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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101923
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】スプライスプレートの取替方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/08 20060101AFI20240723BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20240723BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20240723BHJP
   E02B 3/20 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F16B5/08 A
E04G23/02 C
E01D22/00 A
E02B3/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006147
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】都築 健志
(72)【発明者】
【氏名】井上 正之
【テーマコード(参考)】
2D059
2E176
3J001
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059GG40
2E176AA07
2E176BB01
3J001FA02
3J001FA05
3J001GA01
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA04
3J001JD11
3J001KA02
3J001KA19
3J001KB04
(57)【要約】
【課題】現場での作業を容易にすることが可能なスプライスプレートの取替方法を提供する。
【解決手段】既設スプライスプレート1Pを被接合部材2の突き合わせ方向と交差する方向に分割する。分割された既設スプライスプレート1Pと同形状の新規スプライスプレート分割体1Nを順次入れ替えて新規スプライスプレート分割体1Nを被接合部材2の板状部2aに接合する。入れ替えられた隣り合う新規スプライスプレート分割体1N同士を溶接するにあたり、隣り合う新規スプライスプレート分割体1Nの溶接部に開先5を予め施しておく。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突き合わされた被接合部材の板状部同士に架け渡してあてがわれ、それぞれの板状部と接合されることで被接合部材同士を接合するスプライスプレートの取替方法において、
既設スプライスプレートを被接合部材の突き合わせ方向と交差する方向に分割し、分割された既設スプライスプレートと同形状の新規スプライスプレート分割体とを順次入れ替えて新規スプライスプレート分割体を被接合部材の板状部に接合し、入れ替えられた隣り合う新規プライスプレート分割体同士を溶接し、前記入れ替えられた隣り合う新規スプライスプレート分割体の溶接部に開先が予め施された、スプライスプレートの取替方法。
【請求項2】
既設スプライスプレートの分割数は、被接合部材自体の断面とスプライスプレートの断面とに基づいて、分割された既設スプライスプレートを取り外した状態で所定の断面特性が確保できるようにして設定される、請求項1に記載のスプライスプレートの取替方法。
【請求項3】
分割された既設スプライスプレートを取り外した状態でのスプライスプレートの断面積が被接合部材自体の断面積以上となる分割された既設スプライスプレートの断面積に基づいて既設スプライスプレートの分割数を設定する、請求項2に記載のスプライスプレートの取替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突き合わされた被接合部材の板状部同士に架け渡してあてがわれ、それぞれの板状部と接合されることで被接合部材同士を接合するスプライスプレートの取替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾荷役設備であるアンローダの脚材やブームなどのような長尺な部材は、H形鋼や角パイプ鋼などの構成部材を複数連結して構成される。これらの構成部材(被接合部材)の接合箇所にスプライスプレートが用いられる。スプライスプレートは、一般に、突き合わされた被接合部材の板状部同士の両面に架け渡してあてがわれ、その状態で、それぞれの板部材とボルト・ナットなどの締結具で接合されることで被接合部材同士を接合する。このスプライスプレートは、特に港湾荷役設備の場合に劣化しやすいので、定期的に交換する(取替える)必要がある。このスプライスプレートの取替方法として、例えば下記特許文献1や特許文献2に記載されるものがある。
