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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101896
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 50/75 20190101AFI20240723BHJP
   B60L 7/12 20060101ALI20240723BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240723BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20240723BHJP
【FI】
B60L50/75
B60L7/12 Q
H01M8/00 Z
H01M8/0656
H01M8/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006101
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上阪 周平
(72)【発明者】
【氏名】石川 悠喜
(72)【発明者】
【氏名】前田 良輔
(72)【発明者】
【氏名】星野 佑太
(72)【発明者】
【氏名】黒田 将史
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA12
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD07
5H125BE03
5H125CB03
5H125FF09
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA14
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA57
5H127EE04
(57)【要約】
【課題】エネルギーのロスを抑制することができる。
【解決手段】作業車両は、水素を燃料とする駆動源を搭載した作業車両において、電力を用いて前記駆動源から生成された生成水又は水タンクに貯留された貯留水の電気分解を行う電気分解装置を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を燃料とする駆動源を搭載した作業車両において、
電力を用いて前記駆動源から生成された生成水又は水タンクに貯留された貯留水の電気分解を行う電気分解装置を備える、
作業車両。
【請求項2】
前記電気分解装置により発生した水素を、前記駆動源の燃料として利用する、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記作業車両を走行させる走行モータを更に備え、
前記電気分解装置は、前記電力として、前記作業車両の降坂又は減速時に発生する前記走行モータの回生電力を用いる、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記走行モータが発生する前記回生電力を蓄えるバッテリを更に備え、
前記電気分解装置は、前記電力として、前記走行モータが発生する前記回生電力のうち前記バッテリに充電されない余剰電力を用いる、
請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記生成水又は前記貯留水を精製する水精製部を更に備え、
前記電気分解装置は、前記水精製部により精製された精製水の電気分解を行う、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項6】
水素を貯蔵する水素タンクと、
前記水素タンクに貯留された水素を前記駆動源に供給するための水素供給管と、
前記駆動源に供給される水素のうち前記駆動源で利用されない余剰水素を前記水素供給管と前記駆動源との間で循環させる水素循環機構と、を更に備える、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項7】
前記水素循環機構は、
前記水素供給管に加圧水素を送るポンプと、
前記駆動源と前記ポンプとを接続し、前記駆動源からの前記余剰水素が流れる上流配管と、を含み、
前記電気分解装置により発生した水素は、前記上流配管に供給される、
請求項6に記載の作業車両。
【請求項8】
前記水タンクと、
前記駆動源に供給される水素のうち前記駆動源で利用されない余剰水素と、前記駆動源から生成された前記生成水と、を分離する気液分離装置と、を更に備え、
前記気液分離装置により分離された前記生成水は、前記水タンクに供給される、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項9】
水素を貯蔵する水素タンクと、
前記水素タンクに貯留された水素を前記駆動源に供給するための水素供給管と、
