸成分の総濃度及び飲料中の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度を、前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチル濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.005以下になるように調整する、前記[9]~[11]のいずれかのビール様発泡性飲料の製造方法。
[13] 3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が5.0ppb以下になるように調整する、前記[9]~[12]のいずれかのビール様発泡性飲料の製造方法。
[14] 3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度が2.5ppb以下になるように調整する、前記[9]~[13]のいずれかのビール様発泡性飲料の製造方法。
[15] 飲料中のリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満であるビール様発泡性飲料の香味を改善する方法であって、
飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が0.15ppb以上になるように調整する工程、
を有する、ビール様発泡性飲料の香味改善方法。
[16] 飲料中の前記酸成分の総濃度及び飲料中の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度を、前記酸成分の総濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチル濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチル濃度(ppb)]/[酸成分の総濃度(ppm)])が0.00015以上になるように調整する、前記[15]のビール様発泡性飲料の香味改善方法。
[17] 3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が5.0ppb以下になるように調整する、前記[15]又は[16]のビール様発泡性飲料の香味改善方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るビール様発泡性飲料は、リン酸や有機酸の含有量が少ないにもかかわらず、味に締まりが感じられるとともに、ビールらしいコクとキレのバランスが改善されており、嗜好性が高い。
また、本発明に係るビール様発泡性飲料の製造方法やビール様発泡性飲料の香味改善方法により、味に締まりが感じられ、かつビールらしいコクとキレのバランスも良好な、嗜好性の高いビール様発泡性飲料が製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明及び本願明細書において、「X1~X2(X1及びX2は、X1<X2を満たす実数)」は、「X1以上X2以下」の数値範囲を意味する。
本発明及び本願明細書において、「ppm」及び「ppb」は、それぞれ、「質量ppm」及び「質量ppb」を意味する。
【0012】
本発明及び本願明細書において、「ビール様発泡性飲料」とは、炭酸ガスを含有する飲料のうち、「ビールらしさ」を有している飲料を意味する。「ビールらしさ」とは、製品名称・表示にかかわらず、香味上ビールを想起させる呈味のことを意味する。つまり、「ビール様発泡性飲料」とは、アルコール濃度、麦芽及びホップの使用の有無、発酵の有無に関わらず、ビールと同等の又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有し、高い止渇感・ドリンカビリティー(飽きずに何杯も飲み続けられる性質)を有する発泡性飲料を意味する。
【0013】
本発明及び本願明細書において、「発酵ビール様発泡性飲料」とは、発酵工程を経て製造されるビール様発泡性飲料を意味する。発酵方法は特に限定されるものではなく、単発酵であってもよく、単行複発酵であってもよく、並行複発酵であってもよいが、伝統的なビールの製造と同様に、麦芽等の原料に含まれるでんぷんを1~3糖に分解する糖化工程と、酵母により糖からアルコールを生成する発酵工程を、別個に経て製造される単行複発酵であることが好ましい。
本発明及び本願明細書において、「非発酵ビール様発泡性飲料」とは、発酵工程を経ずに製造されるビール様発泡性飲料を意味する。
【0014】
本発明に係る発酵ビール様発泡性飲料としては、具体的には、ビールや、発泡酒、ローアルコールビール様発泡性飲料、ノンアルコールビール等のうち、発酵工程を経て製造される飲料が挙げられる。その他、発酵工程を経て製造された飲料を、アルコール含有蒸留液と混和して得られたリキュール類であってもよい。
【0015】
アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、一般に蒸留酒に分類されるものを用いることができる。例えば、原料用アルコールであってもよく、スピリッツ、ウィスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎等の蒸留酒等を用いることができる。
【0016】
本発明に係るビール様発泡性飲料は、リン酸と有機酸の合計濃度が低い、低酸度飲料である。具体的には、本発明に係るビール様発泡性飲料は、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる酸成分の総濃度が1500ppm未満である。以降において、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸をまとめて「酸成分(A)」といい、飲料のリン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸の総濃度を、「酸成分(A)濃度」ということがある。
