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特開2024-101910生育情報提供装置、生育情報提供方法およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101910
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】生育情報提供装置、生育情報提供方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240723BHJP
   G06Q 50/02 20240101ALI20240723BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006127
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】菊池 裕介
(72)【発明者】
【氏名】石田 恒輔
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】 作物の生育状況が順調であるのか遅れているのかの判断を容易にする情報を提供する。
【解決手段】 生育情報提供装置40の実測値算出部41は、圃場における作物の生育状況を表す実測値を算出する。取得部42は、作物を作付けした圃場における気象情報を取得する。試算部43は、作物を圃場に作付けした後の気象情報を含む環境情報および作物の目標収量の情報を用いて目標収量に向けての作物の生育状況の推移を試算することにより、計算上の生育状況の推移を表す試算生育曲線を算出する。表示制御部44は、作物の生育状況の実測値と試算生育曲線をあわせて表示する表示制御を行う。
【選択図】 図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場における作物の生育状況を表す実測値を算出する実測値算出部と、
前記作物を作付けした圃場における気象情報を取得する取得部と、
前記作物を圃場に作付けした後の気象情報を含む環境情報および前記作物の目標収量の情報を用いて目標収量に向けての前記作物の生育状況の推移を試算することにより、計算上の生育状況の推移を表す試算生育曲線を算出する試算部と、
前記作物の生育状況の実測値と試算生育曲線をあわせて表示する表示制御を行う表示制御部と
を備える生育情報提供装置。
【請求項2】
前記実測値算出部は、作物の生育状況を表す実測値として、作物の葉の生育状況を表す実測値を含む複数種の実測値を算出する
請求項1に記載の生育情報提供装置。
【請求項3】
作物の葉の生育状況を表す実測値の推移に基づいた実測値の変化傾向を用いて作物の生育段階の移行を検知する移行検知部をさらに備える
請求項2に記載の生育情報提供装置。
【請求項4】
実測値と試算生育曲線の対比により作物の生育が遅れているか否かを判断する判断部をさらに備え、
前記表示制御部は、作物の生育が遅れている場合に、遅れの対処に参考となる対処参考情報を表示する表示制御を行う
請求項1に記載の生育情報提供装置。
【請求項5】
前記試算部は、互いに異なる複数の目標収量に対応する複数の試算生育曲線を算出し、
前記表示制御部は、算出された試算生育曲線のなかから選択された試算生育曲線を表示する表示制御を行う
請求項1に記載の生育情報提供装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、圃場の環境情報を表示する表示制御を行う
請求項1に記載の生育情報提供装置。
【請求項7】
コンピュータによって、
圃場における作物の生育状況を表す実測値を算出し、
前記作物を作付けした圃場における気象情報を取得し、
前記作物を圃場に作付けした後の気象情報を含む環境情報および前記作物の目標収量の情報を用いて目標収量に向けての前記作物の生育状況の推移を試算することにより、計算上の生育状況の推移を表す試算生育曲線を算出し、
前記作物の生育状況の実測値と試算生育曲線をあわせて表示する
生育情報提供方法。
【請求項8】
圃場における作物の生育状況を表す実測値を算出する処理と、
前記作物を作付けした圃場における気象情報を取得する処理と、
前記作物を圃場に作付けした後の気象情報を含む環境情報および前記作物の目標収量の情報を用いて目標収量に向けての前記作物の生育状況の推移を試算することにより、計算上の生育状況の推移を表す試算生育曲線を算出する処理と、
前記作物の生育状況の実測値と試算生育曲線をあわせて表示する処理と
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場における作物の生育状況の情報を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
農業において、圃場における作物の生育状況を把握するために、作物の生育の度合いを表す植生指標が用いられる場合がある。例えば、特許文献1(特開2017-35055号公報)には、植生指標として、NDVI(Normalized Difference Vegetation Index(正規化植生指標))、RVI(Ratio Vegetation Index(比植生指標))、DVI(Difference Vegetation Index(差植生指標))などが挙げられている。これらの植生指標は、人工衛星や航空機やドローンなどに搭載したセンサから取得した特定波長帯の電磁波データを用いて算出される。
【0003】
なお、特許文献1には、人工衛星が天候不良により圃場の情報を取得できなかった場合に、人工衛星のデータに基づいた植生指標を算出することができないことから、その算出できなかった植生指標を推定する技術が示されている。つまり、特許文献1では、過去のデータに基づいて算出しておいた月日と窒素含有量(換言すればNDVI)との関係(理想曲線)と、過去の時刻(例えば10日前)に取得した人工衛星のデータに基づく植生指標とを用いて、人工衛星のデータが取得できなかったときの圃場に対応する植生指標が推定される。また、特許文献2(国際公開第2019/044663号)には、人工衛星やドローンから得られるセンシングデータに基づく植生指標を利用して作物の推定生産量を算出し、推定生産量が生産依頼予定量を下回るか上回るかによって、それぞれの対応処理が実行される技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-35055号公報
