(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101877
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 23/00 20060101AFI20240723BHJP
B62J 25/04 20200101ALI20240723BHJP
B62J 40/00 20200101ALI20240723BHJP
B62M 7/02 20060101ALI20240723BHJP
B62H 1/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B62J23/00 F
B62J25/04
B62J40/00
B62M7/02 E
B62H1/02 E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006056
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川目 和則
(72)【発明者】
【氏名】菊池 雅也
(72)【発明者】
【氏名】津久井 浩明
(57)【要約】
【課題】アンダカバーに付着した雨水等が、後方の車両部品に飛散することを抑制すること。
【解決手段】乗員が着座するシートと、前記乗員の脚を載せるステップフロアと、前記ステップフロアを下方から覆うアンダカバーと、を備えた鞍乗型車両であって、前記アンダカバーの底面には、前記車両前後方向に配列された左右一対のリブ列を備え、前記左右一対のリブ列の各リブは、下方に突出し、かつ、前記車幅方向内側から外側に向かって、前記車両前後方向で後側へ延設されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシート(109)と、
前記乗員の脚を載せるステップフロア(108)と、
前記ステップフロア(108)を下方から覆うアンダカバー(11)と、
を備えた鞍乗型車両(100)であって、
前記アンダカバー(11)の底面(11b)には、車両前後方向に配列された左右一対のリブ列(2L,2R)を備え、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)の各リブ(3R-6R,3L-6L)は、下方に突出し、かつ、車幅方向で内側から外側に向かって、前記車両前後方向で後側へ延設されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記各リブ(3R-6R,3L-6L)は、前記車両前後方向で前側の前面(31)を有し、
前記前面(31)は、前記車両前後方向で前側から後側へ向かって、上下方に凸形状で湾曲した湾曲面である、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)において、前記車両前後方向で前側に位置する前記リブ(3R-5R,3L-5L)の延設方向(d11-d13)よりも、後側に位置する前記リブ(4R-6R,4L-6L)の延設方向(d12-d14)の方が、前記車幅方向に近い、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)は、前記車幅方向で前記アンダカバー(11)の中央部に前記リブの無いスペース(11d)が形成されるよう、前記車幅方向に離間している、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項4に記載の鞍乗型車両であって、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)は、前輪(110)の幅(TW)よりも前記車幅方向外側に離間している、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記ステップフロア(108)よりも車両前後方向で後側に配置され、エンジン(121)に空気を供給するエアクリーナ(117)を備える、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項4に記載の鞍乗型車両であって、
前記車両前後方向で前記アンダカバー(11)の後側に配置され、エンジン(121)の排気を浄化する触媒装置(123)を備え、
前記触媒装置(123)の少なくとも一部が、前記スペース(11d)の後側に位置する、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項8】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
起立位置と収納位置との間で揺動可能に設けられ、前記起立位置において車体を車幅方向に傾けた状態で支持するサイドスタンド(119)を備え、
前記各リブ(3R-6R,3L-6L)は、前記アンダカバー(11)の上面から下方へ湾曲した凸部であり、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)の少なくとも一つのリブ(3R-6R,3L-6L)には、前記車幅方向で前記サイドスタンド(119)の側に、前記アンダカバー(11)を貫通する水抜き穴(9)が形成されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項9】