【0017】
リン酸や有機酸は、飲料において主に酸味料として機能する成分である。このためこれらの総含有量が少ない飲料では、酸味が弱くなり、味の締まりが不十分になりやすい。これに対して、本発明に係るビール様発泡性飲料では、酸成分(A)濃度が1500ppm未満であり、リン酸や有機酸の総含有量が少ないにもかかわらず、十分量の3-フェニルプロピオン酸エチルを含有していることにより、味に締まりが感じられるとともに、ビールらしいコクとキレのバランスも改善されている。
【0018】
本発明に係るビール様発泡性飲料の酸成分(A)濃度は、1500ppm未満であれば特に限定されるものではない。3-フェニルプロピオン酸エチルによる味の締まり改善効果がより充分に発揮される点から、本発明に係るビール様発泡性飲料の酸成分(A)濃度は、1450ppm未満が好ましく、1400ppm未満がより好ましく、1380ppm未満がさらに好ましい。また、よりビールらしい呈味に優れたビール様発泡性飲料となる点から、本発明に係るビール様発泡性飲料の酸成分(A)濃度は、50ppm以上が好ましく、100ppm以上がより好ましく、200ppm以上がさらに好ましく、300ppmがよりさらに好ましく、450ppm以上が特に好ましい。
【0019】
本発明に係るビール様発泡性飲料の酸成分(A)に含まれる各酸はそれぞれ、酸味の強さや酸味以外の呈味は異なるものの、酸味を有している点では共通している。味の締まりに寄与するのは酸味であり、ビール様発泡性飲料の酸成分(A)の組成が異なっていても、酸成分(A)濃度依存的に味の締まり改善効果が得られる。このため、本発明に係るビール様発泡性飲料の酸成分(A)に含まれる各酸の濃度は、合計濃度が1500ppm未満となる濃度であれば、特に限定されるものではない。
【0020】
本発明に係るビール様発泡性飲料の酸成分(A)のうち、リン酸の濃度としては、例えば、8ppm以上が好ましく、20ppm以上がより好ましく、40ppm以上がさらに好ましく、80ppm以上がよりさらに好ましい。また、本発明に係るビール様発泡性飲料のリン酸の濃度としては、例えば、900ppm以下が好ましく、700ppm以下がより好ましく、500ppm以下がさらに好ましい。
【0021】
本発明に係るビール様発泡性飲料のクエン酸の濃度としては、例えば、3ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、20ppm以上がさらに好ましく、50ppm以上がよりさらに好ましい。また、本発明に係るビール様発泡性飲料のクエン酸の濃度としては、例えば、700ppm以下が好ましく、500ppm以下がより好ましく、300ppm以下がさらに好ましい。
【0022】
本発明に係るビール様発泡性飲料のピルビン酸の濃度としては、例えば、10ppm以上が好ましく、20ppm以上がより好ましく、30ppm以上がさらに好ましく、40ppm以上がよりさらに好ましい。また、本発明に係るビール様発泡性飲料のピルビン酸の濃度としては、例えば、400ppm以下が好ましく、300ppm以下がより好ましく、200ppm以下がさらに好ましい。
【0023】
本発明に係るビール様発泡性飲料のリンゴ酸の濃度としては、例えば、4ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、20ppm以上がさらに好ましく、40ppm以上がよりさらに好ましい。また、本発明に係るビール様発泡性飲料のリンゴ酸の濃度としては、例えば、500ppm以下が好ましく、300ppm以下がより好ましく、200ppm以下がさらに好ましい。
【0024】
本発明に係るビール様発泡性飲料のコハク酸の濃度としては、例えば、3ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、20ppm以上がさらに好ましく、40ppm以上がよりさらに好ましい。また、本発明に係るビール様発泡性飲料のコハク酸の濃度としては、例えば、300ppm以下が好ましく、250ppm以下がより好ましく、200ppm以下がさらに好ましい。
【0025】
本発明に係るビール様発泡性飲料の乳酸の濃度としては、例えば、25ppm以上が好ましく、30ppm以上がより好ましく、40ppm以上がさらに好ましく、50ppm以上がよりさらに好ましい。また、本発明に係るビール様発泡性飲料の乳酸の濃度としては、例えば、600ppm以下が好ましく、300ppm以下がより好ましく、200ppm以下がさらに好ましい。
【0026】
本発明に係るビール様発泡性飲料の酢酸の濃度としては、例えば、4ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、20ppm以上がさらに好ましい。また、本発明に係るビール様発泡性飲料の酢酸の濃度としては、例えば、300ppm以下が好ましく、200ppm以下がより好ましく、150ppm以下がさらに好ましい。
【0027】
本発明に係るビール様発泡性飲料のピログルタミン酸の濃度としては、例えば、5ppm以上が好ましく、20ppm以上がより好ましく、40ppm以上がさらに好ましく、50ppm以上がよりさらに好ましい。また、本発明に係るビール様発泡性飲料のピログルタミンの濃度としては、例えば、500ppm以下が好ましく、350ppm以下がより好ましく、250ppm以下がさらに好ましい。
【0028】
本発明に係るビール様発泡性飲料は、本発明の効果が奏される限りにおいて、酸成分(A)以外の有機酸を含有していてもよい。例えば、本発明に係るビール様発泡性飲料のギ酸の濃度としては、例えば、0~50ppmが好ましく、0~40ppmがより好ましく、0~20ppmがさらに好ましく、0~10ppmがよりさらに好ましい。なお、「0ppm」とは、検出限界値以下の濃度であることを意味する。
