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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024101944
(43)【公開日】2024-07-30
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240723BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240723BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01F17/04 N
H01F27/29 G
H01F27/29 125
H01F27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006190
(22)【出願日】2023-01-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宋 ミヌ
(72)【発明者】
【氏名】都梅 智也
(72)【発明者】
【氏名】土田 せつ
【テーマコード(参考)】
5E059
5E070
【Fターム(参考)】
5E059BB22
5E070AA01
5E070AB01
5E070BA03
5E070DA03
5E070EA02
(57)【要約】
【課題】ワイヤの断線などが生じにくいコイル装置を提供すること。
【解決手段】ワイヤ60と、ワイヤ60が巻回されるコア20と、ワイヤ60のリード部61が接続する端子部81と、を有する装置本体2と、装置本体2の一部を収容する収容凹部101を有する外装ケース100と、を有するコイル装置1である。コア20は、ワイヤ60のコイル部60aが配置される巻芯部30と、巻芯部30の端部に形成され、端子部81が取り付けられている鍔部40と、を有する。外装ケース100は、収容凹部101の底面106を構成する底壁110と、収容凹部101の内面102を構成する側壁120と、を有する。端子部81の少なくとも一部は、収容凹部101から露出している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤと、前記ワイヤが巻回されるコアと、前記ワイヤのリード部が接続する端子部と、を有する装置本体と、前記装置本体の一部を収容する収容凹部を有する外装ケースと、を有し、
前記コアは、前記ワイヤのコイル部が配置される巻芯部と、前記巻芯部の端部に形成され、前記端子部が取り付けられている鍔部と、を有し、
前記外装ケースは、前記収容凹部の底面を構成する底壁と、前記収容凹部の内面を構成する側壁と、を有し、
前記端子部の少なくとも一部は、前記収容凹部から露出しているコイル装置。
【請求項2】
前記端子部は、前記リード部が接続する接続部と、前記鍔部の下面に配置される実装部と、前記実装部と前記接続部とを繋ぐ端子本体部と、を有し、
前記底面は、前記コイル部の巻回軸に平行な第1軸に略平行配置してあり、
前記接続部は、前記収容凹部の前記底面に対向する前記鍔部の頂面側に配置してあり、少なくとも前記接続部が前記収容凹部に収容されている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記端子部が露出する高さは、前記端子本体部の高さの20%以上である請求項2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記端子部が露出する高さは、前記装置本体の高さの50%以上である請求項2に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記ワイヤを保護する保護樹脂が、前記収容凹部に充填されている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記保護樹脂は、前記収容凹部に収容されている前記リード部の表面を覆っている請求項5に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記保護樹脂は、-50℃~260℃の範囲でのヤング率の最大値が最小値の300倍以下である請求項5に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記外装ケースは、磁性体を含んでいる請求項1に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記鍔部は、前記巻芯部の両端部に形成された一対の鍔部であり、
前記一対の鍔部を繋ぐ板状コアをさらに有し、
