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特開2024-101930疲労判定装置、疲労判定方法、疲労判定プログラム、及び疲労判定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101930
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】疲労判定装置、疲労判定方法、疲労判定プログラム、及び疲労判定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20240723BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20240723BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
A61B5/16 200
A61B5/02 310A
A61B5/0245 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006161
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 富男
(72)【発明者】
【氏名】和智 湧斗
(72)【発明者】
【氏名】永濱 敏樹
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA10
4C017AA20
4C017AB02
4C017AC26
4C017BC11
4C017BC14
4C017BD04
4C038PP01
4C038PS00
4C038PS09
(57)【要約】
【課題】 被測定者の疲労をより正確に判定できる、疲労判定装置、疲労判定方法、疲労判定プログラム、及び疲労判定システムを提供する。
【解決手段】 疲労判定システム10は、ウェアラブルセンサ12によって被測定者の歩数、脈拍数、及び活動量を測定するが測定する。そして、疲労判定システム10は、ウェアラブルセンサ12によって測定された被測定者の歩数、脈拍数、及び活動量に基づいて、被測定者の単位時間当たりの負担度を判定し、負担度の時間変化に基づいて被測定者の疲労度を判定する疲労判定方法。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の動作情報及び身体情報の少なくとも一方に基づいて、前記被測定者の単位時間当たりの負担度を判定する負担度判定手段と、
前記負担度の時間変化に基づいて、前記被測定者の疲労度を判定する疲労度判定手段と、
を備える疲労判定装置。
【請求項2】
前記負担度判定手段は、前記被測定者の身体的な負担を示す身体的負担度、及び前記被測定者の精神的な負担を示す精神的負担度を判定し、
前記疲労度判定手段は、前記身体的負担度の時間変化に基づいて、前記被測定者の身体的疲労度を判定し、前記精神的負担度の時間変化に基づいて、前記被測定者の精神的疲労度を判定する、
請求項1に記載の疲労判定装置。
【請求項3】
前記負担度判定手段は、前記被測定者の歩数、脈拍数、及び活動量に基づいて前記負担度を判定する、請求項1又は請求項2に記載の疲労判定装置。
【請求項4】
前記負担度判定手段は、単位時間当たりの、前記被測定者の歩数、脈拍数、及び活動量のそれぞれを正規化した値を用いて前記負担度を判定する、請求項1または2に記載の疲労判定装置。
【請求項5】
前記負担度判定手段は、前記被測定者の前記動作情報及び前記身体情報に基づいて分類される前記被測定者の単位時間当たりの活動状態を用いて、前記負担度を判定する、請求項1又は請求項2に記載の疲労判定装置。
【請求項6】
前記活動状態は、
前記被測定者の脈拍が測定できない第1状態、
前記被測定者の脈拍が測定できて活動量が相対的に小さく、かつ歩数がない第2状態、
前記被測定者の脈拍が測定できて活動量が相対的に大きく、かつ歩数がない第3状態、
前記被測定者の脈拍が測定できて活動量が相対的に大きく、かつ歩数が所定値未満である第4状態、
前記被測定者の脈拍が測定できて活動量が相対的に大きく、かつ歩数が所定値以上である第5状態、
に分類される、請求項5に記載の疲労判定装置。
【請求項7】
前記負担度判定手段は、
前記被測定者の前記第2状態及び前記第3状態を含まずに前記被測定者の身体的な負担を示す身体的負担度を判定し、
前記被測定者の前記第2状態及び前記第3状態を含み、第5状態を含まずに前記被測定者の精神的な負担を示す精神的負担度を判定する、請求項6に記載の疲労判定装置。
【請求項8】
前記疲労度判定手段は、前記負担度判定手段によって判定された前記負担度が入力されるモデルによって前記疲労度を判定し、
前記モデルは、前記被測定者が入力する自身の主観的な前記疲労度に基づいて修正される、請求項1又は請求項2に記載の疲労判定装置。
【請求項9】
前記疲労度判定手段は、機械学習により生成された疲労判定モデルに、所定時間内における負担度の時間変化を入力することで前記疲労度を判定する、請求項1又は請求項2に記載の疲労判定装置。
【請求項10】
前記負担度判定手段は、前記前記被測定者の前記動作情報及び前記身体情報の測定結果が入力される負担判定モデルによって前記負担度を判定し、
前記疲労度判定手段は、前記負担度判定手段によって判定された前記負担度が入力される疲労判定モデルによって前記疲労度を判定し、
前記負担判定モデル及び前記疲労判定モデルの少なくとも一方は、前記被測定者の労働状態に基づいて前記被測定者毎に調整される、請求項1又は請求項2に記載の疲労判定装置。
【請求項11】
前記疲労度判定手段による判定結果に基づく通知を前記被測定者に行う通知手段を備える、請求項1又は請求項2に記載の疲労判定装置。
【請求項12】
前記通知手段は、前記被測定者の疲労又は負担を予測した通知を行う、請求項11に記載の疲労判定装置。
【請求項13】