【0029】
本発明に係るビール様発泡性飲料のリン酸濃度は、麦芽等のリン酸を多く含む原料の使用量を調整したり、リン酸自体を原料として添加することにより所望の濃度に調整することができる。ビール様発泡性飲料のリン酸濃度は、pH緩衝化ポストカラム電気伝導度検出法により測定することができる。
【0030】
本発明に係るビール様発泡性飲料の各有機酸の濃度は、例えば、「BCOJビール分析法(2013改訂版)(ビール酒造組合国際技術委員会(分析委員会)編集)」の「8.24.2 有機酸」に規定されている方法に従って測定することができる。
【0031】
本発明に係るビール様発泡性飲料が発酵ビール様発泡性飲料である場合、飲料中の有機酸は、原料に由来するか、発酵中に酵母の代謝により生成されたものである。有機酸を含有する原料としては、麦芽、pH調整剤、酸味料等が挙げられる。本発明に係るビール様発泡性飲料が非発酵ビール様発泡性飲料である場合、飲料中の有機酸は、原料に由来する。例えば、麦芽は有機酸含有量の多い原料であり、本発明に係るビール様発泡性飲料が麦芽を原料とする場合、飲料中のクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸の多くは麦芽由来である。また、発酵時に生成される有機酸種類や生成量は、酵母の種類に依存するが、一般的に発酵ビール様発泡性飲料の製造に用いられる酵母の多くが、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、及び酢酸等を生成する。
【0032】
本発明に係るビール様発泡性飲料の各有機酸の濃度は、麦芽等の有機酸を多く含む原料の使用量を調整したり、有機酸自体を原料として添加することにより所望の濃度に調整することができる。また、本発明に係るビール様発泡性飲料が発酵ビール様発泡性飲料の場合には、使用する酵母の種類や発酵条件を調整することによっても、飲料中の有機酸の組成や濃度を調整することができる。
【0033】
有機酸やリン酸は、酸味料やpH調整剤として使用できる。本発明に係るビール様発泡性飲料においては、発酵ビール様発泡性飲料と非発酵ビール様発泡性飲料のいずれであっても、酸成分(A)を構成する酸を、酸味料やpH調整剤として使用することにより、比較的容易に、飲料の酸成分(A)濃度を所望の範囲内に調整することができる。原料として用いる酸は、酸成分(A)を構成する酸のうちの1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0034】
本発明に係るビール様発泡性飲料に原料として含有させる有機酸やリン酸は、塩の形態であってもよい。例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、クエン酸三カリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸二水素ナトリウム、コハク酸水素二ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの塩を原料として飲料に配合することによっても、飲料の酸成分(A)濃度を所望の範囲内に調整することができる。
【0035】
本発明に係るビール様発泡性飲料の酸成分(A)以外の有機酸の組成や総濃度は、本発明の効果が奏される限りにおいて、特に限定されるものではない。本発明に係るビール様発泡性飲料の酸成分(A)以外の有機酸の総濃度としては、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましい。
【0036】
本発明に係るビール様発泡性飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度は、0.15ppbである。ビール様発泡性飲料が充分量の3-フェニルプロピオン酸エチルを含有していることにより、味の締まり改善効果が充分に発揮される。本発明に係るビール様発泡性飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度としては、0.15ppbであれば特に限定されるものではないが、0.20ppb以上が好ましく、0.30ppb以上がより好ましく、0.50ppb以上がさらに好ましく、0.70ppb以上がよりさらに好ましい。ビール様発泡性飲料においては、3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が高くなりすぎると、3-フェニルプロピオン酸エチル自体の香りが異味として感じられるおそれがある。この点から、本発明に係るビール様発泡性飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度は、5.0ppb以下が好ましく、3.5ppb以下がより好ましく、2.5ppb以下がさらに好ましい。
【0037】
本発明に係るビール様発泡性飲料の酸成分(A)濃度に対する3-フェニルプロピオン酸エチル濃度の比率([3-フェニルプロピオン酸エチル濃度(ppb)]/[酸成分(A)濃度(ppm)])(以下、「P/A比」ということがある。)は、3-フェニルプロピオン酸エチルによる味の締まり改善効果が発揮される範囲であればよく、特に限定されるものではない3-フェニルプロピオン酸エチルによる味の締まり改善効果がより充分に発揮される点から、本発明に係るビール様発泡性飲料のP/A比は、0.00015以上が好ましく、0.00025以上がより好ましく、0.0005以上がさらに好ましく、0.0008以上がよりさらに好ましい。一方で、P/A比が大きくなりすぎると、3-フェニルプロピオン酸エチル自体の香りが異味として感じられるおそれがある。この点から、本発明に係るビール様発泡性飲料のP/A比は、0.005以下が好ましく、0.004以下がより好ましく、0.003以下がさらに好ましく、0.002以下がよりさらに好ましい。