前記板状コアは、前記装置本体と前記底壁との間に配置されている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項10】
前記端子部は、金属材料で形成されている請求項1に記載のコイル装置。
【請求項11】
前記収容凹部の内側角部において、0.7~0.8mmのR面を有する請求項1に記載のコイル装置。
【請求項12】
前記収容凹部は、前記内面にテーパ面を有する請求項1に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のようなコイル装置を基板などに実装する場合に、実装基板へコイル装置をハンダ付けした後に、実装基板を防湿コート樹脂で被覆して基板およびコイル装置を含む他の電子部品の信頼性をより高めている。コイル装置がこのように実装基板に実装される場合、防湿コート樹脂がワイヤに付着することがある。
【0003】
しかしながら、従来のコイル装置では、リードをコアに近づけたとしても、リードに防湿コート樹脂が付着することを有効に防止することはできず、防湿コート樹脂がワイヤに付着することなどが原因でワイヤが断線する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-159610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の実情を鑑みてなされ、その目的は、ワイヤの断線などが生じにくいコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
ワイヤと、前記ワイヤが巻回されるコアと、前記ワイヤのリード部が接続する端子部と、を有する装置本体と、
前記装置本体の一部を収容する収容凹部を有する外装ケースと、を有し、
前記コアは、前記ワイヤのコイル部が配置される巻芯部と、前記巻芯部の端部に形成され、前記端子部が取り付けられている鍔部と、を有し、
前記外装ケースは、前記収容凹部の底面を構成する底壁と、前記収容凹部の内面を構成する側壁と、を有し、
前記端子部の少なくとも一部は、前記収容凹部から露出している。
【0007】
外装ケースが装置本体の一部を収容し、外装ケースが装置本体を覆うことで、コイル装置を基板などに実装する際に、基板に防湿材を塗布しても、防湿材が、ワイヤの断線し易い部分に付着しにくく、ワイヤの断線などが生じにくくなる。また、外装ケースによって、装置本体に対する外部から物理的な接触を抑止でき、コアの割れ欠けを防止することができる。
【0008】
さらに、端子部の一部が収容凹部から露出しているため、外装ケースが装置本体を覆っていても、コイル装置を基板などに実装する際に、形成されるハンダフィレットを視認し易くなり、実装不良を容易に検知できる。
【0009】
好ましくは、前記端子部は、前記リード部が接続する接続部と、前記鍔部の下面に配置される実装部と、前記実装部と前記接続部とを繋ぐ端子本体部と、を有する。前記底面は、前記コイル部の巻回軸に平行な第1軸に略平行配置してあり、前記接続部は、前記収容凹部の前記底面に対向する前記鍔部の頂面側に配置してあり、少なくとも前記接続部が前記収容凹部に収容されていることが好ましい。
【0010】
このように構成することで、ワイヤの断線し易い部分を外装ケースに収容することができると共に、実装部を基板に設置して実装する際に、外装ケースから露出している端子本体部にハンダフィレットを十分に形成することができる。
【0011】
前記端子部が露出する高さは、前記端子本体部の高さの20%以上であってもよい。前記端子部が露出する高さは、前記装置本体の高さの50%以上であってもよい。端子部の露出が多いほど、実装の際にハンダフィレットを形成し易く実装強度が高まる。また、このような構成では、ハンダフィレットをより視認し易くなる。
【0012】
好ましくは、前記ワイヤを保護する保護樹脂が、前記収容凹部に充填されている。収容凹部に保護樹脂が充填されることで、防湿材が、ワイヤの断線し易い部分に付着することを効果的に防止することができる。
【0013】
好ましくは、前記保護樹脂は、前記収容凹部に収容されている前記リード部の表面を覆っている。このように構成することで、防湿材がリード部に付着せず、しかもリード部への物理的な衝撃などのストレスを効率的に低減することができる。
【0014】
好ましくは、前記保護樹脂は、-50℃~260℃の範囲でのヤング率の最大値が最小値の300倍以下である。このような保護樹脂は、環境温度が変化してもワイヤへの温度変化による応力をさらに低減することができる。
【0015】
前記外装ケースは、磁性体を含んでいてもよい。たとえば外装ケース自体をフェライトなどの磁性体自体で構成することで、別途板コアなどを用いずとも、コアは閉磁路を形成することができ、コイル装置のインダクタンスなどの性能が向上する。