【0003】
このうち、特許文献1に記載されるスプライスプレートの取替方法は、取替えられる(既設)スプライスプレートを少しずつ切断し、切断された部分を除去して露出した被接合部材の板状部の突き合わせ部分に開先を施してから溶接する。これを順次、被接合部材の突き合わせ方向と直交する方向に繰り返すことで被接合部材の板状部の突き合わせ部分同士を全て溶接すると共に既設スプライスプレートを全て除去する。その後、新しいスプライスプレートを既設スプライスプレートのあった位置にあてがって被接合部材の板状部に接合し直す。
【0004】
特許文献2に記載されるスプライスプレートの取替方法は、既設スプライスプレートで接合されている被接合部材同士をバイパス材で接合すると共に既設スプライスプレートを切断して上下に分割する。バイパス材による被接合部材の接合後に、分割された既設スプライスプレートの一部を同形状の新規スプライスプレートと入れ替えて被接合部材に接合し、これを順次繰り返して既設スプライスプレートを新規スプライスプレートと置換する。既設スプライスプレートを新規スプライスプレートと取替え終わったら、バイパス材を撤去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64-48695号公報
【特許文献2】特開2017-198042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されるスプライスプレートの取替方法では、既設スプライスプレートを一部除去した後、露出している被接合部材の板部材に開先加工を作業の現場で施す必要がある。金属板に機械加工で開先を形成するのは容易だが、作業の現場で板部材に開先加工を施すのは面倒で手間もかかる。また、特許文献2に記載されるスプライスプレートの取替方法では、個別のバイパス材を用意して、それを作業の現場で被接合部材に接合したり撤去したりする必要がある。そのため、このスプライスプレートの取替方法では、バイパス材の接合・撤去に手間と時間を要すると共に、個別のバイパス材を用いることでコスト増にもつながる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、現場での作業を容易にすることが可能なスプライスプレートの取替方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るスプライスプレートの取替方法は、
突き合わされた被接合部材の板状部同士に架け渡してあてがわれ、それぞれの板状部と接合されることで被接合部材同士を接合するスプライスプレートの取替方法において、既設スプライスプレートを被接合部材の突き合わせ方向と交差する方向に分割し、分割された既設スプライスプレートと同形状の新規スプライスプレート分割体とを順次入れ替えて新規スプライスプレート分割体を被接合部材の板状部に接合し、入れ替えられた隣り合う新規プライスプレート分割体同士を溶接し、前記入れ替えられた隣り合う新規スプライスプレート分割体の溶接部に開先が予め施されたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分割された既設スプライスプレートを同形状の新規スプライスプレート分割体と順次入れ替えてそれを被接合部材に接合し、隣り合う新規スプライスプレート分割体同士を溶接する。このとき、新規スプライスプレート分割体の溶接部に予め開先が施されていることにより、現場での作業が軽減されて容易になると共に、溶接された新規スプライスプレート分割体同士の接合強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のスプライスプレートの取替方法が適用されたアンローダの一実施形態を示す概略構成図である。
図2図1のアンローダにおけるスプライスプレートによる被接合部材の接合部の一例を示す斜視図である。
図3図2のスプライスプレートの取替方法の手順の説明図である。
図4図2のスプライスプレートの取替方法の手順の説明図である。
図5図2のスプライスプレートの取替方法の手順の説明図である。
図6図2のスプライスプレートの取替方法の手順の説明図である。
図7図2のスプライスプレートの取替方法の手順の説明図である。
図8図2のスプライスプレートの取替方法の手順の説明図である。
図9図2のスプライスプレートの取替方法の手順の説明図である。
図10図2のスプライスプレートの取替方法の手順の説明図である。
図11】横移動に対する目標位置からの位置ずれ量の説明図である。
図12】横移動に対する目標位置からの位置ずれ量の説明図である。
図13】スプライスプレートによる被接合部材の接合部の一例を示す断面図である。
図14図13の被接合部材の断面図である。
図15図13のスプライスプレートの断面図である。
図16図13のスプライスプレートの分割状態の一例を示す断面図である。
図17図13のスプライスプレートの分割例を示す断面図である。
図18】スプライスプレートによる被接合部材の接合部の他の例を示す断面図である。
