IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立造船株式会社の特許一覧

特開2024-101936状態監視システムおよび状態監視方法
<>
  • 特開-状態監視システムおよび状態監視方法 図1
  • 特開-状態監視システムおよび状態監視方法 図2
  • 特開-状態監視システムおよび状態監視方法 図3
  • 特開-状態監視システムおよび状態監視方法 図4
  • 特開-状態監視システムおよび状態監視方法 図5
  • 特開-状態監視システムおよび状態監視方法 図6
  • 特開-状態監視システムおよび状態監視方法 図7
  • 特開-状態監視システムおよび状態監視方法 図8
  • 特開-状態監視システムおよび状態監視方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101936
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】状態監視システムおよび状態監視方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 17/00 20160101AFI20240723BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20240723BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240723BHJP
【FI】
F03D17/00
F03D1/06 A
G01M99/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006177
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】杉本 巖生
【テーマコード(参考)】
2G024
3H178
【Fターム(参考)】
2G024AD02
2G024AD23
2G024BA27
2G024CA04
2G024CA09
2G024CA13
2G024DA09
2G024EA11
2G024FA04
2G024FA06
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB58
3H178CC02
3H178DD52Z
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】風力発電装置の稼働可能性をより適切に判断する。
【解決手段】状態監視システム(100)は、タワー(20)上で回転するブレード(40)を備える風力発電装置(101)の状態を監視する。状態監視システム(100)は、タワー(20)の振動によるタワー(20)の水平方向の変位量を検出する検出部(110)と、変位量に基づいてブレード(40)の異常の有無を判定する判定部(108)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タワー上で回転するブレードを備える風力発電装置の状態を監視する状態監視システムであって、
前記タワーの振動による前記タワーの水平方向の変位量を検出する検出部と、
前記変位量に基づいて前記ブレードの異常の有無を判定する判定部と、を備える、状態監視システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記変位量が所定の基準値以下であるときに、前記ブレードが異常ではないと判定するとともに、前記変位量が前記基準値を超えるときに、前記ブレードが異常であると判定し、
前記基準値は、許容残留不釣り合いに基づいて定められる、請求項1に記載の状態監視システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記ブレードが正常に回転している状態において予め検出された前記変位量に対する、前記ブレードが継続して回転している状態において検出される前記変位量の比が所定値以下であるときに前記ブレードが異常ではないと判定するとともに、前記比が前記所定値を超えるときに前記ブレードが異常であると判定する、請求項1に記載の状態監視システム。
【請求項4】
前記検出部は、前記タワー上に配置された、前記ブレードの回転力によって回転する回転要素に配置された振動センサを含み、前記振動センサの出力から前記変位量を抽出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の状態監視システム。
【請求項5】
前記検出部は、前記タワーに設けられ、水平面で直交する2方向の振動を検出する振動センサを含み、前記振動センサの出力から前記変位量を抽出する、請求項1から3のいずれか1項に記載の状態監視システム。
【請求項6】
前記判定部は、前記変位量が、前記ブレードが異常でないと判定できる許容値の範囲内にある場合、前記許容値の範囲と当該範囲内にある前記変位量とを可視化するための可視化情報を出力する、請求項1から3のいずれか1項に記載の状態監視システム。
【請求項7】
タワー上で回転するブレードを備える風力発電装置の状態を監視する状態監視方法であって、
前記タワーの振動による前記タワーの水平方向の変位量を検出する検出工程と、
