(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101857
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】作成方法、算出方法、処理装置、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20230101AFI20240723BHJP
【FI】
G06Q30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006023
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】河野 祐子
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 智裕
(72)【発明者】
【氏名】浪岡 保男
(72)【発明者】
【氏名】市村 正洋
(72)【発明者】
【氏名】安 信行
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB55
5L049BB55
(57)【要約】
【課題】より精度良く見積金額を算出可能なモデルを作成できる、作成方法、算出方法、処理装置、プログラム、及び記憶媒体を提供する。
【解決手段】実施形態に係る作成方法は、見積対象の物件への要件を、第1仕様項目及び第2仕様項目に変換するステップを備える。前記作成方法は、さらに、前記物件と関係する複数の事例における前記第1仕様項目の仕様値及び前記第2仕様項目の仕様値の分布に基づいて、一部の前記事例を抽出するステップを備える。前記作成方法は、さらに、前記物件と関連性を有する関連仕様項目を参照し、前記一部の事例における金額と前記関連仕様項目の仕様値との関係を示す推定モデルを作成するステップを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
見積対象の物件への要件を、第1仕様項目及び第2仕様項目に変換するステップと、
前記物件と関係する複数の事例における前記第1仕様項目の仕様値及び前記第2仕様項目の仕様値の分布に基づいて、一部の前記事例を抽出するステップと、
前記物件と関連性を有する関連仕様項目を参照し、前記一部の事例における金額と前記関連仕様項目の仕様値との関係を示す推定モデルを作成するステップと、
を備えた作成方法。
【請求項2】
前記抽出するステップにおいて、
前記第1仕様項目及び前記第2仕様項目のそれぞれを基準軸として、前記複数の事例における前記第1仕様項目の仕様値及び前記第2仕様項目の仕様値をマッピングして前記分布を作成し、
前記分布において、前記複数の事例を分類するための分割線を設定し、
前記分割線によって分類された前記一部の事例を抽出する、
請求項1記載の作成方法。
【請求項3】
前記分割線は、前記複数の事例の前記第1仕様項目に基づくクラスタ分類結果と、前記複数の事例の前記第2仕様項目に基づくクラスタ分類結果と、を用いて設定される、請求項2記載の作成方法。
【請求項4】
前記変換するステップにおいて、前記要件を、前記複数の事例に対して共通に設定された3つ以上の仕様から選択される前記第1仕様項目及び前記第2仕様項目に変換する請求項1~3のいずれか1つに記載の作成方法。
【請求項5】
前記変換するステップにおいて、前記要件を、前記複数の事例に対して共通に設定された4つ以上の仕様項目から選択される前記第1仕様項目、前記第2仕様項目、及び第3仕様項目に変換し、
前記抽出するステップにおいて、前記第1仕様項目、前記第2仕様項目、及び前記第3仕様項目の分布に基づいて、前記一部の事例を抽出する、請求項1~3のいずれか1つに記載の作成方法。
【請求項6】
前記作成するステップにおいて、前記一部の事例における金額と、複数の前記関連仕様項目の仕様値と、の関係を示す前記推定モデルを作成する、請求項1~3のいずれか1つに記載の作成方法。
【請求項7】
前記第1仕様項目又は前記第2仕様項目として、前記複数の事例における金額を用いる、請求項2記載の作成方法。
【請求項8】
前記複数の事例には、それぞれ複数の確信度が付与され、
前記抽出するステップにおいて、前記分布に加えて、前記複数の確信度を用いて前記一部の事例を抽出する、請求項1~3のいずれか1つに記載の作成方法。
【請求項9】
前記複数の事例は、
前記物件と類似し且つ過去に生産された類似物件についての実例と、
前記実例に基づいて作成された仮想事例と、
を含む、請求項1~3のいずれか1つに記載の作成方法。
【請求項10】
前記物件に対する前記要件が存在しない場合には、前記変換するステップを省略し、前記複数の事例における前記関連仕様項目の分布に基づいて前記一部の事例を抽出する、請求項1~3のいずれか1つに記載の作成方法。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか1つに記載の作成方法と、
前記推定モデルに、前記物件における前記関連仕様項目の仕様値を入力することで、前記物件の見積金額を算出するステップと、
を備えた算出方法。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか1つに記載の作成方法を実行する処理装置。
【請求項13】
請求項1~3のいずれか1つに記載の作成方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、作成方法、算出方法、処理装置、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
