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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101816
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】座標入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240723BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/044 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005966
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 旭
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 智
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智大
(57)【要約】      (修正有)
【課題】曲線近似計算法を用いつつ、検出精度を向上させた座標入力装置を提供する。
【解決手段】座標入力装置は、複数の検出位置を有する複数のセンサ電極と、指示体による操作が可能な操作面と、複数の検出位置の各々の静電容量の測定値に基づいて、操作面の2軸方向における指示体の位置を算出する算出回路と、を備える。算出回路は、複数の検出位置で測定される複数の測定値のうちの最大値が得られる検出位置と、2軸方向のうちのいずれかの方向において最大値が得られる検出位置の両隣に位置する検出位置との3点の測定値に対して二次曲線を当て嵌め、二次曲線の頂点の位置を指示体の操作面のいずれかの方向における位置として算出し、最大値が得られた検出位置が複数の検出位置のうちのいずれかの方向における最端の検出位置である場合は、当て嵌めた二次曲線の頂点の位置として得られる指示体の位置をいずれかの方向における最端側に向けて補正する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
複数の検出位置を有し、前記絶縁基板上に設けられる複数のセンサ電極と、
指示体による操作が可能な操作面を有し、前記複数のセンサ電極を覆うトップパネルと、
前記複数の検出位置の各々の静電容量を測定する測定回路と、
前記複数の検出位置の各々の静電容量の測定値に基づいて、前記操作面の2軸方向における前記指示体の位置を算出する算出回路と
を備え、
前記算出回路は、
前記複数の検出位置で測定される複数の測定値のうちの最大値が得られる検出位置と、前記2軸方向のうちのいずれかの方向において前記最大値が得られる検出位置の両隣に位置する検出位置との3点において、前記最大値と、前記両隣の検出位置において測定される前記測定値とに対して二次曲線を当て嵌め、前記二次曲線の頂点の位置を前記指示体の前記操作面の前記いずれかの方向における位置として算出し、
前記最大値が得られた検出位置が前記複数の検出位置のうちの前記いずれかの方向における最端の検出位置である場合は、前記当て嵌めた二次曲線の頂点の位置として得られる前記指示体の位置を前記いずれかの方向における前記最端側に向けて補正する、座標入力装置。
【請求項2】
前記算出回路は、
前記二次曲線の頂点の位置が、前記いずれかの方向における基準位置よりも前記最端側にある場合に、前記指示体の位置の補正を行い、
前記基準位置から前記頂点までの距離に補正係数を乗じて補正距離を算出し、前記基準位置から前記最端側に向かう方向に前記補正距離だけずらした位置に前記指示体の位置を補正する、請求項1に記載の座標入力装置。
【請求項3】
前記算出回路は、
前記最大値に基づいて、前記操作面から前記指示体までの距離を算出し、
前記最大値が小さいほど、前記補正係数を大きくする、請求項2に記載の座標入力装置。
【請求項4】
前記算出回路は、
前記最大値が、前記指示体が前記操作面に接触していることを判定する接触閾値以上の場合に、前記指示体が前記操作面に接触していると判定し、
前記最大値が、前記接触閾値以上の場合には、前記最大値の値に関わらず、前記補正係数を一定値にする、請求項3に記載の座標入力装置。
【請求項5】
前記算出回路は、前記最大値が前記接触閾値未満の場合には、次式(1)により前記補正係数を算出する、請求項4に記載の座標入力装置。
【数1】
ただし、Pmaxは、すべての補正係数Pのうちの最大値、Pminは、すべての補正係数Pのうちの最小値、Cmaxは、すべての測定値のうちの最大値、Cselは、選択オン閾値、Ctouchは、接触閾値である。
【請求項6】
前記いずれかの方向において、前記複数のセンサ電極のうちの前記最端側に位置する第1センサ電極の前記いずれかの方向における外側の縁よりも内側が、前記算出回路が前記指示体の位置を算出可能な領域であり、
前記第1センサ電極は、前記最端の検出位置に対応し、
前記基準位置は、前記第1センサ電極と、前記いずれかの方向において前記第1センサ電極の隣りに位置する第2センサ電極との境界に存在する、請求項5に記載の座標入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、座標入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、所定方向に対して並設された複数の電極と、前記複数の電極の静電容量をそれぞれ検出する検出部と、前記複数の電極の静電容量の変化量の状態に応じて異なる算出方法を適用し、検出対象の座標を算出する演算処理部と、を備え、前記演算処理部は、ピーク電極の静電容量変化量と、前記ピーク電極と隣り合わない電極の静電容量変化量との比較値に応じて、重心座標を計算する重心計算法と、曲線の頂点を求める曲線近似計算法とを切り替えて適用して前記検出対象の座標を算出することを特徴とする座標入力装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-003978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、座標入力装置において、静電容量の最大値が得られる検出位置と両隣の検出位置とを含む3点で得られる静電容量に二次曲線を当て嵌めて、二次曲線の頂点の位置を手等の指示体の位置として検出する曲線近似計算法を行う場合には、次のような問題が生じる。最大値が得られる検出位置が座標入力装置の最も端(最端)の検出位置になると、二次曲線の頂点が最端側とは反対側にずれることで、指示体の位置の検出精度が悪くなる。
【0005】
