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特開2024-101937開閉体の取付け構造、これに用いるヒンジ、及びヒンジ付き開閉体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101937
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】開閉体の取付け構造、これに用いるヒンジ、及びヒンジ付き開閉体
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/04 20060101AFI20240723BHJP
   B60R 5/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F16C11/04 G
F16C11/04 F
B60R5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006178
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518318244
【氏名又は名称】ニッパツフレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 謙二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀志
(72)【発明者】
【氏名】谷 幸央
(72)【発明者】
【氏名】大島 晴仁
【テーマコード(参考)】
3D022
3J105
【Fターム(参考)】
3D022BA04
3D022BB03
3D022BC04
3J105AA06
3J105AB02
3J105AB13
3J105AB23
3J105AC06
3J105BA41
3J105BB22
3J105DA03
(57)【要約】
【課題】着脱可能な開閉体の開閉操作及び着脱操作の簡易化を図ることが可能な取付け構造を提供する。
【解決手段】開閉体であるデッキボード3を車体側に対して着脱自在に取り付ける取付け構造1であって、固定側に延設された溝7と、デッキボード3を相対回転自在に支持する回転軸19と、デッキボード3と回転軸19との間に設けられ相対回転に対して回転方向の少なくとも一部で負荷トルクを付与し相対回転を制限する摩擦部21と、回転軸19に設けられ回転半径方向の両側に係合面23aを有し溝7に挿入されて係合面23aにより回転方向に係合する扁平軸部23と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉体を固定側に対して着脱自在に取り付ける取付け構造であって、
前記固定側に延設された溝と、
前記開閉体を相対回転自在に支持する回転軸と、
前記開閉体と前記回転軸との間に設けられ前記相対回転に対して回転方向の少なくとも一部で負荷トルクを付与し前記相対回転を制限する摩擦部と、
前記回転軸に設けられ回転半径方向の両側に係合面を有し前記溝に挿入されて前記係合面により前記溝に前記回転方向に係合する係合軸部と、
を備えた取付け構造。
【請求項2】
請求項1の取付け構造であって、
前記溝は、少なくとも前記開閉体の前記固定側からの取外し方向に指向して開口を有する、
取付け構造。
【請求項3】
請求項1又は2の取付け構造であって、
前記溝は、上下方向に対して傾斜して延設された傾斜溝である、
取付け構造。
【請求項4】
請求項1又は2の取付け構造であって、
前記係合軸部の前記溝に対する抜止めを行う抜止め部を備えた、
取付け構造。
【請求項5】
請求項4の取付け構造であって、
前記抜止め部は、前記溝の前記係合軸部の係合位置に設けられ、前記溝の本体部に対する前記回転方向の前記係合軸部の揺動を許容して前記溝と前記係合軸部との前記回転方向の係合と共に前記延設方向の係合を行わせる揺動許容部を備えた、
取付け構造。
【請求項6】
請求項4の取付け構造であって、
前記抜止め部は、前記溝の前記係合軸部の係合位置に設けられ前記溝の本体部に対して角度をもって延設された係合溝を備えた、
取付け構造。
【請求項7】
請求項4の取付け構造であって、
前記抜止め部は、前記溝の前記係合軸部の係合位置に設けられ前記係合軸部を前記延設方向に係止する係止片を備えた、
取付け構造。
【請求項8】
請求項1又は2の取付け構造であって、
前記負荷トルクは、前記回転方向の全域で発生する、
取付け構造。
【請求項9】
請求項1又は2の取付け構造であって、
前記負荷トルクは、前記開閉体の回転途中から閉位置まで前記開閉体の自重による回転トルクを下回る、
取付け構造。
【請求項10】
請求項1又は2の取付け構造であって、
前記摩擦部は、前記開閉体及び前記回転軸の一方と一体の摩擦板と、前記開閉体及び前記回転軸の他方と一体の被摩擦板とを備えた、
取付け構造。
【請求項11】
請求項10の取付け構造であって、
前記摩擦板及び前記被摩擦板の一方又は双方にカム面を有し、前記カム面により前記負荷トルクを変動させる、
取付け構造。
【請求項12】
請求項10の取付け構造であって、
前記摩擦板及び前記被摩擦板は、前記開閉体の開位置へ向けた回転に応じて接触半径が増加する接触部を有する、
取付け構造。
【請求項13】
開閉体を固定側に対して着脱自在に取り付ける取付け構造のヒンジであって、
前記開閉体を相対回転自在に支持する回転軸と、
前記開閉体と前記回転軸との間に設けられ前記相対回転に対して回転方向の少なくとも一部で負荷トルクを付与し前記相対回転を制限する摩擦部と、
前記回転軸に設けられ回転半径方向の両側に係合面を有し前記溝に挿入されて前記係合面により前記溝に前記回転方向に係合する係合軸部と、