前記変位量に基づいて前記ブレードの異常の有無を判定する判定工程と、を含む、状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレードを備える風力発電装置の状態を監視する状態監視システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置を構成する風車には、多くの回転要素が設けられているため、回転要素に異常が生じると、風力発電装置の正常な運転が難しくなることがある。特に、ブレードは、経年劣化だけでなく、落雷などの突発的に生じる衝撃により損傷することがある。ブレードの損傷は、重度になると破壊が進む結果、破片が飛散することから、周辺への影響が大きい。このため、ブレードの状態を監視することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、風車のブレードをロータヘッドに回転可能に支持する軸受に設けられた振動センサによりブレードの固有振動数を検出し、検出した固有振動数の変化により、ブレードのクラック発生などを検出することが記載されている。特許文献1に記載されている装置では、具体的には、ブレードの傾き変形の固有振動数があまり変化していないのに、ブレードの曲げ変形の固有振動数が大きく変化した場合には、ブレード自体にクラックなどの損傷が生じていると判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-185632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、当該装置では、損傷の有無を判定したブレードの状態が、経過観察で足りるような風車を再稼動できる状態にあるのか、あるいは風車を直ちに停止させる必要がある状態または停止状態から稼働を再開できない状態にあるのかということについて判断できない。
【0006】
本発明の一態様は、風力発電装置の稼働可能性をより適切に判断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る状態監視システムは、タワー上で回転するブレードを備える風力発電装置の状態を監視する状態監視システムであって、前記タワーの振動による前記タワーの水平方向の変位量を検出する検出部と、前記変位量に基づいて前記ブレードの異常の有無を判定する判定部と、を備える。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る状態監視方法は、タワー上で回転するブレードを備える風力発電装置の状態を監視する状態監視方法であって、前記タワーの振動による前記タワーの水平方向の変位量を検出する検出工程と、前記変位量に基づいて前記ブレードの回転の異常の有無を判定する判定工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、風力発電装置の稼働可能性をより適切に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1および2に係る状態監視システムが監視の対象とする風力発電装置の構成を、一部を切り欠いて示す側面図である。
図2】本発明の実施形態1に係る状態監視システムの構成を示すブロック図である。
図3】上記状態監視システムによる風力発電装置の状態を監視する処理の手順を示すフローチャートである。
図4】上記処理において取得される振動センサの出力を示す波形図である。
図5】上記処理においてFFT処理が施された振動センサの出力を示す波形図である。
図6】上記処理においてFFT処理が施された振動センサの出力から抽出された、タワーの固有振動数に相当する変位量を示す波形図である。
図7】上記処理において風力発電装置を稼働させる根拠となる、基準値に対するタワーの揺れを示すグラフである。
図8】本発明の実施形態2に係る状態監視システムの構成を示すブロック図である。
図9図8に示す状態監視システムによる異常有無の判定の根拠となる、ブレードの回転数に対するタワーの振動変位を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔風力発電装置〕
各実施形態の説明に先立って、各実施形態の状態監視システムが監視の対象とする風力発電装置について説明する。図1は、風力発電装置101の構成を、一部を切り欠いて示す側面図である。
【0012】
図1に示すように、風力発電装置101は、ナセル10と、タワー20と、ハブ30と、複数のブレード40と、通信装置50と、ピッチモータ60と、監視制御装置70とを備えている。
【0013】
ナセル10は、回転要素80や、その他の機器および装置を収容する筐体である。回転要素80は、主軸受11、主軸12、増速機13、動力伝達軸14、発電機15などであり、それぞれがブレード40の回転力によって回転する。ナセル10は、タワー20上に、水平方向に回転可能かつ水平方向に対して傾斜するように回動可能に設けられている。ナセル10には風向計(図示せず)が設けられており、ナセル10は、風向計によって計測された風の向きに合せるようにタワー20上で水平方向に回転することでナセル10の向きが変わる。
【0014】
タワー20は、地盤上に設置されている。また、風力発電装置101が洋上に設置される場合、タワー20は、海底の地盤上に形成された基礎、または海上に浮遊する浮遊体に設置されている。
【0015】
タワー20内には、タワー20の振動値を検出する振動センサ21が設けられている。振動センサ21は、タワー20の揺れが最大となるタワー20の上端付近に配置されている。振動センサ21は、水平方向のタワー20の揺れを検出するために、検出方向が水平方向を含むように配置されている。振動センサ21は、例えば加速度センサによって構成されている。振動センサ21は、後述する実施形態1の変形例の構成の一部として設けられている。
【0016】
また、タワー20内には、例えば最下部に通信装置50が配置されている。通信装置50は、監視サーバ200および後述する処理装置102(図2参照)または処理装置102A(図8参照)とネットワークを介して通信を行う。
