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特開2024-101872接着ペースト、および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101872
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】接着ペースト、および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/04 20060101AFI20240723BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240723BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C09J183/04
C09J11/06
H01L21/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006045
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 迪
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 学
【テーマコード(参考)】
4J040
5F047
【Fターム(参考)】
4J040EK051
4J040HA306
4J040HB30
4J040HD18
4J040HD32
4J040HD43
4J040JA02
4J040JB02
4J040KA03
4J040KA14
4J040KA23
4J040LA01
4J040LA03
4J040LA05
4J040LA11
4J040MA02
4J040MA04
4J040NA20
5F047BA23
5F047BA33
5F047BB11
5F047BB16
5F047BB18
(57)【要約】
【課題】 比較的低温短時間の加熱による硬化性に優れ、かつ接着ペーストを使用して作製されたパッケージのパッケージ信頼性に優れ、および、長時間静置された前後いずれであっても、接着ペーストの塗布工程において作業性に優れる接着ペーストを提供する。
【解決手段】 硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有する接着ペーストであって、前記接着ペーストを100℃にて2時間熱硬化して得られる硬化物は、銀メッキ銅板に対して25℃で10N/1mm□以上である接着強度を有し、30℃で5日間維持する熱処理後の前記接着ペーストは、65Pa・s未満の熱処理後の粘度を有し、かつ前記熱処理前の前記接着ペーストは、65Pa・s未満の熱処理前の粘度を有する、接着ペースト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有する接着ペーストであって、
前記接着ペーストを100℃にて2時間熱硬化して得られる硬化物は、銀メッキ銅板に対して25℃で10N/1mm□以上である接着強度を有し、
30℃で5日間維持する熱処理後の前記接着ペーストは、65Pa・s未満の熱処理後の粘度を有し、かつ
前記熱処理前の前記接着ペーストは、65Pa・s未満の熱処理前の粘度を有する、接着ペースト。
【請求項2】
前記硬化性オルガノポリシロキサン化合物が、ポリシルセスキオキサン化合物である、請求項1に記載の接着ペースト。
【請求項3】
前記熱処理後の前記粘度、および前記熱処理前の前記粘度から、下記式により算出される粘度の変化率が50%未満である、請求項1に記載の接着ペースト。
粘度の変化率[%]={(熱処理後の粘度)―(熱処理前の粘度)}/(熱処理前の粘度)×100
【請求項4】
前記接着ペーストは、熱酸発生剤を含有する、請求項1に記載の接着ペースト。
【請求項5】
前記熱酸発生剤は、2種類以上の熱酸発生剤を含む、請求項4に記載の接着ペースト。
【請求項6】
請求項1に記載の接着ペーストを半導体素子および基板の少なくとも一方に塗布することと、
前記接着ペーストを熱硬化させることと、
を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着ペースト、および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性組成物は、用途に応じて様々な改良がなされ、光学部品や成形体の原料、接着剤、コーティング剤等として広く利用されている。また、硬化性組成物は、半導体素子を固定する接着剤等の固定材(以下、「接着ペースト」ということがある)として利用されている。
【0003】
半導体素子には、レーザ、発光ダイオード(LED)等の発光素子や太陽電池等の受光素子等の光半導体素子、トランジスタ、温度センサや圧力センサ等のセンサ、集積回路等がある。このような半導体素子が接着ペーストで基板等に固定される際、接着ペーストは加熱されて硬化させられるが、その際に硬化性が高い接着ペーストを用いることができる。しかし、硬化性が高い接着ペーストは、室温または室温より僅かに高い製造装置内温度に長時間置かれている間に、硬化反応が意図せず進行することがあり、その接着ペーストの塗布工程において作業性が低下することがあった。
【0004】
そこで、硬化性が低い接着ペーストを用いることが検討される。硬化性が低い接着ペーストの硬化の程度は、硬化の際の加熱時間を長くしたり、加熱温度を高くしたりすることで、向上させることができる。しかし、その加熱により、半導体素子の劣化や、その周囲の部材の劣化を引き起こすおそれがあった。そのため、接着ペーストが室温または室温より僅かに高い製造装置内温度で長時間静置された前後いずれにおいても、その接着ペーストの塗布工程において作業性を十分としつつ、硬化をするための加熱は比較的低温短時間(例えば、100℃にて2時間)として、その接着ペーストを半導体素子と基板とを貼り付けるために使用して、加熱硬化することを経てパッケージを作製した時に、パッケージ信頼性が十分とすることを望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/193452号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、光半導体素子固定材として利用可能で、比較的低温短時間の加熱による硬化性および25℃で24時間の貯蔵安定性を有する硬化性組成物を開示している。しかし、上述のように、接着ペーストは、室温または室温より僅かに高い製造装置内温度で長時間(例えば5日間)静置された後にも使用されることがあり、接着ペーストが長時間静置された前後いずれにおいても、その接着ペーストの塗布工程において優れた作業性を提供できる接着ペーストが望まれていた。
【0007】
本発明の目的は、比較的低温短時間の加熱による硬化性に優れ、かつ接着ペーストを使用して作製されたパッケージのパッケージ信頼性に優れ、および、長時間静置された前後いずれであっても、接着ペーストの塗布工程において作業性に優れる接着ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有する接着ペーストであって、
前記接着ペーストを100℃にて2時間熱硬化して得られる硬化物は、銀メッキ銅板に対して25℃で10N/1mm□以上である接着強度を有し、
30℃で5日間維持する熱処理後の前記接着ペーストは、65Pa・s未満の熱処理後の粘度を有し、かつ
前記熱処理前の前記接着ペーストは、65Pa・s未満の熱処理前の粘度を有する、接着ペースト、が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、比較的低温短時間の加熱による硬化性に優れ、かつ接着ペーストを使用して作製されたパッケージのパッケージ信頼性に優れ、および、長時間静置された前後いずれであっても、接着ペーストの塗布工程において作業性に優れる接着ペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。
【0011】
<本実施形態に係る接着ペースト>
本実施形態に係る接着ペーストは、硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有するものである。また、接着ペーストは、その接着ペーストを100℃にて2時間熱硬化して得られる硬化物が、銀メッキ銅板に対して25℃で10N/1mm□以上である接着強度を有するものである。このように、本実施形態に係る接着ペーストは、半導体素子の劣化や、その周囲の部材の劣化を引き起こすおそれのある長い時間、高い温度での加熱をせずに硬化して、優れた接着性を提供できるものである。言い換えれば、接着ペーストは、優れた低温硬化・接着性を提供できるものである。そして、本実施形態に係る接着ペーストから低温硬化で得られた硬化物によって固定された半導体素子を含むパッケージが、パッケージの中で半導体素子から発生する熱、またはパッケージの使用環境が屋外(車載を含む)であれば高温環境下および低温環境下に繰り返しさらされたとしても、パッケージ信頼性(熱サイクル試験の性能)が良好である。
【0012】
さらに、接着ペーストは、30℃で5日間維持する熱処理を受けた後に、65Pa・s未満の熱処理後の粘度を有するものである。この接着ペーストは、長時間静置された後においても、接着ペーストの塗布工程において作業性に優れる。つまり、本実施形態に係る接着ペーストは、優れた低温硬化・接着性と長時間静置安定性を併せ持つものである。
【0013】
本発明において、「接着ペースト」とは、「室温において、粘稠な液体であって、流動性を有する状態のもの」をいう。ここで、室温は23℃をいう。接着ペーストは、この状態の性質を有しているため、塗布工程における作業性に優れる。ここで、「塗布工程における作業性に優れる」とは、「塗布工程において、接着ペーストを吐出管から吐出し、次いで吐出管を引き上げる際、糸引き量が少ないか、または塗布後に液滴が過剰に広がることにより、周囲を汚染したりすることがないこと」をいう。
【0014】
(接着強度)
一実施形態に係る接着ペーストは、それを100℃にて2時間熱硬化して得られる硬化物が、銀メッキ銅板に対して25℃で10N/1mm□以上である接着強度を有するものである。
【0015】
接着強度は、一実施形態において、10N/1mm□以上、別の実施形態において、15N/1mm□以上、さらに別の実施形態において、20N/1mm□以上、さらに別の実施形態において、30N/1mm□以上とすることができる。これにより、接着ペーストの硬化物が半導体素子から発生する熱、またはパッケージの使用環境が屋外(車載を含む)であれば高温環境下および低温環境下に繰り返しさらされたとしても、その硬化物によって固定された半導体素子を含むパッケージのパッケージ信頼性(熱サイクル試験の性能)が向上し、安定して接着ペーストを使用することができる。
【0016】
一方、接着強度の上限値は、特に限定されるものでないが、一実施形態において、80N/1mm□以下、別の実施形態において、65N/1mm□以下、さらに別の実施形態において、55N/1mm□以下、さらに別の実施形態において、45N/1mm□以下とすることができる。硬化物がこのような接着強度を発揮する接着ペーストはより安定して作製しやすい。接着強度の範囲は、一実施形態において、10から80N/1mm□、別の実施形態において、15から65N/1mm□、さらに別の実施形態において、20から55N/1mm□、さらに別の実施形態において、30から45N/1mm□とすることができる。
【0017】
接着ペーストを硬化して得られる硬化物の接着強度は、例えば、次のようにして確認することができる。接着ペーストを1mm角の試験片であるシリコン板(シリコンチップ)に塗布し、塗布面を被着体である銀メッキ銅板の上に載せ圧着し、熱接着ペーストを硬化させて試験片付被着体を得る。これを、25℃のボンドテスターの測定ステージ上に放置し、接着面に対し水平方向(せん断方向)に応力をかけ、試験片と被着体との接着強度(N/1mm□)を測定することができる。また、「1mm□」とは、「1mm square」、すなわち、「1mm×1mm(一辺の長さが1mmの正方形)」を意味する。より具体的な接着強度の測定方法については、実施例において説明する。
【0018】
(粘度)
熱処理前の粘度(初期粘度)
一実施形態に係る接着ペーストは、30℃で5日間維持する熱処理を受ける前の接着ペーストは、65Pa・s未満の粘度(以下、「熱処理前の粘度」ということがある)を有するものである。
【0019】
熱処理前の粘度は、一実施形態において、65Pa・s未満、別の実施形態において、60Pa・s未満、さらに別の実施形態において、55Pa・s未満、さらに別の実施形態において、50Pa・s未満とすることができる。これにより、接着ペーストの塗布工程における作業性が向上する。
【0020】
一方、熱処理前の粘度の下限値は、特に限定されるものでないが、一実施形態において、10Pa・s以上、別の実施形態において、15Pa・s以上、さらに別の実施形態において、20Pa・s以上、さらに別の実施形態において、25Pa・s以上とすることができる。これにより、接着ペーストの塗布工程における作業性が向上する。熱処理前の粘度の範囲は、一実施形態において、10以上65Pa・s未満、別の実施形態において、15以上60Pa・s未満、さらに別の実施形態において、20以上55Pa・s未満、さらに別の実施形態において、25以上50Pa・s未満とすることができる。これにより、接着ペーストの塗布工程における作業性が向上する。
【0021】
熱処理後の粘度
一実施形態に係る接着ペーストは、30℃で5日間維持する熱処理を受けた後の接着ペーストは、65Pa・s未満の粘度(以下、「熱処理後の粘度」ということがある)を有するものである。
【0022】
熱処理後の粘度は、一実施形態において、65Pa・s未満、別の実施形態において、60Pa・s未満、さらに別の実施形態において、55Pa・s未満、さらに別の実施形態において、50Pa・s未満とすることができる。これにより、長時間静置後にも接着ペーストの塗布工程における作業性が向上する。
【0023】
一方、熱処理後の粘度の下限値は、特に限定されるものでないが、一実施形態において、10Pa・s以上、別の実施形態において、15Pa・s以上、さらに別の実施形態において、20Pa・s以上、さらに別の実施形態において、25Pa・s以上とすることができる。これにより、長時間静置後にも接着ペーストの塗布工程における作業性が向上する。熱処理後の粘度の範囲は、一実施形態において、10以上65Pa・s未満、別の実施形態において、15以上60Pa・s未満、さらに別の実施形態において、20以上55Pa・s未満、さらに別の実施形態において、25以上50Pa・s未満とすることができる。これにより、長時間静置後にも接着ペーストの塗布工程における作業性が向上する。
【0024】
熱処理前の接着ペーストの粘度は、例えば、次のようにして確認することができる。レオメーターにて、半径50mm、コーン角度0.5°のコーンプレートを用い、25℃でせん断速度が2s-1時の粘度を測定して初期粘度を得ることができる。また、熱処理後の接着ペーストの粘度は、接着ペーストを30℃で5日間維持した後、上記と同様の条件で粘度を測定して得ることができる。
【0025】
粘度の変化率[%]
本実施形態に係る接着ペーストは、粘度の変化率[%]が50%未満となるものとすることができる。粘度の変化率[%]は、熱処理後の粘度、および熱処理前の粘度から、下記式により算出される。
粘度の変化率[%]={(熱処理後の粘度)―(熱処理前の粘度)}/(熱処理前の粘度)×100
【0026】
粘度の変化率[%]は、一実施形態において、50%未満、別の実施形態において、40%未満、さらに別の実施形態において、30%未満とすることができ、さらに別の実施形態において、20%未満とすることができ、さらに別の実施形態において、10%未満とすることができ、一実施形態において、1%以上、別の実施形態において、2%以上、さらに別の実施形態において、3%以上、さらに別の実施形態において、4%以上、さらに別の実施形態において、5%以上とすることができる。粘度の変化率[%]の範囲は、一実施形態において、1%以上50%未満、別の実施形態において、2%以上40%未満、さらに別の実施形態において、3%以上30%未満、さらに別の実施形態において、4%以上20%未満、さらに別の実施形態において、5%以上10%未満とすることができる。これにより、長時間静置前後いずれにおいても接着ペーストの塗布工程における作業性が向上しやすい。
【0027】
(硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A))
本実施形態に係る接着ペーストは、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)(以下、「(A)成分」ということがある。)を含有する。接着ペーストは、(A)成分を含有することにより、長時間静置安定性に優れ易くなり、接着性に優れる硬化物が得られ易くなる。
