(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101908
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】推定装置、推定システム、推定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240723BHJP
G16H 50/30 20180101ALI20240723BHJP
G06Q 50/22 20240101ALI20240723BHJP
【FI】
A61B5/11 230
A61B5/11 210
G16H50/30
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006125
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】黄 晨暉
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 史行
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 浩司
(72)【発明者】
【氏名】井原 和紀
【テーマコード(参考)】
4C038
5L099
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA11
4C038VA12
4C038VB14
4C038VC20
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】歩行に応じて計測された身体能力に関するデータを用いて、転倒リスク因子を推定できる推定装置等を提供する。
【解決手段】被験者の歩行に応じて計測された身体能力に関する第1特徴量データと、被験者の属性データとを取得するデータ取得部と、取得した第1特徴量データおよび属性データを主成分分析して、身体能力因子および属性因子に関連する第2特徴量データを構築し、構築された第2特徴量データを用いて転倒リスク要因に応じた転倒リスク情報を推定する推定部と、推定された転倒リスク情報を出力する出力部と、を備える推定装置とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の歩行に応じて計測された身体能力に関する第1特徴量データと、前記被験者の属性データとを取得するデータ取得手段と、
取得した前記第1特徴量データおよび前記属性データを主成分分析して、身体能力因子および属性因子に関連する第2特徴量データを構築し、構築された前記第2特徴量データを用いて転倒リスク要因に応じた転倒リスク情報を推定する推定手段と、
推定された前記転倒リスク情報を出力する出力手段と、を備える推定装置。
【請求項2】
前記第1特徴量データおよび前記属性データの入力に応じて、前記転倒リスク要因に関連する少なくとも一つの身体能力因子を推定し、前記属性データに含まれる属性因子および推定された前記身体能力因子を主成分分析して前記第2特徴量を構築し、構築された前記第2特徴量を用いて転倒リスクスコアを出力する推定モデルを記憶する記憶手段を備え、
推定手段は、
取得された前記第1特徴量データおよび前記属性データを前記推定モデルに入力し、前記推定モデルから出力された少なくとも一つの前記身体能力因子を用いて、前記転倒リスク情報を推定する請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記データ取得手段は、
歩行に応じて計測されたセンサデータの時系列データを用いて生成された歩行波形データから抽出された、前記転倒リスク要因に関連する少なくとも一つの前記身体能力因子を推定するために用いられる前記第1特徴量データを取得し、
前記記憶手段は、
前記第1特徴量データおよび前記属性データの入力に応じて、少なくとも一つの前記身体能力因子を出力する身体能力推定モデルと、
少なくとも一つの前記属性因子および少なくとも一つの前記身体能力因子の入力に応じて、少なくとも一つの前記属性因子および少なくとも一つの前記身体能力因子を主成分分析し、少なくとも一つの前記第2特徴量を出力する特徴量構築モデルと、
少なくとも一つの前記第2特徴量の入力に応じて転倒リスクスコアを出力する転倒リスク推定モデルと、を記憶し、
前記推定手段は、
前記第1特徴量データおよび前記属性データを前記身体能力推定モデルに入力し、前記身体能力推定モデルから出力された少なくとも一つの前記身体能力因子を、前記被験者の身体能力として推定する第1推定手段と、
少なくとも一つの前記属性因子および少なくとも一つの前記身体能力因子を前記特徴量構築モデルに入力して少なくとも一つの前記第2特徴量を構築する特徴量構築手段と、
少なくとも一つの前記第2特徴量を前記転倒リスク推定モデルに入力し、前記転倒リスク推定モデルから出力された前記転倒リスクスコアを用いて、前記被験者に関する前記転倒リスク情報を推定する第2推定手段と、を有する請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記属性データは、前記属性因子として、前記被験者のBMI(Body Mass Index)および年齢を含む請求項3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記身体能力推定モデルは、前記属性データおよび前記第1特徴量データの入力に応じて、握力、動的バランス、下肢筋力、移動能力、および静的バランスに関する推定値を、前記身体能力因子として出力する請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
前記身体能力推定モデルは、
前記握力の推定値として、前記被験者の握力値を出力し、
前記動的バランスの推定値として、進行方向、垂直方向、および左右方向における腰部の調和指標を出力し、
前記下肢筋力の推定値として、椅子立ち上がりテストにおける立ち座り時間を出力し、
前記移動能力の推定値として、TUG(Time Up and Go)テストにおけるTUG所要時間を出力し、
前記静的バランスの推定値として、片脚立位テストにおける片脚立位時間を出力する請求項5に記載の推定装置。
【請求項7】
前記転倒リスク推定モデルは、
転倒経験の有無に応じて分類された2群間の分布の離れ具合を示す指標が所定値を超える主成分を前記第2特徴量として用いた学習によって構築され、
前記第2推定手段は、
前記特徴量構築手段によって構築された複数の前記第2特徴量のうち、前記転倒リスク推定モデルの構築に用いられた少なくとも一つの前記第2特徴量を前記転倒リスク推定モデルに入力して、前記転倒リスクスコアを推定する請求項3に記載の推定装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の推定装置と、
転倒リスク要因の推定対象である被験者の履物に設置され、空間加速度および空間角速度を計測し、計測した前記空間加速度および前記空間角速度を用いて歩行に応じたセンサデータを生成し、生成した前記センサデータを出力するセンサと、前記センサデータの時系列データから一歩行周期分の歩行波形データを抽出し、抽出された前記歩行波形データを正規化し、正規化された前記歩行波形データから前記転倒リスク要因の推定に用いられる第1特徴量を抽出し、抽出された第1特徴量を含む第1特徴量データを生成し、生成された前記第1特徴量データを前記推定装置に出力する特徴量データ生成手段と、を有する歩容計測装置と、を備える推定システム。
【請求項9】
コンピュータが、
被験者の歩行に応じて計測された身体能力に関する第1特徴量データと、前記被験者の属性データとを取得し、
取得した前記第1特徴量データおよび前記属性データを主成分分析して、身体能力因子および属性因子に関連する第2特徴量データを構築し、
構築された前記第2特徴量データを用いて転倒リスク要因に応じた転倒リスク情報を推定し、
推定された前記転倒リスク情報を出力する推定方法。
【請求項10】
被験者の歩行に応じて計測された身体能力に関する第1特徴量データと、前記被験者の属性データとを取得する処理と、
取得した前記第1特徴量データおよび前記属性データを主成分分析して、身体能力因子および属性因子に関連する第2特徴量データを構築する処理と、
構築された前記第2特徴量データを用いて転倒リスク要因に応じた転倒リスク情報を推定する処理と、
推定された前記転倒リスク情報を出力する処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転倒リスクに関する情報を推定する推定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルスケアへの関心の高まりに伴って、歩容に応じた情報を提供するサービスに注目が集まっている。例えば、靴等の履物に実装されたセンサによって計測されたセンサデータを用いて、歩容を解析する技術が開発されている。センサデータの時系列データには、身体状態と関連する歩容事象(歩行イベントとも呼ぶ)の特徴が現れる。例えば、センサデータから抽出された特徴量に基づいて、転倒リスクに関する情報を推定できれば、思いもよらぬ転倒等を回避できる可能性がある。高齢者は、転倒によって、様々な傷害を受ける可能性がある。そのため、転倒リスクを評価することは、高齢者の健康に関して重要な課題である。
【0003】
特許文献1には、被測定者の転倒リスク要因を推定する要因推定システムについて開示されている。特許文献1のシステムは、被測定者の歩行時における体動を示す体動データに基づいて、被測定者の2以上の歩行パラメータを算出する。特許文献1のシステムは、算出された2以上の歩行パラメータに基づいて、被測定者の転倒リスク要因に含まれる1以上の主成分を推定する。
【0004】
特許文献2には、日常生活における歩行に関する目標を設定するシステムについて開示されている。特許文献2のシステムは、任意の被験者の歩行パラメータを取得する。特許文献2のシステムは、歩行パラメータ・歩行特徴スコア関係式に基づいて、該被験者の歩行パラメータから歩行特徴スコアを算出する。特許文献2のシステムは、算出された歩行特徴スコアに応じて、該被験者が目標とすべき歩行特徴目標を設定する。また、特許文献2のシステムは、歩行パラメータ・活動量関係式に基づいて、該被験者の歩行パラメータから活動量を算出し、算出された活動量に応じて該被験者が目標とすべき活動量目標を設定する。特許文献2には、標準化した歩行パラメータを主成分分析し、複数の主成分(歩行因子)のスコアを算出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/049196号
【特許文献2】特開2015-202140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のシステムは、カメラ等の計測装置によって撮影された動画像データに基づいて被測定者の歩行態様を分析し、当該被測定者の転倒リスク要因を推定する。そのため、特許文献1のシステムは、動画像データに基づいて歩行容態を分析できない限り、被測定者の転倒リスクを推定できなかった。
【0007】
特許文献2のシステムは、シート式圧力センサやモーションキャプチャ等の備え付けの計測機器を用いて、歩行因子を計測する。特許文献2のシステムは、備え付けの計測機器を用いなければ、歩行因子を含む歩行パラメータを計測できなかった。そのため、特許文献2のシステムは、日常生活の歩行に基づいて、歩行因子を算出できなかった。
【0008】
本開示の目的は、歩行に応じて計測された身体能力に関するデータを用いて、転倒リスク因子を推定できる推定装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様の推定装置は、被験者の歩行に応じて計測された身体能力に関する第1特徴量データと、被験者の属性データとを取得するデータ取得部と、取得した第1特徴量データおよび属性データを主成分分析して、身体能力因子および属性因子に関連する第2特徴量データを構築し、構築された第2特徴量データを用いて転倒リスク要因に応じた転倒リスク情報を推定する推定部と、推定された転倒リスク情報を出力する出力部と、を備える。
【0010】
本開示の一態様の推定方法においては、被験者の歩行に応じて計測された身体能力に関する第1特徴量データと、被験者の属性データとを取得し、取得した第1特徴量データおよび属性データを主成分分析して、身体能力因子および属性因子に関連する第2特徴量データを構築し、構築された第2特徴量データを用いて転倒リスク要因に応じた転倒リスク情報を推定し、推定された転倒リスク情報を出力する。
【0011】