前記通知手段は、前記被測定者の予測される前記負担度又は前記疲労度と前記負担度又は前記疲労度の判定結果とが異なる場合に通知を行う、請求項11に記載の疲労判定装置。
【請求項14】
前記被測定者に装着され、前記被測定者の前記動作情報及び前記身体情報の少なくとも一方を測定するセンサを備え、
前記センサは、電力消費を抑制するように、前記負担度又は前記疲労度の判定結果に応じて測定状態が調整される請求項1又は請求項2に記載の疲労判定装置。
【請求項15】
前記被測定者の動作情報及び身体情報の少なくとも一方をセンサが測定する第1工程と、
前記センサによって測定された前記被測定者の前記動作情報及び前記身体情報の少なくとも一方に基づいて、前記被測定者の単位時間当たりの負担度を負担度判定手段が判定する第2工程と、
前記負担度の時間変化に基づいて、前記被測定者の疲労度を疲労判定手段が判定する第3工程と、
を有する疲労判定方法。
【請求項16】
コンピュータに、
被測定者の動作情報及び身体情報の少なくとも一方に基づいて、前記被測定者の単位時間当たりの負担度を判定する負担度判定手段と、
前記負担度の時間変化に基づいて、前記被測定者の疲労度を判定する疲労度判定手段と、
を実行させるための疲労判定プログラム。
【請求項17】
前記被測定者の動作情報及び身体情報の少なくとも一方を測定するセンサと、
前記センサによって測定された前記被測定者の動作情報及び身体情報の少なくとも一方に基づいて、前記被測定者の単位時間当たりの負担度を判定する負担度判定手段と、
前記負担度の時間変化に基づいて、前記被測定者の疲労度を判定する疲労度判定手段と、
を備える疲労判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疲労判定装置、疲労判定方法、疲労判定プログラム、及び疲労判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被測定者の疲労を判定する装置の開発が進んでいる。
【0003】
特許文献1には、ユーザーがトレーニングの実施中に疲労度や回復状態を確認する運動支援システムが記載されている。この運動支援システムは、ユーザーの現在の疲労状態に関する疲労度情報、現在の疲労状態の改善に必要な回復期間、及びユーザーが運動を実施しているときのユーザーの脈拍情報に基づいた運動の負荷を表す負荷情報に基づいて、ユーザーに報知を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-033565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の疲労判定装置よりも、より正確に被測定者の疲労を判定することが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、被測定者の疲労をより正確に判定できる、疲労判定装置、疲労判定方法、疲労判定プログラム、及び疲労判定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の疲労判定装置は、被測定者の動作情報及び身体情報の少なくとも一方に基づいて、前記被測定者の単位時間当たりの負担度を判定する負担度判定手段と、前記負担度の時間変化に基づいて、前記被測定者の疲労度を判定する疲労度判定手段と、を備える。
【0008】
被測定者の負担は時間と共に蓄積され、それが疲労となる。そこで、本構成は、被測定者の負担度の推移に基づいて被測定者の疲労度を判定するので、被測定者の疲労をより正確に判定できる。なお、一例として、動作情報は歩数、活動量等であり、身体情報は脈拍数等である。
【0009】
第2態様の疲労判定装置は第1態様の疲労判定装置において、前記負担度判定手段は、前記被測定者の身体的な負担を示す身体的負担度、及び前記被測定者の精神的な負担を示す精神的負担度を判定し、前記疲労度判定手段は、前記身体的負担度の時間変化に基づいて、前記被測定者の身体的疲労度を判定し、前記精神的負担度の時間変化に基づいて、前記被測定者の精神的疲労度を判定してもよい。本構成によれば、被測定者の負担として身体的負担及び精神的負担に分けるので、被測定者の疲労をより正確に判定できる。
【0010】
第3態様の疲労判定装置は第1態様又は第2態様の疲労判定装置において、前記負担度判定手段は、前記被測定者の歩数、脈拍数、及び活動量に基づいて前記負担度を判定してもよい。本構成によれば、例えば、被測定者に装着されるウェアラブルセンサを用いて、被測定者の疲労をより正確に判定できる。
【0011】
第4態様の疲労判定装置は第1態様から第3態様の何れか1つの疲労判定装置において、前記負担度判定手段は、単位時間当たりの前記活動状態毎の前記被測定者の歩数、脈拍数、及び活動量のそれぞれを正規化した値を用いて前記負担度を判定してもよい。本構成によれば、負担度の判定方法として、例えば実験で得られた複数の測定者のデータ全体をから得た平均値を用いて算出された偏差値を用いることで、被測定者の負担度を定量的に判定できる。
【0012】
第5態様の疲労判定装置は第1態様から第4態様の何れか1つの疲労判定装置において、前記負担度判定手段は、前記被測定者の前記動作情報及び前記身体情報に基づいて分類される前記被測定者の単位時間当たりの活動状態を用いて、前記負担度を判定してもよい。本構成によれば、負担度の判定方法として被測定者の活動状態を分類して負担度を算出することで、活動状態毎に異なる測定値の分布に対応した被測定者の負担度を定量的に判定できる。
【0013】
被測定者の疲労は、被測定者の身体的及び精神的な負担に応じて変化する。このため、被測定者の負担を正確に判定することが求められている。そこで、本構成は、被測定者の動作情報及び身体情報に基づいて被測定者の単位時間当たりの活動状態を分類し、単位時間当たりの活動状態毎の動作情報及び身体情報の偏差値を用いて前記負担度を判定する。
【0014】