そこで、曲線近似計算法を用いつつ、検出精度を向上させた座標入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態の座標入力装置は、絶縁基板と、複数の検出位置を有し、前記絶縁基板上に設けられる複数のセンサ電極と、指示体による操作が可能な操作面を有し、前記複数のセンサ電極を覆うトップパネルと、前記複数の検出位置の各々の静電容量を測定する測定回路と、前記複数の検出位置の各々の静電容量の測定値に基づいて、前記操作面の2軸方向における前記指示体の位置を算出する算出回路とを備え、前記算出回路は、前記複数の検出位置で測定される複数の測定値のうちの最大値が得られる検出位置と、前記2軸方向のうちのいずれかの方向において前記最大値が得られる検出位置の両隣に位置する検出位置との3点において、前記最大値と、前記両隣の検出位置において測定される前記測定値とに対して二次曲線を当て嵌め、前記二次曲線の頂点の位置を前記指示体の前記操作面の前記いずれかの方向における位置として算出し、前記最大値が得られた検出位置が前記複数の検出位置のうちの前記いずれかの方向における最端の検出位置である場合は、前記当て嵌めた二次曲線の頂点の位置として得られる前記指示体の位置を前記いずれかの方向における前記最端側に向けて補正する。
【発明の効果】
【0007】
曲線近似計算法を用いつつ、検出精度を向上させた座標入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の座標入力装置の構成の一例を示す図である。
図2】実施形態の座標入力装置の構成の一例を示す図である。
図3】実施形態の座標入力装置の静電センサ及び制御装置の構成の一例を示す図である。
図4】実施形態の座標入力装置の操作面に対して手の指先で操作を行っている状態の一例を示す図である。
図5】曲線近似計算法の一例を説明する図である。
図6】複数のセンサ電極121YのX方向における配列の一例を示す図である。
図7】曲線近似計算法で求める二次曲線の頂点の位置のずれの一例を説明する図である。
図8A】指先FTの計算座標を補正する際の補正係数の一例を示す図である。
図8B】指先FTの計算座標を補正する際の補正係数の一例を示す図である。
図9A】実施形態の座標入力装置の算出部が実行する処理の一例を表すフローチャートである。
図9B】座標入力装置の算出部が実行する変形例の処理の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の座標入力装置を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1及び図2は、実施形態の座標入力装置100の構成の一例を示す図である。図1は、座標入力装置100が動作状態であり、表示装置110が入力画像を表示している状態を示す。表示装置110が入力画像を表示しているとき、座標入力装置100が入力モードの状態である。入力モードは、座標入力装置100に対して操作入力が可能なモードである。図2は、座標入力装置100が待機状態であり、表示装置110が待機画像を表示している状態を示す。表示装置110が待機画像を表示しているときは、座標入力装置100が省電力モードの状態である。待機状態では、表示装置110は全体的にグレーに表示され、消費電力が少ない状態である。図3は、座標入力装置100の静電センサ120及び制御装置130の構成の一例を示す図である。表示装置110は表示部の一例であり、静電センサ120は検出部の一例であり、制御装置130は制御部の一例である。
【0011】
以下では、XYZ座標系を定義して説明する。X軸に平行な方向(X方向)、Y軸に平行な方向(Y方向)、Z軸に平行な方向(Z方向)は、互いに直交する。また、以下では、-Z方向を静電センサ120に近づく方向、+Z方向を静電センサ120から離れる方向として説明する。また、平面視とはXY面視することをいう。また、以下では構成が分かり易くなるように各部の長さ、太さ、厚さ等を誇張して示す場合がある。
【0012】
座標入力装置100は、例えば、店舗や施設等に配置され不特定多数の利用者が利用するタブレット型の入力装置やATM(Automatic Teller Machine)の入力部であってよい。また、清潔な状態を保つ必要のある調理用電化製品の入力部であってもよい。また、座標入力装置100は、個人で利用するタブレットコンピュータ、スマートフォン、ゲーム機等であってもよい。
【0013】
<座標入力装置100の全体構成>
座標入力装置100は、筐体101、トップパネル105、表示装置110、静電センサ120、及び制御装置130を含む。図1及び図2では制御装置130(図3参照)を省略するが、制御装置130は、一例として筐体101の内部で表示装置110及び静電センサ120の下側に設けられる。座標入力装置100は、図3に示す静電センサ120及び制御装置130を含む。
【0014】
<筐体101とトップパネル105>
筐体101は、表示装置110、静電センサ120、及び制御装置130を収容する樹脂製又は金属製等のケースである。表示装置110は、一例として透明な静電センサ120の下側に配置され、筐体101の上部にある開口部に設けられる透明なトップパネル105の上面である操作面105Aを介して視認可能である。
【0015】
<座標入力装置100の操作方法の種類>
座標入力装置100は、利用者の手等の指示体が操作面105Aに対して非接触の状態と、利用者の手等の指示体が操作面105Aに対して接触した状態との両方の状態で操作可能である。
【0016】
座標入力装置100の操作方法には、近接操作、選択操作、確定操作、及び接触操作の4種類がある。4つの操作方法のうち、近接操作、選択操作、及び確定操作は、手等の指示体が操作面105Aに対して非接触の状態で行われる操作である。接触操作は、手等の指示体が操作面105Aに対して接触した状態で行われる操作である。
【0017】
座標入力装置100は、4つの操作方法を判別するために、手等の指示体と操作面105Aとの5つの距離状態を判定する。5つの距離状態は、非検出状態、近接状態、選択状態、確定状態、及び接触状態である。5つの距離状態は、操作面105Aと手等の指示体とが接触していることを示す接触状態と、操作面105Aと手等の指示体とが接触していないことを示す複数の非接触状態とを含む。非検出状態、近接状態、選択状態、及び確定状態は、非接触状態である。
【0018】
非検出状態は、近接操作、選択操作、確定操作、及び接触操作が行われていない状態である。近接状態、選択状態、確定状態、及び接触状態は、それぞれ、近接操作、選択操作、確定操作、及び接触操作が行われている状態である。座標入力装置100は、操作方法を判定する際に、複数の静電容量の閾値を用いる。接触状態、確定状態、選択状態、近接状態、及び非検出状態となるにつれて手等の指示体の位置は操作面105Aから離れる。
【0019】
また、座標入力装置100は、利用者が指差操作を行うことによって操作する入力装置である。指差操作とは、操作面105Aに対して、指を略垂直に立てて行う操作である。指差操作で使用する指の本数は複数であってもよいが、1本であることが好ましい。
【0020】
