(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101845
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】アプセット鍛造のグリップ制御方法とそのシステム
(51)【国際特許分類】
B21J 9/06 20060101AFI20240723BHJP
B21J 5/08 20060101ALI20240723BHJP
B30B 15/14 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B21J9/06 A
B21J5/08 Z
B30B15/14 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006006
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】391039195
【氏名又は名称】株式会社万陽
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(74)【代理人】
【識別番号】110001759
【氏名又は名称】弁理士法人よつ葉国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩川 博康
(72)【発明者】
【氏名】越智 俊夫
【テーマコード(参考)】
4E087
4E089
【Fターム(参考)】
4E087AA09
4E087CA35
4E087EA15
4E087EA18
4E087EA33
4E087EA34
4E087EC22
4E087GA03
4E089EA01
4E089EC02
4E089FC05
(57)【要約】
【課題】アプセット鍛造において、鍛造素材を把持するグリップダイの把持力、タイミングを最適に制御できる。
【解決手段】鍛造素材Wをグリップ金型にセットすると、グリップ機構のACサーボモータを起動して、クランク軸を回転駆動し、グリップラム31下降させる。このグリップラム31と一体のグリップ上金型が下降して、グリップ下金型との間で鍛造素材Wを把持固定する。グリップラム31の下降後、油圧シリンダ室36を介して、設定圧以下で鍛造素材Wを把持固定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプセット鍛造を行うプレス機械と、
前記アプセット鍛造を行うとき、固定金型と移動金型の分割金型からなる鍛造素材の一部を把持するグリップ金型と、
前記グリップ金型の一方の前記移動金型を直線方向に駆動するグリップラムを駆動するクランク機構と、
前記クランク機構を回転して駆動するサーボモータと、
前記移動金型の位置を検知する検出器と、
前記プレス機械、前記グリップ金型を制御する制御手段と
からなるアプセッタによるアプセット鍛造システムにおいて、
前記制御手段は、前記検出器からの位置信号により、前記プレス機械を動作させて前記アプセット鍛造を行う
ことを特徴とするアプセット鍛造のグリップ制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアプセット鍛造のグリップ制御方法において、
前記グリップ金型の把持圧を制限するために、前記移動金型の下死点の位置で、前記移動金型が前記固定金型を加圧する把持力を油圧を介して設定置以下に制限する
ことを特徴とするアプセット鍛造のグリップ制御方法。
【請求項3】
アプセット鍛造を行うプレス機械と、
前記アプセット鍛造を行うとき、固定金型と移動金型の分割からなる鍛造素材の一部を把持するグリップ金型と、
前記グリップ金型の一方の前記移動金型を直線方向に駆動するグリップラムを駆動するクランク機構と、
前記クランク機構を回転して駆動するサーボモータと、
前記移動金型の位置を検知する検出器と、
前記移動金型の位置を検知して、前記プレス機械を動作させてアプセット鍛造を行う制御装置と
からなることを特徴とするアプセット鍛造のグリップ制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載のアプセット鍛造のグリップ制御装置において、
前記加圧成形する圧力を制限するために、前記移動金型の下死点の位置で、前記移動金型が前記固定金型を加圧する把持力を設定以下に制限する液圧シリダー装置と