本開示の一態様のプログラムは、被験者の歩行に応じて計測された身体能力に関する第1特徴量データと、被験者の属性データとを取得する処理と、取得した第1特徴量データおよび属性データを主成分分析して、身体能力因子および属性因子に関連する第2特徴量データを構築する処理と、構築された第2特徴量データを用いて転倒リスク要因に応じた転倒リスク情報を推定する処理と、推定された転倒リスク情報を出力する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、歩行に応じて計測された身体能力に関するデータを用いて、転倒リスク因子を推定できる推定装置等を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係る推定システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る推定システムが備える歩容計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る歩容計測装置の配置例を示す概念図である。
【
図4】第1の実施形態に係る歩容計測装置に設定されるローカル座標系と世界座標系の関係の一例について説明するための概念図である。
【
図5】第1の実施形態に係る歩容計測装置に関する説明で用いられる人体面について説明するための概念図である。
【
図6】第1の実施形態に係る歩容計測装置に関する説明で用いられる歩行周期について説明するための概念図である。
【
図7】第1の実施形態に係る歩容計測装置に関する説明で用いられる歩容パラメータについて説明するための概念図である。
【
図8】第1の実施形態に係る推定システムが備える推定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】第1の実施形態に係る推定システムが転倒リスクの推定に用いる転倒リスク要因の一例である。
【
図10】第1の実施形態に係る推定システムによる身体能力推定モデルを用いた身体能力の推定例を示す概念図である。
【
図11】第1の実施形態に係る推定システムによる特徴量構築モデルを用いた主成分分析による主成分の推定例を示す概念図である。
【
図12】第1の実施形態に係る推定システムによる転倒リスク推定モデルを用いた転倒スコアの推定例を示す概念図である。
【
図13】転倒経験の有無によって2群に分類された複数の被験者に関する指標を主成分分析することで構築された主成分の一例をまとめた表である。
【
図14】転倒経験の有無によって2群に分類された複数の被験者に関する指標を主成分分析することで構築された主成分と、属性因子または身体能力因子との相関係数をまとめた表である。
【
図15】握力因子を用いた学習で構築された転倒リスク推定モデルに関して、10分割交差検証を行った結果を示すROC曲線である。
【
図16】加齢因子および握力因子を用いた学習で構築された転倒リスク推定モデルに関して、10分割交差検証を行った結果を示すROC曲線である。
【
図17】加齢因子、握力因子、および動的バランス因子を用いた学習で構築された転倒リスク推定モデルに関して、10分割交差検証を行った結果を示すROC曲線である。
【
図18】実際の身体能力テストで計測された握力を用いた学習で構築された転倒リスク推定モデルに関して、10分割交差検証を行った結果を示すROC曲線である。
【
図19】握力の実測値(真値)を用いて構築されたモデルによって推定された転倒リスクスコア(真値)と、本実施形態の手法で推定された転倒リスクスコア(推定値)との相関を示すグラフである。
【
図20】握力(真値)を用いて構築された転倒リスク推定モデルによって推定された転倒リスクスコアの度数分布を示すグラフである。
【
図21】握力(推定値)を用いて構築された転倒リスク推定モデルによって推定された転倒リスクスコアの度数分布を示すグラフである。
【
図22】第1の実施形態に係る推定システムが備える歩容計測装置の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図23】第1の実施形態に係る推定システムが備える推定装置の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
【
図24】第1の実施形態に係る推定システムの適用例について説明するための概念図である。
【
図25】第1の実施形態に係る推定システムの適用例について説明するための概念図である。
【
図26】第2の実施形態に係る推定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図27】各実施形態の制御や処理を実行するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0015】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る推定システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の推定システムは、ユーザの歩行に応じたセンサデータを計測する。本実施形態の推定システムは、計測されたセンサデータを用いて、そのユーザの転倒リスクに寄与する因子(転倒リスク要因)を推定する。
【0016】
本実施形態では、歩行パターンに含まれる特徴(歩容とも呼ぶ)と転倒リスクとの関連性に基づいて、転倒リスクを推定する例を挙げる。本実施形態では、歩容に関連する五つの関連項目(五項目とも呼ぶ)と、験者の身体属性とを用いて、転倒リスクを推定する。五項目は、全身の総合筋力(握力)、動的バランス、下肢筋力、移動能力、および静的バランスに関する。これらの五項目は、転倒リスクとの相関を有する。五項目は、互いにある程度の関連性があるが、基本的に独立しているとみなす。本実施形態においては、五項目の全てに基づいて転倒リスクを推定する例を挙げる。
【0017】
(構成)
図1は、本実施形態に係る推定システム1の構成の一例を示すブロック図である。推定システム1は、歩容計測装置10と推定装置13を備える。本実施形態においては、歩容計測装置10と推定装置13が別々のハードウェアに構成される例について説明する。例えば、歩容計測装置10は、転倒リスク要因の推定対象である被験者(ユーザ)の履物等に設置される。例えば、推定装置13の機能は、被験者の携帯する携帯端末にインストールされる。以下においては、歩容計測装置10および推定装置13の構成について、個別に説明する。
【0018】
〔歩容計測装置〕
図2は、歩容計測装置10の構成の一例を示すブロック図である。歩容計測装置10は、センサ11と特徴量データ生成部12を有する。本実施形態においては、センサ11と特徴量データ生成部12が一体化された例を挙げる。センサ11と特徴量データ生成部12は、別々の装置として提供されてもよい。
【0019】
図2のように、センサ11は、加速度センサ111と角速度センサ112を有する。
図2には、加速度センサ111と角速度センサ112が、センサ11に含まれる例を挙げる。センサ11には、加速度センサ111および角速度センサ112以外のセンサが含まれてもよい。センサ11に含まれうる加速度センサ111および角速度センサ112以外のセンサについては、説明を省略する。
【0020】
加速度センサ111は、3軸方向の加速度(空間加速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。加速度センサ111は、足の動きに関する物理量として、加速度(空間加速度とも呼ぶ)を計測する。加速度センサ111は、計測した加速度を特徴量データ生成部12に出力する。例えば、加速度センサ111には、圧電型や、ピエゾ抵抗型、静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。加速度センサ111として用いられるセンサは、加速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0021】
角速度センサ112は、3軸周りの角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測するセンサである。角速度センサ112は、足の動きに関する物理量として、角速度(空間角速度とも呼ぶ)を計測する。角速度センサ112は、計測した角速度を特徴量データ生成部12に出力する。例えば、角速度センサ112には、振動型や静電容量型等の方式のセンサを用いることができる。角速度センサ112として用いられるセンサは、角速度を計測できれば、その計測方式に限定を加えない。
【0022】
センサ11は、例えば、加速度や角速度を計測する慣性計測装置によって実現される。慣性計測装置の一例として、IMU(Inertial Measurement Unit)が挙げられる。IMUは、3軸方向の加速度を計測する加速度センサ111と、3軸周りの角速度を計測する角速度センサ112を含む。センサ11は、VG(Vertical Gyro)やAHRS(Attitude Heading)などの慣性計測装置によって実現されてもよい。また、センサ11は、GPS/INS(Global Positioning System/Inertial Navigation System)によって実現されてもよい。センサ11は、足の動きに関する物理量を計測できれば、慣性計測装置以外の装置によって実現されてもよい。
【0023】
図3は、右足の靴100の中に、歩容計測装置10が配置される一例を示す概念図である。
図3の例では、足弓の裏側に当たる位置に、歩容計測装置10が設置される。例えば、歩容計測装置10は、靴100の中に挿入されるインソールに配置される。例えば、歩容計測装置10は、靴100の底面に配置されてもよい。例えば、歩容計測装置10は、靴100の本体に埋設されてもよい。歩容計測装置10は、靴100から着脱できてもよいし、靴100から着脱できなくてもよい。歩容計測装置10は、足の動きに関するセンサデータを計測できさえすれば、足弓の裏側ではない位置に設置されてもよい。また、歩容計測装置10は、ユーザが履いている靴下や、ユーザが装着しているアンクレット等の装飾品に設置されてもよい。また、歩容計測装置10は、足に直に貼り付けられたり、足に埋め込まれたりしてもよい。
図3には、右足の靴100に歩容計測装置10が設置される例を示す。歩容計測装置10は、左足の靴100に設置されてもよい。また、歩容計測装置10は、両足の靴100に設置されてもよい。
【0024】
図3の例では、歩容計測装置10(センサ11)を基準として、左右方向のx軸、前後方向のy軸、上下方向のz軸を含むローカル座標系が設定される。x軸は左方を正とし、y軸は後方を正とし、z軸は上方を正とする。センサ11に設定される軸の向きは、左右の足で同じでもよく、左右の足で異なっていてもよい。例えば、同じスペックで生産されたセンサ11が左右の靴100の中に配置される場合、左右の靴100に配置されるセンサ11の上下の向き(Z軸方向の向き)は、同じ向きである。その場合、左足に由来するセンサデータに設定されるローカル座標系の3軸と、右足に由来するセンサデータに設定されるローカル座標系の3軸とは、左右で同じにある。
【0025】
図4は、足弓の裏側に設置された歩容計測装置10(センサ11)に設定されるローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と、地面に対して設定される世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)について説明するための概念図である。世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)では、進行方向に正対した状態のユーザが直立した状態で、ユーザの横方向がX軸方向(左向きが正)、ユーザの背面の方向がY軸方向(後ろ向きが正)、重力方向がZ軸方向(鉛直上向きが正)に設定される。なお、
図4の例は、ローカル座標系(x軸、y軸、z軸)と世界座標系(X軸、Y軸、Z軸)の関係を概念的に示すものであり、ユーザの歩行に応じて変動するローカル座標系と世界座標系の関係を正確に示すものではない。
【0026】
図5は、人体に対して設定される面(人体面とも呼ぶ)について説明するための概念図である。本実施形態では、身体を左右に分ける矢状面、身体を前後に分ける冠状面、身体を水平に分ける水平面が定義される。なお、
図5のように、足の中心線を進行方向に向けて直立した状態では、世界座標系とローカル座標系が一致する。本実施形態においては、x軸を回転軸とする矢状面内の回転をロール、y軸を回転軸とする冠状面内の回転をピッチ、z軸を回転軸とする水平面内の回転をヨーと定義する。また、x軸を回転軸とする矢状面内の回転角をロール角、y軸を回転軸とする冠状面内の回転角をピッチ角、z軸を回転軸とする水平面内の回転角をヨー角と定義する。
【0027】
