(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101822
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】エラストマー組成物、およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20240723BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C08L75/04
C08L23/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005974
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河相 龍宜
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 啓輔
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB202
4J002CK021
4J002GC00
4J002GM00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】熱可塑性ポリウレタンエラストマーの表面のべたつきが抑制され、さらに耐摩耗性に優れる成形体を形成し得る熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物を提供すること。
【解決手段】熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A)と、変性超高分子量ポリエチレン(B)とを含むエラストマー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A)と、変性超高分子量ポリエチレン(B)とを含むエラストマー組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A)の含有量が70~99.9質量部、かつ前記変性超高分子量ポリエチレン(B)の含有量が30~0.1質量部〔但し、(A)と(B)との合計量を100質量部とする。〕の範囲にある請求項1に記載のエラストマー組成物。
【請求項3】
前記変性超高分子量ポリエチレン(B)が、酸変性超高分子量ポリエチレンである、請求項1に記載のエラストマー組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のエラストマー組成物を含む成形体。
【請求項5】
被覆材または摺動材である請求項4に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー組成物に関し、より詳しくは熱可塑性エラストマーの一つである熱可塑性ポリウレタンエラストマー、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーの一つである熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ゴム的性質を有し、柔軟性に優れるため、加硫ゴム、塩化ビニル樹脂の代替として、自動車部品、電子・電気機器部品、フィルム等の成形品材料、および通信ケーブル、電線等の被覆材等に広く使用されている。これら成形品材料、通信ケーブル、電線等には、耐摩耗性が求められる。また、例えば被覆材で被覆された通信ケーブルをロボットアーム等の装置に用いる場合、この装置の動作に追従して通信ケーブルも動く。そのため、特に通信ケーブルの最外層(シース層)には摺動性も求められる。
【0003】
耐摩耗性を改良した熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして、熱可塑性ポリウレタンエラストマーと、スチレン系エラストマーと、アクリル変性オルガノポリシロキサンとを含有した熱可塑性ポリウレタンエラストマー(特許文献1)が提案されている。また、耐摩耗性、離型性、寸法安定性、外観を改善した熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして、熱可塑性ウレタンエラストマーと、超高分子量ポリエチレン系樹脂と、縮合ヒドロキシ脂肪酸および/またはそのアルコールエステルと、超高分子量ポリエチレン系樹脂以外のオレフィン系樹脂とを含む樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6853050号公報
【特許文献2】特開2019-39002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明において潤滑剤としての役割を担うと考えられるオルガノポリシロキサンは一般的に液体状であり、配合の際のハンドリングが悪く、成形後に成形品がブリードアウトする問題が生じる可能性がある。特許文献2に記載の発明においても、縮合ヒドロキシ脂肪酸および/またはそのアルコールエステルを含むことから、成形品がブリードアウトする可能性がある。ブリードアウトした成形品は、表面がべたついている場合がある。さらに、超高分子量ポリエチレン系樹脂は熱可塑性ポリウレタンとの相容性が低く、樹脂同士の分散不良や、それに伴う外観不良が懸念される。
【0006】
本発明は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの表面のべたつきが抑制され、さらに耐摩耗性に優れる成形体を形成し得る熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の様態を有する。