物件に関する役務の提供者が、実際の役務の提供前に、顧客から見積金額の提示を求められる場合がある。見積金額について、より精度良く、より簡便に算出できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、より精度良く見積金額を算出可能なモデルを作成できる、作成方法、算出方法、処理装置、プログラム、及び記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る作成方法は、見積対象の物件への要件を、第1仕様項目及び第2仕様項目に変換するステップを備える。前記作成方法は、さらに、前記物件と関係する複数の事例における前記第1仕様項目の仕様値及び前記第2仕様項目の仕様値の分布に基づいて、一部の前記事例を抽出するステップを備える。前記作成方法は、さらに、前記物件と関連性を有する関連仕様項目を参照し、前記一部の事例における金額と前記関連仕様項目の仕様値との関係を示す推定モデルを作成するステップを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態に係る作成方法を備えた見積金額の算出方法を示すフローチャートである。
【
図6】作成された推定モデルを例示する模式図である。
【
図8】事例の抽出方法の別の一例を示す模式図である。
【
図9】実施形態に係る計算システムを示す模式図である。
【
図10】ユーザインターフェースを例示する模式図である。
【
図11】ユーザインターフェースを例示する模式図である。
【
図12】信頼度を用いた推定モデルの作成方法を例示する模式図である。
【
図13】信頼度を用いた機械学習による推定モデルの作成方法を示す模式図である。
【
図14】推定モデルへの入力データ及び推定モデルからの出力データを示す模式図である。
【
図15】実施形態の変形例に係る作成方法を備えた見積金額の算出方法を示すフローチャートである。
【
図16】実施形態の変形例に係る計算システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
実施形態に係る発明は、物件に関する役務の金額をより精度良く推定できる推定モデルの作成に用いられる。物件は、物品などの動産、又は発電プラントやビルといった建物などの不動産である。物品に関する役務としては、物品の生産、補修などが挙げられる。建物に関する役務としては、建物の建設、補修などが挙げられる。
【0009】
物品に関して、提供される物品が大量生産品である場合、その生産又は補修の見積金額を算出することは比較的容易である。一方、個別受注生産されるインデント製品などについては、物品ごとに仕様が異なるため、大量生産品に比べて、見積金額の算出が困難である。インデント製品とは、例えば、受変電設備、発電設備などの大型の物品である。個別受注生産品については、物品ごとに仕様が異なるため、生産又は補修のたびに、具体的な仕様を考慮して見積金額が算出される。精度の高い見積金額を算出するためには、仕様を具体的に特定する必要があり、時間を要する。実施形態に係る発明は、特に個別受注生産品の見積金額を、精度良く、より簡便に算出することを目的とする。以降では、物件が物品である例について説明する。
【0010】
(算出方法)
図1は、実施形態に係る作成方法を備えた見積金額の算出方法を示すフローチャートである。
図2は、見積仕様データの一例である。
実施形態に係る算出方法M1において、まず、見積対象の物品の仕様を示す見積仕様データが取得される(ステップS1)。例えば
図2に示すように、見積仕様データ10Aは、見積対象の物品について、複数の仕様項目11-1~11-nの少なくともいずれかの具体的な数値(仕様値)、要件12などを含む。物品は、例えば製品である。物品は、製品に含まれるユニット、モジュール、又は部品であっても良い。物品は、複数のユニットを組み合わせたユニット群、複数のモジュールを組み合わせたモジュール群、又は複数の部品を組み合わせた部品群であっても良い。
【0011】
一般的に、物品は様々な特性を有する。それらの特性は、仕様項目の仕様値によって特定される。発注の段階では、
図2に示すように、多くの仕様が未確定な場合がある。また、仕様が指定される代わりに、物品に対して曖昧な要件12が指定される場合もある。
【0012】
見積仕様データの取得後、要件が、具体的な仕様項目に変換される(ステップS2)。
図2に示す例では、要件12として、「堅牢であること」が求められている。複数の仕様項目11-1~11-nから、「堅牢であること」と関係する2つの仕様項目が選択される。これにより、要件12は、選択された2つの仕様項目(第1仕様項目及び第2仕様項目)に変換される。又は、複数の仕様項目から3つの仕様項目が選択され、要件は3つの仕様項目(第1仕様項目、第2仕様項目、及び第3仕様項目)に変換されても良い。一例として、要件12は、仕様項目11-1の「回転速度」と、仕様項目11-4の「大きさ」と、の2つの仕様項目に変換される。
【0013】
図3は、事例データの一例である。
要件の変換後、見積対象の物品と関係する複数の事例が参照される。参照された各事例から、変換された仕様項目の仕様値が抽出される(ステップS3)。事例は、見積対象の物品と類似する類似物品について、金額、類似物品の各仕様項目の仕様値などを含む。事例は、過去に生産又は補修された類似物品に関する実例である。複数の事例の一部が、モデルを作成するために用意された仮想事例であっても良い。例えば
図3に示すように、事例データ10Bは、仕様項目11-1~11-nの具体的な仕様値、及び金額13を含む。
【0014】
図4は、マッピングされた分布の一例である。
抽出された仕様値は、第1仕様項目及び第2仕様項目を基準軸とする2次元平面にマッピングされる(ステップS4)。要件が3つの仕様項目に変換される場合、抽出された仕様値は、第1仕様項目、第2仕様項目、及び第3仕様項目を基準軸とする3次元空間にマッピングされる。例えば