図2のように、特徴量データ生成部12(特徴量データ生成装置とも呼ぶ)は、取得部121、正規化部122、抽出部123、生成部125、および特徴量データ出力部127を有する。例えば、特徴量データ生成部12は、歩容計測装置10の全体制御やデータ処理を行うマイクロコンピュータまたはマイクロコントローラによって実現される。例えば、特徴量データ生成部12は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等を有する。特徴量データ生成部12は、加速度センサ111および角速度センサ112を制御して、角速度や加速度を計測する。例えば、特徴量データ生成部12は、被験者(ユーザ)の携帯する携帯端末(図示しない)の側に実装されてもよい。
【0028】
取得部121(取得手段)は、加速度センサ111から、3軸方向の加速度を取得する。また、取得部121は、角速度センサ112から、3軸周りの角速度を取得する。例えば、取得部121は、取得された角速度および加速度等の物理量(アナログデータ)をAD変換(Analog-to-Digital Conversion)する。なお、加速度センサ111および角速度センサ112によって計測された物理量(アナログデータ)は、加速度センサ111および角速度センサ112の各々においてデジタルデータに変換されてもよい。取得部121は、変換後のデジタルデータ(センサデータとも呼ぶ)を正規化部122に出力する。取得部121は、図示しない記憶部に、センサデータを記憶させるように構成されてもよい。センサデータには、デジタルデータに変換された加速度データと、デジタルデータに変換された角速度データとが少なくとも含まれる。加速度データは、3軸方向の加速度ベクトルを含む。角速度データは、3軸周りの角速度ベクトルを含む。加速度データおよび角速度データには、それらのデータの取得時間が紐付けられる。また、取得部121は、加速度データおよび角速度データに対して、実装誤差や温度補正、直線性補正などの補正を加えてもよい。
【0029】
正規化部122(正規化手段)は、取得部121からセンサデータを取得する。正規化部122は、センサデータに含まれる3軸方向の加速度および3軸周りの角速度の時系列データから、一歩行周期分の時系列データ(歩行波形データとも呼ぶ)を抽出する。正規化部122は、抽出された一歩行周期分の歩行波形データの時間を、0~100%(パーセント)の歩行周期に正規化(第1正規化とも呼ぶ)する。0~100%の歩行周期に含まれる1%や10%などのタイミングを、歩行フェーズとも呼ぶ。また、正規化部122は、第1正規化された一歩行周期分の歩行波形データに関して、立脚相が60%、遊脚相が40%になるように正規化(第2正規化とも呼ぶ)する。立脚相は、足の裏側の少なくとも一部が地面に接している期間である。遊脚相は、足の裏側が地面から離れている期間である。歩行波形データを第2正規化すれば、特徴量が抽出される歩行フェーズのずれが、外乱の影響でぶれることを抑制できる。
【0030】
図6は、右足を基準とする一歩行周期について説明するための概念図である。左足を基準とする一歩行周期も、右足と同様である。
図6の横軸は、右足の踵が地面に着地した時点を起点とし、次に右足の踵が地面に着地した時点を終点とする右足の一歩行周期である。
図6の横軸は、一歩行周期を100%として第1正規化されている。また、
図6の横軸は、立脚相が60%、遊脚相が40%になるように第2正規化されている。片足の一歩行周期は、足の裏側の少なくとも一部が地面に接している立脚相と、足の裏側が地面から離れている遊脚相とに大別される。立脚相は、さらに、荷重応答期T1、立脚中期T2、立脚終期T3、遊脚前期T4に細分される。遊脚相は、さらに、遊脚初期T5、遊脚中期T6、遊脚終期T7に細分される。なお、
図6は一例であって、一歩行周期を構成する期間や、それらの期間の名称等を限定するものではない。
【0031】
図6のように、歩行においては、複数の事象(歩行イベントとも呼ぶ)が発生する。P1は、右足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HC:Heel Contact)。踵接地HCは、HS(Heel Strike)とも表現される。P2は、右足の足裏が接地した状態で、左足の爪先が地面から離れる事象(反対足爪先離地)を表す(OTO:Opposite Toe Off)。P3は、右足の足裏が接地した状態で、右足の踵が持ち上がる事象(踵持ち上がり)を表す(HR:Heel Rise)。P4は、左足の踵が接地した事象(反対足踵接地)である(OHS:Opposite Heel Strike)。P5は、左足の足裏が接地した状態で、右足の爪先が地面から離れる事象(爪先離地)を表す(TO:Toe Off)。P6は、左足の足裏が接地した状態で、左足と右足が交差する事象(足交差)を表す(FA:Foot Adjacent)。P7は、左足の足裏が接地した状態で、右足の脛骨が地面に対してほぼ垂直になる事象(脛骨垂直)を表す(TV:Tibia Vertical)。P8は、右足の踵が接地する事象(踵接地)を表す(HC:Heel Contact)。P8は、P1から始まる歩行周期の終点に相当するとともに、次の歩行周期の起点に相当する。なお、
図6は一例であって、歩行において発生する事象や、それらの事象の名称を限定するものではない。
【0032】
図7は、歩容パラメータの一例について説明するための概念図である。
図7には、右足ステップ長S
R、左足ステップ長S
L、ストライド長T、歩隔W、足角F、および分回し量DIを図示する。また、
図7には、進行方向の軸(Y軸)に平行であり、左右の足の中間を結ぶ軌跡に相当する進行軸PAを図示する。右足ステップ長S
Rは、左足の足裏が接地した状態から、進行方向に振り出された右足の踵が着地した状態に遷移した際の、右足の踵と左足の踵とのY座標の差である。左足ステップ長S
Lは、右足の足裏が接地した状態から、進行方向に振り出された左足の踵が着地した状態に遷移した際の、左足の踵と右足の踵とのY座標の差である。ストライド長Tは、右足ステップ長S
Rと左足ステップ長S
Lの和である。歩隔Wは、右足と左足の間隔である。
図7において、歩隔Wは、接地した状態における右足の踵の中心線(X座標)と、接地した状態における左足の踵の中心線(X座標)との差である。足角Fは、足裏面が接地した状態において、足の中心線と進行方向(Y軸)が成す角度である。本実施形態においては、立脚相において、足が接地している状態の足角を評価する。分回し量DIは、遊脚相において足の中心軸が進行軸PAから最も離れたタイミングにおける、進行軸PAと足の距離である。本実施形態において、分回し量DIは、下肢の長さが影響するので、身長で正規化される。
【0033】
例えば、正規化部122は、進行方向加速度(Y方向加速度)の時系列データ(実線)から、踵接地HCや爪先離地TOのタイミングを検出する。踵接地HCのタイミングは、進行方向加速度(Y方向加速度)の時系列データに表れる極大ピークの直後の極小ピークのタイミングである。踵接地HCのタイミングの目印になる極大ピークは、一歩行周期分の歩行波形データの最大ピークに相当する。連続する踵接地HCの間の区間が、一歩行周期である。爪先離地TOのタイミングは、進行方向加速度(Y方向加速度)の時系列データに変動が表れない立脚相の期間の後に表れる極大ピークの立ち上がりのタイミングである。
【0034】
例えば、正規化部122は、ロール角(X軸周り角速度)の時系列データ(破線)から、立脚中期のタイミングを検出する。ロール角が最小のタイミングと、ロール角が最大のタイミングとの中点のタイミングが、立脚中期に相当する。例えば、歩行速度や、歩幅、分回し、内旋/外旋、底屈/背屈などのパラメータ(歩容パラメータとも呼ぶ)は、立脚中期を基準として求めることができる。
【0035】
例えば、正規化部122は、進行方向加速度(Y方向加速度)の時系列データから、踵接地HCと爪先離地TOを検出する。正規化部122は、連続する踵接地HCの間の区間を、一歩行周期分の歩行波形データとして抽出する。正規化部122は、第1正規化によって、一歩行周期分の歩行波形データの横軸(時間軸)を、0~100%の歩行周期に変換する。正規化部122は、歩行フェーズが0%の踵接地HCから、その踵接地HCに後続する爪先離地TOまでの区間を0~60%に正規化する。また、正規化部122は、爪先離地TOから、爪先離地TOに後続する歩行フェーズが100%の踵接地HCまでの区間を60~100%に正規化する。その結果、一歩行周期分の歩行波形データは、歩行周期が0~60%の区間(立脚相)と、歩行周期が60~100%の区間(遊脚相)とに正規化される。第2正規化後の歩行波形データ(実線)では、爪先離地TOのタイミングが60%に一致する。
【0036】
進行方向加速度(Y方向加速度)以外の加速度/角速度に関して、正規化部122は、進行方向加速度(Y方向加速度)の歩行周期に合わせて、歩行周期分の歩行波形データを抽出/正規化する。また、正規化部122は、3軸周りの角速度の時系列データを積分することで、3軸周りの角度の時系列データを生成してもよい。その場合、正規化部122は、3軸周りの角度に関しても、進行方向加速度(Y方向加速度)の歩行周期に合わせて、一歩行周期分の歩行波形データを抽出/正規化する。
【0037】
正規化部122は、進行方向加速度(Y方向加速度)以外の加速度/角速度に基づいて、一歩行周期分の歩行波形データを抽出/正規化してもよい。例えば、正規化部122は、垂直方向加速度(Z方向加速度)の時系列データから、踵接地HCや爪先離地TOを検出してもよい。踵接地HCのタイミングは、垂直方向加速度(Z方向加速度)の時系列データに表れる急峻な極小ピークのタイミングである。急峻な極小ピークのタイミングにおいては、垂直方向加速度(Z方向加速度)の値がほぼ0になる。踵接地HCのタイミングの目印になる極小ピークは、一歩行周期分の歩行波形データの最小ピークに相当する。連続する踵接地HCの間の区間が、一歩行周期である。爪先離地TOのタイミングは、垂直方向加速度(Z方向加速度)の時系列データが、踵接地HCの直後の極大ピークの後に変動の小さい区間を経た後に、なだらかに増大する途中の変曲点のタイミングである。また、正規化部122は、進行方向加速度(Y方向加速度)および垂直方向加速度(Z方向加速度)の両方に基づいて、一歩行周期分の歩行波形データを抽出/正規化してもよい。また、正規化部122は、進行方向加速度(Y方向加速度)および垂直方向加速度(Z方向加速度)以外の加速度や角速度、角度等に基づいて、一歩行周期分の歩行波形データを抽出/正規化してもよい。
【0038】
抽出部123(抽出手段)は、正規化部122によって正規化された一歩行周期分の歩行波形データを取得する。抽出部123は、一歩行周期分の歩行波形データから、転倒リスク要因の推定に用いられる特徴量(第1特徴量とも呼ぶ)を抽出する。抽出部123によって抽出される特徴量の詳細については、後述する。抽出部123は、予め設定された条件に基づいて、時間的に連続する歩行フェーズを統合した歩行フェーズクラスターから、歩行フェーズクラスターごとの特徴量を抽出する。歩行フェーズクラスターは、少なくとも一つの歩行フェーズを含む。歩行フェーズクラスターには、単一の歩行フェーズも含まれる。転倒リスク要因の推定に用いられる特徴量の抽出元の歩行波形データや歩行フェーズについては、後述する。
【0039】
生成部125(生成手段)は、歩行フェーズクラスターを構成する歩行フェーズの各々から抽出された特徴量(第1特徴量)に特徴量構成式を適用して、歩行フェーズクラスターの特徴量(第2特徴量)を生成する。特徴量構成式は、歩行フェーズクラスターの特徴量を生成するために、予め設定された計算式である。例えば、特徴量構成式は、四則演算に関する計算式である。例えば、特徴量構成式を用いて算出される第2特徴量は、歩行フェーズクラスターに含まれる各歩行フェーズにおける第1特徴量の積分平均値や算術平均値、傾斜、ばらつきなどである。例えば、生成部125は、歩行フェーズクラスターを構成する歩行フェーズの各々から抽出された第1特徴量の傾斜やばらつきを算出する計算式を、特徴量構成式として適用する。例えば、歩行フェーズクラスターが単独の歩行フェーズで構成される場合は、傾斜やばらつきを算出できないため、積分平均値や算術平均値などを計算する特徴量構成式を用いればよい。
【0040】
特徴量データ出力部127(特徴量データ出力手段)は、生成部125によって生成された歩行フェーズクラスターごとの特徴量データ(第1特徴量データとも呼ぶ)を出力する。特徴量データ出力部127は、生成された歩行フェーズクラスターの特徴量データを、その特徴量データを用いた推定を実行する推定装置13に出力する。
【0041】
〔推定装置〕
図8は、推定装置13の構成の一例を示すブロック図である。推定装置13は、データ取得部131、記憶部132、第1推定部133、特徴量構築部135、第2推定部137、および出力部139を有する。第1推定部133、特徴量構築部135、および第2推定部137は、推定部134を構成する。本実施形態において、推定装置13は、被験者の履く履物に設置されたセンサ11によって計測されたセンサデータを用いて、転倒リスクを推定する。推定装置13は、センサデータの代わりに、モーションキャプチャによって計測されたデータを用いて、転倒リスクを推定するように構成されてもよい。