【0028】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)は、分子内に、炭素-ケイ素結合とシロキサン結合(-Si-O-Si-)を有する化合物である。(A)成分は、熱硬化性の化合物であるため、加熱により、縮合反応が可能な官能基、および加水分解を経て縮合反応が可能な官能基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基を有することができる。このような官能基は、水酸基およびアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一種とすることができ、例えば、水酸基、炭素数1から10のアルコキシ基とすることができる。
【0029】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の主鎖構造に制限はなく、直鎖状、ラダー状、籠状のいずれであってもよい。例えば、直鎖状の主鎖構造としては下記式(a-1)で表される構造が、ラダー状の主鎖構造としては下記式(a-2)で表される構造が、籠状の主鎖構造としては下記式(a-3)で表される構造が、それぞれ挙げられる。
【0030】
【化1】
【0031】
【化2】
【0032】
【化3】
【0033】
式(a-1)から(a-3)中、Rx、Ry、およびRzは、それぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、有機基としては、無置換もしくは置換基を有するアルキル基、無置換もしくは置換基を有するシクロアルキル基、無置換もしくは置換基を有するアルケニル基、無置換もしくは置換基を有するアリール基、またはアルキルシリル基とすることができる。式(a-1)の複数のRx、式(a-2)の複数のRy、および式(a-3)の複数のRzは、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。ただし、前記式(a-1)のRxが2つとも水素原子であることはない。
【0034】
前記無置換もしくは置換基を有するアルキル基のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等の炭素数1から10のアルキル基が挙げられる。
【0035】
無置換もしくは置換基を有するシクロアルキル基のシクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基等の炭素数3から10のシクロアルキル基が挙げられる。
【0036】
無置換もしくは置換基を有するアルケニル基のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等の炭素数2から10のアルケニル基が挙げられる。
【0037】
前記アルキル基、シクロアルキル基およびアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、4-クロロフェニル基等の無置換もしくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0038】
無置換または置換基を有するアリール基のアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6から10のアリール基が挙げられる。
【0039】
前記アリール基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1から6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1から6のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、4-クロロフェニル基等の無置換もしくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0040】
アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリt-ブチルシリル基、メチルジエチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルシリル基、エチルシリル基等が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、Rx、Ry、およびRzは、水素原子、無置換もしくは置換基を有する炭素数1から6のアルキル基、またはフェニル基とすることができ、無置換もしくは置換基を有する炭素数1から6のアルキル基が例示される。
【0042】
また、Rx、Ry、およびRzは、フッ素原子を有する置換基であるフルオロ基とすることができる。フルオロ基としては、フルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基、フルオロアルケニル基、およびフルオロアリール基が例示される。フルオロ基は、水素原子が存在する基であっても、存在しない基であってもよい。
【0043】
Rx、Ry、およびRz(有機基)中のフルオロ基の個数割合の下限値は、一実施形態において、10%以上、別の実施形態において、20%以上、さらに別の実施形態において、30%以上、さらに別の実施形態において、40%以上とすることができる。これにより、耐クラック性、および接着性が優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなり、また屈折率が低い接着ペーストの硬化物が得られ易くなり、屈折率が低いことが要望される装置に用いられ易くなる。また、有機基中のフルオロ基の個数割合の上限値は、特に限定されるものでないが、一実施形態において、90%以下、別の実施形態において、80%以下、さらに別の実施形態において、70%以下、さらに別の実施形態において、60%以下とすることができる。これにより、より安定して硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)を作製し易く、安定した性能の接着ペーストを作製しやすい。フルオロ基の個数割合の範囲は、一実施形態において、10%以上90%以下、別の実施形態において、20%以上80%以下、さらに別の実施形態において、30%以上70%以下、さらに別の実施形態において、40%以上60%以下とすることができる。フルオロ基の個数割合の範囲が上記範囲内にある硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)を用いることにより、長時間静置安定性が優れる接着ペーストが得られ易くなり、耐クラック性、耐熱性、および接着性が優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。
【0044】
一実施形態において、有機基はフルオロ基とメチル基とすることができる。一実施形態において、個数割合で、フルオロ基を10%以上、メチル基を90%以下、別の実施形態において、フルオロ基を20%以上、メチル基を80%以下、さらに別の実施形態において、フルオロ基を30%以上、メチル基を70%以下、さらに別の実施形態において、フルオロ基を40%以上、メチル基を60%以下、さらに別の実施形態において、フルオロ基を50%、メチル基を50%とすることができる。
【0045】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)は、例えば、加水分解性官能基(アルコキシ基、ハロゲン原子等)を有するシラン化合物を重縮合する、公知の製造方法により得ることができる。
【0046】
用いるシラン化合物は、目的とする硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の構造に応じて適宜選択すればよい。例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等の2官能シラン化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルジエトキシメトキシシラン等の3官能シラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、テトラt-ブトキシシラン、テトラs-ブトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリメトキシエトキシシラン等の4官能シラン化合物;等が挙げられる。
【0047】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の質量平均分子量(Mw)は、一実施形態において、800以上、別の実施形態において、1,000以上、さらに別の実施形態において、1,200以上、さらに別の実施形態において、3,000以上とすることができ、一実施形態において、30,000以下、別の実施形態において、20,000以下、さらに別の実施形態において、15,000以下、さらに別の実施形態において、10,000以下とすることができる。また、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の質量平均分子量(Mw)の範囲は、一実施形態において、800以上30,000以下、別の実施形態において、1,000以上20,000以下、さらに別の実施形態において、1,200以上15,000以下、さらに別の実施形態において、3,000以上10,000以下とすることができる。質量平均分子量(Mw)が上記範囲内にある硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)を用いることにより、長時間静置安定性が優れる接着ペーストが得られ易くなり、耐クラック性、耐熱性、および接着性が優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。
【0048】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の分子量分布(Mw/Mn)は特に制限されないが、一実施形態において、1.0以上、別の実施形態において、1.1以上とすることができ、一実施形態において、10.0以下、別の実施形態において、6.0以下とすることができる。また、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の分子量分布(Mw/Mn)の範囲は、一実施形態において、1.0以上10.0以下、別の実施形態において、1.1以上6.0以下とすることができる。分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内にある硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)を用いることにより、長時間静置安定性が優れる接着ペーストが得られ易くなり、耐クラック性、耐熱性、および接着性により優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。
【0049】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0050】
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の含有量は特に限定されないが、その量は、接着ペーストの固形分(すなわち、有効成分)100質量部に対して、一実施形態において40質量部以上、別の実施形態において60質量部以上、さらに別の実施形態において70質量部以上とすることができ、一実施形態において98質量部未満、別の実施形態において94質量部未満、さらに別の実施形態において90質量部未満とすることができる。(A)成分の量の範囲は、接着ペーストの固形分100質量部に対して、一実施形態において40質量部以上98質量部未満、別の実施形態において60質量部以上94質量部未満、さらに別の実施形態において70質量部以上90質量部未満とすることができる。(A)成分を上記範囲で用いることにより、(A)成分を加える効果をより発現させることができる。
【0051】
ポリシルセスキオキサン化合物
一実施形態において、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)は、3官能オルガノシラン化合物を重縮合して得られる、ポリシルセスキオキサン化合物とすることができる。接着ペーストが、(A)成分として、ポリシルセスキオキサン化合物を含有することにより、長時間静置安定性に優れ易くなり、例えば100℃で加熱することにより優れた接着性を有する硬化物が得られ易くなるため、半導体素子を基板に接着後の工程(例えば、ワイヤーボンディング)で、半導体素子をより保持することができる。
【0052】
ポリシルセスキオキサン化合物は、下記式(a-4)で示される繰り返し単位を有する化合物とすることができる。接着ペーストが、(A)成分として、下記式(a-4)で示される繰り返し単位を有するポリシルセスキオキサン化合物を含有することにより、長時間静置安定性に優れ易くなり、接着性により優れる硬化物がより得られ易くなる。
【0053】
【化4】
【0054】
式(a-4)中、Rは有機基を表す。有機基は、無置換のアルキル基、置換基を有するアルキル基、無置換のシクロアルキル基、置換基を有するシクロアルキル基、無置換のアルケニル基、置換基を有するアルケニル基、無置換のアリール基、置換基を有するアリール基、および、アルキルシリル基からなる群から選ばれることができ、例えば、無置換の炭素数1から10のアルキル基、置換基を有する炭素数1から10のアルキル基、無置換の炭素数6から12のアリール基、および、置換基を有する炭素数6から12のアリール基からなる群から選ばれることができる。
【0055】
「無置換の炭素数1から10のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。Rで表される「無置換の炭素数1から10のアルキル基」の炭素数は、一実施形態において1から6、別に実施形態において1から3とすることができる。
【0056】
で表される「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」の炭素数は、一実施形態において1から6、別に実施形態において1から3とすることができる。なお、この炭素数は、置換基を除いた部分(アルキル基の部分)の炭素数を意味するものである。したがって、Rが「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」である場合、Rの炭素数は10を超える場合もあり得る。「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」のアルキル基としては、「無置換の炭素数1から10のアルキル基」として示したものと同様のものが挙げられる。
【0057】
「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;シアノ基;式:OGで表される基;等が挙げられる。「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」の置換基の原子の数(ただし水素原子の数を除く)は、一実施形態において1から30、別実施形態において1から20とすることができる。ここで、Gは水酸基の保護基を表す。水酸基の保護基としては、特に制約はなく、水酸基の保護基として知られている公知の保護基が挙げられる。例えば、アシル系;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等のシリル系;メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、1-エトキシエチル基、テトラヒドロピラン-2-イル基、テトラヒドロフラン-2-イル基等のアセタール系;t-ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル系;メチル基、エチル基、t-ブチル基、オクチル基、アリル基、トリフェニルメチル基、ベンジル基、p-メトキシベンジル基、フルオレニル基、トリチル基、ベンズヒドリル基等のエーテル系;等が挙げられる。
【0058】
「無置換の炭素数6から12のアリール基」としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。Rで表される「無置換の炭素数6から12のアリール基」の炭素数は6とすることができる。
【0059】
で表される「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」の炭素数は6とすることができる。なお、この炭素数は、置換基を除いた部分(アリール基の部分)の炭素数を意味するものである。したがって、Rが「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」である場合、Rの炭素数は12を超える場合もあり得る。「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」のアリール基としては、「無置換の炭素数6から12のアリール基」として示したものと同様のものが挙げられる。