【0016】
前記鍔部は、前記巻芯部の両端部に形成された一対の鍔部であり、前記一対の鍔部を繋ぐ板状コアをさらに有し、前記板状コアは、前記装置本体と前記底壁との間に配置されていてもよい。このように構成することで、外装ケースが磁性体を含まない樹脂で形成しても、コアは閉磁路を形成することができ、コイル装置のインダクタンスなどの性能が向上する。外装ケースを樹脂で形成する場合には、外装ケースをより薄くすることが可能になり、コイル装置を小型化することも可能になる。
【0017】
好ましくは、前記端子部は、金属材料で形成されている。このような端子部は、ワイヤとレーザ溶接などで容易に接続することができる。
【0018】
前記収容凹部の内側角部において、0.7~0.8mmのR面を有してもよい。このように構成することで、収容凹部のサイズを大きくすることなく端子部とリード部との接続箇所が外装ケースに接触することを防止できる。
【0019】
前記収容凹部は、前記内面にテーパ面を有してもよい。このように構成することで、装置本体を外装ケースに収容し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は一実施形態に係るコイル装置の概略斜視図である。
図2図2図1に示すコイル装置の分解斜視図である。
図3図3図1に示すコイル装置の装置本体の構成を示す概略斜視図である。
図4図4図1に示すコイル装置の外装ケースの構成を示す概略斜視図である。
図5図5図1に示すコイル装置の別の方向から見た概略斜視図である。
図6図6図1に示すコイル装置の底面図である。
図7図7図6に示すコイル装置のVII-VII線での断面図である。
図8図8は他の実施形態に係るコイル装置の外装ケースの構成を示す概略斜視図である。
図9図9図8に示す外装ケースを用いたコイル装置の底面図である。
図10図10図9に示すコイル装置のX-X線での断面図である。
図11図11はさらに他の実施形態に係るコイル装置の概略斜視図である。
図12図12図11に示すコイル装置の外装ケースと板コアの構成を示す概略斜視図である。
図13図13図11に示すコイル装置のXIII-X線IIIでの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態に係るコイル装置の一実施形態としてのトランスの全体構成について図面を用いて説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。また、以下、実施形態により具体的に説明するが、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るコイル装置1は、全体として略直方体形状を有し、図3に示す装置本体2と、装置本体2を収容する図4に示す外装ケース100とを有する。図4に示す外装ケース100は、装置本体を収容するための収容凹部101を有し、装置本体2のZ軸方向上方に配置してある。
【0023】
コイル装置1は、その外形寸法は限定されないが、図1に示すように、たとえばX軸方向長さL1は4.2~7.0mm、Y軸方向幅L2は、4.0~6.0mm、Z軸方向高さH0は2.5~4.0mmとすることができる。
【0024】
図3に示すように、装置本体2は、ワイヤ60,70と、ドラム型のコア20と、を有する。コア20は、ワイヤ60,70が巻回されX軸方向に延在する巻芯部30と、巻芯部30のX軸方向の両端部に繋がっておりY軸方向に延在する一対の鍔部40,50と、を備える。装置本体2は、外装ケース100に収容できる外形寸法であればよく、たとえばその外形寸法は、X軸方向長さ4.0~4.7mm×Z軸方向高さ2.0~3.0mm×Y軸方向幅3.0~3.4mmであるが、装置本体2のサイズはこれに限定されない。
【0025】
コア20は、磁性体を含んでいる。磁性体としては、たとえばNi-Zn系や、Mn-Zn系などのフェライト、あるいはFe-Ni合金、Fe-Si合金、Fe-Si-Cr合金、Fe-Co合金、Fe-Si-Al合金、アモルファス鉄等の金属の磁性体などが例示される。コア20は、これらの磁性体の粉体を、成型および焼結することにより作製され得る。また、コア20は、磁性体を樹脂で固めて成形してもよい。樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、その他の合成樹脂、あるいはその他の非磁性体材料等が例示される。
【0026】
なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に略垂直である。本実施形態では、ワイヤ60,70の巻回軸方向が第1軸であるX軸方向に対応し、Z軸方向に対応し、第2軸方向がY軸方向に対応している。明細書では、Z軸方向において、外装ケース100が配置してある方向を「上」と称し、装置本体2が配置される方向を「下」と称することがある。また、X軸方向およびY軸方向において、収容凹部101の中心線C近い方向を「内」と称し、遠い方向を「外」と称することがある。また、X軸方向を「奥行方向」、Y軸方向を「幅方向」、Z軸方向を「高さ方向」と称することがある。
【0027】
図3に示すように、巻芯部30は、外周面31としてZ軸方向の上方の上面31aと、図6に示すZ軸方向の下方の下面31dと、Y軸方向の一方側の第1側面31bと、Y軸方向の他方側の第2側面31cと、を有する略直方体形状になっている。なお、巻芯部30の形状はこれに限定されず、X軸方向に延在する円柱形状や楕円形状であってもよい。鍔部40,50は、それぞれ略同じ形状であって、巻芯部30を挟んで対称な形状に成形されている。なお、鍔部40,50は、それぞれ多少異なる形状を有していてもよい。
【0028】
鍔部40は、巻芯部30と接続している主胴部45と、主胴部45からY軸方向に延出している第1副胴部41および第2副胴部42と、で構成されている。第1副胴部41および第2副胴部42は、それぞれY軸方向に対称な形状を有しているが、それぞれ多少異なる形状を有していてもよい。また、鍔部50も同様に、主胴部55と、第1副胴部51および第2副胴部52と、で構成されている。
【0029】
図3に示すように、主胴部45,55は、Z軸方向を高さ方向、X軸方向を奥行方向、Y軸方向を幅方向とする略直方体形状であってもよい。主胴部45,55は、X軸方向の内側で巻芯部30と接続している。主胴部頂面45a,55aは、Z軸方向の上方に配置してあり、主胴部下面45d、55dは、Z軸方向の下方に配置してあり、主胴部正面45b、55bは、X軸方向の外側に配置してある。
【0030】
第1副胴部41,51は、Z軸方向を高さ方向、X軸方向を奥行方向、Y軸方向を幅方向とする略直方体形状である。第1副胴部頂面41a,51aは、Z軸方向の上方に配置してあり、第1副胴部下面41d、51dは、Z軸方向の下方に配置してあり、第1副胴部正面41b、51bは、X軸方向の外側に配置してあり、第1副胴部側面41c,51cは、Y軸方向の外側に配置してある。
【0031】
第2副胴部42,54も同様に、第2副胴部頂面42a,52aは、Z軸方向の上方に配置してあり、第2副胴部下面42d、52dは、Z軸方向の下方に配置してあり、第2副胴部正面42b、52bは、X軸方向の外側に配置してあり、第2副胴部側面42c,52cは、Y軸方向の外側に配置してある。第1副胴部頂面41a,51aおよび第2副胴部頂面42a,52aは、主胴部頂面45a,45aよりもZ軸方向の下方向に凹んでいる。なお、本実施形態では、主胴部下面45d、55dと、第1副胴部下面41d、51dと、第2副胴部下面42d、52dは、それぞれ同一平面に配置してある。
【0032】
図3に示すように、巻芯部30には、ワイヤ60,70が巻回してある。ワイヤ60,70としては、たとえば、銅(Cu)などの良導体からなる芯材を、イミド変成ポリウレタンなどからなる絶縁材で覆い、さらに最表面をポリエステルなどの薄い樹脂膜で覆ったものを用いることができる。ワイヤ60,70の太さは特に限定されないが、たとえば50~80μmの太さであってもよい。
【0033】
図3に示すように、ワイヤ60は、コイル部60aと、リード部61,62と、を有する。コイル部60aは、巻芯部30の外周面31に沿って巻回されている。また、リード部61,62は、巻芯部30の外周面31から離間するように引き出されている。
【0034】
図7に示すように、リード部61は、後述の端子部81の接続部81aと接続する継線部63と、コイル部60aの巻端67から継線部63に繋がるリード本体部65と、を有する。同様に、リード部62は、端子部82の接続部82aと接続する継線部64と、コイル部60aの巻端68から継線部64に繋がるリード本体部66と、を有する。
【0035】
図7に示すように、コイル部60aの巻端67は、巻芯部30の下面31dと第1側面31bとが交わる角部に位置している。また、コイル部60aの巻端68は、巻芯部30の上面31aと第2側面31cとが交わる角部に位置している。
【0036】
図3に示すように、ワイヤ70は、コイル部70aと、リード部71,72と、を有する。コイル部70aは、コイル部60aの外周に沿って巻回されている。また、リード部71,72は、コイル部60aの外周から離間するように引き出されている。
【0037】