前記駆動源に供給される水素のうち前記駆動源で利用されない余剰水素を前記水素供給管に還流させる水素還流機構と、を更に備える、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラルに向けて、鉱山機械及び建設機械等のゼロエミッション化が急務である。ゼロエミッション化を図るための手段の一つとして、燃料電池システム及び水素エンジンがある。例えば、燃料電池システムは、燃料電池(FC: Fuel Cell)と、バッテリと、燃料である水素を貯蔵する水素タンクと、を備える。例えば、燃料電池システムは、走行モータによって走行する燃料電池車に搭載される。例えば、バッテリに充電された電力は、燃料電池車の力行時の駆動エネルギーとして利用される。例えば、燃料電池車の降坂又は減速時に発生する走行モータの回生電力は、バッテリに充電される。しかし、バッテリの容量により、バッテリに充電可能な電力は制限される。そのため、バッテリに充電しきれない電力は、熱エネルギー等のロスとなる。また、バッテリを搭載していない水素エンジン車の場合は、発電したエネルギーは全てロスとなる。そのため、エネルギーのロスを抑制する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、空気中の水分を凝縮して水を生成する水分凝縮手段と、生成した水を濾過する濾過手段と、濾過された水を使用する燃料電池と、燃料電池の余剰電力によって水分凝縮手段を動作させる制御手段と、を備える燃料電池システムが開示されている。燃料電池システムは、燃料電池自動車(FCEV)に搭載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-206928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、濾過された水は、燃料電池セルの電解質膜の加湿に利用されるに過ぎず、FCEVの駆動エネルギーとして利用されるものではない。そのため、エネルギーのロスを抑制する上で改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、エネルギーのロスを抑制することができる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業車両は、水素を燃料とする駆動源を搭載した作業車両において、電力を用いて前記駆動源から生成された生成水又は水タンクに貯留された貯留水の電気分解を行う電気分解装置を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、エネルギーのロスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るダンプトラックの側面図。
図2】実施形態に係る燃料電池システムの回路構成のブロック図。
図3】実施形態に係る燃料電池システムにおける走行中の電気等の流れの説明図。
図4】実施形態に係る燃料電池システムにおける回生中の電気等の流れの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態においては、燃料電池システムを構成する作業車両として、鉱山などの作業現場を走行して積荷を運搬する運搬車両であるダンプトラックを挙げて説明する。
【0011】
<ダンプトラック>
図1は、実施形態に係るダンプトラック2の側面図である。図2は、実施形態に係る燃料電池システム1の回路構成のブロック図である。
図1及び図2を併せて参照し、ダンプトラック2は、水素を燃料とする駆動源30(FCスタックに相当)を搭載している。ダンプトラック2は、電力を用いて駆動源30から生成された生成水又は水タンク41に貯留された貯留水の電気分解を行う電気分解装置40を備える。
【0012】
ダンプトラック2は、水素を燃料とする駆動源30を搭載した車体フレーム10と、車体フレーム10と回動部11で回動自在に結合され且つ積載物を搭載するダンプボディ12(ベッセルに相当)と、車体フレーム10を支持する走行装置13と、を備える。例えば、ダンプトラック2は、運転者による運転操作によらずに無人で駆動する無人ダンプトラックでもよいし、運転者による運転操作に基づいて駆動する有人ダンプトラックでもよい。
【0013】
以下、ダンプトラック2の前進方向(車体前方)、後進方向(車体後方)及び車両幅方向(車体左右方向)を「車両前方(車両前後方向一方側)」、「車両後方(車両前後方向他方側)」及び「車両幅方向」と称する。車両幅方向は、「左側(車両幅方向一方側)」又は「右側(車両幅方向他方側)」と称する場合もある。ダンプトラック2が前進する方向に対して右手を右側、ダンプトラック2が前進する方向に対して左手を左側と称する。ダンプトラック2の車両上下方向(車体上下方向)、車両上方(車体上方)及び車両下方(車体下方)を単に「上下方向」、「上方」及び「下方」と称する。図の例では、ダンプトラック2は、水平面(水平な地面)に配置されている。ダンプトラック2の車両上下方向(車体上下方向)、車両上方(車体上方)及び車両下方(車体下方)は、ダンプトラック2が水平面に配置された状態の上下方向(鉛直方向)、鉛直上方及び鉛直下方とそれぞれ一致する。