【0042】
データ取得部131(データ取得手段)は、被験者の歩行に応じて算出された特徴量データを歩容計測装置10から取得する。データ取得部131が取得する特徴量データは、身体能力の推定に用いられる少なくとも一つの特徴量からなるベクトルである。データ取得部131は、被験者の特徴量データを第1推定部133および特徴量構築部135に出力する。
【0043】
また、データ取得部131は、被験者の属性データを取得する。属性データは、被験者のBMI(Body Mass Index)および年齢を含む。属性データは、被験者の性別や体格に関する情報を含んでもよい。例えば、体格に関する情報は、脚部や大腿部、下腿部、足の長さ等を含む。例えば、属性データは、入力装置(図示しない)を介して入力される。属性データは、推定装置13に予め記憶させておいてもよい。データ取得部131は、被験者の属性データを第1推定部133および特徴量構築部135に出力する。
【0044】
例えば、データ取得部131は、無線通信を介して、歩容計測装置10から特徴量データを受信する。データ取得部131は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、特徴量データを歩容計測装置10から受信するように構成される。なお、データ取得部131の通信機能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。データ取得部131は、ケーブルなどの有線を介して、歩容計測装置10から特徴量データを受信するように構成されてもよい。
【0045】
記憶部132(記憶手段)は、推定モデル150を記憶する。推定モデル150は、身体能力推定モデル153、特徴量構築モデル155、および転倒リスク推定モデル157を含む。記憶部132は、複数の記憶領域を含む。身体能力推定モデル153、特徴量構築モデル155、および転倒リスク推定モデル157の各々は、単一の記憶部132に記憶されてもよいし、複数の記憶部132に分けて記憶されてもよい。身体能力推定モデル153、特徴量構築モデル155、および転倒リスク推定モデル157の各々の詳細については、後述する。
【0046】
例えば、身体能力推定モデル153、特徴量構築モデル155、および転倒リスク推定モデル157の各々は、後述する入力を説明変数とし、各々の推定対象を応答変数とする学習によって、予め構築されたモデルである。例えば、これらのモデルは、線形回帰のアルゴリズムを用いた学習によって構築される。例えば、これらのモデルは、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)のアルゴリズムを用いた学習によって構築される。例えば、これらのモデルは、ガウス過程回帰(GPR:Gaussian Process Regression)のアルゴリズムを用いた学習によって構築される。例えば、これらのモデルは、ランダムフォレスト(RF:Random Forest)のアルゴリズムを用いた学習によって構築される。例えば、これらのモデルは、特徴量データに応じて、その特徴量データの生成元の被験者を分類する教師なし学習によって構築されてもよい。これらのモデルを構築する学習のアルゴリズムには、特に限定を加えない。
【0047】
身体能力推定モデル153、特徴量構築モデル155、および転倒リスク推定モデル157の各々は、製品の工場出荷時や、推定システム1をユーザが使用する前のキャリブレーション時等のタイミングで、記憶部132に記憶させておけばよい。例えば、身体能力推定モデル153、特徴量構築モデル155、および転倒リスク推定モデル157の各々は、外部のサーバ等の記憶装置に保存されたモデルであってもよい。その場合、その記憶装置と接続されたインターフェース(図示しない)を介して、それらのモデルを推定装置13が用いるように構成されればよい。
【0048】
図9は、転倒リスク要因の一例をまとめた概念図である。転倒リスク要因は、属性因子A1および身体能力因子A2を含む。属性因子A1は、データ取得部131によって取得された属性データである。
図9の例の場合、属性因子A1は、BMIおよび年齢を含む。身体能力因子A2は、握力、動的バランス、下肢筋力、移動能力、および静的バランスといった身体能力に関する。これらの身体能力は、転倒リスクとの相関を有しており、歩容計測装置10によって計測された特徴量データに基づいて推定できる。
【0049】
身体能力推定モデル153は、歩容計測装置によって計測された特徴量データを用いて、身体能力因子A2を推定する。身体能力推定モデル153は、複数の被験者に関して学習された、身体能力因子A2を推定するモデルである。身体能力推定モデル153は、特徴量データの入力に応じて、身体能力因子A2に含まれる握力、動的バランス、下肢能力、移動能力、および静的バランスの各々の推定値を出力する。例えば、身体能力推定モデル153は、単一のモデルによって実現される。例えば、身体能力推定モデル153は、身体能力因子A2に含まれる複数の身体能力ごとに、別々のモデルで構成されてもよい。その場合、複数の身体能力ごとのモデルは、別々のハードウェアに分散されてもよいし、単一のハードウェアに統合されてもよい。
【0050】
図10は、特徴量データおよび属性データを用いた身体能力因子A2の推定の一例について説明するための概念図である。
図10には、身体能力因子A2の推定に用いられる身体能力推定モデル153を示す。
図10の例の場合、身体能力推定モデル153は、特徴量データおよび属性データの入力に応じて、身体能力因子A2の推定値163を出力する。身体能力因子A2の推定値163は、握力、動的バランス、下肢筋力、移動能力、および静的バランスの推定値を含む。身体能力因子A2の推定値163は、特徴量構築部135による特徴量の構築に用いられる。
【0051】
身体能力因子A2の一つである握力は、全身の総合筋力と相関関係がある。握力は、膝伸展力との間にも相関関係がある。また、握力は、性別や年齢、身長などの属性の影響を受ける。特に、握力は、性別の影響を受ける。男性の場合、大腿四頭筋の活動と握力との間に相関がある。そのため、大腿四頭筋の活動の特徴が表れる歩行フェーズには、男性の握力に関する特徴が含まれる。女性の場合、大腿四頭筋の外側広筋、中間広筋、および内側広筋の活動と握力との間に相関がある。そのため、外側広筋、中間広筋、および内側広筋の活動の特徴が表れる歩行フェーズには、女性の握力に関する特徴が含まれる。
【0052】
男性の握力に関する特徴量の一例として、特徴量AM1、特徴量AM2、特徴量AM3、および特徴量AM4が挙げられる。特徴量AM1は、進行方向加速度(Y方向加速度)の時系列データに関する歩行波形データAyの歩行フェーズ3%の区間から抽出される。歩行フェーズ3%は、荷重応答期T1に含まれる。特徴量AM1には、主に、大腿四頭筋のうち外側広筋、中間広筋、および内側広筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量AM2は、進行方向加速度(Y方向加速度)の時系列データに関する歩行波形データAyの歩行フェーズ59~62%の区間から抽出される。歩行フェーズ59~62%は、遊脚前期T4に含まれる。特徴量AM2には、主に、大腿四頭筋のうち大腿直筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量AM3は、垂直方向加速度(Z方向加速度)の時系列データに関する歩行波形データAzの歩行フェーズ59~62%の区間から抽出される。歩行フェーズ59~62%は、遊脚前期T4に含まれる。特徴量AM3には、主に、大腿四頭筋のうち大腿直筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量AM4は、両足が地面に同時に接地している期間のうち、踵接地から反対足爪先離地までの期間の割合(DST1)である(DST:Double Support Time)。DST1は、一歩行周期における、踵接地から反対足爪先離地までの期間の割合である。特徴量AM4には、主に、大腿四頭筋に起因する特徴が含まれる。
【0053】
女性の握力に関する特徴量の一例として、特徴量AF1、特徴量AF2、および特徴量AF3が挙げられる。特徴量AF1は、横方向加速度(X方向加速度)の時系列データに関する歩行波形データAxの歩行フェーズ13%の区間から抽出される。歩行フェーズ13%は、立脚中期T2に含まれる。特徴量AF1には、主に、大腿四頭筋のうち外側広筋、中間広筋、および内側広筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量AF2は、冠状面内(Y軸周り)の角速度(ピッチ角速度)の時系列データに関する歩行波形データGyの歩行フェーズ7~10%の区間から抽出される。歩行フェーズ7~10%は、荷重応答期T1に含まれる。特徴量AF2には、主に、外側広筋、中間広筋、および内側広筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量AF3は、両足が地面に同時に接地している期間のうち、反対足踵接地から爪先離地までの期間の割合(DST2)である(DST:Double Support Time)。DST2は、一歩行周期における、反対足踵接地から爪先離地までの期間の割合である。DST1とDST2の和が、一歩行周期において、両足が地面に同時に接地している期間に相当する。特徴量AF3には、主に、外側広筋、中間広筋、および内側広筋の動きに関する特徴が含まれる。
【0054】
身体能力推定モデル153は、特徴量AM1、特徴量AM2、特徴量AM3、および特徴量AM4の入力に応じて、男性の握力の推定値を出力する。また、身体能力推定モデル153は、歩容計測装置10から取得された特徴量AF1、特徴量AF2、および特徴量AF3の入力に応じて、女性の握力の推定値を出力する。身体能力推定モデル153は、握力の推定値ではなく、握力値に応じたスコアを出力するように構成されてもよい。この場合、握力の大小に応じて設定されるスコアが、握力の推定値に相当する。
【0055】
身体能力因子A2の一つである動的バランスは、腰部の調和指標HR(Harmonic Ratio)によって評価できる。調和指標HRは、左右方向、進行方向、および垂直方向の3方向について算出される。進行方向の調和指標HRは、骨盤を中心とした前後方向(矢状面内)における腰の動きの円滑さに対応する。左右方向の調和指標HRは、骨盤を中心とした上下方向(冠状面内)における腰の動きの円滑さに対応する。垂直方向の調和指標HRは、骨盤を中心とした体の回転(水平面内)における腰の動きの円滑さに対応する。
【0056】
調和指標HRは、右足の1歩分の1周期と、左足の1歩分の1周期とを含む2周期の加速度変化で、1歩行周期が成り立っていることに着目した指標である。調和指標HRは、腰の動きの円滑さに関する指標である。調和指標HRが小さい人は、転倒リスクや腰痛が進行している可能性がある。左右の足は、下腿および大腿を通じて、骨盤と連結される。左右の足から骨盤の間には股関節および膝関節が位置するが、歩行中における骨盤と腰部の周期性は同様である。そのため、左右の足の動きと腰の動きとには、互いに連動するフェーズがある。本実施形態においては、歩行に応じて計測されたセンサデータを用いて、腰の動きの円滑さに関する調和指標を推定する。
【0057】
調和指標HRは、1歩行周期における腰部の加速度の時系列データに対するフーリエ変換で得られた周波数成分を用いて、計算できる。周波数成分には、歩行周期中の要素に該当する偶数番号(even Harmonics)の周波数成分(偶数成分)と、それから逸脱する要素である奇数番号(odd Harmonics)の周波数成分(奇数成分)とが含まれる。調和指標HRは、垂直方向、進行方向、および左右方向の各々について計算される。垂直方向および進行方向の調和指標HRは、偶数成分のパワー和と奇数成分のパワー和の比である。一方、左右方向の調和指標HRは、1歩行周期における左右の足の1歩分(2歩)が1周期になるため、奇数成分のパワー和と偶数成分のパワー和の比である。左右の足は、下腿および大腿を通じて、骨盤と連結される。左右の足から骨盤の間には股関節および膝関節が位置するが、歩行中における骨盤と腰部の周期性は同様である。そのため、左右の足の動きと腰の動きとには、互いに連動するフェーズがある。
【0058】