【0017】
監視サーバ200は、風力発電装置101から離れた位置に設けられた監視センターに設置されている。監視サーバ200は、後述する監視制御装置70から取得したデータに基づいて風力発電装置101の状況を監視する。また、監視制御装置70は、監視者による操作を受け付けて監視制御装置70に与える制御指令を発生することにより、風力発電装置101の運転を制御する。また、監視サーバ200は、上記のデータを解析し、その解析結果に基づいて、風力発電装置101における各部のメンテナンス計画の立案などを行う。
【0018】
ハブ30は、ブレード40を回転可能にナセル10に支持する。また、ハブ30は、ブレード40のピッチ角度を変更するピッチ可変機構(図示せず)と、ピッチ可変機構を駆動するピッチモータ60とを有している。ブレード40は、風を受けてハブ30を回転させる羽根であり、風力を回転トルクに変換する。ブレード40は、複数(一般には2つや3つ)設けられており、所定の間隔をおいてハブ30に配置されている。
【0019】
主軸受11は、主軸12を回転可能に支持する。主軸受11は、転がり軸受によって構成されている。
【0020】
主軸12は、ハブ30に直結された回転軸である。主軸12は、増速機13の入力軸に接続されており、ブレード40により発生する回転トルクを増速機13の入力軸へ伝達する。
【0021】
増速機13は、主軸12の回転速度を増速して出力する。増速機13は、例えば、遊星ギヤ、中間軸、高速軸などを含む歯車増速機構によって構成される。なお、図示はしないが、増速機13の内部には、複数の軸を回転可能に支持する複数の軸受が回転要素80として設けられている。
【0022】
動力伝達軸14は、増速機13の出力軸に接続されるとともに、発電機15の入力軸に接続されている。動力伝達軸14は、増速機13の出力回転を発電機15の入力軸に伝達する回転軸である。
【0023】
発電機15は、動力伝達軸14によって伝達される回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。発電機15は、例えば、誘導発電機によって構成される。なお、発電機15の内にも、動力伝達軸14と接続された回転軸を回転可能に支持する軸受が回転要素80として設けられている。
【0024】
ナセル10には、その他の機器として監視制御装置70が収納されている。監視制御装置70は、上述したピッチ可変機構およびピッチモータ60を制御するピッチ制御ユニット、ナセル10の方位を制御するヨー制御ユニット、電力を制御する電力制御ユニットなどの各種の制御ユニットを統合して制御する。
【0025】
また、監視制御装置70は、振動センサ16,21および回転数センサ17を始めとする各種のセンサや計測器の出力をデータとして収集して蓄積しており、当該データを、監視サーバ200と、後述する処理装置102(図2参照)または処理装置102A(図8参照)とに提供する。監視制御装置70は、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)の中核的な装置としての役割を担っており、PLC(Programmable Logic Controller)のような装置で構成されている。
【0026】
回転要素80には、振動センサ16と、回転数センサ17とが設けられている。
【0027】
振動センサ16は、回転要素80における、主軸受11、主軸12、増速機13、動力伝達軸14、発電機15の振動値をそれぞれ検出する。振動センサ16は、回転要素80の異常の有無を判定する振動値を得るために、回転要素80の各配置箇所に配置される。振動センサ16は、検出の対象とする振動を最も検出しやすい方向に向けて取り付けられるため、その検出方向を水平方向に向けて配置されないことが多い。
【0028】
振動センサ16は、例えば、主軸受11における主軸12付近(主軸受ハウジング)の位置、増速機13における主軸12付近の位置、増速機13の上面、増速機13における動力伝達軸14付近の位置、発電機15における動力伝達軸14付近の位置に配置されている。なお、便宜上、図1において、振動センサ16は1か所のみに配置されるように描かれている。
【0029】
振動センサ16は、主に回転要素80の各部の比較的高い周波数の振動値を検出するが、当該振動値以外の振動値も検出する。そのような振動値には、特に、ナセル10およびタワー20の比較的低い周波数の振動値が含まれる。
【0030】
回転数センサ17は、主軸12、ハブ30およびブレード40によって構成されるロータの回転数を検出するセンサである。回転数センサ17は、例えば、主軸12付近の位置に設けられている。回転数センサ17としては、電磁式、ホール素子式、光学式、誘導式などの各種の方式のセンサを用いることができる。
【0031】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、詳細に説明する。
【0032】
図2は、実施形態1に係る状態監視システム100の構成を示すブロック図である。
【0033】
図2に示す状態監視システム100は、風力発電装置101の状態、特にブレード40の状態を監視するシステムである。状態監視システム100は、振動センサ16と、振動センサ21と、処理装置102とを備えている。
【0034】
処理装置102は、振動センサ16または振動センサ21の出力に基づいて、タワー20上で回転するブレード40の異常の有無を判定する装置である。処理装置102の設置場所は、特に限定されないが、監視センターであってもよい。なお、以降の説明では、振動センサ16の出力に基づいてブレード40の異常の有無を判定する例について説明し、引き続き、変形例として、振動センサ21の出力に基づいてブレード40の異常の有無を判定する例について説明する。