[1]
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A)と、変性超高分子量ポリエチレン(B)とを含むエラストマー組成物。
【0008】
[2]
前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A)の含有量が70~99.9質量部、かつ前記変性超高分子量ポリエチレン(B)の含有量が30~0.1質量部〔但し、(A)と(B)との合計量を100質量部とする。〕の範囲にある[1]に記載のエラストマー組成物。
【0009】
[3]
前記変性超高分子量ポリエチレン(B)が、酸変性超高分子量ポリエチレンである、[1]または[2]に記載のエラストマー組成物。
【0010】
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載のエラストマー組成物を含む成形体。
[5]
被覆材または摺動材である[4]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエラストマー組成物によれば、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの表面のべたつきが抑制され、さらに耐摩耗性に優れる成形体を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
[エラストマー組成物]
本発明のエラストマー組成物は、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A)と、変性された超高分子量ポリエチレン(B)とを含有する。以下、各成分について説明する。
【0013】
<熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A)>
前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A)(以下、「TPU(A)」ともいう。)としては、ハードセグメントブロックとソフトセグメントブロックとを繰り返し単位とするブロック共重合体が好ましい。
【0014】
ハードセグメントブロックは、少なくともジイソシアネートとジオール類とで構成されていることが好ましい。
ジイソシアネートとしては、例えば、トリジンジイソシネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、水素添加XDI、トリレンジイソシアネート(TDI)、トリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネートが挙げられる。
【0015】
ジオール類としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールが挙げられる。
【0016】
ソフトセグメントブロックは、少なくともジイソシアネートとポリオールとで構成されていることが好ましい。
ジイソシアネートとしては、ハードセグメントブロックの説明において先に例示したジイソシアネート等が挙げられる。
【0017】
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、ジオール類とジカルボン酸との縮合重合により得られるポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン等のラクトンモノマーの開環重合により得られるポリラクトンジオール等が挙げられる。
【0018】
ジオール類としては、ハードセグメントブロックの説明において先に例示したジオール類等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)、脂環族ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等)が挙げられる。
【0019】
ポリエーテルポリオールとしては、ジカルボン酸とグリコールとの縮合重合により得られるポリエーテルポリオール;ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0020】
ジカルボン酸としては、ポリエステルポリオールの説明において先に例示したジカルボン酸等が挙げられる。
グリコールとしては、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0021】
ポリカーボネートポリオールとしては、ジオール類とカーボネート類との反応により得られるポリカーボネートポリオール;ポリカプロラクトンポリオールとポリヘキサメチレンカーボネートとの共重合体等が挙げられる。
【0022】
ジオール類としては、ハードセグメントブロックの説明において先に例示したジオール類等が挙げられる。
カーボネート類としては、例えばジエチレンカーボネート、ジエチルカーボネートが挙げられる。
【0023】
前記TPU(A)のショアA硬度は、50~100が好ましく、80~95がより好ましい。このような範囲内であれば、相容性、耐摩耗性に優れる成形体を形成し得るエラストマー組成物を得ることができる。ショアA硬度は、ISO868に準拠して測定することができる。
【0024】
TPU(A)の硬度は、TPUの分子量、ハードセグメントブロックの量等によって調整できる。
前記TPU(A)としては市販品を用いることができ、例えばディーアイシーコベストロポリマー株式会社製 「T-8185N」、「T-8180N」、「T-8175N」;BASFジャパン株式会社製 エラストラン 「ET685-50」、「ET690-50」、「ET680-50」;Lubrizol社製 「58215」、「58315」、「2103-70A」が挙げられる。