このような指差操作を行う際に、操作面105Aに対して指が略垂直でない場合には、掌全体が操作面105Aに近づくことになり、座標入力装置100が検出する静電容量の値が大きく変化する。このため、座標入力装置100は、指差操作が正しく行われているかどうかを判定する。座標入力装置100は、静電容量の分布から、利用者の操作が指差操作と非指差操作とのいずれであるかを判定する。非指差し操作の場合には、指先FTの位置の計算を省略して、非指差し操作であることを示す警告を表示しても良い。または、指先FTの位置の計算した上で、非指差し操作であることを示す警告を表示しても良い。
【0021】
また、以下では、利用者が指示体の一例としての手Hで操作する場合について説明する。以下では、手Hで、近接操作、選択操作、確定操作、又は接触操作を行うことを、単に手Hで操作すると表現する。
【0022】
近接操作とは、手Hを座標入力装置100の操作面105Aに触れることなく、操作面105Aに対して近づける操作であり、座標入力装置100を図2に示す待機状態から図1に示す動作状態に切り換えるための操作である。
【0023】
選択操作とは、近接操作を行った状態から、手Hを座標入力装置100の操作面105Aに触れることなく、操作面105Aに対してさらに近づけて、表示装置110に表示されるGUIボタンを選択する操作である。
【0024】
確定操作とは、選択操作を行った状態から、手Hを座標入力装置100の操作面105Aに触れることなく、操作面105Aに対してさらに近づけて、選択したGUIボタンに対する操作入力を確定する操作である。確定操作は、非接触で操作入力を行うことであり、手Hで操作面105Aに触れずに、非接触で座標入力装置100を操作することである。非接触での選択操作及び確定操作によって行う操作入力をホバー入力又はタッチレス入力と称してもよい。
【0025】
接触操作とは、選択操作を行った状態から、手Hを座標入力装置100の操作面105Aに対してさらに近づけて操作面105Aに触れて、選択したGUIボタンに対する操作入力を確定する操作である。接触操作をタッチ入力と称してもよい。
【0026】
<表示装置110>
表示装置110は、一例として液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。表示装置110は、GUI(Graphic User Interface)を実現するための表示である。表示装置110は、GUIボタン111の画像と、カーソルと、入力内容を表示する入力内容表示部115の画像とを表示する。GUIボタン111は、操作部の一例であり、一例として平面視でマトリクス状に配置される。また、GUIボタン111は、一例として押しボタンを模した円形である。
【0027】
図1乃至3には、一例としてアルファベットの26個のGUIボタン111と、数字などのテンキー形式の15個のGUIボタン111と、メニューキー(左上の三本線のキー)、Caps Lockキー、バックスペースキー(右上)、及びエンターキー(右下)の4個のGUIボタン111との合計45個のGUIボタン111を示す。45個のGUIボタン111は、Y方向に5行、X方向に11行にわたって配列されている。行はX方向に延在し、Yは列方向に延在する。なお、GUIボタン111は、アルファベットやテンキー用の数字等に限らず、他の言語の文字や記号等であってもよい。
【0028】
なお、ここでは、合計45個のGUIボタン111が表示装置110によって表示される形態について説明する。しかしながら、座標入力装置100は、45個のGUIボタン111の全部、又は、少なくとも一部の代わりに、トップパネル105にアルファベット、数字、又は記号等を印刷した操作部を有していてもよい。例えば、トップパネル105の裏側にバックライトを設け、アルファベット、数字、又は記号等を印刷した操作部を透過式にしておいてもよい。そして、座標入力装置100が待機状態のときはバックライトをオフにし、座標入力装置100が入力モードに切り替わるとバックライトをオンにして、トップパネル105の操作部のアルファベット、数字、又は記号等が照光されるようにしてもよい。また、この場合に、入力内容を表示するために、入力内容表示部115の部分にだけ、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を設けてもよい。
【0029】
<静電センサ120>
静電センサ120は、表示装置110の上に重ねて配置され、図3に示すように、X方向に延在する複数のセンサ電極121Xと、Y方向に延在する複数のセンサ電極121Yとを有する。センサ電極121X、121Yは、検出部の電極の一例であり、配線122X、122Yを介して制御装置130にそれぞれ接続されている。また、センサ電極121X及び121Yは、絶縁基板125に形成されている。このような静電センサ120は、一例として透明ガラスの表面にITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜を形成し、センサ電極121X、121Y及び配線122X、122Yにパターニングしたものを用いることができる。静電センサ120が検出する静電容量は、制御装置130に入力される。静電センサ120が検出する静電容量は、静電センサ120の検出結果の一例である。
【0030】
図3には、一例として複数のセンサ電極121X及び複数のセンサ電極121Yを示す。センサ電極121X同士の間隔及びセンサ電極121Yの同士の間隔は、人間の指先の平均的な幅(約10mm)程度であり、GUIボタン111同士の間隔と略等しい。
【0031】
複数のセンサ電極121Xは1行ずつ走査されるとともに、複数のセンサ電極121Yは1列ずつ走査され、AD変換部132は、複数のセンサ電極121Xと複数のセンサ電極121Yとの複数の交点における静電容量をデジタル値に変換する。カウンタ133は、AD変換部132の出力の変化分をカウントし、各交点における差分値ΔADを出力する。各交点は、検出位置の一例である。なお、GUIボタン111と、GUIボタン111と同程度の大きさのセンサ電極とが1対1で対応する形態でもよい。
【0032】
座標入力装置100が静電センサ120を用いて検出する手HのXY座標での位置は、一例として、手Hが存在する領域内において最も静電容量が大きいXY座標である。また、座標入力装置100が静電センサ120を用いて検出する手HのZ方向の位置は、静電センサ120によって検出される静電容量と反比例する値であるため、手HのZ方向の位置を求めることと、手Hと静電センサ120との間の静電容量を求めることは同義である。座標入力装置100は、一例として、手HのZ方向の位置を、手Hと静電センサ120との間の静電容量で判定するが、以下では、手HのZ方向の位置として説明した方が分かり易い場合には、手HのZ方向の位置として説明する。
【0033】
<制御装置130>
制御装置130は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。
【0034】