【0035】
処理装置102は、通信部103と、FFT処理部104と、変位量抽出部105と、変位換算部106と、揺れ量計算部107と、判定部108と、記憶部109とを有している。
【0036】
通信部103は、風力発電装置101の通信装置50と通信を行う。通信部103は、監視制御装置70からの振動センサ16,21の出力(振動値)および回転数センサ17の出力(回転数)を、通信装置50を介して受信することにより取得する。また、通信部103は、監視制御装置70からの回転数センサ17の出力に代えて、監視サーバ200からの制御指令に含まれる回転数の情報を取得してもよい。監視制御装置70は、当該回転数の情報を制御指令として受けると、ブレード40がその回転数で回転するように、ピッチ角を制御する。
【0037】
FFT処理部104は、通信部103により取得された振動値にFFT(Fast Fourier Transform)処理を施すことにより、振動値(後述する振動加速度)の周波数スペクトルを生成する。
【0038】
変位量抽出部105は、FFT処理部104によって生成された振動値の周波数スペクトルからタワー20の固有振動数に相当する変位量を抽出する。変位量抽出部105は、例えばバンドパスフィルタによって当該変位量を抽出する。タワー20の固有振動数は、風力発電装置101の諸元として記憶部109に記憶されている。
【0039】
変位換算部106は、振動センサ16が、その検出方向が水平方向とは異なる方向に向くように取り付けられている場合、変位量抽出部105によって抽出された変位量を、振動センサ16が、その検出方向が水平方向に向くように取り付けられた場合の変位量に換算する。
【0040】
振動センサ16、FFT処理部104、変位量抽出部105および変位換算部106は、検出部110を構成している。検出部110は、振動センサ16の出力から、タワー20の振動によるタワー20の水平方向の変位量を検出する。
【0041】
揺れ量計算部107は、通信部103により取得された回転数と、風車質量と、減衰係数とに基づいて、G16に相当するタワー20の揺れ量を計算する。
【0042】
風車質量は、風力発電装置101において風車を構成するナセル10およびタワー20が、ブレード40の回転アンバランスによって起振力Fを生じさせる風車の質量である。風車質量は、内蔵物を含むナセル10の質量と、タワー20の上端から下側の3分の1の部分の質量との和である。減衰係数は、タワー20の振動の減衰を表す係数である。風車質量および減衰係数は、風力発電装置101の諸元として記憶部109に記憶されている。
【0043】
G16は、JIS B 0905-1992にも規定されている回転機器の釣り合いの良さの等級である。G16は、回転数を横軸とし、許容残留比不釣り合いの大きさを縦軸として、回転数が高くなるほど許容残留比不釣り合いが小さくなることを表している。G16は、回転機器におけるロータの許容残留比不釣合いeper(mm)とロータが使用される最高回転速度ω(rad/s)との積が16mm/s以下であることを規定している。
【0044】
揺れ量計算部107は、ブレード40の回転アンバランスを評価するために、起振力Fによるタワー20の揺れ量を基準値として予め計算しておく。具体的には、揺れ量計算部107は、次の式(1)を用いて揺れ量xを計算する。
【0045】
x=(F/k)・1/√[{1-(ω/ωn)+4ζ(ω/ωn)]…(1)
式(1)において、ωn=√(k/m)であり、ζは減衰係数である。
【0046】
揺れ量計算部107は、次の式(2)に示すように、風車質量mと、許容残留比不釣合いeperと、取得した回転数すなわち最高回転速度ωの二乗とを乗算することで起振力Fを算出する。このように、起振力Fが許容残留比不釣合いeperと風車質量mとの積、すなわち許容残留不釣り合いに基づくことから、揺れ量xすなわち基準値は、許容残留不釣り合いに基づいて定められると言える。
【0047】
F=m・eper・ω …(2)
判定部108は、変位換算部106によって換算された変位量に基づいてブレード40の異常の有無を判定する。具体的には、判定部108は、変位量を揺れ量計算部107によって計算された揺れ量と比較する。また、判定部108は、変位量を揺れ量と比較した結果、変位量が、所定の基準値としての揺れ量を超えた否かを判定する。判定部108は、変位量が揺れ量以下であるときに、ブレード40が異常ではないと判定する。また、判定部108は、変位量が揺れ量を超えるときに、ブレード40が異常であると判定する。
【0048】
また、判定部108は、変位量が、ブレード40が異常でないと判定できる許容値の範囲内にある場合、当該許容値の範囲と当該範囲内にある変位量とを可視化するための可視化情報を出力する。許容値の範囲は、上記の基準値を上限値として規定される範囲である。
【0049】
上記のように構成される状態監視システム100のブレード40の異常の有無の判定処理(状態監視方法)について説明する。
【0050】
図3は、状態監視システム100による風力発電装置101の状態を監視する処理の手順(状態変換方法)を示すフローチャートである。図4は、上記処理において取得される振動センサ16の出力を示す波形図である。図5は、上記処理においてFFT処理が施された振動センサ16の出力を示す波形図である。図6は、上記処理においてFFT処理が施された振動センサ16の出力から抽出された、タワー20の固有振動数に相当する変位量を示す波形図である。図7は、上記処理において風力発電装置101を稼働させる根拠となる、基準値に対するタワー20の揺れを示すグラフである。
【0051】
