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特開2024-101837燃焼速度測定方法及び燃焼速度測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101837
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】燃焼速度測定方法及び燃焼速度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/38 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G01N25/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005993
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【弁理士】
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】高柳 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】畑 篤史
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AB12
2G040BA15
2G040BA29
2G040CA02
2G040CA12
2G040CA23
2G040DA06
2G040DA12
2G040DA15
2G040EA03
2G040HA02
2G040HA16
(57)【要約】
【課題】二次元の燃え広がりを測定することができる燃焼速度測定方法及び燃焼速度測定装置を提供する。
【解決手段】燃焼速度測定方法は、粉状又は粒状の試料の燃焼速度を測定する方法であって、試料皿上に平面状に配置された試料に着火する工程S6と、サーモカメラにより試料の温度分布を示す画像を取得する工程S5と、画像に基づき、試料の燃焼面積に対応する値の増加速度を燃焼速度として算出する工程S7と、を含む。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状又は粒状の試料の燃焼速度を測定する方法であって、
試料皿上に平面状に配置された前記試料に着火する工程と、
サーモカメラにより前記試料の温度分布を示す画像を取得する工程と、
前記画像に基づき、前記試料の燃焼面積に対応する値の増加速度を前記燃焼速度として算出する工程と、を含む、
燃焼速度測定方法。
【請求項2】
前記算出する工程は、前記画像を予め設定された温度により二値化処理し、前記試料の燃焼領域を判定する工程を含む、
請求項1に記載の燃焼速度測定方法。
【請求項3】
前記試料の上面に風を流した状態で前記試料の前記燃焼速度を測定する方法であって、
前記試料の上面に予め設定された風速で風を流す工程を更に含む、
請求項1に記載の燃焼速度測定方法。
【請求項4】
前記着火する工程では、前記試料の中央部に着火する、
請求項1に記載の燃焼速度測定方法。
【請求項5】
前記試料の種類と前記燃焼速度とを対応付けてデータベースに記憶する工程を更に含む、
請求項1に記載の燃焼速度測定方法。
【請求項6】
前記データベースに基づき、前記試料の燃焼の危険性を評価する工程を更に含む、
請求項5に記載の燃焼速度測定方法。
【請求項7】
粉状又は粒状の試料の燃焼速度を測定する装置であって、
前記試料が平面状に配置される試料皿と、
前記試料に着火する着火部と、
前記試料の温度分布を示す画像を取得するサーモカメラと、
前記画像に基づき、前記試料の燃焼面積に対応する値の増加速度を前記燃焼速度として算出する制御部と、を備える、
燃焼速度測定装置。
【請求項8】
前記試料の上面に風を流した状態で前記試料の前記燃焼速度を測定する装置であって、
前記試料の上面に予め設定された風速で風を流す送風ユニットを更に備える、
請求項7に記載の燃焼速度測定装置。
【請求項9】
前記送風ユニットは、
前記試料皿を収容する内部空間を有する測定ボックスと、
前記内部空間を排気する排気装置と、を含み、
前記測定ボックスは、
前記試料皿が配置された底部と、
前記排気装置と接続される排気口が設けられた第1側部と、
前記第1側部と対向し、吸気口が設けられた第2側部と、を有している、
請求項8に記載の燃焼速度測定装置。
【請求項10】
前記サーモカメラの位置を調整する移動機構を更に備える、