からなることを特徴とするアプセット鍛造のグリップ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アプセット鍛造のグリップ制御方法とそのシステムに関する。更に詳しくは、鍛造素材を半割構造で把持する金型を有するアプセット鍛造のグリップシステムにおいて、このグリップ圧の制御とアプセット鍛造のタイミングの制御を最適化できる、アプセット鍛造のグリップ制御方法とそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アプセット鍛造は、長い材料の一部を加熱し、軸方向に圧縮して直径方向に広げる等の加工方法として知られている。アプセット鍛造を行うアプセッタは、長い材料の軸部をクリップ(把持)する機構と、その軸方向に加圧成形する機構の二つの機構を備えており、ダブルアクションの鍛造機をいう。このアプセッタの中に、上型、下型の半割構造のグリップダイで、鍛造素材を把持し、冷間、又は加熱された鍛造素材の先端を横打ちプレスで成形するものが知られている。このタイプのアプセッタは、割型であるので鍛造素材(ワーク)の出し入れが容易、金型が小さくなる、上下金型間のストロークが短い等の利点がある。しかしながら、横打ちプレスによるワーク鍛造時に、グリップダイの内部に鍛造圧力がかかり、上型、下型からなるグリップダイを広げようとする力がかかる。
【0003】
この上型、下型を締め付ける力(グリップ力)が小さい、又は金型が密着していないと、半割構造のグリップダイは離れ、鍛造バリが発生する。上型、下型のグリップダイが密着するようにグリップ駆動機構を微調整しても、グリップダイへの荷重を支えるフレーム等の伸びにより、最適な加圧力で把持できない。他方、鍛造素材を把持する上型、下型のグリップダイによる締付け力の確保は、従来のアプセッタは、クランク機構とリンク機構を組み合わせたものが一般的である。これらの機構による駆動機構は、動作が速い、同期を取りやすい等の利点があるが、その機構は複雑であり、微調整にはベテランの技能者に頼るところが多い。この調整が悪いと、過負荷がかかりリンク機構等が故障する原因になる。そこで、上型、下型からなるグリップダイの把持力を所定圧力でグリップするために、グリップツールを駆動するのに油圧シリンダー機構により駆動するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1に記載された油圧シリンダ駆動によるグリップダイ(金型)は、過荷重が発生した場合、リリーフ弁が作動し、グリップダイを保護する機能を備えている。しかしながら、グリップダイの上部グリップツール14を駆動する機構、ヘッディングツール5を駆動するクサビ機構等の連動、及びこれらの機構を同期させるためのタイミング調整が難しい。
本発明の目的は、鍛造素材を把持するグリップ金型の把持力、タイミングを最適にできる、アプセット鍛造のグリップ制御方法とそのシステムを提供することにある。
本発明の他の目的は、鍛造素材を把持するグリップ金型の故障等の不具合を最小限にできる、アプセット鍛造のグリップ制御方法とそのシステムを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、鍛造素材を把持するために移動するグリップ金型の正確な位置での停止時間、把持動作時間、逆転上至点の位置等を正確に制御できる、アプセット鍛造のグリップ制御方法とそのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明1のアプセット鍛造のグリップ制御方法は、
アプセット鍛造を行うプレス機械と、
前記アプセット鍛造を行うとき、固定金型と移動金型の分割金型からなる鍛造素材の一部を把持するグリップ金型と、
前記グリップ金型の一方の前記移動金型を直線方向に駆動するグリップラムを駆動するクランク機構と、
前記クランク機構を回転して駆動するサーボモータと、
前記移動金型の位置を検知する検出器と、
前記プレス機械、前記グリップ金型を制御する制御手段と
からなるアプセッタによるアプセット鍛造システムにおいて、
前記制御手段は、前記検出器からの位置信号により、前記プレス機械を動作させて前記アプセット鍛造を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明2のアプセット鍛造のグリップ制御方法は、本発明1のアプセット鍛造のグリップ制御方法において、前記グリップ金型の把持圧を制限するために、前記移動金型の下死点の位置で、前記移動金型が前記固定金型を加圧する把持力を油圧を介して設定置以下に制限することを特徴とする。
【0008】
本発明1のアプセット鍛造のグリップ制御システムは、
アプセット鍛造を行うプレス機械と、