【特許文献2】国際公開第2019/044663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に示されているような植生指標は作物の生育状況を表すことができる。また、過去に作物が栽培された栽培期間における過去の植生指標のデータが蓄積されていれば、例えば、その蓄積された過去の植生指標データの平均値を参考データとして算出することはできる。しかしながら、そのような参考データが有っても、現在の作物の生育状況が順調であるのか、期待値より遅れているのかを客観的に判断することはできない。すなわち、作物の生育には、気温や日射量や降雨量などの気象条件が大きく関与し、また、作物を栽培する栽培期間(シーズン・年)によって気象条件は異なるため、期待される生育速度も異なる。このため、蓄積された過去の植生指標データの平均値である参考データと、現在の生育状況とが分かっても、作物を栽培している作物生産者や圃場管理者(以下、作物生産者と圃場管理者をまとめて圃場関係者とも称する)は、現在の作物の生育状況が、実際には遅れているのか順調であるのかが判断しにくい。
【0006】
本発明は上記課題を解決するために考え出されたものである。すなわち、本発明の主な目的は、作物の生育状況が順調であるのか遅れているのかの判断を容易にする情報を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る生育情報提供装置は、その一態様として、
圃場における作物の生育状況を表す実測値を算出する実測値算出部と、
前記作物を作付けした圃場における気象情報を取得する取得部と、
前記作物を圃場に作付けした後の気象情報を含む環境情報および前記作物の目標収量の情報を用いて目標収量に向けての前記作物の生育状況の推移を試算することにより、計算上の生育状況の推移を表す試算生育曲線を算出する試算部と、
前記作物の生育状況の実測値と試算生育曲線をあわせて表示する表示制御を行う表示制御部と
を備える。
【0008】
また、本発明に係る生育情報提供方法は、その一態様として、
コンピュータによって、
圃場における作物の生育状況を表す実測値を算出し、
前記作物を作付けした圃場における気象情報を取得し、
前記作物を圃場に作付けした後の気象情報を含む環境情報および前記作物の目標収量の情報を用いて目標収量に向けての前記作物の生育状況の推移を試算することにより、計算上の生育状況の推移を表す試算生育曲線を算出し、
前記作物の生育状況の実測値と試算生育曲線をあわせて表示する。
【0009】
さらに、本発明に係るコンピュータプログラムは、その一態様として、
圃場における作物の生育状況を表す実測値を算出する処理と、
前記作物を作付けした圃場における気象情報を取得する処理と、
前記作物を圃場に作付けした後の気象情報を含む環境情報および前記作物の目標収量の情報を用いて目標収量に向けての前記作物の生育状況の推移を試算することにより、計算上の生育状況の推移を表す試算生育曲線を算出する処理と、
前記作物の生育状況の実測値と試算生育曲線をあわせて表示する処理と
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作物の生育状況が順調であるのか遅れているのかの判断を容易にする情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る第1~第3の実施形態の生育情報提供装置の構成を説明する図である。
図2】試算生育曲線を説明する図である。
図3】実測値(実測曲線)と試算生育曲線(試算曲線)をあわせて表示する表示態様の一例を表す図である。
図4】複数の区分領域それぞれにおける作物の生育状況を表す表示態様の一例を表す図である。
図5】土壌水分指標の推移の表示態様の一例を表す図である。
図6】第1実施形態の生育情報提供装置における動作の一例を説明するフローチャートである。
図7】第1実施形態における変形例を説明する図である。
図8】第1実施形態における別の変形例を説明する図である。
図9】第1実施形態におけるさらに別の変形例を説明する図である。
図10】NDVIに関する実測曲線の一例を表す図である。
図11】第2実施形態の生育情報提供装置における構成を説明する図である。
図12】第2実施形態の生育情報提供装置における構成を説明する図である。
図13】対処参考情報の一例を表す図である。
図14】対処参考情報の別の一例を表す図である。
図15】本発明に係るその他の実施形態の生育情報提供装置の構成を説明する図である。
図16】その他の実施形態の生育情報提供装置における動作の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態の生育情報提供装置の構成を説明する図である。第1実施形態の生育情報提供装置1は、圃場における作物の生育状況の情報を提供する装置である。生育情報提供装置1は、情報源3と、データベース4と、端末装置5と、入力装置7とに接続されている。
【0014】
情報源3は、生育情報提供装置1が用いる情報を出力する情報源である。生育情報提供装置1が接続する情報源3は一つに限定されず、必要に応じて複数の情報源3に接続される。第1実施形態では、情報源3の一つは情報提供対象の圃場の衛星画像を出力する情報源である。圃場の衛星画像とは、人工衛星に搭載されている撮影装置により圃場が撮影されている撮影画像である。第1実施形態では、作物の生育状況を表す情報として、NDVI、RVI、DVIというような植生指標(Vegetation Index)を用いる。これらの指標は、作物の光の反射の特徴を利用して作物の撮影画像から作物の生育状況(植生の状況)を数値化した指標である。例えば、NDVIを算出する計算式は次に示す式(1)である。
NDVI=(NIR-R)/(NIR+R)・・・・・(1)
なお、式(1)におけるNIRは撮影画像から取得される近赤外域の反射率を表し、Rは撮影画像から取得される可視赤色域の反射率を表す。NDVIは、作物の葉の生育状況を表す指標とも言え、数値-1~+1の範囲内で表され、数値が1に近付くほど葉が旺盛に生育していることを表す。