まず、図3に示すように、通信部103は、風力発電装置101の通信装置50から送信される振動センサ16の出力を受信して取得する(ステップS1)。振動センサ16の出力は、図4に示すように、振動加速度の時間変化として得られる。振動センサ16の出力は、回転要素80の各部の振動、タワー20の振動などの複数の振動成分が合成されている。例えば、主軸受11に取り付けられた振動センサ16は、主軸受11の回転に伴う振動以外にも各種の振動を検出する。
【0052】
FFT処理部104は、取得された振動センサ16の出力にFFT処理を施す(ステップS2)。FFT処理により、図5の上側に示すように、振動加速度の周波数スペクトルが得られる。FFT処理部104は、周波数スペクトルのうちタワー20の固有振動数(タワー固有振動数Ft)が含まれる周波数帯域(例えば0~10Hz)を抽出して、図5の下側に示すように拡大する。
【0053】
次いで、変位量抽出部105は、拡大された周波数スペクトルからタワー20の固有振動数に相当する変位量を抽出する(ステップS3)。変位量抽出部105は、記憶部109に記憶されているタワー固有振動数を中心とする所定範囲の通過帯域を設定し、バンドパスフィルタにより通過帯域を通過した振動変位の最大値を上記の変位量として抽出する。図6に示す例では、タワー固有振動数Ftを中心とする±0.1Hzの通過帯域を通過した振動変位のうち、最大値の振動変位が変位量Dとして抽出される。
【0054】
上記のステップS1~S3により、タワー20の振動によるタワー20の水平方向の変位量を検出する(検出工程)。
【0055】
そして、変位換算部106は、変位量抽出部105によって抽出された変位量を水平方向の変位に換算する(ステップS4)。変位換算部106は、複数の振動センサ16が、その検出方向が水平方向ならびに鉛直方向の2成分を含むように取り付けられている場合、これらの振動センサ16から得られた変位量を次の式(3)に基づいて水平方向の変位量Dhに換算する。ここでは、検出方向が水平方向とは異なる向きに取り付けられている1つの振動センサ16から得られた変位量Dに基づいて変位量Dhが換算されるものとする。
【0056】
Dh=D/cos(θ) …(3)
ここに、θは水平軸とのなす角を表す。
【0057】
なお、1つの振動センサ16が、その検出方向が水平方向に取り付けられている場合、変位換算部106による換算処理を必要としないので(θ=0,cos(θ)=1)、ステップS4の処理は省略される。
【0058】
揺れ量計算部107は、ステップS1~S4の処理と並行して、G16に相当するタワー20の揺れを計算する(ステップS5)。
【0059】
さらに、判定部108は、換算された変位量をタワー20の揺れと比較する(ステップS6)。判定部108は、比較の結果、変位量が揺れ量を超えたか否かを判定する(ステップS7)。
【0060】
ステップS7において、判定部108は、変位量が揺れ量を超えたと判定すると(YES)、ブレード40に異常が有ると判定し、風力発電装置101の稼働を停止して(ステップS8)、処理を終える。また、ステップS7において、判定部108は、変位量が揺れ量を超えていない、すなわち変位量が揺れ量以下であると判定すると(NO)、ブレード40に異常が無いと判定し、風力発電装置101を稼働させて(ステップS9)、処理を終える。なお、ステップS9において、風力発電装置101が稼働している状態では、判定部108は、風力発電装置101の稼働を継続させる。
【0061】
このように、判定部108は、ステップS7の処理を行うことにより、変位量に基づいてブレード40の異常の有無を判定する(判定工程)。
【0062】
判定部108は、ブレード40に異常が有ると判定した場合、風力発電装置101の稼働を停止させるための停止指令信号を出力する。停止指令信号は、通信部103によって風力発電装置101に送信され、通信装置50に受信されることにより、監視制御装置70に取得される。監視制御装置70は、停止指令信号に基づいて、ブレード40が風の向きに対して平行な状態となるようにピッチモータ60を制御することによりピッチ角を調整する。ブレード40は、ピッチ角の調整によって風を受けなくなると停止する。
【0063】
また、判定部108は、ブレード40に異常が無いと判定した場合、風力発電装置101を稼働させるための稼働指令信号を出力する。稼働指令信号は、停止指令信号と同様に送信されることにより、監視制御装置70に取得される。監視制御装置70は、稼働指令信号に基づいて、ブレード40が風を受ける状態となるようにピッチモータ60を制御することによりピッチ角を調整する。ブレード40は、ピッチ角の調整によって風を受けるようになると、停止状態から回転し始める。
【0064】
また、判定部108は、ブレード40に異常が無いと判定した場合、すなわちタワー20水平方向の変位量が異常でないと判定できる許容値の範囲内にあると判定した場合、必要に応じて上述した可視化情報を出力する。判定部108は、可視化情報として、例えば、図7に示すようなグラフのデータを出力する。当該グラフでは、タワー20の揺れの許容値の上限値すなわち上述した基準値が16.36mmで示されており、タワー20の固有振動数として0.34Hzと、当該固有振動数に対するタワー20の揺れとして7mmとが示されている。これにより、タワー20の揺れが許容値の範囲内に有ることを直感的に把握することができる。
【0065】
このような可視化情報は、通信部103によって、通信装置50を介して、または直接、監視サーバ200に送信される。監視サーバ200では、受信した可視化情報をプリンタ、ディスプレイなどの出力装置によって出力することで、図7に示すようなグラフを可視化する。このように、許容値の範囲と当該範囲内にある変位量とを可視化情報に基づいて可視化することにより、風力発電装置101の稼働が可能であることの評価を客観的に示すことができる。