【0014】
車体フレーム10は、車両前後方向に延びている。車体フレーム10は、回動部11を介して、ダンプボディ12を回動自在に支持する。回動部11は、車体フレーム10上において車両幅方向に延びる軸部(ダンプボディ12の回動中心軸に相当)を含む部分である。車体フレーム10は、走行装置13に支持されている。
【0015】
ダンプボディ12は、車体フレーム10と回動部11で回動自在に結合される。ダンプボディ12は、積荷が積載される部材(荷台に相当)である。ダンプボディ12の少なくとも一部は、車体フレーム10よりも上方に配置される。ダンプボディ12は、ダンプ動作及び下げ動作を行うことが可能である。
【0016】
ダンプ動作とは、ダンプボディ12を車体フレーム10から離隔させてダンプ方向に傾斜させる動作を意味する。ダンプ方向は、車体フレーム10の後方である。実施形態において、ダンプ動作は、ダンプボディ12の前端部を上昇させて、ダンプボディ12を後方に傾斜させることを含む。ダンプ動作により、ダンプボディ12の積載面は、後方に向かって下方に傾斜する。
【0017】
下げ動作とは、ダンプボディ12を車体フレーム10に接近させる動作を意味する。下げ動作は、ダンプ動作とは逆方向の動作である。実施形態において、下げ動作は、ダンプボディ12の前端部を下降させることを含む。
【0018】
ダンプ動作及び下げ動作により、ダンプボディ12は、ダンプ姿勢及び積載姿勢に調整される。ダンプ姿勢とは、ダンプボディ12が上昇している姿勢を意味する。積載姿勢とは、ダンプボディ12が下降している姿勢を意味する。図1の例では、積載姿勢のダンプボディ12を実線で示し、ダンプ姿勢のダンプボディ12を二点鎖線で示している。
【0019】
例えば、排土作業を実施する場合、ダンプボディ12は、積載姿勢からダンプ姿勢に変化するように、ダンプ動作する。ダンプボディ12に積荷が積載されている場合、積荷は、ダンプ動作により、ダンプボディ12の後端部から後方に排出される。一方、積込作業が実施される場合、ダンプボディ12は、積載姿勢に調整される。
【0020】
ダンプボディ12は、運転室15を上方から保護するプロテクタ16を備える。プロテクタ16は、ダンプボディ12が積載姿勢にあるときは運転室15を上方から覆うように配置される。プロテクタ16は、ダンプボディ12の前端側に設けられている。プロテクタ16は、運転室15よりも上方に配置されている。プロテクタ16は、車両幅方向に延びている。例えば、運転室15は、車両幅方向中央よりも車両左側に配置されている。
【0021】
運転室15は、プラットフォーム17に支持されている。プラットフォーム17は、車体フレーム10の前部上方に設けられている。プラットフォーム17は、オペレータの運転室15への乗降時の足場確保のために設けられている。プラットフォーム17は、ダンプトラック2の搭載機器の整備時の足場確保のために設けられている。プラットフォーム17は、プロテクタ16よりも下方に配置されている。プラットフォーム17は、車輪21,22よりも上方に配置されている。プラットフォーム17は、車両幅方向に延びている。プラットフォーム17は、車両前後方向及び車両幅方向に平行な板状に形成されている。
【0022】
走行装置13は、車体フレーム10を支持する。走行装置13は、ダンプトラック2を走行させる。走行装置13は、ダンプトラック2を前進又は後進させる。走行装置13の少なくとも一部は、車体フレーム10よりも下方に配置される。走行装置13は、複数の車輪21,22を備える。複数の車輪21,22は、前輪21と、前輪21よりも後方に配置される後輪22と、を含む。
【0023】
前輪21は、ダンプトラック2の進行方向を変えるために操舵される操舵輪である。前輪21は、左右一対配置されている。左右一対の前輪21は、車体フレーム10の前部を介して車両幅方向に間隔をあけて配置されている。前輪21は、左右に1つずつ(計2つ)設けられている。
【0024】
後輪22は、駆動源30により駆動される駆動輪である。後輪22は、左右一対配置されている。左右一対の後輪22は、車体フレーム10の後部を介して車両幅方向に間隔をあけて配置されている。後輪22は、左右に2つずつ(計4つ)設けられている。
【0025】
<燃料電池システム>
図2は、実施形態に係る燃料電池システム1の回路構成のブロック図である。図3は、実施形態に係る燃料電池システム1における走行中の電気等の流れの説明図である。図4は、実施形態に係る燃料電池システム1における回生中の電気等の流れの説明図である。図中において、電気の流れを点線矢印、酸素の流れを破線矢印、水素の流れを実線矢印、生成水(水)の流れを一点鎖線矢印でそれぞれ示す。
【0026】