図4に示すように、各事例の「回転速度」の仕様値と「大きさ」の仕様値をマッピングすることで、分布(散布図)20が得られる。
【0015】
図5は、事例の抽出方法の一例を示す模式図である。
マッピングによって作成された分布から、複数の事例の一部が抽出される(ステップS5)。具体的には、複数の事例が、分布に基づいてクラスタリングされる。例えば
図5に示すように、人が、分布上で、複数の事例をクラスタリングするための分割線21及び22を設定する。又は、仕様項目もしくはその組み合わせごとに、複数の事例が予めクラスタリングされていても良い。クラスタリングには、教師無し学習による機械学習を用いることができる。例えば、k-means法が用いられる。第1仕様項目の仕様値に基づくクラスタリング結果、第2仕様項目の仕様値に基づくクラスタリング結果、又は第1仕様項目の仕様値と第2仕様項目の仕様値との組み合わせに基づくクラスタリング結果から、分割線21及び22を設定することができる。
【0016】
一例として、分割線21及び22により、分布20の各事例は、領域23-1~23-3のいずれかに分類される。領域23-1は、大きさの割に回転速度が遅い領域である。領域23-2は、大きさの割に回転速度が速い領域である。領域23-3は、領域23-1と領域23-2との中間の領域である。物品が小さく、回転速度が遅いほど、回転に伴う物品の各部の摩耗が小さくなる。このため、物品の寿命又は補修までの期間が延び、その物品は「堅牢である」といえる。要件12に応じて、複数の事例から、領域23-1に分類された事例が抽出される。ここでは、複数の事例から抽出された一部の事例を、「抽出事例」と呼ぶ。分割線の数は、適宜変更可能である。抽出される事例の数が適切であり、後述する推定モデルが適切に作成できるように、分割線の数は調整可能である。
【0017】
事例の抽出とは別に、見積対象の物品について、複数の仕様項目から選ばれる関連仕様項目が参照される。関連仕様項目は、物品と関連性を有する仕様項目である。例えば、顧客から仕様値が指定されている仕様項目が、関連仕様項目として選択される。顧客の要求を基に、物品と関連性が高いと考えられる仕様項目が、関連仕様項目として選択されても良い。
【0018】
図2に示す例では、仕様項目11-nの「容量」についての仕様値が指定されている。ここでは、見積対象の物品について、仕様値が指定されている仕様項目を「指定仕様項目」と呼ぶ。指定仕様項目は、関連仕様項目の一例である。以降では、顧客から仕様値が指定されている指定仕様項目が存在する場合について説明する。見積対象の物品については、複数の指定仕様項目が存在しうる。それらの指定仕様項目から、1つ又は2つの指定仕様項目が選定される(ステップS6)。このとき、金額への影響がより大きな指定仕様項目が選択されることが好ましい。なお、指定仕様項目が1つ又は2つしか存在しない場合、ステップS6は省略可能である。
【0019】
図6は、作成された推定モデルを例示する模式図である。
それぞれの抽出事例から、金額と、選定された指定仕様項目の仕様値と、が抽出される。そして、複数の金額と複数の仕様値との関係を示す推定モデルが作成される(ステップS7)。例えば
図6に示すように、複数の金額及び複数の仕様値(容量)がマッピングされ、分布30が作成される。推定モデルは、重回帰分析により作成される近似式31である。図示した例では、近似式31は、容量と金額の関係を示す一次式である。近似式31は、2次以上の多次式であっても良い。推定モデルのベースとなる式が、予め用意されていても良い。
【0020】
又は、推定モデルは、機械学習により作成されても良い。機械学習には、stochastic gradient descent(SGD)、LASSO、ElasticNet、Ridge、ガウシアンカーネルを用いたSupport Vector Regression(SVR)、Liner SVR、Ensembleなどの回帰手法を用いることができる。
【0021】
以上のステップによって作成された推定モデルには、物品の指定仕様項目の仕様値が入力される。作成された推定モデルに入力することで、見積金額が算出される(ステップS8)。例えば
図6に示すように、物品の指定仕様項目の仕様値sp1と近似式31から、金額pr1が算出される。
【0022】
算出された見積金額が妥当か確認される(ステップS9)。例えば、妥当であることが確認できた見積金額は、顧客に提示される。見積金額が妥当でない場合、別の条件で、作成方法が再度実行されても良い。例えば、ステップS5が再度実行される。新たに実行されるステップS5で抽出される事例の少なくとも一部は、それまでのステップS5で抽出された事例の少なくとも一部と異なる。又は、ステップS2において、要件が、別の仕様項目に変換されても良い。「別の仕様項目」は、それまでに実行されたステップS2において変換された仕様項目とは異なる。
【0023】
図7は、マッピングされた分布の別の一例である。
図8は、事例の抽出方法の別の一例を示す模式図である。
実施形態に係る作成方法の別の一例を説明する。例えば、要件として、「発電のコストパフォーマンスが良い」ことが指定される。「コストパフォーマンスが良い」は、「所望の出力帯で効率が良い」と言い換えることができる。このため、ステップS2において、要件は、仕様項目11-2の「出力」と、仕様項目11-3の「効率」と、の2つの仕様項目に変換される。
図7に示すように、「出力」と「効率」を基準軸として用いて各事例の仕様値がマッピングされ、分布40が作成される。
図8に示すように、分布40に対して、分割線41及び42が設定される。各事例は、領域43-1~43-3のいずれかに分類される。
【0024】
発電の効率は、出力帯に依存する。