【0060】
「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」の置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」の置換基の原子の数(ただし水素原子の数を除く)は、一実施形態において1から30、別の実施形態において1から20とすることができる。
【0061】
これらの中でも、Rは、構造の安定したポリシルセスキオキサン化合物が得られ易く、接着ペーストとしての性能がより安定する観点から、無置換の炭素数1から10のアルキル基、フッ素原子を有する炭素数1から10のアルキル基、および無置換の炭素数6から12のアリール基からなる群から選ばれる少なくとも一種とすることができる。Rが、無置換の炭素数1から10のアルキル基であるポリシルセスキオキサン化合物を用いることにより、長時間静置安定性が優れる接着ペーストが得られ易くなり、接着性に優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。
【0062】
が、フッ素原子を有する炭素数1から10のアルキル基(フルオロ基)であるポリシルセスキオキサン化合物を用いることにより、長時間静置安定性が優れる接着ペーストが得られ易くなり、接着性が向上し、屈折率が低い接着ペーストの硬化物が得られ易くなり、屈折率が低いことが要望される装置に用いられ易くなる。フッ素原子を有する炭素数1から10のアルキル基としては、組成式:C(2m-n+1)で表される基(mは1から10の整数、nは1以上、(2m+1)以下の整数である。)が挙げられる。これらの中では、3,3,3-トリフルオロプロピル基が例示される。
【0063】
また、ポリシルセスキオキサン化合物は、一種のRを有するもの(単独重合体)であってもよく、二種以上のRを有するもの(共重合体)であってもよい。
【0064】
(有機基)がフッ素原子を有する炭素数1から10のアルキル基(フルオロ基)を有する場合、R中のフルオロ基の個数割合の下限値は、一実施形態において、10%以上、別の実施形態において、20%以上、さらに別の実施形態において、30%以上、さらに別の実施形態において、40%以上とすることができる。これにより、長時間静置安定性が優れる接着ペーストが得られ易くなり、接着性が優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。また、R中のフルオロ基の個数割合の上限値は、特に限定されるものでないが、一実施形態において、90%以下、別の実施形態において、80%以下、さらに別の実施形態において、70%以下、さらに別の実施形態において、60%以下とすることができる。これにより、より安定してポリシルセスキオキサン化合物を作製し易く、安定した性能の接着ペーストを作製しやすい。フルオロ基の個数割合の範囲は、一実施形態において、10%以上90%以下、別の実施形態において、20%以上80%以下、さらに別の実施形態において、30%以上70%以下、さらに別の実施形態において、40%以上60%以下とすることができる。フルオロ基の個数割合の範囲が上記範囲内にあるポリシルセスキオキサン化合物を用いることにより、長時間静置安定性が優れる接着ペーストが得られ易くなり、耐クラック性、耐熱性、および接着性が優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。
【0065】
一実施形態において、Rはフルオロ基とメチル基とすることができる。一実施形態において、個数割合で、フルオロ基を10%以上、メチル基を90%以下、別の実施形態において、フルオロ基を20%以上、メチル基を80%以下、さらに別の実施形態において、フルオロ基を30%以上、メチル基を70%以下、さらに別の実施形態において、フルオロ基を40%以上、メチル基を60%以下、さらに別の実施形態において、フルオロ基を50%、メチル基を50%とすることができる。
【0066】
ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(すなわち、後述のTサイト)の含有割合は、全繰り返し単位に対して、一実施形態において50mol%以上、別の実施形態において70mol%以上、さらに別の実施形態において90mol%以上とすることができる。また、ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(すなわち、後述のTサイト)の含有割合の範囲は、全繰り返し単位に対して、一実施形態において、50から100mol%、別の実施形態において、70から100mol%、さらに別の実施形態において、90から100mol%とすることができる。一例として、ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(すなわち、後述のTサイト)の含有割合は100mol%とすることができる。前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)の含有割合が、上記割合であるポリシルセスキオキサン化合物を用いることで、耐光性が優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)の含有割合は、例えば、NMRピークの帰属および面積の積分が可能である場合には、29Si-NMRおよびH-NMRを測定することにより求めることができる。
【0067】
ポリシルセスキオキサン化合物は、アセトン等のケトン系溶媒;ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルスルホキシド等の含硫黄系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;クロロホルム等の含ハロゲン系溶媒;及びこれらの二種以上からなる混合溶媒;等の各種有機溶媒に可溶である。そのため、これらの溶媒を用いて、ポリシルセスキオキサン化合物の溶液状態での29Si-NMRおよびH-NMRを測定することができる。
【0068】
前記式(a-4)で示される繰り返し単位は、下記式(a-5)で示されるものとすることができる。
【0069】
【化5】
【0070】
式(a-5)で示されるように、ポリシルセスキオキサン化合物は、一般にTサイトと総称される、ケイ素原子に酸素原子が3つ結合し、それ以外の基(R)が1つ結合してなる部分構造を有する。
【0071】
式(a-5)中、Rは、前記式(a-4)におけるRと同じ意味を表す。*は、Si原子、水素原子、または炭素数1から10のアルキル基を表し、3つの*のうち少なくとも1つはSi原子である。*の炭素数1から10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。複数の*同士は、すべて同一であっても相異なっていてもよい。
【0072】
また、ポリシルセスキオキサン化合物は、熱硬化性の化合物であり、加熱により、縮合反応および/または加水分解を経て縮合反応が可能な化合物である。そのため、ポリシルセスキオキサン化合物が有する複数の繰り返し単位(Tサイト)の前記式(a-5)中の*のうち、少なくとも1つは、水素原子または炭素数1から10のアルキル基とすることができ、一例として水素原子とすることができる。
【0073】
なお、ポリシルセスキオキサン化合物が測定用の溶媒に可溶である場合には、29Si-NMRを測定することにより、前記式(a-5)中の*における水素原子または炭素数1から10のアルキル基の存在や、前記式(a-5)中の3つの*が全てSi原子である繰り返し単位であるかを確認することができる。さらに、29Si-NMRのピークの帰属および面積の積分が可能である場合には、ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)の総数に対する、前記式(a-5)中の3つの*が全てSi原子である繰り返し単位の総数を概算することができる。このポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)の総数に対する、前記式(a-5)中の3つの*が全てSi原子である繰り返し単位の総数は、安定した生産性および安定した性能の硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる観点から、一実施形態において30mol%以上、別の実施形態において40mol%以上とすることができ、一実施形態において95mol%以下、別の実施形態において90mol%以下とすることができる。ポリシルセスキオキサン化合物中の前記式(a-4)で示される繰り返し単位(Tサイト)の総数に対する、前記式(a-5)中の3つの*が全てSi原子である繰り返し単位の総数の範囲は、一実施形態において30から95mol%、別の実施形態において40から90mol%とすることができる。
【0074】
ポリシルセスキオキサン化合物が共重合体である場合、ポリシルセスキオキサン化合物は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体等のいずれであってもよいが、製造容易性等の観点から、ランダム共重合体とすることができる。また、ポリシルセスキオキサン化合物の構造は、ラダー型構造、ダブルデッカー型構造、籠型構造、部分開裂籠型構造、環状型構造、ランダム型構造のいずれの構造であってもよい。
【0075】
また、ポリシルセスキオキサン化合物は、液状のものとすることができる。液状とは、流動性を有する状態を指し、例えば室温で粘度が1000000mPa・s以下である状態をいい、室温とは23℃をいう。液状のポリシルセスキオキサン化合物は、接着ペースト中の溶媒の量を低減させることができ、接着ペースト中のポリシルセスキオキサン化合物の濃度を高くすることできる。
【0076】
ポリシルセスキオキサン化合物は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
ポリシルセスキオキサン化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、下記式(a-6)
【0078】
【化6】
【0079】
(式中、Rは、前記式(a-4)におけるRと同じ意味を表す。Rは炭素数1から10のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、pは0から3の整数を表す。複数のR、および複数のXは、それぞれ、互いに同一であっても、相異なっていてもよい。)で示されるシラン化合物(1)の少なくとも一種を重縮合させることにより、ポリシルセスキオキサン化合物を製造することができる。Rの炭素数1から10のアルキル基としては、前記式(a-5)中の*の炭素数1から10のアルキル基として示したものと同様のものが挙げられる。Xのハロゲン原子としては、塩素原子、および臭素原子等が挙げられる。
【0080】
シラン化合物(1)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン化合物類;メチルクロロジメトキシシラン、メチルクロロジエトキシシラン、メチルジクロロメトキシシラン、メチルブロモジメトキシシラン、エチルクロロジメトキシシラン、エチルクロロジエトキシシラン、エチルジクロロメトキシシラン、エチルブロモジメトキシシラン等のアルキルハロゲノアルコキシシラン化合物類;メチルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリブロモシラン等のアルキルトリハロゲノシラン化合物類;3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、2-シアノエチルトリメトキシシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン等の置換アルキルトリアルコキシシラン化合物類;3,3,3-トリフルオロプロピルクロロジメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルクロロジエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルジクロロメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルジクロロエトキシシラン、2-シアノエチルクロロジメトキシシラン、2-シアノエチルクロロジエトキシシラン、2-シアノエチルジクロロメトキシシラン、2-シアノエチルジクロロエトキシシラン等の置換アルキルハロゲノアルコキシシラン化合物類;3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロシラン、2-シアノエチルトリクロロシラン等の置換アルキルトリハロゲノシラン化合物類;フェニルトリメトキシシラン、4-メトキシフェニルトリメトキシシラン等の、置換基を有する、または置換基を有さないフェニルトリアルコキシシラン化合物類;フェニルクロロジメトキシシラン、フェニルジクロロメトキシシラン、4-メトキシフェニルクロロジメトキシシラン、4-メトキシフェニルジクロロメトキシシラン等の、置換基を有する、または置換基を有さないフェニルハロゲノアルコキシシラン化合物類;フェニルトリクロロシラン、4-メトキシフェニルトリクロロシラン等の、置換基を有する、または置換基を有さないフェニルトリハロゲノシラン化合物類;等が挙げられる。これらのシラン化合物(1)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
前記シラン化合物(1)を重縮合させる方法は特に限定されない。例えば、溶媒中、または無溶媒で、シラン化合物(1)に、所定量の重縮合触媒を添加し、所定温度で撹拌する方法が挙げられる。具体的には、(a)シラン化合物(1)に、所定量の酸触媒を添加し、所定温度で撹拌する方法、(b)シラン化合物(1)に、所定量の塩基触媒を添加し、所定温度で撹拌する方法、(c)シラン化合物(1)に、所定量の酸触媒を添加し、所定温度で撹拌した後、過剰量の塩基触媒を添加して、反応系を塩基性とし、所定温度で撹拌する方法等が挙げられる。これらの中でも、効率よく目的とするポリシルセスキオキサン化合物を得ることができることから、(a)または(c)の方法で重縮合させることができる。
【0082】
用いる重縮合触媒は、酸触媒および塩基触媒のいずれであってもよい。また、2以上の重縮合触媒を組み合わせて用いてもよく、少なくとも酸触媒を用いることができる。酸触媒としては、リン酸、塩酸、ホウ酸、硫酸、硝酸等の無機酸;クエン酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸;等が挙げられる。これらの中でも、リン酸、塩酸、ホウ酸、硫酸、クエン酸、酢酸、およびメタンスルホン酸から選ばれる少なくとも一種が用いられ得る。
【0083】
塩基触媒としては、アンモニア水;トリメチルアミン、トリエチルアミン、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、アニリン、ピコリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、イミダゾール等の有機塩基;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機塩水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド等の金属アルコキシド;水素化ナトリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩;等が挙げられる。
【0084】
重縮合触媒の使用量は、シラン化合物(1)の総mol量に対して、一実施形態において0.05mol%以上、別の実施形態において0.1mol%以上とすることができ、一実施形態において10mol%以下、別の実施形態において5mol%以下とすることができる。重縮合触媒の使用量の範囲は、シラン化合物(1)の総mol量に対して、一実施形態において0.05から10mol%、別の実施形態において0.1から5mol%とすることができる。
【0085】
重縮合時に溶媒を用いる場合、用いる溶媒は、シラン化合物(1)の種類等に応じて、適宜選択することができる。例えば、水;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類;等が挙げられる。これらの溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記(c)の方法を採用する場合、酸触媒の存在下、水系で重縮合反応を行った後、反応液に、有機溶媒と塩基触媒(アンモニア水等)を添加し、中性条件または塩基性条件下で、更に重縮合反応を行うようにしてもよい。
【0086】