を備えたヒンジ。
【請求項14】
請求項13のヒンジを備えたヒンジ付き開閉体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のデッキボード等の着脱可能な開閉体の取付け構造、これに用いるヒンジ、及びヒンジ付き開閉体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の開閉体の取付け構造としては、例えば特許文献1に記載のデッキボードのヒンジ機構がある。
【0003】
このヒンジ機構は、デッキボード側に固定されるアッパーブラケットと、車体側に固定されるロアブラケットとを備える。アッパーブラケットは、第1ピンと第2ピンを前後方向に所定の間隔をおいて平行に備える。ロアブラケットは、前後方向で互いに逆向きの開口と終端を有してアッパーブラケットの各ピンを係合させる第1スリットと第2スリットを上下方向に所定の間隔をおいて備える。
【0004】
各スリット内には、弾性部材を臨ませて、各スリットの終端側には、第1ピンと第2ピンとを弾性部材から得られる弾性力を伴って着脱可能に係合させる。この第1ピン及び第2ピンの係合により、デッキボードを開状態で保持できるようになっている。
【0005】
デッキボードを取り外す際は、デッキボードを任意の回転位置として第1ピンのみが第1スリットに係合した状態において、デッキボードを前後方向に移動させる。これによって第1ピンが第1スリットから離脱すると、デッキボードを上方に引き上げることで車体側から取り外すことができる。
【0006】
かかるヒンジ機構では、デッキボードの開状態を保持するために、第2ピンを第2スリットへ弾性部材によって係合するまで確実に回転させる必要があり、開閉操作の複雑化を招いていた。また、デッキボードの着脱時には、第2ピンに注意を払いながら第1ピンを第1スリットに対して係合させ或いは係合を離脱させる必要があり、操作の複雑化を招いていた。
【0007】
このような問題は、車両用のトノカバーやグローブボックス、その他の着脱可能な開閉体全般に生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-191067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、着脱可能な開閉体の開閉操作及び着脱操作の複雑化を招いていた点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、開閉体を固定側に対して着脱自在に取り付ける取付け構造であって、前記固定側に延設された溝と、前記開閉体を相対回転自在に支持する回転軸と、前記開閉体と前記回転軸との間に設けられ前記相対回転に対して回転方向の少なくとも一部で負荷トルクを付与し前記相対回転を制限する摩擦部と、前記回転軸に設けられ回転半径方向の両側に係合面を有し前記溝に挿入されて前記係合面により前記溝に前記回転方向に係合する係合軸部と、を備えた取付け構造を提供する。
【0011】
また、本発明は、開閉体を固定側に対して着脱自在に取り付ける取付け構造のヒンジであって、前記開閉体を相対回転自在に支持する回転軸と、前記開閉体と前記回転軸との間に設けられ前記相対回転に対して回転方向の少なくとも一部で負荷トルクを付与し前記相対回転を制限する摩擦部と、前記回転軸に設けられ回転半径方向の両側に係合面を有し前記溝に挿入されて前記係合面により前記溝に前記回転方向に係合する係合軸部と、を備えたヒンジを提供する。
【0012】
さらに、本発明は、かかるヒンジを備えたヒンジ付き開閉体を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、着脱可能な開閉体の開閉操作及び着脱操作の簡易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施例1のデッキボードを示す斜視図である。
図2図2は、図1のデッキボードの取付け構造周辺を拡大して示す斜視図である。
図3図3は、図2の一部を省略した斜視図である。
図4図4(A)~(D)は、図2のデッキボードのヒンジを示し、図4(A)は正面図、図4(B)は平面図、図4(C)は左側面図、図4(D)は右側面図である。
図5図5は、図2のデッキボードの係合軸部としての扁平軸部と溝を示す概略側面図である。
図6図6は、実施例1のヒンジの特性を示す図表である。
図7図7は、実施例1の変形例に係るヒンジの特性を示す図表である。
図8図8(A)~(C)は、本発明の実施例2に係るデッキボードの扁平軸部と溝を示す概略側面図である。
図9図9(A)~(C)は、実施例2の変形例に係るデッキボードの扁平軸部と溝を示す概略側面図である。
図10図10(A)~(D)は、本発明の実施例3に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示し、図10(A)は被摩擦板の平面図、図10(B)は摩擦板の平面図、図10(C)は被摩擦板の側面図、図10(D)は摩擦板の側面図である。
図11図11は、図10の被摩擦板と摩擦板を有するヒンジの負荷トルクの特性を示す図表である。
図12図12(A)~(D)は、実施例3の変形例に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示し、図12(A)は被摩擦板の平面図、図12(B)は摩擦板の平面図、図12(C)は被摩擦板の側面図、図12(D)は摩擦板の側面図である。
図13図13は、図12の被摩擦板と摩擦板を有するヒンジの負荷トルクの特性を示す図表である。