図8に示す例において、領域43-1は、出力に対して発電の効率が低い領域である。領域43-2は、出力に対して発電の効率が高い領域である。領域43-3は、領域43-1と領域43-2との中間の領域である。出力に対して発電の効率が高いほど、「コストパフォーマンスが良い」といえる。指定された要件に応じて、複数の事例から、領域43-2に分類された事例が抽出される。
【0025】
図4及び
図7に示したように、「仕様項目」は、物品の規格、性能、機能などの詳細である。その他、物品の金額が「仕様項目」として用いられても良い。この場合、金額の具体的な値が、「仕様値」として用いられる。例えば、要件として「割安であること」が指定された場合、「金額」と、金額以外の仕様項目と、を基準軸とする2次元平面又は空間に、複数の事例の仕様値がマッピングされる。マッピングによって作成された分布から、複数の事例の一部が抽出される。
【0026】
以降は、上述した例と同様に、金額及び指定仕様項目の仕様値が抽出事例から抽出され、推定モデルが作成される。作成された推定モデルを用いて、見積金額が算出される。
【0027】
(実施形態の利点)
従来、以下の手法が存在する。まず、過去の実例における仕様値と金額から、重回帰、線形近似などを用いて、仕様値と金額との関係を示す近似関数が作成される。次に、見積対象の物品の仕様値を、作成された近似関数に入力することで、金額が算出される。この手法によれば、見積のための設計を行う必要がなく、近似関数を用いることで、短期間で金額を見積もることができる。
【0028】
一方、個別受注生産されるインデント製品については、設置される自然環境、求められる耐用年数など、様々なコンセプトから製品が設計される。このため、単に過去の実例を集めても、母集団が持つ分布が広範囲に亘り、所望の精度を有する推定モデルを作成することが難しい。また、顧客からの要求が曖昧な場合もあり、見積対象の物品について、仕様項目の確認又は設計に時間を要していた。
【0029】
これらの課題について、実施形態に係る作成方法では、まず、見積対象の物品への曖昧な要件が、第1仕様項目及び第2仕様項目に変換される。要件が特定の仕様項目に変換されることで、要件を考慮した金額の見積もりが可能となる。なお、「曖昧」とは、物品の仕様又は特性に対して、数値以外の文字列が指定されることを指す。曖昧な要件の例として、言語データ(特に形容詞)で仕様が記述される場合が挙げられる。「過去のものよりも特定の仕様が優れていること」なども、曖昧な要件の一例である。
【0030】
次に、複数の事例における第1仕様項目の仕様値と、第2仕様項目の仕様値と、の分布が作成される。そして、その分布に基づいて、複数の事例から、一部の事例が抽出される。変換された仕様項目についての分布を用いることで、要件と関連性の高い案件を抽出することができる。また、母集団の分布が広がりすぎることを抑制できる。
【0031】
続いて、見積対象の物品に対して指定された仕様項目が参照される。抽出事例における金額と指定仕様項目の仕様値とが参照され、それらの関係を示す推定モデルが作成される。抽出事例のデータのみを用い、母集団の分布の広がりを抑制することで、より精度の良い推定モデルが作成される。
【0032】
作成された推定モデルは、見積対象の物品における指定仕様項目の仕様値の入力に応じて、より精度の高い見積金額を算出可能である。
【0033】
以上で説明した実施形態に係る作成方法によれば、曖昧な要件が仕様項目に変換され、且つ指定仕様項目の仕様値を用いて見積金額が算出されるため、見積対象の物品について、未確定の仕様値を設計する必要が無い。また、要件が変換された仕様項目を用いて複数の事例から一部の事例が抽出されるため、推定モデルによって算出される金額の精度も高めることができる。実施形態によれば、より精度良く見積金額を算出可能な推定モデルを作成できる。
【0034】
実施形態に係る算出方法が備える各ステップは、人によって実行されても良いし、電子計算装置(コンピュータ)によって実行されても良い。複数のステップの一部が人によって実行され、複数のステップの他の部分がコンピュータによって実行されても良い。
【0035】
(計算システム)
図9は、実施形態に係る計算システムを示す模式図である。
上述した算出方法には、例えば
図9に示す計算システム100を用いることができる。計算システム100は、処理装置110、記憶装置120、入力装置130、及び出力装置140を備える。
【0036】
処理装置110は、取得部111、変換部112、抽出部113、選定部114、モデル作成部115、算出部116、確認部117、及び出力部118としての機能を備える。記憶装置120は、作成方法に必要なデータ、作成方法によって得られたデータなどを記憶する。入力装置130は、ユーザが処理装置110にデータを入力するために使用される。出力装置140は、処理装置110から送信されたデータを、ユーザが認識できるように出力する。
【0037】
取得部111は、算出方法M1のステップS1を実行する。例えば、取得部111は、記憶装置120に保存された見積仕様データ121を取得する。見積仕様データ121は、入力装置130を用いてユーザによって入力されても良い。取得部111は、ユーザによって入力された見積仕様データ121を受け付ける。
【0038】
変換部112は、ステップS2を実行する。変換部112により、見積仕様データ121に含まれる要件が、仕様項目に変換される。例えば、ルールデータベース(DB)122が予め用意され、記憶装置120に保存される。ルールデータベース122には、要件に含まれうる文字列と、仕様項目と、の対応が規定されている。変換部112は、ルールデータベース122を参照することで、見積仕様データ121の要件を仕様項目に変換する。変換部112の代わりに、人が要件を仕様項目に変換しても良い。