前記アプセット鍛造を行うとき、固定金型と移動金型の分割からなる鍛造素材の一部を把持するグリップ金型と、
前記グリップ金型の一方の前記移動金型を直線方向に駆動するグリップラムを駆動するクランク機構と、
前記クランク機構を回転して駆動するサーボモータと、
前記移動金型の位置を検知する検出器と、
前記移動金型の位置を検知して、前記プレス機械を動作させてアプセット鍛造を行う制御装置とからなることを特徴とする。
【0009】
本発明2のアプセット鍛造のグリップ制御システムは、本発明1のアプセット鍛造のグリップ制御システムにおいて、前記加圧成形する圧力を制限するために、前記移動金型の下死点の位置で、前記移動金型が前記固定金型を加圧する把持力を設定以下に制限する液圧シリダー装置とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアプセット鍛造のグリップ制御方法とそのシステムは、アプセット鍛造のタイミングを正確に制御できるので、精密な鍛造が実現できる。また、分割されているグリップ金型の隙間を精密、かつ簡単に調整できるので、鍛造素材のバリの発生等を抑え、かつ形状も安定する。また、グリップ機構の微妙な調整が必要でなくなり、かつ過荷重による駆動部等の摩耗・損傷が無くなる。更に、鍛造素材の位置ズレ等によるグリッフ不良の検知ができるので、鍛造不良、故障を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、アプセット鍛造システムの外観を示す外観図である。
【
図2】
図2は、グリップ機構のクランク機構部分の断面図である。
【
図4】
図4は、アプセッタ鍛造システムの制御装置の概要を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、アプセッタ鍛造システムによるアプセット鍛造の動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[アプセット鍛造システム1の概要]
以下、本発明のアプセット鍛造のグリップ制御方法とそのシステムの第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、アプセット鍛造システム(以下、「アプセッタ」とも呼ぶ。)1の全体の外観を示す外観図である。アプセット鍛造システム1は、概略すると、アプセット鍛造を行う横打ちプレス2、アプセット鍛造時に鍛造素材Wを把持固定するグリップ機構3、鍛造素材Wをグリップ機構3に搬出入するワーク搬入・搬出ロボット4等からなる。横打ちプレス2は、電動機、フライホイール、クランク機構(偏芯軸、コネクティングロッド、ヘッダラム)、及び、ヘッダラムの駆動をON、OFFするクラッチ・ブレーキ等からなる、公知の一般的な鍛圧加工用のプレス機械である。本例の横打ちプレス2は、ヘッダラム(図示せず。)が水平方向(横方向)に駆動され、このヘッダラムに搭載されているアプセット金型10で、鍛造素材Wの先端を所望の形に鍛造するタイプの鍛造用のプレス機械である。
【0013】
図2は、グリップ機構のクランク機構部分の断面図である。
図3は、
図2のA-A断面図である。グリップ機構3は、鍛造素材Wをグリップ上金型32、グリップ下金型33からなる金型で把持固定するための機構であり、鍛造素材Wを横打ちプレス2のアプセット金型10で鍛造するときに、把持固定する(
図1参照)。グリップ下金型33は、グリップ機構本体5に固定されている。グリップラム31に固定されたグリップ上金型32は、鍛造素材Wを把持するときに下降し(x軸方向)、非鍛造時には上昇する。グリップ上金型32の上下駆動機構は、後述するようにクランク機構である。アプセット鍛造システム1への鍛造素材Wの供給、送り、搬出は、ワーク搬入・搬出ロボット4等で行われる。
【0014】
図2は、グリップ機構3のクランク機構部分の断面図である。
図3は、
図2のA-A断面図である。グリップ機構3は、横打ちプレス2でアプセット鍛造をするとき、鍛造素材を把持固定するためのものである。この鍛造素材Wの先端部は、横打ちプレス2のアプセット金型10で所望の形状に鍛造される。
図2、3に示すように、グリップ機構3は、回転運動を直線運動に変換するスコッチヨーク式と呼ばれているクランク機構を備えており、クランク機構により断面形状が角柱状のグリップラム31を直線方向(x軸方向(上下方向))に駆動して、鍛造素材Wを押圧して把持固定する。グリッブラム31の下端部には、グリップ上金型32がボルトにより着脱自在に固定されている。グリップ上金型32に対向してグリップ下金型33が、グリップ機構本体5に固定されている。グリップ上金型(移動金型)32の下端部とグリップ下金型(固定金型)33の上端部に形成された把持凹部34で、鍛造素材Wを把持固定する。本例では、2組の把持凹部34が備えており、この把持凹部34で鍛造素材Wを把持後、横打ちプレス2のアプセット金型10(