請求項7に記載の燃焼速度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼速度測定方法及び燃焼速度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、三角柱の成形試料が所定長さ燃焼するのにかかった時間を計測し、燃焼速度を得る燃焼速度測定方法が記載されている。特許文献2には、微粉炭やバイオマス燃料を燃焼する火炎の温度分布を測定する温度分布測定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-277454号公報
【特許文献2】特開2021-39065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば集塵ダクト内に付着した粉塵は、二次元に燃え広がる。このような集塵ダクトの燃焼の危険性を正確に評価するには、粉塵の二次元の燃え広がりを測定する必要がある。
【0005】
本開示は、二次元の燃え広がりを測定することができる燃焼速度測定方法及び燃焼速度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る燃焼速度測定方法は、粉状又は粒状の試料の燃焼速度を測定する方法であって、試料皿上に平面状に配置された試料に着火する工程と、サーモカメラにより試料の温度分布を示す画像を取得する工程と、画像に基づき、試料の燃焼面積に対応する値の増加速度を燃焼速度として算出する工程と、を含む。
【0007】
本開示の一態様に係る燃焼速度測定装置は、粉状又は粒状の試料の燃焼速度を測定する装置であって、試料が平面状に配置される試料皿と、試料に着火する着火部と、試料の温度分布を示す画像を取得するサーモカメラと、画像に基づき、試料の燃焼面積に対応する値の増加速度を燃焼速度として算出する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、二次元の燃え広がりを測定することができる燃焼速度測定方法及び燃焼速度測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る燃焼速度測定装置を示す側面図である。
図2図2は、実施形態に係る燃焼速度測定装置を示す平面図である。
図3図3は、測定ボックスを示す斜視図である。
図4図4は、移動機構を説明するための一部拡大斜視図である。
図5図5は、実施形態に係る燃焼速度測定方法を示すフローチャートである。
図6図6(a)は、サーモカメラにより取得された画像の一例である。図6(b)は、図6(a)の画像を二値化処理した画像である。
図7図7は、白色領域の面積率の時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の概要]
最初に、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0011】
(条項1)本開示の一態様に係る燃焼速度測定方法は、粉状又は粒状の試料の燃焼速度を測定する方法であって、試料皿上に平面状に配置された試料に着火する工程と、サーモカメラにより試料の温度分布を示す画像を取得する工程と、画像に基づき、試料の燃焼面積に対応する値の増加速度を燃焼速度として算出する工程と、を含む。
【0012】
上記燃焼速度測定方法では、試料皿に平面状に配置された試料の温度分布を示す画像に基づき、試料の燃焼面積に対応する値の増加速度を燃焼速度として算出するので、試料の二次元の燃え広がりを測定することができる。
【0013】
(条項2)上記条項1に記載の燃焼速度測定方法において、算出する工程は、画像を予め設定された温度により二値化処理し、試料の燃焼領域を判定する工程を含んでもよい。この場合、試料の燃焼領域を画像から容易に判定することができる。
【0014】
(条項3)上記条項1又は2に記載の燃焼速度測定方法は、試料の上面に風を流した状態で試料の燃焼速度を測定する方法であって、試料の上面に予め設定された風速で風を流す工程を更に含んでもよい。この場合、実際の環境に近い条件で試料の二次元の燃え広がりを測定することができる。
【0015】
(条項4)上記条項1~3のいずれか一項に記載の燃焼速度測定方法において、着火する工程では、試料の中央部に着火してもよい。この場合、燃焼の広がりを二次元方向に進めることができる。
【0016】
(条項5)上記条項1~4のいずれか一項に記載の燃焼速度測定方法は、試料の種類と燃焼速度とを対応付けてデータベースに記憶する工程を更に含んでもよい。この場合、データベースによれば、複数の試料の燃焼速度を相対的に比較することができる。
【0017】
(条項6)上記条項5に記載の燃焼速度測定方法は、データベースに基づき、試料の燃焼の危険性を評価する工程と、を更に含んでもよい。この場合、複数の試料の燃焼速度を相対的に比較することにより、試料の燃焼のしやすさ、すなわち、燃焼の危険性を相対的に知ることができる。