【0015】
第1実施形態では、作物の光の反射の特徴を利用した植生指標を用いることから、情報源3の一つが出力する圃場の衛星画像は、その植生指標の算出に用いる波長の光の情報を含む圃場の衛星画像である。
【0016】
また、情報源3の別の一つは、情報提供対象の圃場を含む地域の気象情報を出力する情報源である。なお、ここでは、異なる情報源であっても同じ符号を付して説明することとする。
【0017】
入力装置7は、生育情報提供装置1に当該装置の操作者(以下、装置操作者とも称する)が情報を入力する装置であり、キーボードやマウスなどにより構成される。データベース4は記憶装置であり、データベース4には、情報源3から取得した情報や、入力装置7により入力された情報や、生育情報提供装置1が算出したデータなどが格納される。
【0018】
端末装置5は、圃場関係者(圃場の管理者や作物の生産者など)であるユーザが操作するコンピュータ装置である。端末装置5は、通信機能を持ち、かつ、表示装置8を制御して情報を表示させる表示制御機能を備えている。端末装置5は、通信機能と表示制御機能を備えている情報機器であればその種類は限定されるものではないが、具体例を挙げると、パソコン(パーソナルコンピュータ)、タブレット、スマートフォンなどがある。なお、端末装置5がスマートフォンやタブレットである場合には、表示装置8は端末装置5と一体的であるが、端末装置5がパソコンである場合には、表示装置8は外付けである場合がある。また、端末装置5と生育情報提供装置1の接続は、生育情報提供装置1と連携する機能を端末装置5に持たせるためのアプリケーションプログラム(アプリ)により実行される。あるいは、端末装置5と生育情報提供装置1の接続は、ブラウザ(インターネット上の情報を閲覧するためのソフトウエア)によって実行されてもよい。端末装置5と生育情報提供装置1との接続がアプリとブラウザのどちらで実行されるかは、システム設計者などにより適宜設定され、ここでは限定されない。さらにまた、図1の例では、生育情報提供装置1には1台の端末装置5が接続されているが、生育情報提供装置1は、複数の端末装置5と接続することが可能である。
【0019】
生育情報提供装置1は、コンピュータ装置であり、演算装置10と記憶装置20を備える。記憶装置20は、データやコンピュータプログラム(以下、プログラムとも称する)22を記憶する記憶媒体を有する。記憶装置には複数の種類があり、また、コンピュータ装置には複数種の記憶装置が備えられる場合がある。ここでは、生育情報提供装置1に備えられる記憶装置の種類や数は限定されず、その説明は省略される。
【0020】
演算装置10は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサにより構成され、記憶装置20に記憶されているプログラム22を読み出して実行することにより、当該プログラム22に基づいた様々な機能を持つことができる。第1実施形態では、演算装置10は、作物の生育状況の情報を提供する機能部として、図1において実線により示される取得部11と、実測値算出部12と、試算部13と、表示制御部14とを有する。
【0021】
取得部11は、情報源3から情報を取得する。第1実施形態では、取得部11が情報源3から取得する情報は、圃場の衛星画像と圃場の気象情報を含む予め定められた種類の情報である。取得部11が情報を取得する期間やタイミングは情報の種類ごとに当該情報の用途に応じて装置設計者などにより設定される。例えば、圃場の衛星画像に関しては、1日1回、指定された時間帯に情報源3から圃場の衛星画像を取得するという如く取得タイミングが設定される。なお、人工衛星によって圃場が撮影される撮影時間は地域ごとに決まっている(つまり、人工衛星は、一定の周期で地球の周りを周回しているため、いつも同じ時間に圃場が撮影される)。このため、人工衛星が圃場の上空を通過する通過時間や回帰日数によって撮影頻度と撮影時間が定まる。このようなことを考慮し、圃場の衛星画像を出力する情報源3から取得部11が衛星画像を取得するタイミングが設定される。
【0022】
また、圃場の衛星画像の取得期間は、作物の作付けが行われる作付け予定日よりも1か月前から作物の栽培期間を経て作物の収穫完了日の3日後までという如く設定される。さらに、ここでは、取得部11は、作物が作付けされた圃場における気象情報を取得する。取得部11が取得する気象情報は、例えば、毎日の気象情報であって、圃場を含む地域における日射量、気温、相対湿度、降雨量、風速を含む気象情報である。また、取得部11は、天気予報の情報をも取得してもよい。
【0023】
取得部11により取得された情報は、例えば取得日の情報が関連付けられて記憶装置20やデータベース4に格納される。なお、情報提供対象の圃場が複数有る場合には、取得部11により取得された情報は、さらに、当該情報に関連する圃場の識別情報も関連付けられて記憶装置20やデータベース4に格納される。
【0024】
実測値算出部12は、圃場における作物の生育状況を表す実測値を算出する。第1実施形態では、作物の生育状況を表す実測値として、前述したように、圃場の衛星画像を用いて植生指標が算出される。ここでは、植生指標であるNDVIが作物の生育状況の実測値として算出されるとする。また、実測値算出部12が実測値を算出するタイミングは、圃場の衛星画像の取得タイミングなどを考慮して装置設計者などにより設定され、限定されるものではないが、例えば、取得部11が圃場の衛星画像を1日1回取得するとした場合には、取得部11が圃場の衛星画像を取得したことを契機として実測値算出部12による算出動作が実行される。ところで、圃場が複数の領域に区分されて区分領域ごとに作物の生育状況の監視や灌漑制御が行われる場合がある。この場合には、圃場の区分領域ごとに作物の生育状況の実測値が算出される。
【0025】
実測値算出部12により算出された実測値の情報(データ)は、実測値(NDVI)の算出に用いた衛星画像の撮影日時の情報や、撮影時点における圃場の気象情報、圃場識別情報や圃場の区分領域識別情報などが関連付けられて記憶装置20やデータベース4に格納される。
【0026】