リード部71は、端子部91の接続部91aと接続する継線部73と、図7に示すコイル部70aの巻端77から継線部73(図3参照)に繋がるリード本体部75と、を有する。同様に、リード部72は、端子部92の接続部92aと接続する継線部74(図3参照)と、図6に示すコイル部70aの巻端78から継線部74に繋がるリード本体部76と、を有する。
【0038】
図7に示すように、コイル部70aの巻端77は、巻芯部30の上面31aと第1側面31bとが交わる角部に位置している。また、図6に示すように、コイル部70aの巻端78は、巻芯部30の下面31dと第2側面31cとが交わる角部に位置している。
【0039】
図1に示すように、鍔部40には、第1副胴部41に取り付けられる端子部81と、第2副胴部42に取り付けられる端子部91と、を有する。鍔部50には、第1副胴部51に取り付けられる端子部82と、第2副胴部52に取り付けられる端子部92と、を有する。なお、端子と鍔部とは非導電性の接着剤を用いて接着してあってもよい。
【0040】
端子部81,82,91,92は、導電性材料からなり、たとえば、一枚の金属板を略U字形状に折り曲げ加工することで形成することができる。図2に示すように、端子部81,82は、それぞれ同じ形状を有する。また、端子部81,91は、それぞれY軸方向に対称であり、端子部82,92は、それぞれY軸方向に対称な形状を有する。なお、端子部81,82,91,92は、それぞれ必ずしも同じ形状または対称でなくてもそれぞれ多少異なる形状を有していてもよい。以下、端子部81の構成について主として説明するが、その説明は、端子部82,91,92にも当てはまる。
【0041】
図2に示すように、端子部81は、端子本体部81bと、端子本体部81bのZ軸方向の上部と繋がりワイヤと接続する接続部81aと、端子本体部81bのZ軸方向の下部と繋がり実装基板などと接触する実装部81fと、を有する。端子部81の接続部81aは、第1保持片81cおよび第2保持片81dを有する。
【0042】
第1保持片81cおよび第2保持片81dは、接続部81aとの連接部分で、接続部81aの上面と当接するように折り曲げられるようになっており、ワイヤ60のリード部61の継線部63を、第1保持片81cおよび第2保持片81dと接続部81aとで挟むことで、ワイヤのリード部61と接続する。端子部82,91,92についても、同様に、それぞれ、リード部62,71,72と接続している。
【0043】
ワイヤと端子部を接続する方法は、特に限定されないが、たとえば、端子部が金属材料で形成されていれば、レーザ溶接等によって接続することができる。なお、継線部を第1保持片および第2保持片と接続部で挟むようにして、ヒータチップ等を押し当てるなどの方法で、継線部を挟持部に熱圧着してワイヤと端子を接続してもよい。熱圧着する場合には、ワイヤの芯線を被覆している絶縁材料については、熱圧着時の熱で溶融するため、ワイヤに被膜除去を施さなくてもよい。ワイヤと端子部との接続は、たとえば、継線部を第1保持片に絡げて接続してもよい。また、ワイヤと端子部は、ハンダなどの接合部材で接続することもできる。
【0044】
図7に示すように、リード部61,62(71,72)が接続する端子部81,82(91,92)の接続部81a,82a(91a,92a)は、装置本体2のZ軸方向の上方であって、収容凹部101の底面106に対向する鍔部40,50の頂面41a,51a(42a,52a)側に配置してある。また、端子部81,82(91,92)の実装部81f,82f(91f,92f)は、装置本体2のZ軸方向の下方であって、鍔部40,50の下面41d,51d(42d,52d)側に配置してある。また、端子部81,82(91,92)の端子本体部81b,82b(91b,92b)は、鍔部40,50の正面41b,51b(42b,52b)側に配置してある。
【0045】
図5および図7に示すように、外装ケース100は、装置本体2のZ軸方向上方に配置してある。装置本体2は、外装ケース100の収容凹部101にZ軸方向の上方が収容されている。そのため、外装ケース100によって、装置本体2に対する外部から物理的な接触を抑止でき、コア20の割れ欠けを防止する。装置本体2は、鍔部40,50の頂面45a,55aを収容凹部101の底面106に接着剤などを用いて固定してもよい。
【0046】
外装ケース100は、特に限定されないが、磁性体を含んでいてもよい。外装ケース100が磁性体を含むことで、コア20は、外装ケース100を介して閉磁路を形成することができる。外装ケース100は、磁性体を樹脂で固めて成形してもよい。
【0047】
外装ケース100に用いられる磁性体としては、コア20に用いられる磁性体と同様の磁性体が例示される。外装ケース100に用いられる樹脂としては、コア20に用いられる磁性体と同様の磁性体が例示される。
【0048】