身体能力推定モデル153は、歩容計測装置10によって計測されたセンサデータ(時系列データ)の周波数成分の入力に応じて、動的バランスの推定値を出力する。身体能力推定モデル153は、動的バランスの推定値として、前後方向、左右方向、および垂直方向の調和指標HRの推定値を出力する。身体能力推定モデル153は、歩容計測装置10によって計測された特徴量データの入力に応じて、対数変換された周波数成分の奇数成分および偶数成分を出力するように構成されてもよい。その場合、第1推定部133が、対数変換された周波数成分の奇数成分および偶数成分を用いて、前後方向、左右方向、および垂直方向の調和指標HRを計算するように、構成されればよい。身体能力推定モデル153は、調和指標HRではなく、調和指標HRに応じたスコアを出力するように構成されてもよい。この場合、調和指標HRの値に応じて設定されるスコアが、動的バランスの推定値に相当する。
【0059】
身体能力因子A2の一つである下肢筋力は、椅子立ち上がりテストの成績によって評価できる。例えば、椅子立ち上がりテストには、椅子の立ち座りを5回繰り返す5回椅子立ち上がりテストがある。5回椅子立ち上がりテストのことを、SS-5(Sit to Stand-5)テストとも呼ぶ。5回椅子立ち上がりテストの成績は、椅子の立ち座りを5回繰り返す時間(立ち座り時間とも呼ぶ)で評価する。立ち座り時間は、SS-5テストの成績値である。立ち座り時間が短いほど、SS-5テストの成績が高い。立ち座り時間は、30秒間における椅子の立ち座り動作回数を計測する30秒椅子立ち上がり(CS-30)テストの成績で評価されてもよい。下肢筋力の指標は、立ち座り時間である。立ち座り時間は、大腿四頭筋や、ハムストリングス、前脛骨筋、腓腹筋との間に相関がある。そのため、これらの特徴が表れる歩行フェーズには、立ち座り時間に関する特徴が含まれる。
【0060】
立ち座り時間に関する特徴量の一例として、特徴量C1、特徴量C2、特徴量C3、および特徴量C4が挙げられる。特徴量C1は、矢状面内(X軸周り)における角速度の時系列データに関する歩行波形データGxの歩行フェーズ42~54%の区間から抽出される。歩行フェーズ42~54%は、立脚終期T3から遊脚前期T4にかけた区間である。特徴量C1には、主に、腓腹筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量C2は、冠状面内(Y軸周り)における角速度の時系列データに関する歩行波形データGyの歩行フェーズ99~100%の区間から抽出される。歩行フェーズ99~100%は、遊脚終期T7の終盤である。特徴量C2には、主に、大腿四頭筋やハムストリングス、前脛骨筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量C3は、冠状面内(Y軸周り)における角速度の時系列データに関する歩行波形データGyの歩行フェーズ10~12%の区間から抽出される。歩行フェーズ10~12%は、立脚中期T2の序盤である。特徴量C3には、主に、大腿四頭筋やハムストリングス、腓腹筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量C4は、水平面内(Z軸周り)における角度(姿勢角)の時系列データに関する歩行波形データEzの歩行フェーズ99%の区間から抽出される。歩行フェーズ99%は、遊脚終期T7の終盤である。特徴量C4には、主に、大腿四頭筋やハムストリングス、前脛骨筋の動きに関する特徴が含まれる。
【0061】
身体能力推定モデル153は、歩容計測装置10から取得された特徴量C1、特徴量C2、特徴量C3、および特徴量C4の入力に応じて、下肢筋力の推定値として、SS-5テストの成績値の推定値を出力する。身体能力推定モデル153は、SS-5テストの成績値の推定値ではなく、SS-5テストの成績値に応じたスコアを出力するように構成されてもよい。この場合、SS-5テストの成績値の大小に応じて設定されるスコアが、下肢筋力の推定値に相当する。
【0062】
身体能力因子A2の一つである移動能力は、TUG(Time Up and Go)テストの成績によって評価できる。例えば、TUGテストの成績は、椅子から立ち上がり、3m(メートル)先の目印まで歩いて方向転換し、再び椅子に座るまでの時間(TUG所要時間とも呼ぶ)で評価できる。TUG所要時間は、TUGテストの成績値である。TUG所要時間が短いほど、TUGテストの成績が高い。移動能力の指標は、TUG所要時間である。TUG所要時間は、大腿四頭筋や、中殿筋、前脛骨筋との間に相関がある。そのため、これらの特徴が表れる歩行フェーズには、TUG所要時間に関する特徴が含まれる。大腿筋膜張筋の特徴は、歩行フェーズ0~45%、85~100%に表れる。中殿筋の特徴は、歩行フェーズ0~25%に表れる。前脛骨筋の特徴は、歩行フェーズ0~10%、57~100%に表れる。
【0063】
移動能力に関する特徴量の一例として、特徴量D1、特徴量D2、特徴量D3、特徴量D4、特徴量D5、および特徴量D6が挙げられる。特徴量D1は、横方向加速度(X方向加速度)の時系列データに関する歩行波形データAxの歩行フェーズ64~65%の区間から抽出される。歩行フェーズ64~65%は、遊脚初期T5に含まれる。特徴量D1には、主に、立ち座り動作における大腿四頭筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量D2は、矢状面内(X軸周り)における角速度の時系列データに関する歩行波形データGxの歩行フェーズ57~58%の区間から抽出される。歩行フェーズ57~58%は、遊脚前期T4に含まれる。特徴量D2には、主に、足の蹴り出し速度に関連する大腿四頭筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量D3は、冠状面内(Y軸周り)における角速度の時系列データに関する歩行波形データGyの歩行フェーズ19~20%の区間から抽出される。歩行フェーズ19~20%は、立脚中期T2に含まれる。特徴量D3には、主に、方向転換における中殿筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量D4は、水平面内(Z軸周り)における角速度の時系列データに関する歩行波形データEzの歩行フェーズ12~13%の区間から抽出される。歩行フェーズ12~13%は、立脚中期T2の序盤である。特徴量D4には、主に、方向転換における中殿筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量D5は、水平面内(Z軸周り)における角速度の時系列データに関する歩行波形データEzの歩行フェーズ74~75%の区間から抽出される。歩行フェーズ74~75%は、遊脚中期T6の序盤である。特徴量D5には、主に、立ち座りおよび方向転換における前脛骨筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量D6は、冠状面内(Y軸周り)における角度(姿勢角)の時系列データに関する歩行波形データEyの歩行フェーズ76~80%の区間から抽出される。歩行フェーズ76~80%は、遊脚中期T6に含まれる。特徴量D6には、主に、立ち座りおよび方向転換における前脛骨筋の動きに関する特徴が含まれる。
【0064】
身体能力推定モデル153は、歩容計測装置10から取得された特徴量D1、特徴量D2、特徴量D3、特徴量D4、特徴量D5、および特徴量D6の入力に応じて、移動能力の推定値として、TUG所要時間の推定値を出力する。身体能力推定モデル153は、TUG所要時間の推定値ではなく、TUG所要時間に応じたスコアを出力するように構成されてもよい。この場合、TUG所要時間の長短に応じて設定されるスコアが、移動能力の推定値に相当する。
【0065】
身体能力因子A2の一つである静的バランスは、片脚立位テストの成績によって評価できる。片脚立位テストの成績は、目を閉じて、片脚を地面から5cm(センチメートル)挙上した状態を維持した時間(片脚立位時間とも呼ぶ)で評価できる。片脚立位時間は、静的バランスの成績値である。片脚立位時間が大きいほど、静的バランスの成績が高い。静的バランスは、閉眼片脚立位テスト以外の成績で評価されてもよい。例えば、静的バランスは、目を開けた状態での片脚立位テスト(開眼片脚立位テスト)や、その他の片脚立位テストのバリエーションで評価されてもよい。静的バランスの指標は、片脚立位時間である。片脚立位時間は、中殿筋や長内転筋、縫工筋、内外転筋肉群との間に相関がある。そのため、これらの特徴が表れる歩行フェーズには、に関する特徴が含まれる。
【0066】
静的バランスに関する特徴量の一例として、特徴量E1、特徴量E2、特徴量E3、特徴量E4、特徴量E5、特徴量E6、および特徴量E7が挙げられる。特徴量E1は、横方向加速度(X方向加速度)の時系列データに関する歩行波形データAxの歩行フェーズ13-19%の区間から抽出される。歩行フェーズ13-19%は、立脚中期T2に含まれる。特徴量E1には、主に、中殿筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量E2は、垂直方向加速度(Z方向加速度)の時系列データに関する歩行波形データAzの歩行フェーズ95%の区間から抽出される。歩行フェーズ95%は、遊脚終期T7の終盤である。特徴量E2には、主に、中殿筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量E3は、冠状面内(Y軸周り)における角速度の時系列データに関する歩行波形データGyの歩行フェーズ64-65%の区間から抽出される。歩行フェーズ64-65%は、遊脚初期T5に含まれる。特徴量E3には、主に、長内転筋および縫工筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量E4は、水平面内(Z軸周り)における角速度の時系列データに関する歩行波形データGzの歩行フェーズ11-16%の区間から抽出される。歩行フェーズ11-16%は、立脚中期T2に含まれる。特徴量E4には、主に、中殿筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量E5は、水平面内(Z軸周り)における角速度の時系列データに関する歩行波形データGzの歩行フェーズ57-58%の区間から抽出される。歩行フェーズ57-58%は、遊脚前期T4に含まれる。特徴量E5には、主に、長内転筋および縫工筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量E6は、水平面内(Z軸周り)における角度(姿勢角)の時系列データに関する歩行波形データEzの歩行フェーズ100%の区間から抽出される。歩行フェーズ100%は、遊脚終期T7から荷重応答期T1に切り替わる踵接地のタイミングに相当する。歩行フェーズ100%における歩行波形データEzの特徴量は、足裏が接地した状態における足角に相当する。特徴量E6には、主に、中殿筋の動きに関する特徴が含まれる。特徴量E7は、遊脚相において足の中心軸が進行軸から最も離れたタイミングにおける、進行軸と足の距離(分回し量)である。特徴量E7は、被験者の身長で規格化された分回し量である。特徴量E7には、主に、内外転筋肉群の動きに関する特徴が含まれる。
【0067】
身体能力推定モデル153は、歩容計測装置10から取得された特徴量E1、特徴量E2、特徴量E3、特徴量E4、特徴量E5、特徴量E6、および特徴量E7の入力に応じて、静的バランスの推定値を出力する。身体能力推定モデル153は、静的バランスの推定値として、片脚立位時間の推定値を出力する。身体能力推定モデル153は、片脚立位時間の推定値ではなく、片脚立位時間に応じたスコアを出力するように構成されてもよい。この場合、片脚立位時間の長短に応じて設定されるスコアが、静的バランスの推定値に相当する。
【0068】
第1推定部133(第1推定手段)は、データ取得部131から特徴量データおよび属性データを取得する。第1推定部133は、取得された特徴量データおよび属性データを用いて、身体能力因子A2を推定する。第1推定部133は、特徴量データおよび属性データを身体能力推定モデル153に入力して、その身体能力推定モデル153からの出力に応じて、身体能力因子A2を推定する。第1推定部133は、身体能力因子A2の推定結果を特徴量構築部135に出力する。クラウドやサーバ等に構築された外部の記憶装置に保存されたモデルを用いる場合、第1推定部133は、その記憶装置と接続されたインターフェース(図示しない)を介して、モデルを用いるように構成される。
【0069】
特徴量構築モデル155は、身体能力因子A2の推定値および属性データを主成分分析して、特徴量(主成分とも呼ぶ)を構築するモデルである。例えば、特徴量構築モデル155は、学習データに基づいて予め構築された主成分計算式である。特徴量構築モデル155は、身体能力因子A2の推定値および属性データの入力に応じて、主成分分析PCA(Principal Component Analysis)を実行する。特徴量構築モデル155は、少なくとも一つの主成分を含む主成分ベクトルPCV(Principal Component Vector)を出力する。特徴量構築モデル155は、転倒リスク要因に関連する主成分のみを出力するように構成されてもよい。