制御装置130は、主制御部131、AD(Analog to Digital)変換部132、カウンタ133、算出部134、動作制御部135、表示制御部136、及びメモリ137を有する。AD変換部132及びカウンタ133は、測定回路の一例である。算出部134は、算出回路の一例である。主制御部131、AD変換部132、カウンタ133、算出部134、動作制御部135、及び表示制御部136は、制御装置130が実行するプログラムの機能を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ137は、制御装置130のメモリを機能的に表したものである。
【0035】
主制御部131は、制御装置130の処理を統括する処理部であり、AD変換部132、カウンタ133、算出部134、動作制御部135、及び表示制御部136が実行する処理以外の処理を実行する。例えば、主制御部131は、複数のセンサ電極121Xと複数のセンサ電極121Yとの走査を行う。
【0036】
AD変換部132は、静電センサ120の出力をデジタル値に変換する。AD変換部132の出力は、静電センサ120のセンサ電極121X及び121Yの各交点の静電容量の検出値である。カウンタ133は、AD変換部132の出力の基準値に対する差分値をカウントして出力する。差分値は、出力の基準値に対する変化分のカウント値である。以下、差分値ΔADと記す。基準値は、センサ電極121X及び121Yの周辺に指が無い場合におけるセンサ電極121X及び121Yの各交点の静電容量である。差分値ΔADは、センサ電極121X及び121Yの各交点と指の間の静電容量である。
【0037】
差分値ΔADは、各交点について得られる。AD変換部132は、センサ電極121X及び121Yの各交点の静電容量をデジタル値に変換し、カウンタ133は、AD変換部132の出力の基準値に対する変化分をカウントし、各交点についての差分値ΔADを出力する。
【0038】
算出部134は、カウンタ133から出力される差分値ΔADに基づいて、手HのXY座標における位置と、手Hの操作面105AからのZ方向の位置とを判定する。カウンタ133から出力される差分値ΔADは、静電センサ120のセンサ電極121X及び121Yの各交点の静電容量の測定値の一例である。静電容量の測定値は、差分値ΔADである。
【0039】
算出部134は、非検出状態、近接操作、選択操作、確定操作、及び接触操作を判別するための複数の閾値を用いて、手Hと操作面105Aとの距離状態を判定する。複数の閾値は、非検出状態、近接操作、選択操作、確定操作、及び接触操作の各操作の判別にヒステリシス特性を持たせるために、オン閾値とオフ閾値があるため、合計で8つの閾値で構成される。上述したように、手Hと操作面105Aとの距離状態には、非検出状態、近接状態、選択状態、確定状態、及び接触状態がある。算出部134は、各状態における手Hの位置を判定し、判定した手Hの位置を表すデータを動作制御部135に出力する。
【0040】
算出部134は、近接操作、選択操作、及び確定操作が行われている際の静電容量の測定値については、補正を行わない。近接操作、選択操作、及び確定操作が行われている際の静電容量の測定値は、後述する理由によって指の面積に概ね比例するためである。
【0041】
また、算出部134は、接触操作が行われている際の静電容量の測定値については、補正を行う。接触操作が行われている際の静電容量の測定値は、後述する理由によって指の面積と比例しないためである。算出部134がこのような補正を行うことで、接触操作が行われている際の手Hの位置の検出精度を向上させる。
【0042】
動作制御部135は、算出部134によって判定された手Hの位置に基づいて、座標入力装置100の動作を制御する。表示制御部136は、算出部134によって判定された手Hの位置に基づいて表示装置110の表示を制御する。メモリ137は、主制御部131、算出部134、動作制御部135、及び表示制御部136が処理を実行する際に用いるプログラムやデータ等を格納する。
【0043】
<操作面105Aに対する操作>
図4は、座標入力装置100の操作面105Aに対して手Hの指先FTで操作を行っている状態の一例を示す図である。図4には、手Hの指先FTをトップパネル105の操作面105Aに対して垂直に近づけて、指差操作を行っている状態を示す。このように、指先FTをトップパネル105の操作面105Aに対して垂直に近づける操作方法を行うことが好ましい。
【0044】
座標入力装置100は、上述した複数の閾値を用いることで、近接操作、選択操作、確定操作、及び接触操作を判別することができる。近接操作から、選択操作、確定操作、及び接触操作になるにつれて、指先FTは操作面105Aに近づく。このため、近接操作から接触操作に向けて閾値を大きくすることで、近接操作、選択操作、確定操作、及び接触操作を判別することができる。以下では、曲線近似計算法を用いつつ、手Hの位置検出の精度を向上させる方法について説明する。
【0045】
<指先FTの位置の算出>
座標入力装置100は、センサ電極121X及び121Yの複数の交点から得られる複数の測定値のうちの最大値を含む3つ以上の測定値のうち、最大値と、X方向及びY方向のうちのいずれかの方向において最大値を挟んで得られる測定値とを用いて、指先FTの位置を算出する。指先FTの位置は、指先FTの操作面105Aの2軸方向における位置である。このように算出される指先FTの位置は、計算座標である。
【0046】
より具体的には、一例として、曲線近似計算法によって、指先FTの位置(計算座標)を算出することができる。曲線近似計算法については、特許文献1として記載した特開2013-003978号公報に記載されているが、簡単には以下の通りである。
【0047】
<曲線近似計算法>
図5は、曲線近似計算法の一例を説明する図である。図5には、一例としてX方向に配列される8つの交点で得られる測定値(差分値ΔAD)示す。8つの交点をX0~X7と表して区別し、ここでは、交点X0~X7と称す。交点X0のX座標はゼロである。図5では、一例として、交点X5の第1補正測定値が最大値(ピーク値)である。
【0048】
算出部134は、測定値の最大値が得られた交点X5と、交点X5に隣り合う交点X4及びX6とについて、測定値の変化量を用いて曲線近似計算法を行うことができる。
【0049】
例えば、算出部134は、交点X5と、交点X5のX方向における両隣の2つの交点X4及びX6の3つの測定値から得られる3つの測定値に基づいて、次式(1)を用いて2次曲線近似計算法により、指先FTの位置(計算座標)のX座標であるXftを算出する。ここで、測定値の最大値が得られる交点(Xpk,Ypk)の測定値をCpk、交点(Xpk,Ypk)の-X方向側の隣りに位置する交点(Xpk-1,Ypk)の測定値をCpk-1、交点(Xpk,Ypk)の+X方向側の隣りに位置する交点(Xpk+1,Ypk)の測定値をCpk+1とする。また、単位座標に対するセンサ電極121X及び121Yの間隔である分解能をRESとし、測定値(差分値ΔAD)のうちの最大値Cmaxが得られた交点のX座標をXmaxとする。
【0050】
【数1】
【0051】