溶媒の使用量は、シラン化合物(1)の総mol量1mol当たり、一実施形態において0.001リットル以上、別の実施形態において0.01リットル以上とすることができ、一実施形態において10リットル以下、別の実施形態において0.9リットル以下とすることができる。溶媒の使用量の範囲は、シラン化合物(1)の総mol量1mol当たり、一実施形態において0.001リットル以上10リットル以下、別の実施形態において0.01リットル以上0.9リットル以下とすることができる。
【0087】
シラン化合物(1)を重縮合させるときの温度は、通常0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、一実施形態において20℃以上、別の実施形態において30℃以上とすることができ、一実施形態において100℃以下、別の実施形態において95℃以下とすることができる。シラン化合物(1)を重縮合させるときの温度の範囲は、一実施形態において20℃以上100℃以下、別の実施形態において30℃以上95℃以下とすることができる。この反応温度の下限以上とすることで重縮合反応の進行が十分となる。一方、この反応温度の上限以下とすることでゲル化が抑制される。また、反応は、30分から30時間で完結する。
【0088】
なお、用いるモノマーの種類によっては、高分子量化が困難な場合がある。例えば、Rがフッ素原子を有するアルキル基であるモノマーは、Rが通常のアルキル基であるモノマーよりも反応性に劣る傾向がある。このような場合、触媒量を減らし、かつ、穏やかな条件で長時間反応を行うことにより、目的の分子量のポリシルセスキオキサン化合物が得られ易くなる。
【0089】
反応終了後は、酸触媒を用いた場合は、反応溶液に炭酸水素ナトリウム等のアルカリ水溶液を添加することにより、塩基触媒を用いた場合は、反応溶液に塩酸等の酸を添加することにより中和を行い、その際に生じる塩をろ別または水洗等により除去し、目的とするポリシルセスキオキサン化合物を得ることができる。
【0090】
上記方法により、ポリシルセスキオキサン化合物を製造する際、シラン化合物(1)のORまたはXのうち、加水分解およびその後の縮合反応等が起こらなかった部分は、ポリシルセスキオキサン化合物中に残存する。
【0091】
(A)成分が、例えば、シラン化合物(1)の重縮合反応により得られたポリシルセスキオキサン化合物である場合、後述のシランカップリング剤との反応を含め、硬化は縮合反応で進行するため、本実施形態の接着ペーストは、白金触媒等の貴金属触媒の存在下で付加反応が進行して硬化する一般的な加熱硬化型シリコーン接着剤とは異なるものである。したがって、ポリシルセスキオキサン化合物を含有する接着ペーストは、貴金属触媒を実質的に含有しない、または貴金属触媒の含有量が少ないものである。ここで、「貴金属触媒を実質的に含有しない」とは、「貴金属触媒と解釈され得る成分が意図的に添加されていないことのほか、接着ペースト中の有効成分の量に対して、貴金属触媒の含有量が触媒金属元素の質量換算で、例えば、1質量ppm未満であること」を意味する。なお、ここで、「有効成分」とは、「接着ペースト中に含まれる溶媒(S)(後述)を除いた成分」をいう。接着ペーストは、調合ばらつき等を考慮した安定的な製造の観点、長時間静置安定性の観点、貴金属触媒が高価なものである観点等から、貴金属触媒を実質的に含有しない、または貴金属触媒の含有量が少ないものとすることができる。
【0092】
本実施形態の接着ペーストは、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)を含有するものであるが、以下に示す成分を含有していてもよい。
【0093】
(熱酸発生剤(B))
本実施形態の接着ペーストは、熱酸発生剤(B)(以下、「(B)成分」ということがある。)を含有していてもよい。熱酸発生剤とは、加熱により、ルイス酸やブレンステッド酸等の酸成分を発生させる化合物をいう。本実施形態の接着ペーストは、熱酸発生剤(B)を含有することで、酸の発生により、加水分解反応およびその後の縮合反応が促進するため、比較的低温短時間(例えば、100℃にて2時間)の加熱により硬化して、接着性(すなわち、低温硬化・接着性)に優れる。
【0094】
一実施形態において、熱酸発生剤(B)は、温度範囲が30から300℃、昇温速度が10℃/分の条件で示差走査熱量測定を行って得られる最大吸熱ピークのピーク温度(酸発生温度)が、一実施形態において、80℃以上、別の実施形態において、90℃以上、さらに別の実施形態において、100℃以上のものとすることができる。このような熱酸発生剤を含有することで、接着ペーストの長時間静置安定性が向上する。また、熱酸発生剤(B)は、上記条件において、酸発生温度が、一実施形態において、180℃以下、別の実施形態において、170℃以下、さらに別の実施形態において、160℃以下のものとすることができる。このような熱酸発生剤を含有することで、接着ペーストの低温硬化性が向上する。また、熱酸発生剤(B)は、上記条件において、酸発生温度の範囲が、一実施形態において、80℃以上180℃以下、別の実施形態において、90℃以上170℃以下、さらに別の実施形態において、100℃以上160℃以下のものとすることができる。このような熱酸発生剤を含有することで、接着ペーストの長時間静置安定性および低温硬化性が向上する。
【0095】
一実施形態において、熱酸発生剤(B)は、オニウム塩系熱酸発生剤またはブロック酸化合物系熱酸発生剤とすることができる。オニウム塩系熱酸発生剤は、オニウムカチオン成分とアニオン成分とを含む熱酸発生剤である。オニウムカチオン成分としては、有機スルホニウムイオン、有機アンモニウムイオン、有機ホスホニウムイオン、有機ヨードニウムイオン等が挙げられる。また、オニウム塩系熱酸発生剤を構成する有機スルホニウムイオンとしては、下記式(b-1)で表されるカチオンが挙げられる。
【0096】
【化7】
【0097】
式(b-1)中、R、R、およびRは、それぞれ独立に、無置換の炭素数1から10のアルキル基、置換基を有する炭素数1から10のアルキル基、無置換の炭素数6から12のアリール基、および、置換基を有する炭素数6から12のアリール基からなる群から選ばれることができる。
【0098】
からRで表される「無置換の炭素数1から10のアルキル基」の炭素数は、一実施形態において1から6、別に実施形態において1から3とすることができる。「無置換の炭素数1から10のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0099】
からRで表される「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」の炭素数は、一実施形態において1から6、別に実施形態において1から3とすることができる。なお、この炭素数は、置換基を除いた部分(アルキル基の部分)の炭素数を意味するものである。したがって、RからRが「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」である場合、RからRの炭素数は10を超える場合もあり得る。「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」のアルキル基としては、「無置換の炭素数1から10のアルキル基」として示したものと同様のものが挙げられる。
【0100】
「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」の置換基の原子の数(ただし水素原子の数を除く)は、一実施形態において1から30、別に実施形態において1から20とすることができる。「置換基を有する炭素数1から10のアルキル基」の置換基としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等のアリール基が挙げられる。
【0101】
からRで表される「無置換の炭素数6から12のアリール基」の炭素数は、一実施形態において6とすることができる。「無置換の炭素数6から12のアリール基」としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
【0102】
からRで表される「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」の炭素数は、一実施形態において6とすることができる。なお、この炭素数は、置換基を除いた部分(アリール基の部分)の炭素数を意味するものである。したがって、RからRが「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」である場合、RからRの炭素数は12を超える場合もあり得る。「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」のアリール基としては、「無置換の炭素数6から12のアリール基」として示したものと同様のものが挙げられる。
【0103】
「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」の置換基の原子の数(ただし水素原子の数を除く)は、一実施形態において1から30、別に実施形態において1から20とすることができる。「置換基を有する炭素数6から12のアリール基」の置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;ヒドロキシ基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基等が挙げられる。
【0104】
オニウム塩系熱酸発生剤を構成する有機アンモニウムイオンとしては、下記式(b-2)で表されるカチオンが挙げられる。
【0105】
【化8】
【0106】
式(b-2)中、R、R、R、およびR10は、それぞれ独立に、無置換の炭素数1から10のアルキル基、置換基を有する炭素数1から10のアルキル基、無置換の炭素数6から12のアリール基、および、置換基を有する炭素数6から12のアリール基からなる群から選ばれる基である。RからR10としては、RからRとして表したものと同様のものが挙げられる。
【0107】
オニウム塩系熱酸発生剤を構成する有機ホスホニウムイオンとしては、下記式(b-3)で表されるカチオンが挙げられる。
【0108】
【化9】
【0109】
式(b-3)中、R11、R12、R13、およびR14は、それぞれ独立に、無置換の炭素数1から10のアルキル基、置換基を有する炭素数1から10のアルキル基、無置換の炭素数6から12のアリール基、および、置換基を有する炭素数6から12のアリール基からなる群から選ばれる基である。R11からR14としては、RからRとして表したものと同様のものが挙げられる。
【0110】
オニウム塩系熱酸発生剤を構成する有機ヨードニウムイオンとしては、下記式(b-4)で表されるカチオンが挙げられる。
【0111】
【化10】
【0112】
式(b-4)中、R15、およびR16は、それぞれ独立に、無置換の炭素数1から10のアルキル基、置換基を有する炭素数1から10のアルキル基、無置換の炭素数6から12のアリール基、及び、置換基を有する炭素数6から12のアリール基からなる群から選ばれる基である。R15、およびR16としては、RからRとして表したものと同様のものが挙げられる。これらの中でも、接着ペーストの低温硬化性と長時間静置安定性の両立の観点から適切な酸発生温度を有し、かつ、酸発生反応の反応性を制御しやすいことから、オニウムカチオン成分としては有機スルホニウムイオンまたは有機アンモニウムイオンとすることができ、下記式(b-5)で表される有機スルホニウムイオンがより好ましい。
【0113】
【化11】
【0114】
式(b-5)中、Arは、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の置換基を有する、又は、置換基を有しないアリール基を表す。
【0115】
オニウム塩系熱酸発生剤のアニオン成分としては、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、パーフルオロブタンスルホン酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン等が挙げられる。一実施形態において、アニオン成分としては、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオンとすることができる。
【0116】
ブロック酸化合物系熱酸発生剤は、有機スルホン酸、有機リン酸、および有機カルボン酸等をアミン化合物やエーテル化合物等で保護(ブロック化)した化合物であり、例えば、p-トルエンスルホン酸のアミン塩、p-トルエンスルホン酸の4級アンモニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のアミン塩、およびトリフルオロメタンスルホン酸の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0117】
熱酸発生剤(B)の含有量は、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)100質量部に対して、一実施形態において、0質量部超、別の実施形態において、0.001質量部以上、さらに別の実施形態において、0.01質量部以上、さらに別の実施形態において、0.1質量部以上、さらに別の実施形態において、0.3質量部以上とすることができ、一実施形態において、5.0質量部以下、別の実施形態において、3.0質量部以下、さらに別の実施形態において、2.0質量部以下、さらに別の実施形態において、1.5質量部以下、さらに別の実施形態において、1.2質量部以下とすることができる。これにより、優れた接着性を有するものとすることができる。
【0118】
また、熱酸発生剤(B)の含有量の範囲は、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)100質量部に対して、一実施形態において、0質量部超5.0質量部以下、別の実施形態において、0.001質量部以上3.0質量部以下、さらに別の実施形態において、0.01質量部以上2.0質量部以下、さらに別の実施形態において、0.1質量部以上1.5質量部以下、さらに別の実施形態において、0.3質量部以上1.2質量部以下とすることができる。
【0119】
一実施形態において、熱酸発生剤(B)は、2種類以上の熱酸発生剤を含むものとすることができる。これにより、接着ペーストには、酸発生作用の異なる熱酸発生剤(B)、または加水分解反応および縮合反応の促進性の異なる熱酸発生剤(B)が含まれる。なお、説明上、高い酸発生作用および縮合反応の促進性を有する熱酸発生剤を高反応性の熱酸発生剤(B1)といい、その高反応性の熱酸発生剤と比較して、低い酸発生作用および縮合反応の促進性を有する熱酸発生剤を低反応性の熱酸発生剤(B2)という。
【0120】
接着ペーストが2種類以上の熱酸発生剤(B)を含有することにより、室温または室温より僅かに高い製造装置内温度で生じてしまう、高反応性の熱酸発生剤(B1)による酸発生作用、または加水分解反応および縮合反応の促進性を、低反応性の熱酸発生剤(B2)が抑制し、接着ペーストは優れた長時間静置安定性を有することができる。一方で、接着ペーストの硬化反応においては、高反応性の熱酸発生剤(B1)および低反応性の熱酸発生剤(B2)による酸発生作用、または加水分解反応および縮合反応の促進性により、優れた硬化性を発揮し、100℃で加熱硬化した際の硬化物の接着強度を向上することができる。
【0121】
高反応性の熱酸発生剤(B1)は、5000秒以下のゲルタイムを有するもので、低反応性の熱酸発生剤は、5000秒超のゲルタイムを有するものである。高反応性の熱酸発生剤(B1)のゲルタイムは、一実施形態において、4000秒以下、別の実施形態において、3000秒以下、さらに別の実施形態において、2000秒以下、さらに別の実施形態において、1000秒以下とすることができる。これにより、100℃で加熱硬化した際の硬化物の接着強度が向上する。
【0122】
一方、高反応性の熱酸発生剤(B1)のゲルタイムの下限値は、特に限定されるものでないが、一実施形態において、50秒以上、別の実施形態において、80秒以上、さらに別の実施形態において、100秒以上、さらに別の実施形態において、120秒以上とすることができる。これにより、接着ペーストの低温硬化性と長時間静置安定性とを両立させ易い。
【0123】
低反応性の熱酸発生剤(B2)のゲルタイムは、一実施形態において、5000秒超、別の実施形態において、8000秒超、さらに別の実施形態において、10000秒超、さらに別の実施形態において、12000秒超とすることができる。これにより、長時間静置安定性が向上する。
【0124】
一方、低反応性の熱酸発生剤(B2)のゲルタイムの上限値は、特に限定されるものでないが、一実施形態において、20000秒以下、別の実施形態において、18000秒以下、さらに別の実施形態において、15000秒以下、さらに別の実施形態において、13000秒以下とすることができる。これにより、接着ペーストの低温硬化性と長時間静置安定性とを両立させ易い。
【0125】