図1参照)で鍛造素材Wの頭部に2工程で、所望のアプセット鍛造を行うものである。
【0015】
断面形状が角柱状のグリップラム31は、グリップ機構本体5に形成された角柱状のラムガイド孔35に挿入され上下方向(x軸方向)に摺動自在に設けられている。グリップラム31とラムガイド孔35の間は強制潤滑されており、グリップラム31は円滑に上下方向(x軸方向)に摺動できる。グリップラム31の上端部には、円柱状の穴である油圧シリンダ室36が形成されている。油圧シリンダ室36内には、ピストン40が上下方向(x軸方向)に摺動自在に挿入されており、このピストン40は油圧で駆動される。油圧シリンダ室36に加圧された圧油を導入することにより、グリップラム31をx軸方向(下方)に駆動する。ピストン40には、ピストンロッド41の下端が一体になるように連結固定されている。ピストンロッド41の上端は、概略の外形が箱型の角メタルケース50の下部板51にボルトで固定されている。
【0016】
角メタルケース50は、下部板51に平行して上部板52を有しており、この下部板51と上部板52は、4本のボルト53で連結され固定されている。ボルト53には、下部板51と上部板52の間隔を保つための管材であるスペーサ54が介在されている。従って、下部板51と上部板52との間は、立方体(略正六面体)の空間が形成され、この立方体の空間に直方体である角メタル60が配置されている。角メタル60は、角メタルケース50内でy軸線方向のみ移動(摺動)可能である(
図2参照)。角メタル60の中心部には、貫通孔である円孔61が空けられている。この円孔61には、クランク軸62が回転自在に挿入され支承されている。
図3に示すように、クランク軸62の両側には、支承軸63を一体に有している。クランク軸62の両側の支承軸63は、角メタルケース50の側板55に回転自在に軸受で支持されている。支承軸63の中心線とクランク軸62の中心線は、一致せず偏心している(
図2参照)。
【0017】
一方の支承軸63には、これと同軸にクランク駆動歯車65が一体に固定されている。クランク駆動歯車65には、ピニオン歯車66が噛み合っている。ピニオン歯車66は、ACサーボモータ68の出力軸67にキー等で固定されている。従って、ACサーボモータ68を起動してピニオン歯車66を回転させると、支承軸63が回転駆動させられ、支承軸63と偏心しているクランク軸62も旋回駆動される。このクランク軸62が回転駆動されると、角メタルケース50の下部板51と上部板52の間のクランク軸62に、回転自在に支承されている角メタル60は、グリップラム31を上下(x軸方向)に駆動するが、
図2の左右方向(y軸方向)には、角メタルケース50内を摺動するのみである。即ち、グリップラム31を上下(
図2)には駆動しない。横打ちプレス2で鍛造素材Wを鍛造するとき、グリップラム31を下方向(x軸方向)駆動して、グリップ上金型32とグリップ固定金型33で鍛造素材Wを把持固定する。
【0018】
[制御装置70]
図4は、アプセット鍛造システム1を制御するためのアプセット鍛造システム制御装置70の概要を示すブロック図である。アプセット鍛造システム制御装置70の制御装置71は、PLC(Programmable Logic Controller)であり、CPU(中央処理装置)、RAM、ROM、補助記憶装置、表示手段、入力手段、各種出力手段等からなり、各種機械をシーケンス制御する公知の汎用の制御手段である。制御装置71には、インターフェイス(I/F)72を介して、グリップラム位置検知センサー73から位置信号が送られてくる。グリップラム位置検知センサー73は、グリップラム31、及びこれと一体のグリップラム下金型33の位置を検知するためのものである。本例のグリップラム位置検知センサー73は、具体的には、ACサーボモータ68の回転を検知するロータリエンコーダである。なお、このセンサーは、ロータリエンコーダではなく、グリップラム31又は、これと一体のグリップラム下金型33の位置を直接的に検知する近接センサー等であっても良い。
【0019】