請求項3に記載の鞍乗型車両であって、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)は、それぞれ、4つのリブ(3R-6R,3L-6L)からなり、
前記4つのリブ(3R-6R,3L-6L)の各延設方向(d11-d14)が互いに異なる、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項10】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)において、前記車両前後方向で前側に位置する前記リブ(3R-5R,3L-5L)の前記車幅方向で内側の端部よりも、後側に位置する前記リブの前記車幅方向で内側の端部の方が、前記車幅方向で外側に位置している、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員の脚を載せるステップフロアを備えたスクータ型の鞍乗型車両において、ステップフロアを下方から覆うアンダカバーを備えた鞍乗型車両が知られている(特許文献1)。特許文献1にはアンダカバーの後端部に突出部を設けることにより、アンダカバーに付着した雨水等が、後方の車両部品(エアクリーナ等)に飛散することを抑制する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/149544号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンダカバーを備えた鞍乗型車両では、アンダカバーに付着した雨水等が、後方の車両部品に飛散する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、アンダカバーに付着した雨水等が、後方の車両部品に飛散することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
乗員が着座するシート(109)と、
前記乗員の脚を載せるステップフロア(108)と、
前記ステップフロア(108)を下方から覆うアンダカバー(11)と、
を備えた鞍乗型車両(100)であって、
前記アンダカバー(11)の底面(11b)には、前記車両前後方向に配列された左右一対のリブ列(2L,2R)を備え、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)の各リブ(3R-6R,3L-6L)は、下方に突出し、かつ、前記車幅方向内側から外側に向かって、前記車両前後方向で後側へ延設されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アンダカバーに付着した雨水等が、後方の車両部品に飛散することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両の左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<車両の構成>
図1は本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両(以下、単に車両という)100の左側面図、
図2は車両100の底面図である。各図において、矢印D1は車両100の前後方向を示し、Fが前側、Bが後側を示す。矢印D2は車両1の車幅方向を示し、車両100の前進方向で見て、Lが左側、Rが右側を示す。D1方向及びD2方向は水平方向である。矢印D3は車両100の上下方向を示し、Uが上側、Dが下側を示す。
【0011】
車両100は、操向ハンドル102と、乗員が着座するシート109との間に、乗員の脚を載せるステップフロア108が設けられたスクータ型の自動二輪車である。ステップフロア108は、その下方からアンダカバー11によって覆われる。アンダカバー11は車両100の底面を形成する。車体フレーム101の前端には、ヘッドパイプ104が固定されている。ヘッドパイプ104は、操向ハンドル102から下方に延びるステアリングステム103を回動自在に軸支する。ステアリングステム103の下部には、前輪110を回転自在に軸支する左右一対のフロントフォーク105が固定されている。
【0012】
操向ハンドル102の前側にはヘッドライト111およびメータ装置114を支持する前側ハンドルカウル113が設けられている。走行ハンドル102の後側には後側ハンドルカウル115が設けられている。メータ装置114には、車速、燃料の残量等の各種の情報が表示される。ヘッドパイプ104及びステアリングステム103は、カバー116で覆われている。車両100の前部には、フロントコンビネーションランプ107が配設されている。
【0013】
ステップフロア108の後方には、駆動源としてのエンジン121と変速機とを一体に構成したユニットスイング式のパワーユニット106がD2方向の軸周りに揺動自在に軸支されている。本実施形態のパワーユニット106は、内燃機関であるエンジン121を駆動源とするが電動モータを駆動源としてもよい。
【0014】
パワーユニット106には駆動輪である後輪112が回転自在に軸支されており、パワーユニット106は後輪112を回転させる。パワーユニット106の後端部は、リヤクッション118によって車体に吊り下げられている。