熱酸発生剤(B)のゲルタイムは、例えば、自動硬化時間測定装置を用いて、次のようにして確認することができる。100℃に加熱されたステンレス板上に、0.20ccの熱酸発生剤を含むサンプル混合物を投入し、撹拌翼の自転回転数を300rpm、撹拌翼の公転回転数を120rpm、ギャップ(加熱板と撹拌翼間の距離)を0.2mmとして、撹拌する。経時的に上昇する撹拌トルクが0.049N・cmになるまでの時間(秒)を測定する。その時間をゲルタイムとする。より具体的な熱酸発生剤(B)のゲルタイムの測定方法については、実施例において説明する。
【0126】
また、接着ペーストに含まれる、高反応性の熱酸発生剤(B1)(複数種類含まれる場合にはその合計)の質量と低反応性の熱酸発生剤(B2)(複数種類含まれる場合にはその合計)の質量との比率(高反応性の熱酸発生剤:低反応性の熱酸発生剤)は、一実施形態において、1:20から20:1、別の実施形態において、1:15から15:1、さらに別の実施形態において、1:10から10:1、さらに別の実施形態において、1:5から5:1、さらに別の実施形態において、1:2から2:1、さらに別の実施形態において、1:1とすることができる。これにより、接着ペーストは、より優れた長時間静置安定性および硬化性を発揮することができる。
【0127】
また、高反応性の熱酸発生剤(B1)の具体例としては、2-メチルベンジルメチルp-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート、1-ナフチルメチルメチルp-ヒドロキシフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、および(4-ヒドロキシフェニル)メチル(4-メチルベンジル)スルホニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが例示される。
【0128】
また、低反応性の熱酸発生剤(B2)の具体例としては、ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、およびパラトルエンスルホン酸のアミンブロック化合物が例示される。
【0129】
(シランカップリング剤(C))
本実施形態の接着ペーストは、シランカップリング剤(C)(以下、「(C)成分」ということがある。)を含有していてもよい。シランカップリング剤(C)を含有させることにより、塗布工程における作業性に優れ、かつ、加熱時に、(A)成分と共に縮合反応することによる硬化性に優れ、接着性、および耐熱性により優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。シランカップリング剤(C)としては、分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤(C1)(以下、「(C1)成分」ということがある。)や分子内に酸無水物構造を有するシランカップリング剤(C2)(以下、「(C2)成分」ということがある。)が挙げられる。接着ペーストは、シランカップリング剤(C1)、または、シランカップリング剤(C2)、または、シランカップリング剤(C1)とシランカップリング剤(C2)の双方を含有することができる。
【0130】
シランカップリング剤(C1)
シランカップリング剤(C1)を含有させることにより、塗布工程における作業性に優れ、かつ、加熱時に、(A)成分と共に縮合反応することによる硬化性に優れ、接着性、および耐熱性により優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。
【0131】
シランカップリング剤(C1)としては、分子内に窒素原子を有するシランカップリング剤であれば特に制限はない。例えば、下記式(c-1)で表されるトリアルコキシシラン化合物、式(c-2)で表されるジアルコキシアルキルシラン化合物またはジアルコキシアリールシラン化合物等が挙げられる。
【0132】
【化12】
【0133】
上記式中、Rは、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等の炭素数1から6のアルコキシ基を表す。複数のR同士は同一であっても相異なっていてもよい。Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等の炭素数1から6のアルキル基;または、フェニル基、4-クロロフェニル基、4-メチルフェニル基、1-ナフチル基等の、置換基を有する、または置換基を有さないアリール基;を表す。
【0134】
は、窒素原子を有する、炭素数1から10の有機基を表す。また、Rは、さらに他のケイ素原子を含む基と結合していてもよい。Rの炭素数1から10の有機基の具体例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピル基、3-アミノプロピル基、N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)アミノプロピル基、3-ウレイドプロピル基、N-フェニル-アミノプロピル基等が挙げられる。
【0135】
上記式(c-1)または(c-2)で表される化合物のうち、Rが、他のケイ素原子を含む基と結合した有機基である場合の化合物としては、イソシアヌレート骨格を介して他のケイ素原子と結合してイソシアヌレート系シランカップリング剤を構成するものや、ウレア骨格を介して他のケイ素原子と結合してウレア系シランカップリング剤を構成するものが挙げられる。
【0136】
これらの中で、シランカップリング剤(C1)は、接着強度がより高い硬化物が得られ易いことから、イソシアヌレート系シランカップリング剤、およびウレア系シランカップリング剤とすることができ、さらに、分子内に、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するものとすることができる。ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するとは、同一のケイ素原子に結合したアルコキシ基と、異なるケイ素原子に結合したアルコキシ基との総合計数が4以上という意味である。
【0137】
ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するイソシアヌレート系シランカップリング剤としては、下記式(c-3)で表される化合物が、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を4以上有するウレア系シランカップリング剤としては、下記式(c-4)で表される化合物が挙げられる。
【0138】
【化13】
【0139】
式中、Rは、前記式(c-1)および(c-2)におけるRと同じ意味を表す。t1からt5はそれぞれ独立して、1から10の整数を表し、1から6の整数とすることができ、例えば、3が例示される。
【0140】
式(c-3)で表される化合物の具体例としては、1,3,5-N-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-トリi-プロポキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-トリブトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等の1,3,5-N-トリス〔(トリ(炭素数1から6)アルコキシ)シリル(炭素数1から10)アルキル〕イソシアヌレート;1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシi-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシn-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジメトキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシi-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシn-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジエトキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシi-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシn-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジi-プロポキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシメチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシエチルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシi-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシn-プロピルシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-ジブトキシフェニルシリルプロピル)イソシアヌレート等の1,3,5-N-トリス〔(ジ(炭素数1から6)アルコキシ)シリル(炭素数1から10)アルキル〕イソシアヌレート;等が挙げられる。
【0141】
式(c-4)で表される化合物の具体例としては、N,N’-ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリプロポキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリブトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ウレア等のN,N’-ビス〔(トリ(炭素数1から6)アルコキシシリル)(炭素数1から10)アルキル〕ウレア;N,N’-ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-ジメトキシエチルシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)ウレア等のN,N’-ビス〔(ジ(炭素数1から6)アルコキシ(炭素数1から6)アルキルシリル(炭素数1から10)アルキル)ウレア;N,N’-ビス(3-ジメトキシフェニルシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-ジエトキシフェニルシリルプロピル)ウレア等のN,N’-ビス〔(ジ(炭素数1から6)アルコキシ(炭素数6から20)アリールシリル(炭素数1から10)アルキル)ウレア;等が挙げられる。シランカップリング剤(C1)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0142】
これらの中で、シランカップリング剤(C1)は、1,3,5-N-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-N-トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(以下、前記2つを「イソシアヌレート化合物」という。)、N,N’-ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア(以下、前記2つを「ウレア化合物」という。)、および、上記イソシアヌレート化合物とウレア化合物との組み合わせを用いることができる。
【0143】
接着ペーストがシランカップリング剤(C1)〔(C1)成分〕を含有する場合、(C1)成分の含有量は特に限定されないが、その量は、接着ペーストの固形分100質量部に対して、一実施形態において2質量部以上、別の実施形態において4質量部以上、さらに別の実施形態において15質量部以上とすることができ、一実施形態において40質量部未満、別の実施形態において30質量部未満、さらに別の実施形態において25質量部未満とすることができる。シランカップリング剤(C1)の量の範囲は、接着ペーストの固形分(すなわち、有効成分)100質量部に対して、一実施形態において2質量部以上40質量部未満、別の実施形態において4質量部以上30質量部未満、さらに別の実施形態において15質量部以上25質量部未満とすることができる。
【0144】
(C1)成分を上記範囲で用いることにより、(C1)成分を加える効果をより発現させることができるため、接着ペーストの硬化物が優れた接着強度を有することができる。
【0145】
シランカップリング剤(C2)
シランカップリング剤(C2)を含有させることにより、塗布工程における作業性に優れ、接着性、および耐熱性により優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。
【0146】
シランカップリング剤(C2)としては、2-(トリメトキシシリル)エチル無水コハク酸、2-(トリエトキシシリル)エチル無水コハク酸、3-(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸、3-(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸等の、トリ(炭素数1から6)アルコキシシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸;2-(ジメトキシメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ジ(炭素数1から6)アルコキシメチルシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸;2-(メトキシジメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、(炭素数1から6)アルコキシジメチルシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸;2-(トリクロロシリル)エチル無水コハク酸、2-(トリブロモシリル)エチル無水コハク酸等の、トリハロゲノシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸;2-(ジクロロメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ジハロゲノメチルシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸;2-(クロロジメチルシリル)エチル無水コハク酸等の、ハロゲノジメチルシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸;等が挙げられる。シランカップリング剤(C2)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0147】
これらの中で、シランカップリング剤(C2)は、トリ(炭素数1から6)アルコキシシリル(炭素数2から8)アルキル無水コハク酸とすることができ、3-(トリメトキシシリル)プロピル無水コハク酸または3-(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸が例示される。
【0148】
接着ペーストがシランカップリング剤(C2)〔(C2)成分〕を含有する場合、(C2)成分の含有量は特に限定されないが、その量は、接着ペーストの固形分100質量部に対して、一実施形態において0.1質量部以上、別の実施形態において0.5質量部以上、さらに別の実施形態において1.5質量部以上とすることができ、一実施形態において10質量部未満、別の実施形態において6質量部未満、さらに別の実施形態において4質量部未満とすることができる。シランカップリング剤(C2)の量の範囲は、接着ペーストの固形分100質量部に対して、一実施形態において0.1質量部以上10質量部未満、別の実施形態において0.5質量部以上6質量部未満、さらに別の実施形態において1.5質量部以上4質量部未満とすることができる。
【0149】
(C2)成分を上記範囲で用いることにより、(C2)成分を加える効果をより発現させることができ、かつ、酸無水物構造を有することによる(A)成分、および(C)成分の加水分解反応およびその後の縮合反応が促進されるため、接着ペーストの硬化物が優れた接着強度を有することができる。
【0150】
接着ペーストが(C)成分を含有する場合、(C)成分の合計含有量は特に限定されないが、その量は、接着ペーストの固形分中に、一実施形態において2質量%以上、別の実施形態において3質量%以上、さらに別の実施形態において4質量%以上、さらに別の実施形態において15質量%以上とすることができ、一実施形態において45質%未満、別の実施形態において35質量%未満、さらに別の実施形態において30質量%未満、さらに別の実施形態において25質量%未満とすることができる。(C)成分の合計含有量の範囲は、接着ペーストの固形分中に、一実施形態において2質量%以上45質量%未満、別の実施形態において3質量%以上35質量%未満、さらに別の実施形態において4質量%以上30質量%未満、さらに別の実施形態において15質量%以上25質量%未満とすることができる。(C)成分をこの範囲で用いることにより、接着強度が向上し、また屈折率が低い接着ペーストや硬化物が得られ易くなり、LEDパッケージのような発光装置に使用した際、光の取り出し効率が向上する。