また、Y方向に配列される複数の交点についても同様の処理を行うことにより、指先FTの位置(計算座標)のY座標であるYftを算出することができる。指先FTの位置は、XY座標(Xft,Yft)で表される。
【0052】
<基準位置R1及びR2>
図6は、複数のセンサ電極121YのX方向における配列の一例を示す図である。図6ではセンサ電極121Xを省略する。図6には、N本のセンサ電極121YのY方向における中間の部分であって、X方向に延在する1本のセンサ電極121Xと重なる部分を示す。Nは2以上の整数であり、一例として50~200である。
【0053】
センサ電極121Yはセンサ電極121Xと重なっているため、センサ電極121X及び121Yの交点は、X方向にN個存在する。また、図6では、X軸の原点(X座標が0の点)は、最も-X方向側に位置するセンサ電極121Yの-X方向側の縁の位置と一致する。
【0054】
また、図6では、-X方向側から+X方向側にかけて、N本のセンサ電極121Yをセンサ電極121Y1、121Y2、・・・、121YN-1、121YN(121Y1~121YN)と区別する。センサ電極121Y1~121YNを特に区別しない場合には、単にセンサ電極121Yと称す。センサ電極121Y1は、第1センサ電極の一例であり、この場合にセンサ電極121Y2は、第2センサ電極の一例である。センサ電極121YNは、第1センサ電極の一例であり、この場合にセンサ電極121YN-1は、第2センサ電極の一例である。
【0055】
センサ電極121X及び121Yの各交点は、検出位置の一例であるため、図6におけるセンサ電極121Y1とセンサ電極121Xとの交点は、X方向の最端の検出位置の一例である。また、図6におけるセンサ電極121YNとセンサ電極121Xとの交点は、X方向の最端の検出位置の一例である。最端とは、最も端であることを意味し、一番端であることと同義である。
【0056】
座標入力装置100において、X方向では、-X方向側における最端のセンサ電極121Y1の-X方向側の縁と、+X方向側における最端のセンサ電極121YNの+X方向側の縁との間の領域が指先FTの位置を検出可能な領域である。すなわち、指先FTの位置を検出可能な領域は、X方向において、-X方向側における最端のセンサ電極121Y1の-X方向側(X方向における外側)の縁よりも内側に位置し、+X方向側における最端のセンサ電極121YNの+X方向側(X方向における外側)の縁よりも平面視における静電センサ120の内側に位置する。
【0057】
座標入力装置100は、X方向において、-X方向側の最端の交点に相当するセンサ電極121Y1と、センサ電極121Y1の隣のセンサ電極121Y2との間に、基準位置R1を有する。また、座標入力装置100は、X方向において、+X方向側の最端の交点に相当するセンサ電極121YNと、センサ電極121YNの隣のセンサ電極121YN-1との間に、基準位置R2を有する。図6では、基準位置R1及びR2の位置を破線で示す。基準位置R1及びR2のX座標は、それぞれ、X1及びX2である。
【0058】
座標入力装置100は、曲線近似計算法で3点(3つの交点)における測定値に二次曲線を当て嵌め、当て嵌めた二次曲線の頂点のX座標を指先FTのX座標として求める。この際に、座標入力装置100は、求めた指先FTのX座標が基準位置R1から基準位置R2までの範囲内に存在すれば、求めた指先FTのX座標に対して補正を行わずに、そのまま出力する。
【0059】
また、座標入力装置100は、求めた指先FTのX座標が基準位置R1よりも-X方向側、又は、基準位置R2よりも+X方向側に存在する場合には、求めた指先FTのX座標を補正して出力する。
【0060】
なお、図6には、X方向の両端に位置する基準位置R1及びR2を示すが、座標入力装置100は、Y方向の両端にも同様の基準位置を有する。そして、座標入力装置100は、求めた指先FTのY座標が-Y方向側の基準位置から+Y方向側の基準位置までの範囲内に存在すれば、求めた指先FTのY座標に対して補正を行わずに、そのまま出力する。また、座標入力装置100は、求めた指先FTのY座標が-Y方向側の基準位置よりも-Y方向側、又は、+Y方向側の基準位置よりも+Y方向側に存在する場合には、求めた指先FTのY座標を補正して出力する。
【0061】
<曲線近似計算法で求める二次曲線の頂点の位置のずれ>
図7は、曲線近似計算法で求める二次曲線の頂点の位置のずれの一例を説明する図である。図7には、図6におけるセンサ電極121Y1とセンサ電極121Xとの交点CP1と、図6におけるセンサ電極121Y2とセンサ電極121Xとの交点CP2とを示す。交点CP1及びCP2のX座標は、一例として500及び1500である。ここで交点のX座標とは、センサ電極121X及び121Yが平面視で重複する交点のうちのX方向における中心の座標である。各交点同士のX方向の間隔は、X座標の1000に相当する距離である。
【0062】
また、交点CP1に対応するセンサ電極121Y1の-X方向側の位置のX座標は0であるため、X座標が0の位置よりも+X方向側は平面視における静電センサ120の内側であり、X座標が0の位置よりも-X方向側は平面視における静電センサ120の外側である。
【0063】
ここで、曲線近似計算法でX方向において隣り合う3つの交点における測定値に二次曲線を当て嵌める際には、3つの交点のX座標と、3つの交点における測定値とを用いて、3つの交点における測定値に二次曲線を当て嵌める。
【0064】
一例として、3点(3つの交点)における測定値に二次曲線を当て嵌める際に、指先FTが操作面105Aに近づき、指先FTのX座標の中心がX=0であったとする。そして、この場合に、すべての交点の測定値(差分値ΔAD)の最大値が、交点CP1で得られたとする。
【0065】
このような場合には、交点CP1には-X方向側の隣の交点が存在しないため、座標入力装置100は、交点CP1及び交点CP2に加えて、交点CP1の-X方向側に、仮想的な交点があるものとして曲線近似を行う。
【0066】
仮想的な交点は、交点CP1及びCP2の間の間隔と等しい間隔だけ交点CP1よりも-X方向側に位置する。このため、仮想的な交点のX座標は-500である。座標入力装置100は、仮想的な交点の測定値がゼロであることとして、仮想的な交点、交点CP1、及び交点CP2の3つの測定値に対して、二次曲線を当て嵌める。
【0067】
このような場合には、図7に示すように、一例として、仮想的な交点の測定値はゼロ、交点CP1の測定値は100、かつ、交点CP2の測定値は90というような3つの測定値の関係が生じることになる。そして、これら3つの測定値に二次曲線を当て嵌めると、破線で示す二次曲線が得られる。破線で示す二次曲線の頂点(計算座標)は、実際の指先FTの座標(X=0)よりも、平面視における静電センサ120の内側にずれており、X座標は約900である。
【0068】
このような指先FTの計算座標のずれは、測定値の最大値が静電センサ120のX方向の最端にある交点CP1で測定されたために生じる。すなわち、交点CP1の-X方向側には交点が実在しないため、曲線近似において、交点CP1の-X方向側に仮想的な交点があり、仮想的な交点の測定値がゼロであることとして計算することで、二次曲線の頂点が+X方向側にずれる。