【0015】
パワーユニット106の上方には、エンジン121に、浄化された空気を供給するエアクリーナ117が取り付けられている。エアクリーナ117は、ステップフロア108よりもD1方向で後側に配置され、かつ、車両100の左側部に配置されている。エアクリーナ117は、その下部で後部の位置に、空気の導入口117aを備える。エンジン121が発生する負圧によって導入口117aからエアクリーナ117に導入された空気は、エアクリーア117の内部のエアフィルタによって濾過されてエンジン121に供給される。
【0016】
エンジン121の排気は、排気管122、触媒装置123、排気管124及びマフラ125を通って排出される。排気は触媒装置123によって浄化され、排気音はマフラ125によって消音される。触媒装置123はD1方向でアンダカバー11の後側に配置されており、かつ、排気の流れ方向がD2方向となる姿勢で配置されている。マフラ125は車両100の右側部に配置されている。
【0017】
車両100の左側部の下部には、サイドスタンド119が設けられている。サイドスタンド119は
図1において破線で示す起立位置と、
図1において実線で示す収納位置との間で揺動可能に設けられている。サイドスタンド119は起立位置において車体をD2方向左側に傾けた状態で車体を支持する。このとき、車両100は前輪110、後輪112及びサイドスタンド119の三点で地面に接地する。
【0018】
パワーユニット106の底部には、両足タイプのセンタスタンド120が設けられている。センタスタンド120はD2方向の軸の回りに揺動自在に支持されており、センタスタンド120を起立位置に揺動すると、車体を左右に傾斜させずに駐車することができる。
【0019】
<アンダカバー>
アンダカバー11の構造について、
図2に加えて
図3~
図6を参照して説明する。
図3はアンダカバー11を形成するカバー部材1の平面図である。
図4はカバー部材1の左側面図である。
図5はカバー部材1の底面図である。
図6は
図3のA-A線断面図及び部分拡大図である。
【0020】
カバー部材1は、アンダカバー11と、左右のロアサイドカバー12R及び12Lと、フロントロアカバー13とを形成する。左右のロアサイドカバー12R及び12Lは、車両100の左右側部を部分的に形成する。フロントロアカバー13は前輪110の背後に位置し、車両100の前方下部を部分的に形成する。ロアサイドカバー12R及び12Lとフロントロアカバー13とはアンダカバー11と別体であってもよい。
【0021】
アンダカバー11は、板状の部材であり、上面11aと、底面11bとを有する。アンダカバー11の後端部には切り欠き11cが形成されている。切り欠き11cは、湾曲した排気管122とアンダカバー11との干渉を回避し、排気管122のレイアウトの自由度を向上する。
【0022】
底面11bには、D1方向に配列された左右一対のリブ列2L、2Rが形成されている。リブ列2L、2Rを形成したことで、底面11bに付着して走行時にD1方向後方に流れる雨水が、アンダカバー11よりも後方の車両部品に飛散することを防止することができる。具体的には、例えば、エアクリーナ117の導入口117aに水が浸入することを防止することができる。また、左側のみ、或いは、右側のみにリブ列を形成するのではなく、本実施形態のように左右一対のリブ列2L、2Rを形成することで、走行時においてリブ列による空気抵抗が左、又は、右に偏って生じることを抑制し、走行安定性を向上することができる。
【0023】
左側のリブ列2Lは、下方に突出した4つのリブ3L~6Lからなり、右側のリブ列2Rは、下方に突出した4つのリブ3R~6Rからなる。リブ3L~6Lとリブ3R~6Rとは、D2方向の中央線CLに対して対称に形成されている。
【0024】
リブ列2Lとリブ列2Rとは、D2方向でアンダカバー11の中央部にリブの無いスペース11dが形成されるようD2方向に離間している。リブが無いのでスペース11dには走行風が矢印d31で示すように、D1方向で後方に流れやすくなる。スペース11dのD1方向で後方には触媒装置123の一部が配置されている。スペース11dを通る走行風が触媒装置123に当たり易くなり、触媒装置123の冷却に寄与する。本実施形態の場合、特に、リブ列2Lとリブ列2Rとは、前輪110の幅TWよりもD2方向外側に離間している。走行時に、前輪110の左右からD1方向で後方に流れ込む走行風がスペース11dに流れやすくなる。触媒装置123の冷却に更に寄与する。なお、触媒装置123の全部がスペース11dのD1方向で後方に配置されてもよい。
【0025】
リブ3L~6Lは、底面11bにおいて、D1方向で前側の前面31と、頂部32と、D1方向で後側の後面32と、を有し、D2方向に斜めに延設されている。後面32は、D3方向に落差を有する平坦な傾斜面である。前面31もD3方向に落差を有する傾斜面であるが、本実施形態の場合、D3方向で上方に凸形状で湾曲した湾曲面である。前面31を垂直面とすると、水切りの効果が向上するが走行風による空気抵抗が増加する。前面31を平坦な傾斜面とすると走行風による空気抵抗を低減できるが、水切りの効果は低下する。本実施形態では、前面31を湾曲面とすることで、水切りの効果と空気抵抗の低減とを両立することができる。