第6態様の疲労判定装置は第4態様又は第5態様の疲労判定装置において、前記活動状態は、前記被測定者の脈拍が測定できない第1状態、前記被測定者の脈拍が測定できて活動量が相対的に小さく、かつ歩数がない第2状態、前記被測定者の脈拍が測定できて活動量が相対的に大きく、かつ歩数がない第3状態、前記被測定者の脈拍が測定できて活動量が相対的に大きく、かつ歩数が所定値未満である第4状態、前記被測定者の脈拍が測定できて活動量が相対的に大きく、かつ歩数が所定値以上である第5状態、に分類されてもよい。本構成によれば、被測定者の活動状態を分類することで、被測定者の負担度を正確に判定できる。
【0015】
第7態様の疲労判定装置は第6態様の疲労判定装置において、前記負担度判定手段は、前記被測定者の前記第2状態及び前記第3状態を含まずに前記被測定者の身体的な負担を示す身体的負担度を判定し、前記被測定者の前記第2状態及び前記第3状態を含み、第5状態を含まずに前記被測定者の精神的な負担を示す精神的負担度を判定してもよい。本構成によれば、被測定者の身体的負担度及び精神的負担度を正確に判定できる。
【0016】
第8態様の疲労判定装置は第1態様から第7態様の何れか1つの疲労判定装置において、前記疲労度判定手段は、前記負担度判定手段によって判定された前記負担度が入力されるモデルによって前記疲労度を判定し、前記モデルは、前記被測定者が入力する自身の主観的な前記疲労度に基づいて修正されてもよい。本構成によれば、被測定者の疲労を正確に判定できる。
【0017】
第9態様の疲労判定装置は第1態様から第8態様の何れか1つの疲労判定装置において、前記疲労度判定手段は、機械学習により生成された疲労判定モデルに、所定時間内における負担度の時間変化を入力することで前記疲労度を判定する。本構成によれば、被測定者の疲労を正確に判定できる。
【0018】
第10態様の疲労判定装置は第1態様から第9態様の何れか1つの疲労判定装置において、前記負担度判定手段は、前記前記被測定者の前記動作情報及び前記身体情報の測定結果が入力される負担判定モデルによって前記負担度を判定し、前記疲労度判定手段は、前記負担度判定手段によって判定された前記負担度が入力される疲労判定モデルによって前記疲労度を判定し、前記負担判定モデル及び前記疲労判定モデルの少なくとも一方は、前記被測定者の労働状態に基づいて前記被測定者毎に調整されてもよい。本構成によれば、被測定者の疲労を正確に判定できる。
【0019】
第11態様の疲労判定装置は第1態様から第10態様の何れか1つの疲労判定装置において、前記疲労度判定手段による判定結果に基づく通知を前記被測定者に行う通知手段を備えてもよい。本構成によれば、被測定者は自身の疲労を認識できる。
【0020】
第12態様の疲労判定装置は第11態様の疲労判定装置において、前記通知手段は、前記被測定者の疲労又は負担を予測した通知を行ってもよい。本構成によれば、被測定者は自身の疲労又は負担を抑制できる。
【0021】
第13態様の疲労判定装置は第11態様又は第12態様の疲労判定装置において、前記通知手段は、前記被測定者の予測される前記負担度又は前記疲労度と前記負担度又は前記疲労度の判定結果とが異なる場合に通知を行ってもよい。本構成によれば、被測定者に自身に体調不良等が生じている可能性を認識させることができる。
【0022】
第14態様の疲労判定装置は第1態様から第13態様の何れか1つの疲労判定装置において、前記被測定者に装着され、前記被測定者の前記動作情報及び前記身体情報の少なくとも一方を測定するセンサを備え、前記センサは、電力消費を抑制するように、前記負担度又は前記疲労度の判定結果に応じて測定状態が調整されてもよい。本構成によれば、センサの充電頻度を抑制できる。
【0023】
第15態様の疲労判定方法は、前記被測定者の動作情報及び身体情報の少なくとも一方をセンサが測定する第1工程と、前記センサによって測定された前記被測定者の前記動作情報及び前記身体情報の少なくとも一方に基づいて、前記被測定者の単位時間当たりの負担度を負担度判定手段が判定する第2工程と、前記負担度の時間変化に基づいて、前記被測定者の疲労度を疲労判定手段が判定する第3工程と、を有する。
【0024】
第16態様の疲労判定プログラムは、コンピュータに、被測定者の動作情報及び身体情報の少なくとも一方に基づいて、前記被測定者の単位時間当たりの負担度を判定する負担度判定手段と、前記負担度の時間変化に基づいて、前記被測定者の疲労度を判定する疲労度判定手段と、を実行させる。
【0025】
第17態様の疲労判定システムは、前記被測定者の動作情報及び身体情報の少なくとも一方を測定するセンサと、前記センサによって測定された前記被測定者の動作情報及び身体情報の少なくとも一方に基づいて、前記被測定者の単位時間当たりの負担度を判定する負担度判定手段と、前記負担度の時間変化に基づいて、前記被測定者の疲労度を判定する疲労度判定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、被測定者の疲労をより正確に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施形態の疲労判定システムの概略構成図である。
図2図2は、実施形態の活動状態の分類を示す模式図である。
図3図3は、実施形態の身体的負担度及び精神的負担度を判定するためのパラメータを示す模式図である。
図4図4は、事務作業における負担度の判定結果を示す図であり、(A)は歩数、脈拍数、及び活動量を示し、(B)は負担度の判定結果を示す。
図5図5は、登山における負担度の判定結果を示す図であり、(A)は歩数、脈拍数、及び活動量を示し、(B)は負担度の判定結果を示す。
図6図6は、実施形態の疲労判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0029】
図1は、本実施形態の疲労判定システム10の概略構成図である。疲労判定システム10は、ウェアラブルセンサ12、疲労判定装置14、情報処理装置16を備える。