【0038】
本発明に係るビール様発泡性飲料に、所望の濃度の3-フェニルプロピオン酸エチルを含有させる手段は特に限定されない。例えば、3-フェニルプロピオン酸エチルを原料として用いることにより、3-フェニルプロピオン酸エチルを含有するビール様発泡性飲料を製造することができる。使用する原料としては、合成の又は天然物に由来する3-フェニルプロピオン酸エチルであってもよく、3-フェニルプロピオン酸エチルを含有する香料であってもよい。
【0039】
本発明に係るビール様発泡性飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度は、例えば、非特許文献1に記載の方法のように、他のアルデヒド類やエステル類と同様に、誘導体化した後、ガスクロマトグラフィ-質量分析法(GC/MS)で分析することにより、定量的に測定することができる。
【0040】
本発明に係るビール様発泡性飲料において、飲料のP/A比を所望の範囲内に調整する手段は特に限定されない。例えば、3-フェニルプロピオン酸エチルや、酸成分(A)のいずれかの酸からなる群より選択される1種以上を原料として含有させることにより、ビール様発泡性飲料のP/A比を調整することができる。
【0041】
本発明に係るビール様発泡性飲料の糖質濃度は、特に限定されるものではない。3-フェニルプロピオン酸エチルによる味の締まり改善効果がより充分に発揮される点から、本発明に係るビール様発泡性飲料の糖質濃度としては、1.5g/100mL以下が好ましく、1.0g/100mL以下がより好ましく、0.75g/100mL以下がさらに好ましく、0.5g/100mL以下がよりさらに好ましく、0.5g/100mL未満が特に好ましい。
【0042】
なお、糖質とは、食物繊維ではない炭水化物をいう。糖質は、栄養表示基準(一部改正平成21年消費者庁告示第9号)の別表第2に記載の方法(当該食品の重量から、たんぱく質、脂質、食物繊維、灰分及び水分の量を控除して算定する)に従って算出できる。
【0043】
本発明に係るビール様発泡性飲料は、アルコール飲料であってもよく、ノンアルコール飲料(エタノールを含有していない飲料、又はアルコール濃度が1.0v/v%未満である飲料)であってもよい。
【0044】
本発明に係るビール様発泡性飲料がアルコール飲料である場合、アルコール濃度は、3-フェニルプロピオン酸エチルによる味の締まり改善効果が得られる濃度であれば、特に限定されるものではない。本発明に係るビール様発泡性飲料としては、当該効果がより発揮されやすい点から、比較的低アルコール濃度であることが好ましく、ノンアルコール飲料であることも好ましい。低アルコール飲料及びノンアルコール飲料は、一般的に、リン酸や有機酸含量が低く、味の締まりが弱い傾向があるが、十分量の3-フェニルプロピオン酸エチルを含有させることによって、アルコール濃度が低くても、味の締まりがより良好なビール様発泡性飲料が得られる。
【0045】
本発明に係るビール様発泡性飲料がアルコール飲料である場合、当該ビール様発泡性飲料のアルコール濃度としては、例えば、9.0v/v%以下であることが好ましく、6.0v/v%以下であることがより好ましく、5.0v/v%以下であることがさらに好ましい。また、当該ビール様発泡性飲料のアルコール濃度としては、例えば、0.1v/v%以上であることが好ましく、0.5v/v%以上であることがより好ましく、1.0v/v%以上であることがさらに好ましい。また、0.1v/v%未満であってもよい。
【0046】
本発明に係るビール様発泡性飲料のガスボリュームは特に限定されるものではなく、求める製品品質に応じて適宜調整することができる。例えば、本発明に係るビール様発泡性飲料のガスボリュームとしては、20℃における炭酸ガス含有量が1.2ガスボリューム(GV)以上であることが好ましく、2.4GV以上であることがより好ましく、2.4GV以上5.0GV以下であることがさらに好ましく、2.4GV以上4.0GV以下であることがよりさらに好ましい。
【0047】
本発明に係るビール様発泡性飲料としては、麦芽を原料として製造されるビール様発泡性飲料であってもよい。麦芽を原料として使用する場合には、3-フェニルプロピオン酸エチルによる味の締まり改善効果に加えて、より高いビール風味付与効果が得られる観点から、本発明に係るビール様発泡性飲料の麦芽使用比率は、特に限定されるものではないが、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がよりさらに好ましく、100質量%であってもよい。なお、「麦芽使用比率」は、固形原料に占める麦芽の割合(質量)を意味する。
【0048】
本発明に係るビール様発泡性飲料が苦味料を含む場合、当該苦味料としては、イソα酸、テトライソα酸、β酸の酸化物、マグネシウム塩、カルシウム塩、ナリンジン、クワシン、キニーネ、モモルデシン、クエルシトリン、テオブロミン、カフェイン、ゴーヤ、センブリ茶、苦丁茶、ニガヨモギ抽出物、ゲンチアナ抽出物、キナ抽出物等が挙げられる。これらの苦味料は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
ホップには、イソα酸の前駆物質であるα酸が含まれている。そこで、原料としてホップを用いることにより、イソα酸を含むビール様発泡性飲料を製造できる。
【0050】
本発明及び本願明細書においては、特に記載のない限り、「ホップ」には、生ホップ、乾燥ホップ、ホップペレット等に加えて、ホップ加工品も含まれる。ホップ加工品としては、例えば、ホップから苦味成分を抽出したホップエキス、イソ化ホップエキス、テトラハイドロイソフムロン、ヘキサハイドロイソフムロン等のホップ中の苦味成分をイソ化した成分を含むホップ加工品が挙げられる。
【0051】