図19図18の被接合部材の断面図である。
図20図18のスプライスプレートの断面図である。
図21図18のスプライスプレートの分割状態の一例を示す断面図である。
図22図18のスプライスプレートの分割例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のスプライスプレートの取替方法の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0012】
図1は、この実施形態のスプライスプレートの取替方法が適用されたアンローダを示す概略構成図である。例えば、運搬船100で運ばれた鉄鉱石を荷揚げするアンローダ50は巨大な港湾荷役設備である。この巨大なアンローダ50の脚材51やブーム(梁材)52は特に長大であり、そのため、前述のように、H形鋼や角パイプ鋼のような、複数の長尺な構成部材を長手方向に接合して構成されている。スプライスプレート1は、これらの構成部材の接合部に用いられている。図2は、図1のアンローダ50におけるスプライスプレート1による被接合部材(構成部材)2の接合部の一例を示す斜視図である。この例では、水平方向に伸長するように配設された角パイプ鋼同士が長手方向に接合(連結)されている。スプライスプレート1は、一般に、突き合わされた被接合部材2の板状部2aの両面に板状部2a同士に架け渡してあてがわれ、その状態で、それぞれの板状部2aとボルト・ナットなどの締結具3で接合されることで被接合部材2同士を接合する。
【0013】
次に、例えばスプライスプレート1が劣化した結果、スプライスプレート1を交換する(取替える)手順の一例について図3図12を用いて説明する。以下では、取替えられるスプライスプレート1を既設スプライスプレート1P、新たに取付けられるスプライスプレート1を新規スプライスプレートと称する。なお、この実施形態では、新規スプライスプレートは、既設スプライスプレート1Pを分割した形態であることから、新規スプライスプレート分割体1Nとも称する。図3は、図2の角パイプ鋼の接合に用いられたスプライスプレート1の1つ、具体的には鉛直面に取付けられている既設スプライスプレート1Pの斜視図である。まず、図4に示すように、図の上部1/3の範囲の締結具3を取り外すと共に、図の上から1/3の位置で水平方向に既設スプライスプレート1Pを切断して上下、すなわち被接合部材2の突き合わせ方向と交差(直交)する方向に分割する。作業の手順は、どちらが先でもよいし、同時に行ってもよい。この後、図5に示すように、分割された上から1/3の既設スプライスプレート1Pを取り外す(除去する)。
【0014】
既設スプライスプレート1Pの一部が除去されたら、図6に示すように、その部分に、除去された分割既設スプライスプレート1Pと同形状の新規スプライスプレート分割体1Nをあてがう。この新規スプライスプレート分割体1Nには、当然ながら、締結具3を挿通するための貫通穴4が設けられているが、後述するように、隣り合う新規スプライスプレート分割体1Nとの溶接部に開先5が予め施されている。この後、被接合部材2の貫通穴4及び新規スプライスプレート分割体1Nの貫通穴4に締結具3を挿通して締結し、図7に示すように、新規スプライスプレート分割体1Nを被接合部材2の板状部2aに接合する。
【0015】
続いて、図7に示すように、残った既設スプライスプレート1Pのうち、原形の(元の)既設スプライスプレート1Pの上から1/3から2/3の範囲の締結具3を取り外す。また、原形の既設スプライスプレート1Pの上から2/3の位置で残った既設スプライスプレート1Pを切断して上下、すなわち被接合部材2の突き合わせ方向と交差(直交)する方向に分割する。作業の手順は、どちらが先でもよいし、同時に行ってもよい。すなわち、この工程で分割された既設スプライスプレート1Pは、原形の既設スプライスプレート1Pの上から1/3から2/3までの範囲で全体の1/3に相当する。この後、図8に示すように、分割された1/3から2/3の範囲の既設スプライスプレート1Pを取り外す(除去する)。
【0016】
既設スプライスプレート1Pの一部が除去されたら、図9に示すように、その部分に、除去された分割既設スプライスプレート1Pと同形状の新規スプライスプレート分割体1Nをあてがう。この新規スプライスプレート分割体1Nには、前述と同様に、締結具3を挿通するための貫通穴4が設けられていると共に、隣り合う新規スプライスプレート分割体1Nとの溶接部に開先5が予め施されている。この後、被接合部材2の貫通穴4及びあてがわれた新規スプライスプレート分割体1Nの貫通穴4に締結具3を挿通して締結し、図10に示すように、上から1/3から2/3の範囲の新規スプライスプレート分割体1Nを被接合部材2の板状部2aに接合する。
【0017】