【0066】
なお、可視化情報の形式は、上記のグラフに限定されないことは勿論である。例えば、可視化情報は、許容範囲を規定する上限値である基準値と、タワー20の揺れの大きさとを単に数値で示したものであってもよい。
【0067】
ところで、落雷時に風力発電装置を停止することが法令で規定されているが、停止した風力発電装置の再稼働については、風力発電装置の運営事業者の判断に委ねられている。例えば、風車の外観検査は、目視、映像などにより行われる。しかしながら、現状では、風車の外観検査のために、作業員が風車の設置されている現地に出向く必要があり、迅速に対応することが難しい。夜中に落雷が生じた場合、作業員が現地に移動できる朝方まで、風力発電装置を停止させておく必要があるため、その間に発電ロスが生じてしまう。また、映像による風車の確認は、監視範囲の制限などのために、十分とは言えない。
【0068】
このような現状の問題に対して、上記の可視化情報を作成することにより、本実施形態の風力発電装置101の再稼働を早期に判断することができる。それゆえ、風力発電装置101の運用が容易になり、再生可能エネルギーの利用拡大につながる。また、可視化情報は、再稼働時の根拠として利用できるだけでなく、落雷時の風車の評価や、経年劣化していく風車の常時監視にも利用することができる。ブレード40は、一般にFRPを接着剤で接合することで形成されているが、経年劣化により接合部分に生じる剥離などが原因となって破損することがある。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る状態監視システム100は、上述した判定部108と、検出部110とを備えている。
【0070】
ブレード40が損傷することにより、複数のブレード40の間の重心がブレードの回転の中心から偏心すると、ブレード40の回転に偏りが生じる。このため、タワー20の水平方向の振動は、ブレード40の回転の偏りによって生じる水平方向の力の変動によって、ブレード40が正常な状態より大きくなる。
【0071】
上記の構成によれば、例えば、タワー20の水平方向の変位量がある程度大きくなることにより、ブレード40が損傷などのために異常な状態になっている可能性が十分高いと推測できるので、ブレードが異常であると判定される。したがって、ブレード40が異常であると判定される場合は、風力発電装置101の稼働を直ちに停止させる必要がある状態、または風力発電装置101の稼働を再開できない状態にあると判断できる。また、ブレード40が異常ではないと判定される場合は、風力発電装置101の稼働を継続できる状態、または稼働停止状態から稼働を再開できる状態にあると判断できる。
【0072】
また、タワー20の変位量を定期的または継続的にブレード40の回転のアンバランス量として記録することで、記録開始時点の変位量と記録開始以降の変位量との相対比較が可能になる。その相対比較により、アンバランス量に変化があれば、ブレード40の軽微な損傷の有無が確認できるとともに、アンバランス量がG16の規定値以下であれば、経過観察を続けて良いと判断することができる。
【0073】
また、上述した特許文献1に開示された装置では、ブレードの傾き変形およびブレードの曲げ変形のそれぞれの固有振動数に基づいてブレードの損傷の有無を判定するため、処理が複雑になりがちである。これに対し、上記の構成によれば、ブレードの異常の有無を判定する処理がタワー20の水平方向の変位量に基づくので、判定の処理を簡素化することができる。
【0074】
また、ブレード40が異常であるか否かを判定するための上述した基準値は、許容残留不釣り合い基づいて定められている。許容残留不釣り合いは、上述したように、許容残留比不釣り合いと風車質量との積によって求められ、回転機器(ロータ)の釣り合い良さを評価する公的な指標として用いられるので、判定の信頼性を高めることができる。
【0075】
また、検出部110は、ナセル10内の回転要素80に配置された振動センサ16の出力からタワー20の変位量を抽出する。振動センサ16は、本来、回転要素80の振動を検出することを目的として配置されているが、タワー20の揺れが回転要素80にも伝わることから、回転要素80の振動だけでなくタワー20の振動も検出する。これにより、タワー20の変位量を振動センサ16の出力から取得することができる。したがって、タワー20の変位量を検出するセンサを別途設ける必要がなく、振動センサ16を有効に活用することができる。
【0076】
続いて、本実施形態の変形例について説明する。本実施形態では、上述したように、ナセル10内に設けられた振動センサ16の出力に基づいて、ブレード40の異常の有無を判定する。これに対し、本実施形態では、タワー20に設けられている振動センサ21の出力に基づいて、ブレード40の異常の有無を判定する。
【0077】
本変形例に係る状態監視システム100において、検出部110は、振動センサ16に代えて振動センサ21を有している。振動センサ21は、水平面で直交する2方向の振動を検出する。具体的には、振動センサ21は、水平面で直交する方向の2箇所に配置された2つの振動センサによって構成されている。検出部110は、2つの振動センサの出力から変位量を抽出し、これらの変位量を合成することによってタワー20の水平方向の変位量を求める。
【0078】