試算部13は、作物を圃場に作付けした後の気象情報を含む環境情報および作物の目標収量の情報および作物の品種情報を用いて目標収量に向けての作物の生育状況の推移を試算することにより、計算上の生育状況の推移を表す試算生育曲線を算出する。環境情報とは、圃場に作付けされた作物の生育に関連する作物の周囲環境を表す情報であり、第1実施形態では、圃場の土壌の土性(砂質や粘土質など)および気象の情報を含む。また、気象情報としては、気温、日射量、相対湿度、降雨量および風速の情報を含む。
【0027】
試算部13が試算する作物の生育状況は、実測値算出部12が算出する実測値と対比することが想定されていることから、実測値算出部12により算出される実測値と同じ指標により表される。つまり、第1実施形態では、試算部13は、実際に取得された環境情報に表される環境化において、圃場に作付けされた作物に関するNDVIが計算上ではどのように推移していくかを試算する。
【0028】
ここでの試算生育曲線とは、実際に生育してきた環境において、作物が目標収量に向けてどのように成長していくかを表す計算上の生育状況の推移を表すデータである。この試算生育曲線は、実際の気象情報を用いて算出される曲線であることから、図2において鎖線により表されるような、作物が圃場に作付けされてから気象情報を取得した直近の情報取得日までの期間Aにおける計算上の生育状況の推移を表す曲線である。なお、図2において実線にて表される実測曲線は、実測値算出部12により算出された実測値の推移を表す曲線である。また、図2の例では、試算生育曲線および実測曲線は、定植した(作付けした)ときを始点として作物の生育状況の推移を表しているが、試算生育曲線および実測曲線の始点は作付けしたときに限定されず、例えば装置設計者などにより設定される。
【0029】
試算部13が試算生育曲線を算出する手法の一例として、次のような回帰分析を用いた算出手法が挙げられる。すなわち、過去(前年、前々年など)の作物の栽培期間における生育状況の実測値および環境情報を用いた回帰分析による回帰式が予め算出される。その回帰式における目的変数は、作物の生育状況を表す指標の値(NDVI)である。また、回帰式の説明変数の具体例としては、定植後の経過日数と、作物の種類と、作物の品種と、土壌の土性と、積算気温と、積算日射量と、相対湿度と、降雨量と、風速と、目標収量とが挙げられる。
【0030】
さらに、第1実施形態では、試算部13は、図2において点線で表されるような生育目標曲線を算出する。ここでの生育目標曲線は、上述したような試算による試算生育曲線に続く曲線であり、気象情報を取得した直近の情報取得日よりも後の未来において作物が目標収量に向けてどのような生育状況であればよいかを表す曲線である。生育目標曲線は、直近の情報取得日よりも後の未来の期間Bに関するものであることから、この生育目標曲線の算出には、実際の気象情報に代えて、期間Bに対応する時期の気象情報の例えば平年値が参考気象情報として用いられる。例えば、試算部13は、そのような参考気象情報を含む環境情報と目標収量とを用いた回帰分析により、試算生育曲線の算出と同様に生育目標曲線を算出する。なお、以下の説明では、試算生育曲線と生育目標曲線を合わせた曲線を試算曲線とも称することとする。
【0031】
なお、前述したように圃場が複数の領域に区分されて区分領域ごとに作物の生育状況の監視や灌漑制御が行われる場合には、その区分領域ごとに試算曲線(試算生育曲線および生育目標曲線)が算出される。
【0032】
試算部13により算出された試算曲線(試算生育曲線および生育目標曲線)の情報(データ)は、算出に用いた環境情報などの情報や圃場識別情報や圃場の区分領域識別情報が関連付けられて記憶装置20やデータベース4に格納される。
【0033】
表示制御部14は、端末装置5と連携することにより、端末装置5に係る表示装置8の画面表示を制御する。例えば、圃場関係者(ユーザ)による端末装置5の操作によって作物の生育状況の表示が圃場関係者により要求された場合に、表示制御部14は、端末装置5を介してその表示の要求(表示要求)を受け付ける。表示要求には、例えば、情報提供対象の圃場を識別する圃場識別情報が関連付けられている。表示制御部14は、受け付けた表示要求に応じた圃場の作物の生育状況の情報を要求元の端末装置5に出力(返信)する。当該情報を受信した端末装置5の表示制御動作により、表示制御部14により出力された作物の生育状況の情報が表示装置8の画面に表示される。
【0034】
第1実施形態では、前述したように、試算曲線が算出される。このことから、圃場関係者によって作物の生育状況の情報の表示が要求された場合に、表示制御部14は、作物の生育状況の実測値と共に試算曲線の情報(データ)をもあわせて表示させるために、当該実測値と試算曲線の情報を端末装置5に出力する。これにより、端末装置5に係る表示装置8の画面には、実測値(実測曲線)と試算曲線があわせて表示される。
【0035】
図3には、表示装置8における作物の生育状況の情報の表示に係る画面表示の一例が表されている。図3の例では、作付けされてから直近の情報取得日までの気象情報を含む環境情報および目標収量を用いて試算された試算生育曲線が、実測値に基づく実測曲線とあわせて同じグラフ上に表示されている。また、図3の例では、圃場が可視光により撮影された撮影画像(衛星画像)をも作物の生育状況を表す情報と共に表示装置8に表示されている。さらに、図3の例では、情報源3から取得した毎日の気象情報と、表示時点よりも後の設定された日数分の天気予報が表されている。なお、天気だけでなく、気温や湿度や降水確率や風速などの気象の情報も表示されてもよい。この場合、それら表示される情報は、取得部11により情報源3から取得される。さらに、気象情報だけでなく、圃場の他の情報をも含む圃場の環境情報をも表示されてもよい。つまり、表示制御部14は、圃場の環境情報を表示する表示制御を行う。
【0036】
図4には、表示装置8における作物の生育状況の情報を表す画面表示の別の一例が表されている。図4の例は、圃場に複数の区分領域が設定されている場合の例である。図4の例では、圃場におけるそれぞれの区分領域についての作物の生育状況の情報が並べて表示されている。この例においても、区分領域それぞれについての作物の生育状況の情報として、実測曲線と試算曲線があわせて表示されている。ここでの試算曲線は、区分領域ごとの目標収量が反映された試算曲線である。また、図4の例では、作物の生育状況の情報と、当該情報に対応する区分領域の位置との対応関係を分かり易くするために、それら対応関係を表す画像(図4の例では矢印の画像)が表示されている。なお、図4に表されているように、複数の区分領域の情報が並べて表示されている場合にも、図3に表されているような圃場における気象情報が表示されてもよい。