図14図14(A)~(D)は、本発明の実施例4に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示し、図14(A)は被摩擦板の平面図、図14(B)は摩擦板の平面図、図14(C)は被摩擦板の側面図、図14(D)は摩擦板の側面図である。
図15図15は、図14の被摩擦板と摩擦板を有するヒンジの特性を示す図表である。
図16図16(A)~(D)は、実施例4の変形例に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示し、図16(A)は被摩擦板の平面図、図16(B)は摩擦板の平面図、図16(C)は被摩擦板の側面図、図16(D)は摩擦板の側面図である。
図17図17は、図16の被摩擦板と摩擦板を有するヒンジの負荷トルクの特性を示す図表である。
図18図18は、実施例4の他の変形例に係る被摩擦板と摩擦板を有するヒンジの負荷トルクの特性を示す図表である。
図19図19(A)及び(B)は、実施例4の更に他の変形例に係る被摩擦板と摩擦板を有するヒンジの負荷トルクの特性を示す図表である。
図20図20(A)~(D)は、実施例4の更に他の変形例に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示し、図20(A)は被摩擦板の平面図、図20(B)は摩擦板の平面図、図20(C)は被摩擦板の側面図、図20(D)は摩擦板の側面図である。
図21図21(A)及び(B)は、本発明の実施例5に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示す側面図であり、図21(A)は閉位置、図21(B)は開位置を示す。
図22図22(A)及び(B)は、実施例5の変形例に係るデッキボードのヒンジに用いられる閉位置の被摩擦板と摩擦板とを示す側面図である。
図23図23(A)~(D)は、実施例5の他の変形例に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
着脱可能な開閉体の開閉操作及び着脱操作の簡易化を図るという目的を、開閉体の回転軸に対する相対回転を少なくとも回転方向の一部で制限する機能を利用して実現した。
【0016】
開閉体3を固定側2に対して着脱自在に取り付ける取付け構造1は、溝7と、ヒンジ9とを備える。溝7は、固定側2に延設されている。ヒンジ9は、開閉体3に備えられてヒンジ付き開閉体を構成し、回転軸19と、摩擦部21と、係合軸部23とを備える。回転軸19は、開閉体3を相対回転自在に支持する。摩擦部21は、開閉体3と回転軸19との間の相対回転に対して回転方向の少なくとも一部で負荷トルクを付与して制限を行う。係合軸部23は、回転軸19に設けられ、回転半径方向の両側に係合面23aを有し、溝7に挿入されて係合面23aにより溝7に回転方向に係合する。
【0017】
係合軸部23は、溝7の延設方向に沿った状態で溝7に挿入される扁平形状とするのが好ましい。溝7は、任意の方向に延設することが可能であるが、少なくとも開閉体3の固定側2からの取外し方向に指向した開口7aを有するようにするのが好ましい。更に好ましくは、溝7は、上下方向に対して傾斜して延設された傾斜溝とする。
【0018】
取付け構造1は、係合軸部23の溝7に対する抜止めを行う抜止め部41を備えてもよい。
【0019】
一実施形態として、抜止部41は、溝7に揺動許容部43を備えた構成とすることが可能である。揺動許容部43は、溝7の係合軸部23の係合位置に設けられ、溝7の本体部45に対する回転方向の係合軸部23の揺動を許容する。この揺動により、溝7と係合軸部23との回転方向の係合と共に延設方向の係合を行わせる。
【0020】
別の実施形態として、抜止め部41は、溝7の係合軸部23の係合位置に設けられ、溝7の本体部45に対して角度をもって延設された係合溝47を備えてもよい。
【0021】
更に別の実施形態として、抜止め部41は、溝7の係合軸部23の係合位置に設けられ、係合軸部23を延設方向に係止する係止片49を備えてもよい。
【0022】
負荷トルクは、少なくとも回転方向の一部で発生すればよいが、回転方向の全域で発生してもよい。
【0023】
また、負荷トルクは、開閉体3の回転途中から閉位置まで開閉体3の自重による回転トルクを下回ってもよい。
【0024】
摩擦部21は、負荷トルクを生じさせるものであれば適宜の形態とすることが可能である。一実施形態として、摩擦部21は、開閉体3及び回転軸19の一方と一体の摩擦板39と、開閉体3及び回転軸19の他方と一体の被摩擦板37とを備えてもよい。
【0025】
摩擦板39及び被摩擦板37の一方又は双方にカム面51及び53を有し、カム面51及び53により負荷トルクを変動させてもよい。
【0026】
また、摩擦板39及び被摩擦板37は、開閉体3の開位置へ向けた回転に応じて接触半径が増加する接触部61、63、65、67を有してもよい。
【実施例0027】
図1は、本発明の実施例1のデッキボードを示す斜視図である。図2は、図1のデッキボードの取付け構造周辺を拡大して示す斜視図である。図3は、図2の一部を省略した斜視図である。
【0028】
本実施例の取付け構造1は、開閉体である車両用のデッキボード3を固定側である車体2に着脱自在に取り付け可能とする。
【0029】
固定側とは、着脱自在な開閉体であるデッキボード3を可動側とした場合の固定側を意味する。実施例において、固定側である車体2にベース5が設けられ、ベース5に対してデッキボード3が支持される。ベース5は、デッキボード3を支持する土台であればよく、任意の形状に設定できる。
【0030】