図4に示すように、外装ケース100は、収容凹部101の底面106を構成する底壁110と、収容凹部101の内面102を構成する側壁120と、を有する。収容凹部101の底面106には、継線用凹部101a,101b,101c,101dが形成してある。図7に示すように、継線用凹部101a,101c(101b,101d)が形成してあることで、ワイヤの継線部63,64(73,74)と端子部81,82(91,92)との接続部分が底面106に接触せずに装置本体2を外装ケース100に収容することができる。そのため、ワイヤの継線部と端子部との接続部分や外装ケース100が破損することを防止できる。
【0049】
図6に示すように、本実施形態では、収容凹部101の内面102において、X軸方向側の内端面103aと、Y軸方向側の内側面103cとの境界にあたる内側角部104aが、R面105aを有している。本実施形態では、R面105aは、点Oを中心とし、0.7~0.8mmの半径rを有していてもよい。内端面103bと内側面103cとの境界にあたる内側角部104b、内端面103aと内側面103dとの境界にあたる内側角部104cおよび内端面103bと内側面103dとの境界にあたる内側角部104dも、R面105aと同様の半径rを有するR面105b,105c,105dになっていてもよい。
【0050】
R面105aは、リード部61が接続する端子部81から所定の間隔W0を設けて配置してあることが好ましい。間隔W0は、特に限定されないが、コイル装置1の小型化の観点では、間隔W0は広すぎないことが好ましい。装置本体2のX軸方向およびY軸方向の配置がずれても間隔W0が0以上あることが好ましい。間隔W0は、10~100μmに設計してもよい。R面105bと端子部82との間隔、R面105cと端子部91との間隔およびR面105dと端子部92との間隔も、間隔W0と同様の間隔を空けて配置してあってもよい。このように構成することで、装置本体2を、外装ケース100に収容し易くなると共に、端子部81,82,91,92とリード部61,62,71,72との接続箇所(溶接玉400)が外装ケース100の収容凹部101の内面102に接触することを防止できる。
【0051】
図5に示すように、外装ケース100の収容凹部101には、保護樹脂200が充填されている。コイル部70aのZ軸方向の下端70bは、保護樹脂200から露出していてもよい。保護樹脂200は、収容凹部101に収容されているリード部の表面を覆っていることが好ましい。このように構成することで、防湿材がリード部61,62,71,72に付着せず、しかもリード部61,62,71,72への物理的な衝撃などのストレスを効率的に低減することができる。
【0052】
保護樹脂200は、ヤング率が温度によらず一定であることが好ましく、たとえば、-50℃~260℃の範囲でのヤング率の最大値が最小値の300倍以下であることが好ましい。このような保護樹脂200は、たとえば、シリコーン系樹脂であってもよい。シリコーン樹脂は、-50℃~260℃の範囲でのヤング率が2.0MPa程度で略一定である。
【0053】
コイル装置1は、PCBの実装基板300などに実装する際、コイル装置1を含む電子回路全体の信頼性を高めるために、実装基板300と共に、防湿材を塗布してもよい。防湿材は、温度が高くなるにしたがってヤング率が低下する傾向がある。たとえば、防湿材として使用されるアクリル樹脂のヤング率は、0℃以下では2000MPa程度であるが、105℃以上で1.7MPa程度に変化し、ポリオレフィン樹脂のヤング率は、0℃以下では600MPa程度であるが、105℃以上で2.5MPa程度に変化する。本実施形態のように、ワイヤ60,70が、ヤング率が温度によらず一定の保護樹脂200で覆われていると、環境温度が変化しても、ワイヤ60,70に働く応力が小さいため、ワイヤ60,70が断線しにくくなる。
【0054】
本発明者らの研究によれば、従来のコイル装置を実装して防湿材を塗布した場合において、30分間で-40℃から85℃に環境温度を変化させる耐久試験を1サイクルとして1000サイクル行うと10%程度の断線が生じるが、本実施形態のコイル装置1では、耐久試験を3000サイクル行っても断線が生じないことが確認されている。
【0055】
図7に示すように、外装ケース100は、装置本体2のZ軸方向の上方を覆っている。外装ケース100が装置本体2の上方を覆うことで、コイル装置1を実装基板300などに実装の際に、実装基板300に防湿材を塗布しても、ワイヤに防湿材が付着しにくくなっている。リード部61,62(71,72)が接続する端子部81,82(91,92)の接続部81a,82a(91a,92a)は、装置本体2のZ軸方向の上方に配置してあり、接続部81a,82a(91a,92a)よりもZ軸方向の上方は外装ケース100で覆われている。また、側壁120の端縁面107は、巻芯部30の外周面31の上面31aよりも下方に配置されている。