本発明に係るビール様発泡性飲料における苦味料の含有量は、目的の呈味質に応じて適宜調整することができる。例えば、本発明に係るビール様発泡性飲料の苦味価としては、苦味価は5BU以上とすることができ、8BU以上30BU以下であることが好ましく、8BU以上24BU以下であることがより好ましい。また、本発明に係るビール様発泡性飲料の苦味価としては、5BU未満とすることもできる。
【0052】
本発明及び本願明細書において、苦味価とは、イソフムロンを主成分とするホップ由来物質群により与えられる苦味の指標であり、ビール様発泡性飲料をはじめとする飲料の苦味価は、ビール酒造組合編集:BCOJビール分析法、8.15(2004)に記載の方法により測定することができる。
【0053】
本発明に係るビール様発泡性飲料としては、具体的には、ビール、麦芽を原料とする発泡酒、麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料、ローアルコール発泡性飲料、ノンアルコールビール等が挙げられる。その他、麦芽を原料とし、発酵工程を経て製造された飲料を、アルコール含有蒸留液と混和して得られたリキュール類であってもよい。アルコール含有蒸留液とは、蒸留操作により得られたアルコールを含有する溶液であり、例えば、原料用アルコールであってもよく、スピリッツ、ウィスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎等の蒸留酒等を用いることができる。
【0054】
本発明に係るビール様発泡性飲料は、飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度と酸成分(A)濃度を所望の範囲内に調整する以外は、一般的な発酵ビール様発泡性飲料や非発酵ビール様発泡性飲料と同様にして製造できる。
【0055】
発酵工程を経て製造される発酵ビール様発泡性飲料は、一般的には、仕込(発酵原料液調製)、発酵、貯酒、濾過の工程で製造することができる。
【0056】
まず、仕込工程(発酵原料液調製工程)として、穀物原料及び糖質原料からなる群より選択される1種以上の発酵原料から発酵原料液を調製する。具体的には、発酵原料と原料水とを含む混合物を加温し、澱粉質を糖化して糖液を調製した後、得られた糖液を煮沸し、その後固体分の少なくとも一部を除去して発酵原料液を調製する。
【0057】
まず、穀物原料と糖質原料の少なくともいずれかと原料水とを含む混合物を調製して加温し、穀物原料等の澱粉質を糖化させて糖液を調製する。糖液の原料としては、穀物原料のみを用いてもよく、糖質原料のみを用いてもよく、両者を混合して用いてもよい。穀物原料としては、例えば、大麦や小麦、これらの麦芽等の麦類、米、トウモロコシ、大豆等の豆類、イモ類等が挙げられる。穀物原料は、穀物シロップ、穀物エキス等として用いることもできるが、粉砕処理して得られる穀物粉砕物として用いることが好ましい。穀物類の粉砕処理は、常法により行うことができる。穀物粉砕物としては、麦芽粉砕物、コーンスターチ、コーングリッツ等のように、粉砕処理の前後において通常なされる処理を施したものであってもよい。用いられる穀物粉砕物は、麦芽粉砕物であることが好ましい。麦芽粉砕物を用いることにより、ビールらしさがよりはっきりとした発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。麦芽粉砕物は、大麦、例えば二条大麦を、常法により発芽させ、これを乾燥後、所定の粒度に粉砕したものであればよい。また、穀物原料としては、1種類の穀物原料であってもよく、複数種類の穀物原料を混合したものであってもよい。例えば、主原料として麦芽粉砕物を、副原料として米やトウモロコシの粉砕物を用いてもよい。糖質原料としては、例えば、液糖等の糖類が挙げられる。
【0058】
当該混合物には、穀物原料等と水以外の副原料を加えてもよい。当該副原料としては、例えば、ホップ、食物繊維、酵母エキス、果汁、苦味料、着色料、香草、香料等が挙げられる。また、必要に応じて、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ等の糖化酵素やプロテアーゼ等の酵素剤を添加することができる。
【0059】
糖化処理は、穀物原料等由来の酵素や、別途添加した酵素を利用して行う。糖化処理時の温度や時間は、用いた穀物原料等の種類、発酵原料全体に占める穀物原料の割合、添加した酵素の種類や混合物の量、目的とする発酵ビール様発泡性飲料の品質等を考慮して、適宜調整される。例えば、糖化処理は、穀物原料等を含む混合物を35~70℃で20~90分間保持する等、常法により行うことができる。
【0060】
糖化処理後に得られた糖液を煮沸することにより、煮汁(糖液の煮沸物)を調製することができる。糖液は、煮沸処理前に濾過し、得られた濾液を煮沸処理することが好ましい。また、この糖液の濾液の替わりに、麦芽エキスに温水を加えたものを用い、これを煮沸してもよい。煮沸方法及びその条件は、適宜決定することができる。
【0061】
煮沸処理前又は煮沸処理中に、香草等を適宜添加することにより、所望の香味を有する発酵ビール様発泡性飲料を製造することができる。例えば、ホップを煮沸処理前又は煮沸処理中に添加し、ホップの存在下で煮沸処理することにより、ホップの風味・香気成分、特に苦味成分を効率よく煮出することができる。ホップの添加量、添加態様(例えば数回に分けて添加する等)及び煮沸条件は、適宜決定することができる。
【0062】
煮沸処理後に得られた煮汁には、沈殿により生じたタンパク質等の粕が含まれている。そこで、煮汁から粕等の固体分の少なくとも一部を除去する。粕の除去は、いずれの固液分離処理で行ってもよいが、一般的には、ワールプールと呼ばれる槽を用いて沈殿物を除去する。この際の煮汁の温度は、15℃以上であればよく、一般的には50~100℃程度で行われる。粕を除去した後の煮汁(濾液)は、プレートクーラー等により適切な発酵温度まで冷却する。この粕を除去した後の煮汁が、発酵原料液となる。