続いて、図10に示すように、残った既設スプライスプレート1Pの締結具3を取り外した後、残った既設スプライスプレート1Pを取り外す(除去する)。これは、原形の既設スプライスプレート1Pの下から1/3の範囲に相当する。残った既設スプライスプレート1Pが除去されたら、図11に示すように、その部分に、除去された分割既設スプライスプレート1Pと同形状の新規スプライスプレート分割体1Nをあてがう。この新規スプライスプレート分割体1Nにも、前述と同様に、締結具3を挿通するための貫通穴4が設けられていると共に、隣り合う新規スプライスプレート分割体1Nとの溶接部に開先5が予め施されている。この後、被接合部材2の貫通穴4及びあてがわれた新規スプライスプレート分割体1Nの貫通穴4に締結具3を挿通して締結し、図12に示すように、下から1/3の範囲の新規スプライスプレート分割体1Nを被接合部材2の板状部2aに接合する。
【0018】
このようにして既設スプライスプレート1Pが3つの新規スプライスプレート分割体1Nに置き換えられたら、図12に示すように、隣り合う新規スプライスプレート分割体1Nの当接(突き当て)部同士を溶接する。溶接は、互いに対向する開先5で行うことにより、十分な溶接強度が得られる。この溶接によって、3枚の新規スプライスプレート分割体1Nが一体化されたら、スプライスプレート自体の取替作業が完了する。なお、新規スプライスプレート分割体1Nを溶接することにより、新規スプライスプレート分割体1Nが熱膨張し、その結果、締付けたボルトが伸びてボルト軸力が低下している可能性がある。このような場合には、新規スプライスプレート分割体1Nの溶接完了後に、使用されているボルトを全数取替えることで必要なボルト軸力を担保できる。また、ボルトに高力ボルトを用い、高力ボルトを取替える際には、ボルトを一列ずつ取替える。このときの取替えの順番は溶接接合設計施工ガイドブックの高力ボルト締付けの締付け順序に基づく。
【0019】
次に、既設スプライスプレート1Pの分割数、すなわち新規スプライスプレート分割体1Nの数の設定手法について説明する。まず、被接合部材2が1枚の平鋼(=板状部2a)であるとし、図2の矢印方向、すなわち被接合部材(構成部材)2の長手方向に引張力が作用する場合について説明する。図13は、平鋼からなる被接合部材2が2枚の既設スプライスプレート1Pで接合されている部分の断面図である。また、図14は、平鋼からなる被接合部材2の接合部以外の部分、すなわち被接合部材2自体の断面図である。接合部以外の部分の被接合部材2には、締結具3を挿通するための貫通穴4が形成されていない。この被接合部材2自体の断面積をAmとする。図15は、2枚の既設スプライスプレート1Pの貫通穴4が形成されている部分の断面図である。この貫通穴4が形成されている部分の2枚の既設スプライスプレート1Pの断面積をBmとする。なお、新規スプライスプレート分割体1Nの厚さは既設スプライスプレート1Pの厚さと同等とし、ここでは新規スプライスプレート分割体1Nに形成されている開先5の断面積は無視する。
【0020】
図16に示すように、最初に分割する既設スプライスプレート1Pの断面積をCmとすると、残りの既設スプライスプレート1Pの断面積は(B-C)mになる。この残りの既設スプライスプレート1Pの断面積(B-C)mが被接合部材2自体の断面積Am以上である分割既設スプライスプレート1Pの断面積Cmを求める。図17に示すように、最終的に分割される各既設スプライスプレート1Pの断面積をD、D、Dとすると、それぞれはD≦Cm、D≦Cm、D≦Cmを満たす。最終分割既設スプライスプレート1Pの断面積D、D、Dは、互いに等しくてもよいし、等しくなくともよい。また、図の紙面垂直方向の寸法、すなわち被接合部材2の突き合わせ方向の寸法が一定である場合には、最終分割既設スプライスプレート1Pの断面積D、D、Dは図の上下方向寸法によって決まる。このとき、最終分割既設スプライスプレート1Pの分割線が締結具3(又はその貫通穴4)と干渉しないように、それぞれの分割線位置を設定し、それに応じて最終分割既設スプライスプレート1Pの断面積D、D、Dを設定する。このように最終分割既設スプライスプレート1Pの断面積D、D、Dを設定することで、既設スプライスプレート1Pの分割数が設定される。
【0021】
次に、被接合部材2が角パイプ鋼である場合の既設スプライスプレート1Pの分割数、すなわち新規スプライスプレート分割体1Nの数の設定手法について説明する。この場合も、図2の矢印方向、すなわち被接合部材(構成部材)2の長手方向に引張力が作用するものとする。図18は、角パイプ鋼からなる被接合部材2が計8枚の既設スプライスプレート1Pで接合されている部分の断面図である。また、図19は、角パイプ鋼からなる被接合部材2の接合部以外の部分、すなわち被接合部材2自体の断面図である。接合部以外の部分の被接合部材2には、締結具3を挿通するための貫通穴4が形成されていない。この被接合部材2自体の断面積をEmとする。図20は、計8枚の既設スプライスプレート1Pの貫通穴4が形成されている部分の断面図である。この貫通穴4が形成されている部分の計8枚の既設スプライスプレート1Pの断面積をFmとする。なお、新規スプライスプレート分割体1Nの厚さは既設スプライスプレート1Pの厚さと同等とし、ここでも新規スプライスプレート分割体1Nに形成されている開先5の断面積は無視する。