【0056】
本発明者らの研究によれば、継線部63,64(73,74)とリード本体部65,66(75,76)の連接部分の周辺は、コイル部60a,70aの巻端67,68,77,78の周辺と比べて1.5倍程度の応力が作用することが判明している。本実施形態の太さが50~80μmといった細いワイヤ60,70では、低温において防湿材からの応力が作用することで、より細くなる。本実施形態では、少なくとも、接続部81a,82a(91a,92a)の付近が外装ケース100によって覆われており、実装基板300などに実装した際に塗布される防湿材が、ワイヤ60,70の断線し易い部分に接触しにくくなる。
【0057】
図5に示すように、本実施形態では、収容凹部101に保護樹脂200が充填されることで、防湿材が、ワイヤ60の断線し易いZ軸方向の上側部分に付着することを効果的に防止することができる。接続部81a,82a,91a,92aをこのように配置することで、図7に示すように、実装後に、防湿材を塗布しても、断線し易い継線部63,64(73,74)とリード本体部65,66(75,76)の連接部分の周辺に防湿材が付着しにくく、ワイヤの断線を効果的に防止することができる。
【0058】
図7に示すように、本実施形態では、装置本体2が外装ケース100に収容された状態では、端子部81,82(91,92)の一部が、Y軸方向から見て、Z軸方向の下方が収容凹部101から露出している。端子部81,82(91,92)の一部が収容凹部から露出しているため、外装ケース100が装置本体2を覆っていても、コイル装置1を基板300などに実装する際に、形成されるハンダフィレット400を、X軸、Y軸およびZ軸のいずれの方向からでも視認し易くなり、実装不良を容易に検知できる。
【0059】
図7に示すように、コイル装置1は、PCBの実装基板300のランド310などに、ハンダ400などを用いて実装することができる。コイル装置1が実装された状態では、Y軸方向から見て、端子部81,82(91,92)の端子本体部81b,82b(91b,92b)が、外装ケース100から露出しており、ハンダフィレットを形成し強固に実装基板300に実装することができる。
【0060】
端子本体部81b,82b(91b,92b)の露出長さH2は、実装基板300などに実装可能な範囲に設計することができ、たとえば、端子本体部81b,82b(91b,92b)のZ軸方向の長さH3の20%以下であってもよい。端子部81,82(91,92)が露出する高さH2は、装置本体の高さH4の50%以上であってもよい。装置本体2が覆われる高さH1がこの程度であっても、ワイヤ60,70の断線し易い部分は十分に保護され得る。また、端子部81,82(91,92)の露出が多いほど、実装の際にハンダフィレット400を形成し易く実装強度が高まる。また、このような構成では、ハンダフィレット400をより視認し易くなる。
【0061】
第2実施形態
本実施形態に係るコイル装置1aは、第1実施形態と共通する構成を有しており、共通する構成の説明は省略し、以下、異なる部分について主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1実施形態の説明と同様である。
【0062】
図8図10に示すように、外装ケース100aの収容凹部101、内端面103a,103bに、それぞれテーパ面108a,108bを有する。テーパ面108a,108bは、側壁120の端縁面107から収容凹部101の底面106側に向かって内側に傾斜している。このように構成することで、収容凹部101の内面102に実施形態1のようなR面を有しなくても、装置本体2を外装ケース100に収容し易くなる。
【0063】
本実施形態では、鍔部40,50の主胴部正面45b,55bは、テーパ面108a,108bに接触していないが、接触していてもよい。本実施形態では、主胴部正面45b,55bが、テーパ面108a,108bに接触していても、端子部とリード部とを繋ぐ溶接玉400が内端面103a,103bに接触しないようにテーパ面108a,108bの角度が設計されている。
【0064】
第3実施形態
本実施形態に係るコイル装置1bは、第2実施形態と共通する構成を有しており、共通する部分の説明は省略し、以下、異なる部分について主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1実施形態の説明と同様である。
【0065】