デッキボード3は、車両の荷室の床面を平坦にする板部材であり、その下の収納や空間を利用する際に開閉される。なお、取付け構造1を採用可能な開閉体は、デッキボード3に限られず、車両用のトノカバーやグローブボックス、ノートパソコンの画面又はキーボード、その他の着脱可能な開閉体とすることが可能である。
【0031】
本実施例の取付け構造1は、ベース5側の溝7と、デッキボード3側のヒンジ9とで構成されている。
【0032】
溝7は、ベース5に取り付けられたベースブラケット11に設けられている。なお、ベースブラケット11は、ベース5の一部や車体の一部によって構成してもよい。
【0033】
ベースブラケット11は、板状に構成されており、ステー13を介してベース5に固定されている。本実施例では、ベースブラケット11に板状の締結部15が一体に設けられており、この締結部15がボルト17によってステー13に締結される。ステー13は、ボルト17によってベース5に締結されている。
【0034】
かかるベースブラケット11は、図1のデッキボード3の閉位置で、デッキボード3の側縁3aに沿って起立した状態となっている。ベースブラケット11の上縁から下方へ向けて溝7が設けられている。なお、デッキボード3の閉位置は、その下の収納等を閉じる位置である。
【0035】
本実施例の溝7は、側面視において、上下方向に対して傾斜した直線状の溝である傾斜溝によって構成されている。上下方向とは、デッキボード3により閉じられる収納等の開口が指向する方向を上とした場合の上下方向であり、デッキボード3による閉じ方向に対応する。
【0036】
なお、溝7は、任意の方向に延設することが可能であり、例えば上下方向に沿って延設してもよい。また、溝7は、一つの直線状の溝の他、後述する本実施例の係合軸部としての扁平軸部23を延設方向に移動可能とする限り、任意の形状を採用することが可能である。例えば、溝7は、湾曲した溝や傾きが変わる複数の直線状の溝を連続させたもの等であってもよい。
【0037】
ただし、溝7は、少なくともデッキボード3の車体2側からの取外し方向に指向して開口7aを有するように構成するのが好ましい。開口7aが指向する方向は、開口7aにおける溝7の延設方向となる。取外し方向は、任意に設定が可能である。
【0038】
図4(A)~(D)は、図2のデッキボードのヒンジを示し、図4(A)は正面図、図4(B)は平面図、図4(C)は左側面図、図4(D)は右側面図である。
【0039】
ヒンジ9は、図3図4(D)のように、デッキボード3の板状の本体部4と共にヒンジ付きデッキボードを構成する。このヒンジ9は、回転軸19と、摩擦部21と、扁平軸部23とを備える。
【0040】
回転軸19は、デッキボード3を相対回転自在に支持する。回転軸19は、軸方向の中間部に径方向に膨出したフランジ部25を備え、軸方向の一側に支持軸部27及び軸方向の他側に後述する扁平軸部23が設けられている。なお、中間部とは、軸方向の一端と他端との間をいい、一端と他端との中央のみを意味するものではない。
【0041】
支持軸部27は、デッキボード3を回転自在に支持する部分であり、柱状に形成されている。この支持軸部27には、軸方向から見て、回転半径方向の両側に平面部27aを有する樽形状となっている。
【0042】
回転半径方向とは、デッキボード3の回転中心に対する放射方向をいい、回転半径方向の両側は、任意の回転半径方向に対する支持軸部27の両側をいう。
【0043】
この支持軸部27には、デッキボード3にボルト17によって固定されたボードブラケット29が回転自在に支持されている。なお、ボードブラケット29は、デッキボード3に一体回転するように設けられていればよい。
【0044】
ボードブラケット29は、デッキボード3の側縁3aに沿った板状に構成されており、長手方向の一側が摩擦部21の被摩擦板37となっている。このボードブラケット29の被摩擦板37に支持軸部27を相対回転自在に挿通させる挿通孔29aが設けられている。
【0045】
被摩擦板37に対する軸方向内側、つまり被摩擦板37とフランジ部25との間には、摩擦部21の摩擦板39が介在している。被摩擦板37に対する軸方向の外側は、カシメ部31によって受けられて抜け止めがなされている。
【0046】
本実施例では、被摩擦板37とカシメ部31との間にリング状のばね座金33及び平座金35が介在している。従って、カシメ部31とフランジ部25との間には、摩擦板39、被摩擦板37、ばね座金33、及び平座金35が締結され、被摩擦板37を摩擦板39に押し付けている。なお、ばね座金33及び平座金35は省略することも可能である。
【0047】
摩擦部21は、デッキボード3と回転軸19との間に設けられ、デッキボード3と回転軸19との相対回転に対して回転方向の少なくとも一部で負荷トルクを付与し、デッキボード3と回転軸19との相対回転を制限する。本実施例において、摩擦部21は、相対回転の全域において負荷トルクを付与する。
【0048】
相対回転は、デッキボード3の回転軸19周りの回転をいう。相対回転の回転方向は、デッキボード3の回転中心周りの方向をいう。相対回転の制限は、デッキボード3と回転軸19との相対回転に負荷トルクがかかる状態をいうが、本実施例では特にデッキボード3が自重による回転トルクで回転軸19に対して相対回転しないように負荷トルクをかける状態をいう。
【0049】
かかる摩擦部21は、被摩擦板37と摩擦板39とで構成されている。被摩擦板37は、ボードブラケット29と一体に構成された板状であり、摩擦板39は、回転軸19と一体に構成された板状である。なお、被摩擦板37を回転軸19と一体にし、摩擦板39をボードブラケット29と一体にしてもよい。
【0050】