【0037】
さらに、圃場に土壌水分センサが設置されている場合には、土壌水分センサから出力されるセンサ出力値に応じた数値(以下、土壌水分指標とも称する)の情報が表示制御部14から端末装置5に出力され、これにより、表示装置8に表示されてもよい。この場合、表示装置8において、図3図4に表されるような作物の生育状況の情報を表す画面と同じ画面に、土壌水分指標の情報が表示されてもよいし、別の画面に表示されてもよい。土壌水分指標の表示態様としては、例えば、土壌水分指標の数値が、当該土壌水分指標の基となったセンサ値が土壌水分センサから出力された日時に関連付けられて一覧表示されるリストや表の態様が挙げられる。また、土壌水分指標の表示態様の別の例としては、図5に表されるようなグラフの態様が挙げられる。なお、圃場に複数の土壌水分センサが設置されている場合には、例えば、圃場における複数の土壌水分センサのセンサ出力値の平均値に基づいた土壌水分指標の情報が表示装置8に表示される。圃場に区分領域が設定されている場合には、区分領域ごとの複数の土壌水分センサのセンサ出力値の平均値に基づいた土壌水分指標の情報が表示装置8に表示される。さらにまた、土壌水分指標の情報が表示される表示装置8の同じ画面に、圃場の撮影画像や平面図が表される場合には、圃場の撮影画像や平面図に土壌水分センサの設置位置が表されてもよい。
【0038】
上述したような土壌水分指標の情報が表示制御部14から端末装置5に出力される場合には、取得部11が、土壌水分センサのセンサ出力値を出力する情報源3から土壌水分センサのセンサ出力値の情報を例えば定期的に取得する。
【0039】
さらに、圃場内に灌漑用水を供給するパイプが敷設され、当該パイプから土壌に給水する水量が制御される場合がある。このような場合には、パイプ内に灌漑用水の流量センサが設置される。このような場合には、流量センサのセンサ出力値に応じた数値(以下、灌漑水量指標とも称する)の情報が表示制御部14から端末装置5に出力され、端末装置5により表示装置8に表示されてもよい。灌漑水量指標の表示に関しては、前述した土壌水分指標の表示と同様に様々な表示態様を採り得る。ここでは、装置設計者などにより設定された表示態様でもって、灌漑水量指標の情報が表示装置8に表示される。また、このような灌漑水量指標の情報が表示制御部14から端末装置5に出力される場合には、取得部11が、流量センサのセンサ出力値を出力する情報源3から流量センサのセンサ出力値の情報を例えば定期的に取得する。
【0040】
さらに、生育情報提供装置1に直接的に接続され圃場関係者が見る表示装置や、生育情報提供装置1に直接的に接続され生育情報提供装置1の装置操作者が見る表示装置がある場合がある。この場合には、表示制御部14は、さらに、そのような生育情報提供装置1に直接的に接続されている表示装置の画面に、作物の生育状況を表す実測曲線および試算曲線や、土壌水分指標や、灌漑水量指標などの情報を表示する表示制御を行う。この表示制御部14による表示装置の画面に表示される情報の表示態様は、例えば、端末装置5による表示装置8の表示態様と同様である。なお、生育情報提供装置1に直接的に接続されている表示装置は、タブレット端末の表示装置でもよく、この場合には、表示制御部14は、そのタブレット端末の制御装置(プロセッサ)と連携して表示装置の表示を制御する。
【0041】
第1実施形態の生育情報提供装置1は上述したような構成を備える。次に、第1実施形態の生育情報提供装置1における情報提供に係る動作の一例を図6を参照しながら説明する。なお、図6は、生育情報提供装置1における情報提供に係る動作の一例を説明するフローチャートである。
【0042】
例えば、取得部11は、1日1回の頻度でもって、圃場の衛星画像を出力する情報源3から衛星画像を取得し、また、気象情報を出力する情報源3から圃場の気象情報を取得するとする。このような場合において、取得部11が情報源3からの情報として圃場の衛星画像を取得すると(図6におけるステップ101)、実測値算出部12が、その取得された圃場の衛星画像から作物の生育状況を表す実測値であるNDVIを算出する(ステップ102)。また、取得部11が気象情報を取得すると(ステップ103)、作付け後に取得した気象情報に新たに取得した気象情報を加えた更新後の環境情報および目標収量および品種情報を用いて、試算部13が、試算生育曲線を算出する(ステップ104)。つまり、試算生育曲線は、新たに取得された気象情報が反映されて更新される。なお、ステップ101およびステップ102の動作と、ステップ103およびステップ104の動作とは、その順番が逆でもよい。また、圃場の上空に雲が有って衛星画像に圃場が明瞭に写っていない場合がある。このような場合には衛星画像からNDVIを算出できない事態が発生する場合がある。このような場合に対する対処手法は予め定められている。例えば、対処手法として、予め定められた補間手法によりNDVIを推測したり、値無しとして処理したりというような様々な手法があるが、ここでは、その対処手法は限定されないので、その説明は省略される。
【0043】
その後、例えば、端末装置5から作物の生育状況の表示が要求されると(ステップ105)、表示制御部14は、作物の生育状況の実測値(実測曲線)と、試算生育曲線とを要求元の端末装置5に出力(返信)する(ステップ106)。これにより、端末装置5の表示制御動作により、表示装置8には、作物の生育状況の実測値(実測曲線)と、試算生育曲線とがあわせて表示される。すなわち、表示制御部14は、端末装置5との連携により、端末装置5に係る表示装置8に、作物の生育状況の実測値(実測曲線)と、試算生育曲線とをあわせて表示する表示制御を行うと言える。
【0044】