【0026】
リブ3L~6Lは、上面11aから下方へ湾曲した凸部であり、言い換えると、リブ3L~6Lは、上面11aから見るとD2方向で斜めに延びる溝部である。ここに雨水等が溜まる場合がある。その対策として、本実施形態では、アンダカバー11を貫通する水抜き穴9が各リブ3L~6Lに形成されている。水抜き穴9は、リブ3L~6Lのうちの一部のリブに形成されてもよい。しかし、本実施形態のように全てのリブ3L~6Lに水抜き穴9を形成することで、排水性を向上することができる。
【0027】
各リブ3L~6Lにおいて、水抜き穴9はD2方向でサイドスタンド119の側、つまり、左側の端部(D2方向外側の端部)に形成されている。サイドスタンド119を利用して車両100を駐車した状態において、水抜き穴9に重力によって水が集まり易くなり、排水性が向上する。
【0028】
リブ3L~6Lは、D2方向で内側から外側に向かって、D1方向で後側へ延設している。D1方向に対してリブ3Lから6Lが傾斜しているため、アンダカバー11に付着して後方へ流れる水をD2方向外側に排水でき、エアクリーナ117の導入口117aに飛散した水が浸入することを防止できる。
【0029】
リブ3L~6Lの延設方向は、それぞれd11~d14方向である。D2方向に対して、d11方向の角度はθ1であり、d12方向の角度はθ2であり、d13方向の角度はθ3であり、d14方向の角度はθ4である。角度θ1~θ4の大小関係は、θ1>θ2>θ3>θ4である。D1方向で前側に位置するリブの延設方向よりも、後側に位置するリブの延設方向よりもD2方向に近い。D1方向で前側に位置するリブの延設方向は、D2方向に対する角度が大きいので、アンダカバー11を後方に流れる水をD2方向で外側に排水し易く、また、走行風による空気抵抗も小さい。一方、D1方向で後側に位置するリブの延設方向は、D2方向に対する角度が小さいので、アンダカバー11を後方に流れる水をD3方向で下方に落とすことができ、それ以上後方に流れることをより確実に阻止することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、角度θ1~θ4を全て異なる角度としたので、D2方向の外側への排水と、D3方向で下方への落水とを段階的に作用させることができる。しかし、角度θ1~θ4の全てが異なる角度でなくてもよい。例えば、θ1<θ2=θ3<θ4であってもよい。また、例えば、θ1=θ2<θ3=θ4であってもよい。
【0031】
リブ3L~6Lは、仮想線LLに沿って配列されている。仮想線LLは中央線CLに対してD2方向に傾斜した線であり、D1方向前側では仮想線LLと中央線CLとのD2方向の距離が近く、後側では距離が遠くなるように傾斜している。このため、D1方向で前側のリブのD2方向で内側の端部よりも、後側のリブのD2方向で内側の端部がD2方向で外側に位置している。スペース11dを通る走行風の抜けがよくなって、リブ3L~6Lを形成したことに起因する空気抵抗を低減できる。
【0032】
リブ3R~6Rは、リブ3L~6Lと同様の構成である。リブ3R~6Rにも水抜き穴9が形成されており、やはりD2方向でサイドスタンド119の側、つまり、左側の端部に形成されている。但し、水抜き穴9の位置をD2方向の内外方向で見ると、リブ3L~6Lとは異なり、リブ3R~6Rの水抜き穴9はD2方向内側の端部)に形成されている。
【0033】
リブ3R~6Rの延設方向は、それぞれd21~d24方向である。D2方向に対して、d21方向の角度はθ1であり、d22方向の角度はθ2であり、d23方向の角度はθ3であり、d24方向の角度はθ4である。角度θ1~θ4の大小関係については、リブ3L~6Lについて述べたとおりである。
【0034】
リブ3R~6Rは、仮想線LRに沿って配列されている。仮想線LRは中央線CLに対して仮想線LLと対称である。仮想線LRはD2方向に傾斜した線であり、D1方向前側では仮想線LRと中央線CLとのD2方向の距離が近く、後側では距離が遠くなるように傾斜している。このため、D1方向で前側のリブのD2方向で内側の端部よりも、後側のリブのD2方向で内側の端部がD2方向で外側に位置している。リブ3L~6Lとリブ3R~6Rとの間のD2方向の間隔で見ると、リブ3Lとリブ3Rとの間隔が最も狭く、リブ4Lとリブ4Rとの間隔が二番目に狭く、リブ6Lとリブ6Rとの間隔が最も広く、リブ5Lとリブ5Rとの間隔が二番目に広い。このようにリブ3L~6Lとリブ3R~6Rとの間のD2方向の間隔は、D1方向で前側から後側に向かって広くなっている。
【0035】
スペース11dを通る走行風の抜けがよくなって、リブ3L~6Lやリブ3R~6Rを形成したことに起因する空気抵抗を低減できる。
【0036】
アンダカバー11には、D1方向前側でD2方向中央部には、D3方向で上側に凸形状の凹部7が形成されている。凹部7はジャッキアップポイントを形成している。上面11aの凹部7に対応する部位には、車体フレーム101に当接する補強部8が形成されており、凹部7は補強部8の下に位置している。凹部7はスペース11dに位置しているが、上側に凸形状を有しているため、d31方向に流れる走行風の抵抗にはならない。