【0151】
(溶媒(S))
本実施形態の接着ペーストは、溶媒(S)を含有していてもよい。溶媒(S)は、接着ペーストの成分を溶解または分散し得るものであれば特に限定されない。溶媒(S)は、254℃以上の沸点を有する有機溶媒(以下、「有機溶媒(SH)」と記載することがある。)を含むものとすることができる。ここで、「沸点」は、「1013hPaにおける沸点」をいう。有機溶媒(SH)の沸点は、254℃以上とすることでき、254℃以上300℃以下とすることができる。
【0152】
有機溶媒(SH)としては、具体的には、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点274℃)、1,6-へキサンジオールジアクリレート(沸点260℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点256℃)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点261℃)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点264から294℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点275℃)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点290から310℃)等が挙げられる。これらの中で、有機溶媒(SH)は、有効成分を良好に混合し易い観点から、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートとすることができる。有機溶媒(SH)は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0153】
接着ペーストは、有機溶媒(SH)以外の溶媒を含有してもよい。有機溶媒(SH)以外の溶媒は、沸点が100℃以上254℃未満の溶媒(以下、「有機溶媒(SL)」と記載することがある。)とすることができる。有機溶媒(SL)としては、沸点が100℃以上254℃未満であり、かつ、接着ペーストの成分を溶解または分散し得るものであれば特に制限されない。有機溶媒(SH)と有機溶媒(SH)以外の溶媒を併用することにより、接着ペーストを加熱して硬化物を得る温度範囲をより精密に調節することができるため、熱による影響を受けやすい光学部品等に対する加熱の影響を小さくすることができる。
【0154】
有機溶媒(SL)の具体例としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点247℃)、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点229℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点209℃)、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点212℃)、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(沸点212℃)、トリプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点215℃ )、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点216℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点218℃)、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点230℃)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(沸点245℃)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(沸点242℃)、プロピレングリコールフェニルエーテル(沸点243℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点249℃)、ベンジルアルコール(沸点204.9℃)、フェネチルアルコール(沸点219から221℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点192℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点134.8℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点124.5℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、シクロペンタノン(沸点130℃)、シクロヘキサノン(沸点157℃)、シクロヘプタノン(沸点180℃)、シクロオクタノン(沸点195から197℃)、シクロヘキサノール(沸点161℃)、シクロヘキサジエノン(沸点104から104.5℃)等が挙げられる。これらの中で、有機溶媒(SL)は、有効成分を良好に混合し易い観点から、グリコール系溶媒とすることができ、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテルとすることができ、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが例示される。
【0155】
有機溶媒(SH)と有機溶媒(SL)を併用する場合、具体的には、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(溶媒(SH))とジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒(SL))の組み合わせ、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(溶媒(SH))と、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒(SL))の組み合わせ、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(溶媒(SH))とジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(溶媒(SL))の組み合わせ、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(溶媒(SH))とジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(溶媒(SL))の組み合わせとすることができる。
【0156】
接着ペーストは、固形分(すなわち、有効成分)濃度が、一実施形態において70質量%以上、別の実施形態において75質量%以上になる量の溶媒(S)を含有することができ、一実施形態において100質量%未満、別の実施形態において95質量%未満になる量の溶媒(S)を含有することができる。接着ペーストは、固形分濃度の範囲が、一実施形態において70質量%以上100質量%未満、別の実施形態において75質量%以上95質量%未満になる量の溶媒(S)を含有することができる。
【0157】
固形分濃度がこの範囲内であることで、有効成分を良好に混合し易く、また、塗布工程における作業性に優れる。さらに、接着ペーストをシリンジに充填する工程において、適量の接着ペーストを気泡なくシリンジ内に充填し易くすることができる。また、ダイボンディングを行なう際、良好な形状のフィレット形成することができやすい。
【0158】
(微粒子(D))
本実施形態の接着ペーストは、微粒子(D)を含有していてもよい。微粒子(D)としては、平均一次粒子径が0.005μm以上7μm以下の微粒子(D)が挙げられる。
【0159】
微粒子(D)を含有させることにより、塗布した接着ペーストの保形性および塗布工程(例えばダイボンド)における作業性(例えば、チキソ性)に優れ、かつ、接着性および耐熱性により優れる硬化物を与える接着ペーストが得られ易くなる。この効果がより得られ易いことから、微粒子(D)の平均一次粒子径は、一実施形態において0.005μm以上、別の実施形態において0.05μm以上、さらに別の実施形態において0.1μm以上、さらに別の実施形態において0.5μm以上とすることができ、また一実施形態において7μm以下、別の実施形態において5μm以下、さらに別の実施形態において、1μm以下、さらに別の実施形態において、0.8μm以下とすることができる。微粒子(D)の平均一次粒子径の範囲は、一実施形態において、0.005μm以上7μm以下、別の実施形態において、0.05μm以上5μm以下、さらに別の実施形態において、0.1μm以上1μm以下、さらに別の実施形態において、0.5μm以上0.8μm以下とすることができる。微粒子(D)の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いて微粒子の形状を観察することにより求めることができる。
【0160】
微粒子(D)の比表面積は、一実施形態において0.1m/g以上、別の実施形態において0.5m/g以上、さらに別の実施形態において1m/g以上、さらに別の実施形態において5m/g以上とすることができ、一実施形態において500m/g以下、別の実施形態において400m/g以下、さらに別の実施形態において300m/g以下、さらに別の実施形態において220m/g以下とすることができる。微粒子(D)の比表面積の範囲は、一実施形態において0.1m/g以上500m/g以下、別の実施形態において0.5m/g以上400m/g以下、さらに別の実施形態において1m/g以上300m/g以下、さらに別の実施形態において5m/g以上220m/g以下とすることができる。比表面積が上記範囲内であることで、塗布工程における作業性により優れる接着ペーストが得られ易くなる。
【0161】
微粒子(D)の形状は、球状、鎖状、針状、板状、片状、棒状、繊維状等のいずれであってもよく、球状とすることができる。ここで、「球状」とは、「真球状の他、回転楕円体、卵形、金平糖状、まゆ状等球体に近似できる多面体形状を含む略球状」を意味する。
【0162】
微粒子(D)の構成成分としては、特に制限はなく、金属;金属酸化物;鉱物;金属炭酸塩;金属硫酸塩;金属水酸化物;金属珪酸塩;無機成分;有機成分;シリコーン;等が挙げられる。また、用いる微粒子(D)は表面が修飾されたものであってもよい。
【0163】
金属とは、周期表における、1族(Hを除く)、2から11族、12族(Hgを除く)、13族(Bを除く)、14族(CおよびSiを除く)、15族(N、P、AsおよびSbを除く)、または16族(O、S、Se、TeおよびPoを除く)に属する元素をいう。
【0164】
金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化亜鉛、およびこれらの複合酸化物等が挙げられる。金属酸化物の微粒子には、これらの金属酸化物からなるゾル粒子も含まれる。
【0165】
鉱物としては、スメクタイト、ベントナイト等が挙げられる。スメクタイトとしては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ノントロナイト、ソーコナイト等が挙げられる。
【0166】
金属炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が、金属硫酸塩としては、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等が、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム等が、金属珪酸塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム等が挙げられる。また、無機成分としては、シリカ等が挙げられる。シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、表面修飾シリカ(表面が修飾されたシリカ)等が挙げられる。有機成分としては、アクリル系重合体等が挙げられる。
【0167】
シリコーンとは、シロキサン結合による主骨格を持つ、人工高分子化合物を意味する。例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0168】
微粒子(D)は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中で、微粒子(D)は、透明性に優れる接着ペーストが得られ易いことから、シリカ、金属酸化物、鉱物とすることができ、シリカが例示される。
【0169】
シリカは、接着ペーストとして混合が比較的容易である観点、および塗布工程における作業性により優れる接着ペーストが得られ易いことから、表面修飾シリカとすることができ、疎水性の表面修飾シリカとすることができる。疎水性の表面修飾シリカとしては、表面に、トリメチルシリル基等のトリ炭素数1から20のトリアルキルシリル基;ジメチルシリル基等のジ炭素数1から20のアルキルシリル基;オクチルシリル基等の炭素数1から20のアルキルシリル基;を結合させたシリカ;シリコーンオイルで表面を処理したシリカ;等が挙げられる。疎水性の表面修飾シリカは、例えば、シリカ粒子に、トリ炭素数1から20のトリアルキルシリル基、ジ炭素数1から20のアルキルシリル基、炭素数1から20のアルキルシリル基等を有するシランカップリング剤を用いて表面修飾することにより、あるいは、シリカ粒子をシリコーンオイルで処理することにより得ることができる。
【0170】
接着ペーストが微粒子(D)〔(D)成分〕を含有する場合、(D)成分の含有量は特に限定されないが、その量は、接着ペーストの中に、一実施形態において2質量%以上、別の実施形態において3.5質量%以上、さらに別の実施形態において5質量%以上とすることができ、一実施形態において30質量%未満、別の実施形態において25質量%未満、さらに別の実施形態において20質量%未満とすることができる。微粒子(D)の量の範囲は、接着ペースト中に、一実施形態において2質量%以上30質量%未満、別の実施形態において3.5質量%以上25質量%未満、さらに別の実施形態において5質量%以上20質量%未満とすることができる。(D)成分を上記範囲で用いることにより、(D)成分を加える効果をより発現させることができる。
【0171】
(その他の成分(E))
(E)成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。酸化防止剤は、加熱時の酸化劣化を防止する目的で添加される。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
【0172】
リン系酸化防止剤としては、ホスファイト類、オキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、モノフェノール類、ビスフェノール類、高分子型フェノール類等が挙げられる。硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0173】
これらの酸化防止剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の使用量は、(A)成分に対して、10質量%以下とすることができる。
【0174】
紫外線吸収剤は、得られる接着ペーストの耐光性を向上させる目的で添加される。紫外線吸収剤としては、サリチル酸類、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。紫外線吸収剤の使用量は、(A)成分に対して、10質量%以下とすることができる。
【0175】
光安定剤は、得られる接着ペーストの耐光性を向上させる目的で添加される。光安定剤としては、例えば、ポリ[{6-(1,1,3,3,-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)イミノ}]等のヒンダードアミン類等が挙げられる。これらの光安定剤は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。(E)成分の総使用量は、(A)成分に対して、20質量%以下とすることができる。
【0176】
<本実施形態に係る接着ペーストの製造方法>
本実施形態の接着ペーストは、例えば、下記工程(AI)および工程(AII)を有する製造方法により製造することができる。
【0177】