【0063】
次いで、発酵工程として、冷却した発酵原料液に酵母を接種して、発酵を行う。冷却した発酵原料液は、そのまま発酵工程に供してもよく、所望のエキス濃度に調整した後に発酵工程に供してもよい。発酵に用いる酵母は特に限定されるものではなく、通常、酒類の製造に用いられる酵母の中から適宜選択して用いることができる。上面発酵酵母であってもよく、下面発酵酵母であってもよいが、大型醸造設備への適用が容易であることから、下面発酵酵母であることが好ましい。
【0064】
さらに、貯酒工程として、得られた発酵液を、貯酒タンク中で熟成させ、0℃程度の低温条件下で貯蔵し安定化させた後、濾過工程として、熟成後の発酵液を濾過することにより、酵母及び当該温度域で不溶なタンパク質等を除去して、目的の発酵ビール様発泡性飲料を得ることができる。当該濾過処理は、酵母を濾過除去可能な手法であればよく、例えば、珪藻土濾過、平均孔径が0.4~1.0μm程度のフィルターによるフィルター濾過等が挙げられる。
【0065】
発酵工程を経ずに製造される非発酵ビール様発泡性飲料は、一般的には、各原料を混合する方法(調合法)によって製造できる。例えば、具体的には、各原料を混合することにより、調合液を調製する調合工程と、得られた調合液に炭酸ガスを加えるガス導入工程と、により製造することができる。
【0066】
まず、調合工程において、原料を混合することにより、調合液を調製する。調合工程においては、炭酸ガス以外の全ての原料を混合した調合液を調製することが好ましい。各原料を混合する順番は特に限定されるものではない。原料水に、全ての原料を同時に添加してもよく、先に添加した原料を溶解させた後に残る原料を添加する等、順次原料を添加してもよい。また、例えば、原料水に、固形(例えば粉末状や顆粒状)の原料及びアルコールを混合してもよく、固形原料を予め水溶液としておき、これらの水溶液、及びアルコール、必要に応じて原料水を混合してもよい。さらに、原料水に原料を加熱したものを入れてもよく、調製した調合液を加熱してもよい。
【0067】
原料としては、苦味料、酸味料、甘味料、カラメル色素、香味料、エタノール(原料アルコール)、乳化剤、多糖類、水溶性食物繊維、タンパク質又はその分解物等が挙げられる。
苦味料としては、前記で挙げられたものを用いることができる。
【0068】
甘味料としては、ショ糖、ブドウ糖、果糖、異性化液糖、及び高甘味度甘味料を例示することができるが、これらに限定されるものではない。これらの甘味料は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア、及び酵素処理ステビアを例示することができる。
【0069】
酸味料としては、酸成分(A)を構成する各酸、すなわち、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸からなる群より選択される1種以上を用いることができる。これらを原料として適量用いることにより、飲料中の酸成分(A)濃度やこれを構成する各酸の濃度を所望の範囲内に調整することができる。酸味料としては、グルコン酸、酒石酸、アジピン酸、及びフマル酸等の酸成分(A)以外の有機酸を1種又は2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0070】
香味料としては、ビール抽出物、ビール香料、ホップ香料等が挙げられる。
【0071】
乳化剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート等が挙げられる。
【0072】
多糖類としては、でんぷん、デキストリン等が挙げられる。デキストリンは、でんぷんを加水分解して得られる糖質であって、オリゴ糖(3~10個程度の単糖が重合した糖質)よりも大きなものを指す。
【0073】
水溶性食物繊維とは、水に溶解し、かつヒトの消化酵素により消化されない又は消化され難い炭水化物を意味する。水溶性食物繊維としては、例えば、大豆食物繊維(可溶性大豆多糖類)、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、ガラクトマンナン、イヌリン、グアーガム分解物、ペクチン、アラビアゴム等が挙げられる。
【0074】
調合工程において調製された調合液に、不溶物が生じた場合には、ガス導入工程の前に、当該調合液に対して濾過等の不溶物を除去する処理を行うことが好ましい。不溶物除去処理は、特に限定されるものではなく、濾過法、遠心分離法等の当該技術分野で通常用いられている方法で行うことができる。本発明においては、不溶物は濾過除去することが好ましく、珪藻土濾過により除去することがより好ましい。
【0075】
次いで、ガス導入工程として、調合工程により得られた調合液に炭酸ガスを加える。これにより、非発酵ビール様発泡性飲料を得る。炭酸を加えることによって、ビールと同様の爽快感が付与される。なお、炭酸ガスの添加は、常法により行うことができる。例えば、調合工程により得られた調合液、及び炭酸水を混合してよく、調合工程により得られた調合液に炭酸ガスを直接加えて溶け込ませてもよい。
【0076】
炭酸ガスを添加した後、得られた非発酵ビール様発泡性飲料に対して、さらに濾過等の不溶物を除去する処理を行ってもよい。不溶物除去処理は、特に限定されるものではなく、当該技術分野で通常用いられている方法で行うことができる。
【0077】
製造されたビール様発泡性飲料を容器に充填して密封することにより、容器詰ビール様発泡性飲料が製造できる。容器への充填及び密封は、常法により行うことができる。また、容器詰ビール様発泡性飲料の空寸部には、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスを充填させてもよい。これらの不活性ガスにより、容器内に存在する酸素を減少させることができる。