ここでの一体とは、相対回転しないように一体的に構成されていることをいう。本実施例では、被摩擦板37は、ボードブラケット29の一端をなすように成形され、摩擦板39は、回転軸19とは別体に形成され、一体的に保持されている。
【0051】
摩擦板39は、支持軸部27を貫通させた状態で係合させる係合孔39aが設けられている。係合孔39aは、支持軸部27の平面部27aに係合する平面縁39aaを有し、摩擦板39の支持軸部27に対する回り止めをする。なお、摩擦板39の回り止めには、スプラインやキー及びキー溝等の周知の手法を採用することが可能である。
【0052】
被摩擦板37は、支持軸部27に対して相対回転すると、摩擦板39に対して接触しながら相対回転する。このため、摩擦板39と被摩擦板37との間で摩擦による負荷トルクが生じる。本実施例では、摩擦板39と接触する範囲において、回転方向に一定に板厚を有している。これにより、負荷トルクは、回転方向の全域で一定となる。
【0053】
なお、摩擦部21は、支持軸部27の外周を摩擦面及び被摩擦面の一方とし、ボードブラケット29の挿通孔29aの内周を摩擦面及び被摩擦面の他方として構成してもよい。
【0054】
被摩擦板37及び摩擦板39は、材質が限定されるものではないが、ステンレス等によって形成することができる。被摩擦板37及び摩擦板39の接触面は、必要に応じてローレット加工等が施される。また、摩擦板39は、被摩擦板37よりも摩擦係数の高い材質とすることも可能である。
【0055】
図5は、図2のデッキボードの扁平軸部と溝を示す概略側面図である。
【0056】
扁平軸部23は、図3図5のように、回転軸19に設けられ、車体2側の溝7に挿入されて回転方向に係合する係合軸部を構成する。係合軸部は、本実施例のように、溝7の延設方向に沿った状態で溝7に挿入される扁平形状とするのが好ましい。具体的には、扁平軸部23は、柱状に形成され、軸方向から見て回転半径方向の両側に平坦な係合面23aを有する樽形状となっている。これらの係合面23aが溝7の延設方向に沿った状態で、扁平軸部23は溝7に挿入されている。
【0057】
なお、係合面23aは、扁平軸部23の回転半径方向の両側に凹条の底面として形成し、溝7の両縁7cをスライド自在に係合させるものであってもよい。
【0058】
扁平軸部23の溝7の延設方向の端部23bは、弧状に形成されている。一方の端部23bは、溝7の弧状の底部7bに係合している。扁平軸部23の係合面23aは、端部23b間に伸び、溝7の延設方向に沿った直線状の両縁部7cに係合している。
【0059】
従って、扁平軸部23を介して回転軸19が車体2側に回り止めされるため、デッキボード3を回転軸19周りに相対回転させて起立及び傾倒させることが可能となる。
【0060】
起立及び傾倒させる際は、摩擦部21によってデッキボード3の回転に対して負荷トルクが付与されている。この負荷トルクにより、デッキボード3を任意の回転位置で保持することができ、フリーストップ機能を実現することができる。従って、デッキボード3の回転位置を保持するための特別な操作が不要で、デッキボード3の開閉操作を簡易化することができる。
【0061】
図6は、実施例1のヒンジの特性を示す図表である。上記のように、本実施例では、デッキボード3の回転方向の全域において一定の負荷トルクを付与している。負荷トルクの値は、デッキボード3の自重による回転トルクの最大値を上回っている。このため、本実施例では、デッキボード3を何れの回転角度においても、図6の実線のようにデッキボード3の保持トルクを確保し、デッキボード3の回転位置を保持することができる。
【0062】
なお、図6では、デッキボード3がその下の空間等を閉じる回転位置を0°の閉位置とし、閉位置から最大の開き角度を90°とし、このときの回転位置を開位置としている。なお、最大の開き角度は、90°より大きく又は90°未満に設定することも可能である。
【0063】
デッキボード3を取り外す場合は、デッキボード3を、任意の回転位置とし、溝7に沿った方向に引き上げる。このとき、溝7の開口7aがデッキボード3の車体2側からの取外し方向に指向しているため、扁平軸部23が溝7から離脱すると同時にデッキボード3の取り外しが完了する。
【0064】
一方、デッキボード3を取り付ける場合は、デッキボード3に対して回転軸19の扁平軸部23を任意の角度にしておき、扁平軸部23を溝7内に挿入していく。
【0065】
このとき、ヒンジ9のフリーストップ機能によってデッキボード3に対する扁平軸部23の姿勢が保持されるため、溝7の開口7aに対して扁平軸部23を合わせやすく、扁平軸部23の溝7への挿入を容易に行うことができる。また、溝7に扁平軸部23を挿入している際には、フリーストップ機能により扁平軸部23の不用意な揺動が制限され、作業を行い易い。
【0066】
従って、本実施例では、着脱可能なデッキボード3の開閉操作及び着脱操作の簡易化を図ることができる。
【0067】
図7は、実施例1の変形例に係るヒンジの特性を示す図表である。
【0068】
図7の変形例では、図6と同様にデッキボード3の回転方向の全域において一定の負荷トルクを付与している。ただし、この図7(A)の変形例では、負荷トルクがデッキボード3の回転途中から閉位置までデッキボード3の自重による回転トルクを下回る。
【0069】
このため、デッキボード3を閉位置まで回転させる場合は、デッキボード3を負荷トルクが回転トルクを下回る途中まで回転させれば、デッキボード3が自重によって閉位置まで回転する。従って、デッキボード3の開閉操作をより簡易化することができる。
【実施例0070】
図8(A)~(C)は、本発明の実施例2に係るデッキボードの扁平軸部と溝を示す概略側面図である。なお、実施例2は、基本構成が実施例1と共通するため、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0071】