【0070】
例えば、特徴量構築モデル155は、転倒経験の有無によって2群に分類された複数の被験者に関する指標を主成分分析して、主成分ベクトルPSVを構築する。例えば、特徴量構築モデル155は、2群間の分布の離れ具合を定量評価するための指標であるCohenのdを出力する。Cohenのdは、2つの標本間における平均値の差を標準偏差で割って標準化した値(効果量)である。Cohenのdは、2つの標本の平均値がどれだけ離れているかを表す。Cohenのdの値が大きいほど、2つの標本における平均値が離れていることになるため、転倒リスクの推定に有効である。特徴量構築モデル155が出力する値は、Cohenのdに限定されない。例えば、特徴量構築モデル155は、Hedgesのgを出力するように構成されてもよい。
【0071】
図11は、身体能力因子A2の推定値163および属性データ161を用いた主成分分析PCAの一例について説明するための概念図である。
図11には、主成分分析PCAを実行する特徴量構築モデル155を示す。
図11の例の場合、特徴量構築モデル155は、身体能力因子A2の推定値163および属性データ161の入力に応じて主成分分析PCAを実行し、少なくとも一つの主成分(PCV_1、PCV_2、・・・、PCV_N)を出力する(Nは自然数)。転倒リスク要因を判別できれば、特徴量構築モデル155から出力される主成分PCVの数には、特に限定を加えない。例えば、特徴量構築モデル155は、属性因子A1と、身体能力因子A2に関するスコアとの入力に応じて、少なくとも一つの主成分PCVを出力するように構成されてもよい。
【0072】
特徴量構築部135(特徴量構築手段)は、身体能力因子A2の推定値163および属性データ161を用いて、転倒リスク要因の推定に用いられる特徴量を構築する。具体的には、特徴量構築部135は、身体能力因子A2の推定値163および属性データ161を特徴量構築モデル155に入力し、特徴量構築モデル155から出力される主成分ベクトルPSVを特徴量データ165として構築する。特徴量データ165は、少なくとも一つの主成分を含む主成分ベクトルPSVである。特徴量構築部135は、特徴量構築モデル155から出力された特徴量データ165を、第2推定部137に出力する。特徴量構築部135は、特徴量構築モデル155から出力された特徴量データ165に含まれる主成分ベクトルPSVのうち、転倒リスク要因の推定に用いられる主成分のみを、第2推定部137に出力するように構成されてもよい。
【0073】
転倒リスク推定モデル157は、特徴量構築部135によって構築された特徴量データ165を用いて、転倒リスク要因に関連するスコア(転倒リスクスコアとも呼ぶ)を推定する。転倒リスク推定モデル157は、複数の被験者に関して学習された、転倒リスクを推定するモデルである。第2推定モデルは、特徴量構築部135によって構築された特徴量データ165の入力に応じて、転倒リスクスコアを出力する。
【0074】
また、転倒リスク推定モデル157は、特徴量データ165の入力に応じて、転倒リスクに応じた対処法を出力するように構成されてもよい。転倒リスク推定モデル157によって推定される転倒リスクに応じた対処法については、特に限定を加えない。例えば、転倒リスク推定モデル157は、特徴量データ165の入力に応じて、転倒リスクを低減するための対処法を出力する。例えば、転倒リスク推定モデル157は、特徴量データ165の入力に応じて、転倒リスクを回避するための対処法を出力する。例えば、転倒リスク推定モデル157は、特徴量データ165の入力に応じて、転倒リスクを回避するための対処法を第3者に通知するための通知情報を出力する。
【0075】
図12は、特徴量構築部135によって構築された特徴量データ165を用いた転倒スコアの推定の一例について説明するための概念図である。
図12には、特徴量構築部135によって構築された複数の特徴量(主成分PCV)の全てを用いて、転倒スコアを推定する例を示す。例えば、特徴量構築部135によって構築された複数の特徴量(主成分PCV)のうち、一部の(主成分PCV)を用いて、転倒スコアを推定するように構成されてもよい。
【0076】
第2推定部137(第2推定手段)は、特徴量構築部135から特徴量データ(主成分PCV)を取得する。第2推定部137は、取得した特徴量データ(主成分PCV)を用いて、転倒リスクスコアを推定する。第2推定部137は、特徴量データ(主成分PCV)を転倒リスク推定モデル157に入力し、転倒リスク推定モデル157から出力される転倒リスクスコアを推定する。第2推定部137は、推定した転倒リスクスコアを出力部139に出力する。また、第2推定部137は、特徴量構築部135から身体能力因子A2の推定値163を取得する。第2推定部137は、取得した身体能力因子A2の推定値163のうちいずれかを出力部139に出力する。
【0077】
第2推定部137は、転倒リスクスコアや、身体能力因子A2の推定値163に基づいて、転倒リスクに応じた対処法を推定するように構成されてもよい。その場合、第2推定部137は、第2推定部137によって推定される転倒リスクに応じた対処法については、特に限定を加えない。例えば、第2推定部137は、転倒リスクスコアが所定の閾値を越えた場合、転倒リスクを低減するための対処法や、転倒を回避するための対処法を出力する。例えば、第2推定部137は、転倒リスクスコアが所定の閾値を越えた場合、転倒を回避するための対処法を第3者に通知するための通知情報を出力する。特徴量データ165の入力に応じて転倒リスクに応じた対処法を出力するように転倒リスク推定モデル157が構成されている場合、第2推定部137は、転倒リスク推定モデル157から出力される対処法を出力すればよい。
【0078】
出力部139(出力手段)は、転倒リスクスコアや、身体能力因子A2の推定値、転倒リスクに応じた対処法などの転倒リスク情報を、第2推定部137から取得する。出力部139は、取得した転倒リスク情報を出力する。例えば、出力部139は、被験者(ユーザ)の携帯端末の画面に、転倒リスク情報を表示させる。例えば、出力部139は、転倒リスク情報を使用する外部システム等に対して、その転倒リスク情報を出力する。推定装置13から出力された転倒リスク情報の使用に関しては、特に限定を加えない。
【0079】
例えば、推定装置13は、被験者(ユーザ)が携帯する携帯端末(図示しない)を介して、クラウドやサーバに構築された外部システム等に接続される。携帯端末(図示しない)は、携帯可能な通信機器である。例えば、携帯端末は、スマートフォンや、スマートウォッチ、携帯電話等の通信機能を有する携帯型の通信機器である。例えば、推定装置13は、ケーブルなどの有線を介して、携帯端末に接続される。例えば、推定装置13は、無線通信を介して、携帯端末に接続される。例えば、推定装置13は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などの規格に則した無線通信機能(図示しない)を介して、携帯端末に接続される。なお、推定装置13の通信機能は、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)以外の規格に則していてもよい。転倒リスクの推定結果は、携帯端末にインストールされたアプリケーションによって使用されてもよい。その場合、携帯端末は、その携帯端末にインストールされたアプリケーションソフトウェア等によって、推定結果を用いた処理を実行する。
【0080】
〔主成分分析〕
次に、転倒経験の有無によって2群に分類された複数の被験者に関する指標を主成分分析して、主成分ベクトルPSVを構築する一例について説明する。ここでは、主成分ベクトルPSVの一例として、2群間の分布の離れ具合を定量評価するための指標であるCohenのdを用いる例について説明する。
【0081】
図13は、転倒経験の有無によって2群に分類された複数の被験者に関する指標を主成分分析することで構築された主成分ベクトルPSVの一例である。
図13は、転倒経験がない40名の被験者(非転倒群)と、転倒経験がある24名の被験者(転倒群)とに関して、主成分分析が行われた例を示す。
図13には、9個の主成分PSV1~PSV9に関して算出されたCohenのdを示す。Cohenのdは、以下の式1を用いて計算される。
【0082】
【数1】
上記の式1において、x
1は第1群(非転倒群)の標本平均、x
2は第2群(転倒群)の標本平均を示す。s
cは、下記の式2を用いて計算される。
【0083】
【数2】
上記の式2において、n
1は第1群(非転倒群)のサンプルサイズ、S
21は第1群(非転倒群)の分散を示す。また、n
2はサンプルサイズ、S
22は分散を示す。
【0084】
図13のCohenのdに関しては、PSV1、PSV3、PSV7の値が、他のPSVと比べて大きい。すなわち、PSV1、PSV3、PSV7に関するCoHenのdは、転倒リスクの推定に有効である。
【0085】
図14は、
図13の主成分と、属性因子A1または身体能力因子A2との相関係数をまとめた表である。相関係数は、主成分分析PSAの計算の途中で算出され、スコアを再構築するための共分散行列の値である。相関係数は、入力値である属性因子A1または身体能力因子A2と、各々のPCVとの相関を示す。相関係数の絶対値が大きいほど、属性因子A1または身体能力因子A2と、各々のPCVとの相関が大きい。
図14の表においては、動的バランスの指標である調和指標HRを、垂直方向の調和指標HR1、左右方向の調和指標HR2、および進行方向の調和指標HR3の3方向に分けて示す。
【0086】
図14の表によると、PCV1、PCV3、およびPCV7に関する相関係数が0.6以上の高い値を示している。PCV1は、年齢との相関が高いため、加齢因子と呼ぶ。PCV3は、握力との相関が高いため、握力因子と呼ぶ。PCV7は、調和指標HR(動的バランス)との相関が高いため、動的バランス因子と呼ぶ。
【0087】
次に、
図14の表に基づいて、PCV1、PCV3、およびPCV7を単独、もしくは組み合わせて学習させた転倒リスク推定モデル157の汎化性能を、k分割交差検証によって検証した一例を示す。
【0088】
図15~
図17は、上述した非転倒群の40名と転倒群の24名の被験者に関する64個の訓練データセットを用いて、10分割交差検証を行った結果を示すROC(Receiver Operating Characteristic)曲線である。
図15~
図17のグラフにおいて、横軸は偽陽性率であり、縦軸は真陽性率である。ROC曲線の下方の面積AUC(Area Under the Curve)が大きいほど、転倒リスク推定モデル157の精度が高い。
【0089】
図15は、握力因子(PCV3)を用いた学習で構築された転倒リスク推定モデル157に関して、10分割交差検証を行った結果を示すROC曲線である。
図15の検証例は、転倒経験の有無に応じて分類された2群間の分布の離れ具合を示す指標が所定値を超える1つの主成分を第2特徴量として用いた学習によって構築された転倒リスク推定モデル157の例である。握力因子(PCV3)のみを用いた学習で構築された転倒リスク推定モデル157に関する10分割交差検証の結果、AUCは0.67であった。
【0090】
図16は、加齢因子(PCV1)および握力因子(PCV3)を用いた学習で構築された転倒リスク推定モデル157に関して、10分割交差検証を行った結果を示すROC曲線である。
図16の検証例は、転倒経験の有無に応じて分類された2群間の分布の離れ具合を示す指標が所定値を超える2つの主成分を第2特徴量として用いた学習によって構築された転倒リスク推定モデル157の例である。握力因子(PCV3)と加齢因子(PCV1)と握力因子(PCV3)を用いた学習で構築された転倒リスク推定モデル157に関する10分割交差検証の結果、AUCは0.73であった。
【0091】
図17は、加齢因子(PCV1)、握力因子(PCV3)、および動的バランス因子(OPCV7)を用いた学習で構築された転倒リスク推定モデル157に関して、10分割交差検証を行った結果を示すROC曲線である。
図17の検証例は、転倒経験の有無に応じて分類された2群間の分布の離れ具合を示す指標が所定値を超える3つの主成分を第2特徴量として用いた学習によって構築された転倒リスク推定モデル157の例である。加齢因子(PCV1)、握力因子(PCV3)、および動的バランス因子(OPCV7)を用いた学習で構築された転倒リスク推定モデル157に関する10分割交差検証の結果、AUCは0.80であった。
【0092】
図15~
図17の検証の結果、単独の身体能力因子を用いて構築された転倒リスク推定モデル157よりも、複数の身体能力因子を組み合わせて構築された転倒リスク推定モデル157の方の精度が高かった。すなわち、複数の身体能力因子を組み合わせて構築された方が、転倒リスク推定モデル157の精度が高い。