【0025】
<変性超高分子量ポリエチレン(B)>
前記変性超高分子量ポリエチレン(B)は、一般的なポリエチレンに比べて重量平均分子量が大きい超高分子量ポリエチレンを変性した重合体である。変性超高分子量ポリエチレン(B)は、好ましくは超高分子量ポリエチレンに官能基を導入したものである。官能基は極性基、非極性基のいずれでもよいが、極性基が好ましい。また、変性超高分子量ポリエチレン(B)は、酸変性超高分子量ポリエチレンであることが好ましい。
【0026】
導入される官能基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、シラノール基が挙げられる。
酸で変性することで超高分子量ポリエチレンに極性基が導入される。
【0027】
変性に用いる酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸(商標)およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0028】
変性超高分子量ポリエチレン(B)としては、例えば市販品では、三井化学株式会社製リュブマー(登録商標)LY1040が挙げられる。
本発明のエラストマー組成物において、このような変性超高分子量ポリエチレン(B)は、前記TPU(A)中での分散性に優れる。本発明のエラストマー組成物は、このような変性超高分子量ポリエチレン(B)を含むことにより、表面のべたつきが抑制され、さらに耐摩耗性に優れている。その理由は、高分子量ポリエチレンに官能基を導入することで超高分子量ポリエチレンの極性が高くなり、TPU(A)との相容性(TPU(A)中での分散性)が向上するからではないかと推察される。
【0029】
<エラストマー組成物>
本発明のエラストマー組成物は、上記TPU(A)と上記変性超高分子量ポリエチレン(B)とを含む。上記TPU(A)の含有量は、好ましくは70~99.9質量部、より好ましくは80~98質量部であり、上記変性超高分子量ポリエチレン(B)の含有量は、好ましくは30~0.1質量部、より好ましくは20~2質量部〔但し、TPU(A)と変性超高分子量ポリエチレン(B)との合計量を100質量部とする。〕の範囲にある。
【0030】
本発明のエラストマー組成物は、変性超高分子量ポリエチレン(B)以外のオレフィン系樹脂を本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
本発明のエラストマー組成物は、上記TPU(A)と上記変性超高分子量ポリエチレン(B)のみからなるものであっても良く、これらの成分に加えて、上記TPU(A)にも、上記変性超高分子量ポリエチレン(B)にも該当しないその他の成分(以下「その他の成分」ともいう。)を含んでもよい。
【0031】
「その他の成分」としては例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、着色剤(染料、顔料等)、帯電防止剤、充填剤(フィラー)、難燃剤、難燃助剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、離型剤、発泡剤、粘着性付与剤、シール性改良剤、架橋剤、カップリング剤、界面活性剤等の添加剤が挙げられる。
【0032】
このような「その他の成分」は、1種単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を併用してもよい。
本発明のエラストマー組成物に含まれうる「その他の成分」の含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を損なわない範囲内で用途に応じて設定できる。エラストマー組成物に対して、好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
なお、本発明のエラストマー組成物は、通常、オルガノポリシロキサンなどの潤滑剤としての役割を果たす成分を含まない。
【0033】
<エラストマー組成物の製造方法>
本発明のエラストマー組成物の製造方法としては、例えば、上記TPU(A)と、上記変性超高分子量ポリエチレン(B)と、任意に上記「その他の成分」とを溶融混練することにより製造する方法が挙げられる。また、例えば、上記TPU(A)と、上記変性超高分子量ポリエチレン(B)と、任意に上記「その他の成分」とを、二軸スクリュー押出機等を用いて溶融混練し、その後固化および粉砕することで得られるマスターバッチと、TPU(A)と、任意に上記「その他の成分」とを、ドライブレンドする製造方法も挙げられる。マスターバッチの形状としては、例えばペレット状、棒状、板状が挙げられる。
【0034】
溶融混練の方法としては、例えば、単軸押出機、多軸押出機、タンデム式押出機を用いた方法が挙げられる。
TPU(A)と変性超高分子量ポリエチレン(B)と任意に上記「その他の成分」との混合は、従来公知の方法により行うことができ、例えば、二軸スクリュー押出機により溶融混練することによって行うことができる。この混合を溶融混練によって行う場合、この溶融混練は、例えば、240℃~280℃の温度にて行うことができる。
【0035】
[成形体]
本発明の成形体は、本発明のエラストマー組成物を含んでいる。
本発明の成形体は、本発明のエラストマー組成物を、プレス成型法、カレンダー成型法、射出成形法、射出圧縮成形法、異形押出法成形法、発泡成形法、ラム押出成形法、固化押出法、パイプ成形法、チューブ成形法、インジェクションブロー成形法等の公知の成形法により成形することにより製造できる。