実施例2の取付け構造1は、扁平軸部23の溝7に対する抜止めを行う抜止め部41を備える。その他は、実施例1と同一である。
【0072】
抜止め部41は、溝7の扁平軸部23の係合位置に設けられた揺動許容部43を備える。係合位置は、扁平軸部23を溝7に対して係合させる位置をいう。揺動許容部43は、溝7の本体部45に対する回転方向の扁平軸部23の揺動を許容して、溝7と扁平軸部23との回転方向の係合と共に延設方向の係合を行わせる。
【0073】
なお、溝7の本体部45は、溝7の揺動許容部43を除く部分をいう。揺動は、扁平軸部23の溝7の本体部45の延設方向の両側が、回転軸19(デッキボード3)の回転中心周りに所定角度の範囲で回転することをいう。
【0074】
本実施例の揺動許容部43は、溝7の両縁部7cに凹部43aを備え、扁平軸部23が溝7の本体部45に沿った基本姿勢に対して回転方向の両側への揺動を許容している。なお、凹部43aは、回転方向の一側(開ける方向又は閉じる方向)への揺動を許容するように設けてもよい。
【0075】
デッキボード3を開位置に向けて回転させる場合は、まずデッキボード3と共に扁平軸部23が例えば図8(A)や図8(C)の状態から図8(B)の状態へと揺動する。この間は、デッキボード3と扁平軸部23(回転軸19)が相対回転しないため、デッキボード3の回転に対して負荷トルクが付与されない。
【0076】
従って、相対的にデッキボード3の自重による回転トルクが大きい(相対的に大きな力が必要となる)デッキボード3の開ける際の初期において、デッキボード3を回転させる力を低減できる。
【0077】
この状態で更にデッキボード3を開くと、デッキボード3と扁平軸部23(回転軸19)が相対回転し、デッキボード3の回転に対して負荷トルクが付与される。このため、任意の回転位置でデッキボード3を保持することが可能となる。また、デッキボード3の開操作中では、扁平軸部23の溝7に対する抜けやがたつきを抑制できる。
【0078】
一方、デッキボード3を閉じる方向に回転させる場合は、まずデッキボード3と共に扁平軸部23が例えば図8(A)や図8(B)の状態から図8(C)の状態へと揺動する。この間は、デッキボード3の回転に対して負荷トルクが付与されない。このため、相対的にデッキボード3の自重による回転トルクが小さいデッキボード3の閉める際の初期において、デッキボード3を回転させる力を低減できる。
【0079】
従って、本実施例では、実施例1の作用効果に加えて、より開閉操作を簡易化することが可能となる。また、デッキボード3の閉操作中及び閉位置では、図8(C)のように、揺動許容部43へ扁平軸部23が係合すると、扁平軸部23の溝7に対する抜けやデッキボード3のがたつきを抑制することができる。
【0080】
図9(A)~(C)は、実施例2の変形例に係るデッキボードの扁平軸部と溝を示す概略側面図である。
【0081】
図9(A)の変形例では、抜止め部41が溝7の扁平軸部23の係合位置に設けられ、溝7の本体部45に対して角度をもって延設された係合溝47を備えている。
【0082】
係合溝47は、上下方向に沿った直線状の溝となっている。ただし、係合溝47は、溝7と同様、一つの直線状の溝の他、扁平軸部23を延設方向に移動可能とする限り、湾曲した溝や傾きが変わる複数の直線状の溝を連続させたもの等のように、任意の形状を採用することが可能である。
【0083】
図9(B)及び(C)の変形例では、抜止め部41が、溝7の扁平軸部23の係合位置に設けられ、扁平軸部23を延設方向に係止する係止片49を備えている。係止片49は、板ばねの端部を回転軸19の軸方向から見て溝7内に位置させることで構成されている。この係止片49は、扁平軸部23の端部又は係合面23aに係合し、弾性力によって扁平軸部23を保持する。
【0084】
かかる変形例においても、実施例2と同様に扁平軸部23の溝7に対する抜けやデッキボード3のがたつきを抑制することができる。
【実施例0085】
図10(A)~(D)は、本発明の実施例3に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示し、図10(A)は被摩擦板の平面図、図10(B)は摩擦板の平面図、図10(C)は被摩擦板の側面図、図10(D)は摩擦板の側面図である。図11は、図10の被摩擦板と摩擦板を有するヒンジの負荷トルクの特性を示す図表である。なお、実施例3は、基本構成が実施例1と共通するため、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。なお、図10(A)~(D)は、デッキボード3の回転角度が90°の開位置を示す。また、図10(A)及び(B)は、凸部55及び凹部57をそれぞれ一つのみ図示し、残りの図示を省略している。後述する図14(A)及び(B)並びに図16(A)及び(B)も同様である。
【0086】
実施例3は、摩擦部21の被摩擦板37及び摩擦板39にカム面51及び53を有し、カム面51及び53により負荷トルクを変動させるように構成されている。
【0087】
カム面51は、周方向に複数の軸方向の凸部55を有し、カム面53は、凸部55に対応して周方向に複数の軸方向の凹部57を有する。本実施例において、凸部55は、デッキボード3の最大回転角度である90°よりも大きい角度である120°毎に配置され、デッキボード3の回転角度が90°の開位置となったときにのみ凹部57に一致して係合するように構成されている。
【0088】