【0093】
〔転倒リスク〕
次に、上述した非転倒群(40名)および転倒群(24名)からなる被験者群(64名)に関する転倒リスクスコアの計算例について説明する。ここでは、フィッシャーの線形判別分析とマハラノビス距離を用いて算出された事後確率で転倒リスクを表現する例を示す。以下の計算は、市販の数値解析ソフトウェア(Matlab:登録商標)を用いて行われた例である。以下の例においては、非転倒群をクラス1とし、転倒群をクラス2とする。
【0094】
被験者群(64名)におけるクラス1(非転倒群)およびクラス2(転倒群)の事前確率Priorは、以下の式3で表現される。
【0095】
【数3】
クラス1(非転倒群)およびクラス2(転倒群)のクラス間共分散行列に関する行列式の対数LogDetSigmaは、4.429である。
【0096】
クラス1(非転倒群)の入力値(PCV1、PCV3、PCV7)のクラス平均Mu1は、以下の式4で表現される。
【0097】
【数4】
クラス2(転倒群)の入力値(PCV1、PCV3、PCV7)のクラス平均Mu2は、以下の式5で表現される。
【0098】
【数5】
クラス1(非転倒群)とクラス2(転倒群)の共分散行列Rは、以下の式6で表現される。
【0099】
【数6】
クラス1(非転倒群)のマハラノビス距離Mah1は、以下の式7によって表現される。
【0100】
【数7】
クラス2(非転倒群)のマハラノビス距離Mah2は、以下の式8によって表現される。
【0101】
【数8】
上記の式7および式8において、InvKは、クラス1(非転倒群)およびクラス2(転倒群)の共分散に関する逆行列の平方根である。
【0102】
ここで、以下の式9によって、クラスごとに変数Pを定義する。
【0103】
【数9】
上記のlogPは、1行2列のベクトルである。
【0104】
以下の式10の演算によって、2つの要素のうち大きい方が抽出される。
【0105】
【数10】
上記の式10を変形すると、以下の式11が得られる。
【0106】
【数11】
クラス1(非転倒群)とクラス2(転倒群)の事後確率Posteriorは、以下の式12を用いて算出される。
【0107】
【数12】
上記の式12において、sum(P)は、Pの全要素の和である。
クラス2(転倒群)の事後確率Posterior(2)が、転倒リスクスコアである。
【0108】
次に、実際の身体能力テストで計測された握力(真値)を用いて構築されたモデルと、本実施形態の手法で構築されたモデルとの比較結果を示す。
【0109】
図18は、実際の身体能力テストで計測された握力(真値)を用いて学習させた転倒リスク推定モデル157に関して、10分割交差検証を行った結果を示すROC曲線である。
図18において、横軸が偽陽性率であり、縦軸が真陽性率である。握力(真値)を用いた学習で構築された転倒リスク推定モデル157に関する10分割交差検証の結果、AUCは0.80であった。
【0110】
図19は、握力の実測値(真値)を用いて構築されたモデルによって推定された転倒リスクスコア(真値)と、本実施形態の手法で推定された転倒リスクスコア(推定値)との相関を示すグラフである。
図19において、横軸がスコア(真値)であり、縦軸がスコア(推定値)である。転倒リスクスコア(真値)と転倒リスクスコア(推定値)の級内相関係数ICC(2、1)は、0.7686であった。すなわち、転倒リスクスコア(真値)と転倒リスクスコア(推定値)の間には、十分な相関がある。
【0111】
図20~
図21は、新規の被験者を含めて、握力(真値)と握力(推定値)を用いて構築された転倒リスク推定モデル157によって推定された転倒リスクスコアの度数分布を示すグラフである。破線は、転倒群の被験者(24名)に関する転倒リスクスコアの度数分布である。一点鎖線は、非転倒群の被験者(40名)に関する転倒リスクスコアの度数分布である。実線は、新規の被験者(10名)に関する転倒リスクスコアの度数分布である。
【0112】
図20は、握力(真値)を用いて構築された転倒リスク推定モデル157によって推定された転倒リスクスコアの度数分布を示すグラフである。
図21は、握力(推定値)を用いて構築された転倒リスク推定モデル157によって推定された転倒リスクスコアの度数分布を示すグラフである。
図20と
図21を比較すると、握力(真値)および握力(推定値)のいずれを用いて構築された転倒リスク推定モデル157に関しても、同様の分布が得られている。また、学習に用いられていない新規の被験者に関しても、同様の分布が得られているため、本実施形態の手法を用いて構築された転倒リスク推定モデル157には十分な汎化性能がある。
【0113】
(動作)
次に、推定システム1の動作について図面を参照しながら説明する。以下においては、推定システム1に含まれる歩容計測装置10および推定装置13について、個別に説明する。歩容計測装置10に関しては、歩容計測装置10に含まれる特徴量データ生成部12の動作について説明する。
【0114】
〔歩容計測装置〕
図22は、歩容計測装置10の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図22のフローチャートに沿った説明においては、歩容計測装置10に含まれる特徴量データ生成部12を動作主体として説明する。
【0115】
図22において、まず、特徴量データ生成部12は、歩行に応じて計測されたセンサデータの時系列データを取得する(ステップS101)。
【0116】
次に、特徴量データ生成部12は、センサデータの時系列データから一歩行周期分の歩行波形データを抽出する(ステップS102)。特徴量データ生成部12は、センサデータの時系列データから踵接地および爪先離地を検出する。特徴量データ生成部12は、連続する踵接地間の区間の時系列データを、一歩行周期分の歩行波形データとして抽出する。
【0117】
次に、特徴量データ生成部12は、抽出された一歩行周期分の歩行波形データを正規化する(ステップS103)。特徴量データ生成部12は、一歩行周期分の歩行波形データを0~100%の歩行周期に正規化する(第1正規化)。さらに、特徴量データ生成部12は、第1正規化された一歩行周期分の歩行波形データの立脚相と遊脚相の比を60:40に正規化する(第2正規化)。
【0118】
次に、特徴量データ生成部12は、正規化された歩行波形に関して、転倒リスクの推定に用いられる歩行フェーズから特徴量を抽出する(ステップS104)。例えば、特徴量データ生成部12は、予め構築された推定モデル(第1推定モデル)に入力される特徴量を抽出する。
【0119】
次に、特徴量データ生成部12は、抽出された特徴量を用いて、歩行フェーズクラスターごとの特徴量を生成する(ステップS105)。
【0120】
次に、特徴量データ生成部12は、歩行フェーズクラスターごとの特徴量を統合して、一歩行周期分の特徴量データを生成する(ステップS106)。
【0121】
次に、特徴量データ生成部12は、生成された特徴量データを推定装置13に出力する(ステップS107)。
【0122】
〔推定装置〕
図23は、推定装置13の動作の一例について説明するためのフローチャートである。
図23のフローチャートに沿った説明においては、推定装置13を動作主体として説明する。
【0123】
図23において、まず、推定装置13は、歩行に応じて計測されたセンサデータを用いて生成された特徴量データを取得する(ステップS111)。
【0124】
次に、推定装置13は、取得した特徴量データおよび属性データを身体能力推定モデル153に入力して、被験者の身体能力を推定する(ステップS112)。
【0125】
次に、推定装置13は、推定された身体能力および属性データを特徴量構築モデル155に入力して、特徴量(主成分)を推定する(ステップS113)。
【0126】
次に、推定装置13は、推定された特徴量を転倒リスク推定モデル157に入力して、
転倒リスクスコアを推定する(ステップS114)。
【0127】
次に、推定装置13は、推定された転倒リスクスコアや、身体能力因子A2の推定値、転倒リスクに応じた対処法などの転倒リスク情報を出力する(ステップS115)。例えば、転倒リスク情報は、ユーザの携帯する端末装置(図示しない)に出力される。例えば、転倒リスク情報は、その転倒リスク情報を用いた処理を実行するシステムに出力される。
【0128】
(適用例)
次に、本実施形態に係る適用例について図面を参照しながら説明する。以下の適用例において、靴に配置された歩容計測装置10によって計測された特徴量データを用いて、ユーザが携帯する携帯端末にインストールされた推定装置13の機能が、転倒リスク情報を推定する例を示す。
【0129】
図24~
図25は、歩容計測装置10が配置された靴100を履いて歩行するユーザの携帯する携帯端末180の画面に、推定装置13による推定結果を表示させる一例を示す概念図である。
図24~
図25は、ユーザの歩行に応じて計測されたセンサデータに基づく特徴量データを用いた転倒リスクの推定結果に応じた転倒リスク情報を、携帯端末180の画面に表示させる例である。
【0130】
図24は、転倒リスク情報が、携帯端末180の画面に表示される一例である。
図24の例では、身体能力因子A2ごとのスコアの値に応じたレーダーチャートが、携帯端末180の画面に表示される。SAは、握力(総合筋力)に関するスコアである。SBは、動的バランスに関するスコアである。SCは、下肢筋力に関するスコアである。SDは、移動能力に関するスコアである。SEは、静的バランスに関するスコアである。
図24の例では、「静的バランススコアSEが低いです」という身体能力に関する情報が、携帯端末180の画面に表示される。携帯端末180の表示部に表示された転倒リスク情報を確認したユーザは、他の身体能力因子のA2と比べて、静的バランススコアSEが低いことを確認できる。
【0131】
推定された転倒リスク情報は、ユーザ以外に提供されてもよい。例えば、転倒リスク情報は、ユーザの体調管理を行うトレーナーや、ユーザの家族などの使用する端末装置(図示しない)に出力されてもよい。例えば、転倒リスク情報は、健康管理等の目的で構築されたデータベース(図示しない)に記録されてもよい。
【0132】
図25は、転倒リスクの推定結果に応じた転倒リスク情報が、携帯端末180の画面に表示される別の一例である。
図25の例では、転倒リスクの推定結果に応じて、「転倒リスクが高まっています。」という転倒リスク情報が、携帯端末180の画面に表示される。また、
図25の例では、転倒リスクの推定も用いられた5つの身体能力因子A2のうち、スコアの低かった静的バランスに関する情報が、携帯端末180の表示部に表示される。
図25の例では、静的バランススコアSEの推定値に応じて、「静的バランスが低下しています。」という静的バランスに関する情報が、携帯端末180の表示部に表示される。さらに、
図25の例では、静的バランススコアSEの推定値に応じて、「トレーニングZを推奨します。下記の動画をご覧ください。」という静的バランスの推定結果に応じた推薦情報が、携帯端末180の表示部に表示される。携帯端末180の表示部に表示された情報を確認したユーザは、推薦情報に応じてトレーニングZの動画を参照して運動することによって、静的バランスの増大につながるトレーニングを実践できる。
【0133】
以上のように、本実施形態の推定システムは、歩容計測装置および推定装置を備える。歩容計測装置は、転倒リスク要因の推定対象である被験者の履物に設置される。歩容計測装置は、センサと特徴量データ生成部を備える。センサは、加速度センサおよび角速度センサを有する。センサは、空間加速度および空間角速度を計測する。センサは、計測した空間加速度および空間角速度を用いて歩行に応じたセンサデータを生成し、生成したセンサデータを出力する。特徴量データ生成部は、センサデータの時系列データから一歩行周期分の歩行波形データを抽出する。特徴量データ生成部は、抽出された歩行波形データを正規化し、正規化された歩行波形データから転倒リスク要因の推定に用いられる第1特徴量を抽出する。特徴量データ生成部は、抽出された第1特徴量を含む第1特徴量データを生成し、生成された第1特徴量データを推定装置に出力する。
【0134】
推定装置は、データ取得部、記憶部、推定部、および出力部を備える。データ取得部は、被験者の歩行に応じて計測された身体能力に関する第1特徴量データと、被験者の属性データとを取得する。記憶部は、推定モデルを記憶する。推定モデルは、第1特徴量データおよび属性データの入力に応じて、転倒リスク要因に関連する少なくとも一つの身体能力因子を推定する。推定モデルは、属性データに含まれる属性因子および推定された身体能力因子を主成分分析して第2特徴量を構築する。推定モデルは、構築された第2特徴量を用いて転倒リスクスコアを出力する。推定部は、取得された第1特徴量データおよび属性データを推定モデルに入力し、推定モデルから出力された少なくとも一つの身体能力因子を用いて、転倒リスク情報を推定する。出力部は、推定された転倒リスク情報を出力する。