第1実施形態の生育情報提供装置1は上述したような構成を備えることにより、端末装置5に係る表示装置8に、作物の生育状況の実測値(実測曲線)と、試算生育曲線とをあわせて表示させることができる。試算生育曲線は、実際に圃場の作物が生育してきた気象の情報を用いて、目標収量に向けての作物の生育状況の推移を試算した曲線であることから、目標収量に向けての実状に合った目標の生育状況の推移を表すことができる。作物の生育状況の実測値(実測曲線)がそのような試算生育曲線とあわせて表示される(換言すれば、圃場関係者に情報提供される)ことにより、圃場関係者は、作物の生育状況が実際に順調であるのか遅れているのかを判断することが容易となる。すなわち、生育情報提供装置1は、作物の生育状況が順調であるのか遅れているのかを判断する情報を提供できる。
【0045】
また、一般的に、植生が旺盛な品種を栽培する場合や高い収穫量を目指す場合には高い植生指標の値が期待され、植生が旺盛でない品種を栽培する場合や低い収穫量でも構わない場合には植生指標の値が低くても問題ないと判断される。つまり、作物の品種によって、作物の生育状況が順調であるのか遅れているのかを判断する判断基準が異なる。このことを考慮して、生育情報提供装置1の試算部13は、作物の目標収量および品種情報を用いて、作物の生育状況の判断基準となる試算曲線を算出している。これにより、試算部13により算出される試算曲線は、作物の目標収量および品種が考慮されている試算曲線であり、生育状況が順調であるのか、期待より遅れているのかを圃場関係者が客観的に判断する基準として有効な情報である。
【0046】
(第1実施形態の変形例1)
試算部13は、目標収量が互いに異なる複数の試算曲線(試算生育曲線および生育目標曲線)を算出する。また、表示制御部14は、目標収量が互いに異なる複数の試算曲線の中から、選択された試算曲線の表示の要求を端末装置5から受け付け、要求に応じた1つ又は複数の試算曲線の情報を要求元の端末装置5に出力する。例えば、図7には、複数の目標収量の情報を受け付け、また、それに応じた複数の試算曲線が表示されている表示装置8の画面表示の一例が表されている。
【0047】
圃場関係者によっては、例えば、依頼に基づいた目標収量と、それよりも多い目指したい目標収量というように複数の目標収量が設定されている場合がある。このような場合には、そのような複数の目標収量のそれぞれについての試算曲線を参照したいという要望が生じると想定される。この変形例1に示されるような構成を持つ生育情報提供装置1は、そのような要望に応えることができる。
【0048】
(第1実施形態の変形例2)
試算生育曲線は、前述したように、実際の気象の情報を用いて試算されることから、例えば、作付けしてから3週間後に試算された試算生育曲線を含む試算曲線と、作付けしてから7週間後に試算された試算生育曲線を含む試算曲線とは変化していることが考えられる。変形例2の生育情報提供装置1は、そのような試算曲線の変化を表示装置8に表示させる構成を備える。すなわち、変形例2では、表示制御部14は、例えば試算日が異なる複数の試算曲線の表示の要求を端末装置5から受け付け、要求に応じた複数の試算曲線の情報を要求元の端末装置5に出力する。図8には、試算日の異なる複数の試算曲線が表示されている表示装置8の画面表示の一例が表されている。図8の例においては、表示装置8の画面構成は、表示してほしい試算曲線の試算日の情報を受け付ける機能も備えた画面構成と成している。
【0049】
なお、このような構成の場合には、生育情報提供装置1は、さらに、次のような構成を備えていてもよい。例えば、表示制御部14は、要求に応じて試算日が異なる複数の試算曲線を要求元の端末装置5に出力すると共に、それら試算日間における圃場で行われた作業の情報や気象の情報を生育関連情報として出力する。これにより、表示装置8の画面には、例えば、図9に表されるように、生育関連情報が参考情報として表示される。生育関連情報として表示制御部14から出力される情報の種類は予め定められており、表示制御部14が記憶装置20やデータベース4から抽出して出力する。なお、施肥に関する情報が生育関連情報として表示制御部14から出力される場合には、当該施肥に関する情報は、例えば、入力装置7を用いて装置操作者などにより生育情報提供装置1の記憶装置20やデータベース4に格納される。
【0050】
<第2実施形態>
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態の生育情報提供装置を構成する構成部分と同じ名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0051】
第2実施形態の生育情報提供装置1は、作物の生育段階を考慮した生育状況の情報を提供する機能を備えている。すなわち、作物の生育段階としては、栄養成長期、生殖成長期、登熟期間という3つの期間(段階)に大別される。栄養成長期とは、作物の発芽から花芽分化開始までの段階の期間を指す。生殖成長期とは、茎の頂部などに花や花序の原基が形成される段階の期間を指す。登熟期間とは、作物が開花・受精後、種子として種皮、胚および胚乳が形成される段階の期間を指す。栄養成長期に収穫される作物としては、例えば、もやし、ホウレンソウ、ネギ、キャベツ、大根、ジャガイモなどがある。生殖成長期に収穫される作物としては、例えば、ブロッコリー、キュウリ、ナス、枝豆、メロン、トマトなどがある。作物の栽培管理は、そのような作物の収穫時期を考慮して行われる。例えば、生殖成長期に収穫される作物にあっては、栄養成長期から生殖成長期に入ると、葉の成長よりも例えば花蕾の大きさや数や、茎の太さの状態に注目して栽培管理が行われる。
【0052】
このように、圃場に作付けされている作物の種類によっては、作物の生育段階によって、圃場関係者が知りたい作物の生育状況の指標が変化することが考えられる。また、NDVIは、葉の成長を表す指標であることから、作物の葉の生育が安定状態になると(つまり、生殖成長期に入ると)、図10に表されているように大きな変化を示さなくなるため、生育状況を表す指標として参考にならなくなってしまう。このような事情も、作物の生育段階によって圃場関係者が知りたい作物の生育状況の指標が変化する要因であると考えられる。
【0053】