【0030】
情報処理装置16は、例えば、被測定者が所有するスマートフォンやタブレット端末等の可搬型の情報処理装置である。なお、情報処理装置16は、被測定者が所有する情報処理装置に限らず、例えば、被測定者を雇用する企業等に設置されて被測定者の就労状態を管理するパソコン等の情報処理装置でもよい。
【0031】
ウェアラブルセンサ12は、被測定者が装着することで、被測定者の歩数、脈拍数(心拍数)、及び活動量の時間変化を測定するものである。本実施形態のウェアラブルセンサ12は、一例として、バンドによって被測定者の手首に装着されるスマートバンドである。
【0032】
歩行及び活動は被測定者の動作に相当し、当該歩行及び活動に基づいて得られる歩数及び活動量は被測定者の動作情報に相当し、脈拍数は被測定者の身体情報に相当する。なお、動作とは、ヒトの体の活動状態を表す概念であり、例えば、関節の折り曲げ、筋肉の伸縮等によって実現される。動作情報とは動作に基づいて得られる情報であり、例えば、関節の折り曲げ量、筋肉負担度合い(凝りと表現される状態)、筋電図で測定可能な筋活動量等でもある。また、身体情報とは、ヒトの生理現象を表す概念であり、例えば、体温、発汗量、まばたきの回数、手足の無駄な動き、呼吸数、眼球の動き、姿勢、SpO2等でもある。
【0033】
また、被測定者の動作情報及び身体情報として、歩数、活動量、及び脈拍数の一つ以上が用いられてもよく、これら以外が用いられてもよい。例えば、身体情報として被測定者の呼吸数が用いられてもよい。すなわち、本実施形態の疲労判定システム10は、数値化した被測定者の動作情報及び身体情報を用いて、後述するように被測定者の疲労を判定する。
【0034】
本実施形態のウェアラブルセンサ12は、加速度センサ20、脈拍センサ22、歩数算出部24、及び通信部28を備える。
【0035】
加速度センサ20は、被測定者の動きを測定する。なお、加速度センサ20の測定結果は、被測定者の活動量とされる。
【0036】
脈拍センサ22は、被測定者の脈拍数を測定するセンサであり、一例として、光学式のセンサである。
【0037】
歩数算出部24は、加速度センサ20による検知結果に基づいて、被測定者の歩数を算出する。
【0038】
通信部28は、歩数、脈拍数、及び活動量の測定結果を定期的(例えば1分毎)に疲労判定装置14へ送信する。なお、通信部28は、一例として、WiFi(登録商標)及びBlueTooth(登録商標)等の無線通信によって、疲労判定装置14へ測定結果を送信する。
【0039】
本実施形態の疲労判定装置14は、サーバ等の情報処理装置であり、ウェアラブルセンサ12から送信された測定結果に基づいて、被測定者の疲労判定を行う。
【0040】
ここで本実施形態においては、負担(負荷)は被測定者の単位時間当たりの活動に応じて、被測定者が感じるものとする。そして、被測定者の負担が時間と共に蓄積され、それが被測定者の疲労となるとする。
【0041】
本実施形態の疲労判定装置14は、被測定者の動作情報及び身体情報の少なくとも一方に基づいて、被測定者の単位時間当たりの負担度を判定し、負担度の時間変化に基づいて被測定者の疲労度を判定する疲労度判定処理を行う。疲労判定処理は、被測定者の負担度の推移に基づいて被測定者の疲労度を判定するので、被測定者の疲労をより正確に判定できる。
【0042】
本実施形態の疲労判定装置14は、CPU(Central Processing Unit)等で構成される演算部40、各種プログラム及び各種データ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)42、演算部40による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)44、各種プログラム及び各種データを記憶する記憶部46、及びウェアラブルセンサ12及び情報処理装置16等との間でデータの送受信を行う通信部48を備える。
【0043】
本実施形態の演算部40は、本実施形態の疲労判定処理を行う。このために演算部40は、活動状態判定部50、負担度判定部52、疲労度判定部54、設定部56、及び通知部58を備える。本実施形態において、各部が有する機能は一例として演算部40が記憶部46に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。なお、これに限らず、各機能は、疲労判定装置14が備えるASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の個別のハードウェアによって実現されてもよい。
【0044】
活動状態判定部50は、被測定者の活動状態を判定(分類)する。活動状態は、被測定者の動作情報を示す指標であり、例えば、被測定者の活動の有無、立位での活動又は座位での活動であるかを示すものである。なお、被測定者の活動状態は、ウェアラブルセンサ12で測定された歩数、脈拍数、及び活動量に基づいて判定される。
【0045】
本実施形態の活動状態判定部50は、統計量として、所定時間毎の合計歩数、脈拍数の平均値、及び活動量の平均値に基づいて被測定者の活動状態を判定する。なお、所定時間は、後述する負担度を判定する時間間隔である負担判定時間よりも短い。一例として、所定時間は1分であり、負担判定時間は1時間である。
【0046】
図2は、活動状態の分類を示す模式図である。図2に示されるように、分類は、非装着状態、安静状態、座位活動状態、立位活動状態、歩行・運動状態に分類される。
【0047】
非装着状態は、被測定者がウェアラブルセンサ12を装着していない、又は装着していても何らかの理由により脈拍が測定できない状態である。なお、歩数又は活動量の計測の可否にかかわらず、被測定者の脈拍が測定できない場合には、非装着状態であると分類される。
【0048】