【0018】
(条項7)本開示の一態様に係る燃焼速度測定装置は、粉状又は粒状の試料の燃焼速度を測定する装置であって、試料が平面状に配置される試料皿と、試料に着火する着火部と、試料の温度分布を示す画像を取得するサーモカメラと、画像に基づき、試料の燃焼面積に対応する値の増加速度を燃焼速度として算出する制御部と、を備える。
【0019】
上記燃焼速度測定装置では、試料皿に平面状に配置された試料の温度分布を示す画像に基づき、試料の燃焼面積に対応する値の増加速度を燃焼速度として算出するので、試料の二次元の燃え広がりを測定することができる。
【0020】
(条項8)上記条項7に記載の燃焼速度測定装置は、試料の上面に風を流した状態で試料の燃焼速度を測定する装置であって、試料の上面に予め設定された風速で風を流す送風ユニットを更に備えてもよい。この場合、実際の環境に近い条件で試料の燃焼速度を測定することができる。
【0021】
(条項9)上記条項8に記載の燃焼速度測定装置において、送風ユニットは、試料皿を収容する内部空間を有する測定ボックスと、内部空間を排気する排気装置と、を含み、測定ボックスは、試料皿が配置された底部と、排気装置と接続される排気口が設けられた第1側部と、第1側部と対向し、吸気口が設けられた第2側部と、を有していてもよい。この場合、排気装置が内部空間を排気することにより、吸気口から排気口に向かって試料の上面に風を流すことができる。
【0022】
(条項10)上記条項7~9のいずれか一項に記載の燃焼速度測定装置は、サーモカメラの位置を調整する移動機構を更に備えてもよい。この場合、試料の配置に合わせてサーモカメラの位置を容易に調整することができる。
【0023】
[本開示の実施形態の例示]
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0024】
図1図4を参照して、実施形態に係る燃焼速度測定装置1について説明する。図1は、実施形態に係る燃焼速度測定装置を示す側面図である。図2は、実施形態に係る燃焼速度測定装置を示す平面図である。図1及び図2に示される燃焼速度測定装置1は、粉状又は粒状の試料の燃焼速度を定量的に測定する装置である。燃焼速度測定装置1は、試料の上面に風を流した状態で試料の燃焼速度を測定する装置である。燃焼速度測定装置1では、風の影響を考慮した燃焼速度が測定される。風の影響としては、試料に空気が供給されることにより、空気に含まれる酸素が燃焼を促進することや、風向が生じることにより、燃え広がりの方向性が変化することなどがある。
【0025】
燃焼速度測定装置1は、測定ボックス2と、試料皿3と、着火部4と、ストッパー5と、サーモカメラ(サーモグラフィカメラ)6と、移動機構7と、排気装置8と、測定用PC(パーソナル・コンピュータ)9とを備える。図1では、測定ボックス2の内部を示すため、側板16(図2及び図3参照)の図示が省略されている。
【0026】
図3は、測定ボックスを示す斜視図である。測定ボックス2は、箱型に形成され、試料皿3を収容する内部空間Sを有している。測定ボックス2は、鉄材等の耐熱性や耐火性を有する材料により形成されている。測定ボックス2は、底部11と、天板12と、複数(ここでは6)の側板13,14,15,16,17,18と、を有する。
【0027】
底部11及び天板12は、z軸方向において互いに対向している。複数の側板13,14,15,16,17,18は、底部11と天板12とを接続するようにz軸方向に延在している。側板13,14は、x軸方向において互いに対向している。側板15,16は、y軸方向において互いに対向している。x軸方向、y軸方向、及び、z軸方向は、互いに直交している。x軸方向及びy軸方向は、水平方向である。z軸方向は、鉛直方向である。以下では、測定ボックス2において、底部11が設けられる方向を下方、天板12が設けられる方向を上方とも言う。
【0028】
底部11及び天板12は、z軸方向から見て、矩形の隣り合う2つの角部を落としたような六角形状を有している。底部11の上面11aには、試料皿3が配置される。上面11aには、試料皿3の位置を位置決めする窪み(不図示)が設けられている。天板12は、固定部19と、可動部20とを含む。固定部19は、六角形状の板であり、側板16,17,18の上端、側板13の側板17寄りの部分の上端、及び、側板14の側板18寄りの部分の上端と接する位置に固定されている。
【0029】