そこで、第2実施形態の生育情報提供装置1は、第1実施形態の構成に加えて、図1の鎖線に表されているような移行検知部15を備えている。移行検知部15は、作物の生育段階が栄養成長期から生殖成長期に移行したことを検知する。例えば、そのような作物の生育段階の移行は、NDVIの変化傾向(NDVIの実測曲線の傾き)により検知することができる。このことから、例えば、NDVIの変化傾向を用いて作物の生育段階の移行を判断する情報が移行判断情報として予め生育情報提供装置1に与えられている。移行検知部15は、NDVIの実測曲線と、移行判断情報とを用いて、作物の生育段階が栄養成長期から生殖成長期に移行したことを検知する。
【0054】
また、第2実施形態では、圃場における作物の花蕾や茎が例えば定期的(例えば1日1回)に撮影された撮影画像を取得可能な手段が講じられているとする。例えば、作物の花蕾や茎を撮影する定点カメラが圃場に設置されていたり、ドローンなどの無人航空機に搭載されている撮影装置により定期的に作物の花蕾や茎が撮影されたりする。そのような定点カメラの撮影画像や、無人航空機による撮影画像を出力する情報源3から、作物の花蕾や茎の撮影画像が取得部11により取得される。
【0055】
さらに、第2実施形態では、実測値算出部12は、NDVIの算出に加えて、作物の花蕾や茎の撮影画像を分析することにより、作物の生育状況を表す指標の実測値として、例えば、予め定められた単位面積当たりの花蕾の数や、花蕾の大きさ(平均値)や、茎の太さ(平均値)を算出する。実測値算出部12により算出された花蕾や茎に関する実測値の情報(データ)は、実測値の算出に用いた撮影画像の撮影日時の情報や、撮影時点における圃場の気象情報、圃場識別情報や圃場の区分領域識別情報などが関連付けられて記憶装置20やデータベース4に格納される。
【0056】
さらに、第2実施形態では、表示制御部14は、移行検知部15により作物の生育段階が移行したことを検知すると、例えば、図11に表されるような、作物の生育状況を表す指標の変更を問う表示の情報を端末装置5に出力する。これにより、端末装置5の表示装置8にはそのような表示が成される。図11の例では、その表示には、作物の生育状況を表す指標である花蕾の数や大きさの情報に接続するためのリンク情報や、茎の太さの情報に接続するためのリンク情報が含まれている。このため、圃場関係者の操作に基づいて作物の生育状況を表す指標である花蕾の数や大きさの情報や茎の太さの情報が記憶装置20やデータベース4から読み出されて表示制御部14により端末装置5に出力される。これにより、端末装置5に係る表示装置8には、例えば、NDVIが表示されている画面から、別の指標である花蕾の数や大きさの情報や茎の太さの情報が表示される別の画面に遷移して作物の生育状況を表す実測値が表示される。
【0057】
第2実施形態の生育情報提供装置1は上述したような構成を備えている。このため、第2実施形態の生育情報提供装置1は、作物の生育状況を表す実測値として、作物の生育段階に応じた複数の指標の実測値を圃場関係者に提供することができ、利便性を高めることができる。
【0058】
なお、上述したように、作物の生育状況を表す複数の指標の実測値を算出する場合において、試算部13は、それら指標のそれぞれについて、例えば回帰分析により試算曲線を算出し、当該試算曲線の情報が表示制御部14によって端末装置5に出力されてもよい。これにより、NDVIだけでなく、生育状況を表す他の指標の実測値が表示装置8に表示される場合にも、関連する試算曲線の情報を実測値とあわせて表示装置8に表示させるように表示制御を行うことが可能である。
【0059】
さらに、作物の生育状況を表す複数の指標の実測値を算出する場合において、作物の生育状況を表す画面に表示する指標が一つである場合には当該指標の表示優先度が設定される。このような場合に、指標の表示優先度を変更可能な構成が生育情報提供装置1に備えられていてもよい。例えば、図12に表されるような画面を用いて、作物の生育状況を表す指標の表示優先度の変更を生育情報提供装置1が受け付けて、指標の表示優先度の設定を生育情報提供装置1が変更する。
【0060】
<第3実施形態>
以下に、本発明に係る第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態の説明において、第1や第2の実施形態の生育情報提供装置を構成する構成部分と同じ名称部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
【0061】
第3実施形態の生育情報提供装置1は、圃場における作物の生育が遅れている場合に、遅れに対処するのに参考となる情報(対処参考情報)を提供する構成を備えている。すなわち、第3実施形態の生育情報提供装置1は、第1又は第2の実施形態の構成に加えて、図1の点線に表されているような判断部16を備えている。判断部16は、作物の生育状況の実測値と試算生育曲線(試算曲線)を用いて、作物の生育が遅れているか否かを判断する。例えば、判断部16は、作物の生育状況の実測値と試算生育曲線(試算曲線)とを対比し、図13に表されるように試算生育曲線に対して実測値が低い方にずれ、かつ、そのずれ量Dが閾値以上であるか否かを判断する。閾値は、作物の生育が遅れているか否かを判断する試算生育曲線に対する実測値のずれ量であり、作物の種類や圃場の土壌の状態などが考慮されて予め設定される。
【0062】
判断部16は、試算生育曲線に対して実測値が低い方にずれ、かつ、そのずれ量Dが閾値以上である場合には、作物の生育が遅れていると判断する。なお、判断部16による判断が実行されるタイミングは限定されないが、例えば、一例として、実測値が算出される度に実行される。
【0063】
表示制御部14は、判断部16により作物の生育が遅れていると判断された場合には、例えば、作物の生育状況の情報を端末装置5に出力する場合に、対処参考情報をも出力する。これにより、端末装置5に係る表示装置8に対処参考情報が表示される。図13には、表示装置8に表示される対処参考情報の一例が表されている。図13の例では、作物の生育に大きな影響を与える気象の情報が表示されている。
【0064】
また、作物に病気が発生したことを検知する技術が開発されており、そのような技術が適用されている圃場にあっては、作物における病気の発生の検知が可能である。このような場合には、例えば、生育情報提供装置1は、病気発生の有無に関する情報に基づいて、生育の遅れの原因が病気であることを推定することができる。生育の遅れの原因が病気であると推定される場合には、対処参考情報の一例として、1つ又は複数の病気の説明と、当該病気に対する対処手法とを含む情報が挙げられる。