かかる摩擦部21では、デッキボード3を開位置へ向けて回転させると、被摩擦板37のカム面51の凸部55が摩擦板39のカム面53に摺動して負荷トルクを生じさせる。これによって本実施例ではフリーストップ機能を実現する。
【0089】
デッキボード3が開位置となった際には、カム面51の凸部55がカム面53の凹部57内に入り込んで係合し、負荷トルクが減少した状態でデッキボード3の開状態が保持される。負荷トルクの減少度合は、凸部55の高さに対する凹部57の深さにより変更可能である。
【0090】
なお、凸部55と凹部57による軸方向の寸法の変動は、ばね座金33によって吸収される。凸部55と凹部57との個数及び間隔は、変更することも可能である。これにより、デッキボード3の複数の回転角度の回転位置において、デッキボード3を凸部55と凹部57との係合により保持可能としてもよい。また、凹部57を回転方向に大きくし、凸部55が摩擦板39のカム面53の一部において乗り上げる構成としてもよい。この場合、負荷トルクを回転方向の一部において付与することが可能となる。
【0091】
図12(A)~(D)は、実施例3の変形例に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示し、図12(A)は被摩擦板の平面図、図12(B)は摩擦板の平面図、図12(C)は被摩擦板の側面図、図12(D)は摩擦板の側面図である。図13は、図12の被摩擦板と摩擦板を有するヒンジの特性を示す図表である。なお、図12(A)~(D)は、デッキボード3の回転角度が90°の開位置を示す。また、図12(A)及び(B)は、凸部55及び凸部59をそれぞれ一つのみ図示し、残りの図示を省略している。後述する図20(A)及び(B)も同様である。
【0092】
図12(A)~(D)の変形例では、カム面53の凹部57に代えて凸部59を設けたものである。この変形例では、デッキボード3が開位置となった際に、被摩擦板37のカム面51の凸部55が摩擦板39のカム面53の凸部59に乗り上げ、増加した負荷トルクによってデッキボード3が保持される。
【0093】
かかる実施例3及びその変形例においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。また、所定の回転位置でのデッキボード3の保持をより確実に行うことができる。
【実施例0094】
図14(A)~(D)は、本発明の実施例4に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示し、図14(A)は被摩擦板の平面図、図14(B)は摩擦板の平面図、図14(C)は被摩擦板の側面図、図14(D)は摩擦板の側面図である。図15は、図14の被摩擦板と摩擦板を有するヒンジの特性を示す図表である。なお、実施例4は、基本構成が実施例3と共通するため、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。なお、図14(A)~(D)は、デッキボード3の回転角度が90°の開位置を示す。
【0095】
実施例4は、摩擦部21の被摩擦板37及び摩擦板39にカム面51及び53を有し、カム面51及び53により負荷トルクを漸次変動させるように構成されている。すなわち、本実施例では、被摩擦板37のカム面51に凸部55を設け、摩擦板39のカム面53に凹部57を設け、凹部57の軸方向の深さを回転方向の一側から他側にかけて漸次増加させている。
【0096】
本実施例では、デッキボード3が閉位置の手前から徐々に凸部55が凹部57内に入り込むことで負荷トルクを減少させるようになっている。
【0097】
この負荷トルクの減少により、デッキボード3が閉位置に至る前で負荷トルクがデッキボード3の自重による回転トルクを下回り、デッキボード3が自重によって閉位置まで回転する。
【0098】
従って、デッキボード3を閉位置まで回転させる場合は、デッキボード3を途中まで回転させればよく、開閉操作を簡易化することができる。その他、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0099】
図16(A)~(D)は、実施例4の変形例に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示し、図16(A)は被摩擦板の平面図、図16(B)は摩擦板の平面図、図16(C)は被摩擦板の側面図、図16(D)は摩擦板の側面図である。図17は、図16の被摩擦板と摩擦板を有するヒンジの負荷トルクの特性を示す図表である。図18及び図19(A)及び(B)は、他の変形例に係る被摩擦板と摩擦板を有するヒンジの負荷トルクの特性を示す図表である。なお、図16(A)~(D)は、デッキボード3の回転角度が90°の開位置を示す。
【0100】
図16(A)~(D)の変形例では、デッキボード3の回転方向の他側から一側にわたり全域で漸次凹部57の深さが増加している。これにより、デッキボード3を開位置へ向けて回転させるにつれて漸次負荷トルクが減少するようになっている。
【0101】
従って、デッキボード3の自重による回転トルクが大きい開け始めに負荷トルクを大きくし、デッキボード3の自重による回転トルクが小さい開け終わりに負荷トルクを小さくすることができる。結果として、確実にデッキボード3を所望の回転位置で保持することができ、開閉操作を簡易化することができる。その他、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0102】
