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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101894
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240723BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/304 611B
H01L21/304 611Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006098
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 正助
(72)【発明者】
【氏名】長屋 正武
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦之
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA06
5F057BA01
5F057BB06
5F057CA02
5F057CA03
5F057DA22
5F057DA31
5F057EC29
5F057FA28
(57)【要約】
【課題】レーザ剥離技術を利用する半導体装置の製造方法において、半導体インゴットから剥離される半導体ウェハの変形を抑える技術を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、第1主面1aと第2主面1bを有する半導体インゴット1の前記第1主面に変形防止層30を形成する変形防止層形成工程と、前記半導体インゴット内にレーザを照射するレーザ照射工程であって、前記半導体インゴット内の所定深さを延びる面3に前記レーザが照射される、レーザ照射工程と、前記第1主面を含む半導体ウェハ2を前記レーザが照射された面に沿って前記半導体インゴットの残りの層から剥離する剥離工程と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
第1主面(1a)と第2主面(1b)を有する半導体インゴット(1)の前記第1主面に変形防止層(30)を形成する変形防止層形成工程と、
前記半導体インゴット内にレーザを照射するレーザ照射工程であって、前記半導体インゴット内の所定深さを延びる面(3)に前記レーザが照射される、レーザ照射工程と、
前記第1主面を含む半導体ウェハ(2)を前記レーザが照射された面に沿って前記半導体インゴットの残りの層から剥離する剥離工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記レーザ照射工程では、前記半導体インゴットの前記第2主面が露出している状態で前記第2主面から前記レーザが照射される、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記変形防止層は、有機材料層を有する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記変形防止層は、サポート基板(34)を有しており、
前記サポート基板は、前記半導体インゴットよりもヤング率が大きい、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体インゴットが窒化物半導体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
半導体装置を製造するために、レーザ剥離技術を利用して半導体インゴットの一方の主面から半導体ウェハを切り出す技術が提案されている。このようなレーザ剥離技術では、半導体インゴット内にレーザを照射して変質層を形成し、半導体ウェハを変質層に沿って半導体インゴットの残りの層から剥離する。特許文献1には、レーザ剥離技術を利用する半導体装置の製造方法の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-183600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体インゴット内の変質層が形成される部位では、レーザ照射によって結晶構造が崩れ、半導体を構成する原子が気化することがある。例えば半導体インゴットが窒化物半導体で構成されている場合、変質層の部位で窒素ガスが発生することが知られている。半導体インゴットから剥離される半導体ウェハは薄い。このため、半導体インゴットの内部で気体が発生すると、剥離される半導体ウェハを含む半導体インゴットの一方の主面が膨張し、半導体ウェハが変形してしまう。本明細書は、レーザ剥離技術を利用する半導体装置の製造方法において、半導体インゴットから剥離される半導体ウェハの変形を抑える技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、第1主面(1a)と第2主面(1b)を有する半導体インゴット(1)の前記第1主面に変形防止層(30)を形成する変形防止層形成工程と、前記半導体インゴット内にレーザを照射するレーザ照射工程であって、前記半導体インゴット内の所定深さを延びる面(3)に前記レーザが照射される、レーザ照射工程と、半導体ウェハ(2)を前記レーザが照射された面に沿って前記半導体インゴットの残りの層から剥離する剥離工程と、を備えていてもよい。前記半導体インゴットの種類は、前記レーザの照射によって気化する原子を含む様々な種類の半導体インゴットであってもよい。