【0039】
抽出部113は、ステップS3~S5を実行する。具体的には、抽出部113は、記憶装置120に保存された事例データベース123から、変換された仕様項目の仕様値を抽出する。事例データベース123は、過去に生産又は補修された類似物品に関する実例のデータを含む。事例データベース123は、実例に基づいて作成された仮想事例のデータを含んでも良い。例えば、実例を基に、想定される仕様変更、その仕様変更に伴う金額の変更などを予め計算することで、仮想事例が作成される。実例の数が十分でない場合、実例に加えて仮想事例を用いることで、推定モデルの精度を向上させ、より適切な見積金額を算出することができる。抽出部113は、抽出された仕様値をマッピングし、分布を作成する。抽出部113は、分布に基づいて、一部の事例を抽出する。
【0040】
選定部114は、ステップS6を実行する。選定部114により、複数の指定仕様項目から、一部の指定仕様項目が選定される。例えば、各仕様項目に対して、予め重みが設定される。重みが大きいほど、金額への影響が大きい。選定部114は、各指定仕様項目の重みを参照し、重みが最も大きい指定仕様項目を選定する。又は、選定部114に代わって、人が指定仕様項目を選定しても良い。
【0041】
モデル作成部115は、ステップS7を実行する。モデル作成部115により、抽出事例の金額と仕様値を用いて、推定モデル124が作成される。作成された推定モデル124は、記憶装置120に保存される。算出部116は、ステップS8を実行する。算出部116により、推定モデル124を用いて、見積金額が算出される。
【0042】
確認部117は、ステップS9を実行する。出力部118により、算出された見積金額が妥当か確認される。例えば、確認部117は、見積金額が抽出事例の金額の最小値と最大値との間である場合、見積金額が妥当と判断する。
【0043】
出力部118は、算出された見積金額を出力する。例えば、出力装置140がモニタである場合、出力部118は、モニタに見積金額を表示させる。確認部117に代わって、人が、出力装置140に表示された見積金額を妥当か確認しても良い。出力部118は、見積金額をサーバなどのデータシートに保存しても良い。
【0044】
(ユーザインターフェース)
図10及び
図11は、ユーザインターフェースを例示する模式図である。
処理装置110は、見積仕様データを入力するためのユーザインターフェース(UI)を出力装置140に表示しても良い。処理装置110は、例えば
図10に示すUI200を出力装置140に表示する。UI200には、仕様項目210及び入力欄220が表示される。仕様項目210のカラムの各セルには、見積対象の物品に関する仕様項目211~217が記載されている。入力欄220では、仕様項目211~217のそれぞれについて、データが入力される。
【0045】
ユーザは、入力装置130を用いて、ポインタ230などを操作しながら入力欄220にデータを入力する。
図10に示すように、仕様値が入力されうるセルに、プルダウンメニュー240が表示されても良い。例えば、プルダウンメニュー240にポインタ230を重ね、プルダウンメニュー240をクリックすることで、
図11に示すように、入力能なデータの一覧が表示される。ユーザは、一覧から入力するデータを選択できる。
【0046】
図11に示す例において、「数値入力」のデータ241が選択された場合、ユーザは、その仕様項目の具体的な仕様値を入力する。データ242~244が選択された場合、仕様項目211~213の1つ以上によって特定される過去の事例が参照される。その過去の事例の仕様値と比べて選択された条件を満たすことが、要件として設定される。仕様項目214~217の2つ以上に、データ242~244のいずれかが入力された場合は、過去の事例の仕様値と比べて、選択された複数の条件を満たすことが、要件として設定される。要件は、仕様項目211~217のいずれかに入力される他、仕様項目218のセルに入力されても良い。例えば、
図2に示す例については、仕様項目217のセルに「長い」、仕様項目218のセルに、「堅牢であること」などが入力される。
図7に示す例については、仕様項目216のセルに「高い」、仕様項目218のセルに、「発電のコストパフォーマンスが良いこと」などが入力される。
【0047】
入力欄220への入力が完了すると、ユーザは、アイコン250をクリックする。アイコン250のクリックに応じて、処理装置110は、入力されたデータを見積仕様データ121として保存する。アイコン250のクリックに応じて、実施形態に係る算出方法が、計算システム100によって自動的に実行されても良い。
【0048】
図10及び
図11に示すように、ユーザは、UI200を通して、具体的な仕様値が指定されている仕様項目については、その仕様値を入力できる。顧客から曖昧な要求を受けている場合には、ユーザは、その要件に対応した仕様値の条件又は文字列を入力できる。UI200を用いることで、ユーザは、見積対象の物品に関する見積仕様データを、効率的に作成できる。
【0049】
(信頼度)
各事例には、信頼度が付与されても良い。信頼度は、各事例の信憑性を示すデータである。例えば、信頼度が大きいほど、その事例が推定モデルの作成に有用であることを示す。信頼度は、過去に物品が生産又は補修されたときの見積金額と、実際の金額と、の誤差に応じて設定される。誤差が小さいほど、信頼度が高く設定される。信頼度は、過去の事例の利益率、製造期間などに基づいて設定されても良い。信頼度は、前記誤差、利益率、及び製造期間から選択される2つ以上に基づいて設定されても良い。見積金額の算出には適さない特殊な事例に対して、信頼度が小さく設定されても良い。
【0050】