また、制御装置71には、インターフェイス(I/F)72を介して、ヘッダラム位置信号センサー74から送られてくる。ヘッダラム位置信号センサー74は、横打ちプレス2のヘッダラム位置を取得するためのものである。具体的には、横打ちプレス2のクランク機構の回転を検知して、ヘッダラムの位置を検知するものである。制御装置71は、上記センサーからのデータ等により、インターフェイス(I/F)75を介して、グリップ機構3を駆動するACサーボモータ68の回転の起動、停止制御をする。また、制御装置71は、油圧シリンダ室36への圧油の供給を電磁弁76で行う。更に、制御装置71は、横打ちプレス2のクラッチ&ブレーキ77のON、OFFにより、ヘッダラム(アプセット金型10)の停止、駆動及びタイミングを制御をする。
【0020】
[アプセット鍛造システム1の動作概要]
以下、上記アプセット鍛造システム制御装置70による、アプセット鍛造の作動の概要を説明する。
図5の上段の線図は、グリップラム31のストローク動作を示す線図である。
図5の中段の線図は、グリップラム31の油圧シリンダ室36へ電磁弁76を介して油圧を供給するタイミングを示すタイムチャートである。
図5の下段の線図は、横打ちプレス機械2のヘッダラム(アプセット金型10)のストローク動作を示す線図である。グリップ下金型33に鍛造素材Wがワーク搬入・搬出ロボット4により、セットされる。この鍛造素材Wのセットが完了すると、グリップ機構3のACサーボモータ68を起動して、クランク軸62を回転駆動し(180度)、グリップラム31を下降させる。このグリップラム31と一体のグリップ上金型32が下降して、グリップ下金型33との間で鍛造素材Wを把持固定する(
図5上段の実線)。
【0021】
このグリップラム31が下降開始後に、油圧シリンダ室36への油圧の供給の電磁弁76を開く。グリップラム31が下死点に達すると、ACサーボモータ68の起動を停止する。このグリップラム31が下死点に達する前、油圧シリンダ室36への圧油を供給する電磁弁76を開く。グリップラム31が下死点に達した後、油圧シリンダ室36の圧油は設定圧に達する(
図5の中段)。これにより、グリップ上金型32とグリップ固定金型33は、クランク機構により直接的ではなく、圧油を介在して鍛造素材Wを把持することになる。このために、仮に、何らかのトラブルで圧油が設定値以上になると、リリーフ弁(図示せず。)を作動させて過負荷を防止する。グリップ金型上金型32,グリップ下金型33等の製作誤差、把持誤差等を吸収して、グリップ上金型32、グリップ下金型33を設定圧で密着させることができ、金型等の破損防止にもなる。
【0022】
設定圧に達したら、横打ちプレス2のクラッチ&ブレーキ77をONすることにより、ヘッダラムをy軸線方向に駆動して、アプセット鍛造を行う(
図5の下段)。横打ちプレス2のクランク機構が一回転(360度)させた後、クラッチ&ブレーキ77をOFFにし、ヘッドラムを停止させる。ヘッダラムが下死点に達した後、電磁弁76を開放して、圧油を戻す。この後、ACサーボモータ68を起動して、グリップラム31を上昇させる。即ち、鍛造素材Wを把持しているグリップ上金型32を上昇させて、鍛造素材Wの把持から開放し、一工程の鍛造が終了する。
【0023】
[その他の実施の形態]
前述した横打ちプレス2は、ヘッドラムを水平に駆動するものであったが、アプセット鍛造の種類によっては、鉛直方向に駆動されるプレス機械であっても良い。また、横打ちプレス2は、回転運動をクランクで直線運動に変換するコネクティングロッドを用いたクランク機構であるが、機構であれば、レバープレス、ナックルプレスであっても良い。同様に、グリップ機構3は、スコッチヨーク式と呼ばれているクランク機構であったが、コネクティングロッドを用いたクランク機構、レバープレス、ナックルプレスであっても良い。従って、本発明でいうクランク機構とは、これらの機構も含む概念である。
【符号の説明】
【0024】
W…鍛造素材
1…アプセット鍛造システム
2…横打ちプレス
3…グリップ機構
4…ワーク搬入・搬出ロボット
5…グリップ機構本体
10…アプセット金型
31…グリップラム
32…グリップ上金型
33…グリップ下金型
34…把持凹部
35…ラムガイド孔
36…油圧シリンダ室
40…ピストン
41…ピストンロッド
50…角メタルケース
51…下部板
52…上部板
53…ボルト
54…スペーサ
55…側板
60…角メタル
61…円孔
62…クランク軸
63…支承軸
65…クランク駆動歯車
66…ピニオン歯車
67…出力軸
68…ACサーボモータ
70…アプセット鍛造システム制御装置
71…制御装置
72,75…インターフェイス(I/F)
73…グリップラム位置検知センサー
74…ヘッダラム位置検知センサー
76…電磁弁
77…横打ちプレスのクラッチ&ブレーキ