図2から図4を併せて参照し、燃料電池システム1(システムの一例)は、駆動源30(FCスタックに相当)と、水素タンク31と、走行モータ35と、バッテリ36と、電気分解装置40と、水タンク41と、気液分離装置45と、水精製部46と、ポンプ51(リサーキュレーションポンプに相当)と、を備える。例えば、燃料電池システム1の構成要素は、車体フレーム10に搭載されている。
【0027】
駆動源30は、燃料ガスである水素と酸化ガスである酸素とを化学反応させて発電する燃料電池(FC)である。例えば、燃料電池は、複数の単位セルが積層されたスタック構造を有する。例えば、燃料電池は、外気に含まれる酸素を利用して発電する。なお、燃料電池は、酸化ガス供給装置(不図示)により酸素を含む空気が供給されてもよい。
【0028】
水素タンク31は、水素を貯蔵するタンクである。例えば、水素タンク31は、円筒形状を有することが好ましい。図2の例では、1個の水素タンク31を示している。なお、水素タンク31の形状及び個数は、上記に限らない。例えば、水素タンク31は、扁平形状であってもよい。例えば、水素タンク31の数は、2個以上であってもよい。例えば、水素タンク31の形状及び個数は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0029】
走行モータ35は、ダンプトラック2を走行させるためのモータである。走行モータ35は、駆動源30と電気的に接続されている。走行モータ35は、走行装置13の後輪22に接続されている。走行モータ35が発生した回転力は、走行装置13の後輪22に伝達される。
【0030】
例えば、バッテリ36は、リチウムイオンバッテリ等の二次電池である。バッテリ36は、走行モータ35と電気的に接続されている。例えば、バッテリ36に充電された電力は、ダンプトラック2の力行時の駆動エネルギーとして利用される。バッテリ36は、ダンプトラック2の降坂又は減速時に発生する走行モータ35の回生電力を蓄える。なお、バッテリ36は、駆動源30で発生した電力を蓄えてもよい。
【0031】
電気分解装置40は、電力を用いて駆動源30から生成された生成水又は水タンク41に貯留された貯留水の電気分解を行う。電気分解装置40により水の電気分解が行われることで、水素及び酸素が発生する。本実施形態では、電気分解装置40により発生した水素を、駆動源30の燃料として利用する。一方、発生した酸素は、外部に排気される。
【0032】
電気分解装置40は、走行モータ35と電気的に接続されている。電気分解装置40は、電力として、ダンプトラック2の降坂又は減速時に発生する走行モータ35の回生電力を用いる。電気分解装置40は、電力として、走行モータ35が発生する回生電力のうちバッテリ36に充電されない余剰電力を用いる。
【0033】
例えば、バッテリ36に充電可能な電力(以下「バッテリ容量」ともいう。)、走行モータ35が発生する回生電力(以下「モータ発電量」ともいう。)に関する情報は、コントローラ(不図示)に入力されてもよい。例えば、コントローラは、モータ発電量がバッテリ容量を超えたときに、走行モータ35が発生する回生電力がバッテリ36に充電されないと判断してもよい。例えば、コントローラは、モータ発電量からバッテリ容量(具体的には、バッテリ36の残容量)を引いた分を余剰電力として算出してもよい。
【0034】
水タンク41は、水を貯留するタンクである。例えば、水タンク41は、電気分解装置40に搭載されてもよい。なお、水タンク41は、電気分解装置40の外部に設けられてもよい。例えば、水タンク41の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0035】
気液分離装置45は、駆動源30に供給される水素のうち駆動源30で利用されない余剰水素と、駆動源30から生成された生成水と、を分離する。気液分離装置45により分離された生成水は、水タンク41に供給される。
【0036】
例えば、水精製部46は、電気分解装置40において分解される水を清浄化するためのフィルタである。例えば、水精製部46は、粉塵フィルタ、ケミカルフィルタ、触媒等で構成されてもよい。例えば、水精製部46の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0037】
水精製部46は、生成水又は貯留水を精製する。本実施形態では、水精製部46は、気液分離装置45により分離された生成水を精製する。電気分解装置40は、水精製部46により精製された精製水の電気分解を行う。
【0038】
図の例では、水精製部46は、電気分解装置40の上流に設けられる。具体的に、水精製部46は、気液分離装置45と水タンク41とを接続する配管の途中に設けられる。なお、水精製部46は、電気分解装置40の内部に設けられてもよい。例えば、水精製部46は、水タンク41の下流に設けられてもよい。例えば、水精製部46の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0039】