付与された信頼度は、推定モデルの作成時に利用される。例えば、信頼度に対して、閾値が設定される。信頼度及び閾値を用いて、複数の抽出事例から、さらに一部の事例が抽出されても良い。
【0051】
図12は、信頼度を用いた推定モデルの作成方法を例示する模式図である。
図12は、複数の抽出事例について、指定仕様項目の仕様値と金額との分布50を示す。一例として、
図12における事例51a及び事例51bには、低い信頼度が設定されている。事例51a及び事例51bは、推定モデルの作成時に除外される。事例51a及び事例51b以外の他の事例に基づいて、推定モデル(近似式)52が作成される。
【0052】
信頼度を用いることで、見積金額をより精度良く算出可能な推定モデルを作成できる。
【0053】
信頼度に基づいて各データを重みづけし、重みを反映した機械学習のモデリングにより、推定モデルが作成されても良い。
【0054】
図13は、信頼度を用いた機械学習による推定モデルの作成方法を示す模式図である。
例えば
図13に示すように、推定モデルは、ニューラルネットワーク310を含む。ニューラルネットワーク310は、入力層311、中間層312、及び出力層313を含む。
【0055】
推定モデルの学習には、学習データ320が用いられる。学習データ320は、複数の事例321a~321n、各事例に対するラベル322a~322n、各事例に関する信頼度323a~323nを含む。事例321a~321nのそれぞれは、複数の仕様値を含む。ラベル322a~322nは、それぞれ、事例321a~321nに対する見積金額である。信頼度323a~323nは、それぞれ、事例321a~321nの信憑性を示すデータである。信頼度323a~323nは、それぞれの事例において、見積金額と実際の金額との差分に応じて設定されている。差分が小さいほど、その事例の信憑性が高いことを示す。
【0056】
推定モデルの学習では、学習データ320を用いた深層学習が実行される。ニューラルネットワーク310は、学習データ320を用いて、仕様値の入力に応じて見積金額を推定するように学習される。学習精度を示す評価値には、推定された見積金額とラベルの金額との差分が用いられる。差分が小さく、評価値が小さいほど、ニューラルネットワーク310が精度良く学習できていることを示す。学習では、評価値がより小さくなるように、ニューラルネットワーク310が学習される。また、信頼度323a~323nは、学習時の各事例に対する重みとして用いられる。信頼度323a~323nが大きいほど、その事例に基づいて、ニューラルネットワーク310がより強く学習される。
【0057】
図14は、推定モデルへの入力データ及び推定モデルからの出力データを示す模式図である。
学習されたニューラルネットワーク310には、
図14に示すように、見積対象の物品の仕様315が入力される。ニューラルネットワーク310は、複数の仕様値の入力に応じて、出力データ330を出力する。出力データ330は、推定金額(見積金額)331及び評価値332を含む。評価値332は、推定金額331の確からしさを示す自己評価値である。
【0058】
(変形例)
以上では、見積対象の物品に対して、曖昧な要件が存在する具体例について説明した。曖昧な要件が存在しない場合には、要件の変換などのステップが省略されても良い。
【0059】
図15は、実施形態の変形例に係る作成方法を備えた見積金額の算出方法を示すフローチャートである。
図15に示すように、変形例に係る算出方法M2は、ステップS11~S16をさらに含む。算出方法M2は、算出方法M1と比べて、曖昧な要件が存在しない場合の処理と、確信度が用いられる場合の処理と、をさらに含む。
【0060】
まず、確信度に対する閾値が設定される(ステップS11)。その後、見積仕様データが取得される(ステップS1)。見積仕様データの取得後、仕様に曖昧な要件が存在するか判断される(ステップS12)。曖昧な要件が存在する場合、算出方法M1と同様に、ステップS2以降が実行される。
【0061】
曖昧な要件が存在しない場合、クラス分類マスタで定義された仕様項目、又は仕様項目の組み合わせが参照される(ステップS13)。曖昧な要件が存在しない場合とは、金額への影響の比較的な大きな仕様値が全て指定されている場合を指す。クラス分類マスタは、仕様項目又はその組み合わせごとに、各事例の仕様値がクラスタリングされた結果を示す。クラスタリングには、前述した機械学習を用いることができる。仕様項目又はその組み合わせごとのクラス分類が、クラス分類マスタとして予め保存される。
【0062】
見積仕様データから、クラス分類マスタで定義された仕様項目又はその組み合わせに関する仕様値が抽出される(ステップS14)。クラス分類マスタで定義された仕様項目又はその組み合わせから、確信度が閾値を超えるクラスが抽出される(ステップS15)。
【0063】
ステップS15で抽出されたクラスから、抽出された仕様値が該当するクラスが検索される(ステップS16)。該当するクラスが複数存在する場合、最も確信度の高いクラスが選定されても良い。分類後、ステップS5において、複数の事例から、そのクラスに分類される事例が抽出される。事例の抽出後、算出方法M1と同様に、ステップS6以降が実行される。
【0064】
図16は、実施形態の変形例に係る計算システムの構成を示す模式図である。
変形例に係る計算システム100aにおいて、処理装置110aは、分類部119としての機能をさらに備える。分類部119は、事例データベース123に登録された各事例の仕様値を、仕様項目又はその組み合わせごとにクラスタリングする。分類部119は、その結果をクラス分類マスタ125として、記憶装置120aに保存する。
【0065】
図17は、見積仕様データの別の一例である。
図17に示す見積仕様データ60では、複数の仕様項目61-1~61-nのそれぞれに、具体的な仕様値が指定されている。見積仕様データ60は、曖昧な要件を含まず、明確である。