また、図16(A)~(D)の変形例では、凹部57の深さを一側から他側にわたり全域で増加させることで、図18のように、図17とは逆の特性を得ることができる。これにより、この変形例では、自重による回転トルクが大きい時に負荷トルクを小さくして開閉操作を簡易化できる。また、凹部57の深さを回転方向の一側から漸次増加させた後に途中から他側へ向けて漸次減少させ或いはその逆とすることで、図19(A)及び(B)のように山型又は谷型の特性を得ることも可能である。
【0103】
図20(A)~(D)は、実施例4の更に他の変形例に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示し、図20(A)は被摩擦板の平面図、図20(B)は摩擦板の平面図、図20(C)は被摩擦板の側面図、図20(D)は摩擦板の側面図である。なお、図20(A)~(D)は、デッキボード3の回転角度が90°の開位置を示す。
【0104】
図20(A)~(D)の変形例では、被摩擦板37のカム面51に凸部55を設け、摩擦板39のカム面53に凸部59を設け、この凸部59の軸方向の高さを回転方向の一側から他側にかけて漸次高くしたものである。
【0105】
図20(A)~(D)の変形例でも、実施例4や他の変形例と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例0106】
図21(A)及び(B)は、本発明の実施例5に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示す側面図であり、図21(A)は閉位置、図21(B)は開位置を示す。なお、実施例5は、基本構成が実施例3と共通するため、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0107】
本実施例の取付け構造1は、被摩擦板37及び摩擦板39がデッキボード3の開位置へ向けた回転に応じて接触半径が増加する接触部61及び63を有する。
【0108】
摩擦板39は、楕円形の板状に構成され、全面に楕円形の接触部63を備えている。被摩擦板37は、摩擦板39の接触部63に接触する部分が接触部61となる。
【0109】
この被摩擦板37の接触部61は、図21(B)のように、デッキボード3が開位置となったときに摩擦板39の接触部63の全面に接触し、図21(A)のように、デッキボード3が閉位置となったときに摩擦板39の接触部63の一部に接触する。このため、デッキボード3の開位置へ向けた回転に応じ、接触半径が増加するようになっている。
【0110】
かかる実施例5では、デッキボード3の自重による回転トルクが大きい開け始めに負荷トルクを小さくし、デッキボード3の自重による回転トルクが小さい開け終わりに負荷トルクを大きくすることができる。
【0111】
結果として、デッキボード3の開ける際の力を平坦化して開閉操作を簡易化することができる。その他、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。また、実施例5では、デッキボード3の閉位置へ向けた回転に応じ、接触半径が増加するように摩擦板39を回転軸19に支持すれば、逆向きの特性を容易に得ることができる。
【0112】
図22(A)及び(B)は、実施例5の変形例に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示す側面図である。
【0113】
図22(A)及び(B)の変形例は、上記実施例5に対して摩擦板39の形状を変更し、軸方向から見て矩形状又はくびれを有する矩形状にしたものである。かかる変形例でも、実施例5と同様の作用効果を奏することができる。
【0114】
図23(A)~(D)は、実施例5の他の変形例に係るデッキボードのヒンジに用いられる被摩擦板と摩擦板とを示す側面図である。なお、図23(C)及び(D)は、それぞれにおいて一つの凸部65及び一つの凸部67の関係のみ図示し、残りの図示を省略している。
【0115】
図23(A)~(D)の変形例は、摩擦板39及び被摩擦板37にそれぞれ接触部としての凸部65及び67を設けている。凸部65及び67は、図23(A)及び(B)のように、それぞれ周方向に複数設けられている。本実施例の凸部65及び67は、120°毎に設けられている。
【0116】
被摩擦板37の凸部65は、内周側から外周側に向けて弧状に伸びている。摩擦板39の凸部67は、内周側から外周側に向けて放射状に直線状に伸びている。そして、図23(C)のようにデッキボード3が開位置となったときに、被摩擦板37の凸部65が摩擦板39の凸部67の内周側に接触する。図23(D)のようにデッキボード3が閉位置となったときには、被摩擦板37の凸部65が摩擦板39の凸部67の外周側に接触する。
【0117】
なお、図23(C)及び(D)では、被摩擦板37の一つの凸部65とこれに対応する摩擦板39の一つの凸部67との関係のみ示すが、全ての凸部65及び67は、図23(C)及び(D)と同様の関係を有する。
【0118】
この変形例でも、デッキボード3の開位置へ向けた回転に応じ、接触半径が増加するようになっており、上記実施例5と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0119】
1 取付け構造
2 車体(固定側)
3 デッキボード(開閉体)
5 ベース(固定側)
7 溝
7a 開口
9 ヒンジ
19 回転軸
21 摩擦部
23 扁平軸部
23a 係合面
27 支持軸部
37 被摩擦板
39 摩擦板
41 抜止め部
43 揺動許容部
45 本体部(溝)
47 係合溝
49 係止片
51 カム面
53 カム面
61、63 接触部
65、67 凸部(接触部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23