ナセル10に設けられた振動センサ16を利用する場合では、上述したように、タワー20の振動とともにそれ以外の振動も含む振動センサ16の出力からタワー20の変位量を抽出して水平方向の変位量に換算する処理が必要である。これに対し、本変形例によれば、タワー20の水平方向の変位量を振動センサ21の出力から抽出する。これにより、FFT処理部104および変位換算部106を省くことができる。
【0079】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0080】
図8は、実施形態2に係る状態監視システム100Aの構成を示すブロック図である。図9は、状態監視システム100Aによる異常有無の判定の根拠となる、ブレード40の回転数に対するタワー20の振動変位を示すグラフである。
【0081】
図8に示す状態監視システム100Aは、状態監視システム100と同じく、風力発電装置101の状態、特にブレード40の状態を監視するシステムである。状態監視システム100Aは、振動センサ16と、振動センサ21と、処理装置102Aとを備えている。処理装置102Aは、振動センサ16または振動センサ21の出力(振動値)に基づいて、タワー20上で回転するブレード40の異常の有無を判定する装置である。処理装置102Aは、通信部103と、FFT処理部104と、変位量抽出部105と、変位換算部106と、判定部108Aと、記憶部109Aとを有している。
【0082】
記憶部109Aは、上述したタワー固有振動数とともに、正常時変位量を記憶している。正常時変位量は、ブレード40が正常に回転している状態において予め検出された、タワー20の水平方向の変位量である。
【0083】
判定部108Aは、検出部110によって、ブレード40が継続して回転している状態において検出される変位量(継続時変位量)を、記憶部109Aに記憶されている正常時変位量と比較する。また、判定部108Aは、比較の結果、正常時変位量に対する継続時変位量の比が所定値以下であるときにブレード40が異常ではないと判定するとともに、上記の比が所定値を超えるときにブレード40が異常であると判定する。上記の比は、各種の要因に基づいて設定される。
【0084】
上記のように構成される状態監視システム100Aは、振動センサ16または振動センサ21と、処理装置102Aとを備えている。これにより、正常時変位量を判定の基準となる閾値とし、継続時変位量を閾値との比較対象として、閾値に対する比較対象の相対的な比により判定が行われる。それゆえ、揺れ量計算部107によって行われるような複雑な計算処理を要することなく判定を行うことができる。
【0085】
また、機械学習を用いて閾値を設定することが可能になるので、判定の精度を向上させることができる。例えば、処理装置102Aは、ブレード40が正常に回転している状態での回転数に対するタワー20の振動による変位(振動変位)を機械学習することにより、図9において実線にて示すような正常時変位量を設定しておく。処理装置102Aは、機械学習の代わりにプロットによって正常時変位量を設定してもよい。
【0086】
判定部108Aは、図9において破線で示すように、所定値を例えば「2」としておき、振動変位(継続時変位量)が正常時変位量の2倍以下であるときにブレード40が異常ではないと判定する。また、判定部108Aは、継続時変位量が正常時変位量の2倍を超えるときにブレード40が異常であると判定する。図9において一点鎖線で示すように、タワー20の振動変位が実線と破線との間にあれば、ブレード40が異常ではないと判定され、図9において二点鎖線で示すように、タワー20の振動変位が破線より上にあれば、ブレード40が異常であると判定される。
【0087】
また、図9において、実線で示す正常曲線と破線で示す異常曲線との間の領域を注意領域とし、異常曲線から上の領域を停止判定領域としておく。これにより、タワー20の振動変位が、正常な値から注意を要する値、さらには停止判定が必要な値に移行する過程を、例えば特定の回転数の条件下においてプロットすることができる。このようなプロットにより、ブレード40の異常が進行していく速さを予測することができる。
【0088】
なお、判定部108Aは、図9に示すようなグラフを図7に示すグラフと同じく視覚化情報として出力してもよい。
【0089】
〔SDGsへの貢献〕
上述したように、各実施形態の構成によれば、風力発電装置101の稼働可能性の判断を従来の判断方法と比較して、より適切に行うことができる。これにより、風力発電装置101の保守性ならびに稼働率を向上させることができる。したがって、風力発電装置101をより長期にわたって運用することが可能になる。よって、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに(再生可能エネルギー等)」の達成に貢献できる。
【0090】
〔ソフトウェアによる実現例〕
状態監視システム100,100Aにおける処理装置102,102A(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムより実現することができる。当該プログラムは、当該装置の各制御ブロック(特にFFT処理部104、変位量抽出部105、判定部108,108Aおよび揺れ量計算部107)としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0091】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と、記憶部109,109Aを含む少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)とを有するコンピュータを備えている。この制御装置および記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0092】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0093】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0094】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0095】