図11に示すように、コイル装置1bは、板コア10を有する。板コア10は、磁性体を含んでいる。磁性体としては、コア20に用いられる磁性体と同様の磁性体が例示される。板コア10は、コア20と同様に、磁性体の粉体を、成型および焼結することにより作製され得る。また、板コア10は、磁性体を樹脂で固めて成形してもよい。樹脂としては、コア20に用いられる磁性体と同様の磁性体が例示される。
【0066】
図13に示すように、板コア10は、装置本体2と底壁110との間に配置されており、一対の鍔部40,50を繋いでいる。このように構成することで、コア20は板コア10を介して閉磁路を形成することができ、コイル装置1bの性能を向上させることができる。
【0067】
図12に示すように、外装ケース100bは、収容凹部101の底面106が平面になっており、板コア10を安定して収容することができる。板コア10は、収容凹部101の底面106と接着剤を用いて固定されていてもよい。外装ケース100bの収容凹部101、内端面103a,103bに、それぞれテーパ面108a,108bを有する。テーパ面108a,108bは、側壁120の端縁面107から収容凹部101の底面106側に向かって内側に傾斜している。
【0068】
外装ケース100bは、磁性体を含まない樹脂で成形してあってもよい。外装ケース100bを構成する樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、その他の合成樹脂、あるいはその他の非磁性体材料等が例示される。外装ケース100bが、このような樹脂で成形されると、底壁110および側壁120を薄く成形することができる。
【0069】
図12に示すように、板コア10には、継線用凹部10a,10b,10c,10dが形成してある。継線用凹部10a,10b,10c,10dが形成してあることで、ワイヤの継線部と端子部との接続部分が板コア10に接触せずに装置本体2を板コア10が収容された外装ケース100bに収容することができる。そのため、板コア10やワイヤの継線部と端子部との接続部分が破損することを防止できる。
【0070】
なお、上述した実施形態は、特許請求の範囲の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。
【0071】
たとえば、上述の例示的な実施形態では、4端子型のコイル装置であるが、2端子型のコイル装置であってもよい。また、ワイヤの数は上述の例示的な実施形態に限定されない。上述の例示的な実施形態ではコイル装置はトランスであるが、インダクタであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1,1a,1b・・・コイル装置
2・・・装置本体
10・・・板状コア
10a,10b,10c,10d・・・継線用凹部
20・・・コア
30・・・巻芯部
端部
31・・・外周面
31a・・・上面
31b・・・第1側面
31c・・・第2側面
31d・・・下面
40,50・・・鍔部
41,51・・・第1副胴部
41a,51a・・・第1副胴部頂面
41b,51b・・・第1副胴部正面
41c,51c・・・第1副胴部側面
41d,51d・・・第1副胴部下面
42,52・・・第2副胴部
42a,52a・・・第2副胴部頂面
42b,52b・・・第2副胴部正面
42c,52c・・・第2副胴部側面
42d,52d・・・第2副胴部下面
45,55・・・主胴部
45a,55a・・・主胴部頂面
45b,55b・・・主胴部正面
45d,55d・・・主胴部下面
60,70・・・ワイヤ
60a,70a・・・コイル部
70b・・・下端
61,62,71,72・・・リード部
63,64,73,74・・・継線部
65,66,75,76・・・リード本体部
67,68,77,78・・・巻端
81,82,91,92・・・端子部
81a,82a,91a,92a・・・接続部
81c,82c,91c,92c・・・第1保持片
81d,82d,91d,92d・・・第2保持片
81b,82b,91b,92b・・・端子本体部
81f,82f,91f,92f・・・実装部
100,100a,100b・・・外装ケース
101・・・収容凹部
101a,101b,101c,101d・・・継線用凹部
110・・・底壁
106・・・底面
120・・・側壁
102・・・内面
103a,103b・・・内端面
103c,103d・・・内側面
104a,104b,104c,104d・・・内側角部
105a,105b,105c,105d・・・R面
107・・・端縁面
108a,108b・・・テーパ面
109・・・外面
200・・・保護樹脂
300・・・実装基板
310・・・ランド
400・・・ハンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13