可動部20は、矩形板であり、側板15の上端、及び、側板13,14の側板15寄りの部分の上端と接するように設けられている。可動部20の一辺は、固定部19に取り付けられている。可動部20は、固定部19に取り付けられた一辺を回転軸として回転可能に設けられている。可動部20は、内部空間Sを開閉する蓋部材として機能している。可動部20を回転移動させてできる開口を通じて、内部空間Sに試料皿3を入れたり、内部空間Sから試料皿3を取り出したりすることができる。可動部20には、矩形状の開口21が設けられている。開口21は、サーモカメラ6と測定用PCとを接続する配線を通すために設けられている。開口21は、サーモカメラ6の位置に合わせて、可動部20のx軸方向の中央部に設けられている。開口21は、固定部19に取り付けられている可動部20の一辺まで至っている。
【0030】
複数の側板13,14,15,16,17,18は、いずれも矩形板である。側板13の中央部には、着火部4を挿通させる円形状の挿入孔22が設けられている。側板15には、排気装置8と接続される円形状の排気口23が設けられている。排気口23は、内部空間Sのz軸方向の中央部に配置されている。y軸方向から見て、排気口23は、試料皿3の上方、かつ、サーモカメラ6の下方に位置している。
【0031】
側板16には、矩形状の吸気口24が設けられている。y軸方向から見て、吸気口24は、試料皿3の上面と重なっている。y軸方向から見て、吸気口24の下端は、底部11の上面と一致し、吸気口24の上端は、試料皿3の上面よりもわずかに高い。吸気口24のz軸方向の長さは、試料皿3のz軸方向の長さよりもわずかに長い。吸気口24のx軸方向の長さは、試料皿3のx軸方向の長さよりも長い。本実施形態では、吸気口24は、側板16のx軸方向の全体にわたって形成されているので、側板16は、z軸方向において互いに離間する二つの板材に分割されているとも言える。
【0032】
側板16のx軸方向の長さは、側板15のx軸方向の長さよりも長い。側板16のx軸方向の中央部は、側板15とy軸方向において対向している。側板17は、z軸方向から見て、x軸方向及びy軸方向に対して傾斜する方向に延在し、側板13と側板15とを接続している。側板18は、z軸方向から見て、x軸方向及びy軸方向に対して傾斜する方向に延在し、側板14と側板15とを接続している。x軸方向における側板17と側板18との間の間隔は、側板15に近づくほど短くなっている。つまり、z軸方向から見て、内部空間Sの側板15寄りの部分は、先窄まりのテーパー形状を有している。
【0033】
試料皿3には、粉状又は粒状の試料(不図示)が平面状に広げて配置される円形状の器である。試料皿3は、ステンレスや琺瑯等の耐熱性や耐火性を有する材料により形成されている。試料皿3の内径は、一例として、90mmである。試料皿3の深さは、例えば、15mm以上であり、一例として、17mmである。試料皿3の深さが不十分な場合、試料の熱が試料皿3を通じて底部11に伝わりやすく、試料の温度をサーモカメラ6により正確に測定することができない。
【0034】
着火部4は、例えば、ガス式のライターであり、試料皿3の試料に非接触で着火する。着火部4は、トーチ状であり、着火部4の先端は、挿入孔22から内部空間Sに挿入され、試料皿3の上方に位置している。着火部4は、試料の上面の中央部に着火する。
【0035】
ストッパー5は、着火部4が内部空間Sに挿入される長さを設定するための部材である。ストッパー5は、着火部4のトーチ部分の途中に取り付けられている。ストッパー5は、例えば、挿入孔22を通過できない形状を有している。よって、ストッパー5が取り付けられる位置により、着火部4が内部空間Sに挿入される長さが設定される。ストッパー5によれば、着火部4の先端を容易に位置決めすることができる。
【0036】
サーモカメラ6は、試料の温度分布を示す画像(サーモグラフィ画像)を取得する。サーモカメラ6は、例えば、動画として画像を連続的に取得してもよいし、所定時間毎に画像を取得してもよい。サーモカメラ6は、取得した画像を測定用PC9に送信する。サーモカメラ6は、試料皿3の上方に配置されている。サーモカメラ6は、移動機構7に取り付けられている。
【0037】
図4は、移動機構を説明するための一部拡大斜視図である。図4では、側板16(図2及び図3参照)の図示が省略されている。移動機構7は、サーモカメラ6の位置を調整する。移動機構7は、第1軸部材7a、第2軸部材7b、第1取付部材7c、及び、第2取付部材7dを含んでいる。第1軸部材7aは、水平方向(x軸方向及びy軸方向)に延びている。第1軸部材7aは、図4の例では、y軸方向に延びている。第2軸部材7bは、鉛直方向(z軸方向)に延びている。第2軸部材7bの一端部は、例えば、ボルト(不図示)により固定部19に取り付けられている。第1軸部材7a及び第2軸部材7bには、例えば、目盛りが設けられている。