燃料電池システム1は、水素タンク31に貯留された水素を駆動源30に供給するための水素供給管32と、駆動源30に供給される水素のうち駆動源30で利用されない余剰水素を水素供給管32と駆動源30との間で循環させる水素循環機構50と、を更に備える。
【0040】
水素供給管32において水素タンク31に接続される部分とは反対側の部分は、駆動源30に接続される。例えば、水素供給管32は、高圧水素(例えば、約70MPa)に耐えうる高圧金属配管で構成されることが好ましい。なお、水素供給管32の途中には、高圧水素を減圧するための減圧バルブが設けられてもよい。
【0041】
ポンプ51は、水素循環機構50の構成要素である。水素循環機構50は、水素供給管32に余剰水素を加圧した加圧水素を送るポンプ51と、駆動源30からの余剰水素が流れる上流配管52及び下流配管53と、電気分解装置40から発生した水素が流れる合流配管56と、を備える。
【0042】
上流配管52は、駆動源30とポンプ51とを接続する配管である。上流配管52は、ポンプ51の上流に設けられる。合流配管56は、電気分解装置40と上流配管52とを接続する配管である。合流配管56は、電気分解装置40により発生した水路を上流配管52に供給する。電気分解装置40により発生した水素(例えば、常温常圧の水素)は、合流配管56を通じて上流配管52に供給される。上流配管52内には、駆動源30からの余剰水素及び電気分解装置40により発生した水素(いずれもポンプ51により加圧される前の低圧の水素)が流れる。例えば、上流配管52の途中には、気液分離装置45が設けられてもよい。
【0043】
下流配管53は、水素供給管32とポンプ51とを接続する配管である。下流配管53は、ポンプ51の下流に設けられる。下流配管53内には、駆動源30からの余剰水素のうちポンプ51により加圧された加圧水素が流れる。そのため、下流配管53内を流れる加圧水素の圧力は、上流配管52内を流れる水素の圧力よりも高い。
【0044】
燃料電池システム1は、駆動源30に供給される水素のうち駆動源30で利用されない余剰水素を水素供給管32に還流させる水素還流機構55を更に備える。上流配管52及び下流配管53は、水素還流機構55の構成要素である。例えば、水素還流機構55は、水素循環機構50の少なくとも一部によって構成されてもよい。
【0045】
なお、各種配管の途中には、各種流体の流れを切り替えるための切替バルブが設けられてもよい。例えば、切替バルブは、配管の分岐部分に設けられてもよい。例えば、コントローラは、ダンプトラック2の駆動状態(例えば、走行中、回生中など)に応じて各種流体の流れが切り替わるように切替バルブを制御してもよい。
【0046】
<走行中の電気等の流れ>
次に、図3等を参照してダンプトラック2の走行中の電気等の流れの一例を説明する。
駆動源30には、水素タンク31内の水素が供給される。駆動源30は、燃料ガスである水素と酸化ガスである酸素とを化学反応させて発電する。駆動源30は、外気に含まれる酸素を利用して発電する。
【0047】
気液分離装置45により、駆動源30から生成された生成水と、駆動源30に供給される水素のうち駆動源30で利用されない余剰水素と、が分離される。気液分離装置45により分離された生成水は、水タンク41に供給(貯水)される。気液分離装置45により分離された余剰水素は、ポンプ51等を含む水素循環機構50により、再度、駆動源30の燃料として駆動源30に供給される。
【0048】
駆動源30で発生した電力(以下「FC出力」ともいう。)は、走行モータ35の駆動エネルギーとして利用される。走行モータ35の駆動により、駆動輪である後輪22(タイヤ)が回転する。これにより、ダンプトラック2が走行する。バッテリ36に充電された電力は、ダンプトラック2の力行時(例えば、積車走行、登坂時など)における走行モータ35の駆動エネルギーとして利用される。FC出力の不足分は、バッテリ36が放電して補う。
【0049】
<回生中の電気等の流れ>
次に、図4等を参照してダンプトラック2の回生中(例えば、降坂又は減速中)の電気等の流れの一例を説明する。
バッテリ36には、ダンプトラック2の降坂又は減速時に発生する走行モータ35の回生電力が充電される。走行モータ35が発生する回生電力のうちバッテリ36に充電されない余剰電力は、電気分解装置40が用いる電力として利用される。
【0050】
電気分解装置40では、余剰電力により、水タンク41に貯水されている水(気液分離装置45により分離された生成水)の電気分解が行われる。水の電気分解により、水素及び酸素が発生する。電気分解装置40により発生した水素は、合流配管56等を通じて駆動源30に供給され、駆動源30の燃料として利用される。一方、発生した酸素は、外部に排気される。
【0051】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態のダンプトラック2は、水素を燃料とする駆動源30を搭載している。ダンプトラック2は、電力を用いて駆動源30から生成された生成水又は水タンク41に貯留された貯留水の電気分解を行う電気分解装置40を備える。