安静状態は、被測定者が活動していない状態であり、例えば、睡眠や体を動かさずに休息している状態である。例えば、被測定者の脈拍が測定できて活動量が相対的に小さく、かつ歩数がない場合に、安静状態であると分類される。
【0049】
座位活動状態は、被測定者が座りながら作業等をしている状態である。例えば、被測定者の脈拍が測定できて活動量が相対的に大きく、かつ歩数がない場合に、座位活動状態であると分類される。
【0050】
立位活動状態は、被測定者が立ちながら、又は比較的ゆっくり歩きながら作業等をしている状態である。例えば、被測定者の脈拍が測定できて活動量が相対的に大きく、かつ歩数が所定値A未満の場合に、立位活動状態であると分類される。所定値Aとは、例えば、1分間の歩数が60歩である。
【0051】
歩行・運動状態は、被測定者が歩行や運動をしている状態である。例えば、被測定者の脈拍が測定できて活動量が相対的に大きく、かつ歩数が所定値A以上である場合に、歩行・運動状態であると分類される。
【0052】
なお、上記相対的に小さい又は大きいとは、例えば、活動量の大小を定める基準値よりも小さい又は大きいことをいう。この基準値は、例えば、多数の被測定者の測定結果に基づいて定められてもよいし、被測定者個人の過去の測定結果から定められてもよい。
【0053】
負担度判定部52は、被測定者の動作情報及び身体情報の少なくとも一方に基づいて、被測定者の単位時間当たりの負担度を判定する。
【0054】
本実施形態の負担度判定部52は、被測定者が装着するウェアラブルセンサ12が測定した歩数、脈拍数、及び活動量、並びに活動状態判定部50によって判定された被測定者の単位時間当たりの活動状態に基づいて、被測定者の負担度を判定する。
【0055】
本実施形態では、負担度判定部52は、単位時間当たりの活動状態毎の被測定者の歩数、脈拍数、及び活動量のそれぞれを正規化した値を用い負担度を判定する。本実施形態によれば、負担度の判定方法として、例えば実験で得られた複数の測定者のデータ全体をから得た平均値を用いて算出された偏差値を用いることで、被測定者の負担度を定量的に判定できる。
【0056】
正規化の一例として、本実施形態の負担度判定部52は、単位時間当たりの活動状態毎の被測定者の合計歩数、平均脈拍数、及び平均活動量の偏差値を用いて負担度を判定する。
【0057】
このために、負担度判定部52は、負担判定時間(本実施形態では1時間)における活動状態毎の合計時間を求める。そして、負担度判定部52は、各活動状態の合計時間における合計歩数、脈拍数の平均値、及び活動量の平均値を統計量として算出する。
【0058】
さらに、負担度判定部52は、活動状態毎の合計歩数、脈拍数、及び活動量の平均値に基づいて歩数、脈拍数、及び活動量の偏差値を算出する。偏差値の算出には、一例として、多数の測定結果によって予め得られた各活動状態における合計歩数、脈拍数、及び活動量の平均値と標準偏差とが用いられる。なお、被測定者は属性に応じたグループ分けが行われ、被測定者が属するグループ内で偏差値が算出されてもよい。このグループは、例えば、被測定者の職種であり、例えば、事務作業、工場作業、タクシー運転手、バス運転手、トラック運転手等である。
【0059】
ここで、統計量として積算値を用いることが考えられる。しかしながら、活動状態毎の合計時間は、被測定者の日々の生活態様等により変動するため統計量として用い難い。そのため、本実施形態では、統計量として平均値を用いる。
【0060】
さらに、本実施形態の負担度判定部52は、被測定者の身体的な負担を示す身体的負担度、及び被測定者の精神的な負担を示す精神的負担度を判定する。身体的負担は、被測定者の筋肉の疲れ等の肉体的な負担である。精神的負担は、被測定者の気持ち等の感覚的な負担である。
【0061】
身体的負担度及び精神的負担度を判定するためのパラメータは各々異なる。図3は、実施形態の身体的負担度及び精神的負担度を判定するためのパラメータを示す模式図である。なお、各パラメータには、適宜重み付けが行われてもよい。
【0062】
図3に示されるように、身体的負担度の判定には、パラメータとして1時間当たりの合計歩数、平均活動量、平均脈拍数、立位活動状態の平均脈拍数、歩行・運動状態の平均脈拍数、立位活動状態の合計時間、及び歩行・運動状態の合計時間が用いられる。そして、これらのパラメータの偏差値を用いて、身体的負担度が判定される。このように、身体的負担度には、被測定者の安静状態及び座位活動状態の測定結果は含まれない。
【0063】
また、精神的負担度の判定には、パラメータとして1時間当たりの平均活動量、平均脈拍数、安静状態の平均脈拍数、座位活動状態の平均脈拍数、安静状態の合計時間、及び座位活動状態の合計時間、が用いられる。立位活動状態の脈拍数と合計時間を含んでもよい。そして、これらのパラメータの偏差値を用いて、精神的負担度が判定される。このように、精神的負担度には、被測定者の歩行・運動状態の測定結果は含まれない。
【0064】
このように、本実施形態の負担度判定部52は、正規化の一例として、活動状態毎の被測定者の合計歩数、脈拍数の平均値、及び活動量の平均値の偏差値を用いて負担度を判定する。すなわち、本実施形態では、被測定者の活動状態が分類され、この分類した活動状態における被測定者の歩数、脈拍数、及び活動量を用いるので、被測定者の負担度を正確に判定できる。
【0065】
また、本実施形態の負担度判定部52は、被測定者の動作情報及び身体情報に基づいて分類される被測定者の単位時間当たりの活動状態を用いて、負担度を判定する。本実施形態によれば、負担度の判定方法として被測定者の活動状態を分類して負担度を算出することで、活動状態毎に異なる測定値の分布に対応した被測定者の負担度を定量的に判定できる。
【0066】