【0066】
図18は、クラス分類マスタの一例である。
図18に示すクラス分類マスタ70は、クラスID71、値域72、クラス名73、及び確信度74を含む。クラスID71は、各クラスを識別するための文字列である。値域72は、クラスごとの仕様値の範囲を示す。クラス名73は、各クラスの名称である。確信度74は、クラスごとに付与された確信度を示す。
図18に示す例では、「仕様項目n」は、3つのクラス70-1~70-3に分類されている。また、「仕様項目n」と「仕様項目n+1」との組み合わせが、3つのクラス70-4~70-6に分類されている。
【0067】
一例として、ステップS11で、確信度に対する閾値が「0.5」に設定された場合、クラス分類マスタ70から、「0.8」の確信度を有するクラス70-1~70-3が抽出される。
図17に示す見積仕様データ60において、仕様項目nに対して、「70」の仕様値が指定されている。クラス70-1~70-3から、「70」の仕様値が該当する「項目n_1」が抽出される。その後、複数の事例から、「項目n_1」に分類される事例が抽出される。
【0068】
曖昧な要件が存在しない場合には、予め定義されたクラス分類を用いて事例が抽出されることで、算出される見積金額の精度を向上できる。また、要件を仕様項目に変換する手間を省略できる。
【0069】
以上では、物件が物品である例について説明した。上述した実施形態に係る発明は、物件が、発電プラントやビルといった建物又は土地などの不動産である場合にも適用可能である。例えば、見積対象の物件への要件を複数の仕様項目に変換し、それらの仕様項目の仕様値に基づいて、複数の事例の一部が抽出される。抽出された事例を用いて、物件に関連する関連仕様項目の仕様値と金額との関係を示す推定モデルが作成される。この推定モデルによれば、物件の見積金額をより精度よく推定可能である。
【0070】
図19は、ハードウェア構成を表す模式図である。
処理装置110として、例えば
図19に示すコンピュータ90が用いられる。コンピュータ90は、CPU91、ROM92、RAM93、記憶装置94、入力インタフェース95、出力インタフェース96、及び通信インタフェース97を含む。
【0071】
ROM92は、コンピュータ90の動作を制御するプログラムを格納している。ROM92には、上述した各処理をコンピュータ90に実現させるために必要なプログラムが格納されている。RAM93は、ROM92に格納されたプログラムが展開される記憶領域として機能する。
【0072】
CPU91は、処理回路を含む。CPU91は、RAM93をワークメモリとして、ROM92又は記憶装置94の少なくともいずれかに記憶されたプログラムを実行する。プログラムの実行中、CPU91は、システムバス98を介して各構成を制御し、種々の処理を実行する。
【0073】
記憶装置94は、プログラムの実行に必要なデータや、プログラムの実行によって得られたデータを記憶する。
【0074】
入力インタフェース(I/F)95は、コンピュータ90と入力装置95aとを接続可能である。入力I/F95は、例えば、USB等のシリアルバスインタフェースである。CPU91は、入力I/F95を介して、入力装置95aから各種データを読み込むことができる。
【0075】
出力インタフェース(I/F)96は、コンピュータ90と出力装置96aとを接続可能である。出力I/F96は、例えば、Digital Visual Interface(DVI)やHigh-Definition Multimedia Interface(HPMI(登録商標))等の映像出力インタフェースである。CPU91は、出力I/F96を介して、出力装置96aにデータを送信し、出力装置96aに画像を表示させることができる。
【0076】
通信インタフェース(I/F)97は、コンピュータ90外部のサーバ97aと、コンピュータ90と、を接続可能である。通信I/F97は、例えば、LANカード等のネットワークカードである。CPU91は、通信I/F97を介して、サーバ97aから各種データを読み込むことができる。
【0077】
記憶装置94は、Hard Disk Drive(HDD)及びSolid State Drive(SSD)から選択される1つ以上を含む。入力装置95aは、マウス、キーボード、マイク(音声入力)、及びタッチパッドから選択される1つ以上を含む。出力装置96aは、モニタ、プロジェクタ、プリンタ、及びスピーカから選択される1つ以上を含む。タッチパネルのように、入力装置95aと出力装置96aの両方の機能を備えた機器が用いられても良い。
【0078】
処理装置110が実行する各処理は、1つのコンピュータ90によって実現されても良いし、複数のコンピュータ90の協働によって実現されても良い。記憶装置94は、記憶装置120又は120aとして用いられても良い。入力装置95a及び出力装置96aは、それぞれ、入力装置130及び出力装置140として用いられても良い。
【0079】
上記の種々のデータの処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク及びハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又は、他の非一時的なコンピュータで読取可能な記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)に記録されても良い。
【0080】