(工程(AI))
工程(AI)は、上記式(a-6)で示される化合物の少なくとも一種を、重縮合触媒の存在下に重縮合させて、ポリシルセスキオキサン化合物を得る工程である。
【0178】
(工程(AII))
工程(AII)は、工程(AI)で得られたポリシルセスキオキサン化合物を、溶媒(S)に溶解させ、ポリシルセスキオキサン化合物を含有する溶液を得る工程である。
【0179】
工程(AI)の上記式(a-6)で示される化合物の少なくとも一種を、重縮合触媒の存在下に重縮合させて、ポリシルセスキオキサン化合物を得る方法としては、<本実施形態に係る接着ペースト>の項で例示したものと同様の方法が挙げられる。また、工程(AII)で用いる溶媒(S)は、<本実施形態に係る接着ペースト>の項で溶媒(S)として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0180】
工程(AII)において、ポリシルセスキオキサン化合物を溶媒(S)に溶解する方法としては、例えば、ポリシルセスキオキサン化合物、所望により前記(B)成分、前記(C)成分、および前記(D)成分を、溶媒(S)と混合、脱泡し、溶解する方法が挙げられる。混合方法、脱泡方法は特に限定されず、公知の方法を利用することができる。混合する順番は特に限定されない。上記工程(AI)および工程(AII)を有する製造方法によれば、本発明の接着ペーストを、効率よく簡便に製造することができる。
【0181】
接着ペーストを加熱して溶媒(S)を揮発させ、硬化させることにより、硬化物を得ることができる。硬化させるときの加熱温度は、一実施形態において80℃以上、別の実施形態において90℃以上とすることができ、一実施形態において140℃以下、別の実施形態において120℃以下、さらに別の実施形態において110℃以下とすることができる。硬化させるときの加熱温度の範囲は、一実施形態において80から140℃、別の実施形態において90から120℃、さらに別の実施形態において90から110℃とすることができる。また、硬化させるときの加熱時間の範囲は、一実施形態において30分から10時間、別の実施形態において30分から7時間、さらに別の実施形態において30分から5時間とすることができる。
【0182】
<本実施形態に係る接着ペーストを使用する半導体装置の製造方法>
本実施形態に係る接着ペーストを使用する半導体装置(すなわち、半導体パッケージ)の製造方法は、下記工程(BI)および工程(BII)を有する方法である。
【0183】
(工程)
工程(BI)は、接着ペーストを半導体素子および基板の少なくとも一方に塗布する工程である。
工程(BII)は、接着ペーストを熱硬化させる工程である。
【0184】
(工程(BI))
半導体素子は、レーザ、発光ダイオード(LED)等の発光素子や太陽電池等の受光素子等の光半導体素子、トランジスタ、温度センサや圧力センサ等のセンサ、集積回路等が挙げられる。これらの中で、本実施形態に係る接着ペーストを用いることによる効果が発揮され易い観点から、半導体素子は、光半導体素子とすることができる。
【0185】
基板は、特に限定されるものでなく、無機材料、または有機材料で構成される。無機材料としては、セラミック、ガラス、金属等が使用される。セラミックとしては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。ガラスとしては、石英ガラス、ソーダライムガラス、耐熱性硬質ガラスが挙げられる。金属としては、鉄、銅、アルミニウム、金、銀、白金、クロム、チタン、およびこれらの金属の合金、ステンレス(SUS302、SUS304、SUS304L、SUS309等)等が挙げられる。有機材料としては、樹脂が使用される。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミド、アクリル樹脂、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィン樹脂、ガラスエポキシ樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。また基板には、成形枠が付いていてもよい。
【0186】
次に、半導体素子および基板の少なくとも一方の接着面に接着ペーストを塗布する。塗布方法は特に限定されないが、例えば、ディスペンス法、スタンプピン等を用いたスタンプ法、印刷法、ディッピング法が挙げられる。ディスペンス法で塗布される接着ペーストは、例えば、シリンジに充填されている。これにより、塗布工程における作業性が優れる。シリンジの材料は、合成樹脂、金属、ガラスのいずれであってもよく、合成樹脂とすることができる。シリンジの容量としては、特に制限はなく、充填または塗布する接着ペーストの量に合わせ、適宜決定すればよい。また、シリンジとしては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、SS-01Tシリーズ(TERUMO社製)、PSYシリーズ(武蔵エンジニアリング社製)等が挙げられる。また、シリンジに充填された接着ペーストの場合、全量使用せずに、シリンジ内に残った接着ペーストを、長時間静置した後に、塗布することがある。この場合であっても、本実施形態の接着ペーストは、長時間静置安定性に優れるため、長時間静置した後に、塗布することができる。言い換えれば、本実施形態の接着ペーストは、冷凍保存や冷蔵保存をしなくても長期間保存することができる。
【0187】
接着ペーストの基板への塗布では、まず、接着ペーストが充填されたシリンジが垂直に下降して基板に近づき、シリンジの先端部から所定量の接着ペーストを吐出した後、シリンジが上昇して基板から離れるとともに、基板が横に移動する。そして、この操作を繰り返すことで、連続的に接着ペーストが基板に塗布される。
【0188】
接着ペーストの塗布量は、特に限定されず、硬化させることにより、接着の対象とする半導体素子と基板を強固に接着することができる量であればよい。接着ペーストの塗布量は、接着ペーストの塗膜の厚みが、一実施形態において0.5μm以上、別の実施形態において1μm以上となる量とすることができ、一実施形態において、10μm以下、別の実施形態において5μm以下となる量とすることができる。接着ペーストの塗布量の範囲は、接着ペーストの塗膜の厚みが、一実施形態において0.5μm以上10μm以下、別の実施形態において1μm以上5μm以下となる量とすることができる。
【0189】
(工程(BII))
次に、半導体素子は、コレットと呼ばれる吸着ノズルによりピックアップされ、基板上に搭載されて圧着される。その後、コレットを半導体素子から離脱させ、接着ペーストを加熱して、熱硬化させる。これにより、半導体素子は基板に固定されて、半導体装置が得られる。接着ペーストを硬化させる際の加熱温度および加熱時間は、<本実施形態に係る接着ペーストの製造方法>の項で説明した通りである。このように、本発明の接着ペーストは、半導体装置の固定材用接着剤として使用することができる。
【0190】
また、これまでは接着ペーストを基板に塗布した後に半導体素子を圧着する工程BIおよび工程BIIを示したが、別の実施形態において、接着ペーストを半導体素子に塗布し、基板に対して圧着してもよい。
【0191】
本実施形態に係る接着ペーストを使用する半導体装置の製造方法は、下記工程(BIII)および工程(BIV)をさらに有することができる。
【0192】
(工程)
工程(BIII)は、半導体素子と基板が有する電極部との間をワイヤーで電気的に接続する工程である。
工程(BIV)は、基板に固定された半導体素子を、封止樹脂で覆い、封止樹脂を加熱硬化させる工程である。
【0193】
(工程(BIII))
半導体素子と基板の端子同士をワイヤボンディングすることで、半導体素子と基板とを電気的に接続する。ワイヤーとしては、銅、アルミニウム、金、合金等が挙げられる。
【0194】
(工程(BIV))
基板に固定された半導体素子を封止樹脂で覆い、封止樹脂を加熱硬化させる。封止方法は特に限定されるものでない。例えば、基板に流動性を有する封止樹脂を充填し、封止樹脂を加熱硬化させて、封止樹脂層を形成する方法や、シート状に形成した封止樹脂を、半導体素子を覆うように載置し、封止樹脂を加熱硬化させて、封止樹脂層を形成する方法等が挙げられる。
【0195】
基板に流動性を有する封止樹脂を充填し、封止樹脂を加熱硬化させて、封止樹脂層を形成する方法では、まず、封止樹脂を比較的高温で加熱し、流動可能な粘度まで低下させる。次いで、この流動性のある状態の封止樹脂を、ノズルを備えるディスペンサーを使用して、空気圧でノズルから一定量ずつ押し出し、半導体素子が接着固定された基板(例えば、成形枠付き基板を用いた場合には、基板の枠体内)に滴下することで、半導体素子を封止することができる。
【0196】
封止樹脂としては、半導体素子を封止することができるものであれば、特に限定されない。例えば、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0197】
封止樹脂を流動可能な粘度まで低下させるときの加熱温度は、封止樹脂の種類によるが、80から120℃であり、例えば、約100℃(100℃±10℃)が例示される。また、封止樹脂を硬化させるときの加熱温度は、一実施形態において80から190℃、別の実施形態において100から170℃である。また、硬化させるときの加熱時間は、一実施形態において30分から10時間、別の実施形態において30分から5時間、さらに別の実施形態において30分から3時間である。
【0198】
<別の実施形態に係る接着ペーストを使用する半導体装置の製造方法>
別の実施形態に係る接着ペーストを使用する半導体装置(すなわち、半導体パッケージ)の製造方法は、下記工程(CI)から工程(CIV)を有する方法である。
【0199】
(工程)
工程(CI)は、発光体が配置された基板を準備する工程である。
工程(CII)は、基板の接着面に接着ペーストを塗布する工程である。
工程(CIII)は、発光体を覆うように接着ペーストの上にキャップを搭載する工程である。
工程(CIV)は、接着ペーストを熱硬化させる工程である。
【0200】
(工程(CI))
まず、発光体が配置された基板が準備される。平坦状の基板に発光体が配置されたものあっても、基板に凹部を設け、その凹部内に発光体が配置されたものでもよい。
【0201】
発光体は、紫外光、可視光等を発光するものであり、特に限定されるものではなく、レーザ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプ、電球等とすることができる。これらの中でも、本発明の接着ペーストを用いることによる効果がより発揮され易い観点から、発光体は、LEDとすることができる。一例として、紫外線、特に深紫外線(UVC)は、接着ペーストを光劣化させることがあるため、発光体は、UVC-LEDとすることができる。また、基板に設けられる発光体は、1つまたは複数とすることができる。また、波長の異なるいくつかの発光体が設けられた構成とすることもできる。
【0202】
基板は、<本実施形態に係る接着ペーストを使用する半導体装置の製造方法>で示したものが使用できる。
【0203】
(工程(CII))
次に、基板の接着面に接着ペーストを塗布する。塗布方法は、<本実施形態に係る接着ペーストを使用する半導体装置の製造方法>で示した方法を使用することができる。ただし、接着ペーストは、ドット状、線状、幾何学形状、十字、グリッド、またはそれらの任意の組み合わせからなるパターンのうちの1つとして設けられ得る。一実施形態において、接着ペースは、ドット状に塗布されることで、塗布された接着ペーストの厚みのバラつきを抑制でき、また、接着ペーストの使用量を削減することができる。
【0204】
(工程(CIII))
次に、発光体を覆うように接着ペーストの上にキャップを配置し、圧着する。これにより、発光体を覆うように、基板、接着ペースト、およびキャップをこの順に配置することができる。キャップは一般にリッドまたはキャップリッドとも呼ばれる。基板および発光体と、キャップとの間には空間が形成されている。キャップは、光、例えば深紫外線を透過する材料で形成されたものとすることができ、例えば、紫外線耐性を考慮して、キャップは石英ガラスで形成したものとすることができる。また、キャップは、フランジ部を有するものとすることができ、フランジ部の底面と基板の縁部とが接着ペーストによって接着されている。
【0205】
また、これまでは接着ペーストを基板に塗布した後にキャップを圧着する工程CIIおよび工程CIIIを示したが、接着ペーストをキャップに塗布し、基板に対して圧着してもよい。これにより、発光体を覆うように、基板、接着ペースト、およびキャップをこの順に配置することができる。
【0206】
(工程(CIV))
次に、接着ペーストを熱硬化させる。これにより、キャップは基板に固定されて、光半導体パッケージの一例としての発光装置が得られる。接着ペーストを硬化させる際の加熱温度および加熱時間は、<本実施形態に係る接着ペーストの製造方法>の項で説明した通りである。このように、本発明の接着ペーストは、発光装置の固定材用接着剤として使用することができる。
【0207】
<実施形態のまとめ>
本明細書の開示は、以下の接着ペースト、および半導体装置の製造方法を含む。
【0208】
(項目1)
硬化性オルガノポリシロキサン化合物を含有する接着ペーストであって、
前記接着ペーストを100℃にて2時間熱硬化して得られる硬化物は、銀メッキ銅板に対して25℃で10N/1mm□以上である接着強度を有し、
30℃で5日間維持する熱処理後の前記接着ペーストは、65Pa・s未満の熱処理後の粘度を有し、かつ
前記熱処理前の前記接着ペーストは、65Pa・s未満の熱処理前の粘度を有する、接着ペースト。
【0209】
(項目2)
前記硬化性オルガノポリシロキサン化合物が、ポリシルセスキオキサン化合物である、項目1に記載の接着ペースト。
【0210】
(項目3)
前記熱処理後の前記粘度、および前記熱処理前の前記粘度から、下記式により算出される粘度の変化率が50%未満である、項目1または項目2に記載の接着ペースト。
粘度の変化率[%]={(熱処理後の粘度)―(熱処理前の粘度)}/(熱処理前の粘度)×100
【0211】
(項目4)
前記接着ペーストは、熱酸発生剤を含有する、項目1から項目3のいずれか1項目に記載の接着ペースト。
【0212】
(項目5)
前記熱酸発生剤は、2種類以上の熱酸発生剤を含む、項目4に記載の接着ペースト。
【0213】
(項目6)
項目1から項目5のいずれか1項目に記載の接着ペーストを半導体素子および基板の少なくとも一方に塗布することと、
前記接着ペーストを熱硬化させることと、
を含む、半導体装置の製造方法。
【実施例0214】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。各例中の部および%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0215】
(平均分子量測定)
製造例で得た硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、標準ポリスチレン換算値とし、以下の装置および条件にて測定した。
装置名:HLC-8220GPC、東ソー株式会社製
カラム:TSKgelGMHXL、TSKgelGMHXL、および、TSKgel2000HXLを順次連結したもの
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:20μl
測定温度:40℃
流速:1ml/分
検出器:示差屈折計
【0216】
(IRスペクトルの測定)
製造例で得た硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A)のIRスペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマー社製、Spectrum100)を使用して測定した。
【0217】
(ゲルタイムの測定(硬化性の測定))
熱酸発生剤(B)のゲルタイムは、自動硬化時間測定装置(株式会社サイバー製、製品名「まどか」)を用いて、次のようにして測定した。100℃に加熱されたステンレス板上に、0.20ccのサンプル混合物を投入し、撹拌翼の自転回転数を300rpm、撹拌翼の公転回転数を120rpm、ギャップ(加熱板と撹拌翼間の距離)を0.2mmとして、撹拌した。経時的に上昇する撹拌トルクが0.049N・cmになるまでの時間(秒)を測定した。その時間をゲルタイムとした。また、サンプル混合物は、質量部比で、後述の製造例2で得た硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A2):熱酸発生剤(B):メチルエチルケトン(溶剤)=100:0.3:11.44となるよう秤量したものを、23℃で自転公転撹拌機(株式会社シンキー製、製品名「ARE-250」、自転2000rpm、公転800rpm)を用いて5分間撹拌し、均一にして得た(サンプル混合物の固形分濃度は90%とした)。
【0218】
(製造例1)