この構成によれば、電気分解装置40が用いる電力により、駆動源30から生成された生成水又は水タンク41に貯留された貯留水の電気分解が行われることで、水素が発生する。発生した水素は、ダンプトラック2の駆動エネルギーとして利用することができる。したがって、エネルギーのロスを抑制することができる。
【0052】
本実施形態では、電気分解装置40により発生した水素を、駆動源30の燃料として利用する。
この構成によれば、発生した水素を、駆動源30の燃料として利用することができる。したがって、駆動源30の燃料のロスを抑制することができる。例えば、水素タンク31の水素の消費を減らすことができる。
【0053】
本実施形態では、ダンプトラック2は、ダンプトラック2を走行させる走行モータ35を更に備える。電気分解装置40は、電力として、ダンプトラック2の降坂又は減速時に発生する走行モータ35の回生電力を用いる。
この構成によれば、走行モータ35の回生電力を、電気分解を行うための電力として有効に利用することができる。
【0054】
本実施形態では、ダンプトラック2は、走行モータ35が発生する回生電力を蓄えるバッテリ36を更に備える。電気分解装置40は、電力として、走行モータ35が発生する回生電力のうちバッテリ36に充電されない余剰電力を用いる。
この構成によれば、バッテリ36に充電されない余剰電力を、電気分解を行うための電力として有効に利用することができる。したがって、余剰電力のロスを抑制することができる。
【0055】
本実施形態では、ダンプトラック2は、生成水又は貯留水を精製する水精製部46を更に備える。電気分解装置40は、水精製部46により精製された精製水の電気分解を行う。
この構成によれば、精製水の電気分解が行われることで、より高純度の水素が発生する。したがって、より高純度の水素を駆動源30の燃料として利用することができる。
【0056】
本実施形態では、ダンプトラック2は、水素を貯蔵する水素タンク31と、水素タンク31に貯留された水素を駆動源30に供給するための水素供給管32と、駆動源30に供給される水素のうち駆動源30で利用されない余剰水素を水素供給管32と駆動源30との間で循環させる水素循環機構50と、を更に備える。
この構成によれば、駆動源30で利用されない余剰水素を、再度、駆動源30の燃料として利用することができる。そのため、駆動源30の燃料のロスをより効果的に抑制することができる。したがって、水素タンク31の水素の消費をより効果的に減らすことができる。
【0057】
本実施形態では、水素循環機構50は、水素供給管32に加圧水素を送るポンプ51と、駆動源30とポンプ51とを接続し、駆動源30からの余剰水素が流れる上流配管52と、を含む。電気分解装置40により発生した水素は、上流配管52に供給される。
例えば、電気分解装置40により発生した水素が水素供給管32に直に供給される場合は、電気分解装置40により発生した水素の圧力を上げる必要がある。これに対し本構成によれば、電気分解装置40により発生した水素は、上流配管52に供給されることで、電気分解装置40により発生した水素の圧力を上げる必要がない。すなわち、電気分解装置40により発生した水素の圧力を上げるためにエネルギーを要しない。したがって、エネルギーのロスをより効果的に抑制することができる。
【0058】
本実施形態では、ダンプトラック2は、水タンク41と、気液分離装置45と、を更に備える。気液分離装置45は、駆動源30に供給される水素のうち駆動源30で利用されない余剰水素と、駆動源30から生成された生成水と、を分離する。気液分離装置45により分離された生成水は、水タンク41に供給される。
この構成によれば、気液分離装置45により分離された生成水を水タンク41に貯留することができる。したがって、水タンク41の貯留水の消費をより効果的に減らすことができる。例えば、電気分解する水として生成水を活用することにより、外部からの給水を不要とすることができる。
【0059】
本実施形態では、ダンプトラック2は、水素を貯蔵する水素タンク31と、水素タンク31に貯留された水素を駆動源30に供給するための水素供給管32と、駆動源30に供給される水素のうち駆動源30で利用されない余剰水素を水素供給管32に還流させる水素還流機構55と、を更に備える。
この構成によれば、駆動源30で利用されない余剰水素を水素供給管32に還流させることで、再度、駆動源30の燃料として利用することができる。そのため、駆動源30の燃料のロスをより効果的に抑制することができる。したがって、水素タンク31の水素の消費をより効果的に減らすことができる。
【0060】
<変形例>
上述した実施形態では、電気分解装置により発生した水素を、駆動源の燃料として利用する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、電気分解装置により発生した水素を、水素タンクに供給してもよい。例えば、電気分解装置により発生した水素を利用する態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0061】