【0037】
<他の実施形態>
上記実施形態では、リブ列2L及び2Rを、それぞれ4つのリブで構成したが、リブの数は2つ、3つ、又は、5つ以上であってもよい。リブの数が少ないと水切りの効果が低減する。リブの数が多いと水切りの効果が向上するが、アンダカバー11のD1方向の長さには限りがあり、リブのレイアウトの制約がある。各リブ列を4つのリブで構成することで、レイアウトの制約をクリアしつつ、水切り効果を得ることができる。
【0038】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は少なくとも以下の各項目の鞍乗型車両を開示している。
【0039】
項目1.乗員が着座するシート(109)と、
前記乗員の脚を載せるステップフロア(108)と、
前記ステップフロア(108)を下方から覆うアンダカバー(11)と、
を備えた鞍乗型車両(100)であって、
前記アンダカバー(11)の底面(11b)には、車両前後方向に配列された左右一対のリブ列(2L,2R)を備え、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)の各リブ(3R-6R,3L-6L)は、下方に突出し、かつ、車幅方向で内側から外側に向かって、前記車両前後方向で後側へ延設されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記左右一対のリブ列によってアンダカバーに付着した雨水等を車両側方に排水し、後方の車両部品に飛散することを抑制することができる。
【0040】
項目2.項目1に記載の鞍乗型車両であって、
前記各リブ(3R-6R,3L-6L)は、前記車両前後方向で前側の前面(31)を有し、
前記前面(31)は、前記車両前後方向で前側から後側へ向かって、上方に凸形状で湾曲した湾曲面である、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、リブによる水切りの効果と空気抵抗の低減とを両立することができる。
【0041】
項目3.項目1又は2に記載の鞍乗型車両であって、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)において、前記車両前後方向で前側に位置する前記リブ(3R-5R,3L-5L)の延設方向(d11-d13)よりも、後側に位置する前記リブ(4R-6R,4L-6L)の延設方向(d12-d14)の方が、前記車幅方向に近い、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、走行によってアンダカバーに付着した水が後方に流れる際、前側の前記リブにより車両側方への排水性を向上し、後側の前記リブにより下方へ落水させることができる。
【0042】
項目4.項目1又は2に記載の鞍乗型車両であって、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)は、前記車幅方向で前記アンダカバー(11)の中央部に前記リブの無いスペース(11d)が形成されるよう、前記車幅方向に離間している、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記アンダカバーの後方の車両部品に走行風を案内することができる。
【0043】
項目5.項目4に記載の鞍乗型車両であって、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)は、前輪(110)の幅(TW)よりも前記車幅方向外側に離間している、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記アンダカバーの後方の車両部品に走行風を案内することができる。
【0044】
項目6.項目1~5のいずれか一項に記載の鞍乗型車両であって、
前記ステップフロア(108)よりも車両前後方向で後側に配置され、エンジン(121)に空気を供給するエアクリーナ(117)を備える、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、走行によってアンダカバーに付着した水が前記エアクリーナに浸入することを防止できる。
【0045】
項目7.項目4に記載の鞍乗型車両であって、
前記車両前後方向で前記アンダカバー(11)の後側に配置され、エンジン(121)の排気を浄化する触媒装置(123)を備え、
前記触媒装置(123)の少なくとも一部が、前記スペース(11d)の後側に位置する、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記触媒装置の冷却性を向上できる。
【0046】
項目8.項目1~7のいずれか一項に記載の鞍乗型車両であって、
起立位置と収納位置との間で揺動可能に設けられ、前記起立位置において車体を車幅方向に傾けた状態で支持するサイドスタンド(119)を備え、
前記各リブ(3R-6R,3L-6L)は、前記アンダカバー(11)の上面から下方へ湾曲した凸部であり、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)の少なくとも一つのリブ(3R-6R,3L-6L)には、前記車幅方向で前記サイドスタンド(119)の側に、前記アンダカバー(11)を貫通する水抜き穴(9)が形成されている、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記サイドスタンドを用いた駐車の際に、前記アンダカバー11上に存在する水の排水性を向上できる。