【0038】
第1取付部材7cは、第1軸部材7aを把持することにより、第1軸部材7aに取り付けられている。第1取付部材7cには、サーモカメラ6が固定されている。サーモカメラ6は、第1取付部材7cにより第1軸部材7aに取り付けられている。図4の例では、第1取付部材7cは、第1軸部材7aの一端部に取り付けられている。第1取付部材7cの取り付け位置を変更することで、サーモカメラ6を第1軸部材7aに沿って、水平方向に移動させることができる。
【0039】
第2取付部材7dは、第1軸部材7a及び第2軸部材7bをそれぞれ把持することにより、第1軸部材7a及び第2軸部材7bに取り付けられている。第2取付部材7dの第1軸部材7aに対する取り付け位置を変更することにより、サーモカメラ6を第1軸部材7aに沿って水平方向に移動させることができる。第2取付部材7dの第2軸部材7bに対する取り付け位置を変更することにより、サーモカメラ6を第2軸部材7bに沿って鉛直方向に移動させることができる。第2取付部材7dの第2軸部材7bに対する取り付け角度を変更することにより、第2軸部材7bを中心軸としてサーモカメラ6を回転させることができる。
【0040】
排気装置8は、排気口23に接続され、内部空間Sを排気する。排気装置8は、例えば、吸引ファンであり、ボルト(不図示)により側板15の外面に取り付けられている。排気装置8が内部空間Sの排気を行うと、外部の空気が吸気口24を通じて内部空間Sに取り込まれる。これにより、内部空間Sでは、吸気口24から排気口23に向かって試料の上面を風が流れる。
【0041】
上述のように、y軸方向から見て、吸気口24は、試料皿3の上面と重なっているので、試料の上面に確実に風を流すことができる。吸気口24は、矩形状であり、吸気口24のx軸方向の長さは、試料皿3のx軸方向の長さよりも長い。よって、試料皿3の上面に平行な風を流すことができる。排気口23は、試料皿3の上方に位置しているので、粉塵が排気口23から排出されることが抑制される。試料の上面を流れる風の風速は、排気装置8の排気速度(吸引風量)により調整可能である。排気装置8は、測定ボックス2と共に、試料の上面に予め設定された一定の風速で風を流す送風ユニット10を構成している。
【0042】
例えば、集塵ダクト内を風が流れている場合、堆積粉塵の表面を風が流れる。送風ユニット10によれば、この状況を再現することができる。送風ユニット10は、試料の上面を流れる風の風速を変更可能に構成されているので、実可動状況により近い状況で燃焼速度を測定することができる。
【0043】
制御部9aは、サーモカメラ6と電気的に接続され、サーモカメラ6から画像を受信する。制御部9aは、サーモカメラ6の画像に基づき、試料の燃焼面積に対応する値の増加速度を燃焼速度として算出する。一例として、横軸を時間、縦軸を燃焼面積に対応する値としたグラフの傾きを、燃焼開始時点から、燃焼面積に対応する値がピーク値を示す時点までの間における線形近似直線の傾きとして求め、燃焼速度とする。また、燃焼面積(高温領域の面積)に対応する値がピーク値に達してから所定の値(例えば、ピーク値の半分)に減少するまでの燃焼持続時間によって燃焼の持続性を判断する。制御部9aは、試料の燃焼速度及び燃焼持続時間を、試料の種類を示す情報と共にデータベース9bに送信する。試料は、例えば、材料や形状によって種類分けされる。制御部9aは、データベース9bに基づき、試料の燃焼の危険性を評価する。例えば、予め作成した評価基準によって、燃焼速度から粉塵の燃えやすさ、すなわち、燃焼の危険性を評価すると共に、燃焼持続時間から燃焼の持続性を評価する。
【0044】
測定用PC9は、制御部9a及びデータベース9bを含む。制御部9aは、例えばPLC(Programmable Logic Controller)として構成される。制御部9aは、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などのメモリと、タッチパネル、マウス、キーボード、ディスプレイなどの入出力装置と、ネットワークカードなどの通信装置とを含むコンピュータシステムとして構成されてもよい。制御部9aは、メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、制御部9aの機能を実現する。データベース9bは、制御部9aと電気的に接続されている。データベース9bは、試料の燃焼速度を試料の種類と対応付けて記憶する。データベース9bは、外部のサーバにより構成されていてもよい。
【0045】