また、負担度判定部52は、上記のように、被測定者の安静状態及び座位活動状態を含まずに被測定者の身体的負担度を判定する。一方で、負担度判定部52は、被測定者の安静状態及び座位活動状態を含み、かつ歩行・運動状態を含まずに被測定者の精神的負担度を判定する。すなわち、精神的負担度は、身体的負担度に比べて、被測定者が相対的に活動していない状態を主としたパラメータによって判定される。これにより、負担度判定部52は、被測定者の身体的負担度及び精神的負担度を正確に判定できる。
【0067】
本実施形態の負担判定には、一例として、多量のデータを用いてパラメータの偏差値を生成し、生成された偏差値を入力として、機械学習によって生成された負担度を1から5段階で判定するモデル(以下「負担判定モデル」という。)を用いる。
【0068】
なお、本実施形態の負担度判定部52は、身体的負担度を推定するための身体的負担判定モデル及び精神的な負担度を判定するための精神的負担判定モデルを用いて、身体的負担度及び精神的負担度を1から5の多段階で判定する。
【0069】
一例として、負担度1は最も負担度が低く、負担度5は最も負担度が高いとされる。なお、負担度を5段階で判定することは一例である。すなわち、負担度判定部52は、負担度を多段階で判定できれば10段階で判定してもよいし、他の指標を用いて判定してもよい。
【0070】
また、負担度判定部52は、機械学習により生成された負担判定モデルによって負担度を判定するのではなく、例えば、演算式による負担判定モデルによって負担度を判定してもよい。
【0071】
図4及び図5は、負担判定モデルを用いた負担度の判定結果の一例を示すグラフである。図4は、事務作業における負担度の判定結果を示す図である。図4(A)は測定された歩数、脈拍数、及び活動量を示す。図4(B)は負担度の判定結果を示す。図5は、登山における負担度の判定結果を示す図である。図5(A)は測定された歩数、脈拍数、及び活動量を示す。図5(B)は負担度の判定結果を示す。
【0072】
図4の例では、図4(B)に示されるように、事務作業において身体的負荷よりも精神的負荷の方が大きくなるという結果が得られた。図5の例では、図5(B)に示される本実施形態の疲労判定には、一例として、負担度の推移を入力として機械学習により生成された疲労度を1から5段階に推定するモデルが用いられる。このように、登山において朝から15時までは身体的負担と精神的負担は同程度で高いものの、登山を終えた16時以降は精神的負担に比べて身体的負担の回復の程度が低という結果が得られた。
【0073】
次に、本実施形態の疲労判定について説明する。疲労判定装置14が備える疲労度判定部54は、負担度の時間変化に基づいて、被測定者の疲労度を判定する。
【0074】
本実施形態の疲労判定には、一例として、負担度の推移を入力として疲労度を5段階で推定する、機械学習により生成されたモデル(以下「疲労判定モデル」という。)を用いる。
【0075】
なお、疲労判定は、所定時間(以下「疲労判定時間」という。)内における負担度の時間変化を疲労判定モデルの入力とする。疲労判定時間は、例えば、24時間毎であるが、これに限らず、疲労判定時間は時刻が設定されてもよい。時刻が疲労判定時間と設定される場合は、例えば、22時を疲労判定時間とする。そして、例えば、当日の6時から22時までの1時間毎に負担度を判定し、6時から22時までの負担度の時間変化に基づいて、疲労度の判定が行われる。
【0076】
本実施形態の疲労度判定部54は、身体的負担度の時間変化に基づいて、被測定者の身体的疲労度を判定し、精神的負担度の時間変化に基づいて、被測定者の精神的疲労度を判定する。このため、身体的疲労度を判定するための身体的疲労判定モデル、及び精神的疲労度を判定するための精神的疲労判定モデルが予め生成される。
【0077】
疲労は、負担の積み重ねにより生じるものであるが、休息をとった場合には負担が疲労になる前に消失したり、負担の蓄積時間に応じて負担が疲労に変化する程度が異なったりすることがある。このため、本実施形態の疲労度判定部54は、疲労判定モデルを用いることで、単純に負担度を加算して疲労度を判定する場合に比較して正確な疲労度を判定することができる。さらに、本実施形態の疲労度判定部54は、正規化したデータ及び活動状態毎に分類したデータを用いて判定した負担度を疲労判定モデルの入力とする。これにより、疲労度判定部54は、さらに正確に疲労度を判定することができる。
【0078】
また、疲労度判定部54は、機械学習により生成された推定モデルによって疲労度を判定するのではなく、例えば、演算式による疲労判定モデルでよって疲労度を判定してもよい。なお、演算式は、1時間毎の負担度を1から5にクラスタリングした大量のデータを用いることにより作成される。
【0079】
ここで、本実施形態の疲労度判定部54によって、図4(B)の身体的負荷度から判定された身体的疲労度は“1”であり、図4(B)の精神的負荷から判定される精神的疲労度は“3”である。このことから、図4に例示した事務作業では、身体的疲労よりも精神的疲労の方が大きいことが分かる。
【0080】
また、本実施形態の疲労度判定部54によって、図5(B)の身体的負荷度から判定された身体的疲労度は“5”であり、図5(B)の精神的負荷から判定される精神的疲労度は“4”である。このことから、図5に例示した登山では、精神的疲労よりも身体的疲労の方が大きいことが分かる。
【0081】
また、演算部40が備える設定部56は、被測定者に応じた疲労判定処理に関する各種設定を行う。
【0082】
通知部58は、疲労度判定処理による判定結果に基づく通知を被測定者に行う。すなわち、通知部58は、疲労判定処理の結果等を通信部48を介して情報処理装置16へ送信し、被測定者が情報処理装置16によって疲労判定処理の結果を確認可能とする。なお、疲労度判定処理による判定結果は、情報処理装置16が備えるディスプレイに表示されており、音声により被測定者に通知される。
【0083】
次に、図6を参照して、本実施形態の疲労判定処理を説明する。
【0084】
まず、ステップ100では、ウェアラブルセンサ12を装着し、ウェアラブルセンサ12が被測定者の歩数、脈拍数、及び活動量の測定を開始する。