【0078】
容器詰ビール様発泡性飲料を充填する容器としては、特に限定されるものではない。具体的には、ガラス瓶、缶、可撓性容器等が挙げられる。缶としては、ツーピース飲料缶、スリーピース飲料缶、ボトル缶等が挙げられる。可撓性容器としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の可撓性樹脂を成形してなる容器が挙げられる。可撓性容器は、単層樹脂からなるものであってもよく、多層樹脂からなるものであってもよい。
【0079】
本発明に係るビール様発泡性飲料を充填する容器としては、耐圧性の高い容器を使用する。現在、流通しているアルミニウム(合金)製ツーピース飲料缶やアルミニウム(合金)製ボトル缶のメーカー保証耐圧は、高いもので686kPa程度であり、実際の耐圧を考慮すると加熱殺菌を要する場合はおおよそ3.2GV以下、加熱殺菌が不要な場合はおおよそ3.8GV以下となる。
【0080】
また、本発明に係るビール様発泡性飲料は、その製造工程において、必要に応じて加熱殺菌処理を行う。加熱殺菌処理は、容器に充填前に行ってもよく、容器充填後に行ってもよい。殺菌方法としては、UHT(超高温)殺菌処理、パストライザー殺菌処理、レトルト殺菌処理等の常法により行うことができる。
【実施例0081】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
<飲料の3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度の測定>
以降の実施例において、3-フェニルプロピオン酸エチルのビール様発泡性飲料中の濃度は、非特許文献1に記載の測定方法と同様にして、固相マイクロ抽出(SPME)ファイバー中で、アルデヒド類の捕集(濃縮)と誘導体化を同時に行い、GC/MSにより測定した。
【0083】
具体的には、誘導体化試薬として、6g/Lに調製したO-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル)-ヒドロキシルアミン(PFBOA)(東京化成社製)水溶液100μLと、ヘキサン洗浄水10mLを、20mL容ガラスバイアルに入れ、クリンプキャップで密封した。次に、SPMEファイバー(PDMS/DVB:65μm、1cm、 57327-U 24gauge、SPELCO社製)を、PFBOA溶液入れた20mL容ガラスバイアルのヘッドスペースに、50℃、10分間露出させた。
【0084】
サンプルであるビール様発泡性飲料10mLを、20mL容ガラスバイアルに入れ、クリンプキャップで密封した。続いて、PFBOAを捕集したSPMEファイバーを、サンプルを入れた20mL容ガラスバイアルのヘッドスペースに、50℃、60分間露出させた。
【0085】
次いで、捕集してPFBOA誘導体化したサンプル中のエステル類を、下記条件でGC/MS分析した。
【0086】
(GC/MS条件)
GC/MS装置:HP6890/5973(アジレント・テクノロジー社製)
キャピラリカラム:アジレントJ&W DB-5(30m×0.25mm×0.50μm、アジレント・テクノロジー社製)
キャリアガス:ヘリウム
流量:1.1mL/分
注入口温度:250℃
パージバルブ時間を30秒間
注入モード:スプリットレスモード
温度プログラム:40℃で2分間保持→140℃まで10℃/分で昇温→250℃まで7℃/分で昇温→250℃で3分間保持→12℃/分で300℃まで昇温→300℃で5分間保持
【0087】
PFBOA誘導体の同定は、電子衝撃イオン化法を用いてスキャンモードでマススペクトルを測定することによって行った。その結果、表1に示すm/zが、分析した各物質の主要なフラグメントイオンであることを確認した。
【0088】
【0089】
それぞれのピークについて、SIMモードで測定を行い、標準添加法によりPFBOA誘導体の定量を行った。幾何異性体のある化合物に関しては、幾何異性体によるピークの合計面積を当該化合物のピークとして使用した。なお、化合物の測定に使用した内部標準物質は表1に記載した通りである。
【0090】
<官能評価>
飲料の味の締まり及びビールらしいコクとキレのバランスの官能評価は、ビール類専門パネル3名がビール様発泡性飲料を試飲し、各項目を3名の合意で採点した。味の締まりの官能評価値については、5段階評価(1:感じられない、2:感じられるが弱い、3:感じられる、4:強く感じられる、5:非常に強く感じられる)で行った。ビールらしいコクとキレのバランスの官能評価値については、5段階評価(1:バランスが非常に悪い、2:バランスが悪い、3:バランスがとれている、4:バランスが良い、5:バランスが非常に良い)で行った。
【0091】
また、飲料の香味の総合評価は、前記パネル3名の合意により、3段階(〇:ビールとして良好である、△:ビールらしい、×:ビールらしくない)で評価した。
【0092】
[実施例1]
酸成分(A)濃度が低いビール様発泡性飲料に3-フェニルプロピオン酸エチルを添加し、味の締まり及びビールらしいコクとキレのバランスに対する影響を調べた。
【0093】
(1)酸成分(A)の味の締まりに対する影響
酸成分(A)濃度が501、1300、又は1650ppmのビール様発泡性飲料を製造し、味の締まり及びビールらしい華やかさに対する酸成分(A)濃度の影響を調べた。
【0094】
まず、麦芽23kgと副原料としてグラニュー糖22kgを糖化し、その後76℃で酵素失活を行った。得られた液(麦汁)を濾過した後、煮沸釜に入れ、200Lになるように水を加えた後、ホップを適量添加した。ホップ添加後の麦汁を70分間煮沸し、その後、湯を加え200Lになるように液量を再調整した後、ワールプール(旋回分離槽)で固液分離した。固液分離後、熱交換器によって麦汁を冷却した。冷却後の麦汁に酵母を添加し、発酵させた。発酵後の発酵液は、濾過にて清澄化した後、容器に充填し、必要に応じて65℃、10分間の加熱処理を実施して、アルコール濃度が5.0v/v%であるビール様発泡性飲料(試験区1-0)を得た。