上述した実施形態では、作業車両は、作業車両を走行させる走行モータを更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、作業車両は、走行モータを備えなくてもよい。例えば、駆動源が水素エンジンの場合は、作業車両は、水素エンジンの駆動により走行してもよい。例えば、走行モータの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0062】
上述した実施形態では、電気分解装置は、電力として、作業車両の降坂又は減速時に発生する走行モータの回生電力を用いる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、電気分解装置は、走行モータの回生電力を用いなくてもよい。例えば、電気分解装置は、駆動源が発生する電力を用いてもよい。例えば、電気分解装置は、バッテリに充電された電力を用いてもよい。例えば、電気分解を行うための電力の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0063】
上述した実施形態では、作業車両は、走行モータが発生する回生電力を蓄えるバッテリを更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、駆動源が水素エンジンの場合は、作業車両は、バッテリを備えなくてもよい。例えば、バッテリの設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0064】
上述した実施形態では、電気分解装置は、電力として、走行モータが発生する回生電力のうちバッテリに充電されない余剰電力を用いる例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、電気分解装置は、バッテリに充電されない余剰電力を用いなくてもよい。例えば、電気分解装置は、走行モータの回生電力の一部を用いてもよい。例えば、走行モータの回生電力は、電気分解装置が用いる電力と、バッテリの充電との両方に同時に利用されてもよい。例えば、走行モータの回生電力又は余剰電力の利用態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0065】
上述した実施形態では、作業車両は、生成水又は貯留水を精製する水精製部を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、作業車両は、水精製部を備えなくてもよい。例えば、駆動源から生成された生成水又は水タンクに貯留された貯留水に対して直に電気分解が行われてもよい。例えば、水精製部の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0066】
上述した実施形態では、作業車両は、水素を貯蔵する水素タンクと、水素タンクに貯留された水素を駆動源に供給するための水素供給管と、駆動源に供給される水素のうち駆動源で利用されない余剰水素を水素供給管と駆動源との間で循環させる水素循環機構と、を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、作業車両は、水素タンク、水素供給管及び水素循環機構の少なくとも一つを備えなくてもよい。例えば、水素タンク、水素供給管及び水素循環機構の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0067】
上述した実施形態では、水素循環機構は、水素供給管に加圧水素を送るポンプと、駆動源と前記ポンプとを接続し、駆動源からの余剰水素が流れる上流配管と、を含み、電気分解装置により発生した水素は、上流配管に供給される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、電気分解装置により発生した水素は、水素供給管に供給されてもよい。例えば、電気分解装置により発生した水素の供給態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0068】
上述した実施形態では、作業車両は、水タンクと、駆動源に供給される水素のうち駆動源で利用されない余剰水素と、駆動源から生成された生成水と、を分離する気液分離装置と、を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、作業車両は、水タンク及び気液分離装置の少なくとも一つを備えなくてもよい。例えば、水タンク及び気液分離装置の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0069】