図5図7を更に参照して、実施形態に係る燃焼速度測定方法について説明する。燃焼速度測定方法は、粉状又は粒状の試料の燃焼速度を定量的に測定する方法である。燃焼速度測定方法は、試料の上面に風を流した状態で試料の促進された燃焼速度を測定する方法である。燃焼速度測定方法は、燃焼速度測定装置1を用いて行われる。図5に示されるように、燃焼速度測定方法は、工程S1から工程S9を含む。工程S1から工程S9は、例えば、この順に行われる。
【0046】
工程S1は、試料を準備する工程である。工程S1では、試料として、例えば、篩にかけた粉塵を試料皿3に擦切りいっぱいに詰める。これにより、試料が試料皿3上に平面状に広げて配置される。試料の上面の高さ位置は、試料皿3の上端の高さ位置と一致している。圧縮により粉塵の密度が高まると、粉塵の内部に酸素が入りにくくなるので、粉塵が燃えにくくなる。粉塵を篩にかけることにより、粉塵の密度を実際の堆積粉塵の密度に近づけることができる。
【0047】
工程S2は、試料が配置された試料皿3を測定ボックス2の内部空間Sに配置する工程である。試料皿3は、例えば、可動部20を回転移動させてできる開口を通じて、内部空間Sに配置される。試料皿3は、底部11の上面11aの所定位置に設置される。
【0048】
工程S3は、サーモカメラ6の位置を調整する工程である。サーモカメラ6の位置は、移動機構7により調整される。サーモカメラ6は、試料皿3上に配置される試料の上面全体の温度分布を測定可能な位置に配置される。工程S3は、少なくとも工程S6の前に行われればよく、例えば、工程S4や工程S5の後に行われてもよい。例えば、複数の試料の燃焼速度を続けて測定する場合のように、サーモカメラ6の位置を調整する必要がなければ、工程S3は省略されてもよい。
【0049】
工程S4は、試料の上面に予め設定された一定の風速で風を流す工程である。工程S4では、排気口23に接続された排気装置8により、内部空間Sの排気を開始する。これにより、吸気口24から内部空間Sに空気が流入し、試料の上面に風が流れる。風速は、排気速度を調整することにより調整可能である。風速は、例えば、実際の集塵ダクトを流れる風の風速に合わせて設定される。
【0050】
工程S5は、サーモカメラ6により、試料の温度分布を示す画像を取得する工程である。ここでは、サーモカメラ6による画像の取得が開始される。取得された画像は、測定用PC9に送信される。工程S5は、測定用PC9の測定プログラムにより実施される。測定プログラムは、制御部9aにより実行される。工程S5は、工程S4の前に行われてもよいし、同時に行われてもよい。
【0051】
工程S6は、試料皿3上に平面状に広げて配置された試料に着火部4により着火する工程である。工程S6では、試料の上面の中央部に着火される。着火部4による着火は、予め設定された着火時間で行われる。着火時間は、例えば、3秒以上10秒以下である。工程S6は、例えば、排気装置8による排気、及び、サーモカメラ6による撮像が行われている状態で実行される。つまり、工程S6は、工程S4及び工程S5の開始と同時か、工程S4及び工程S5の開始後に実行される。着火部4は、工程S6の終了後に内部空間Sから引き抜かれる。
【0052】
工程S6の終了後も、排気装置8による排気、及び、サーモカメラ6による撮像は続けられ、風の流れる状況における試料の燃焼の広がりがサーモカメラ6により観察される。排気装置8による排気、及び、サーモカメラ6による撮像は、例えば、予め設定された測定時間経過後に終了される。測定時間は、例えば、60秒以上300秒以下である。
【0053】
工程S7は、制御部9aにより、サーモカメラ6で取得された画像に基づき、試料の燃焼面積に対応する値の増加速度を燃焼速度として算出する工程である。工程S7も、測定用PC9の測定プログラムにより実施される。工程S7は、サーモカメラ6で取得された画像を予め設定された温度により二値化処理し、試料の燃焼領域を判定する工程を含む。試料の燃焼面積に対応する値とは、試料の燃焼面積と相関する値であり、例えば、試料の燃焼面積自体であってもよいし、試料の燃焼面積に比例する値であってもよい。
【0054】
図6(a)は、サーモカメラにより取得された画像の一例である。図6(b)は、図6(a)の画像を二値化処理した画像である。この例では、試料として鉄粉を用いた。参考のため、図6(a)及び図6(b)では、試料皿3の輪郭が破線で示されている。図6(a)では、高温ほど淡色で示され、低温ほど濃色で示されている。図6(a)によれば、試料の一部が燃焼し、高温となっていることがわかる。
【0055】