〔まとめ〕
以上のように、本発明の態様1に係る状態監視システムは、タワー上で回転するブレードを備える風力発電装置の状態を監視する状態監視システムであって、前記タワーの振動による前記タワーの水平方向の変位量を検出する検出部と、前記変位量に基づいて前記ブレードの異常の有無を判定する判定部と、を備える。
【0096】
上記の構成によれば、例えば、タワーの水平方向の変位量がある程度大きくなることにより、ブレードが損傷などによって異常な状態になっている可能性が十分高いと推測できるので、ブレードが異常であると判定される。したがって、ブレードが異常であると判定される場合は、風力発電装置の稼働を直ちに停止させる必要がある状態、または風力発電装置の稼働を再開できない状態にあると判断できる。また、ブレードに異常がないと判定される場合は、風力発電装置の稼働を継続できる状態、または稼働停止状態から稼働を再開できる状態にあると判断できる。
【0097】
本発明の態様2に係る状態監視システムは、上記態様1において、前記判定部が、前記変位量が所定の基準値以下であるときに、前記ブレードが異常ではないと判定するとともに、前記変位量が前記基準値を超えるときに、前記ブレードが異常であると判定し、前記基準値が、許容残留不釣り合いに基づいて定められる。
【0098】
上記の構成によれば、許容残留不釣り合いは、許容残留比不釣り合いと風車質量との積によって求められ、回転機器(ロータ)の釣り合い良さを評価する公的な指標として用いられるので、判定の信頼性を高めることができる。
【0099】
本発明の態様3に係る状態監視システムは、上記態様1において、前記判定部が、前記ブレードが正常に回転している状態において予め検出された前記変位量に対する、前記ブレードが継続して回転している状態において検出される前記変位量の比が所定値以下であるときに前記ブレードが異常ではないと判定するとともに、前記比が前記所定値を超えるときに前記ブレードが異常であると判定する。
【0100】
上記の構成によれば、ブレードが正常に回転している状態において予め取得された変位量を判定の基準となる閾値とし、ブレードが継続して回転している状態において取得される変位量を閾値との比較対象として、閾値に対する比較対象の相対的な比により判定が行われる。それゆえ、複雑な計算処理を要することなく判定を行うことができる。また、機械学習を用いて閾値を設定することが可能になるので、判定の精度を向上させることができる。
【0101】
本発明の態様4に係る状態監視システムは、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記検出部が、前記タワー上に配置された、前記ブレードの回転力によって回転する前記回転要素に配置された振動センサを含み、前記振動センサの出力から前記変位量を抽出する。
【0102】
上記の構成によれば、タワーの揺れが回転要素にも伝わることから、回転要素の振動を検出することを目的として配置された振動センサが、回転要素の振動だけでなくタワーの振動も検出するので、変位量が振動センサの出力から取得される。これにより、タワーの変位量を検出するセンサを別途設ける必要がなく、振動センサを有効に活用することができる。
【0103】
本発明の態様5に係る状態監視システムは、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記検出部が、前記タワーに設けられ、水平面で直交する2方向の振動を検出する振動センサを含み、前記振動センサの出力から前記変位量を抽出する。
【0104】
タワー以外の箇所、特にナセルに設けられた振動センサを利用する場合では、タワーの振動とともにそれ以外の振動も含む当該振動センサの出力からタワーの水平方向の変位量を抽出する処理が必要である。これに対し、上記の構成によれば、タワーの水平方向の変位量をタワーに設けられた振動センサの出力から抽出する。これにより、上記の処理を省くことができる。
【0105】
本発明の態様6に係る状態監視システムは、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記変位量が、前記ブレードが異常でないと判定できる許容値の範囲内にある場合、前記判定部が、前記許容値の範囲と当該範囲内にある前記変位量とを可視化するための可視化情報を出力する。
【0106】
上記の構成によれば、風力発電装置の稼働が可能であることの評価を客観的に示すことができる。
【0107】
本発明の態様7に係る状態監視方法は、タワー上で回転するブレードを備える風力発電装置の状態を監視する状態監視方法であって、前記タワーの振動による前記タワーの水平方向の変位量を検出する検出工程と、前記変位量に基づいて前記ブレードの異常の有無を判定する判定工程と、を含む。
【0108】
上記の方法によれば、態様1に係る状態監視システムと同様の効果を奏する。
【0109】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
16,21 振動センサ
20 タワー
40 ブレード
80 回転要素
100,100A 状態監視システム
101 風力発電装置
108,108A 判定部
110 検出部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9