300mLのナス型フラスコに、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製)28.3g(129.5mmol)、および、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業社製)23.09g(129.5mmol)を仕込んだ後、蒸留水28.0mlに35%塩酸0.0675g(HClの量が0.65mmol,シラン化合物の合計量に対して0.25mol%)を溶解した水溶液を撹拌しながら加え、全容を30℃にて2時間、次いで70℃に昇温して20時間撹拌した。内容物の撹拌を継続しながら、そこに、28%アンモニア水0.0591g(NHの量が0.98mmol)と酢酸プロピル125.8gの混合溶液を加えて反応液のpHを6.9にし、そのまま70℃で4時間撹拌した。反応液を室温(23℃)まで放冷した後、そこに、酢酸プロピル50gおよび水100gを加えて分液処理を行い、反応生成物を含む有機層を得た。この有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥処理を行った。硫酸マグネシウムを濾別除去した後、有機層をエバポレーターで濃縮し、濃縮物を真空乾燥することにより、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1)を27.6g得た。硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1)の質量平均分子量(Mw)は4,800、分子量分布(Mw/Mn)は2.40であった。また、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1)のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si-CH:1272cm-1,1409cm-1,Si-O:1132cm-1,C-F:1213cm-1
【0219】
(製造例2)
300mLのナス型フラスコに、メチルトリエトキシシラン71.37g(400mmol)を仕込んだ後、蒸留水21.6mlに35%塩酸0.10g(シラン化合物の合計量に対して0.25モル%)を溶解した水溶液を撹拌しながら加え、全容を30℃にて2時間、次いで70℃に昇温して5時間撹拌したのち、酢酸プロピルを140g入れ撹拌した。ここに、28%アンモニア水0.12g(シラン化合物の合計量に対して0.5モル%)を撹拌しながら加え、全容を70℃に昇温して3時間さらに撹拌した。反応液に精製水を加え、分液し、水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。有機層をエバポレーターで濃縮し、濃縮物を真空乾燥することにより、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A2)を55.7g得た。硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A2)の質量平均分子量(Mw)は7,800、分子量分布(Mw/Mn)は4.52であった。硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A2)のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si-CH:1272cm-1,1409cm-1,Si-O:1132cm-1
【0220】
(製造例3)
300mlのナス型フラスコに、フェニルトリメトキシシラン28.91g(145.8mmol)を仕込んだ後、これを撹拌しながら、蒸留水7.874gに35質量%塩酸0.0376g(フェニルトリメトキシシランに対してHClが0.25mol%)を溶解した水溶液を加え、全容を30℃にて2時間、次いで70℃に昇温して5時間撹拌した。反応液を室温まで放冷した後、そこに、酢酸プロピル50gおよび水100gを加えて分液処理を行い、反応生成物を含む有機層を得た。この有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥処理を行った。硫酸マグネシウムを濾別除去した後、有機層をエバポレーターで濃縮し、次いで、得られた濃縮物を真空乾燥することにより、ポリシルセスキオキサン化合物(A3)を得た。硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A3)の質量平均分子量(Mw)は1,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.20であった。また、硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A3)のIRスペクトルデータを以下に示す。
Si-Ph:698cm-1,740cm-1,Si-O:1132cm-1
【0221】
実施例および比較例で用いた化合物を以下に示す。
((A)成分)
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1):製造例1で得られたオルガノポリシロキサン化合物(23℃において262000mPa・sの高粘度液体)
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A2):製造例2で得られたオルガノポリシロキサン化合物(23℃において固体)
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A3):製造例3で得られたオルガノポリシロキサン化合物(23℃において固体)
【0222】
((B)成分)
熱酸発生剤(B1-1):2-メチルベンジルメチルp-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモナート(三新化学工業株式会社製、製品名「SAN-AID SI-80」、ゲルタイム:803秒、酸発生温度(すなわち、示差走査熱量測定を行って得られる最大吸熱ピークのピーク温度):150℃)
熱酸発生剤(B1-2):1-ナフチルメチルメチルp-ヒドロキシフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート(三新化学工業株式会社製、製品名「SAN-AID SI-360」、ゲルタイム:1896秒、酸発生温度:125℃)
熱酸発生剤(B1-3):(4-ヒドロキシフェニル)メチル(4-メチルベンジル)スルホニウム=テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(三新化学工業株式会社製、製品名「SAN-AID SI-B7」、ゲルタイム:158秒、酸発生温度:125℃)
熱酸発生剤(B2-1):ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート(三新化学工業株式会社製、製品名「SAN-AID SI-110」、ゲルタイム:12020秒、酸発生温度:135℃)
熱酸発生剤(B2-2):パラトルエンスルホン酸のアミンブロック化合物(サンアプロ株式会社製、製品名「TAG-2713」、ゲルタイム:12620秒、酸発生温度:130℃)
【0223】
((C)成分)
シランカップリング剤(C1):1,3,5-N-トリス〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕イソシアヌレート(信越化学工業社製、製品名「KBM-9659」)
シランカップリング剤(C2):3-(トリメトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(信越化学工業社製、製品名「X-12-967C」)
【0224】
((D)成分)
微粒子(D1):トリメチルシリル基で表面処理されたシリカ微粒子(日本アエロジル社製、製品名「AEROSIL RX300」、平均一次粒子径:7nm、比表面積:210m/g)
微粒子(D2):シリコーン系微粒子(日興リカ株式会社製、製品名「MSP-SN08」、平均一次粒子径:0.8μm、形状:球状)
【0225】
(溶媒(S))
ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC)(SL)(東京化成工業社製、沸点:247℃)とトリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(TPnB)(SH)(ダウ・ケミカル社製、沸点:274℃)との混合溶媒(BDGAC:TPnB=40:60(質量比))
【0226】
(実施例1)
硬化性オルガノポリシロキサン化合物(A1)100質量部に、熱酸発生剤(B1-1)0.3質量部(10質量%BDGAC/TPnB=40:60溶液として添加)、熱酸発生剤(B2-1)0.3質量部(10質量%BDGAC/TPnB=40:60溶液として添加)、シランカップリング剤(C1)5質量部、シランカップリング剤(C2)1質量部、微粒子(D1)10質量部を添加し、さらに、接着ペーストの固形分濃度を84%となるように、溶剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC):トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(TPnB)=40:60(質量比)の混合溶剤を加えて、十分に混合することにより、接着ペーストを得た。
【0227】
(実施例2から15、および比較例1から4)
化合物(各成分)の種類、および配合割合を、下記表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2から15、および比較例1から4の接着ペーストを得た。なお、実施例7および比較例4は、接着ペーストの固形分濃度を74%となるように調製され、実施例8は、接着ペーストの固形分濃度を80%となるように調製され、実施例14は、接着ペーストの固形分濃度を86%となるように調製され、実施例15は、接着ペーストの固形分濃度を70%となるように調製された。
【0228】
【表1】
【0229】
(強度評価)
実施例1で得た接着ペーストを1mm角のシリコン板(試験片)に塗布(圧着後の接着ペーストの厚さ:約2μm)し、塗布面を銀メッキ表面の平均粗さRaが0.025μmの無電解銀メッキ銅板(被着体)の上に載せ圧着し、100℃で2時間加熱処理して硬化させて試験片付被着体を得た。この試験片付被着体を、25℃のボンドテスター(デイジ社製、シリーズ4000)の測定ステージ上に30秒間放置し、被着体から100μmの高さの位置より、スピード200μm/sで接着面に対し水平方向(せん断方向)に応力をかけ、試験片と被着体との接着強度(N/1mm□)を測定した。上記と同様に、実施例1で得た接着ペーストの塗布から測定までの操作を、測定回数(3回)分だけ用意した被着体と試験片を用いて合計3回行い、3回の測定値を平均し、小数第一位を四捨五入して熱処理前の接着強度を得た。実施例2から15、および比較例1から4で得た接着ペーストにおいても、上記実施例1と同様に、試験片付被着体を作製し、上記実施例1の試験片付被着体と同様に、銀メッキ銅板に対する熱処理前の接着強度を測定した。
【0230】
(粘度評価)
熱処理前の粘度(初期粘度)
実施例1で得た接着ペーストについて、レオメーター(Anton Paar社製、製品名「MCR301」)にて、半径50mm、コーン角度0.5°のコーンプレートを用い、25℃でせん断速度が2s-1時の粘度を測定して初期粘度を得た。実施例2から15、および比較例1から4で得た接着ペーストにおいても、上記実施例1と同様に、熱処理前の粘度を測定した。
【0231】
熱処理後の粘度
実施例1で得た接着ペーストをシリンジに充填して脱泡し、30℃の暗室で5日間静置した。この熱処理後の接着ペーストについて、上記熱処理前の粘度の測定と同様の方法で、粘度を測定した。実施例2から15、および比較例1から4で得た接着ペーストにおいても、上記実施例1と同様に、熱処理後の粘度を測定した。
【0232】
粘度の変化率[%]
実施例1から15、および比較例1から4の熱処理前の粘度と熱処理後の粘度から、下記式により粘度の変化率をそれぞれ算出し、小数第一位を四捨五入した値を採用した。
粘度の変化率[%]={(熱処理後の粘度)―(熱処理前の粘度)}/(熱処理前の粘度)×100
【0233】
(パッケージ信頼性評価(熱サイクル試験))
成形枠付き基板としてLEDパッケージ用リードフレーム(エノモト社製、製品名「5050 D/G PKG LEADFRAME」)に、実施例1で得た接着ペーストを0.4mmφ程度塗布した上に、一辺が0.5mmの正方形(面積が0.25mm)のサファイアチップを圧着した。その後、接着ペーストを100℃で2時間加熱処理して硬化させた後、封止樹脂(信越化学工業社製、製品名「LPS-3419」)をカップ内の成形枠上端まで流し込み、120℃で1時間、加えて150℃で1時間加熱して封止樹脂を硬化し、試験片を得た。この試験片を85℃、85%RHの環境に168時間曝した後、プレヒート160℃で、最高温度が260℃になる加熱時間1分間のIRリフロー(リフロー炉:相模理工社製、製品名「WL-15-20DNX型」)にて処理を行った。その後、熱サイクル試験機にて、-40℃および+100℃で各30分放置する試験を1サイクルとして、500サイクル実施した。その後、成形枠付き基板の成形枠の内壁に付着している封止樹脂の硬化物を、カッターにて封止樹脂の硬化物の下端部まで切り離し、この切り離した切り込み部分に、ニードル(JIS S 3008に規定された「絹針5号」)を、封止樹脂の硬化物の上面側から挿入し、ニードルを回転させることで封止樹脂の硬化物を引っ掛けて持ち上げ、封止樹脂の硬化物を除去した。その際にサファイアチップが封止樹脂の硬化物と一緒に剥がれるか否かを調べた。この試験を50個の試験片に対して行い、サファイアチップが、封止樹脂の硬化物と一緒に剥がれた回数を数え、以下の基準でパッケージ信頼性を評価した。
A:剥離発生率が25%以下
B:剥離発生率が25%超50%以下
C:剥離発生率が50%超
実施例2から15、および比較例1から4で得た接着ペーストにおいても、上記実施例1と同様に、パッケージ信頼性を評価した。
【0234】
(塗布作業性評価)
熱処理前の塗布作業性
実施例1の接着ペーストをシリンジに充填して脱泡した。その後、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、製品名「SHOTMASTER300」)にて、ニードル外径0.56mm、ニードル内径0.31mm、ニードル長8mmのニードルを用い、吐出圧50kPa、吐出時間50から400m秒の条件で1mmφ程度、接着ペーストを連続して塗布した。このとき、樹脂飛び(次の塗布地点まで接着ペーストが垂れる現象)が生じ、周辺を汚染するか否かを、以下の基準で評価した。
A:糸がすぐに切れ、周辺を汚染しない
B:糸がニードルの移動中に切れ、周辺を汚染しない
F:糸が切れず、樹脂飛びにより周辺を汚染した
実施例2から15、および比較例1から4で得た接着ペーストにおいても、上記実施例1と同様に、熱処理前の塗布作業性を評価した。
【0235】
熱処理後の塗布作業性
実施例1の接着ペーストをシリンジに充填して脱泡し、30℃の暗室で5日間静置した。この熱処理後の接着ペーストについて、上記熱処理前の塗布作業性の評価と同様の方法で、塗布作業性を評価した。実施例2から15、および比較例1から4で得た接着ペーストにおいても、上記実施例1と同様に、熱処理後の塗布作業性を評価した。
【0236】
表2に、実施例1から15、および比較例1から4の強度評価、粘度評価、パッケージ信頼性評価、および塗布作業性評価の結果を示す。
【0237】
【表2】
【0238】
実施例1から15の接着ペーストを100℃にて2時間熱硬化して得られた硬化物は、10N/1mm□以上の接着強度を有していた。また、30℃で5日間維持する熱処理前および熱処理後の実施例1から15の接着ペーストは、65Pa・s未満の粘度を有していた。これより、実施例1から15の接着ペーストから得られた硬化物は、優れたパッケージ信頼性を有するものであり、また実施例1から15の接着ペーストは、長時間静置された前後いずれであっても、優れた塗布作業性を有するものであった。したがって、実施例1から15の接着ペーストは、優れた低温硬化・接着性と長時間静置安定性を併せ持つものであった。
【0239】
一方、比較例1および3の接着ペーストを100℃にて2時間熱硬化して得られた硬化物は、10N/1mm□未満の接着強度を有していた。また、30℃で5日間維持する熱処理後の比較例2および4の接着ペーストは、65Pa・s以上の粘度を有していた。これより、比較例1および3の接着ペーストから得られた硬化物は、パッケージ信頼性が評価Cであり、また比較例2および4の接着ペーストは、塗布作業性が評価Fであった。したがって、比較例1から4の接着ペーストは、低温硬化・接着性と長時間静置安定性との少なくともいずれか一方を有さないものであった。
【0240】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。