【0022】
図21に示すように、最初に分割する既設スプライスプレート1Pの断面積をGmとすると、残りの既設スプライスプレート1Pの断面積は(F-G)mになる。この残りの既設スプライスプレート1Pの断面積(F-G)mが被接合部材2自体の断面積Em以上である分割既設スプライスプレート1Pの断面積Gmを求める。図22に示すように、最終的に分割される各既設スプライスプレート1Pの断面積をH、H、H、H、Hとすると、それらはH≦Gm、H≦Gm、H≦Gm、H≦Gm、H≦Gmを満たす。最終分割既設スプライスプレート1Pの断面積H~Hは、互いに等しくてもよいし、等しくなくともよい。また、図の紙面垂直方向の寸法、すなわち被接合部材2の突き合わせ方向の寸法が一定である場合には、最終分割既設スプライスプレート1Pの断面積H~Hは図の上下及び左右方向寸法によって決まる。このとき、最終分割既設スプライスプレート1Pの分割線が締結具3(又はその貫通穴4)と干渉しないように、それぞれの分割線位置を設定し、それに応じて最終分割既設スプライスプレート1Pの断面積H~Hを設定する。このように最終分割既設スプライスプレート1Pの断面積H~Hを設定することで、既設スプライスプレート1Pの分割数が設定される。
【0023】
被合部材は、穴の空いていない被接合部材2自体の断面積によって引張力に対して安定している(応力が破壊強度未満)。これを既設スプライスプレート1Pによる被接合部材2の接合部に適用し、分割して一部取り外された既設スプライスプレート1Pの残りの断面積を被接合部材2自体の断面積以上とする。これにより、被接合部材2の接合部では、被接合部材2自体の断面積以上の既設スプライスプレート1Pによって被接合部材2同士が接合され、引張力に対する強度を確保することができる。例えば、図18の角パイプ鋼からなる被接合部材2の接合部において、その方形断面の一辺を構成する板状部2aに対し、図15図17の分割手法を採用する方が強度を確保しやすい。そこで、この実施形態では、1つの板状部2aを挟む2枚の既設スプライスプレート1Pのそれぞれの分割数を3とし、既設スプライスプレート1Pを均等に3分割し、それに相当する形状の新規スプライスプレート分割体1Nを作成して用いた。なお、既設スプライスプレート1Pに曲げモーメントが作用する断面に対しては、断面積に代えて断面係数の比較によって分割数を設定すればよい。
【0024】
このように、実施形態のスプライスプレートの取替方法では、分割された既設スプライスプレート1Pを同形状の新規スプライスプレート分割体1Nと順次入れ替えてそれを被接合部材2に接合し、隣り合う新規スプライスプレート分割体1N同士を溶接する。このとき、新規スプライスプレートの溶接部に予め開先5が施されていることにより、現場での作業が軽減されて容易になると共に、溶接された新規スプライスプレート同士の接合強度を確保することができる。
【0025】
また、被接合部材2自体の断面とスプライスプレート1の断面とに基づいて、分割された既設スプライスプレート1Pを取り外した状態で所定の断面特性が確保できるようにして既設スプライスプレート1Pの分割数を設定する。これにより、スプライスプレート取替中における引張力や曲げモーメントに対する被接続部材の接合部の強度を確保することができる。なお、引張力ではなくて、圧縮力に対する場合は、座屈を考慮する必要がある。
【0026】
また、分割された既設スプライスプレート1Pを取り外した状態でのスプライスプレート1の断面積が被接合部材2自体の断面積以上となる分割された既設スプライスプレート1Pの断面積に基づいて既設スプライスプレート1Pの分割数を設定する。これにより、スプライスプレート取替中における引張力に対する被接続部材の接合部の強度を確保することができる。
【0027】
以上、実施形態に係るスプライスプレートの取替方法について説明したが、本件発明は、上記実施形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施形態では、角パイプ鋼からなる被接合部材2をスプライスプレート1で接合する接合部についてのみ説明したが、H形鋼や山形鋼などの種々の被接合部材2の接合部にも同様に適用可能である。
【0028】
また、上記実施形態では、アンローダ50の部材を構成する構成部材を被接合部材2とする接合部についてのみ説明したが、接合部の適用箇所は、これに限定されるものではなく、スプライスプレート1で接合される種々の設備の接合部に適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 スプライスプレート
1P 既設スプライスプレート
1N 新規スプライスプレート分割体
2 被接合部材
2a 板状部
3 締結具
4 貫通穴
5 開先
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22