上述した実施形態では、気液分離装置により分離された生成水は、水タンクに供給される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば。気液分離装置により分離された生成水は、水タンクに供給されなくてもよい。例えば、気液分離装置により分離された生成水は、外部に排出されてもよい。例えば、気液分離装置により分離された生成水の利用態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0070】
上述した実施形態では、作業車両は、水素を貯蔵する水素タンクと、水素タンクに貯留された水素を駆動源に供給するための水素供給管と、駆動源に供給される水素のうち駆動源で利用されない余剰水素を前記水素供給管に還流させる水素還流機構と、を更に備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、作業車両は、水素タンク、水素供給管及び水素還流機構の少なくとも一つを備えなくてもよい。例えば、水素タンク、水素供給管及び水素還流機構の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0071】
上述した実施形態では、駆動源は、燃料ガスである水素と酸化ガスである酸素とを化学反応させて発電する燃料電池(FC)である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、駆動源は、水素を燃料とする内燃機関である水素エンジンであってもよい。例えば、駆動源は、燃料電池及び水素エンジンを含んでもよい。例えば、駆動源の構成態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0072】
上述した実施形態では、作業車両は、ダンプトラックである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、作業車両は、ショベルやブルドーザ、ホイールローダ等の他の作業車両であってもよい。例えば、作業車両の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であり、上述した実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0074】
(付記1)
水素を燃料とする駆動源を搭載した作業車両において、
電力を用いて前記駆動源から生成された生成水又は水タンクに貯留された貯留水の電気分解を行う電気分解装置を備える、
作業車両。
【0075】
(付記2)
前記電気分解装置により発生した水素を、前記駆動源の燃料として利用する、
付記1に記載の作業車両。
【0076】
(付記3)
前記作業車両を走行させる走行モータを更に備え、
前記電気分解装置は、前記電力として、前記作業車両の降坂又は減速時に発生する前記走行モータの回生電力を用いる、
付記1又は2に記載の作業車両。
【0077】
(付記4)
前記走行モータが発生する前記回生電力を蓄えるバッテリを更に備え、
前記電気分解装置は、前記電力として、前記走行モータが発生する前記回生電力のうち前記バッテリに充電されない余剰電力を用いる、
付記3に記載の作業車両。
【0078】
(付記5)
前記生成水又は前記貯留水を精製する水精製部を更に備え、
前記電気分解装置は、前記水精製部により精製された精製水の電気分解を行う、
付記1から4の何れかに記載の作業車両。
【0079】
(付記6)
水素を貯蔵する水素タンクと、
前記水素タンクに貯留された水素を前記駆動源に供給するための水素供給管と、
前記駆動源に供給される水素のうち前記駆動源で利用されない余剰水素を前記水素供給管と前記駆動源との間で循環させる水素循環機構と、を更に備える、
付記1から5の何れかに記載の作業車両。
【0080】
(付記7)
前記水素循環機構は、
前記水素供給管に加圧水素を送るポンプと、
前記駆動源と前記ポンプとを接続し、前記駆動源からの前記余剰水素が流れる上流配管と、を含み、
前記電気分解装置により発生した水素は、前記上流配管に供給される、
付記6に記載の作業車両。
【0081】
(付記8)
前記水タンクと、
前記駆動源に供給される水素のうち前記駆動源で利用されない余剰水素と、前記駆動源から生成された前記生成水と、を分離する気液分離装置と、を更に備え、
前記気液分離装置により分離された前記生成水は、前記水タンクに供給される、
付記1から付記7の何れかに記載の作業車両。
【0082】
(付記9)
水素を貯蔵する水素タンクと、
前記水素タンクに貯留された水素を前記駆動源に供給するための水素供給管と、
前記駆動源に供給される水素のうち前記駆動源で利用されない余剰水素を前記水素供給管に還流させる水素還流機構と、を更に備える、
付記1から付記8の何れかに記載の作業車両。
【符号の説明】
【0083】
2…ダンプトラック(作業車両)、30…駆動源、31…水素タンク、32…水素供給管、35…走行モータ、36…バッテリ、40…電気分解装置、41…水タンク、45…気液分離装置、46…水精製部、50…水素循環機構、51…ポンプ、52…上流配管、55…水素還流機構
図1
図2
図3
図4