【0069】
これは、+X方向側の最端の交点で測定値の最大値が得られた場合にも同様である。この場合には、曲線近似で得られる二次曲線の頂点(計算座標)は、実際の指先FTの位置よりも、平面視における静電センサ120の内側(-X方向側)にずれる。また、Y方向においても、同様に指先FTの計算座標のずれが生じる。
【0070】
座標入力装置100は、基準位置R1及びR2を利用して、指先FTの計算座標を補正することで、このような指先FTの計算座標のずれを抑制する。
【0071】
<補正係数>
図8A及び図8Bは、指先FTの計算座標を補正する際の補正係数の一例を示す図である。図8Aには補正係数を表形式で示し、図8Bには補正係数をグラフ形式で示す。
【0072】
一例として、補正係数は、測定値と関連付けられている。図8Aでは一例として、測定値が0~79では補正係数は、16.2の一定値に設定される。図8Aでは測定値が0、40、79のときに補正係数は16.2に設定されている。
【0073】
また、測定値が80~1000までは、補正係数は段階的に減少する。具体的には、補正係数が80、160、230、460、690、920、1000のときに、それぞれ、16.2、15.0、13.9、10.3、6.7、3.1、1.9に設定される。また、測定値が1000~1500では補正係数は、1.9の一定値に設定される。図8Aでは測定値が1000、1001、1500のときに補正係数は1.9に設定されている。
【0074】
換言すれば、補正係数は、測定値が80以下では一定値(16.2)に設定され、測定値が80から1000までは段階的に減少し、測定値が1000以上では一定値(1.9)に設定される。
【0075】
このような測定値と補正係数との関係は、グラフに表すと図8Bに示す通りである。
【0076】
ここで、測定値の80は、一例として選択操作が行われた(開始された)ことを判定するための閾値(選択オン閾値)である。選択操作が開始されると、座標入力装置100の内部では、選択操作がオンになったと判定される。なお、測定値が80よりも小さい所定値(例えば75)は、選択操作がオフになったことを判定する選択オフ閾値である。また、測定値が選択オン閾値よりも大きい所定値(例えば500)は、確定操作がオンになったことを判定する確定オン閾値である。また、測定値が確定オン閾値よりも小さい所定値(例えば300)は、確定操作がオフになったことを判定する確定オフ閾値である。最も大きい閾値は、接触閾値(接触オン閾値)であり、接触閾値(接触オン閾値)よりも小さい所定値(例えば700)は、接触オフ閾値である。
【0077】
座標入力装置100は、操作面105Aに指先FTが近づいてきて、複数の検出位置で検出される複数の測定値のうちの最大値が80に達すると、選択操作が行われていると判定する。選択操作が行われている状態よりも指先FTが操作面105Aから遠い状態では、測定値が80よりも低い。このため、図8A及び図8Bに示す補正係数は、非検出状態及び近接状態では、16.2に設定される。
【0078】
また、測定値の1000は、一例として接触操作が行われたことを判定するための閾値(接触閾値)である。座標入力装置100は、操作面105Aに指先FTが接触して、複数の検出位置で検出される複数の測定値のうちの最大値が1000に達すると、接触操作が行われていると判定する。なお、座標入力装置100は、操作面105Aから指先FTが遠ざかり、複数の検出位置で検出される複数の測定値のうちの最大値が接触オフ閾値(700)未満になると、接触操作が行われなくなったと判定する。また、座標入力装置100は、複数の検出位置で検出される複数の測定値のうちの最大値が確定オフ閾値(300)未満になると、確定操作が行われなくなったと判定する。
【0079】
このような測定値と補正係数との関係において、測定値の増大に応じて補正係数を減少させる際の閾値になる測定値を80(選択オン閾値)に設定したのは、座標入力装置100は、非検出状態及び近接状態では測定値が小さいことから指先FTの位置(計算座標)を検出しにくいが、選択操作が行われる選択状態では、指先FTの位置(計算座標)をある程度高い精度で検出できるからである。
【0080】
また、接触操作が行われている状態で、指先FTが操作面105Aに押し付けられる力が増大して測定値が増大しても、指先FTの位置は変化しないため、接触閾値に相当する測定値が1000以上では、補正係数を一定にしている。
【0081】
補正係数による指先FTの計算座標の補正は、図7を用いて説明したように、測定値の最大値が静電センサ120の最端の交点で得られた場合に行われる。そして、測定値は、操作面105Aに対して操作が行われていない状態から、近接操作、選択操作、確定操作、及び接触操作と変化するにつれて、測定値は増大する。
【0082】
ここで、指先FTの真下に位置する交点の測定値は、すべての交点の測定値のうちの最大値になる。そして、測定値の最大値が得られる交点の隣の交点の測定値が、測定値の最大値に対して相対的に近くなるのは、接触操作のように操作面105Aに指先FTが近いときよりも、選択操作のように指先FTが操作面105Aからある程度離れている場合である。接触操作のように操作面105Aに指先FTが近いときは、指先FTの真下の交点と指先FTとの静電容量が、指先FTの真下の隣の交点と指先FTとの静電容量に比べて断然大きくなる。その一方で、選択操作のように指先FTが操作面105Aからある程度離れている場合には、指先FTの真下の交点と指先FTとの静電容量は、指先FTの真下の隣の交点と指先FTとの静電容量とそれほど大きく変わらなくなるからである。
【0083】
すなわち、交点CP2の測定値と、交点CP1で得られる測定値の最大値とが相対的に近くなるのは、接触操作が行われているときよりも、選択操作が行われているときである。このことから、接触操作のように指先FTが操作面105Aに近い場合よりも、選択操作のように指先FTが操作面105Aから離れているときの方が、指先FTの計算座標の補正量を大きくすることで、より高精度に指先FTの計算座標を補正できると言える。
【0084】
このような理由から、一例として、測定値の最大値が大きいほど、補正係数を小さくする。換言すれば、測定値の最大値が小さいほど、補正係数を大きくする。
【0085】
<補正係数を用いた計算座標の補正>
ここでは、図6を用いて説明する。図6において、基準位置R1のX座標は1000であることとする。図6に示すように、計算座標のX座標が600であったとする。すなわち、指先FTの計算座標のX座標は、センサ電極121Y1のX方向の幅の中に位置する。
【0086】
このような場合に、基準位置R1のX座標X1から、計算座標のX座標を減算して、X座標の差分ΔXを求める。指先FTの計算座標のX座標をXcとすると、差分ΔXは、次式(2)で表される。なお、計算座標がセンサ電極121YNの幅の中に存在する場合は、式(2)において、基準位置R2のX座標X2をX1として代入すればよい。