【0036】
本発明の成形体は、前記TPU(A)と、前記変性超高分子量ポリエチレン(B)とを含むエラストマー組成物を含むことから、TPU(A)の弾性、伸長性、摺動性を維持しつつ、表面のべたつきが抑制され、さらに耐摩耗性にも優れている。
【0037】
本発明の成形体の用途としては、特に限定されず、例えば通信ケーブル被覆材、電線被覆材、自動車部品、パーソナルコンピュータ、コピー機等の電子・電気機器部品(例えばキーボード、トナーシール材、クリーニングブレード等)、レインコート等のフィルム材、放水ホース材、時計用バンド、フィギュア(人間やキャラクター等の立体的な模型)、キーボード、工具グリップ(ドライバーのハンドル等)が挙げられる。
【0038】
本発明の成形体は、TPU(A)の特性である伸長性や弾性、摺動性を充分に維持しつつ、表面のべたつきが抑制され、耐摩耗性にも優れるため、特に前記通信ケーブル被覆材、電線被覆材等の被覆材または摺動材として好ましく用いることができる。
【0039】
通信ケーブルの構成としては、最外層(シース層)が本発明の成形体であれば、すなわち最外層が本発明のエラストマー組成物で形成されていれば特に制限されず、例えば導体線の外周が絶縁体で被覆された心線の外周が、本発明のエラストマー組成物で被覆された構成などが挙げられる。
【0040】
本発明のエラストマー組成物で表面が被覆された通信ケーブルは、ロボットアーム、自動組立機械、ゲーム機のクレーン等の装置に用いられる通信ケーブルとして好適である。かかる装置においては、装置の動作に追従して通信ケーブルが動く。その際、通信ケーブルが摺動性に優れれば、通信ケーブルの動きがスムーズである。また、動いた際に表面が摩耗しにくい。また、通信ケーブルが伸長性および引張強度に優れれば、装置の動作に追従して通信ケーブルが引っ張られても切断されにくい。
【実施例0041】
以下において、実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0042】
[物性評価]
<硬度(ショアA)>
後述の方法で作製した縦120mm×横130mm×厚さ3mmの平板試験片を用いて、ISO868に準拠し、タイプAのデュロメータ硬度を測定した。押針を試験片に押し付けた直後の値を測定した。
【0043】
<引張破断強度>
後述の方法で作製した多目的試験片(JIS K7139で規定する、タイプA1のダンベル形引張試験片)を用いて、ISO-527-1,2に準拠し、引張速度50mm/minで試験片を引張り、引張破断強度を求めた。
【0044】
<動摩擦係数および比摩耗量>
後述の方法で作製した縦120mm×横130mm×厚さ3mmの平板試験片を用いて、JIS K7218「プラスチックの滑り摩耗試験A法」に準拠して、松原式摩擦摩耗試験機を使用して試験片の動摩擦係数及び比摩耗量を測定した。試験条件は次の条件とした。
相手材:炭素鋼(S45C)、速度:50cm/秒、距離:3km、荷重:5kgf、測定環境温度:23℃
【0045】
<表面におけるべたつき>
後述の方法で作製した縦120mm×横130mm×厚さ3mmの平板試験片の表面を、目視および触感によりべたつきの有無を評価した。
【0046】
[原料]
実施例および比較例において、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A)および変性超高分子量ポリエチレン(B)として、以下のものを使用した。
【0047】
<熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A)>
TPU A:BASF社製 エラストラン ET-685-50
TPU B:BASF社製 エラストラン ET-690-50
TPU C:BASF社製 エラストラン ET-680-50
【0048】
<変性超高分子量ポリエチレン(B)>
LY1040:三井化学株式会社製 変性超高分子量ポリエチレン リュブマー(登録商標)LY1040
【0049】
[エラストマー組成物の調製]
<実施例1~4>
表1に示す配合量に従い、各原料を二軸スクリュー押出機により溶融混練し、エラストマー組成物を得た。得られたエラストマー組成物を用いて、射出成形により多目的試験片(JIS K7139で規定する、タイプA1のダンベル形引張試験片)、及び縦120mm×横130mm×厚さ3mmの平板試験片を作製し、前記物性評価を行った。
【0050】
<実施例5~8>
TPU CとLY1040とを、表2に示す配合量に従い二軸スクリュー押出機により溶融混練し、マスターバッチを得た。得られたマスターバッチを用いて、表2に示す配合量に従いTPU Bとマスターバッチとをドライブレンドし、射出成形により多目的試験片(JIS K7139で規定する、タイプA1のダンベル形引張試験片)、及び縦120mm×横130mm×厚さ3mmの平板試験片を作製し、前記物性評価を行った。
【0051】
<比較例1、2>
表1に示す原料を用いて、射出成形にて多目的試験片(JIS K7139で規定する、タイプA1のダンベル形引張試験片)、及び縦120mm×横130mm×厚さ3mmの平板試験片を作製し、前記物性評価を行った。
【0052】
【0053】
【0054】
表1,2に示されるように、実施例1~8のエラストマー組成物は、比較例1~2と比較し、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A)の硬度や伸長性、摺動性を維持しつつも、表面のべたつきが抑制され、さらに耐摩耗性に優れていることがわかる。