例えば、記録媒体に記録された情報は、コンピュータ(または組み込みシステム)により読み出されることが可能である。記録媒体において、記録形式(記憶形式)は任意である。例えば、コンピュータは、記録媒体からプログラムを読み出し、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させる。コンピュータにおいて、プログラムの取得(または読み出し)は、ネットワークを通じて行われても良い。
【0081】
実施形態に係る発明は、以下の技術案を含みうる。
(案1)
見積対象の物件への要件を、第1仕様項目及び第2仕様項目に変換するステップと、
前記物件と関係する複数の事例における前記第1仕様項目の仕様値及び前記第2仕様項目の仕様値の分布に基づいて、一部の前記事例を抽出するステップと、
前記物件と関連性を有する関連仕様項目を参照し、前記一部の事例における金額と前記関連仕様項目の仕様値との関係を示す推定モデルを作成するステップと、
を備えた作成方法。
(案2)
前記抽出するステップにおいて、
前記第1仕様項目及び前記第2仕様項目のそれぞれを基準軸として、前記複数の事例における前記第1仕様項目の仕様値及び前記第2仕様項目の仕様値をマッピングして前記分布を作成し、
前記分布において、前記複数の事例を分類するための分割線を設定し、
前記分割線によって分類された前記一部の事例を抽出する、
案1記載の作成方法。
(案3)
前記分割線は、前記複数の事例の前記第1仕様に基づくクラスタ分類結果と、前記複数の事例の前記第2仕様に基づくクラスタ分類結果と、を用いて設定される、案2記載の作成方法。
(案4)
前記変換するステップにおいて、前記要件を、前記複数の事例に対して共通に設定された3つ以上の仕様から選択される前記第1仕様及び前記第2仕様に変換する案1~3のいずれか1つに記載の作成方法。
(案5)
前記変換するステップにおいて、前記要件を、前記複数の事例に対して共通に設定された4つ以上の仕様項目から選択される前記第1仕様項目、前記第2仕様項目、及び第3仕様項目に変換し、
前記抽出するステップにおいて、前記第1仕様項目、前記第2仕様項目、及び前記第3仕様項目の分布に基づいて、前記一部の事例を抽出する、案1~3のいずれか1つに記載の作成方法。
(案6)
前記作成するステップにおいて、前記一部の事例における金額と、複数の前記関連仕様項目の仕様値と、の関係を示す前記推定モデルを作成する、案1~5のいずれか1つに記載の作成方法。
(案7)
前記物件は、個別受注生産品、前記個別受注生産品に含まれるユニット、モジュール、又は部品である、案1~6のいずれか1つに記載の作成方法。
(案8)
前記第1仕様項目又は前記第2仕様項目として、前記複数の事例における金額を用いる、案2記載の作成方法。
(案9)
前記複数の事例には、それぞれ複数の確信度が付与され、
前記抽出するステップにおいて、前記分布に加えて、前記複数の確信度を用いて前記一部の事例を抽出する、案1~8のいずれか1つに記載の作成方法。
(案10)
前記複数の事例は、
前記物件と類似し且つ過去に生産された類似物件についての実例と、
前記実例に基づいて作成された仮想事例と、
を含む、案1~9のいずれか1つに記載の作成方法。
(案11)
前記物件に対する前記要件が存在しない場合には、前記変換するステップを省略し、前記複数の事例における前記関連仕様項目の分布に基づいて前記一部の事例を抽出する、案1~10のいずれか1つに記載の作成方法。
(案12)
案1~11のいずれか1つに記載の作成方法と、
前記推定モデルに、前記物件における前記関連仕様項目の仕様値を入力することで、前記物件の見積金額を算出するステップと、
を備えた算出方法。
(案13)
案1~11のいずれか1つに記載の作成方法を実行する処理装置。
(案14)
案1~11のいずれか1つに記載の作成方法をコンピュータに実行させるプログラム。
(案15)
案14記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【0082】
以上で説明した実施形態によれば、より精度良く見積金額を算出可能なモデルを作成できる、作成方法、算出方法、処理装置、プログラム、及び記憶媒体が提供される。
【0083】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
10A:見積仕様データ、 10B:事例データ、 11:仕様項目、 12:要件、 20:分布、 21,22:分割線、 23-1~23-3:領域、 30:分布、 31:近似式、 40:分布、 41,42:分割線、 43-1~43-3:領域、 50:分布、 51a,51b:事例、 52:推定モデル、 60:見積仕様データ、 61:仕様項目、 70:クラス分類マスタ、 71:クラスID、 72:値域、 73:クラス名、 74:確信度、 90:コンピュータ、 91:CPU、 92:ROM、 93:RAM、 94:記憶装置、 95:入力インタフェース、 95a:入力装置、 96:出力インタフェース、 96a:出力装置、 97:通信インタフェース、 97a:サーバ、 98:システムバス、 100,100a:計算システム、 110,100a:処理装置、 111:取得部、 112:変換部、 113:抽出部、 114:選定部、 115:モデル作成部、 116:算出部、 117:確認部、 118:出力部、 119:分類部、 120,120a:記憶装置、 121:見積仕様データ、 122:ルールデータベース、 123:事例データベース、 124:推定モデル、 125:クラス分類マスタ、 130:入力装置、 140:出力装置、 210~218:仕様項目、 220:入力欄、 230:ポインタ、 240:プルダウンメニュー、 241~244:データ、 250:アイコン、 310:ニューラルネットワーク、 311:入力層、 312:中間層、 313:出力層、 315:仕様、 320:学習データ、 330:出力データ、 331:推定金額、 332:評価値、 M1,M2:算出方法