【0087】
【数2】
【0088】
また、補正係数Pは、次式(3)で表される。ここで、最大補正係数Pmaxは、すべての補正係数(図8A参照)のうちの最大値である。Pminは、すべての補正係数(図8A参照)のうちの最小値である。Cmaxは、すべての測定値のうちの最大値である。Cselは、選択オン閾値である。Ctouchは、接触閾値である。
【0089】
【数3】
【0090】
なお、補正係数は、式(3)に従って算出された結果、所定の下限値未満になった場合は、所定の下限値に制限される。また、補正係数は、式(3)に従って算出された結果、所定の上限値を超えた場合は、所定の上限値に制限される。
【0091】
また、指先FTの計算座標を補正する補正量Sは、補正係数Pと差分ΔXを用いて、次式(4)で表される。
【0092】
【数4】
【0093】
このようにして求めた補正量Sを指先FTの計算座標のX座標Xcから次式(5)に従って減算すれば、指先FTの補正されたX座標XAを求めることができる。
【0094】
【数5】
【0095】
なお、式(5)に従って求めたX座標XAに対して、下限と上限を適用する。補正後のX座標が、静電センサ120で指先FTの位置を検出可能な領域の範囲内外にある場合に、指先FTの位置を検出可能な領域の範囲内に収めるためである。具体的には、X座標の下限値は、-X方向における最端のセンサ電極121Y1の-X方向側の縁の座標であるゼロ(0)であり、X座標の上限値は、+X方向における最端のセンサ電極121YNの+X方向側の縁のX座標であるXmである。
【0096】
<補正の具体例>
図6に示すように、指先FTの計算座標のX座標Xcが600である場合に、は、差分ΔXは、ΔX=X1(1000)-Xc(600)=400である。また、測定値の最大値Cmaxが1000だとすると、補正係数Pは、P=Pmax(1000)-(Pmax(1000)-Pmin(80))×(Cmax(1000)-Csel(80))/(Ctouch(1000)-Csel(80))=1.9である。この場合に、補正量Sは、S=P(1.9)×ΔX(400)=760である。そして、指先FTの補正されたX座標XAは、XA=Xc(600)-S(760)=-160と求まる。ただし、指先FTの補正されたX座標XAは、0以上、Xm以下に制限されるため、XA=0と求まる。この結果、図6に示すように、補正後の指先FTのX座標は、X=0となる。
【0097】
なお、以上では、指先FTの計算座標のX座標について説明したが、Y座標についても同様である。
【0098】
<フローチャート>
図9Aは、座標入力装置100の算出部134が実行する処理の一例を表すフローチャートである。ここでは、X座標を補正する場合の処理について説明するが、Y座標についても同様である。すなわち、X座標についての補正処理とは別に、算出部134がY座標についての補正処理を同様に行えばよい。
【0099】
算出部134は、指先FTのX座標を曲線近似法で計算する(ステップS1)。
【0100】
算出部134は、式(3)に従って補正係数Pを計算する(ステップS2)。
【0101】
算出部134は、ステップS3で計算した補正係数Pに対して、下限と上限を適用する(ステップS3)。
【0102】
算出部134は、測定値の最大値Cmaxが得られたX座標Xmaxが左端のセンサ電極121Xの位置であるかどうかを判定する(ステップS4A)。
【0103】
算出部134は、X座標Xmaxが左端のセンサ電極121Xの位置である(S4A:Yes)と判定すると、式(2)に従って、基準位置R1のX座標X1から、計算座標のX座標Xcを減算して、X座標の差分ΔXを求める(ステップS5A)。
【0104】
算出部134は、指先FTの補正されたX座標XAを求める(ステップS6)。より具体的には、算出部134は、式(4)に従って補正量Sを求め、求めた補正量Sを用いて式(5)に従ってX座標XAを求める。
【0105】
算出部134は、ステップS6で求めたX座標XAに下限と上限を適用する(ステップS7)。
【0106】
以上で、一連の処理が終了する。算出部134は、STARTからENDまでの処理を繰り返し実行する。
【0107】
また、算出部134は、ステップS4Aにおいて、Xmax<X1が成立しない(S4A:No)と判定すると、測定値の最大値Cmaxが得られたX座標Xmaxが右端のセンサ電極121Xの位置であるかどうかを判定する(ステップS4B)。
【0108】
算出部134は、X座標Xmaxが右端のセンサ電極121Xの位置である(S4B:Yes)と判定すると、式(2)に従って、基準位置R2のX座標X2から、計算座標のX座標Xcを減算して、X座標の差分ΔXを求める(ステップS5B)。
【0109】
算出部134は、ステップS5Bの処理を終えると、指先FTの補正されたX座標XAを求める(ステップS6)。より具体的には、算出部134は、式(4)に従って補正量Sを求め、求めた補正量Sを用いて式(5)に従ってX座標XAを求める。算出部134は、ステップS6の処理を終えると、フローをステップS7に進め、求めたX座標XAに下限と上限を適用する。以上で一連の処理が終了すると、算出部134は、STARTからENDまでの処理を繰り返し実行する。
【0110】
また、算出部134は、ステップS4Bにおいて、X2<Xmaxが成立しない(S4B:No)と判定すると、X座標の差分ΔXをゼロ(0)に設定する(ステップS5C)。すなわち、ΔX=0となる。算出部134は、ステップS5Cの処理を終えると、フローをステップS6及びS7に順番に進める。以上で一連の処理が終了すると、算出部134は、STARTからENDまでの処理を繰り返し実行する。
【0111】
フローがステップS5Cに進んだ場合は、指先FTの計算座標のX座標Xcが、基準位置R1から基準位置R2までの範囲内(X1≦Xc≦X2)にあるため、X座標Xcを補正せずに出力することになる。
【0112】
<実施形態の変形例のフローチャート>
図9Bは、座標入力装置100の算出部134が実行する変形例の処理の一例を表すフローチャートである。ここでは、X座標を補正する場合の処理について説明するが、Y座標についても同様である。すなわち、X座標についての補正処理とは別に、算出部134がY座標についての補正処理を同様に行えばよい。
【0113】
図9Bに示すフローチャートは、図9に示すステップS4A及びS4BをステップS4AM及びS4BMに置き換えたものである。図9Bの変形例のステップS4AMでは、指先FTの計算座標のX座標Xcが基準位置R1のX座標X1未満であるかどうかを判定する(ステップS4AM)。測定値の最大値Cmaxが得られたX座標Xmaxが左端の電極に相当する場合、Xcが基準位置R1のX座標X1未満になる。よって、図9AのステップS4Aと図9BのステップS4AMとでは、同一の結果が得られる。
【0114】