【0006】
上記製造方法では、前記レーザ照射工程よりも前に前記半導体インゴットの前記第1主面に変形防止層が形成される。前記半導体インゴットの前記第1主面は、前記半導体ウェハが剥離される部位である。このため、前記レーザ照射工程で前記半導体インゴット内に気体が発生したとしても、前記半導体ウェハの変形が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】半導体装置の製造方法のうち変形防止層形成工程とレーザ照射工程と剥離工程のフローを示す図である。
図2】半導体装置の製造過程における半導体インゴットの断面図を模式的に示す図である。
図3】半導体装置の製造過程における半導体インゴットの断面図を模式的に示す図である。
図4】半導体装置の製造過程における半導体インゴットの断面図を模式的に示す図である。
図5】半導体装置の製造過程における半導体インゴットの断面図を模式的に示す図である。
図6】半導体装置の製造過程における半導体インゴットの断面図を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すように、本明細書が開示するレーザ剥離技術を利用した半導体装置の製造方法は、変形防止層形成工程(S1)と、レーザ照射工程(ステップS2)と、剥離工程(ステップS3)と、を備えている。この製造方法は、図2に示す半導体インゴット1に対してこれら工程を実行することにより、半導体インゴット1から半導体ウェハ2を剥離する。剥離された半導体ウェハ2に対して電子デバイスを構成する各種の拡散領域等を形成することにより、半導体ウェハ2から複数の半導体装置(チップともいう)が製造される。
【0009】
図2に示されるように、半導体インゴット1は、各々が平面で相互に平行に延びている上面1aと下面1bを有している。これら上面1aと下面1bは、主面とも称される。半導体インゴット1はさらに、上面1aと下面1bに対して直交しており、上面1aと下面1bを結ぶ側面1cを有している。半導体インゴット1は、特定種類の半導体単結晶で構成されている。半導体インゴット1は、特に限定されるものではないが、例えば窒化物半導体の単結晶で構成されていてもよい。具体的には、半導体インゴット1は、例えば窒化ガリウム(GaN)の単結晶で構成されていてもよい。半導体インゴット1の所定深さを延びる面3は、後述するように、レーザが照射される面、すなわち、レーザの複数の集光点が集まる面(以下、「集光面」という)である。集光面3の深さは、半導体インゴット1の下面1bよりも上面1aに近い深さである。半導体インゴット1のうち集光面3よりも上側の部分が半導体インゴット1から剥離される半導体ウェハ2である。
【0010】
図3に示されるように、変形防止層形成工程(図1のステップS1)では、半導体インゴット1の上面1aの全体に変形防止層30が形成される。変形防止層30は、半導体インゴット1の上面1aの角部を被覆し、半導体インゴット1の側面1cの一部にも形成される。ただし、変形防止層30は、集光面3の深さに対応した半導体インゴット1の側面1cには形成されていない。変形防止層30の材料は、特に限定されるものではない。変形防止層30の材料は、半導体インゴット1よりもヤング率が高い材料であってもよいし、半導体インゴット1よりもヤング率が低い材料であってもよい。
【0011】
変形防止層30は、半導体インゴット1の上面1aへの接着性を考慮し、有機材料であってもよい。変形防止層30は、例えば樹脂(例えば熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂など)であってもよい。あるいは、変形防止層30は、半導体製造プロセスで広く用いられている表面保護用テープであってもよい。変形防止層30はまた、セラミック、金属材料、結晶材料又はこれらの組み合わせであってもよい。これら材料は、半導体インゴット1の上面1aに直接接合されてもよく、成膜技術(例えば、スパッタ技術、蒸着技術、プラズマ成膜技術又はスピンコート技術など)を利用して半導体インゴット1の上面1aに成膜されてもよい。なお、変形防止層30の厚みは、特に限定されるものではなく、後述のレーザ照射工程における半導体インゴット1の変形が抑えられるように適宜調整されればよい。
【0012】
図4に示されるように、レーザ照射工程(図1のステップS2)では、半導体インゴット1の所定深さを延びる集光面3にレーザが照射される。レーザは、半導体インゴット1の下面1bが露出した状態で半導体インゴット1の下面1bから半導体インゴット1の所定深さで集光するように照射される。レーザは、半導体インゴット1(この例では、窒化ガリウムの単結晶)に対して透過性を有する波長域のレーザである。レーザは、特に限定されるものではないが、可視光のレーザであってもよく、例えば緑色レーザであってもよい。集光点の位置では、半導体インゴット1を構成する結晶(この例では、窒化ガリウムの単結晶)が加熱されて分解され、変質層が形成される。変質層の強度は、半導体インゴット1を構成する結晶よりも低い。したがって、変質層の強度は、その周囲の結晶よりも低くなる。
【0013】