【0085】
次のステップ102では、ウェアラブルセンサ12が被測定者の歩数、脈拍数、及び活動量の測定を継続して行う。
【0086】
次のステップ104では、前回の負担度の判定から所定の負担判定時間が経過したか否かを負担度判定部52が判定し、肯定判定の場合はステップ104へ移行する。一方、否定判定の場合はステップ102へ移行して、ウェアラブルセンサ12による測定を継続する。本実施形態の負担判定時間は、一例として1時間である。
【0087】
次のステップ106では、ウェアラブルセンサ12によって測定された被測定者の歩数、脈拍数、及び活動量の所定時間毎の統計量を活動状態判定部50が算出する。なお、本実施形態の所定時間は一例として1分である。また、ステップ106で算出する統計量は、1分毎の合計歩数、脈拍数の平均値、及び活動量の平均値である。
【0088】
次のステップ108では、ステップ106で算出した統計量に基づいて、活動状態判定部50が負担判定時間内における被測定者の活動状態を判定する。
【0089】
次のステップ110では、図3に示されるパラメータの負担判定時間当たりの偏差値を負担度判定部52が算出する。
【0090】
次のステップ112では、ステップ110で算出したパラメータの偏差値を身体的負担判定モデル及び精神的負担判定モデルに入力することで、負担判定時間内における身体的負担度及び精神的負担度を負担度判定部52が判定する。
【0091】
次のステップ114では、疲労判定時間に達したか否かを疲労度判定部54が判定し、肯定判定の場合はステップ116へ移行し、否定判定の場合はステップ102へ移行する。
【0092】
ステップ116では、ステップ112で判定した負担度の疲労判定時間内における時間変化(推移)が身体的疲労判定モデル及び精神的疲労判定モデルに入力されることで、疲労度判定部54が身体的疲労度及び精神的疲労度を判定する。
【0093】
次のステップ118では、疲労度等の判定結果を通知部58が情報処理装置16へ通知する。
【0094】
次に、疲労判定処理の精度向上について説明する。本実施形態の疲労判定システム10では、被測定者が入力する自身の主観的な疲労度に基づいて、疲労判定モデル又は負担判定モデルが修正される。
【0095】
具体的には、疲労判定処理が行われた後に、被測定者が情報処理装置16を介して主観的な疲労度を入力可能とする。そして、疲労判定システム10は、入力された主観的な疲労度を教師データとして被測定者毎の疲労判定モデル又は負担判定モデルを修正(カスタマイズ)することで、疲労判定処理の精度を高める。なお、被測定者による主観的な疲労度の入力は、定期的に行われることが好ましい。主観的な疲労度は、一例として、1から5の数値で入力される。
【0096】
また、被測定者によって入力された主観的な疲労度と疲労度の判定結果との差が大きい場合には、被測定者への通知が行われてもよい。疲労度の判定結果が被測定者の主観的な疲労度に比べて高い場合には、被測定者自身が認識している疲労よりも実際の疲労が高い可能性があるため、このことを認識させるために被測定者への通知が行われる。
【0097】
また、被測定者によって入力された主観的な疲労度と疲労度の判定結果との差が大きい場合には、疲労判定モデル又は負担判定モデルの修正を行うために管理者に通知が行われてもよい。
【0098】
上記の被測定者への通知と管理者への通知は、例えば、被測定者による主観的な疲労度と疲労度の判定結果とが異なった被測定者の数によって分けられる。例えば、主観的な疲労度と疲労度の判定結果とが異なった被測定者が少数であった場合には、当該被測定者自身の認識の違いによるものとして被測定者への通知が行われる。一方、被測定者の主観的な疲労度と疲労度の判定結果とが異なった被測定者が多数であった場合には、疲労判定モデル又は負担判定モデルが適切でないとして管理者への通知が行われる。
【0099】
また、主観的な疲労度と疲労度の判定結果との差が大きい場合には、疲労判定モデル又は負担判定モデルが被測定者に適合するように再学習させてもよい。これにより、疲労判定モデル又は負担判定モデルは、被測定者毎に調整(カスタマイズ)されることとなる。この場合は、一例として、疲労判定装置14の管理者に対して通知が行われ、管理者による操作によって疲労判定モデル又は負担判定モデルの再学習が行われる。
【0100】
また、負担判定モデル及び疲労判定モデルの少なくとも一方は、被測定者の労働状態に基づいて、被測定者毎に調整されてもよい。例えば、疲労判定モデル又は負担判定モデルは、曜日の情報が用いられ、被測定者に生じる日々の疲労の蓄積を加味して生成されてもよい。例えば、月曜日から金曜日が就業日であり、土曜日と日曜日が休日である労働者は、同じ活動量でも月曜日よりも金曜日のほうが、一般的に疲労は大きくなり易い。このため、被測定者が労働する曜日の情報を加味して、就業日が連続するほど負担度、疲労度が高くなるように、被測定者に応じて調整された疲労判定モデル又は負担判定モデルが生成されてもよい。
【0101】
また、被測定者の就業日及び睡眠時刻等が不規則である場合、例えば複数日(例えば3日)を1サイクル、すなわち疲労の判定を3日毎に行うなど、被測定者の活動期間の始点と終点を疲労判定モデル又は負担判定モデルに学習させ、被測定者の実際の活動状態に適合した疲労判定処理を可能としてもよい。このため、本実施形態の疲労判定装置14は、疲労判定を行うサイクルの時間や日を被測定者が設定可能とする。
【0102】
なお、上述のような被測定者毎の設定は、被測定者の情報処理装置16を介して入力され、疲労判定装置14へ送信される。
【0103】
次に、疲労判定処理の通知の一例としてアドバイス通知について説明する。
【0104】