【0065】
さらに、農業熟練者の知見に基づいた生育の遅れに対する対処手法の情報が予めデータベースに蓄積されている場合には、対処参考情報の別の一例として、そのような農業熟練者の知見に基づいた対処手法の情報が挙げられる。
【0066】
さらに、対処参考情報の別の一例として、圃場関係者が作物の生育の遅れの原因を特定する際に役立つ図14に表されるような情報が挙げられる。図14に表されている対処参考情報は、作物の生育の遅れの原因となりやすい複数の事象の説明と、当該事象に対処する手法との情報を含む。
【0067】
<その他の実施形態>
本発明は第1~第3の実施形態に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、生育情報提供装置1は、第1~第3の実施形態で説明したような作物の生育状況の情報を提供する構成に加えて、圃場における灌漑制御に関する情報を提供する構成を備えていてもよい。この場合には、生育情報提供装置1は、灌漑制御に関する情報を提供する情報源(例えば、灌漑制御装置(灌漑制御の制御盤))3に接続する。また、取得部11がその情報源3から灌漑制御に関する情報を取得する。生育情報提供装置1は、灌漑制御に関する情報を提供することの要求を端末装置5から受け付け、表示制御部14は、その要求に応じて、灌漑制御に関する情報を端末装置5に出力する。これにより、端末装置5に係る表示装置8に灌漑制御に関する情報が表示される。
【0068】
また、第1~第3の実施形態では、作物の生育状況を表す植生指標であるNDVIの実測値は、圃場の衛星画像から取得される情報を用いて算出されている。これに代えて、NDVIの実測値は、航空機やドローンなどに搭載したセンサから取得したNDVIの算出に用いる特定波長帯の電磁波データを用いて、実測値算出部12により算出されてもよい。このように、NDVIの実測値の算出に用いる情報は、圃場の衛星画像から取得される情報に限定されない。また、NDVIの算出に用いる情報が、圃場の衛星画像以外の情報である場合には、取得部11は、圃場の衛星画像を出力する情報源3に代えて、NDVIの実測値の算出に用いる情報を出力する別の情報源3から、NDVIの実測値の算出に用いる情報を取得する。
【0069】
さらに、試算部13は、同一栽培年で周囲の類似した複数の圃場の実際の生育曲線(作物の生育状況を表す植生指標の実測値の推移を表す曲線)の平均値を参考曲線として算出してもよい。類似した圃場とは、例えば、定植後の経過日数と、作物の種類と、作物の品種と、土壌の土性との情報を用いて、情報提供対象の圃場と類似していると判断された圃場である。つまり、圃場における作物の定植後の経過日数の差が閾値以内であり、作物の種類が同じであり、作物の品種が同じか同系統であり、土性タイプ(Sand、Silty clay loamなど)が同じであれば、類似の圃場と判断される。試算部13は、類似していると判断された周囲の複数の圃場の実際の生育曲線の平均値を参考曲線として計算する。また、過去の平均収量がほぼ同じ複数の圃場の実際の生育曲線の平均値を計算することによって、試算部13は目標収量に応じた参考曲線を算出することができる。このように参考曲線が算出された場合には、表示制御部14によって端末装置5の表示装置8における参考曲線の表示が可能である。なお、周囲の圃場における実際の生育曲線に関する情報は、生育情報提供装置1とは別の装置(情報源)から取得される。又は、生育情報提供装置1が互いに異なる複数の圃場における生育状況の実測値を実測値算出部12により算出している場合であって、そのような実測値を算出している複数の圃場の中に上述したような類似の複数の圃場が含まれている場合には、自装置により算出された生育状況の実測値が参考曲線の算出に用いられる。
【0070】
図15は、本発明に係るその他の実施形態の生育情報提供装置の構成を表すブロック図である。この生育情報提供装置40は、例えばコンピュータ装置であり、コンピュータプログラムを実行することにより実現される機能部として、実測値算出部41と、取得部42と試算部43と表示制御部44を備える。
【0071】
実測値算出部41は、圃場における作物の生育状況を表す実測値を算出する。取得部42は、作物を作付けした圃場における気象情報を取得する。試算部43は、作物を圃場に作付けした後の気象情報を含む環境情報および作物の目標収量の情報を用いて目標収量に向けての作物の生育状況の推移を試算することにより、計算上の生育状況の推移を表す試算生育曲線を算出する。表示制御部44は、作物の生育状況の実測値と試算生育曲線をあわせて表示する表示制御を行う。
【0072】
次に、生育情報提供装置40における動作の一例を図16を参照しつつ説明する。図16は、生育情報提供装置40における動作の一例を説明するフローチャートである。例えば、実測値算出部41が圃場における作物の生育状況を表す実測値を算出する(ステップ201)。また、取得部42は、作物を作付けした圃場における気象情報を取得する(ステップ202)。その後、試算部43が、作物を圃場に作付けした後の気象情報を含む環境情報および作物の目標収量の情報を用いて目標収量に向けての作物の生育状況の推移を試算することにより、計算上の生育状況の推移を表す試算生育曲線を算出する(ステップ203)。然る後に、表示制御部44が、作物の生育状況の実測値と試算生育曲線をあわせて表示する表示制御を行う(ステップ204)。
【0073】
その他の実施形態の生育情報提供装置40は、上記のように、作物の生育状況の実測値だけでなく、実際に作物が生育してきた環境の情報を用いて試算された試算生育曲線をも算出する。これにより、生育情報提供装置40は、作物の生育状況の実測値と試算生育曲線をあわせて表示することが可能であり、このような表示により、作物の生育状況が順調であるのか遅れているのかの判断が容易となる。すなわち、生育情報提供装置40は、作物の生育状況が順調であるのか遅れているのかの判断を容易にする情報を提供できる。
【符号の説明】
【0074】
1,40 生育情報提供装置
11,42 取得部
12,41 実測値算出部
13,43 試算部
14,44 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16