【0047】
項目9.項目3に記載の鞍乗型車両であって、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)は、それぞれ、4つのリブ(3R-6R,3L-6L)からなり、
前記4つのリブ(3R-6R,3L-6L)の各延設方向(d11-d14)が互いに異なる、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、レイアウトの制約をクリアしつつ、水切り効果を得ることができる。
【0048】
項目10.項目1~9のいずれか一項に記載の鞍乗型車両であって、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)において、前記車両前後方向で前側に位置する前記リブ(3R-5R,3L-5L)の前記車幅方向で内側の端部よりも、後側に位置する前記リブの前記車幅方向で内側の端部の方が、前記車幅方向で外側に位置している、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、前記アンダカバーの後方の車両部品に走行風を案内することができる。
【0049】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
2L リブ列、2R リブ列、11 アンダカバー、100 鞍乗型車両
【手続補正書】
【提出日】2024-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗型車両であって、
前記各リブ(3R-6R,3L-6L)は、前記車両前後方向で前側の前面(31)を有し、
前記前面(31)は、前記車両前後方向で前側から後側へ向かって、上方に凸形状で湾曲した湾曲面である、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
<車両の構成>
図1は本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両(以下、単に車両という)100の左側面図、
図2は車両100の底面図である。各図において、矢印D1は車両100の前後方向を示し、Fが前側、Bが後側を示す。矢印D2は車両
100の車幅方向を示し、車両100の前進方向で見て、Lが左側、Rが右側を示す。D1方向及びD2方向は水平方向である。矢印D3は車両100の上下方向を示し、Uが上側、Dが下側を示す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
操向ハンドル102の前側にはヘッドライト111およびメータ装置114を支持する前側ハンドルカウル113が設けられている。操向ハンドル102の後側には後側ハンドルカウル115が設けられている。メータ装置114には、車速、燃料の残量等の各種の情報が表示される。ヘッドパイプ104及びステアリングステム103は、カバー116で覆われている。車両100の前部には、フロントコンビネーションランプ107が配設されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
リブ3L~6Lは、底面11bにおいて、D1方向で前側の前面31と、頂部32と、D1方向で後側の後面33と、を有し、D2方向に斜めに延設されている。後面33は、D3方向に落差を有する平坦な傾斜面である。前面31もD3方向に落差を有する傾斜面であるが、本実施形態の場合、D3方向で上方に凸形状で湾曲した湾曲面である。前面31を垂直面とすると、水切りの効果が向上するが走行風による空気抵抗が増加する。前面31を平坦な傾斜面とすると走行風による空気抵抗を低減できるが、水切りの効果は低下する。本実施形態では、前面31を湾曲面とすることで、水切りの効果と空気抵抗の低減とを両立することができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
リブ3R~6Rは、リブ3L~6Lと同様の構成である。リブ3R~6Rにも水抜き穴9が形成されており、やはりD2方向でサイドスタンド119の側、つまり、左側の端部に形成されている。但し、水抜き穴9の位置をD2方向の内外方向で見ると、リブ3L~6Lとは異なり、リブ3R~6Rの水抜き穴9はD2方向内側の端部に形成されている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
項目9.項目3に記載の鞍乗型車両であって、
前記左右一対のリブ列(2L,2R)は、それぞれ、4つのリブ(3R-6R,3L-6L)からなり、
前記4つのリブ(3R-6R,3L-6L)の各延設方向(d21-d24)が互いに異なる、
ことを特徴とする鞍乗型車両。
この実施形態によれば、レイアウトの制約をクリアしつつ、水切り効果を得ることができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】