二値化処理とは、所定温度を境界値とし、境界値より高温の領域を白色、境界値以下の領域を黒色に変換する画像解析処理である。境界値となる所定温度は、燃焼領域の温度を予め測定して設定される。境界値となる所定温度は、例えば、60℃である。二値化処理によれば、図6(b)の画像において、白色領域を試料の燃焼領域として判定することができる。つまり、サーモカメラ6と二値化処理を組み合わせることにより、所定温度以上の領域が容易に抽出できる。抽出領域の面積は、例えば、抽出領域のピクセル数から定量的に測定することができる。
【0056】
図7は、白色領域の面積率の時間変化の一例を示すグラフである。図7の縦軸は、白色領域の面積率(%)を示す。白色領域の面積率は、画像全体の面積に対する燃焼領域の面積の割合であり、燃焼面積に比例する値である。図7の横軸は、時間(秒)を示す。測定プログラムが開始された時間を0とする。図7に示されるように、時間の経過とともに、燃焼が広がり、白色領域の面積率が増加する。
【0057】
図7の例では、5秒から8秒までの3秒間は、工程S6が実行されている時間、すなわち、着火時間である。工程S6の実行中は、着火部4の影響で白色領域が一時的に増加する。着火部4の影響を排除するため、工程S6の終了時、すなわち、着火時間の終了時を燃焼開始時点とし、工程S6終了後における白色領域の面積率の増加速度を試料の燃焼速度(%/秒)として算出する。例えば、上述のように、工程S6終了後におけるグラフの線形近似直線を求め、線形近似直線の傾きを燃焼速度としてもよい。工程S7は、上述の燃焼持続時間を算出する工程を含んでもよい。
【0058】
工程S8は、試料の種類と燃焼速度とを対応付けてデータベース9bに記憶する工程である。工程S8も、測定用PC9の測定プログラムにより実施される。工程S8は、更に、試料の種類と燃焼持続時間とを対応付けてデータベース9bに記憶してもよい。工程S9は、データベース9bに基づき、試料の燃焼の危険性を評価する工程である。燃焼の危険性は、燃焼速度と燃焼持続時間により総合的に評価されてもよい。
【0059】
以上説明したように、実施形態に係る燃焼速度測定装置1及び燃焼速度測定方法では、試料皿3上に平面状に広げて配置された試料の温度分布を示す画像に基づき、制御部9aが、試料の燃焼領域の面積率の増加速度を燃焼速度として算出する。よって、粉塵が平面状に堆積しているような実際の現場に近い状況で、試料の二次元の燃え広がりを測定することができる。
【0060】
工程S7では、制御部9aが画像を予め設定された温度により二値化処理し、試料の燃焼領域を判定する。よって、試料の燃焼領域を画像から容易に判定することができる。工程S6では、着火部4が試料の上面の中央部に着火するので、燃焼の広がりを二次元方向に進めることができる。堆積粉塵に着火源が近づいた場合の燃焼速度を、実可動状況に近い状況で確認できる。
【0061】
工程S4では、排気装置8により内部空間Sを排気し、試料の上面に予め設定された風速で風を流す。このため、集塵機等のダクト内部のように、外部から風が吹き込んでいるような実際の現場に近い状況で、試料の二次元の燃え広がりを測定することができる。このように、周囲環境による影響を加味して燃焼速度を求めるので、周囲環境による影響を排除する測定方法に比べて、現実に即した燃焼速度を求めることができる。
【0062】
工程S8では、データベース9bにより、試料の種類と燃焼速度とを対応付けて記憶する。データベース9bによれば、複数の試料の燃焼速度を相対的に比較することができる。工程S9では、複数の試料の燃焼速度を相対的に比較することにより、試料の燃焼の危険性を相対的に知ることができる。つまり、複数の試料の燃焼速度を燃焼の危険性の評価指標とすることができる。
【0063】
試料は、測定ボックス2の内部空間Sに配置されるので、測定条件を設定しやすく、測定結果が外の環境に影響されにくい。z軸方向から見て、内部空間Sは、側板15の両端の角部を落としたような形状を有し、側板15寄りの部分において、側板15に近づくほど狭くなっている。これにより、吸気口24から流入した空気が角部に滞留することなく、スムーズに排気口23から排出される。
【0064】
本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…燃焼速度測定装置、2…測定ボックス、3…試料皿、4…着火部、6…サーモカメラ、7…移動機構、8…排気装置、9…測定用PC、9a…制御部、9b…データベース、10…送風ユニット、11…底部、11a…上面、15…側板(第1側部)、16…側板(第2側部)、23…排気口、24…吸気口、S…内部空間。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7