また、図9Bの変形例のステップS4BMでは、指先FTの計算座標のX座標Xcが基準位置R2のX座標X2を超えているかどうかを判定する(ステップS4BM)。測定値の最大値Cmaxが得られたX座標Xmaxが右端の電極に相当する場合、Xcが基準位置R2のX座標X2を超える。よって、図9AのステップS4Bと図9BのステップS4BMとでは、同一の結果が得られる。
【0115】
以上のように、指先FTの計算座標のX座標Xcの値と閾値とを比較することで、測定値の最大値Cmaxが得られたX座標Xmaxが端であるかどうかを判定しても良い。
【0116】
<効果>
座標入力装置100は、絶縁基板125と、複数の検出位置を有し、絶縁基板125上に設けられる複数のセンサ電極121X及び121Yと、指先FT(指示体)による操作が可能な操作面105Aを有し、複数のセンサ電極121X及び121Yを覆うトップパネル105と、複数の検出位置の各々の静電容量を測定するAD変換部132及びカウンタ133(測定回路)と、複数の検出位置の各々の静電容量の測定値に基づいて、操作面105AのX方向及びY方向(2軸方向)における指先FT(指示体)の位置を算出する算出部134とを備え、算出部134は、複数の検出位置で測定される複数の測定値のうちの最大値Cmaxが得られる検出位置と、X方向又はY方向において最大値Cmaxが得られる検出位置の両隣に位置する検出位置との3点において、最大値Cmaxと、両隣の検出位置において測定される測定値とに対して二次曲線を当て嵌め、二次曲線の頂点の位置を指先FT(指示体)の操作面105AのX方向又はY方向における位置として算出し、最大値Cmaxが得られた検出位置が複数の検出位置のうちのX方向又はY方向における最端の検出位置である場合は、当て嵌めた二次曲線の頂点の位置として得られる指先FT(指示体)の位置をX方向又はY方向における最端側に向けて補正する。このため、指先FTの計算座標が、指先FTの位置を検出可能な領域の内側にずれても、外側(最端側)に補正できる。
【0117】
したがって、曲線近似計算法を用いつつ、検出精度を向上させた座標入力装置100を提供することができる。
【0118】
また、算出部134は、二次曲線の頂点の位置が、X方向又はY方向における基準位置よりも最端側にある場合に、指先FT(指示体)の位置の補正を行い、基準位置から頂点までの距離に補正係数を乗じて補正距離を算出し、基準位置から最端側に向かう方向に補正距離だけずらした位置に指先FT(指示体)の位置を補正する。このため、少ない計算量で指先FT(指示体)の位置を補正でき、曲線近似計算法を用いつつ、検出精度を向上させた座標入力装置100を提供することができる。
【0119】
また、算出部134は、最大値Cmaxに基づいて、操作面105Aから指先FT(指示体)までの距離を算出し、最大値Cmaxが小さいほど、補正係数を大きくする。指先FTの位置が操作面105Aに接触しているときと、指先FTが操作面105Aから離れているときでは、必要な補正量が異なる。このため、指先FTと操作面105Aとの距離に応じて補正量を変えることで、より検出精度を向上させた座標入力装置100を提供することができる。
【0120】
また、算出部134は、最大値Cmaxが、指先FT(指示体)が操作面105Aに接触していることを判定する接触閾値以上の場合に、指先FT(指示体)が操作面105Aに接触していると判定し、最大値Cmaxが、接触閾値以上の場合には、最大値Cmaxの値に関わらず、補正係数を一定値にする。指先FTと操作面105Aとの接触面積が大きくなると、測定値の最大値は増大する。しかし、指先FTとセンサ電極121X及び121Yとの間の距離は変わらないので、適切な補正量は変わらない。このため、最大値Cmaxが接触閾値以上の場合に補正係数を一定値にすることで、指先FTの位置をより適切に補正でき、より検出精度を向上させた座標入力装置100を提供することができる。
【0121】
また、算出部134は、最大値Cmaxが接触閾値未満の場合には、次式(6)により補正係数を算出する。
【0122】
【数6】
ただし、Pmaxは、すべての補正係数Pのうちの最大値、Pminは、すべての補正係数Pのうちの最小値、Cmaxは、すべての測定値のうちの最大値、Cselは、選択オン閾値、Ctouchは、接触閾値である。
【0123】
式(6)に従って補正係数を算出することで、接触操作のように指先FTが操作面105Aに近い場合よりも、選択操作のように指先FTが操作面105Aから離れているときの方が、指先FTの計算座標の補正量を大きくすることができる。
【0124】
指先FTの真下に位置する交点の測定値は、すべての測定値のうちの最大値になる。そして、測定値の最大値が得られる交点の隣の交点の測定値が、測定値の最大値に対して相対的に近くなるのは、接触操作のように操作面105Aに指先FTが近いときよりも、選択操作のように指先FTが操作面105Aからある程度離れている場合である。接触操作のように操作面105Aに指先FTが近いときは、指先FTの真下の交点と指先FTとの静電容量が、指先FTの真下の隣の交点と指先FTとの静電容量に比べて断然大きくなる。その一方で、選択操作のように指先FTが操作面105Aからある程度離れている場合には、指先FTの真下の交点と指先FTとの静電容量は、指先FTの真下の隣の交点と指先FTとの静電容量とそれほど大きく変わらなくなるからである。このため、補正量を上述のように設定することで、操作面105Aと指先FTとの間の距離に応じた適切な補正係数を算出でき、より検出精度を向上させた座標入力装置100を提供することができる。
【0125】
また、操作面105AのX方向又はY方向において、複数のセンサ電極121X及び121Yのうちの最端側に位置する第1センサ電極(X方向では121Y1又は121YN)のX方向又はY方向における外側の縁よりも内側が、算出部134が指先FT(指示体)の位置を算出可能な領域であり、第1センサ電極は、最端の検出位置に対応し、基準位置(X方向ではR1又はR2)は、第1センサ電極と、X方向又はY方向において第1センサ電極の隣りに位置する第2センサ電極(X方向では121Y2又は121YN-1)との境界に存在する。このように、第1センサ電極がX方向又はY方向における最端側に位置し、基準位置が第1センサ電極と第2センサ電極との境界に位置することで、最端の検出位置で測定値の最大値が得られた場合に、より検出精度を向上させた座標入力装置100を提供することができる。
【0126】
以上、本開示の例示的な実施形態の座標入力装置について説明したが、本開示は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0127】
100 座標入力装置
101 筐体
105 トップパネル
105A 操作面
110 表示装置
120 静電センサ
125 絶縁基板
130 制御装置
121X、121Y センサ電極
131 主制御部
132 AD変換部
133 カウンタ
134 算出部
135 動作制御部
136 表示制御部
137 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B