本実施形態では、上述のように、疲労度の判定結果を被測定者に通知するが、通知はこれに限られない。本実施形態の通知部58は、被測定者の疲労又は負担を予測した通知をアドバイス通知として行ってもよい。例えば、疲労に寄与している時間帯、すなわち負担度の高い時間帯を過去の負担度の判定から推定して、疲労が生じる前に疲労軽減のためのアドバイスの通知が行われる。例えば、被測定者が15時からの時間帯の活動量が疲労度への寄与が高い場合には、14時ごろに「15:00から15:15まで仮眠を取りましょう。」と通知する。これにより、被測定者は自身の疲労を抑制できる。
【0105】
上記アドバイス通知は、過去に行った負担度の判定に基づいて、その後に生じる疲労を予報する疲労度予報という形態で行われてもよい。
【0106】
さらに、通知部58は、被測定者の予測される疲労度又は負担度と疲労度又は負担度の判定結果とが異なる場合に通知を行ってもよい。
【0107】
例えば、被測定者が朝に当日の行動パターンを入力することで、疲労度判定部54が、過去の疲労判定処理の結果に基づいて当日の疲労度を予測判定(推定)する。そして、被測定者の実際の行動パターンが入力された行動パターンと同様であるにも関わらず、推定した疲労度と疲労度の判定結果とが異なる場合には、通知部58が被測定者へ通知を行う。例えば、推定した疲労度に対して疲労度の判定結果が大きい場合は、被測定者に体調不良が生じている可能性がある。このため、通知により被測定者自身に体調不良等が生じている可能性を認識させることができる。なお、体調不良等により通常よりも疲労度が高い場合には、被測定者の脈拍数が高くなることが予測され、この脈拍数の高まりが被測定者の負担度や疲労度の高まりに表れると考えられる。
【0108】
また、予め推定した負担度と負担度の判定結果が異なる場合に、通知部58が被測定者へ通知を行ってもよい。例えば、予め推定した負担度に対して負担度の判定結果が大きい場合は、被測定者に体調不良が生じている可能性があるため、被測定者に通知が行われる。なお、負担度に基づいて通知を行うことで、よりリアルタイムで被測定者自身に体調不良等が生じている可能性を認識させることができる。
【0109】
被測定者の行動パターンは、スケジュールとして入力されてもよいし、GPS(Global Positioning System)等のセンサによる被測定者の移動状態でもよい。例えば、被測定者がトラックの運転手である場合には、トラックが備えるGPS機能により取得される被測定者の行動パターンである。すなわち、GPS機能により、被測定者によるトラックの実際の運転経路が取得されることとなる。
【0110】
また、被測定者自身が携帯する情報処理装置16のGPS機能によって取得される被測定者の歩数に応じた疲労度又は負担度に基づいて、被測定者への通知の有無が判定されてもよい。すなわち、単位時間当たりの歩数が同じであるにもかかわらず、推定した負担度又は疲労度よりも負担度又は疲労度の判定結果が大きい場合に、被測定者へ通知が行われる。
【0111】
また、行動パターンを入力するのではなく、同じ曜日毎に被測定者の予測される疲労度と疲労度判定処理によって判定された疲労度とを比較してもよい。例えば、就業者によっては、曜日毎に異なる作業を行う場合がある。このような場合、疲労判定装置14は、例えば、当日と同じ過去の曜日の負担度又は疲労度を予測値とし、当日の負担度又は疲労度とを比較することで、被測定者の通知の有無を判定する。
【0112】
また、ウェアラブルセンサ12の電力消費を抑制するように、負担度又は疲労度の判定結果に応じて、ウェアラブルセンサ12による被測定者の動作情報及び身体情報の測定状態が調整されてもよい。測定状態の調整とは、例えば、測定頻度を下げることである。
【0113】
例えば、ウェアラブルセンサ12は、過去の負担度又は疲労度の判定結果が平均的に低い被測定者において、加速度及び脈拍数を測定するためのサンプリング間隔を広くしたり、データ長を短くしてもよい。これにより、ウェアラブルセンサ12の充電頻度を抑制できる。また、疲労判定装置14は、被測定者の活動量又は負担度の小さい時間帯を判定し、この時間帯におけるウェアラブルセンサ12による上記サンプリング間隔を広げたり、データ長を短くしてもよい。
【0114】
なお、調整された測定頻度は、被測定者が行う設定変更によって元に戻されてもよいし、ウェアラブルセンサ12による測定結果に基づいて元に戻されてもよい。
【0115】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0116】
上記実施形態の疲労判定システム10では、加速度センサ20がウェアラブルセンサ12に備えられる形態について説明したが、本実施形態はこれに限られない。加速度センサ20は、ウェアラブルセンサ12とは別体の被測定者が携帯する装置(例えば衣服のポケット等に入れることができる活動量計又はスマートフォン等の携帯端末装置)に備えられていてもよい。
【0117】
また、上記実施形態の疲労判定システム10では、疲労判定処理の結果が疲労判定装置14から情報処理装置16に通知される形態について説明したが、本実施形態はこれに限られない。例えば、ウェアラブルセンサ12がディスプレイを備えている場合には、疲労判定処理の結果が疲労判定装置14からウェアラブルセンサ12に通知されてもよい。
【0118】
また、上記実施形態の疲労判定システム10では、疲労判定装置14をウェアラブルセンサ12とは異なる情報処理装置とする形態について説明したが、本実施形態はこれに限られない。例えば、疲労判定装置14は、ウェアラブルセンサ12と一体化され、疲労判定処理の結果がサーバに送信され、管理されてもよい。また、疲労判定装置14の機能は、被測定者が所有する情報処理装置16に備えられてもよい。
【符号の説明】
【0119】
10 疲労判定システム
12 ウェアラブルセンサ(センサ)
14 疲労判定装置
52 負担度判定部(負担度判定手段)
54 疲労度判定部(疲労判定手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6