【0095】
試験区1-0のビール様発泡性飲料について、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸の濃度を測定し、当該飲料の酸成分(A)濃度を算出したところ、501ppmであった。また、試験区1-0のビール様発泡性飲料について、3-フェニルプロピオン酸エチルの濃度も測定した。結果を表1に示す。
【0096】
次いで、試験区1-0のビール様発泡性飲料に、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、及びピログルタミン酸を表1の濃度となるように添加し、酸成分(A)濃度が1300ppmのビール様発泡性飲料(試験区2-0)と1650ppmのビール様発泡性飲料(試験区3-0)を製造した。
【0097】
【0098】
製造されたビール様発泡性飲料について、官能試験を実施した。結果を表2に示す。表2に示すように、酸成分(A)濃度が低い試験区1-0と試験区2-0のビール様発泡性飲料では、後味がフラットで味の締まりが無かったのに対して、酸成分(A)濃度が1500ppm超であった試験区3-0のビール様発泡性飲料では、味の締まりが感じられた。これらの結果から、ビール様発泡性飲料においては、味の締まりは酸成分(A)濃度の影響絵を受け、酸成分(A)濃度が低いと味の締まりが低下してしまうことがわかった。
【0099】
(2)酸成分(A)濃度が低いビール様発泡性飲料に対する3-フェニルプロピオン酸エチルの影響
酸成分(A)濃度が501ppmであり、後味がフラットで味に締まりが無いと評価された試験区1-0のビール様発泡性飲料に対して、飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が表3に記載の濃度となるように3-フェニルプロピオン酸エチルを適宜添加したビール様発泡性飲料(試験区1-1~試験区1-5)を製造した。同様に、酸成分(A)濃度が1300ppmであった試験区2-0のビール様発泡性飲料に対しても、飲料の3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が表4に記載の濃度となるように3-フェニルプロピオン酸エチルを適宜添加したビール様発泡性飲料(試験区2-1~試験区2-6)を製造した。
【0100】
【0101】
【0102】
製造されたビール様発泡性飲料について、官能試験を実施した。結果を表3及び4にそれぞれ示す。酸成分(A)濃度が501ppmのビール様発泡性飲料(試験区1-0~試験区1-5)と酸成分(A)濃度が1300ppmのビール様発泡性飲料(試験区2-0~試験区2-6)のいずれも、3-フェニルプロピオン酸エチル濃度が高いほど、また、P/A比が大きいほど、喉の締まりが強く感じられるようになり、ビールらしいコクとキレのバランスも改善された。ただし、P/A比が0.004程度以上である試験区1-4、試験区1-5及び試験区2-6のビール様発泡性飲料では、湿っぽい香りが強くなり過ぎ、ビールらしさが損なわれてしまうことが分かった。
【0103】
[実施例2]
麦芽使用比率と発酵条件を振って得られたビール様発泡性飲料に、3-フェニルプロピオン酸エチルを各種濃度で添加し、味の締まり及びビールらしいコクとキレのバランスに対する影響を調べた。
【0104】
まず、発酵原料として、麦芽とグラニュー糖を表5及び6に記載の麦芽使用比率となるように使用し、かつ発酵工程の諸条件を適宜調整し、さらに必要に応じて酸成分(A)を構成する各種酸を適宜添加して調整した以外は、実施例1と同様にして、アルコール濃度が5.0v/v%である発酵ビール様発泡性飲料(試験区4-1~試験区4-8)を製造し、酸成分(A)濃度を測定した。結果を表5及び6に示す。
【0105】
得られたビール様発泡性飲料に、表5及び6に記載の濃度になるように3-フェニルプロピオン酸エチルを適宜添加して、P/A比が0.0010に調整されたビール様発泡性飲料を製造した。製造されたビール様発泡性飲料について、各酸の濃度を測定し、かつ官能試験を実施した。これらのビール様発泡性飲料の結果を、実施例1の試験区1-0のビール様発泡性飲料の結果と共に、表5及び6に示す。
【0106】
【0107】
【0108】
表5及び6に示すように、酸成分(A)濃度が1500ppm未満と低いビール様発泡性飲料では、麦芽使用比率にかかわらず、P/A比を0.0010に調整することにより、ビールらしいコクとキレのバランスを改善しつつ、味の締まりが向上させられることが分かった。また、味の締まり向上やコクとキレのバランス改善といった3-フェニルプロピオン酸エチルによる効果は、麦芽使用比率を上げることによって顕著となることが分かった。
【0109】
[実施例3]
酸組成の異なるビール様発泡性飲料を調製し、味の締まり及びビールらしいコクとキレのバランスに対する影響を調べた。
【0110】
実施例2における試験区4-1のビール様発泡性飲料に、リン酸、クエン酸、ピルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、ピログルタミン酸、及び3-フェニルプロピオン酸エチルを、表7に記載の濃度となるように添加したビール様発泡性飲料を製造した。得られたビール様発泡性飲料の官能評価試験を実施した。結果を表7に示す。
【0111】
【0112】
表7に示すように、試験区5-1~試験区5-4のビール様発泡性飲料は、いずれも味の締まりとビールらしいコクとキレのバランスが改善されており、試験区4-1よりも評価が高かった。これらの結果から、味の締まり向上やビールらしいコクとキレのバランスの改善といった3-フェニルプロピオン酸エチルによる効果は、酸成分(A)の組成にかかわらず発揮されることが分かった。