【0135】
本実施形態の推定システムは、被験者の履物に設置された歩容計測装置によって、その被験者の身体能力に関する第1特徴量データを生成する。本実施形態の推定システムは、生成された第1特徴量データと被験者の属性データとを用いて、その被験者の転倒リスクを推定する。すなわち、本実施形態によれば、歩行に応じて計測された身体能力に関するデータを用いて、転倒リスクを推定できる。
【0136】
本実施形態の一態様において、データ取得部は、第1特徴量データを取得する。第1特徴量データは、歩行に応じて計測されたセンサデータの時系列データを用いて生成された歩行波形データから抽出された、転倒リスク要因に関連する少なくとも一つの身体能力因子を推定するために用いられる。記憶部は、身体能力推定モデル、特徴量構築モデル、および転倒リスク推定モデルを記憶する。身体能力推定モデルは、第1特徴量データおよび属性データの入力に応じて、少なくとも一つの身体能力因子を出力する。特徴量構築モデルは、少なくとも一つの属性因子および少なくとも一つの身体能力因子の入力に応じて、少なくとも一つの属性因子および少なくとも一つの身体能力因子を主成分分析し、少なくとも一つの第2特徴量を出力する。転倒リスク推定モデルは、少なくとも一つの第2特徴量の入力に応じて転倒リスクスコアを出力する。推定部は、第1推定部、特徴量構築部、および第2推定部を有する。第1推定部は、第1特徴量データおよび属性データを身体能力推定モデルに入力し、身体能力推定モデルから出力された少なくとも一つの身体能力因子を、被験者の身体能力として推定する。特徴量構築部は、少なくとも一つの属性因子および少なくとも一つの身体能力因子を特徴量構築モデルに入力して少なくとも一つの第2特徴量を構築する。
【0137】
第2推定部は、少なくとも一つの前第2特徴量を転倒リスク推定モデルに入力し、転倒リスク推定モデルから出力された転倒リスクスコアを用いて、被験者に関する転倒リスク情報を推定する。
【0138】
本態様によれば、身体能力推定モデル、特徴量構築モデル、および転倒リスク推定モデルを用いて、身体能力因子や転倒リスクスコアを含む転倒リスク情報を推定できる。
【0139】
本実施形態の一態様において、属性データは、属性因子として、被験者のBMI(Body Mass Index)および年齢を含む。本態様によれば、被験者の属性因子を含めたデータを用いて、転倒リスク情報を推定できる。
【0140】
本実施形態の一態様において、身体能力推定モデルは、属性データおよび第1特徴量データの入力に応じて、握力、動的バランス、下肢筋力、移動能力、および静的バランスに関する推定値を、身体能力因子として出力する。そのため、本態様によれば、被験者の握力、動的バランス、下肢筋力、移動能力、および静的バランスといった身体能力に応じて、転倒リスク情報を推定できる。
【0141】
本実施形態の一態様において、身体能力推定モデルは、握力の推定値として、被験者の握力値を出力する。身体能力推定モデルは、動的バランスの推定値として、進行方向、垂直方向、および左右方向における腰部の調和指標を出力する。身体能力推定モデルは、下肢筋力の推定値として、椅子立ち上がりテストにおける立ち座り時間を出力する。身体能力推定モデルは、移動能力の推定値として、TUG(Time Up and Go)テストにおけるTUG所要時間を出力する。身体能力推定モデルは、静的バランスの推定値として、片脚立位テストにおける片脚立位時間を出力する。本態様によれば、身体能力に関する具体的な推定値を出力する身体能力推定モデルを用いることによって、身体能力に適合した転倒リスクを推定できる。
【0142】
本実施形態の一態様において、転倒リスク推定モデルは、転倒経験の有無に応じて分類された2群間の分布の離れ具合を示す指標が所定値を超える主成分を第2特徴量として用いた学習によって構築される。第2推定部は、特徴量構築部によって構築された複数の第2特徴量のうち、転倒リスク推定モデルの構築に用いられた少なくとも一つの第2特徴量を転倒リスク推定モデルに入力して、転倒リスクスコアを推定する。本態様によれば、転倒経験の有無に応じた指標に基づく第2特徴量を学習させた転倒リスク推定モデルを用いることで、より高精度に転倒リスクを推定できる。
【0143】
本実施形態の一態様において、推定装置は、被験者によって視認可能な画面を有する端末装置に実装される。例えば、推定装置は、被験者の歩行に応じて計測された身体能力に関する第1特徴量データと、前記被験者の属性データとを用いて推定された転倒リスク情報を、端末装置の画面に表示させる。例えば、推定装置は、推定された転倒リスク情報に応じた推薦情報を、端末装置の画面に表示させる。例えば、推定装置は、転倒リスク情報に応じた推薦情報として、転倒リスクの低減に効果的なトレーニングに関する動画を端末装置の画面に表示させる。本態様によれば、推定された転倒リスク情報を、被験者によって視認可能な画面に表示させることによって、その被験者が自身の転倒リスク要因に関する情報を確認できる。
【0144】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る推定装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の推定装置は、第1の実施形態の推定システムに含まれる推定装置を簡略化した構成である。
【0145】
図26は、本実施形態に係る推定装置23の構成の一例を示すブロック図である。推定装置23は、データ取得部231、推定部234、および出力部239を備える。データ取得部231は、被験者の歩行に応じて計測された身体能力に関する第1特徴量データと、被験者の属性データとを取得する。推定部234は、取得した第1特徴量データおよび属性データを主成分分析して、身体能力因子および属性因子に関連する第2特徴量データを構築する。推定部234は、構築された第2特徴量データを用いて、転倒リスク要因に応じた転倒リスク情報を推定する。出力部239は、推定された転倒リスク情報を出力する。
【0146】
以上のように、本実施形態では、歩行に応じて計測された身体能力に関する第1特徴量データと、被験者の属性データとを用いて、その被験者の転倒リスクを推定する。すなわち、本実施形態によれば、歩行に応じて計測された身体能力に関するデータを用いて、転倒リスク因子を推定できる。
【0147】
(ハードウェア)
ここで、本開示の各実施形態に係る制御や処理を実行するハードウェア構成について、
図27の情報処理装置90を一例として挙げて説明する。なお、
図27の情報処理装置90は、各実施形態の制御や処理を実行するための構成例であって、本開示の範囲を限定するものではない。
【0148】
図27のように、情報処理装置90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96を備える。
図27においては、インターフェースをI/F(Interface)と略記する。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95、および通信インターフェース96は、バス98を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、および入出力インターフェース95は、通信インターフェース96を介して、インターネットやイントラネットなどのネットワークに接続される。
【0149】
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを、主記憶装置92に展開する。プロセッサ91は、主記憶装置92に展開されたプログラムを実行する。本実施形態においては、情報処理装置90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、各実施形態に係る制御や処理を実行する。
【0150】
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92には、プロセッサ91によって、補助記憶装置93等に格納されたプログラムが展開される。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリによって実現される。また、主記憶装置92として、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリが構成/追加されてもよい。
【0151】
補助記憶装置93は、プログラムなどの種々のデータを記憶する。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクによって実現される。なお、種々のデータを主記憶装置92に記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略することも可能である。
【0152】
入出力インターフェース95は、規格や仕様に基づいて、情報処理装置90と周辺機器とを接続するためのインターフェースである。通信インターフェース96は、規格や仕様に基づいて、インターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて、外部のシステムや装置に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95および通信インターフェース96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
【0153】
情報処理装置90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器が接続されてもよい。それらの入力機器は、情報や設定の入力に使用される。なお、タッチパネルを入力機器として用いる場合は、表示機器の表示画面が入力機器のインターフェースを兼ねる構成としてもよい。プロセッサ91と入力機器との間のデータ通信は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
【0154】
また、情報処理装置90には、情報を表示するための表示機器を備え付けてもよい。表示機器を備え付ける場合、情報処理装置90には、表示機器の表示を制御するための表示制御装置(図示しない)が備えられていることが好ましい。表示機器は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0155】
また、情報処理装置90には、ドライブ装置が備え付けられてもよい。ドライブ装置は、プロセッサ91と記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータやプログラムの読み込み、情報処理装置90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。ドライブ装置は、入出力インターフェース95を介して情報処理装置90に接続すればよい。
【0156】
以上が、本発明の各実施形態に係る制御や処理を可能とするためのハードウェア構成の一例である。なお、
図27のハードウェア構成は、各実施形態に係る制御や処理を実行するためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、各実施形態に係る制御や処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、各実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。記録媒体は、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体で実現できる。記録媒体は、USB(Universal Serial Bus)メモリやSD(Secure Digital)カードなどの半導体記録媒体によって実現されてもよい。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、その他の記録媒体によって実現されてもよい。プロセッサが実行するプログラムが記録媒体に記録されている場合、その記録媒体はプログラム記録媒体に相当する。
【0157】
各実施形態の構成要素は、任意に組み合わせてもよい。また、各実施形態の構成要素は、ソフトウェアによって実現されてもよいし、回路によって実現されてもよい。
【0158】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0159】
1 推定システム
10 歩容計測装置
11 センサ
12 特徴量データ生成部
13 推定装置
111 加速度センサ
112 角速度センサ
121 取得部
122 正規化部
123 抽出部
125 生成部
127 特徴量データ出力部
131、231 データ取得部
132 記憶部
134、234 推定部
139、239 出力部