半導体インゴット1の内部に変質層が形成される過程で窒素ガスが発生する。半導体インゴット1の集光面3、即ち、変質層が形成される位置は、半導体インゴット1の上面1aに近い。このため、半導体インゴット1の内部で窒素ガスが発生すると、半導体インゴット1の上面1aが膨張して変形しようとする。しかしながら、半導体インゴット1の上面1aには変形防止層30が形成されている。このため、半導体インゴット1内に窒素ガスが発生したとしても、半導体インゴット1の上面1aの変形が抑えられる。この結果、半導体インゴット1が破損するといった事態が抑えられる。
【0014】
また、変形防止層30は、集光面3の深さに対応した半導体インゴット1の側面1cには形成されていない。このため、レーザ照射工程で形成された変質層は、半導体インゴット1の側面1cに露出することができる。レーザ照射工程で発生した窒素ガスの一部は、半導体インゴット1の側面から良好に排出され得る。この結果、半導体インゴット1内に窒素ガスが発生したとしても、半導体インゴット1の上面1aの変形が抑えられる。
【0015】
図5に示されるように、剥離工程(図1のステップS3)では、半導体ウェハ2が、レーザが照射された集光面3に沿って半導体インゴット1の残りの層から剥離される。集光面3は変質層の形成によって強度が低下しているので、半導体ウェハ2は半導体インゴット1の残りの層から良好に剥離される。この剥離工程では、半導体インゴット1の上面1aに変形防止層30が残存したままである。このように、変形防止層30は、剥離工程における表面保護膜としても機能することができる。
【0016】
上記製造方法の変形例について以下に説明する。
【0017】
上記例では、レーザ照射工程で照射されるレーザが、半導体インゴット1の下面1bから照射されていた。この例に代えて、レーザ照射工程で照射されるレーザは、半導体インゴット1の上面1aから照射されてもよい。この場合、変形防止層30に用いられる材料は、レーザに対して透明な材料であればよい。
【0018】
また、上記例では、半導体インゴット1の上面1aのみに変形防止層30が形成されていた。この例に代えて、半導体インゴット1の下面1bにも変形防止層が形成されてもよい。例えば、半導体インゴット1の厚みが薄い場合、半導体インゴット1の両面に変形防止層を形成することにより、半導体ウェハ2が剥離された後の半導体インゴット1の変形も抑制することができる。半導体インゴット1の下面1bに形成される変形防止層は、半導体インゴット1の上面1aに形成される変形防止層30と共通の材料が用いられてもよく、異なる材料が用いられてもよい。
【0019】
図6に示されるように、変形防止層30は、接着層32と、サポート基板34と、を有していてもよい。接着層32は、有機材料で構成されており、特に限定されるものではないが、例えば半導体製造プロセスで汎用的に用いられる両面テープであってもよい。サポート基板34は、接着層32を介して半導体インゴット1の上面1aに固定されており、半導体インゴット1よりもヤング率が高い材料である。サポート基板34は、半導体インゴット1の主面に対して平行に延びる平板状の基板であり、半導体インゴット1の側面1cよりも側方に広がっている。サポート基板34は、特に限定されるものではないが、例えばガラス基板又はサファイア基板であってもよい。なお、半導体インゴット1の下面1bにも変形防止層を形成する場合、変形防止層30の接着層32とサポート基板34と同様の材料で構成された変形防止層を用いてもよい。
【0020】
変形防止層30は、ヤング率が高いサポート基板34を有している。このため、レーザ照射工程で半導体インゴット1内に窒素ガスが発生したとしても、半導体インゴット1の上面1aの変形が抑えられる。
【0021】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0022】
(特徴1)
半導体装置の製造方法であって、
第1主面(1a)と第2主面(1b)を有する半導体インゴット(1)の前記第1主面に変形防止層(30)を形成する変形防止層形成工程と、
前記半導体インゴット内にレーザを照射するレーザ照射工程であって、前記半導体インゴット内の所定深さを延びる面(3)に前記レーザが照射される、レーザ照射工程と、
前記第1主面を含む半導体ウェハ(2)を前記レーザが照射された面に沿って前記半導体インゴットの残りの層から剥離する剥離工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【0023】
(特徴2)
前記レーザ照射工程では、前記半導体インゴットの前記第2主面が露出している状態で前記第2主面から前記レーザが照射される、特徴1に記載の半導体装置の製造方法。
【0024】
(特徴3)
前記変形防止層は、有機材料層を有する、特徴1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【0025】
(特徴4)
前記変形防止層は、サポート基板(34)を有しており、
前記サポート基板は、前記半導体インゴットよりもヤング率が大きい、特徴1~3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0026】
(特徴5)
前記半導体インゴットが窒化物半導体である、特徴1~4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【0027】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0028】
1:半導体インゴット、 2:半導体ウェハ、 3:集光面、 30:変形防止層
図1
図2
図3
図4
図5
図6